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特許拒絶査定不服審判

2019-013945

ワーク分割装置及びワーク分割方法

審判番号
2019-013945
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-130134外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月18日
審決日
2020年10月14日
公報発行日
2021年01月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2018-130134「ワーク分割装置及びワーク分割方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-170525〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は,平成24年9月24日に出願した特願2012-209490号の一部を平成28年2月12日に新たな特許出願とした特願2016-25137号の一部を平成28年5月16日に新たな特許出願とした特願2016-97858号の一部を平成28年12月14日に新たな特許出願とした特願2016-242455号の一部を平成30年7月9日に新たな特許出願としたものであって,その手続の概要は,以下のとおりである。 平成30年 8月20日:拒絶理由通知(起案日) 平成30年10月18日:意見書 平成30年11月 9日:拒絶理由通知(起案日) 平成31年 1月 9日:意見書,手続補正書 平成31年 3月 1日:最後の拒絶理由通知(起案日) 平成31年 4月23日:意見書 令和 元年 7月17日:拒絶査定(起案日) 令和 元年10月18日:審判請求 令和 2年 7月 8日:拒絶理由通知(起案日) 令和 2年 9月 4日:意見書 2 本願発明 平成31年1月9日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 「【請求項1】 ワークを個々のチップに分割するワーク分割装置において, 前記ワークを貼付けたダイシングテープをエキスパンドするエキスパンド手段と, 前記エキスパンドにより弛緩した前記ダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する旋回式の選択的加熱手段と, 前記加熱が行われる前から前記弛み部分を冷却する冷却手段と, を備えたワーク分割装置。」 3 拒絶の理由 令和2年7月8日付けで当審が通知した拒絶理由は,大略,次のとおりのものである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし4に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記1ないし4の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-156400号公報 2.特許第5013148号公報 3.特開2012-9464号公報 4.特開2011-77482号公報 4 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1には,以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 開口部に樹脂拡張テープを介して板状ワークを支持する環状フレームを保持するフレーム保持手段と,前記環状フレームと前記板状ワークとを該板状ワークの表面と垂直に交わる方向に離反させて前記樹脂拡張テープを拡張し前記板状ワークを分割予定ラインに沿って分割する分割手段と,を有するテープ拡張装置であって, 前記樹脂拡張テープを2.5μm以上30.0μm以下の波長を含む電磁波の照射により加熱して該樹脂拡張テープの拡張された箇所を収縮させる加熱手段を有することを特徴とするテープ拡張装置。」 「【請求項7】 前記樹脂拡張テープを拡張し前記板状ワークを分割予定ラインに沿って分割する際に,前記板状ワークを冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のテープ拡張装置。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は,半導体ウエーハ等の板状ワークを分割予定ラインに沿って分割するために樹脂拡張テープを拡張するテープ拡張装置に関する。 【背景技術】 【0002】 フィルム状接着剤が貼着された半導体ウエーハの場合,フィルム状接着剤は非常に柔軟な糊状物質によって形成されているため,フィルム状接着剤側が貼着された保護テープを拡張すると,フィルム状接着剤も伸びてしまいフィルム状接着剤自体を確実に破断することが困難となる。そこで,フィルム状接着剤を冷却する冷却手段を備え,冷却しながら破断を行うことでフィルム状接着剤が伸びずに破断されるようにした破断方法も試みられている(例えば,特許文献1参照)。また,フィルム状接着剤を用いないワークの場合にも,保護テープを拡張することによりワークを分割予定ラインに沿って分割する分割法が用いられている。 【0003】 また,拡張した拡張テープ(保護テープ)の弛みをとるために赤外線ヒータで熱を与えて拡張テープを収縮させる技術も提案されている(例えば,特許文献2参照)。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら,特許文献2に示されるように,赤外線等を使用して拡張テープの加熱を行っても効率よく拡張テープが加熱されない場合があり,改良の余地がある。 【0006】 本発明は,上記に鑑みてなされたものであって,効率よく樹脂拡張テープを加熱することができるテープ拡張装置を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0014】 本発明によれば,樹脂が放射によって効率よく加熱される2.5μm以上30.0μm以下の波長が存在する電磁波を樹脂拡張テープに照射して加熱するようにしたので,効率よく樹脂拡張テープを加熱することができるテープ拡張装置を提供することができる。」 「【発明を実施するための形態】 【0016】 以下,本発明のテープ拡張装置を実施するための形態について,図面を参照して詳細に説明する。図1は,本実施の形態のテープ拡張装置の構成例を示す外観斜視図であり,図2は,その分解斜視図であり,図3は,その一部の縦断側面図であり,図4-1~図4-5は,テープ拡張処理の工程を工程順に示す縦断側面図である。 【0017】 まず,図2を参照して,分割対象となる板状ワーク等について説明する。本実施の形態は,表面に複数の分割予定ライン2が格子状に形成されるとともにこれら複数の分割予定ライン2によって区画された複数の領域にデバイス3が形成された板状ワーク4を分割対象とするもので,板状ワーク4の裏面にはダイボンディング用に利用されるフィルム状接着剤1が貼付されている。このフィルム状接着剤1は,エポキシ樹脂等で形成された厚さ数μm~100μmのDAF(Die Attach Film)である。ここで,本実施の形態の板状ワーク4は,例えばパルスレーザ光線の照射等による変質層形成工程により分割予定ライン2に沿って変質層を形成済みのものが用いられる。このような変質層形成工程は,例えば特許第3408805号公報等で公知であるので,詳細な説明を省略する。そして,このような板状ワーク4は,裏面に貼付されたフィルム状接着剤1側が,開口部5aに伸縮性を有する樹脂拡張テープ6を介して環状フレーム5により支持される。樹脂拡張テープ6は,フィルム状接着剤1よりも凝固点の低い塩化ビニル等の材質からなる。 【0018】 このような板状ワーク4をデバイス3毎に分割するテープ拡張装置は,フレーム保持手段10と,分割手段20と,冷却手段30と,加熱手段40とを筐体7内に備える。8は,筐体7の上部を覆う蓋体である。 【0019】 フレーム保持手段10は,例えばSUS等の金属からなる矩形プレート状の保持部材11を備える。ここで,保持部材11は,中央部に環状フレーム5の開口部5aの内径と略同等の内径を有する開口13を備え,この開口13の周囲の上面が環状フレーム5を保持する保持面14として機能する。また,保持部材11の四隅下方には,保持部材11を昇降移動させるエアーピストン機構15を備える。また,フレーム保持手段10は,保持部材11を上昇させることで保持面14上に載置された環状フレーム5を保持面14とで挟持するための規制部材16を保持部材11の上方に備える。この規制部材16は,矩形板状に形成され,中央部に開口部5aや開口13と同等の大きさの円形状の開口17を有する。 【0020】 また,分割手段20は,フレーム保持手段10の保持面14に保持された環状フレーム5に装着された樹脂拡張テープ6における板状ワーク4が貼付されているワーク貼付領域に作用する円形の押圧面21を有する。この押圧面21は,開口13の内径よりも小さな半径で形成されて,開口13内を昇降自在なものである。また,この押圧面21は,分割時以降,板状ワーク4部分を吸引部22の吸引力により吸引保持するものであり,多孔質材により形成されている。さらに,押圧面21の外周部には,頂部に環状溝23aが形成された筒体23が配置され,環状溝23に沿って複数の拡張補助ローラ24が回転自在に配設されている。これら拡張補助ローラ24は,分割手段20を拡張位置に移動して樹脂拡張テープ6を拡張する際に生じる摩擦抵抗を軽減させ,引張力を均等に作用させるためのものである。 【0021】 さらに,分割手段20は,押圧面21や筒体23の下部側に連結されて,押圧面21を保持面14より下方に離隔した待機位置から保持面14を通り過ぎてこの保持面14より上方の拡張位置まで移動させるための駆動源としてエアーピストン機構25,26を備える。すなわち,エアーピストン機構25,26は,環状フレーム5と板状ワーク4とを板状ワーク4の表面と垂直に交わる方向に離反させるよう,フレーム保持手段10に対して相互に離隔した待機位置から相互に交差する拡張位置まで昇降移動可能に設けられた押圧面21や筒体23を昇降移動させる。 【0022】 また,冷却手段30は,樹脂拡張テープ6を拡張し板状ワーク4を分割予定ライン2に沿って分割する際に,上方から例えば10℃以下の冷却空気を噴射ノズル31から噴射することで板状ワーク4を冷却するためのものである。この冷却手段30は,不要時には板状ワーク4の上方位置から退避するように進退自在に設けられている。 【0023】 加熱手段40は,規制部材16の開口17の上方に位置させて蓋体8内に設けられたもので,樹脂拡張テープ6を2.5μm以上30.0μm以下の波長を含む電磁波の照射により加熱して樹脂拡張テープ6の拡張された箇所を収縮させるためものである。ここで,ピーク波長が2.5μm以上30.0μm以下に存在する電磁波を照射するとさらに効率よく樹脂拡張テープ6の拡張された箇所を収縮させることができる。ピーク波長とは,加熱手段40から発せられる電磁波を構成する波長の中で最も高い放射エネルギーを持つ波長を意味する。この加熱手段40は,樹脂拡張テープ6の拡張された箇所に電磁波を照射するように板状ワーク4の外径よりも大きくて開口13よりも小さな大きさで環状に形成された電磁波発生機構41を有する。この電磁波発生機構41としては例えば,セラミックスヒータやハロゲンランプなどを用いることができる。特に,2.5μm以上30.0μm以下の波長域にピーク強度が位置する条件で電磁波を発生させることが容易なセラミックスヒータが好ましい。セラミックスは,他のヒータの表面素材として用いることができる素材に比べて上記波長域における放射率が高いため,効果的に対象物を加熱できる。また,加熱手段40は,電磁波発生機構41の電磁波照射側面に位置させて減衰機構42を有することが好ましい。この減衰機構42は,2.5μm未満の波長の電磁波を減衰させるためのものであり,波長遮断フィルタ等が用いられている。 【0024】 このような構成において,板状ワーク4を分割するためのテープ拡張処理について工程順に説明する。まず,図3に示すように,分割手段20を待機位置に下降させるとともに,フレーム保持手段10を待機位置に下降させた状態で,筐体7のシャッタ機構7aを開放させて,樹脂拡張テープ6上にフィルム状接着剤1を介して貼付された板状ワーク4を有する環状フレーム5を,保持面14上の所定位置に導入させる。 【0025】 ついで,図4-1に示すように,エアーピストン機構15によってフレーム保持手段10を規制部材16に当接する位置まで上昇させることで,保持面14上に載置された環状フレーム5を保持面14と規制部材16とで挟持させる。 【0026】 さらに,図4-2に示すように,板状ワーク4を吸引保持した押圧面21を筒体23(拡張補助ローラ24)とともにエアーピストン機構25,26によって待機位置から保持面14を越える拡張位置まで上昇移動させて樹脂拡張テープ6を拡張させることで,板状ワーク4をフィルム状接着剤1とともに,変質層が形成されることで強度が低下している分割予定ライン2に沿って破断して分割する。このとき,押圧面21の押圧上昇を受ける樹脂拡張テープ6は,その外周全体が固定状態の環状フレーム5に装着されているため,押圧面21の押圧上昇に伴う引張力が放射状に作用する。これにより,樹脂拡張テープ6上に貼付されているフィルム状接着剤1に対しても放射状に引張力が作用する。 【0027】 また,このような樹脂拡張テープ6を拡張させて板状ワーク4を分割させる際には,冷却手段30の噴射ノズル31を板状ワーク4の上方に進出させて,板状ワーク4に対して冷却空気を噴射することで板状ワーク4を冷却する。これにより,板状ワーク4の裏面に接着されたフィルム状接着剤1も冷却され,その伸縮性が低下させられる。このように伸縮性が低下したフィルム状接着剤1に対して放射状に引張力が作用するため,板状ワーク4およびフィルム状接着剤1が分割予定ライン2に沿って良好に分割される。 【0028】 板状ワーク4およびフィルム状接着剤1の分割後,図4-3に示すように,押圧面21をエアーピストン機構25によって拡張位置から待機位置まで下降移動させて板状ワーク4を押圧面21により吸引保持する。なお,筒体23はエアーピストン機構26によって拡張位置から待機位置よりもさらに下方位置まで下降移動させる。この状態では,樹脂拡張テープ6の拡張された箇所には弛み6aが生ずる。また,冷却手段30は,板状ワーク4の上方位置から退避させる。 【0029】 ついで,図4-4に示すように,加熱手段40を樹脂拡張テープ6側に向けて下降させ,加熱手段40と樹脂拡張テープ6との間の雰囲気に空気を含む状態で,所定波長の電磁波を弛み6a部分に向けて照射することにより,弛み除去を行う。すなわち,樹脂拡張テープ6の弛み6a部分は,加熱手段40によって照射される所定波長の電磁波により加熱されて収縮することで,図4-5に示すように,弛み6aが除去される。」 「【0036】 また,電磁波を用いた放射による樹脂拡張テープ6の加熱は,対流による加熱と異なり雰囲気中の空気の温度影響や空気の流れの影響を受けにくい。よって,冷却手段30による板状ワーク4の冷却環境を含む条件下での加熱手段として特に有効となる。また,加熱に際して,温風のような外力が働かないので,樹脂拡張テープ6へのダメージが少なく綺麗に弛み6aを除去することができる。」 「【0040】 また,冷却手段としては,噴射ノズル31を用いて板状ワーク4に向けて冷却空気を噴射させるものに限らず,例えば,ペルチェ素子等を用いて板状ワーク4を冷却するものでもよく,あるいは,板状ワーク4を含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの等であってもよい。」 「 」 「 」 「 」 「 」 (2)上記記載から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「半導体ウエーハ等の板状ワークを分割予定ラインに沿って分割するために樹脂拡張テープを拡張する, フレーム保持手段と, 分割手段と, 冷却手段と, 加熱手段とを, 上部が蓋体で覆われた筐体内に備えるテープ拡張装置であって, 分割対象となる前記板状ワークは,表面に複数の分割予定ラインが格子状に形成されるとともにこれら複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成された板状ワークであり, 前記板状ワークの裏面にはダイボンディング用に利用されるフィルム状接着剤(Die Attach Film)が貼付されており, 前記板状ワークは,裏面に貼付されたフィルム状接着剤側が,開口部に伸縮性を有する樹脂拡張テープを介して環状フレームにより支持されており, 前記フレーム保持手段は,中央部に環状フレームの開口部5aの内径と略同等の内径を有する開口13を備え,この開口13の周囲の上面が環状フレームを保持する保持面として機能する矩形プレート状の保持部材と,前記保持部材を上昇させることで保持面上に載置された環状フレームを保持面とで挟持するための矩形板状に形成され,中央部に開口部5aや開口13と同等の大きさの円形状の開口17を有する,前記保持部材の上方に設けられた規制部材とを備え, 前記分割手段は,前記フレーム保持手段の保持面に保持された環状フレームに装着された樹脂拡張テープにおける板状ワークが貼付されているワーク貼付領域に作用する,前記開口13内を昇降自在な円形の押圧面を有するとともに,前記押圧面の外周部に配置された,頂部に,複数の拡張補助ローラが回転自在に配設されている環状溝が形成された筒体と,前記押圧面や前記筒体の下部側に連結されて,前記押圧面を前記保持面より下方に離隔した待機位置から前記保持面を通り過ぎてこの保持面より上方の拡張位置まで移動させるための駆動源としてエアーピストン機構とを備え, 前記冷却手段としては,噴射ノズルを用いて板状ワークに向けて冷却空気を噴射させるものに限らず,板状ワークを含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの等であってもよく, 前記加熱手段は,前記規制部材の開口17の上方に位置させて蓋体内に設けられた,樹脂拡張テープの拡張された箇所に電磁波を照射するように,前記板状ワークの外径よりも大きくて開口13よりも小さな大きさで環状に形成された,例えば,セラミックスヒータやハロゲンランプなどを用いることができる電磁波発生機構を有し,前記樹脂拡張テープを2.5μm以上30.0μm以下の波長を含む電磁波の照射により加熱して樹脂拡張テープの拡張された箇所を収縮させるものであり,電磁波を用いた放射による樹脂拡張テープの加熱は,対流による加熱と異なり雰囲気中の空気の温度影響や空気の流れの影響を受けにくいので,冷却手段による板状ワークの冷却環境を含む条件下での加熱手段として特に有効となる, テープ拡張装置。」 (3)引用文献2には,以下の事項が記載されている。 「【0116】 次に,図9のステップS250において,図13に示すように,ウェハカバー20と突上げ用リング12の各先端面を突き合わせて把持した部分の外側の弛緩したダイシングテープSの部分に対してのみ,光加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。このとき,もしワークが貼付されたDAF(D)の領域も同時に加熱されてしまうとDAF(D)が溶けてチップT間の隙間がなくなってしまう虞があるので,ダイシングテープSのワークが貼付された領域以外の弛んだ部分のみを選択的に加熱する必要がある。 【0117】 この加熱により弛んだダイシングテープSが緊張して,弛みが次第に解消して行く。なお,例えば光加熱装置22はそれぞれ100Wであり,直径20mmのエリアに光を照射する。ウェハカバー20と突上げ用リング12との間の把持力も40kgfが維持されている。 【0118】 またこのとき,光加熱装置22をオンしてからその加熱状態が安定した後(約2秒後),固定した一定の位置からのみ加熱することによってダイシングテープSの緊張状態に偏りが生じないように,光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で所定速度で回転することが好ましい。このように光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で回転させることで様々な方向から加熱することにより,ダイシングテープSの緊張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる。なお,光加熱装置22を回転する場合に,ヒータ昇降機構23が単に光加熱装置22を昇降させるだけでなく,光加熱装置22を一定の周期で回転させるヒータ回転機構の機能をも備えるようにしてもよい。 【0119】 ここで,光加熱装置22の制御方法について,詳しく説明しておく。図14に,光加熱装置22とダイシングテープSとの位置関係の一例を平面図で示す。光加熱装置22は,スポットタイプのハロゲンランプヒータである。 【0120】 図14に示す例では,ダイシングテープSの周囲に等間隔で対称的に4つの光加熱装置22が配置されている。なお,図14では,半導体ウェハWやフレームF等は省略して,中央にチップTを一つだけ表示している。 【0121】 図14の例では,チップTは略正方形であり,各光加熱装置22は,チップTの各辺に対向する位置にそれぞれ配置されている。この位置で各光加熱装置22の電源をオンにすると,熱収縮性の材料で形成されたダイシングテープSは,加熱されて図に矢印Jで示したように収縮する。その結果,チップTは,X方向及びY方向に引っ張られる。 【0122】 ここで例えばダイシングテープSは,図のX方向(横方向)は収縮し難く,Y方向(縦方向)は収縮し易いとする。このような収縮異方性を解消するために,収縮し難いX方向に配置された光加熱装置22に対しては,収縮し易いY方向に配置された光加熱装置22よりも(ハロゲンランプヒータに対する)印加電圧を高めに設定するようにする。これにより,ダイシングテープSは縦方向及び横方向に均等に収縮し,各チップTは外周方向に均等に引っ張られるので,チップT同士がくっついてしまったり,配列ずれを生じることはない。 【0123】 さらにこのとき,図に矢印Kで示すように,光加熱装置(スポットタイプのハロゲンランプヒータ)22を,ヒータ昇降機構23によって,ダイシングテープSの周囲に回転走査させる。 【0124】 図15に,光加熱装置22を回転走査する様子を示す。 【0125】 まず,図15に符号1で示す位置で光加熱装置22(図15においては図示省略)の電源をオンにして加熱を行う。このとき,前述したようにダイシングテープSはX方向(横方向)は収縮し難く,Y方向(縦方向)は収縮し易いとしているので,図の符号Hの位置にある光加熱装置22は,符号Lの位置にある光加熱装置22よりも印加電圧を高く設定する。 【0126】 次に光加熱装置22の電源をオフにするか,加熱に寄与しない電圧を印加して,丁度符号1の中間の位置である符号2の位置まで,光加熱装置22をヒータ昇降機構23によって45度回転する。 【0127】 次に,符号2の位置でまた光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSを加熱する。この符号2の位置においては,X方向とY方向の中間の方向であるので,全ての光加熱装置22の印加電圧は等しくする。 【0128】 このようにして,ダイシングテープSを,ダイシングテープSを,横方向,縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。 【0129】 なお,光加熱装置22の個数はこの例のように4個に限定されるものではなく,図14に示す4個の光加熱装置22の間にそれぞれ1個ずつ光加熱装置を追加して8個の光加熱装置22を備えるようにしてもよい。」 「 」 「 」 「 」 (4)引用文献3には,以下の事項が記載されている。 「【0030】 図5は,加熱手段54によって加熱される領域を示す上面図である。加熱手段54は,熱風噴射部541から,環状フレーム2とワーク1との間の拡張テープ4の拡張された箇所545へ熱風を噴射し,拡張テープ4の拡張された箇所545を加熱する。同時に,冷風噴射部542から,拡張テープ4の拡張された箇所545とワーク1との境界領域546へ冷風を噴射する。図5において,境界領域546は,ワーク1と吸着部513とを跨った領域として示されている。しかし,境界領域546はこれに限定されず,熱風噴射部541からの熱風を遮断できれば,任意の領域に設定できる。例えば,拡張テープ4の拡張された箇所545と,ワーク1との間の領域に境界領域546を設定することができる。加熱手段54は,ワーク1の周囲を矢印Aで示す方向に移動しながら,環状である拡張テープ4の拡張された箇所545全体を加熱する。 【0031】 この構成により,ワーク1やワーク1の裏面に貼着された接着フィルム3(図5において不図示)側への熱風の回り込みを防止することができ,ワーク1や接着フィルム3の加熱を抑制しつつ,拡張テープ4の拡張された箇所545を十分に加熱することができる。この結果,ワーク1や接着フィルム3の特性を低下させることなく,拡張テープ4の拡張された箇所545を収縮させることが可能となる。」 「 」 (5)引用文献4には,以下の事項が記載されている。 「【0021】 図6は,図1,4及び5に示した加熱冷却手段4を下からみた状態を示しており,加熱冷却手段4は,円形の基盤40と,基盤40の中心に連結され基盤40とともに回転可能な軸部41と,基盤40の周縁部から下方に突出形成したリング基台42と,リング基台42に設けられた複数の加熱手段43及び複数の冷却手段44とから構成されている。図示の例では,加熱手段43及び冷却手段44は埋設されており,例えば,加熱手段43としてはヒータや熱風を送出する加熱ブロー,冷却手段44としては冷たい風を送出する冷却ブローを用いることができる。図6及び図7に示す例では,加熱手段43及び冷却手段44は,リング基台42の周方向に沿って交互に配設されている。図7の例では,45度おきに加熱手段43及び冷却手段44が交互に配設されており,リング基台42が矢印A方向に回転することにより加熱手段43及び冷却手段44も回転する構成となっている。」 「【0025】 次に,図12に示すように,ワーク保持テーブル20,フレーム支持部21及びフレーム押さえ部3の位置を変えずに,加熱冷却手段4を下降させ,リング基台42に埋設された加熱手段43及び冷却手段44を,空間8において露出した拡張テープ104の拡張された箇所,すなわちたるみ部104aに近接させた状態で対面させる。そして,例えば,加熱手段43をオンにするとともに冷却手段44から冷風を送出し,リング基台42を矢印A方向に135度回転させる。そうすると,図7に示したように,45度おきに加熱手段43と冷却手段44とが交互に配設されているため,最初の90度の回転によってたるみ部104aの全体に対して加熱手段43から矢印B方向に加熱が行われ,最初の45度の回転以降の90度の回転によって,加熱された部分に対して冷却手段44から矢印B方向に冷却が行われる。なお,最初は加熱手段43のみをオンとして加熱冷却手段4を90度回転させ,その後,加熱手段43をオフにするとともに冷却手段44をオンとし,その状態で加熱冷却手段4をさらに90度回転させるようにしてもよい。」 「 」 「 」 5 本願発明と引用発明の対比 (1)本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「半導体ウエーハ等の板状ワーク」は,本願発明の「ワーク」に相当する。そして,引用発明の「分割予定ラインに沿って分割」された「半導体ウエーハ等の板状ワーク」は,本願発明の「チップ」に相当する。 イ 引用発明の「裏面に」「ダイボンディング用に利用されるフィルム状接着剤(Die Attach Film)が貼付され」た「半導体ウエーハ等の板状ワーク」を支持する「伸縮性を有する樹脂拡張テープ」は,本願発明の「ダイシングテープ」に相当する。 ウ 引用発明の「前記フレーム保持手段の保持面に保持された環状フレームに装着された樹脂拡張テープにおける板状ワークが貼付されているワーク貼付領域に作用する,前記開口13内を昇降自在な円形の押圧面を有するとともに,前記押圧面の外周部に配置された,頂部に,複数の拡張補助ローラが回転自在に配設されている環状溝が形成された筒体と,前記押圧面や前記筒体の下部側に連結されて,前記押圧面を前記保持面より下方に離隔した待機位置から前記保持面を通り過ぎてこの保持面より上方の拡張位置まで移動させるための駆動源としてエアーピストン機構とを備え」た「分割手段」は,本願発明の「前記ワークを貼付けたダイシングテープをエキスパンドするエキスパンド手段」に相当する。 エ 引用発明の「噴射ノズルを用いて板状ワークに向けて冷却空気を噴射させるものに限らず,板状ワークを含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの等であってもよ」い「冷却手段」と,本願発明の「前記加熱が行われる前から前記弛み部分を冷却する冷却手段」とは,「冷却手段」である点で一致する。 オ 引用発明の「前記規制部材の開口17の上方に位置させて蓋体内に設けられた,樹脂拡張テープの拡張された箇所に電磁波を照射するように,前記板状ワークの外径よりも大きくて開口13よりも小さな大きさで環状に形成された,例えば,セラミックスヒータやハロゲンランプなどを用いることができる電磁波発生機構を有し,前記樹脂拡張テープを2.5μm以上30.0μm以下の波長を含む電磁波の照射により加熱して樹脂拡張テープの拡張された箇所を収縮させるものであり,電磁波を用いた放射による樹脂拡張テープの加熱は,対流による加熱と異なり雰囲気中の空気の温度影響や空気の流れの影響を受けにくいので,冷却手段による板状ワークの冷却環境を含む条件下での加熱手段として特に有効となる」「加熱手段」と,本願発明の「前記エキスパンドにより弛緩した前記ダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する旋回式の選択的加熱手段」とは,「前記エキスパンドにより弛緩した前記ダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する」「選択的加熱手段」である点で一致する。 カ 上記アないしオから,引用発明の「テープ拡張装置」と,本願発明の「ワーク分割装置」は,以下の相違点を除いて一致する。 キ 以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「ワークを個々のチップに分割するワーク分割装置において, 前記ワークを貼付けたダイシングテープをエキスパンドするエキスパンド手段と, 前記エキスパンドにより弛緩した前記ダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する選択的加熱手段と, 冷却手段と, を備えたワーク分割装置。」 <相違点> (相違点1) 「前記エキスパンドにより弛緩した前記ダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する」「選択的加熱手段」が,本願発明では,「旋回式」であるのに対して,引用発明では,そのような特定がされていない点。 (相違点2) 「冷却手段」が,本願発明では,「前記加熱が行われる前から前記弛み部分を冷却する」ものであるのに対して,引用発明では,「噴射ノズルを用いて板状ワークに向けて冷却空気を噴射させるものに限らず,板状ワークを含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの等であってもよ」いものである点。 6 判断 (1)相違点1について 引用文献2ないし4に記載されるように,エキスパンドにより弛緩したダイシングテープの弛み部分を加熱して排除する選択的加熱手段として,旋回式のものは周知であり,また,引用文献2に,「光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で回転させることで様々な方向から加熱することにより,ダイシングテープSの緊張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる」と記載されているように,選択的加熱手段を回転,すなわち,旋回式とすることによる利点が知られているのであるから,引用発明において,当該周知の手段を採用することは当業者が適宜なし得たことである。 (2)相違点2について フレーム保持手段と,分割手段と,冷却手段と,加熱手段とを,上部が蓋体で覆われた筐体内に備えるテープ拡張装置に係る引用発明における,前記「上部が蓋体で覆われた筐体」は,「板状ワークを含む閉塞空間」であるといえる。 そうすると,引用発明の「板状ワークを含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却する」「冷却手段」における,「板状ワークを含む閉塞空間」は,フレーム保持手段と,分割手段と,冷却手段と,加熱手段とを内包する上部が蓋体で覆われた筐体であると理解することが自然かつ合理的といえる。 そして,上部が蓋体で覆われた筐体内に冷却空気を送り込むことで,フレーム保持手段と,分割手段と,冷却手段と,加熱手段とを内包する上部が蓋体で覆われた筐体内を冷却する際に,当該「上部が蓋体で覆われた筐体内」に配置される「弛み部分」も併せて冷却されることは,その位置関係から明らかである。 さらに,引用発明における,電磁波を用いた放射による樹脂拡張テープの加熱は,対流による加熱と異なり雰囲気中の空気の温度影響や空気の流れの影響を受けにくいので,冷却手段による板状ワークの冷却環境を含む条件下での加熱手段として特に有効であると示されていることに照らして,引用発明の前記「冷却手段」は,加熱が行われる前から弛み部分を冷却しているものと認められる。 したがって,相違点2は実質的なものではない。 また,仮に,相違点2が実質的なものであるとしても,引用発明において,上部が蓋体で覆われた筐体内に冷却空気を送り込むことで冷却する構造を採用して,加熱が行われる前から弛み部分を冷却することは,当業者が容易になし得たことである。 (3)そして,これらの相違点1及び2を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 (4)請求人は,令和2年9月4日に提出した意見書において,「(ウ)また,引用文献1の段落[0036]の『また,電磁波を用いた放射による樹脂拡張テープ6の加熱は,対流による加熱と異なり雰囲気中の空気の温度影響や空気の流れの影響を受けにくい。よって,冷却手段30による板状ワーク4の冷却環境を含む条件下での加熱手段として特に有効となる。』の記載は,冷却手段30が噴射ノズル31を用いて板状ワーク4に向けて冷却空気を噴射させるものであって,冷却手段30による板状ワーク4の冷却環境と,加熱手段40による樹脂拡張テープ6の加熱環境とを完全に分離できないような場合を前提とした記載であり,『板状ワークを含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却する冷却手段』が用いられるような場合まで想定した記載でないことは明らかといえるものである。」と主張する。 しかしながら,上部が蓋体で覆われた筐体内に冷却空気を送り込むことで,フレーム保持手段と,分割手段と,冷却手段と,加熱手段とを内包する上部が蓋体で覆われた筐体内を冷却する場合に,冷却手段による板状ワークの冷却環境と,加熱手段による樹脂拡張テープの加熱環境とが完全に分離できないことは明らかであるから,請求人の前記主張は前提を誤っており採用することはできない。 さらに,請求人は,令和2年9月4日に提出した意見書において,「(カ)すなわち,引用文献1の段落[0040]においては,上述した『冷却手段30が噴射ノズル31を用いて板状ワーク4に向けて冷却空気を噴射させるものであって,冷却手段30による板状ワーク4の冷却環境と,加熱手段40による樹脂拡張テープ6の加熱環境とを完全に分離できないような場合』に代えて,両者の環境を完全に分離できる場合の冷却手段として,『板状ワーク4を含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの』を単に示しているにすぎず,『板状ワーク4を含む閉塞空間』が樹脂拡張テープ6の拡張された箇所までも含まれると拡張解釈することは許されないものである。」と主張する。 しかしながら,引用文献1には,冷却手段による板状ワークの冷却環境と,加熱手段による樹脂拡張テープの加熱環境とを完全に分離するという機構・構造,あるいは,技術的思想は何ら記載されていないから,引用文献1の「板状ワーク4を含む閉塞空間内に冷却空気を送り込むことで冷却するもの」を,冷却手段による板状ワークの冷却環境と,加熱手段による樹脂拡張テープの加熱環境とを完全に分離できる場合の冷却手段を単に示しているにすぎないとする主張は根拠を欠き採用することができない。 (5)小括 以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7 むすび 本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載の発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-013945

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