特許拒絶査定不服審判
2019-013178
最大遷移ハミングコード
- 審判番号
- 2019-013178
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-220152外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月02日
- 審決日
- 2020年07月07日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三星ディスプレイ株式會社
- 【請求人代理人】山下 託嗣
- 分類
- P18 .561-Z (H03M) / P18 .55 -Z (H03M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-220152「最大遷移ハミングコード」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日出願公開、特開2015- 89132〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成26年10月29日(パリ条約による優先権主張 2013年10月31日,米国(US),2014年 7月22日,米国(US))の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月27日 :手続補正書の提出
平成30年10月22日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月31日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 5月29日付け:拒絶査定
令和 1年10月 2日 :審判請求書,手続補正書の提出
第2 令和 1年10月 2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 1年10月 2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本願の請求項に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項5,6は,以下のとおりである(下線は,補正箇所)。
「 【請求項5】
複数のデータビットを受信するように構成された入力部と、
複数の符号化ビットを生成するためにハミングコード符号化演算を用いて前記データを符号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の符号化ビットを直列リンクに順次出力するための出力部と、
を備え、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成され、
前記プロセッサは、前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記符号化ビットは前記データビットとインターリービングされたパリティビットを含むように構成され、
前記出力部は、順次、前記第1パリティビットを、前記第2パリティビットの前に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第1のシーケンスを、前記第1パリティビットと、前記第2パリティビットとの間に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第2のシーケンスを、前記第2パリティビットの後に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、複数のビットを有する、前記データビットの第3のシーケンスを前記第1パリティビットの前に出力するか、
または、順次、複数のビットを有する、前記データビットの第3のシーケンスと、ハミングコード符号化演算を用いて計算された第3パリティビットと、複数のビットを有する、前記データビットの第4のシーケンスとを、この順で、前記第1パリティビットの前に出力し、
前記第2のシーケンスにおけるデータビットの数は、前記第1のシーケンスにおけるデータビットの数より大きく、前記第3のシーケンスにおけるデータビットの数、または、前記第3のシーケンス及び前記第4のシーケンスのそれぞれにおけるデータビットの数より大きいことを特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを減少させるために、先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置するのであり、
前記第1パリティビットは、移動された前記多数の前記複数の符号化データビットに含まれており、
移動の前の前記複数のデータビットのシーケンスにおける最後のビットを反転したものであるトグルビットが、移動の後の前記複数の符号化データビットの最後に配置されることを特徴とする請求項5に記載のエンコーダ。」
したがって,請求項5を引用する請求項6に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりである。
「 複数のデータビットを受信するように構成された入力部と、
複数の符号化ビットを生成するためにハミングコード符号化演算を用いて前記データを符号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の符号化ビットを直列リンクに順次出力するための出力部と、
を備え、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成され、
前記プロセッサは、前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記符号化ビットは前記データビットとインターリービングされたパリティビットを含むように構成され、
前記出力部は、順次、前記第1パリティビットを、前記第2パリティビットの前に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第1のシーケンスを、前記第1パリティビットと、前記第2パリティビットとの間に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第2のシーケンスを、前記第2パリティビットの後に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、複数のビットを有する、前記データビットの第3のシーケンスを前記第1パリティビットの前に出力するか、
または、順次、複数のビットを有する、前記データビットの第3のシーケンスと、ハミングコード符号化演算を用いて計算された第3パリティビットと、複数のビットを有する、前記データビットの第4のシーケンスとを、この順で、前記第1パリティビットの前に出力し、
前記第2のシーケンスにおけるデータビットの数は、前記第1のシーケンスにおけるデータビットの数より大きく、前記第3のシーケンスにおけるデータビットの数、または、前記第3のシーケンス及び前記第4のシーケンスのそれぞれにおけるデータビットの数より大きいことを特徴とし、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを減少させるために、先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置するのであり、
前記第1パリティビットは、移動された前記多数の前記複数の符号化データビットに含まれており、
移動の前の前記複数のデータビットのシーケンスにおける最後のビットを反転したものであるトグルビットが、移動の後の前記複数の符号化データビットの最後に配置されることを特徴とするエンコーダ。」
(2)本件補正の適合性について
本願補正発明は,エンコーダに係る発明であって,エンコーダが備えるプロセッサは,「前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成され、」るものである。
そして,本願補正発明の前記プロセッサは,「前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記符号化ビットは前記データビットとインターリービングされたパリティビットを含むように構成され」(以下,「発明特定事項A」という。),及び「先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置する」(以下,「発明特定事項B」という。)ことが特定される。
一方,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「当初明細書等)という。)には,次の事項が記載されている。
(a)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、遷移の個数が、受信機がデータを探知するには不十分であるため、データにおいて連続した同一値の長さ(例えば、連続した1または0の列)が特定の長さを超える場合、クロック信号の修復が失敗することがある。そこで、本発明は、同一値の長さを抑制することができる技術を提供することを目的とする。」
(b)「【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係るHC(127,120)符号化ビットの修正された出力符号化ビット22の生成を概略的に示す。図3を参照すると、連続した同一値の長さは、元の符号化ビットを再配置することにより減少される。例えば、元の符号化ビット20の最初のLビットは、修正された符号化ビット22が、元の符号化ビット20の最後のK-L(K=M+Nは、フレーム内のビットの総数)ビットから始まるようにシーケンスの最後に移動される。K=127、L=32のハミングコードHC(127,120)について説明する一般に、Lは、pM-1の以前の位置(pM-1の位置を含む)にあるビットの個数である。(HC(127,120)においてM=7であるため、pM-1=p6であり、このときの位置は32であり、このため、L=32である)。
【0042】
・・・(中略)・・・
【0046】
図7は、本発明の一実施形態により元の符号化ビット20を復元するために、修正された符号化ビット22を受信して復号化する方法250を示すフローチャートである。動作252において、長さKの修正された符号化ビットが受信される。受信された修正された符号化ビットの最初のK-Lビットはバッファ152にバッファリングされる。この後、受信された修正された符号化ビットの次のLビットは動作256において出力され、次いで、バッファリングされたK-Lビットが動作258において出力される。出力ビットは、ハミング復号化演算を行うためにハミングデコーダ40に供給される前にバッファリングされてもよい。」
(c)「【0047】
本発明の他の実施形態によれば、連続した同一値の最大の長さは、最後の二つのパリティビットに対して異なるパリティ類型(例えば、奇数対偶数)を用いて減少されたり最小化されたりする。換言すると、M個のパリティビットのシーケンスを使用するハミングコードにおいて、パリティビットシーケンスの最後(または、最終)のパリティビットpMは第1パリティを用いて計算し、パリティビットシーケンスの最後から2番目(または、最終から2番目)のパリティビットpM-1は、第1パリティとは異なる第2パリティを用いて計算する。図8Aは、最終パリティビットpM(この場合には、p7)は奇数パリティを用いて計算し(例えば、p7=d58からd120までのビットのXOR演算結果に1を加算する、より簡潔には、
【0048】
・・・(中略)・・・
【0049】
)、最後から2番目のパリティビットpM-1(この場合には、p6)は、偶数パリティを用いて計算する(例えば、p6=d27からd57までのビットとd89からd120までのビットのXOR演算結果、より簡潔に、p6=XOR(d27:d57、d89:d120))本発明の一実施形態に係るHC(127,120)符号化ビットの修正された出力符号化ビット24を例示する構成図である。修正された符号化ビットのパリティビットを偶数および奇数パリティを併用して計算することにより、94ビットの連続した同一値の最大の長さが達成される。
【0050】
・・・(中略)・・・
【0074】
に設定する)に置き換えられる。このような動作の結果は、標準ハミングデコーダに供給される標準にハミングコード符号化ビット列24または26を修復することである。一部の実施形態において、最後から2番目のパリティビットpM-1の代わりに最終パリティpMが修正される。」
(d)「【0075】
上記本発明によれば、デジタルデータの連続した同一値の長さを減少させたり最少化させたりするためのシステムおよび方法を提供することができる。一部の実施形態において、修正されたハミングコード符号化演算がデジタルデータに適用される。
【0076】
奇数および偶数のパリティを混合することにより連続した同一値の長さが減少されることに対する証明は、本出願と共に米国特許庁に提出された付録「ハミングコード内における奇数および偶数のパリティの混合による連続した同一値の長さの減少」から見られる。前記付録は、全体的に参照として本明細書に取り込まれる。
【0077】
本発明の実施形態は当該分野における通常の技術を有する者が認識できる様々な形態に実現され、この明細書において用いられた用語「プロセッサ」は、命令語がプロセッサに接続されたメモリに保存されるプログラミングされた汎用プロセッサ(例えば、アーム(ARM)プロセッサ)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)およびASIC注文型半導体などの記述された動作を行ういかなる演算装置を指し示す。本発明の実施形態は、直列通信コントローラ(例えば、汎用シリアルバスまたはUSBコントローラ)、グラフィック処理装置(graphical
processing unit:GPU)、パネル内インターフェースおよびハミングコード符号化信号を使用するその他のハードウェアまたはソフトウェアシステムに取り込まれる。
【0078】
本発明を特定の実施形態と結び付けて記述したが、本発明が開示された実施形態にのみ制限されるわけではなく、逆に、本発明は、添付の請求項の精神と範囲内において含まれる様々な修正と均等な配置を含むように意図されたものと理解するべきである。」
(e)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータビットに対してハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算するステップと、
前記データビットと前記計算されたパリティビットを出力するステップと、
を含むデータ符号化方法。
【請求項2】
前記第2パリティビットは、前記複数のパリティビットのシーケンスにおける最後のパリティビットであることを特徴とする請求項1に記載のデータ符号化方法。
【請求項3】
前記第1パリティビットは、前記複数のパリティビットのシーケンスにおける最後から2番目のパリティビットであることを特徴とする請求項1に記載のデータ符号化方法。
【請求項4】
前記ハミングコード符号化演算はHC(127,120)に対応し、前記第1パリティビットは6番目のパリティビットであり、前記第2パリティビットは7番目のパリティビットであることを特徴とする請求項1に記載のデータ符号化方法。
【請求項5】
複数のデータビットに対してハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算するステップと、
前記計算されたパリティビットを前記複数のデータビットとインターリービングして複数の符号化データビットを生成するステップと、
前記複数のデータビットのデータシーケンスの連続した同一値の最大の長さを減少させるために前記複数の符号化データビットを再配置するステップと、
を含むことを特徴とするデータ符号化方法。
【請求項6】
前記複数の符号化データビットを再配置するステップは、前記符号化データビットの先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化データビットの最後のビット以降に移動させるステップを含むことを特徴とする請求項5に記載のデータ符号化方法。
【請求項7】
前記ハミングコード符号化演算はHC(127,120)に対応し、多数の前記先頭の部分の複数の符号化データビットは32ビットを含むことを特徴とする請求項6に記載のデータ符号化方法。
【請求項8】
前記ハミングコード符号化演算は、奇数パリティを用いることを特徴とする請求項5記載のデータ符号化方法。
【請求項9】
複数のデータビットを受信するように構成された入力部と、
複数の符号化ビットを生成するためにハミングコード符号化演算を用いて前記データを符号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の符号化ビットを出力するための出力部と、
を備え、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成されることを特徴とするエンコーダ。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記複数の符号化ビットは前記データビットと前記計算されたパリティビットを含むように構成されることを特徴とする請求項9に記載のエンコーダ。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを減少させるために前記複数の符号化ビットを再配置するように構成されることを特徴とする請求項9に記載のエンコーダ。
【請求項12】
先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置することを特徴とする請求項11に記載のエンコーダ。
【請求項13】
前記ハミングコード符号化演算はHC(127,120)に対応し、先頭の部分にある多数の前記複数の符号化ビットは32ビットを含むことを特徴とする請求項12に記載のエンコーダ。
【請求項14】
複数のデータビットと複数のパリティビットから構成された複数の符号化ビットを受信するように構成された入力部と、
複数のハミングコード符号化ビットを生成するために受信された符号化ビットを修正し、複数の復号化ビットを生成するためにハミングコード復号化演算を用いて前記ハミングコード符号化ビットを復号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の復号化ビットを出力するように構成された出力部と、
を備え、
前記受信された複数の符号化ビットは、標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少された長さの連続した同一値を有することを特徴とするデコーダ。
【請求項15】
前記プロセッサは、先頭の部分にある多数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させて前記複数の受信された符号化ビットを再配置することにより前記受信された符号化ビットを修正するように構成されることを特徴とする請求項14に記載のデコーダ。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記パリティビットのパリティビット値をトグルさせることにより前記受信された符号化ビットを修正するように構成されることを特徴とする請求項14に記載のデコーダ。
【請求項17】
データソースと、
直列リンクと、
前記データソースと前記直列リンクとの間に連結され、前記データソースから複数のビットを受信するように構成された入力部と、
複数の符号化ビットを生成するためにハミングコード符号化演算を用いてビットを符号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の符号化ビットを前記直列リンクに出力するように構成された出力部と、
を有するエンコーダを備え、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成されることを特徴とする通信システム。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記複数のデータビットに対してハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記複数の符号化ビットは前記データビットと前記計算されたパリティビットを含むように構成されることを特徴とする請求項17に記載の通信システム。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを減少させるために先頭の部分にある多数の前記複数の符号化ビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置するように構成されることを特徴とする請求項17に記載の通信システム。」
上記記載によると,本願は,上記(a)の「本発明は、同一値の長さを抑制することができる技術を提供する」ことを課題として,上記(b)又は(c)の実施形態の構成を採用したものであり,ここで,上記本願補正発明の発明特定事項Aは,上記(c)に記載される実施形態に対応し,発明特定事項Bは,上記(b)に記載される実施形態に対応するものである。
そこで,当初明細書等の記載について検討する。
まず,当初明細書等の発明の詳細な説明について検討する。
上記(b)に記載される実施形態においては,(b)【0041】に,「連続した同一値の長さは、元の符号化ビットを再配置することにより減少される。」と記載され,(c)に記載される実施形態においては,(c)【0047】に,「本発明の他の実施形態によれば、連続した同一値の最大の長さは、最後の二つのパリティビットに対して異なるパリティ類型(例えば、奇数対偶数)を用いて減少されたり最小化されたりする。」と記載されるものであり,それぞれの実施形態において,「同一値の長さを抑制する」という本願発明の課題を解決するものであるから,これらの実施形態を必ず組み合わせることが必要であるとはいえない。また,当初明細書等には,これらの実施形態を組み合わせた実施形態については,記載されてなく,示唆もされていない。
よって,それぞれの実施形態は,いずれもが,本願の課題を解決するための構成であり,これらの実施形態を組み合わせることが必然のものとも認められない。
さらに,(e)の当初明細書等の特許請求の範囲の記載について検討する。
特許請求の範囲の請求項1の独立項を含む請求項1~4の「データ符号化方法」に係る発明は,上記(c)に記載される実施形態に対応する構成を有し,請求項5の独立項を含む請求項5~8の「データ符号化方法」に係る発明は,上記(b)に記載される実施形態に対応する構成を有するものである。
また,請求項9~13の「エンコーダ」に係る発明は,独立項である請求項9の「前記プロセッサは,前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成される」ことを上位概念として,請求項10の上記(c)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明,及び,請求項11~13の上記(b)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明を請求するものである。
さらに,請求項14~16の「デコーダ」に係る発明についても,独立項である請求項14を上位概念として,請求項15の上記(b)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明,及び,請求項16の上記(c)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明とし,請求項17~19の「通信システム」に係る発明についても,独立項である請求項17を上位概念として,請求項18の上記(c)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明,及び,請求項19の上記(b)に記載される実施形態に対応する構成を含む発明とするものである。
そうすると,当初明細書等における特許請求の範囲においても,上記(b)に記載される実施形態に対応する構成と,上記(c)に記載される実施形態に対応する構成を,ともに含む発明は,記載されていない。
したがって,本願補正発明の,発明特定事項A及び発明特定事項Bを含む構成は,当初明細書等に記載されたものではない。
(3)請求人の主張
審判請求書において,請求項6~8,10に係る発明に対する,特許法第17条の2第3項(新規事項)の要件違反による拒絶査定に対して,「請求項6~8及び10に関連して、本願図3の具体的な形態と、本願図8A~8Bの具体的な形態とを、直接に組み合わせものに限定しました。」旨,主張するが,請求項6~8,10に係る発明が,当初明細書等に記載されているとの主張ではないから,採用できない。
また,「したがって、補正後の本願請求項6及び9であると、全般的に偶数パリティビット及び奇数パリティビットのいずれを用いる場合にも、同一値の連続の数を小さくする効果が得られると思われます。」旨,主張するが,請求項6~8,10に係る発明の,さらなる効果を主張するものであり,採用できない。
さらに,平成31年 1月31日に提出された意見書において,
「本願図4~5及び段落0043~0044に記載の送信機(送信システム)の実施形態は、本願図1~3及び段落0030~0042に記載の送信機の実施形態から、発展または改良させたものと捉えることができます。特には、本願図5に、「ビット列の最初のLビットをバッファリングする」、「K-Lビットを出力する」などとあり、本願図2~3の形態を前提にしていることが明らかです。
また、本願図6~7及び段落0045~0046に記載の受信機の実施形態についても、特には図7の記載に鑑み、同様に、本願図1~3及び段落0030~0042に記載の送信機の実施形態に対応するものと捉えることができます。
そして、本願図8A~10及び段落0047~0056に記載の送信機の実施形態は、特には、図10及び段落0056の記載に鑑み、図2に具体的に示された形態を前提とすることが明らかであると思われます。
したがって、本願図3に記載の修正方式と組み合わせることは、当業者にとって自明であり、具体的に組み合わせる方式は適宜に選択可能と思われます。
なお、本願図11~12及び段落0057~0068に記載の送信機の実施形態、及び、本願図13~14及び段落0069~0074に記載の受信機の実施形態は、特には図12及び14の記載などから、本願図8A~10の実施形態からの、発展または改良であることが明らかであると思われます。すなわち、本願の一連の実施形態は、互いに連関されたものであると考えられます。」旨,主張する。
しかしながら,図1,2,段落[0030]~[0039]の記載は,段落[0039]の「一部の場合には、ハミングコードに符号化されたデータの伝送の結果、非常に長い連続した同一値が現れる。」との記載にあるように,本願が,前提とする技術であり,本願は,当該前提とする技術において,段落[0003]の「同一値の長さを抑制することができる技術を提供する」ことを「解決しようとする課題」とするものである。
そして,当該前提とする技術において,上記課題を解決するために,図3~7,段落[0041]~[0046]に記載される実施形態,並びに,図8~14,段落[0047]~[0074]に記載される実施形態が,開示されるものである。
そうすると,図3~7,段落[0041]~[0046]に記載される実施形態,並びに,図8~14,段落[0047]~[0074]に記載される実施形態は,それぞれが,課題を解決するための実施形態であるから,同一の課題を解決するための実施形態であるとしても,連関したものではなく,当初明細書等には,これらの実施形態が連関されることを示唆する記載,あるいは,連関した場合の効果の記載が,当初明細書等に記載されていないことから,上記主張は,採用できない。
(4)以上のように,本件補正の内容は,当初明細書等には記載がなく,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 1年10月 2日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし10に係る発明は,平成31年 1月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項9,及び平成29年10月27日にされた手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8,10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項7に記載された事項により特定される,次のとおりのものであり,引用する請求項5及び6に記載された事項は,次のとおりのものである。
「 【請求項7】
先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置することを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。」
「 【請求項5】
複数のデータビットを受信するように構成された入力部と、
複数の符号化ビットを生成するためにハミングコード符号化演算を用いて前記データを符号化するように構成されたプロセッサと、
前記複数の符号化ビットを直列リンクに順次出力するための出力部と、
を備え、
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを標準ハミングコードに対応する符号化ビットと比較して減少させるように構成され、
前記プロセッサは、前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記符号化ビットは前記データビットとインターリービングされたパリティビットを含むように構成され、
前記出力部は、順次、前記第1パリティビットを、前記第2パリティビットの前に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第1のシーケンスを、前記第1パリティビットと、前記第2パリティビットとの間に出力するように構成され、
前記出力部は、順次、前記データビットの第2のシーケンスを、前記第2パリティビットの後に出力するように構成され、
前記第2のシーケンスにおけるデータビットの数は、前記第1のシーケンスにおけるデータビットの数より大きいことを特徴とするエンコーダ。」
「 【請求項6】
前記プロセッサは、前記複数の符号化ビットの連続した同一値の最大の長さを減少させるために前記複数の符号化ビットを再配置するように構成されることを特徴とする請求項5に記載のエンコーダ。」
2 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である,平成30年10月22日付け拒絶理由のうちの理由1は,次のとおりのものである。
「1.(新規事項)平成29年10月27日付け手続補正書でした補正は、下記の点で外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
●理由1(新規事項)について
・請求項 6-8,10
請求項6、請求項10は、それぞれ、請求項5、請求項9を引用しているところ、前者(請求項6,10)は図8等に対応する発明であり、後者(請求項5,9)は図3等に対応する発明であり、明細書等でも異なる実施例として示されるものであり、それらを組み合わせることや、両技術をどのように関連させれば、同一値の長さの抑制に寄与するのか、また、どの程度効果が期待されるのか何ら開示がない。
また、請求項6を引用する請求項7,8についても同様である。」
3 当審の判断
本願発明は,エンコーダに係る発明であって,プロセッサは,「前記複数のデータビットに対するハミングコード符号化演算を用いて複数のパリティビットを計算し、このとき、前記パリティビットの第1パリティビットは偶数パリティを用いて計算し、前記パリティビットの第2パリティビットは奇数パリティを用いて計算し、前記符号化ビットは前記データビットとインターリービングされたパリティビットを含むように構成され」(「発明特定事項A」),「先頭の部分にある多数の前記複数の符号化データビットを前記符号化ビットの最後のビット以降に移動させることにより前記複数の符号化ビットを再配置する」(「発明特定事項B」)ことが特定されている。
そうすると,上記第2[理由]1(2)~(4)で検討したように,発明特定事項Aと発明特定事項Bを,ともに備えた実施形態は,当初明細書等には記載がなく,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,平成29年10月27日にされた手続補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり,平成29年10月27日にされた手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから,本件出願は,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2019-013178