特許拒絶査定不服審判
2020-015021
熱交換器用伝熱管、および伝熱管とこれを保持する保持部材とを備えてなる熱交換器
- 審判番号
- 2020-015021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-161157
- 請求日
- 2020年10月28日
- 審決日
- 2021年08月27日
- 公報発行日
- 2021年12月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中興化成工業株式会社
- 【請求人代理人】中村 行孝
- 【請求人代理人】朝倉 悟
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 【請求人代理人】反町 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 林 茂樹
- 審判官 松下 聡
- 審判官 平城 俊雅
- 分類
- P18 .113-Z (F28F) / P18 .121-Z (F28F) / P18 .575-Z (F28F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-161157号「熱交換器用伝熱管、および伝熱管とこれを保持する保持部材とを備えてなる熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月22日出願公開、特開2018-28415号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月19日の出願であって、令和2年2月14日付けで拒絶理由が通知され、令和2年4月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年7月28日付けで拒絶査定がされ、その後、令和2年10月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和2年10月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
内部を低温の流体、外部を高温のガスが流れる熱交換器用伝熱管であって、
前記高温のガスが、前記伝熱管に接触する際に、前記高温のガスと前記低温の流体との間で熱交換が行われ、
少なくとも前記伝熱管の、前記高温のガスと接触する部分が、フッ素樹脂により形成されており、
前記伝熱管が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を被覆した金属管であるか、または
前記伝熱管が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むフッ素樹脂チューブであり、
前記伝熱管が金属管である場合は、PFA被覆の厚さは0.4~0.5mmであり、PFA被覆された金属管の外径は20~30mmであり、
前記伝熱管がフッ素樹脂チューブである場合は、外径が4~16mmであり、内径が2~14mmである、ことを特徴とする、熱交換器用伝熱管。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和2年4月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
内部を低温の流体、外部を高温のガスが流れる熱交換器用伝熱管であって、
前記高温のガスが、前記伝熱管に接触する際に、前記高温のガスと前記低温の流体との間で熱交換が行われ、
少なくとも前記伝熱管の、前記高温のガスと接触する部分が、フッ素樹脂により形成されており、
前記伝熱管が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を被覆した金属管である、または
前記伝熱管が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むフッ素樹脂チューブであることを特徴とする、熱交換器用伝熱管。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の「テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を被覆した金属管である」、「伝熱管」に関して「伝熱管が金属管である場合は、PFA被覆の厚さは0.4~0.5mmであり、PFA被覆された金属管の外径は20~30mmであ」ることの限定を新たに付加するとともに、補正前の「テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むフッ素樹脂チューブである」、「伝熱管」に関して、「伝熱管がフッ素樹脂チューブである場合は、外径が4~16mmであり、内径が2~14mmである」ことの限定を新たに付加する補正を含むものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決する課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって新規事項を追加するものではない。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。
(1)本願補正発明について
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用例である特開2007-163115号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。
ア 引用例の記載
1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複式伝熱管を具備した多管式熱交換器であって、該伝熱管外管の高温ガスに接する部分にフッ素樹脂をコーティングしてなることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記複式伝熱管の内管内部及び内管外部と外管内部との間に冷却媒体を循環させ、外管外部を高温ガスに接触させて熱交換させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記フッ素樹脂が4フッ化樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、6フッ化ポリプロピレン(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。」
1b)「【0003】
例えばゴミ焼却設備から排出された排ガスは多量の水分を含んでおり、高温で熱交換機を長期間使用していると、伝熱管が腐食してしまう。ゴミ焼却設備以外にも重油ボイラー、石炭ボイラー等の各種ボイラー、セラミック用キルン等の各種キルン等で使用する熱交換器においても、高温ガス中に水蒸気や亜硫酸ガス、塩化水素等の腐食性ガスが含まれているので、熱交換器の寿命を著しく短くする難点がある。伝熱管の材質を銅やステンレス鋼、さらには特殊合金等の耐食性に富んだ材料とすることも考えられるが、熱交換効率が低下したり大幅なコストアップにつながるので得策ではない。また、伝熱管材料の肉厚を厚くしたり、鋳鉄などの耐食性材料を使用することも考えられるが、重量の大きな装置となって、コストアップする難点があった。
本発明は、小型軽量化が可能で熱交換率が良く、耐食性に富んだ熱交換器を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の熱交換器は複式伝熱管を具備した多管式熱交換器であって、該伝熱管外管の高温ガスに接する部分にフッ素樹脂をコーティングしてなる熱交換器とした。
本発明においては、前記複式伝熱管の内管内部及び内管外部と外管内部との間に冷却媒体を循環させ、外管外部を高温ガスと接触させて熱交換させる方式とすることができる。
このような構造の熱交換器とすれば、熱交換効率の良い熱交換器を安価に提供することが可能となる。
【0005】
また、本発明においては、前記フッ素樹脂として4フッ化樹脂を使用することができる。さらに具体的には前記フッ素樹脂としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、6フッ化ポリプロピレン(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等を使用することが好ましい。」
1c)「【0009】
図2は、本発明の熱交換器の断面を示す図である。図2に示すように本発明の熱交換器1は、ケーシング2内に多数の伝熱管10,11が鉛直に配置されており、冷媒入口7からヘッダー5に入った冷媒が伝熱管10内を循環してヘッダー6に集まり、隣接する伝熱管11内を循環してヘッダー5’に集まり、温冷媒となって冷媒出口8から排出される。このように伝熱管10,11は2~4本毎にブロックをなしており、共通するヘッダー5,5’や6等にまとめて接続されている。伝熱管10,11は二重管構造をなしており、冷媒の流れる向きが隣接するブロック毎に逆向きになるように配置されている。
高温ガスが図中矢印で示す伝熱管10,11の横方向から流れてきて伝熱管10,11に接触し、伝熱管10,11の外管の表面を介して熱交換される。
【0010】
図3に、本発明の熱交換器の伝熱管の一例の断面構造を拡大して示す。図3に示す例では、内管12と外管13が同心状に組み合わせてあり、多数の伝熱管を等間隔で管板3,4に吊り下げて固定した後、図示省略のケーシングに固定してある。内管12と外管13は、スリーブ16,17を介して管板3,4に溶接固定してある。管板3,4は、ケーシングと共にヘッダー6を構成しており、ヘッダー6は内管12の外側と外管13の内側の間隙7に通じている。この例では冷媒は二重になった内管12の内側を下降した後、内管12の外側と外管13の内側の間隙7を上昇していく。隣接するブロックの伝熱管では、冷媒の流れる方向は逆向きになっている。二重管構造とすることによりガスの入り口と出口を装置の一方(図では上方)に集約できるので、装置全体を小型化することができる。
冷媒としては、冷空気や冷水を使用するのが経済的である。
外管13の外側には高温ガスが流れており、外管13の表面を介して高温ガスと冷媒との熱交換が行われる。
【0011】
内管12と外管13には、肉薄の炭素鋼鋼管を使用するのが適する。それぞれの管径や長さは、処理すべきガスの量や温度条件に従って適宜設計して決めることができる。
外管13の表面は高温ガスと接触するので、耐食性を具備していなければならない。炭素鋼鋼管の表面に耐食性を付与するには、図3に示すように外管13の外側表面13aにフッ素樹脂14をコーティングするのが効果的である。高温ガスと接触する管板14の表面にもフッ素樹脂15をコーテイングするのが好ましい。
フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE、分子式;[-(CF2CF2)-]n)、6フッ化ポリプロピレン(FEP、分子式;[-(CF2CF2CCF3CF2)-]n)、4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA、分子式;[-(CF2CF2CCFRfCF2)-]n )等が利用できる。
これらのフッ素樹脂を厚さ0.5~1mm程度にコーティングする。
【0012】
このようにしてフッ素樹脂コーティングすることにより、湿分(H2O)、塩酸(HCl)、亜硫酸ガス(SO2)、無水硫酸(SO3)等に対して完全な耐食性が得られると共にダストの付着もなく、高い熱伝導性を有するので熱交換率が良く、しかもコンパクトで軽量な熱交換器にすることができる。」
1d)「
」
1e)「
」
イ 上記アから分かること
1f)上記1c)段落【0011】から、外管は、炭素鋼鋼管であって、表面にフッソ樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングしたものを一例として含み、フッソ樹脂のコーティング厚さは0.5~1mm程度であることが分かる。
ウ 引用発明
上記ア及びイからみて、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「内管内部及び内管外部と外管内部との間に冷却媒体を循環させ、外管外部を横方向から流れてくる高温ガスに接触させて熱交換させる複式伝熱管における外管であって、
外管の高温ガスと接する部分にフッ素樹脂がコーティングされており、
外管が、表面にフッ素樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングした炭素鋼鋼管であり、
フッ素樹脂のコーティング厚さが0.5~1mm程度である、複式伝熱管における外管。」
(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「冷却媒体」は、本願補正発明における「低温の流体」に相当し、以下同様に、「高温ガス」は「高温のガス」に、「熱交換させる複式伝熱管における」、「外管」は「熱交換器用」、「伝熱管」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明における「内管内部及び内管外部と外管内部との間に冷却媒体を循環させ、外管外部を横方向から流れてくる高温ガスに接触させて熱交換させる複式伝熱管における外管」は、外管内部において冷却媒体を循環させるとともに、外管外部を横方向から流れてくる高温ガスと接触させるものであって、外管内部を循環する冷却媒体と外管外部を流れる高温ガスとの間で外管を介して熱交換が行われることは明らかであるから、本願補正発明における「内部を低温の流体、外部を高温のガスが流れる熱交換器用伝熱管であって、前記高温のガスが、前記伝熱管に接触する際に、前記高温のガスと前記低温の流体との間で熱交換が行われる」ものに相当する。
イ 引用発明における「外管の高温ガスと接する部分にフッ素樹脂がコーティングされ」ることは、フッ素樹脂をコーティングすることにより、外管の高温ガスと接する部分が、フッ素樹脂により形成されるようになることは明らかであるから、本願補正発明における「少なくとも前記伝熱管の、前記高温のガスと接触する部分が、フッ素樹脂により形成され」ることに相当する。
ウ 引用発明における「4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)」は、本願補正発明における「テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)」に相当し、以下同様に、「表面に」、「コーティングした」は「被覆した」に、「炭素鋼鋼管」は「金属管」にそれぞれ相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「内部を低温の流体、外部を高温のガスが流れる熱交換器用伝熱管であって、
前記高温のガスが、前記伝熱管に接触する際に、前記高温のガスと前記低温の流体との間で熱交換が行われ、
少なくとも前記伝熱管の、前記高温のガスと接触する部分が、フッ素樹脂により形成されており、
前記伝熱管が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を被覆した金属管である、熱交換器用伝熱管。」
[相違点]
本願補正発明においては「PFA被覆の厚さは0.4~0.5mmであり、PFA被覆された金属管の外径は20~30mmであ」る」のに対して、引用発明においては「4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)」である「フッ素樹脂のコーティング厚さが0.5~1mm程度」であって、「表面にフッ素樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングした炭素鋼鋼管」である外管の外径については不明である点。
以下、相違点について判断する。
[相違点について]
まず、熱交換器に用いられる金属製の伝熱管にフッ素樹脂の被覆を設ける場合のフッ素樹脂の厚みについて検討すると、金属と比較するとフッ素樹脂の熱伝導率は低い(例えば、ステンレス:16W/m・kに対してPFA樹脂0.19W/m・k)ため、フッ素樹脂の被覆の厚みが厚すぎると伝熱性能が低下する一方、薄すぎるとピンホールを形成したり耐久性を損なうという認識の下、伝熱性能とピンホールの形成及び耐久性とを勘案してPFA等のフッ素樹脂の被覆の厚みを決定することは周知技術(例えば、特開昭62-280588号公報第2ページ右下欄第12ないし20行、実願昭51-087603号(実開昭53-5856号)のマイクロフィルム第3ページ第12ないし18行の記載を参照。以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明においてはフッ素樹脂のコーティング厚さが0.5~1mm程度とあり、PFA被覆の厚さを少なくとも本願補正発明におけるPFA被覆の厚さの数値範囲内である0.5mmとすることについての記載があり、上記周知技術1の例として挙げた、特開昭62-280588号公報(第2ページ右下欄第20行)には、フッ素樹脂の薄膜の厚さを0.2~0.6mmと、0.5mm以下の範囲を採用しうることについても示唆されているから、金属製の伝熱管に設けるフッ素樹脂の被覆の厚みを0.5mmか0.5mmをやや下回る程度とすることは、引用発明や上記周知例に照らせば格別なことではない。
さらに、本願明細書段落【0018】には「フッ素樹脂による被膜の厚みは、0.3~1.0mmであることが好ましく、0.3~0.6mmであることがより好ましく、0.4~0.5mmであることがさらに好ましい。フッ素樹脂による被膜の厚みが上記数値範囲内であれば、伝熱管の高い伝熱性能を維持しながら、腐食性の高いガスが伝熱管表面に接触した場合であっても伝熱管内部の金属管が腐食するのを有効に防止することができる。」と記載されているが、同段落【0053】における実施例101においては「厚さ0.4mmの被覆を備えた伝熱管1」と記載されるのみであり、本願補正発明において、PFA被覆の厚さの下限値を0.4mmとし、上限値を0.5mmとすることの臨界的意義は、上記本願明細書段落【0018】、【0053】の記載をみても特段見いだせないから、上記周知技術1に基づき、伝熱性能と、ピンホールの形成及び耐久性などを勘案して、引用発明におけるPFA被覆の厚さを0.4~0.5mmの範囲とすることに困難性は認められない。
次に、引用発明における「表面にフッ素樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングした炭素鋼鋼管」である外管の外径について検討すると、上記(2)ア 1c)段落【0011】の引用例における記載においては、「内管12と外管13には、肉薄の炭素鋼鋼管を使用するのが適する。それぞれの管径や長さは、処理すべきガスの量や温度条件に従って適宜設計して決めることができる。」とあり、外管の外径は、処理する熱媒、冷媒の量や温度などにより決定しうることが示唆されている。
また、伝熱管の外径に関して、伝熱管の外径が小さすぎると所定の伝熱面積を確保するために伝熱管の数が多くなるうえ圧損が大きくなるので好ましくなく、一方、伝熱管の外径が大きすぎると熱伝達の効率が低くなることを考慮しして適宜の寸法を設定することは周知技術(必要であれば、特開2000-52490号公報段落【0007】の記載ほか参照。以下「周知技術2」という。)である。
さらに、本願明細書段落【0022】には「フッ素樹脂により被覆された金属管の外径は、20~30mmであることが好ましく、22~28mmであることがより好ましく、24~26mmであることがさらに好ましい。また、内径は、18.0~29.4mmであることが好ましく、20.4~27.4mmであることがより好ましく、22.8~25.2mmであることがさらに好ましい。外径および/または内径が上記数値範囲内であれば、伝熱管は、良好な熱伝導率を有する。」と記載されているものの、同段落【0053】における実施例101においては「金属管(外径25mm・・)・・厚さ0.4mm被覆を備えた伝熱管1」(当審注:被覆を含めた伝熱管の外径は25.8mm)の記載があるのみで、本願補正発明において、フッ素樹脂により被覆された金属管の外径の下限値を20mmとし、上限値を30mmとすることの臨界的意義は、上記本願明細書段落【0022】、【0053】の記載をみても特段見いだせず、一般的に伝熱管の外径が20~30mmの範囲内のものも通常に存在し、採用されている(例えば、特開平6-42892号公報段落【0013】、特開平1-296096号公報第2ページ右下欄19及び20行、特開平2-29599号公報第3ページ左上欄第19行の記載、JIS規格H3300,C6870、G3463ほか参照。)ことから、
引用発明における「表面にフッ素樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングした炭素鋼鋼管」である外管の外径を、処理する熱媒、冷媒の量や温度、伝熱管の圧損、熱伝達の効率などを考慮して20~30mmの範囲内のものとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
よって、引用発明において上記周知技術1及び周知技術2を考慮して、「4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)」である「フッ素樹脂のコーティング厚さ」を0.4~0.5mmとし、「表面にフッ素樹脂として4フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)をコーティングした炭素鋼鋼管」である外管の外径を20~30mmとすることにより、上記相違点に係る本願補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(4)審判請求書における主張について
請求人は、「本願発明の熱交換器用伝熱管は、補正後の請求項1に記載の通り、所定径の金属管表面に所定厚さのPFA被覆が設けられたもの、又は所定の外径及び内径を有するPFAからなる樹脂チューブであることに特徴を有するものです。被覆の厚みと伝熱管の外径とは、伝熱管の伝熱性能と耐食性とに密接に関連します。即ち、被覆の厚さを厚くすると耐食性の観点からは好ましいものの伝熱性能が低下します。一方、伝熱管の伝熱性能を重視するとPFA被覆の厚みは薄いほど良いことになります。さらに、伝熱管の外径は小さいほど(表面積が大きくなるため)伝熱性能が向上する一方、被覆するPFA材料を多く使用する費用があり経済的ではありません。このように、伝熱管に本来要求される基本性能である伝熱性能を維持しながら耐食性を改善するためには、特定の外径を有する伝熱管に特定の厚みのPFA被覆する必要があることが、本願明細書の記載から読み取れます。
本願発明においては、補正後の請求項1に記載のとおり、伝熱管の径(大きさ)と、伝熱管を被覆するPFA被覆の厚さとを所定の範囲内とすることにより、上記のとおり、伝熱管の伝熱性能を維持しながら耐食性を改善したものです。」と主張する。
しかし、本願明細書には、伝熱管に対するPFA被覆の最適な厚みの範囲及びその効果については段落【0018】、伝熱管の最適な外径の範囲及びその効果については段落【0022】と別個に記載されているとともに、段落【0053】における実施例101の記載においては、金属管の外径を25mm、被覆の厚さを0.4mmとする場合についての記載があるのみであって、上記審判請求書における請求人の主張のように、特定の外径を有する伝熱管に特定の厚みのPFAを被覆することにより、伝熱管の特定の外径とPFA被覆の特定の厚みの範囲外であった場合と比較して何らかの相乗効果や格別の伝熱性能や耐久性の向上が得られることについては本願明細書において何ら記載がない。
よって、上記請求人の主張は採用できない。
(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
(理由3)本願発明は、本願の出願日前に頒布された下記引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
または、
(理由4)本願発明は、本願の出願日前に頒布された下記引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例>
1.特開2007-163115号公報
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記第2 3(2)に記載したとおりである。
4 判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から、「テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を被覆した金属管である」、「伝熱管」に関して「伝熱管が金属管である場合は、PFA被覆の厚さは0.4~0.5mmであり、PFA被覆された金属管の外径は20~30mmであ」ることの限定を省き、さらに、「テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むフッ素樹脂チューブである」、「伝熱管」に関して、「伝熱管がフッ素樹脂チューブである場合は、外径が4~16mmであり、内径が2~14mmである」ことの限定を省いたものであって、上記第2 3(3)で検討した本願補正発明の相違点に係る構成を除いたものに相当するから、本願発明と引用発明との間に相違点はない。
よって、本願発明は引用発明であるか、仮に相違点があったとしても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3項に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-015021