特許拒絶査定不服審判
2024-003628
冷却回収システム及び方法
- 審判番号
- 2024-003628
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-035961
- 請求日
- 2024年02月29日
- 審決日
- 2025年09月08日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダンカン, スコット, エム.
- 【請求人代理人】池田 成人
- 【請求人代理人】山田 行一
- 【請求人代理人】野田 雅一
- 【請求人代理人】鈴木 英彦
- 【請求人代理人】和田 雄二
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 大山 健
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .113-Z (F24F) / P18 .121-Z (F24F) / P18 .575-Z (F24F) / P18 .572-Z (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 35961「冷却回収システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月 6日出願公開、特開2022- 67664〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)9月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年9月7日(以下、本件についての「優先日」という。)(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2010-524203号の一部を、平成26年9月4日に新たな特許出願(特願2014-180320号)とし、さらにその一部を平成28年11月7日に新たな特許出願(特願2016-217313号)とし、さらにその一部を令和元年7月17日に新たな特許出願(特願2019-132138号)とし、さらにその一部を、令和4年3月9日に新たな特許出願(特願2022-035961号)としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 4月 8日 :手続補正書の提出
令和5年 2月14日付け:拒絶理由通知
同年 7月18日 :意見書、誤訳訂正書の提出
同年10月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 2月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月22日 :上申書の提出
同年11月21日 :上申書の提出
同年12月 5日 :上申書の提出
第2 令和6年2月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
流体冷却器によって受け取られたときに流体の第1の温度よりも低い第2の温度まで前記流体冷却器によって冷却された前記流体を受け取る冷却コイルであって、前記冷却コイルは、前記冷却コイルにおいて空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、空気処理ユニットの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記流体が前記冷却コイルの流出口に到達したとき、前記流体が、前記第2の温度よりも高い第3の温度となり、前記流体冷却器は、前記流体を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイルと、
前記冷却コイルから排出された約前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために、流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有する冷却回収コイルであって、前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接するように構成された冷却回収コイルと、
前記冷却回収コイルを出る前記流体の少なくとも一部を前記流体冷却器に戻すための戻り配管と、
を備える空調システムであって、
前記空調システムは、複数の弁を操作するように構成され、前記複数の弁の操作によって、前記受け取られた空気から水分が除去されて除湿されて冷却された空気が生成される第1の温度点まで前記空気の給気温度が下げられるように、前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化されることができ、前記複数の弁の操作によってさらに、前記冷却回収コイル内の前記流体から、前記除湿されて冷却された空気に熱を移動させ、これによって前記空気の前記給気温度を第2の温度点まで上げつつ前記流体冷却器による前記冷房負荷を低下させるように、前記冷却コイルから排出された前記流体の前記冷却回収コイルへの流量が連続的に変化されることができる、空調システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年7月18日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
流体冷却器によって受け取られたときに流体の第1の温度よりも低い第2の温度まで前記流体冷却器によって冷却された前記流体を受け取る冷却コイルであって、前記冷却コイルは、前記冷却コイルにおいて空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、空気処理ユニットの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記流体が前記冷却コイルの流出口に到達したとき、前記流体が、前記第2の温度よりも高い第3の温度となり、前記流体冷却器は、前記流体を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイルと、
前記冷却コイルから排出された約前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために、流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有する冷却回収コイルであって、前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接するように構成された冷却回収コイルと、
前記冷却回収コイルを出る前記流体の少なくとも一部を前記流体冷却器に戻すための戻り配管と、
を備える空調システムであって、
前記空調システムは、複数の弁を操作するように構成され、前記複数の弁の操作によって、前記受け取られた空気から水分が除去されて除湿されて冷却された空気が生成される第1の温度点まで前記空気の給気温度が下げられるように、前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が変化され、前記複数の弁の操作によってさらに、前記冷却回収コイル内の前記流体から、前記除湿されて冷却された空気に熱を移動させ、これによって前記空気の前記給気温度を第2の温度点まで上げつつ前記流体冷却器による前記冷房負荷を低下させるように、前記冷却コイルから排出された前記流体の前記冷却回収コイルへの流量が変化される、空調システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、複数の弁の操作による、流体冷却器から冷却コイルへの流体の流量及び冷却コイルから排出された流体の冷却回収コイルへの流量について、「変化され」を「連続的に変化されることができ」にして、変化の態様を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願明細書の段落【0051】の「AHU02-0003への冷却流体の流れは、流量制御弁02-0055を選択的に調整することにより制御される。熱源流体は、流量制御弁02-0080を選択的に調整することにより制御される。図2に示されるように、冷却流体の流量制御弁02-0055は、AHU02-0003の下流に配置され、1つ又は複数の弁を含んでもよい。それぞれの熱源流体の流量制御弁02-0080は、加熱コイル(即ち冷却回収コイル)02-0030の下流に配置される。或いは、弁02-0055及び02-0080が、AHU02-0003の上流及び/又は加熱コイル(冷却回収コイル)02-0030の上流に位置してもよい。」との記載などに基づくものであるから、新規事項を追加する補正ではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2005-207712号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線部は当審で付した。以下同様である。)。
「【0001】
本発明は、処理対象となる空気の温湿度調整を行う空気調和装置に係り、特に、安定した温湿度制御、冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を実現すべく改良を施した空気調和装置に関する。」
「【0003】
このような空気調和装置として従来から実施されているものの一例を、図7を参照して以下に説明する。すなわち、図中、左側を空気取入口、右側を空気供給口とするハウジング(図示せず)の内部に、取入口側から、外気の塵埃を取り除くプレフィルタ1、中性能フィルタ2、循環する冷水によって空気を冷却する冷却コイル3、循環する温水によって空気を加熱する加熱コイル4、ボイラで発生させた蒸気を空気の通過過程に供給して加湿する蒸気式加湿器5、再熱コイル6、及び、処理空気をハウジング外へ吐出する送風機7が配設されている。
【0004】
また、前記冷却コイル3、加熱コイル4、蒸気式加湿器5及び再熱コイル6には、それぞれに供給される冷水、温水及び蒸気等の流量を制御するバルブ8、9、10、11が設けられている。また、加湿空気の供給口には、複数の温度及び湿度センサ12が取り付けられており、これらのセンサ12による検出値が温湿度制御器13に入力され、この温湿度制御器13によって、前記バルブ8~11の開度が調整され、供給空気の温度及び湿度があらかじめ定められた一定の値となるように、冷却コイル3内の冷水、加熱コイル4及び再熱コイル6内の温水、蒸気式加湿器5の蒸気の量が制御される構成となっている。」
「【0010】
しかしながら、冷却水の排熱を利用する方式においても、従来冷却塔から排出(放熱)する熱量を利用しているのみで、冷却コイル3から排出される冷水は、そのまま冷凍機に戻されていたため、冷凍機の負荷量としては大きなものとなり、従って、冷凍機の容量が大きくなり、エネルギー使用量も大きかった。 なお、このような問題点は、加湿器として気化式加湿器を用いた空気調和装置においても同様に生じていた。
【0011】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、安定した温湿度制御、冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を可能とした空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、冷却コイルから排出される「冷水の返り」、あるいは他の系統より排出される「冷水の返り」を再熱コイルの熱源として利用することにより、冷凍機に戻される「冷水の返り」温度を下げて冷凍機の負荷を下げ、冷凍機容量を小さくすると共に、省エネルギー化を図るものである。」
「【0025】
(1)第1実施形態
(1-1)構成
図1は、本発明に係る空気調和装置の構成を示す模式図である。すなわち、本実施形態の空気調和装置のハウジング(図示せず)内部には、空気取入口側から、プレフィルタ1、中性能フィルタ2、冷却コイル3、加熱コイル4、気化式加湿器20、再熱コイル21、第2の再熱コイル22、及び、処理空気をハウジング外へ吐出する送風機7が順次配設されている。また、空調空気が供給される室内Mには、ドライコイル30が設けられている。なお、このドライコイル30は、室内Mの湿度を落とさずに、温度(顕熱)のみを下げるために配設されている。」
「【0029】
(1-2)作用
以上のような構成を有する本実施形態の空気調和装置の作用を、室内側の温湿度を23℃、45%と設定し、図2に示した空気線図を参照して、冷却除湿時(主として夏季)と、加温加湿時(主として冬季)とに分けて説明する。なお、図2に示したAw~Dw~E~F、As~Ds~E~Fは、図1に示したA~Fの位置における空気の状態に対応し、wは冬季、sは夏季を示している。また、温度及び湿度等の具体的な値は例示であり、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。また、ファンによる昇温とこれによる相対湿度低下は、理解を容易にするために、ここでは考えないものとする。
【0030】
(1-2-1)夏季…冷却除湿時
夏季などの空気の除湿が必要な場合には、送風機7を作動させるとともに、冷却コイル3のバルブ(図示せず)を開とする。すると、ハウジングの空気取入口から外気(34℃、60%RH)が流入する。流入した空気は、フィルタ1、2を介して塵埃が濾過された後、冷却コイル3によって冷却され(As~Bs)、気化式加湿器20によって加湿された後(Bs~Ds、10.5℃、約100%RH)、再熱コイル21に導入される。
【0031】
この再熱コイル21には、空調空気が供給される室内Mに設けられたドライコイル30から「冷水の返り(18℃)」が供給されるため、この「冷水の返り」によって処理空気は加温される(Ds~E、15℃)。そして、さらに、第2の再熱コイル22によって加温されて(E~F、19℃)、室内Mに供給される。」
「【0039】
(2)第2実施形態
本実施形態は上記第1実施形態の変形例であって、空気調和装置内の冷却コイルの「冷水の返り」を、再熱コイルに供給するように構成したものである。
【0040】
(2-1)構成
本実施形態においては、図3に示したように、冷却コイル3には、冷凍機50から冷水を供給する冷却コイル側冷水供給ライン51が接続され、この冷却コイル側冷水供給ライン51には、第5のバルブ52が設けられている。
【0041】
また、前記冷却コイル3には、冷却コイル3から排出された「冷水の返り」を冷凍機50に戻すための冷却コイル側冷水戻りライン53が接続され、この冷却コイル側冷水戻りライン53には、第6のバルブ54が設けられている。さらに、この冷却コイル側冷水戻りライン53には、冷却コイル3から排出された「冷水の返り」を再熱コイル21に供給するための再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55が設けられ、この再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55には、第7のバルブ56が設けられている。
【0042】
また、前記再熱コイル21から前記冷凍機50には、再熱コイル側冷水戻りライン57が設けられ、再熱コイル21において、熱源として利用された「冷水の返り」を冷凍機50に戻すことができるように構成されている。
【0043】
(2-2)作用
以上のような構成を有する本実施形態の空気調和装置は以下のように作用する。なお、本実施形態における空気線図は、上記第1実施形態と同様に、図2に示したようになる。また、本実施形態は、冷却コイル3を稼働させる夏季に有効である。
【0044】
すなわち、上記第1実施形態で説明したように、夏季などの空気の除湿が必要な場合には、送風機7を作動させるとともに、冷却コイル側冷水供給ライン51の第5のバルブ52を開とする。すると、ハウジングの空気取入口から外気(34℃、60%RH)が流入する。流入した空気は、フィルタ1、2を介して塵埃が濾過された後、冷却コイル3によって冷却され(As~Bs)、気化式加湿器20によって加湿された後(Bs~Ds、10.5℃、約100%RH)、再熱コイル21に導入される。
【0045】
また、本実施形態においては、冷却コイル3から排出される「冷水の返り(18℃)」を、再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して、再熱コイル21に供給することができるように構成されている。そのため、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、再熱コイル21において、処理空気は冷却コイル3からの「冷水の返り」によって加温される(Ds~E、15℃)。そして、さらに、第2の再熱コイル22によって加温されて(E~F、19℃)、室内Mに供給される。
【0046】
(2-3)効果
このように、本実施形態によれば、冷却コイルからの「冷水の返り」を、再熱コイルの熱源として利用することができるので、結果的に、冷凍機50に対して、冷凍機容量の低減と同時に省エネ効果が得られる。」
「図2
[図:0001431613000001.jpg]
」
「図3
[図:0001431613000002.jpg]
」
「図7
[図:0001431613000003.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載事項から理解できる事項
上記(ア)の引用文献1の記載事項から、次の技術的事項が理解できる。
a 段落【0040】及び図3から、冷凍機50によって冷却された冷水が冷却コイル3に供給されることが理解できる。
b 段落【0029】、【0030】、【0044】及び図2により、空気が冷却コイル3により冷却されることにより、図2の空気線図上のAs(略34℃、絶対湿度0.020、相対湿度60%)からBs(略11℃、絶対湿度0.008、相対湿度90%)の状態に移行することが理解できるから、空気調和装置のハウジング(段落【0025】)の空気取入口側から流入する空気は冷却コイル3において冷却されて空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されること、及び冷却コイル3が空気に接するように構成されることは明らかである。
さらに、冷却コイルが空気を冷却した際に冷却コイルから排出される冷媒の温度が上昇することは技術常識であるから、冷却コイル3が空気を冷却した際に、冷却コイル3から排出される冷水の返り(段落【0045】)は、冷却コイル3に流入する冷水よりも温度が上昇していることは明らかである。
c 段落【0010】等の記載から、冷凍機は、冷水を冷却するために冷房負荷を加えるものであることが理解できる。
d 段落【0045】及び図3から、再熱コイル21には、冷却コイル3から排出される冷水の返りが、再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して供給されることが理解できる。
また、段落【0044】、【0045】及び図2、3から、空気は、冷却コイル3に接した後に空気調和装置のハウジング内を移動して、再熱コイル21に導入され、加温されることが理解でき、再熱コイル21が、冷却コイル3に接した後に空気調和装置のハウジング内を移動する空気に接するように構成されることは明らかである。
e 段落【0042】及び図3から、再熱コイル側冷水戻りライン57が、再熱コイル21からの冷水の返りを冷凍機50に戻すことが理解できる。
f 段落【0039】~【0045】及び図2、3から、空気調和装置は、第5のバルブ52、第6のバルブ54、第7のバルブ56を操作するように構成されていることが理解できる。
g 段落【0044】から、第5のバルブ52を開とすることによって、図2の空気線図上のAs(略34℃、絶対湿度0.020、相対湿度60%)からBs(略11℃、絶対湿度0.008、相対湿度90%)の状態に移行するように、空気が冷却コイル3により冷却及び除湿されることが理解できる。
さらに、段落【0044】及び図3から、冷却コイル側冷水供給ライン51には冷水が流れるものであり、冷却コイル側冷水供給ライン51上の第5のバルブ52を開とすることによって、冷凍機50から冷却コイル3への冷水の流量が連続的に変化することは自明である。
h 段落【0045】には、再熱コイル21において、冷却コイル3からの冷水の返りによって、空気が加温されることが記載されていること、及び段落【0012】から、再熱コイル21内の冷水の返りが、空気を加温しつつ、冷水の返りの温度を下げて冷凍機50の負荷を下げることが理解できる。
さらに、図3から、第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作(例えば、第6のバルブ54の開度を小さくするとともに、第7のバルブ56の開度を大きくして、再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55に図示されている矢印に沿って冷水の返りを流す等の操作)することによって、冷却コイル3から排出される冷水の返りの、再熱コイル21への流量が連続的に変化することは自明である。
イ 引用発明
上記ア(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内には、上記ア(ア)(イ)における参照箇所を示した。)。
<引用発明>
「冷凍機50によって冷却された冷水が供給される冷却コイル3であって、前記冷却コイル3は、前記冷却コイル3において空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、ハウジングの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイル3における前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記冷却コイル3から排出される冷水の返りは、温度が上昇し、前記冷凍機50は、前記冷水を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイル3(上記ア(イ)a~cを参照。)と、
前記冷却コイル3から排出される前記冷水の返りが、再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して供給される再熱コイル21であって、前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記ハウジング内を移動する前記空気に接するように構成された再熱コイル21(上記ア(イ)dを参照。)と、
前記再熱コイル21からの前記冷水の返りを冷凍機50に戻す再熱コイル側冷水戻りライン57(上記ア(イ)eを参照。)と、
を備える空気調和装置(上記ア(ア)の段落【0001】等を参照。)であって、
前記空気調和装置は、第5のバルブ52、第6のバルブ54、第7のバルブ56を操作するように構成され(上記ア(イ)fを参照。)、前記第5のバルブ52を開とすることによって、前記空気が冷却コイル3により冷却及び除湿されるように、前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が連続的に変化され(上記ア(イ)gを参照。)、前記第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作することによって、前記再熱コイル21内の前記冷水の返りが、前記空気を加温しつつ、前記冷水の返りの温度を下げて前記冷凍機50の負荷を下げるように、前記冷却コイル3から排出された前記冷水の返りの前記再熱コイル21への流量が連続的に変化される(上記ア(イ)hを参照。)、空気調和装置。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明(上記(2)イ)とを対比する。
(ア)引用発明の「冷凍機50」は、本件補正発明の「流体冷却器」に相当し、以下同様に、「冷水」及び「冷水の戻り」は「流体」に、「・・・が供給される」は「・・・を受け取る」に、「冷却コイル3」は「冷却コイル」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「冷凍機50によって冷却された冷水」は、例えば、常温の水が冷凍機50によって冷却されて冷水とされるような態様を含むから、本件補正発明の「流体冷却器によって受け取られたときに流体の第1の温度よりも低い第2の温度まで前記流体冷却器によって冷却された前記流体」に相当する。
してみると、引用発明の「冷凍機50によって冷却された冷水が供給される冷却コイル3」は、本件補正発明の「流体冷却器によって受け取られたときに流体の第1の温度よりも低い第2の温度まで前記流体冷却器によって冷却された前記流体を受け取る冷却コイル」に相当する。
(イ)引用発明の「ハウジング」は、その内部に、「空気取入口側から、プレフィルタ1、中性能フィルタ2、冷却コイル3、加熱コイル4、気化式加湿器20、再熱コイル21、第2の再熱コイル22、及び、処理空気をハウジング外へ吐出する送風機7が順次配設」されたものであり、空気を処理するものであるから(段落【0025】)、本件補正発明の「空気処理ユニット」に相当するといえる。
また、引用発明の「前記冷却コイル3から排出される冷水の返りは、温度が上昇し」は、冷却コイル3から排出される冷水の返りが、冷却コイル3が空気を冷却することにより冷却コイル3に流入する冷水の温度よりも温度が上昇することを意味するから(上記(2)ア(イ)bを参照。)、本件補正発明の「前記流体が前記冷却コイルの流出口に到達したとき、前記流体が、前記第2の温度よりも高い第3の温度となり」に相当する。
してみると、引用発明の「前記冷却コイル3は、前記冷却コイル3において空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、ハウジングの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイル3における前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記冷却コイル3から排出される冷水の返りは、温度が上昇し、前記冷凍機50は、前記冷水を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイル3」は、本件補正発明の「前記冷却コイルは、前記冷却コイルにおいて空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、空気処理ユニットの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記流体が前記冷却コイルの流出口に到達したとき、前記流体が、前記第2の温度よりも高い第3の温度となり、前記流体冷却器は、前記流体を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイル」に相当する。
(ウ)引用発明の「再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55」は、本件補正発明の「流体回収管路」に相当する。
また、引用発明の「再熱コイル21」は、空気を加温するためのコイルであるから、本件補正発明の「冷却回収コイル」に相当し、同様に、「前記冷却コイル3から排出される前記冷水の返り」は「前記冷却コイルから排出された約前記第3の温度の前記流体」に相当し、「再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して供給される」は「流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有する」に相当する。
してみると、引用発明の「前記冷却コイル3から排出される前記冷水の返りが、再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して供給される再熱コイル21」は、本件補正発明の「前記冷却コイルから排出された約前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために、流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有する冷却回収コイル」に相当する。
(エ)引用発明の「前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記ハウジング内を移動する前記空気に接するように構成された再熱コイル21」は、本件補正発明の「前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接するように構成された冷却回収コイル」に相当する。
(オ)引用発明の「前記再熱コイル21からの前記冷水の返りを冷凍機50に戻す再熱コイル側冷水戻りライン57」は、本件補正発明の「前記冷却回収コイルを出る前記流体の少なくとも一部を前記流体冷却器に戻すための戻り配管」に相当する。
(カ)引用発明の「空気調和装置」は、本件補正発明の「空調システム」に相当する。
(キ)引用発明の「第5のバルブ52、第6のバルブ54、第7のバルブ56」は、本件補正発明の「複数の弁」に相当する。
してみると、引用発明の「前記空気調和装置は、第5のバルブ52、第6のバルブ54、第7のバルブ56を操作するように構成され」ることは、本件補正発明の「前記空調システムは、複数の弁を操作するように構成され」ることに相当する。
(ク)引用発明の「第5のバルブ52を開とすること」は、第5のバルブ52が上記(キ)の複数の弁に含まれるから、本件補正発明の「前記複数の弁の操作」に相当する。
また、引用発明の「前記空気が冷却コイル3により冷却及び除湿されるように」は、ハウジングの空気取入口側から流入する空気が冷却コイル3で冷却及び除湿されることを意味するから(上記(2)ア(イ)gを参照。)、本件補正発明の「前記受け取られた空気から水分が除去されて除湿されて冷却された空気が生成される第1の温度点まで前記空気の給気温度が下げられるように」に相当する。
してみると、引用発明の「前記第5のバルブ52を開とすることによって、前記空気が冷却コイル3により冷却及び除湿されるように、前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が連続的に変化され」ることは、本件補正発明の「前記複数の弁の操作によって、前記受け取られた空気から水分が除去されて除湿されて冷却された空気が生成される第1の温度点まで前記空気の給気温度が下げられるように、前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化されることができ」ることに相当する。
(ケ)引用発明の「前記第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作することによって」は、第6のバルブ54及び第7のバルブ56が上記(キ)の複数の弁に含まれるから、本件補正発明の「前記複数の弁の操作によってさらに」に相当する。
また、引用発明の「空気を加温し」は、ハウジングの空気取入口側から流入し冷却コイル3で冷却及び除湿された空気が加温されることを意味するから、本件補正発明の「前記除湿されて冷却された空気に熱を移動させ、これによって前記空気の前記給気温度を第2の温度点まで上げつつ」に相当し、同様に「前記冷水の返りの温度を下げて前記冷凍機50の負荷を下げる」は「前記流体冷却器による前記冷房負荷を低下させる」に相当する。
してみると、引用発明の「前記第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作することによって、前記再熱コイル21内の前記冷水の返りが、前記空気を加温しつつ、前記冷水の返りの温度を下げて前記冷凍機50の負荷を下げるように、前記冷却コイル3から排出された前記冷水の返りの前記再熱コイル21への流量が連続的に変化される」は、本件補正発明の「前記複数の弁の操作によってさらに、前記冷却回収コイル内の前記流体から、前記除湿されて冷却された空気に熱を移動させ、これによって前記空気の前記給気温度を第2の温度点まで上げつつ前記流体冷却器による前記冷房負荷を低下させるように、前記冷却コイルから排出された前記流体の前記冷却回収コイルへの流量が連続的に変化されることができる」に相当する。
イ 検討
(ア)上記アの対比から、本件補正発明と引用発明とは、
「 流体冷却器によって受け取られたときに流体の第1の温度よりも低い第2の温度まで前記流体冷却器によって冷却された前記流体を受け取る冷却コイルであって、前記冷却コイルは、前記冷却コイルにおいて空気が冷却されて前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮されるように、空気処理ユニットの前記空気に接するように構成されており、前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの少なくとも一部の湿気の前記凝縮によって、前記流体が前記冷却コイルの流出口に到達したとき、前記流体が、前記第2の温度よりも高い第3の温度となり、前記流体冷却器は、前記流体を冷却するために冷房負荷を加える、冷却コイルと、
前記冷却コイルから排出された約前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために、流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有する冷却回収コイルであって、前記空気が前記冷却コイルに接した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接するように構成された冷却回収コイルと、
前記冷却回収コイルを出る前記流体の少なくとも一部を前記流体冷却器に戻すための戻り配管と、
を備える空調システムであって、
前記空調システムは、複数の弁を操作するように構成され、前記複数の弁の操作によって、前記受け取られた空気から水分が除去されて除湿されて冷却された空気が生成される第1の温度点まで前記空気の給気温度が下げられるように、前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化されることができ、前記複数の弁の操作によってさらに、前記冷却回収コイル内の前記流体から、前記除湿されて冷却された空気に熱を移動させ、これによって前記空気の前記給気温度を第2の温度点まで上げつつ前記流体冷却器による前記冷房負荷を低下させるように、前記冷却コイルから排出された前記流体の前記冷却回収コイルへの流量が連続的に変化されることができる、空調システム。」で一致し、両者の間に相違点はない。
(イ)上記(2)イの引用発明において、仮に、冷水及び冷水の返りの流量の変化が急激であり、
「前記第5のバルブ52を開とすることによって、・・・前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が連続的に変化され」を「前記第5のバルブ52を開とすることによって、・・・前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が変化され」と認定すべきであるとともに、同様に、
「前記第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作することによって、・・・前記冷却コイル3から排出された前記冷水の返りの前記再熱コイル21への流量が連続的に変化される」を「前記第6のバルブ54及び第7のバルブ56を操作することによって、・・・前記冷却コイル3から排出された前記冷水の返りの前記再熱コイル21への流量が変化される」と認定すべきである場合、
引用発明と本件補正発明とは、引用発明が、冷水及び冷水の返りの流量が「連続的に」変化するか否か不明な点で一応相違し、その余の点で一致する。
しかしながら、空気調和装置において、空気を冷却、加熱又は除湿するために、冷凍サイクルの流路を流れる流体の流量を連続的に変化させるために流量制御弁を用いることは、周知の技術的事項(実願昭56-039700号(実開昭57-152574号)のマイクロフィルムの7ページ第12~16行、原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-267206号公報の段落【0003】、【0005】及び図5等を参照。)である。
そして、引用文献1には、その段落【0044】、【0045】の記載等から、空気の状態が、図2の空気線図上のAsからBsの状態、BsからDsの状態、DsからEの状態及びEからFの状態に移行するように、温度や湿度について精緻な制御を行うことが記載されているといえるから、引用文献1には精緻な制御を行うとの課題が、内在していると認められる。そうすると、引用発明において、精緻な制御を行うために、第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56を流量制御弁とし、冷水及び冷水の返りの流量が「連続的に」変化するように構成することは当業者が容易になし得ることにすぎない。
(ウ)したがって、本件補正発明は、引用発明であるか、あるいは、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア)審判請求書における主張
a 請求人は、審判請求書7ページにおいて、「新請求項1では、上記発明特定事項で規定されるように、複数の弁の操作によって、流体冷却器から冷却コイルへの流体の流量及び冷却コイルから排出された流体の冷却回収コイルへの流量が、連続的に変化されます。それに対して、引用文献1の図3に示されるバルブ52、54、56は、二方弁であり、それらが設けられているラインを開閉することはできる、即ち、完全開状態と完全閉状態のみ可能であるため、流体の流量を連続的に変化させることはできないものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、引用文献1には、第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56が二方弁であり、それらが設けられているラインは完全開状態と完全閉状態のみが可能であるようなことは記載も示唆もされていない。
さらに、本件補正発明には、複数の弁が具体的にどのような弁であるか特定されていないから、弁の点で引用発明と相違するとは認められない。
さらに、仮に、引用発明の第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56が二方弁であり、それらが設けられているラインは完全開状態と完全閉状態のみが可能であるとしても、水(冷水及び冷水の返り)の流量は連続的に変化する(急にゼロになるようなことや、不連続で変化するようなことはない。)ことは明らかである。
また、引用文献1には、図7に図示されている「バルブ8、9、10、11」について、段落【0004】に「また、前記冷却コイル3、加熱コイル4、蒸気式加湿器5及び再熱コイル6には、それぞれに供給される冷水、温水及び蒸気等の流量を制御するバルブ8、9、10、11が設けられている。・・・前記バルブ8~11の開度が調整され、供給空気の温度及び湿度があらかじめ定められた一定の値となるように、冷却コイル3内の冷水、加熱コイル4及び再熱コイル6内の温水、蒸気式加湿器5の蒸気の量が制御される構成となっている。」と記載されているから、図7の「バルブ8、9、10、11」は流量制御弁であると認められるところ、第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56は、上記図7の「バルブ8、9、10、11」と同様の図示記号で表されているから、二方弁ではなく流量制御弁であると解するのが相当である。
以上から、請求人の主張は採用できない。
b また、請求人は、審判請求書8ページにおいて、流体の流量を連続的に変化させることが可能な複数の弁を有することに基づく1~4の効果についての主張をしているが、本件補正発明には、複数の弁のそれぞれを具体的にどのように制御するのか特定されていないから、上記効果の主張は、本件補正発明の構成に基づくものとはいえず、採用できない。
(イ)令和6年12月5日提出の上申書における主張
a 請求人は、令和6年12月5日提出の上申書の3ページにおいて、「当業者が、引用文献1に記載の装置の複数の弁を可変流量弁に置き換えることには阻害要因が存在する、及び/又は、上述のような事情があるにも関わらず、当業者がそのような置き換えを行ったはずであるという示唆等は存在しないため、当業者がそのような置き換えを行う動機付けは存在しないものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、そもそも本件補正発明には、複数の弁が可変流量弁であることは特定されていないから、引用発明の第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56を流量制御弁に置き換えることに阻害要因があるか否か、及び置き換えを行う動機付けがあるか検討することを要しない。
さらには、(ア)aで説示したとおり、第5のバルブ52、第6のバルブ54及び第7のバルブ56は、流量制御弁であると解することができるのであるから、流量制御弁に置き換えることの阻害要因や動機付けを検討する余地はない。
b また、請求人は上申書中で、合議体において拒絶審決の心証の場合、補正の機会を求める旨も述べているが、請求人は上申書において具体的な補正案を提示しているわけではないし、そもそも特許法では補正できる期間を定めているところ、本件については拒絶査定不服審判の請求と同時に既に補正がなされているのであるから、特段の事情もなく上記期間後にそれ以上の補正の機会を与えることは、同法の想定するところではない。
エ 独立特許要件についてのまとめ
上記イで検討したとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、あるいは、引用文献1に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年2月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~17に係る発明は、令和5年7月18日に提出の誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2、3の概要は、次のとおりのものである。
(理由2)請求項1~3、5、8~11に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由3)請求項1~17に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2005-207712号公報
引用文献2:特開2002-267206号公報
引用文献3:特開2005-69552号公報
引用文献4:米国特許第5337577号明細書
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、複数の弁の操作による、流体冷却器から冷却コイルへの流体の流量及び冷却コイルから排出された流体の冷却回収コイルへの流量について、「連続的に変化されることができ」との事項を「変化され」にして、変化の態様の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるか、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-003628