特許拒絶査定不服審判
2023-005800
空気調和機の室外機
- 審判番号
- 2023-005800
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-549751
- 請求日
- 2023年04月10日
- 審決日
- 2024年03月25日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 村山 美保
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-WY (F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-549751「空気調和機の室外機」拒絶査定不服審判事件〔2023年11月2日国際公開、WO2023/209957、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、2022年(令和4年)4月28日を国際出願日とする出願であって、同年8月18日に上申書が提出されるとともに手続補正がされ、同年11月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和5年3月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。
これに対し、令和5年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1、3~11に対して 引用文献1~7
・請求項2に対して 引用文献1~4、6~7
引用文献等一覧
1.国際公開第2020/250801号
2.特開2018-4230号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013-29242号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2022/064936号(周知技術を示す文献)
5.特開2004-156814号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2018-98560号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2014-96717号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
令和5年4月10日にした手続補正は適法になされたものである。
よって、本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和5年4月10日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
金属を主成分とする室外機の筐体と、
金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバーと、
電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記筐体に直接に固定される支持部と、
前記筐体に前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部と、を有し、
前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、
前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている空気調和機の室外機。
【請求項2】
金属を主成分とする室外機の筐体と、
金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバーと、
電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記メンテナンスカバーに直接に固定される支持部と、
前記メンテナンスカバーに前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部と、を有し、
前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、
前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている空気調和機の室外機。
【請求項3】
前記NFCアンテナから前記室外機の外面までの距離は前記NFCアンテナの通信距離より短いことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。
【請求項4】
前記NFCアンテナから前記室外機の外面までの距離は前記NFCアンテナの通信距離より短いことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項5】
前記NFCアンテナから前記室外機の外面までの距離は、前記NFCアンテナの通信距離の半分より短いことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の空気調和機の室外機。
【請求項6】
前記開口を65mm×65mm以上の寸法、かつ、前記NFCアンテナと前記NFCアンテナの背面側に搭載される板金との距離を20mm以上確保し、前記NFCアンテナの通信距離は40mm以上であり、
前記NFC基板から前記室外機の外面までの距離は40mm未満であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の空気調和機の室外機。
【請求項7】
前記NFCアンテナから前記樹脂カバーまでの距離は、前記筐体の前記支持部を固定する部分から前記NFCアンテナまでの距離より短いことを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の室外機。
【請求項8】
前記NFCアンテナから前記樹脂カバーまでの距離は、前記メンテナンスカバーの前記支持部を固定する部分から前記NFCアンテナまでの距離より短いことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機の室外機。
【請求項9】
前記筐体は、前記樹脂カバーが設けられた第1の面と、前記第1の面を前面とした場合に側面となる第2の面とを有し、
前記NFCアンテナから前記樹脂カバーまでの距離は、前記NFCアンテナから前記第2の面までの距離より短いことを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の室外機。
【請求項10】
前記樹脂カバーが設けられた前記メンテナンスカバーを第1の面とすると、前記筐体は前記第1の面を前面とした場合に側面となる第2の面を有し、
前記NFCアンテナから前記樹脂カバーまでの距離は、前記NFCアンテナから前記第2の面までの距離より短いことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機の室外機。
【請求項11】
前記樹脂カバーはNFC通信用の情報端末をタッチするタッチ部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の空気調和機の室外機。」
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2020/250801号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)
ア 「[0029]
図2~図4に示すように、ケーシング(20)内における点検扉(22)の裏側には電装品箱(23)が配置される。電装品箱(23)の前面部(23a)は、全体が樹脂で構成される。前面部(23a)は、図2および図3における手前側の面(あるいは、点検扉(22)側の面)を形成する部分である。電装品箱(23)の前面部(23a)以外の部分は、樹脂で構成されていてもよいし、樹脂以外の材料(例えば、金属)で構成されていてもよい。電装品箱(23)の内部には、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)が収容される。なお、電装品箱(23)の前面部(23a)は、アンテナ(30)と向かい合う部分だけが樹脂で構成されていてもよい。
[0030]
-実施形態1の効果1-
本実施形態の空気調和装置の室外機(10)は、ケーシング(20)と、上記ケーシング(20)に設けられ、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)とを備え、上記ケーシング(20)は、金属製のケーシング本体(21)と、上記ケーシング本体(21)に取り付けられる樹脂部材(22、24~26)とを有し、上記アンテナ(30)は、上記樹脂部材(22、24~26)の裏側に配置される。
[0031]
したがって、ケーシング(20)に設けられるアンテナ(30)は、金属製のケーシング本体(21)ではなく、樹脂部材(22、24~26)またはその裏に設けられる。このため、基地局(2)との通信が金属製のケーシング本体(21)に妨げられにくい。換言すると、アンテナ(30)を樹脂部材(22、24~26)の裏側に配置することにより、基地局(2)との良好な通信を実現できる。このように、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)の配置を最適化できる。
[0032]
-実施形態1の効果2-
本実施形態の空気調和装置の室外機(10)は、上記ケーシング(20)内における上記点検扉(22)の裏側に配置され、該点検扉(22)側の側面の少なくとも一部が樹脂で構成された電装品箱(23)を備え、上記アンテナ(30)は、上記電装品箱(23)に収容される。
[0033]
したがって、アンテナ(30)が電装品箱(23)に収容され、電装品箱(23)はさらにケーシング(20)内における点検扉(22)の裏側に配置される。電装品箱(23)の点検扉(22)側の側面の少なくとも一部と、点検扉(22)とが樹脂で構成される。アンテナ(30)が送受信する電波は、これらの樹脂で構成された部分を実質的に減衰せずに通過する。」
イ 図4
「
[図:0001408829000001.jpg]
」
ウ 上記アの段落[0029]に記載された「基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)」は、通信するための部材である。そして、装置に通信機能をもたせるために、アンテナとアンテナ以外の電子部品とにより通信ユニット部を構成することは技術常識であるから、電装品箱(23)には、アンテナ(30)を有する通信ユニット部が収容されているということができる。
エ 上記アの段落[0030]の「上記ケーシング本体(21)に取り付けられる樹脂部材(22、24~26)とを有し、上記アンテナ(30)は、上記樹脂部材(22、24~26)の裏側に配置される」との記載と、図4とから、ケーシング本体(21)に、アンテナが配置される部分に開口を設け、当該開口に樹脂部材を取り付けたことが把握される。
以上の事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「金属製の室外機(10)のケーシング本体(21)と、
ケーシング本体(21)内に配置された電装品箱(23)の内部に収容される通信ユニット部と、を有し、
通信ユニット部は、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)を有し、
室外機(10)のケーシング本体(21)は、アンテナ(30)が配置される部分に開口が設けられ、開口は樹脂部材が取り付けられた空気調和装置の室外機(10)。」
(2)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2018-4230号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0054】
再び図1ないし4を参照して、筐体2の左フロントピラー50Lと右フロントピラー50Rとの間がメンテナンス用の正面開口部2A(図4参照)となる。したがって、この正面開口部2Aにサービスパネル70が取り付けられる。
【0055】
サービスパネル70は、正面開口部2Aの上部側を閉塞する上部サービスパネル70Aと、正面開口部2Aの下部側を閉塞する下部サービスパネル70Bとを有する2枚のパネル材からなる。
【0056】
上部サービスパネル70Aおよび下部サービスパネル70Bは、ほぼ正方形状の金属製パネルからなる。上部サービスパネル70Aおよび下部サービスパネル70Bの左端(図1では左端)は、左フロントピラー50Lの第2フランジ部53にネジ止めされている。上部サービスパネル70Aおよび下部サービスパネル70Bの右端(図1では右端)は、右フロントピラー50Rの第2フランジ部53にネジ止めされている。」
イ 「図1
[図:0001408829000002.jpg]
」
ウ 「図4
[図:0001408829000003.jpg]
」
以上の事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献2記載事項>
「筐体2の正面開口部2Aに金属製のサービスパネル70がネジ止めされて取り付けられること。」
(3)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-29242号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0073】
サービスパネル204は、室外機200の前面から右側面に上面からみて略L字形状に折り曲げられて形成された鋼板であり、室外機200の筺体前面の機械室230側および右側面を右側面パネル205とともに覆うように配置されている。サービスパネル204は、室外機200のメンテナンス作業時に機械室230内部での作業を行い易くするよう、着脱可能に取り付けられている。」
イ 「図5
[図:0001408829000004.jpg]
」
以上の事項から、引用文献3には、次の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献3記載事項>
「サービスパネル204が鋼板で形成され、室外機200の筺体前面に着脱可能に取り付けられていること。」
(4)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2022/064936号(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「[0002]
近年、空気調和機を構成する室外機に、例えば近距離無線用の通信装置を搭載することが考えられている。しかしながら、例えば特許文献1に開示されているように、室外機の表面を構成する筐体は、一般的に、無線通信を阻害する例えばメッキ鋼板などの金属材料で形成されている。そのため、従来では、室外機本体の表面に開口部を設け、この開口部を介して無線通信を行うようにしている。
先行技術文献
特許文献」
イ 「[0004]
ところで、無線通信を行わない場合には、例えば室外機本体の内部を保護する観点から、室外機本体の表面に設けられている開口部を塞いでおくことが好ましい。そのため、この開口部を蓋部材によって塞ぐことが考えられている。しかながら、蓋部材により開口部を塞ぐ構成においては、取り外した蓋部材を落としたり紛失したりすることが懸念される。また、取り外した蓋部材を保管するスペースが必要であり、このようなスペースが確保できない場合には、作業者は、取り外した蓋部材を持って作業を行わなければならない。
[0005]
そこで、本実施形態は、室外機本体の表面に設けられている開口部から取り外した蓋部材を、開口部の周辺に保持できるようにした空気調和機の室外機を提供する。」
ウ 「[0010]
そこで 室外機本体11は、ほぼ矩形箱状をなしており、その表面に開口部100を有している。そして、この開口部100は、蓋部材200によって塞がれるようになっている。蓋部材200は、例えば樹脂材料などといった無線通信を阻害しない材料により形成されている。この蓋部材200には、例えば後述するNFCモジュール300などで構成される無線通信装置が収容されている。蓋部材200に情報端末500を近接させることで無線通信装置と情報端末500とが通信可能となる。次に、これら開口部100および蓋部材200の構成例について、さらに詳細に説明する。」
エ 「[0014]
次に、蓋部材200の構成例について説明する。図4に例示するように、蓋部材200は、蓋本体部201および収容部202を備えている。蓋本体部201は、開口部100の開口面積よりも大きいほぼ矩形の板状に形成されている。また、蓋本体部201の4つの角部は、円弧状に丸みを有した形状となっている。収容部202は、一面が開放したほぼ矩形箱状に形成されている。また、収容部202は、開口部100の開口面積よりも小さく形成されており、開口部100内に嵌め込み可能となっている。この収容部202の内部には、無線通信装置の一例であるNFCモジュール300(NFC:Near Field Communication)が収容される。収容部202は、蓋本体部201の一端部に一体に設けられている。
[0015]
NFCモジュール300は、図示しないメモリなどを備えている。NFCモジュール300は、室外機10の制御装置13と図示しない通信線などで通信可能に接続されている。また、NFCモジュール300は、例えば室外機本体11の外部に存在する情報端末500と近接無線で通関可能に接続される。これにより、制御装置13が保持する空気調和機のデータや情報端末500が保持する設定データなどをNFCモジュール300のメモリに記憶したり、NFCモジュール300が保持するデータを制御装置13や情報端末500に送信したりすることができる。なお、制御装置13とNFCモジュール300との通信線を介した接続は、例えば、室外機本体11の開口部100に対する蓋部材200の着脱の際に作業者などによって手動で行うようにするとよい。また、例えば、室外機本体11の開口部100に対し蓋部材200を取り付けることに伴い、NFCモジュール300が制御装置13のコネクタに自動的に接続されるように構成してもよい。また、制御装置13とNFCモジュール300との通信を無線通信によって行うようにしてもよい。」
オ 上記イには、「無線通信を行わない場合には」「蓋部材により開口部を塞ぐ」ことが記載されているから、「無線通信を行う場合には蓋部材により開口部を塞がない」ことが把握できる。さらに、上記イの記載を踏まえれば、「NFCモジュール300と情報端末500の間に何もない状態で通信を行う」ことが把握できる。
以上の事項から、引用文献4には、次の技術事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献4記載事項>
「NFCモジュールによって室外機本体と情報端末とを無線で接続し、NFCモジュール300と情報端末500の間に何もない状態で通信を行うこと。」
(5)引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-156814号公報(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0028】
電装品箱は、箱本体51と、蓋部材52と、仕切板53とから主に構成されている。箱本体51は、ケーシング12の前板23に対向するように設けられ、前板23側に開口を有する箱状の部材である。蓋部材52は、箱本体51の開口を覆うように配置された板状の部材である。仕切板53は、箱本体51内に設けられ、箱本体51内の空間をケーシング12の前板23側(蓋部材52側)の手前側空間Cと、ケーシング12の後板24側(蓋部材52と反対側)の奥側空間Dとに仕切るように設けられている。すなわち、電装品箱15は、手前側空間C及び奥側空間Dの2つの空間に電気部品を収納可能な2層構造になっている。」
イ 「【0031】
上面部51cは、箱本体51の天板22側の面を構成する部分であり、ケーシング12の内部に向かうとともに下方に向かって傾斜している。上面部51cには、図示しないケーシング12の支持フレームによって固定される上部固定部51kが設けられている。
下面部51dは、箱本体51の底板26側の面を構成する部分であり、蓋部材52側の一部が切り欠かれている。また、下面部51dには、図示しないケーシング12の支持フレームによって固定される下部固定部51mが設けられている。」
ウ 「図1
[図:0001408829000005.jpg]
」
エ 「図3
[図:0001408829000006.jpg]
」
以上の事項から、引用文献5には、次の技術事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献5記載事項>
「電装品箱の下部固定部51mをケーシング12の支持フレームによって固定すること。」
(6)引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2018-98560号公報(以下、「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0023】
表示部11の上側に配置された操作スイッチ12aは、空気調和装置1のオンオフスイッチであり、下側と右側の操作スイッチ12b、12cは、運転態様や設定温度等を切り替えるための左右切替スイッチと上下切替スイッチである。表示部11の左右他方側(図2の左側)には、近距離無線通信(Near field radio communication)を行うための通信面(タッチ面)13が設けられている。」
イ 「【0028】
図5は、ケーシングの第1の分割体とプリント基板とを示す背面図である。図3~図5に示すように、プリント基板40は、液晶モジュール30の背面側に配置され、ケーシング20の第1の分割体21の表面板21aに取付ねじ43(図5参照)によって固定されている。プリント基板40には、マイコンチップ42等のICチップやスイッチ素子44等の各種電子素子が実装されている。また、プリント基板40には、近距離無線通信用のアンテナ41が設けられている。」
以上の事項から、引用文献6には、次の技術事項(以下、「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献6記載事項>
「空気調和機において、プリント基板に、近距離無線通信(Nearfield radio communication)のアンテナを設けたこと。」
(7)引用文献7に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-96717号公報(以下、「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0033】
また、図1、図2、図4、図5に示すように、ケース本体21の前面壁(本発明の「筐体の外周壁」の一例)22の左端部22Aの裏面側には、NFC通信基板(本発明の「近距離無線用通信基板」の一例)90が取り付けられている。具体的には前面壁22Aの裏面に一体的に形成されたフックやねじにより取り付けられている。NFC通信基板90は通信端末Uと近距離無線通信を行うものであり、ループアンテナ91と通信回路(図略)とを備えた構成となっている。尚、NFC(Near Field Communication)とは、最大1メートル程度の範囲内で無線通信を行うことを意味する。また、NFC通信の周波数は13.56MHZである。」
以上の事項から、引用文献7には、次の技術事項(以下、「引用文献7記載事項」という。)が記載されている。
<引用文献7記載事項>
「NFC通信基板は通信端末Uと近距離無線通信を行うものであり、ループアンテナ91を備えた構成となっていること。」
第5 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを、その技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「金属製の」は、本願発明1の「金属を主成分とする」に相当し、引用発明の「ケーシング本体」は、本願発明1の「筐体」に相当する。
そうすると、引用発明の「金属製の室外機(10)のケーシング本体(21)」は、本願発明1の「金属を主成分とする室外機の筐体」に相当する。
引用発明の「ケーシング本体(21)内に配置された電装品箱(23)の内部に収容される通信ユニット部と、を有し」と、本願発明1の「電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記筐体に直接に固定される支持部と、前記筐体に前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部、を有し」とは、「筐体内に通信ユニット部を有する」ことの限りにおいて一致している。
引用発明の「樹脂部材」は、本願発明1の「樹脂カバー」に、引用発明の「取り付けられた」は、本願発明1の「覆われている」に相当する。
そうすると、引用発明の「通信ユニット部は、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)を有し、室外機(10)のケーシング本体(21)は、アンテナ(30)が配置される部分に開口が設けられ、開口は樹脂部材が取り付けられた」ことと、本願発明1の「前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」こととは、「通信ユニット部はアンテナを有し、筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」という限りにおいて一致している。
引用発明の「空気調和装置」は、本願発明1の「空気調和機」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「金属を主成分とする室外機の筐体と、
筐体内に通信ユニット部を有し、
通信ユニット部はアンテナを有し、
筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている空気調和機の室外機。」
<相違点1>
本願発明1は、「金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバー」を有し、さらに、「前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」のに対して、引用発明は、「金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバー」を備えておらず、さらに、「通信ユニット部は、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)を有し 、室外機(10)のケーシング本体(21)は、アンテナ(30)が配置される部分に開口が設けられ、開口は樹脂部材が取り付けられ」ている点。
<相違点2>
「通信ユニット部」に関して、本願発明1は、「電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記筐体に直接に固定される支持部と、前記筐体に前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部」であるのに対して、引用発明は、「ケーシング本体(21)内に配置された電装品箱(23)の内部に収容される通信ユニット部」である点。
イ 当審の判断
上記相違点1について検討する。
引用文献4記載事項は、NFCモジュールによって室外機本体と情報端末とを無線で接続し、NFCモジュール300と情報端末500の間には何もない状態で通信を行うものである。すなわち、引用文献4記載事項は、NFCモジュールが、樹脂カバーのようなものを介することなく、情報端末と通信するものであるから、樹脂カバーを介して通信ユニット部と基地局が通信を行うことを前提とした引用発明に、引用文献4記載事項を適用する動機付けは存在しない。
したがって、引用発明に引用文献4記載事項を適用して、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたということはできない。
引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献5記載事項、引用文献6記載事項及び引用文献7記載事項は、上記第4で述べたとおりであり、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項、引用文献6記載事項及び引用文献7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、例えば特開2020-134021号公報や国際公開第2016/080352号には、室外機にNFCシステムが組み込まれた通信ユニット部を設け、通信ユニット部が情報端末とデータ通信を行うことが開示されている。しかしながら、これらの文献に開示されるNFCモジュールも、樹脂カバーのようなものを介することなく、情報端末と通信するものであるから、樹脂カバーを介して通信を行うことを前提とした引用発明に、適用する動機付けは存在しない。
(2)本願発明2について
ア 対比
本願発明2と引用発明とを、その技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「金属製の」は、本願発明2の「金属を主成分とする」に相当し、引用発明の「ケーシング本体」は、本願発明2の「筐体」に相当する。
そうすると、引用発明の「金属製の室外機(10)のケーシング本体(21)」は、本願発明2の「金属を主成分とする室外機の筐体」に相当する。
引用発明の「ケーシング本体(21)内に配置された電装品箱(23)の内部に収容される通信ユニット部と、を有し」と、本願発明2の「電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記メンテナンスカバーに直接に固定される支持部と、前記メンテナンスカバーに前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部と、を有し」とは、「筐体内に通信ユニット部を有する」ことの限りにおいて一致している。
引用発明の「樹脂部材」は、本願発明2の「樹脂カバー」に相当する。
そうすると、引用発明の「通信ユニット部は、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)を有し、室外機(10)のケーシング本体(21)は、アンテナ(30)が配置される部分に開口が設けられ、開口は樹脂部材が取り付けられた」ことと、本願発明2の「前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」こととは、「通信部はアンテナを有し、筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」という限りにおいて一致している。
引用発明の「空気調和装置」は、本願発明2の「空気調和機」に相当する。
以上のことから、本願発明2と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「金属を主成分とする室外機の筐体と、
筐体内に通信ユニット部を有し、
通信ユニット部はアンテナを有し、
筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている空気調和機の室外機。」
<相違点3>
本願発明2は、「金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバー」を有し、さらに、「通信ユニット部はアンテナを有し、筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、 開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」ことに関して、「前記通信ユニット部は、NFCアンテナを有するNFC基板であり、前記室外機の前記メンテナンスカバーは、前記NFCアンテナが位置する部分に開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」ているのに対して、引用発明は、「金属を主成分とし、前記筐体から取り外し可能な補修用のメンテナンスカバー」そのような事項を備えていないおらず、さらに、「通信ユニット部はアンテナを有し、筐体のアンテナが位置する部分に開口が設けられ、開口の少なくとも一部は樹脂カバーで覆われている」ことに関して、「通信ユニット部は、基地局(2)と通信するためのアンテナ(30)を有し、室外機(10)のケーシング本体(21)は、アンテナ(30)が配置される部分に開口が設けられ、開口は樹脂部材が取り付けられた」点。
<相違点4>
「筐体内に通信ユニット部を有」することに関して、本願発明2は、「電波の透過性を有する樹脂を主成分とし、前記メンテナンスカバーに直接に固定される支持部と、前記メンテナンスカバーに前記支持部を介して間接に固定される通信ユニット部と、を有し」ているのに対して、引用発明は、「ケーシング本体(21)内に配置された電装品箱(23)の内部に収容される通信ユニット部と、を有し」ている点。
イ 当審の判断
上記相違点3について検討する。
引用文献4記載事項は、NFCモジュールによって室外機本体と情報端末とを無線で接続し、NFCモジュール300と情報端末500の間には何もない状態で通信を行うものである。すなわち、引用文献4記載事項は、NFCモジュールが、樹脂カバーのようなものを介することなく、情報端末と通信するものであるから、樹脂カバーを介して通信ユニット部と基地局が通信を行うことを前提とした引用発明に、引用文献4記載事項を適用する動機付けは存在しない。
したがって、引用発明に引用文献4記載事項を適用して、上記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたということはできない。
引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献5記載事項、引用文献6記載事項及び引用文献7記載事項は、上記第4で述べたとおりであり、上記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項、引用文献6記載事項及び引用文献7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本願発明3~11について
本願発明3~11は、本願発明1または本願発明2の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明3~11は、本願発明1または本願発明2についてと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項、引用文献6記載事項及び引用文献7記載事項に基いて、当業者が容易に発明し得たということはできない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005800