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特許拒絶査定不服審判

2023-015637

符号化及び復号化のための符号化装置、復号化装置、システム及び方法

審判番号
2023-015637
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-088848外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月15日
審決日
2024年04月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .4 -Z (H03M) / P18 .561-Z (H03M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第39条、特許法第17条の2第3項、特許法第50条の2、特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 88848「符号化及び復号化のための符号化装置、復号化装置、システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月30日出願公開、特開2021-153305〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2015年(平成27年)7月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年7月28日 欧州特許庁)を国際出願日とする特願2017-504798号の一部を平成31年3月5日に新たな特許出願とした特願2019-39126号の一部を令和3年5月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 3年 5月27日 上申書

令和 4年 7月20日付け 拒絶理由通知書

(特許法50条の2の通知を伴う)

令和 5年 1月24日 意見書・手続補正書

5月 9日付け 補正の却下の決定

拒絶査定

9月15日 審判請求書・手続補正書

12月12日付け 前置報告書

以下では、令和5年5月9日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年9月15日の手続補正書による補正を「本件補正」という。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正前の特許請求の範囲は本願の出願当初のものであり、その記載は以下の(1)に示すとおりである。

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~4及び7の記載は、以下の(2)に示すとおりである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
デッドゾーンを使用して入力信号(140)を量子化し、複数の量子化済み値(142)を得るよう構成された量子化ステージ(102)と、
エントロピー符号化スキームを使用して前記複数の量子化済み値(142)を符号化し、複数のエントロピー符号化済み値(144)を得るよう構成されたエントロピー符号器(104)と、
前記量子化ステージ(102)に起因する残差信号を量子化するよう構成された残差量子化ステージ(106)であって、1つの非ゼロの量子化済み値について、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンに依存して、少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成された残差量子化ステージ(106)と、
続きを表示(全105行)
前記複数のエントロピー符号化済み値(144)と前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)とから符号化済み信号(148)を形成するよう構成された符号化済み信号形成部(108)と、
を含む符号化装置(100)。
【請求項2】
前記残差量子化ステージ(106)は、1つの非ゼロの量子化済み値について、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンの幅に依存して、少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成された、請求項1に記載の符号化装置(100)。
【請求項3】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンに依存して前記複数の量子化済み値(112)を逆量子化し、逆量子化済み入力信号(152)を得るよう構成された、逆量子化部(160)を備え、
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つの非ゼロの量子化済み値について1ビットを含むように、前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、前記入力信号(140)が前記逆量子化済み入力信号(152)より小さいとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値0を含むように決定し、それ以外のとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値1を含むように決定するよう構成された、請求項1又は2に記載の符号化装置(100)。
【請求項4】
前記残差量子化ステージ(106)は、
前記デッドゾーンに依存して前記複数の量子化済み値(142)を逆量子化し、逆量子化済み入力信号(152)を得るよう構成された逆量子化部(160)と、
前記入力信号(140)と前記逆量子化済み入力信号(152)とを比較するよう構成された比較部(162)とを備えた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の符号化装置(100)。
【請求項5】
前記比較部(162)は、前記入力信号(140)と前記逆量子化済み入力信号(152)とを比較し、前記残差信号(154)を得るよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、前記デッドゾーンに依存して前記残差信号(154)を量子化するよう構成された、
請求項4に記載の符号化装置(100)。
【請求項6】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つの非ゼロの量子化済み値について1ビットを含むように、前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージは、前記残差信号(154)が前記非ゼロの量子化済み値について負であるとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値0を含むように決定し、それ以外のとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値1を含むように決定するよう構成された、請求項5に記載の符号化装置(100)。
【請求項7】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つの非ゼロの量子化済み値について1ビットを含むように、前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、次のシンタックスに基づいて前記量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
[図:0001414954000001.jpg]
ここで、prmは前記量子化済み残差値(146)を使用して前記残差量子化ステージ(106)によって生成されたビットストリームであり、x[i]は前記入力信号(140)であり、x_Q[i]は前記逆量子化済み入力信号(152)であり、nは各非ゼロの量子化済み値について1ずつ増分されるインデックスであり、iは各得られた量子化済み値(142)について1ずつ増分されるインデックスである、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の符号化装置(100)。
【請求項8】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つのゼロの量子化済み値について2ビットを含むように、前記量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、次のシンタックスに基づいて前記量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
[図:0001414954000002.jpg]
ここで、Cは前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンに依存し、prmは前記量子化済み残差値(146)を使用して前記残差量子化ステージ(106)によって生成されたビットストリームであり、x[i]は前記入力信号(140)であり、x_Q[i]は前記逆量子化済み入力信号(152)であり、nはゼロの量子化済み値へ再量子化された各ゼロの量子化済み値について1ずつ増分され、非ゼロの量子化済み値へ再量子化された各ゼロの量子化済み値について2ずつ増分されるインデックスであり、iは各得られた量子化済み値(142)について1ずつ増分されるインデックスである、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の符号化装置(100)。
【請求項9】
前記符号化済み信号形成部(108)は、前記符号化済み信号(148)が復号器への伝送に利用可能な最大長を有するまで、前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)又は複数の量子化済み残差値(146)を前記複数のエントロピー符号化済み値(144)に付加することによって、前記符号化済み信号(148)を形成するよう構成されている、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の符号化装置(100)。
【請求項10】
前記符号化済み信号形成部(108)は、前記符号化済み信号(148)としてビットストリームを提供するよう構成され、前記符号化済み信号形成部(108)は、前記複数のエントロピー符号化済み値(144)と前記複数の量子化済み残差値(146)とから前記ビットストリームを形成するよう構成され、
前記符号化済み信号形成部(108)は、前記量子化済み残差値(146)を前記エントロピー符号化済み値(144)に付加するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、
残差量子化部(106')と、
前記複数の量子化済み値(142)を得るために前記量子化ステージ(102)で使用された前記デッドゾーンの幅に依存して、前記残差信号を量子化するよう前記残差量子化部(106')を制御する調整部(164)と、を備え、
前記調整部(164)は、目標ビット数と消費ビット数とを得るよう構成され、
前記調整部(164)は、前記ビットストリームが前記目標ビット数を含む場合に、量子化済み残差値の決定を停止するよう前記残差量子化ステージを制御するよう構成された、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の符号化装置(100)。
【請求項11】
符号化済み信号(148)を解析して、複数のエントロピー符号化済み値(144)と少なくとも1つの量子化済み残差値(146)とを得るよう構成された、符号化済み信号解析部(122)と、
エントロピー復号化スキームを用いて前記複数のエントロピー符号化済み値(144)を復号化し、複数の量子化済み値(142)を得るよう構成された、エントロピー復号器(124)と、
前記複数の量子化済み値(142)を逆量子化して出力信号(150)を得るよう構成された、逆量子化ステージ(126)と、を含み、
前記逆量子化ステージ(126)は、前記量子化済み残差値(146)とデッドゾーンとに依存して、前記出力信号(150)を得るために使用された逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、
復号化装置(120)。
【請求項12】
前記逆量子化ステージ(126)は、量子化済み残差値(146)と前記デッドゾーンの幅とに依存して、非ゼロの量子化済み値についての逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、
請求項11に記載の復号化装置(120)。
【請求項13】
前記逆量子化ステージ(126)は、前記デッドゾーンに依存して微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定することによって、前記逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、
請求項11又は12に記載の復号化装置(120)。
【請求項14】
前記逆量子化ステージ(126)は、1つの非ゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、
前記逆量子化ステージ(126)は、量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成された、
請求項13に記載の復号化装置(120)。
【請求項15】
前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値をある増加値によって増大させ、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るよう構成され、
前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値をある減少値によって減少させ、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(174)を得るよう構成され、
前記増加値と前記減少値とは互いに異なる、
請求項14に記載の復号化装置(120)。
【請求項16】
前記逆量子化ステージ(126)は、次の2つのファクタに基づいて、1つの非ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、
fac_p = 0,25 * dz
fac_m = 0,5 * (1 - 0,5 * dz)
ここで、fac_pは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値を示し、fac_mは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅である、
請求項14又は15に記載の復号化装置(120)。
【請求項17】
前記逆量子化ステージ(126)は、1つのゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、
前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)と前記量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つとを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成された、
請求項13乃至16の何れか1項に記載の復号化装置(120)。
【請求項18】
前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値をある増加値によって増大させ、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るよう構成され、
前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値をある減少値によって減少させ、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(174)を得るよう構成された、
請求項17に記載の復号化装置(120)。
【請求項19】
前記逆量子化ステージ(126)は、次のファクタに基づいて、前記ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、
fac_z = dz / 3
ここで、fac_zは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値、及び、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅である、
請求項17又は18に記載の復号化装置(120)。
【請求項20】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の符号化装置(100)と、
請求項11乃至19の何れか1項に記載の復号化装置(120)とを含む、システム。
【請求項21】
入力信号を量子化し、複数の量子化済み値を得るステップ(202)と、
エントロピー符号化スキームを使用して前記複数の量子化済み値を符号化し、複数のエントロピー符号化済み値を得る符号化ステップ(204)と、
前記量子化ステージによる量子化に起因する残差信号を量子化(206)し、前記量子化ステージの前記デッドゾーンに依存して、複数の量子化済み残差値を決定するステップと、
前記複数のエントロピー符号化済み値と前記複数の量子化済み残差値とからビットストリームを形成するステップ(208)と、
を含む符号化方法(200)。
【請求項22】
符号化済み信号を解析(222)して、複数のエントロピー符号化済み値と1つの量子化済み残差値とを得るステップと、
エントロピー復号化スキームを用いて前記複数のエントロピー符号化済み値を復号化(224)し、複数の量子化済み値を得るステップと、
前記複数の量子化済み値を逆量子化(226)し、出力信号を得るステップと、
デッドゾーンと前記量子化済み残差値とに依存して、前記出力信号を得るために使用された逆量子化レベルを微細化(228)するステップと、
を含む復号化方法(220)。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。」

(2)本件補正後の請求項1~4及び7の記載

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~4及び7の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す目的で請求人が付したものである。

「 【請求項1】
デッドゾーンを使用して入力信号(140)を量子化し、複数の量子化済み値(142)を得るよう構成された量子化ステージ(102)と、
エントロピー符号化スキームを使用して前記複数の量子化済み値(142)を符号化し、複数のエントロピー符号化済み値(144)を得るよう構成されたエントロピー符号器(104)と、
前記量子化ステージ(102)に起因する残差信号を量子化するよう構成された残差量子化ステージ(106)であって、1つの非ゼロの量子化済み値について、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンの幅に依存して、少なくとも1つの量子化済み残差値(146)と残差量子化セルの幅を決定するよう構成された残差量子化ステージ(106)と、
続きを表示(全24行)
前記複数のエントロピー符号化済み値(144)と前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)とから符号化済み信号(148)を形成するよう構成された符号化済み信号形成部(108)と、
を含み、
前記入力信号(140)はオーディオ信号である、オーディオ符号化装置(100)。
【請求項2】
前記残差量子化ステージ(106)は、1つの非ゼロの量子化済み値について、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンの幅に依存して、少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成された、請求項1に記載のオーディオ符号化装置(100)。
【請求項3】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンに依存して前記複数の量子化済み値(112)を逆量子化し、逆量子化済み入力信号(152)を得るよう構成された、逆量子化部(160)を備え、
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つの非ゼロの量子化済み値について1ビットを含むように、前記少なくとも1つの量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、前記入力信号(140)が前記逆量子化済み入力信号(152)より小さいとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値0を含むように決定し、それ以外のとき、前記非ゼロの量子化済み値について、前記量子化済み残差値(146)が論理値1を含むように決定するよう構成された、請求項1又は2に記載のオーディオ符号化装置(100)。
【請求項4】
前記残差量子化ステージ(106)は、
前記デッドゾーンに依存して前記複数の量子化済み値(142)を逆量子化し、逆量子化済み入力信号(152)を得るよう構成された逆量子化部(160)と、
前記入力信号(140)と前記逆量子化済み入力信号(152)とを比較するよう構成された比較部(162)とを備えた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のオーディオ符号化装置(100)。
【請求項7】
前記残差量子化ステージ(106)は、前記量子化済み残差値(146)が1つのゼロの量子化済み値について2ビットを含むように、前記量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
前記残差量子化ステージ(106)は、次のシンタックスに基づいて前記量子化済み残差値(146)を決定するよう構成され、
[図:0001414954000003.jpg]
ここで、Cは前記量子化ステージ(102)の前記デッドゾーンに依存し、prmは前記量子化済み残差値(146)を使用して前記残差量子化ステージ(106)によって生成されたビットストリームであり、x[i]は前記入力信号(140)であり、x_Q[i]は前記逆量子化済み入力信号(152)であり、nはゼロの量子化済み値へ再量子化された各ゼロの量子化済み値について1ずつ増分され、非ゼロの量子化済み値へ再量子化された各ゼロの量子化済み値について2ずつ増分されるインデックスであり、iは各得られた量子化済み値(142)について1ずつ増分されるインデックスである、
請求項3又は4に記載のオーディオ符号化装置(100)。」

2 本件補正の新規事項追加の有無

本件補正後の請求項7に係る発明は、「符号化装置」の発明であって、「量子化済み残差値(146)」を次のシンタックス(以下「本件補正シンタックス」)に基づいて決定するものである。

[図:0001414954000004.jpg]

しかしながら、本願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」)には、符号化装置として、本件補正シンタックスに基づいて量子化済み残差値を決定するものは記載されていない。より詳細には、以下のとおりである。

当初明細書等の請求項8には、「符号化装置」であって、「量子化済み残差値(146)」を次のシンタックスに基づいて決定するものが記載されているものの、

[図:0001414954000005.jpg]

上記シンタックスは本件補正シンタックスとは異なるものである。

また、当初明細書等には、次の記載がある。

「【0050】
次に、逆Qrは以下のように表現され得る。
[図:0001414954000006.jpg]
」

上記記載には本件補正シンタックスがあるが、本件補正シンタックスは「逆Qr」の表現として記載されている。

他方、当初明細書等には、「第1の主たる問題は、第1量子化ステージ102を既知としている最適なQr(残差量子化ステージ106の関数)をどのようにして得るかである。」(【0040】、下線は強調のために当審で付した。以下同様。)との記載、及び、「残差量子化ステージ106によって実行される残差量子化Qrは、以下のように要約される。」(【0049】)との記載があり、「Qr」が残差量子化ステージ106の関数であると解されることから、「逆Qr」は、残差量子化ステージ106の関数の逆関数であると解される。

そして、当初明細書等の「符号器100は、量子化ステージ102(例えば第1量子化ステージ)、エントロピー符号器104、残差量子化ステージ106(例えば第2量子化ステージ)、及び符号化済み信号形成部108を含む。」(【0023】)との記載、及び、「この復号器120は、符号化済み信号解析部(coded signal parser)122と、エントロピー復号器124と、逆量子化ステージ126とを含む。」(【0030】)との記載によれば、「残差量子化ステージ106」は「符号器」の構成であり、「逆量子化ステージ126」は「復号器」の構成であると解され、「残差量子化ステージ106」と「逆量子化ステージ126」とは逆の動作を行うと解される。

そうすると、当初明細書等には、本件補正シンタックスが「逆Qr」の表現として記載されており、「逆Qr」は「Qr」の逆であるから、「逆Qr」は、「残差量子化ステージ106」とは逆の処理を行う「逆量子化ステージ126」の処理を表現するものであると解され、「符号器」ではなく「復号器」の構成であると解される。要するに、本件補正シンタックスは、復号器の構成として開示されてはいるが、符号器の構成としては開示されていない。

当初明細書等の他の記載を参照し、技術常識を踏まえても、「逆Qr」は「復号器」の構成であるとしか解することができず、「逆Qr」が「符号器」の構成であることは導き得ない。

以上によれば、本件補正シンタックスを含む「符号化装置」である本件補正後の請求項7に係る発明は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項とは認められないから、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものと認められる。よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず、特許法17条の2第3項の規定に違反する。

3 本件補正についてのむすび

前記2によれば、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明

本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項11を引用する請求項12を引用する請求項13を引用する請求項14を引用する請求項16を引用する請求項17を引用する請求項19に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示す請求項11~14、16、17及び19に記載されたとおりのものである。なお、後の参照の便宜のため、本願発明を以下の11A~19Bに分説し、「発明特定事項11A」のようにして参照する。

【請求項11】

11A 符号化済み信号(148)を解析して、複数のエントロピー符号化済み値(144)と少なくとも1つの量子化済み残差値(146)とを得るよう構成された、符号化済み信号解析部(122)と、

11B エントロピー復号化スキームを用いて前記複数のエントロピー符号化済み値(144)を復号化し、複数の量子化済み値(142)を得るよう構成された、エントロピー復号器(124)と、

11C 前記複数の量子化済み値(142)を逆量子化して出力信号(150)を得るよう構成された、逆量子化ステージ(126)と、を含み、

11D 前記逆量子化ステージ(126)は、前記量子化済み残差値(146)とデッドゾーンとに依存して、前記出力信号(150)を得るために使用された逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、

11E 復号化装置(120)。

【請求項12】

12A 前記逆量子化ステージ(126)は、量子化済み残差値(146)と前記デッドゾーンの幅とに依存して、非ゼロの量子化済み値についての逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、

12B 請求項11に記載の復号化装置(120)。

【請求項13】

13A 前記逆量子化ステージ(126)は、前記デッドゾーンに依存して微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定することによって、前記逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成された、

13B 請求項11又は12に記載の復号化装置(120)。

【請求項14】

14A 前記逆量子化ステージ(126)は、1つの非ゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

14B 前記逆量子化ステージ(126)は、量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成された、

14C 請求項13に記載の復号化装置(120)。

【請求項16】

16A 前記逆量子化ステージ(126)は、次の2つのファクタに基づいて、1つの非ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

fac_p = 0,25 * dz

fac_m = 0,5 * (1 - 0,5 * dz)

ここで、fac_pは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値を示し、fac_mは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅である、

16B 請求項14又は15に記載の復号化装置(120)。

【請求項17】

17A 前記逆量子化ステージ(126)は、1つのゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

17B 前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)と前記量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つとを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成された、

17C 請求項13乃至16の何れか1項に記載の復号化装置(120)。

【請求項19】

19A 前記逆量子化ステージ(126)は、次のファクタに基づいて、前記ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

fac_z = dz / 3

ここで、fac_zは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値、及び、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅である、

19B 請求項17又は18に記載の復号化装置(120)。

第4 原査定の概要

原査定の理由の概要は、以下のとおりである。

1.(同日出願)この出願の請求項19に係る発明は、同日出願された特願2017-504798号(特許第6494741号、以下「同日出願」)の請求項6に係る発明(以下「同日発明」)と同一と認められ、かつ、同日出願の請求項6に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法39条2項の規定により特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1~9及び11~23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された米国特許出願公開第2007/0147497号明細書に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項6~10、16~21及び23の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

第5 同日発明

同日発明は、次のとおりのものと認める。なお、後の参照の便宜のため、同日発明を以下の6a~6lに分説し、「発明特定事項6a」のようにして参照する。

【請求項6】

6a 符号化済み信号(148)を解析して、複数のエントロピー符号化済み値(144)と少なくとも1つの量子化済み残差値(146)とを得るよう構成された、符号化済み信号解析部(122)と、

6b エントロピー復号化スキームを用いて前記複数のエントロピー符号化済み値(144)を復号化し、複数の量子化済み値(142)を得るよう構成された、エントロピー復号器(124)と、

6c 前記複数の量子化済み値(142)を逆量子化して出力信号(150)を得るよう構成された、逆量子化ステージ(126)と、を含む

6d 復号化装置であって、

6e 前記逆量子化ステージ(126)は、前記量子化済み残差値(146)に依存して、前記出力信号(150)を得るために使用された逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成され、

6f 前記逆量子化ステージ(126)は、前記量子化済み残差値(146)とデッドゾーンの幅とに依存して、非ゼロの量子化済み値についての逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成され、

6g 前記逆量子化ステージ(126)は、前記デッドゾーンに依存して微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定することによって、前記逆量子化レベル(172)を微細化するよう構成され、

6h 前記逆量子化ステージ(126)は、1つの非ゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、前記逆量子化ステージ(126)は、量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成され、

6i 前記逆量子化ステージ(126)は、次の2つのファクタに基づいて、1つの非ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

fac_p = 0,25 * dz

fac_m = 0,5 * (1 - 0,5 * dz)

ここで、fac_pは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値を示し、fac_mは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅であり、

6j 前記逆量子化ステージ(126)は、1つのゼロの量子化済み値について2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、前記逆量子化ステージ(126)は、前記逆量子化レベル(172)と前記量子化済み残差値によって示された前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)からの1つとを使用して、前記出力信号(150)を得るよう構成され、

6k 前記逆量子化ステージ(126)は、次のファクタに基づいて、前記ゼロの量子化済み値について前記2つの微細化済み逆量子化レベル(174、176)を決定するよう構成され、

fac_z = dz / 3

ここで、fac_zは、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第1レベル(174)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が増加されるべき、正規化された絶対値、及び、前記2つの微細化済み逆量子化レベルの第2レベル(176)を得るために、前記逆量子化レベル(172)の正規化された絶対値が減少されるべき、正規化された絶対値を示し、dzは前記デッドソーンの正規化された幅である、

6l 復号化装置(120)。

第6 本願発明と同日発明との対比及び当審の判断

本願発明と同日発明とを対比すると、以下の1~3のとおりであり、当審の判断は以下の4のとおりである。

1 違いが表現の微差にとどまる発明特定事項

発明特定事項11Aと発明特定事項6aとは、互いに同一である。

発明特定事項11Bと発明特定事項6bとは、互いに同一である。

発明特定事項11Cと発明特定事項6cとは、語尾が連用形であるか連体形であるかにおいて異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項12Aと発明特定事項6fとは、「量子化済み残差値(146)」及び「デッドゾーン」の前に「前記」があるか否か、及び、語尾の助動詞「た」の有無において異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項13Aと発明特定事項6gとは、語尾の助動詞「た」の有無において異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項14A及び14Bと、発明特定事項6hとは、途中の改行の有無、及び、語尾の助動詞「た」の有無において異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項16Aと発明特定事項6iとは、数式の前の空白の有無、及び、語尾が連体形であるか連用形であるかにおいて異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項17A及び17Bと、発明特定事項6jとは、途中の改行の有無、及び、語尾の助動詞「た」の有無において異なるが、特定される事項に違いはないため、互いに同一である。

発明特定事項19Aと発明特定事項6kとは、互いに同一である。

以上によれば、発明特定事項11A、11B、11C、12A、13A、14A及び14B、16A、17A及び17B、並びに、19Aにより特定される事項は、それぞれ、発明特定事項6a、6b、6c、6f、6g、6h、6i、6j及び6kにより特定される事項と、互いに同一である。

2 発明特定事項11D及び6e

発明特定事項11Dと発明特定事項6eとは、語尾の助動詞「た」の有無において異なる他、発明特定事項11Dにおいては「逆量子化レベル(172)を微細化する」ことが「デッドゾーン」に依存することを特定しているのに対し、発明特定事項6eにおいては「逆量子化レベル(172)を微細化する」ことが「デッドゾーン」に依存することが特定されていない点において相違する。

しかしながら、同日発明においては、発明特定事項6gにおいて、「デッドゾーンに依存して」「逆量子化レベル(172)を微細化する」ことが特定され、発明特定事項13Aは発明特定事項6gと同一の事項を特定しているから、発明特定事項6e及び6gを合わせ読んだものと、発明特定事項11D及び13Aを合わせ読んだものとは、互いに同一の事項を特定している。

したがって、発明特定事項6eにおいて「逆量子化レベル(172)を微細化する」ことが「デッドゾーン」に依存することが特定されていない点は、本願発明と同日発明との相違点にはならない。

3 「復号化装置(120)」

発明特定事項11E、12B、13B、14C、16B、17C及び19Bは、合わせて、「復号化装置(120)」が発明特定事項11A、11B、11C、11D、12A、13A、14A、14B、16A、17A、17B及び19Bにより特定される事項を備えることを特定するものである。

他方、発明特定事項6d及び6lは、合わせて、「復号化装置(120)」が発明特定事項6a、6b、6c、6e、6f、6g、6h、6i、6j及び6kにより特定される事項を備えることを特定するものである。

そうすると、前記1及び2によれば、発明特定事項11A~19Bにより特定される本願発明と、発明特定事項6a~6kにより特定される同日発明とは、互いに同一である。

4 当審の判断

前記3のとおり、本願発明と同日発明とは同一の発明である。また、本願の出願日と、同日出願の出願日とは、同日である。そうすると、本願発明及び同日発明という同一の発明について、本願の出願日に2つの特許出願(本願及び同日出願)があったと認められる。

そして、同日出願は既に特許されているため、特許法39条2項に定める協議をすることができない。

以上によれば、本願発明は特許法39条2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 むすび

前記第6、4のとおり、本願発明は、特許法39条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-015637

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