特許拒絶査定不服審判
2019-002231
空気調和機
- 審判番号
- 2019-002231
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-557939外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月19日
- 審決日
- 2020年01月06日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 分類
- P18 .121-Z (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-557939「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2018年1月31日を国際出願日とする出願であって、平成30年11月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年1月8日付け(発送日:平成31年1月15日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年12月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項2】
室内機からの冷媒漏洩を検知する漏洩検知手段と、
冷媒漏洩を報知する漏洩報知手段であって、使用者の聴覚に訴える音発信部を備える漏洩報知手段と、
前記音発信部による報知を停止する報知停止手段と、
通常の空調運転時に前記空調運転の起動・停止操作を行う起動操作部とを備え、
前記起動操作部は、前記漏洩報知手段の動作中は前記空調運転の起動・停止機能が停止するとともに、前記報知停止手段として機能する
ことを特徴とする空気調和機。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
(1)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項1、3-4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2015-94515号公報
引用文献2:特開2016-125673号公報
4 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2015-94515号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、一旦、発報が開始されると、サービス業者が到着して対応するまで、発報を停止することができなかった。特に、発報の形態がブザーのような音出力であって、このような発報が夜中に長時間実行されると、周囲への騒音被害の原因となり、ユーザの不満が増幅されていた。
【0005】
本発明の課題は、冷媒漏洩の発生に基づいて開始される発報を、ユーザが任意に停止できる室内機を提供することである。」
(1-b)「【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る室内機の前方からみた断面図である。図2は、第1実施形態に係る室内機の右側方からみた断面図である。図1と図2に示すように、この室内機1は、ケーシング2と、熱交換器3と、ファン4と、制御装置5と、検知センサ6と、ブザー7と、運転ランプ9と、操作パネル11とを備える。室内機1は、室内に配置される。室内機1は、図示しない室外機と接続されて、空気調和機を構成する。」
(1-c)「【0023】
上記検知センサ6は、ケーシング2内に取り付けられている。検知センサ6は、ケーシング2の下部に位置し、熱交換器3よりも下側に位置する。検知センサ6は、空気中における冷媒の濃度を検知して、室内機1からの冷媒の漏洩を検知する。検知センサ6は、例えば、半導体式フロンセンサである。なお、検知センサ6としては、赤外線吸収型センサなどの他の公知のセンサであってもよい。」
(1-d)「【0029】
上記運転停止ボタン13は、押しボタン式のスイッチであり、手動の操作に基づいて上記制御装置5に室内機1の運転の停止指令を入力する入力装置である。ここで、室内機1の運転は、図示せぬ圧縮機の作動、ファン4の作動、および運転ランプ9の作動を意味している。」
(1-e)「【0031】
図3は、第1実施形態に係る冷媒漏洩の発報に関連する制御機構を示す制御ブロック図である。制御装置5は、検知センサ6からの出力信号に基づいて、室内機1内の熱交換器3および/または冷媒配管からの冷媒の漏洩が発生しているか否かを判定する。制御装置5が冷媒の漏洩が発生していると判定した場合、制御装置5は、冷媒が空気中で拡散するようにファン4を作動させ、冷媒の漏洩をユーザに発報するために発報装置としてのブザー7および運転ランプ9を作動させる。このとき、ブザー7は警告音を出力し、運転ランプ9は点滅を繰り返す。ブザー7が警告音を出力しているときにブザー停止ボタン12が押されると、制御装置5はブザー7の作動を停止させる。一方、ファン4および運転ランプ9が作動しているときに運転停止ボタン13が押されても、制御装置5は、運転停止ボタン13の操作によるファン4の停止指令および運転ランプ9の停止指令を無視し、ファン4の作動および運転ランプ9の作動を継続させる。具体的な処理フローを、以下で説明する。」
(1-f)「【0065】
上記実施形態では、操作装置は、ブザーを停止させるブザー停止ボタンと、ファンおよび運転ランプを停止させる運転停止ボタンとを備えている。操作装置は、ブザー、ファン、および運転ランプのそれぞれに対応する3つの専用ボタンを備えてもよければ、ブザー、ファン、および運転ランプのすべてに対応する1つのボタンを備えてもよい。操作装置と、ファンおよび発報装置との対応については限定されるものではない。」
そして、上記(1-f)は、ブザー停止ボタンと運転停止ボタンを1つのボタンとしてもよいことを意味している。
よって、上記(1-a)~(1-f)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「室内機1からの冷媒の漏洩を検知する検知センサ6と、
冷媒の漏洩をユーザに発報するための発報装置としての、警告音を出力するブザー7と運転ランプ9と、
ブザー7の作動を停止するブザー停止ボタンと、
室内機1の運転の停止指令を入力する運転停止ボタンと、
制御装置5とを備え、
ここで、室内機1の運転は、圧縮機の作動、ファン4の作動、および運転ランプ9の作動を意味し、
冷媒の漏洩が発生していると判定した場合、制御装置5は、冷媒が空気中で拡散するようにファン4を作動させ、冷媒の漏洩をユーザに発報するために発報装置としてのブザー7および運転ランプ9を作動させ、ブザー7が警告音を出力しているときにブザー停止ボタンが押されると、制御装置5はブザー7の作動を停止させ、ファン4および運転ランプ9が作動しているときに運転停止ボタンが押されても、制御装置5は、運転停止ボタンの操作によるファン4の停止指令および運転ランプ9の停止指令を無視し、
ブザー停止ボタン及び運転停止ボタンを1つのボタンとした空気調和機。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「室内機1からの冷媒の漏洩を検知する検知センサ6」は、本願発明の「室内機からの冷媒漏洩を検知する漏洩検知手段」に相当する。
イ 引用発明の「ブザー7」は、本願発明の「使用者の聴覚に訴える音発信部」に相当する。
よって、引用発明の「冷媒の漏洩をユーザに発報するための発報装置としての、警告音を出力するブザー7と運転ランプ9」は、本願発明の「冷媒漏洩を報知する漏洩報知手段であって、使用者の聴覚に訴える音発信部を備える漏洩報知手段」に相当する。
ウ 引用発明の「ブザー7の作動を停止するブザー停止ボタン」は、本願発明の「音発信部による報知を停止する報知停止手段」に相当する。
エ 引用発明の「室内機1の運転」とは通常の空調運転を意味することは明らかである。
よって、引用発明の「室内機1の運転の停止指令を入力する運転停止ボタン」と、本願発明の「通常の空調運転時に前記空調運転の起動・停止操作を行う起動操作部」とは、「通常の空調運転時に前記空調運転の停止操作を行う操作部」である点で共通する。
オ 引用発明の「冷媒の漏洩が発生していると判定した場合、制御装置5は、冷媒が空気中で拡散するようにファン4を作動させ、冷媒の漏洩をユーザに発報するために発報装置としてのブザー7および運転ランプ9を作動させ、ブザー7が警告音を出力しているときにブザー停止ボタンが押されると、制御装置5はブザー7の作動を停止させ、ファン4および運転ランプ9が作動しているときに運転停止ボタンが押されても、制御装置5は、運転停止ボタンの操作によるファン4の停止指令および運転ランプ9の停止指令を無視」する点は、発報装置が作動しているときに運転停止ボタンが押されてもファン4の運転を停止しないことを意味するから、本願発明の「操作部は、漏洩報知手段の動作中は空調運転の停止機能が停止する」点に相当し、引用発明の「ブザー停止ボタン及び運転停止ボタンを1つのボタンとした」点は、運転停止ボタンがブザー停止ボタンとして機能するともいえるので、本願発明の「操作部は」「報知停止手段として機能する」点に相当する。
よって、引用発明の「冷媒の漏洩が発生していると判定した場合」、「運転停止ボタンの操作によるファン4の停止指令および運転ランプ9の停止指令を無視し」、「ブザー停止ボタン及び運転停止ボタンを1つのボタンとした」点は、本願発明の「起動操作部は、漏洩報知手段の動作中は空調運転の起動・停止機能が停止するとともに、報知停止手段として機能する」点と、「操作部は、漏洩報知手段の動作中は空調運転の停止機能が停止するとともに、報知停止手段として機能する」点において共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「室内機からの冷媒漏洩を検知する漏洩検知手段と、
冷媒漏洩を報知する漏洩報知手段であって、使用者の聴覚に訴える音発信部を備える漏洩報知手段と、
前記音発信部による報知を停止する報知停止手段と、
通常の空調運転時に前記空調運転の停止操作を行う操作部とを備え、
前記操作部は、前記漏洩報知手段の動作中は前記空調運転の停止機能が停止するとともに、前記報知停止手段として機能する
ことを特徴とする空気調和機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
操作部が、本願発明では、空調運転の起動・停止操作を行う起動操作部であり、空調運転の起動・停止機能を有するのに対し、引用発明では、運転の停止指令を入力する運転停止ボタンである点。
6 判断
ア 上記相違点について検討する。
空気調和機の技術分野において、起動及び停止を共通の操作部により行うことは慣用技術にすぎない。
上記慣用技術を踏まえると、引用発明の「運転停止ボタン」により、起動操作も行うことは自然な発想である。そして、運転停止ボタンにより起動操作を行うこととしても、ブザー7の作動を停止する機能には特に支障はない。
よって、引用発明の「運転停止ボタン」を起動・停止操作を行う起動操作部とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 本願発明が奏する効果について
上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び慣用技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(3)本願発明と引用発明との対比」において、「引用発明1の解決課題は、冷媒漏洩に起因する発報をユーザが任意に停止できる室内機を提供することである(段落0005)。即ち、引用発明1の解決課題は、「冷媒漏洩」という通常の空調運転では想定されない状況で発生するものである。一方で、上記慣用技術である「空気調和機の起動及び運転停止を共通の操作部で行う」ことは、通常の空調運転時に行われるものであって、仮に慣用技術であるとしても、あくまで「通常の空調運転時における慣用技術」に過ぎない。そして「空気調和機の起動及び運転停止を共通の操作部で行う」ことは、例えば「通常使用時に使用者の利便性が高まる」といった目的で通常の空調運転時に為されるものであって、引用発明1のような「冷媒漏洩時に生じる発報の停止」を目的として為されるものではない。
従って、引用発明1の解決課題と、上記慣用技術の目的とは、対象となる状況が全く異なる。具体的には、引用発明1の解決課題は冷媒漏洩時に生じる課題であり、慣用技術の目的は、冷媒漏洩が生じていない通常の空調運転時における利便性の向上等である。そして、制御をできるだけ簡略化しようとすることが当業者にとっての技術常識である。そのため、別の課題や目的で行われる慣用技術を引用発明1に敢えて適用し、制御を複雑化しようとは、考えないはずである。」と主張する。
しかしながら、上記6アにおける慣用技術は、空気調和機の技術分野において慣用されている技術であることから、一般的に当該慣用技術を採用する動機付けが認められる。
そして、引用発明は、空気調和機を操作するための操作部を有しており、慣用技術は、同様の操作部に関するものであって、引用発明の課題解決の妨げになるものでもないから、引用発明を慣用技術を踏まえた構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-002231