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特許拒絶査定不服審判

2023-022373

露点温度調節用除湿装置

審判番号
2023-022373
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-069460
請求日
2023年12月28日
審決日
2025年12月25日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本スピンドル製造株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人雄渾
審判長/審判官
  • 審判長 平瀬 知明
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 山本 崇昭
分類
P18 .55 -WZ (F24F) / P18 .537-WZ (F24F) / P18 .113-WZ (F24F) / P18 .121-WZ (F24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 69460「露点温度調節用除湿装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 8日出願公開、特開2020-165630〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年3月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 9月29日付け:拒絶理由通知書 令和4年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 1月23日 :刊行物等提出書の提出 令和5年 2月10日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和5年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 9月29日付け:令和5年6月21日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定 令和5年12月28日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和6年 7月18日 :上申書の提出 令和7年 4月30日付け:拒絶理由通知書 令和7年 6月23日付け:応対記録 令和7年 7月14日 :意見書、手続補正書の提出 令和7年 7月30日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和7年10月 6日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和7年10月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年10月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「 空気の露点温度を-20℃以下に調整する露点温度調節用除湿装置であって、 前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度を調節することで露点温度を調整する調整部を備え、 前記調整部は除湿機能に対する寄与率の大きい第1の制御と寄与率の小さい第2の制御を組合わせて露点温度を調整するものであり、 前記第1の制御は、除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度を調節することで露点温度を調整するものであり、 前記第2の制御は、除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数を調節することで露点温度を調整するものであることを特徴とする、露点温度調節用除湿装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和7年7月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 空気の露点温度を-20℃以下に調整する露点温度調節用除湿装置であって、 前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度から選択される少なくとも1つの運転動作を調節することで露点温度を調整する調整部を備え、 前記調整部は除湿機能に対する寄与率の大きい第1の制御と寄与率の小さい第2の制御を組合わせて露点温度を調整するものであり、 前記第1の制御は、除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度の内少なくとも1つを調節することで露点温度を調整するものであり、 前記第2の制御は、除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数の内少なくとも1つを調節することで露点温度を調整するものであることを特徴とする、露点温度調節用除湿装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「露点温度を調整する調整部」について、「前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度から選択される少なくとも1つの運転動作を調節する」(下線部は、当審が付した。)を「前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度を調節する」とし、 さらに、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の制御」について、「除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度の内少なくとも1つを調節する」を「除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度を調節する」とし、 加えて、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2の制御」について、「除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数の内少なくとも1つを調節する」を「除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数を調節する」として、 「調整部」、「第1の制御」及び「第2の制御」のそれぞれについて、露点温度を調整するために列記されている複数の制御対象の操作について、本件補正前の「から選択される少なくとも1つの運転動作」又は「の内少なくとも1つ」との要件を削除して、列記されている複数の制御対象を全て調節する旨の限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 令和7年7月30日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書に引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-190989号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a 引用文献1の記載 「【0001】 本発明は、リチウムイオン電池などの二次電池製造ライン、有機EL製品製造ライン及び半導体製造ラインなどにおける製造環境を超低露点に保持した低露点室の露点温度の制御方法及び除湿システムに関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、上記製造ラインなどにおいては、製造環境の露点温度が例えば-20℃~-40℃の低露点に管理され、この環境を作り出すために除湿装置によって例えば露点温度-50℃~-70℃の低露点空気が製造され、低露点室に供給されている。」(下線部は、当審が付した。以下同様。) 「【0026】 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。 〔除湿システム1の構成〕 本発明に係る除湿システム1は、図1に示されるように、室内環境が所定の露点温度に保持される低露点室2と、この低露点室2への入退室のため前記低露点室2に隣接して設けられる前室3と、少なくとも吸着材を内蔵する除湿ロータ20を有し低露点室2及び前室3のそれぞれに低露点空気を供給する除湿装置4と、低露点室2及び前室3の各室内の人を感知する人感センサ5と、人感センサ5の感知信号に応じて除湿装置4から供給される低露点空気の送風量及び/又はその露点温度を制御する制御器6とから構成されている。 以下、さらに各構成について詳述する。」 「【0035】 前記除湿装置4の除湿ユニット4Bには、外気を供給する給気路Sと空気を排気する排気路Eとに跨って、吸着材(デシカント)を内蔵する回転式の除湿ロータ20が配置されている。 【0036】 また、前記給気路Sの除湿ロータ20の前段には、流通空気を冷却する冷却装置24が1段又は複数段で、図示例では2段(一次冷却装置及び二次冷却装置)で配置され、前記排気路Sの除湿ロータ20の前段には、流通空気を加熱する加熱装置25が配置されている。さらに、前記給気路Sの除湿ロータ20の後段には、それぞれ流通空気を冷却、加熱する冷却装置26、加熱装置27が配置されている。 【0037】 前記給気路Sは、導入された外気OA及び各室2、3からの還気RAを前記吸着材などによって空気処理し、給気SAとして各室2、3に供給する流路である。前記排気路Eは、前記加熱装置25によって加熱された空気によって吸着材を再生した後、排気EAとして外部へ排出する流路である。また、低露点室2及び前室3の吸込口13から吸い込んだ還気RAを、給気路Sに2段配置される冷却装置24、24の間に導入する還気路Rが形成されている。 【0038】 前記除湿ロータ20は、回転ドラム状に形成されたケーシングの両側面に網目状、ハニカム状、スリット状などの通気構造が備えられ、前記ケーシングの内部には、水分の吸脱着性能に優れた従来より公知のシリカゲル、ゼオライト、酸化アルミナなどの吸着材が内蔵されている。各流路S、Eの空気は、ケーシングの前記通気構造を通って除湿ロータ20の内部を通過でき、その際に内蔵する吸着材の水分の吸着・脱着の作用によって湿度調整が行われている。この除湿ロータ20は、ケーシングの両側面の中心部に流路方向に沿って設けられた回転軸によって回転自在に支持され、回転軸を所定の回転速度で回転させることにより、吸着材の吸着・脱着の作用が連続的に切り替わるようになっている。」 「【0041】 なお、前記給気路Sには、除湿ロータ20の前段に給気ファン28が配設されるとともに、前記排気路Eには、除湿ロータ20の後段に排気ファン29が配設されている。これら給気ファン28及び排気ファン29は、前記制御器6によってインバータ制御されている。」 「【0045】 一方、各流路S、E、P、Rには、空気の流量を調整するためのダンパが備えられている。給気路Sには導入路近傍、給気ファン28の前段及び除湿ロータ20の後段にそれぞれダンパD1、D2、D3が設けられている。また、排気路Eには室外への排気路近傍にダンパD4が設けられている。パージ給気路Pにはパージ領域23の出口近傍にダンパD5が設けられている。還気路Rには給気路Sとの合流点近傍にダンパD6が設けられている。これらダンパD1~D6は、制御器6によって開度が制御されている。」 「【0055】 この非在室運転モードとは、除湿装置4から各室に供給する低露点空気の送風量を後段で詳述する在室運転モードより小さくした運転モードのことであり、具体的には在室運転モードの半分以下の送風量とすることができる。また、低露点室2及び前室3のいずれもが非在室運転モードとされている場合、表1に示されるように、除湿装置4から供給される低露点空気の露点温度を高く設定することができる。この露点温度を上げた運転は、送風量を低減することと共に行うこともできるし、送風量を低減することに代えて行うこともできる。 【0056】 上述の送風量を調整するには、除湿装置4の給気ファン28のインバータ周波数を調整することにより行うことができる。また、露点温度を調整するには、排気ファン29のインバータ周波数を調整するか、加熱装置25の加熱温度を低温に設定することにより行うことができる。従って、給気ファン28、排気ファン29の運転エネルギーが低減でき、加熱装置25の空気加熱に要するエネルギーが低減できる。さらに排気ファン29の風量を低減し、再生領域22への風量を低減することで、外気取り入れ空気量(OA)も低減されるため、外気冷却除湿に要する冷却装置24の運転エネルギーも低減できる。 【0057】 より具体的な運転制御要領について説明すると、先ず低露点室2及び前室3への低露点空気の送風量を、それぞれ風量測定器34、36にて計測し、所定の風量になるように可変流量調節器33、35の開度を調整する。ダクト内静圧を圧力計32によって計測し、低露点室2及び前室3が室外雰囲気に対して負圧になることなく、且つ低露点室2及び前室3への供給風量を低下させることなく、給気ファン28のインバータ周波数を低下させる。このとき低露点室2及び前室3の室内圧力は、差圧計16、17によって計測され、これらの計測結果が制御器6に伝送され、制御器6によって可変流量調節器33、35及び給気ファン28のインバータ周波数を適正な値に制御する。さらに、除湿装置4からの低露点空気が非在室運転モードの設定風量及び設定露点温度となるように、排気ファン29のインバータ周波数を低減し、加熱装置25の設定温度を低下させる。」 「図1 [図:0001432437000001.jpg] 」 b 引用文献1から理解できる事項 上記aの引用文献1の記載事項等から、以下の事項が理解できる。 (a)段落【0026】、【0035】、【0038】、【0041】、【0045】、【0056】、【0057】、図1等の記載から、引用文献1の除湿システム1は、除湿装置4と制御器6を備え、制御器6が、除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3、排気ファン29、ダンパD4の運転動作を調節することが理解できる。 (b)段落【0056】、【0057】には、露点温度を調整するために、排気ファン29のインバータ周波数を調整することが記載されており、制御器6が、露点温度を調整するために、排気ファン29の運転動作を調整することが理解できる。 c 引用発明 上記a、bから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 空気の露点温度を-50℃から-70℃に調整する除湿システム1であって、 除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3、排気ファン29、ダンパD4の運転動作を調節する制御器6を備え、 前記制御器6は、排気ファン29の運転動作を調整して、露点温度を調整するものである、除湿システム1。」 イ 引用文献2 同じく令和7年7月30日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった中国特許出願公開第104699147号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 a 引用文献2の記載(なお、それぞれの記載事項について、当審の訳を付した。) 「 [図:0001432437000002.jpg] 」 [0044]以上のようにして湿度センサ110及び露点温度センサ120でそれぞれ測定された空気の絶対湿度値及び露点温度値は、制御部130にリアルタイムで入力され、制御部130は、これらの測定値に基づいて循環ファン20の送風量を調整し、乾燥室70の露点温度を制御する。具体的には、制御部130は、まず、露点温度センサ120によって測定された乾燥室70の露点温度が所定の目標値に維持されるように、循環ファン20から除湿ロータ30への供給風量を調整する。これは、循環ファン20のファンブレードの回転速度を調整することによって達成することができる。このため、制御装置130は、循環ファン20のファンブレードの回転を調整するための電流を印加するように構成されている。 「 [図:0001432437000003.jpg] 」 [0047]さらに、本発明の別の実施形態では、制御部130において循環ファン20の給気風量を調整する際に、排気ファン60の排気風量も調整することができる。すなわち、循環ファン20と排気ファン60の風量を同時に調整することも、いずれか一方の風量のみを調整することも可能である。オプションとして、風量調整を順次行うことも、少なくとも部分的に重複して行うことも可能である。循環ファン20の給気風量の調整だけでは露点温度を目標値内に迅速に管理することが困難な場合、排気ファン60の風量も調整することで、より迅速かつ容易に露点温度を管理することができる。循環ファン20と排気ファン60の風量の調整は、循環ファン20と排気ファン60のファン羽根の回転数を調整することで行うことができる。 「図1 [図:0001432437000004.jpg] 」 b 引用文献2に記載の技術的事項 引用文献2の記載から、以下の技術的事項(以下「引用文献2に記載の技術的事項」という。)が認められる。 「露点温度が所定の目標値に維持されるように、循環ファン20から除湿ロータ30への供給風量を調整すること、及び循環ファン20と排気ファン60の風量を同時に調整して、露点温度を調整すること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明と、本件補正発明とを対比する。 引用発明の「-50℃から-70℃」は、本件補正発明の「-20℃以下」に包含される。 引用発明の「除湿システム1」は、本件補正発明の「露点温度調節用除湿装置」に相当し、同様に、「制御器6」は「調整部」に相当する。 また、引用発明の「除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3、排気ファン29、ダンパD4の運転動作を調節する制御部6」は、本件補正発明の「前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度を調節することで露点温度を調整する調整部」と、「前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度を調節する調整部」である限りで一致する。 さらに、引用発明の「排気ファン29の運転動作を調整して、露点温度を調整する」ことは、本件補正発明における「排気ファンの回転速度」を「調節することで露点温度を調整する」ことに相当する。 そうすると、引用発明の「前記制御器6は、排気ファン29の運転動作を調整して、露点温度を調整する」ことは、本件補正発明の「前記調整部は除湿機能に対する寄与率の大きい第1の制御と寄与率の小さい第2の制御を組合わせて露点温度を調整するものであり、前記第1の制御は、除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度を調節することで露点温度を調整するものであり、前記第2の制御は、除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数を調節することで露点温度を調整する」ことと、「排気ファンの回転速度を調節することで露点温度を調整するものである」限りで一致する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「 空気の露点温度を-20℃以下に調整する露点温度調節用除湿装置であって、 前記露点温度調節用除湿装置に空気を導入するための前記露点温度調節用除湿装置内部の供給ファンの回転数、除湿ロータの回転速度、吹出風量調節ダンパの開度、空気を排気するための排気ファンの回転数、排気風量調節ダンパの開度を調節する調整部を備え、 排気ファンの回転速度を調節することで露点温度を調整するものである、露点温度調節用除湿装置。」 【相違点】 「調整部」(制御器6)により、 本件補正発明では、「露点温度を調整する」とされ、「前記調整部は除湿機能に対する寄与率の大きい第1の制御と寄与率の小さい第2の制御を組合わせて露点温度を調整するものであり、前記第1の制御は、除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度を調節することで露点温度を調整するものであり、前記第2の制御は、除湿機能に対する寄与率が小さい吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数を調節することで露点温度を調整するものである」と特定されているのに対し、 引用発明は、制御器6によって、除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3、排気ファン29、ダンパD4の運転動作を調節するものであり、排気ファン29の運転動作を調整して、露点温度を調整しているものの、排気ファン29以外の制御対象である、除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3及びダンパD4の運転動作の調節により、露点温度を調整しているか不明である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 引用発明において、排気ファン29以外の制御対象である、除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3及びダンパD4の運転動作の調節によっても、露点温度が調整されているか、又は露点温度を調整することが当業者にとって容易になし得るか検討する。 イ 「除湿装置4の給気ファン28」の運転動作の調節について 引用文献2には、「露点温度が所定の目標値に維持されるように、循環ファン20から除湿ロータ30への供給風量を調整すること、及び循環ファン20と排気ファン60の風量を同時に調整して、露点温度を調整すること。」との技術的事項(上記(2)イbを参照。)が記載されている。 そうすると、引用文献2に記載の技術的事項に鑑みれば、除湿ロータを用いた除湿装置の技術分野において、給気ファンを制御して除湿ロータ30への供給風量を調整することにより露点温度が調整できることは技術常識であるから、引用発明の除湿装置4の給気ファン28の運転動作を調整することにより、露点温度が調整されることは自明である。 または、引用発明と、引用文献2に記載の技術的事項とは、露点温度を所定の目標値に設定するとの課題が共通するとともに、除湿ロータを用いた除湿装置に関するとの技術分野が共通し、給気ファン及び排気ファンを制御する機能も共通するから、引用発明に、引用文献2に記載の技術的事項を適用して、引用発明の除湿装置4の給気ファン28の運転動作を調整することにより、露点温度を調整することは当業者が容易になし得るものともいえる。 ウ 「除湿ロータ20」の運転動作の調節について 引用文献1の段落【0038】には、「前記除湿ロータ20は、回転ドラム状に形成されたケーシングの両側面に網目状、ハニカム状、スリット状などの通気構造が備えられ、前記ケーシングの内部には、水分の吸脱着性能に優れた従来より公知のシリカゲル、ゼオライト、酸化アルミナなどの吸着材が内蔵されている。各流路S、Eの空気は、ケーシングの前記通気構造を通って除湿ロータ20の内部を通過でき、その際に内蔵する吸着材の水分の吸着・脱着の作用によって湿度調整が行われている。この除湿ロータ20は、ケーシングの両側面の中心部に流路方向に沿って設けられた回転軸によって回転自在に支持され、回転軸を所定の回転速度で回転させることにより、吸着材の吸着・脱着の作用が連続的に切り替わるようになっている。」と記載されているから、引用発明においても、除湿ロータ20は、所定の回転速度で回転され、吸着材の吸着・脱着の作用が連続的に切り替えられ、そのことにより除湿機能が発揮又は維持されるものであり、露点温度が調整されることは自明である。 また、除湿ロータは、所定の回転速度で回転させることにより、吸着材の吸着・脱着の作用が連続的に切り替わるように制御されるものであるから、除湿ロータの回転速度が除湿性能に大きな影響を及ぼすことは技術常識でもあり、当該技術常識を踏まえれば、引用発明の除湿ロータ20についても、所定の回転速度で回転させることにより、露点温度が調整されることは自明ないし当業者が容易になし得るものともいえる。 エ 「ダンパD3、ダンパD4」の運転動作の調節について まず、ダンパD3、ダンパD4の配置について、引用文献1の段落【0045】の記載及び図1の図示内容から、ダンパD3は給気ファン28からの給気路S上で除湿ロータ20の後段に設けられていること、ダンパD4は、排気ファン29からの排気路E上に設けられていることが理解できる。また、同段落【0045】には、ダンパD3、D4が、制御器6によって、それらの開度が制御されることが記載されている。 そして、引用発明は、排気ファン29の運転動作を調整して、露点温度を調整するものであるところ、排気ファン29からの排気路E上に設けられているダンパD4の開度を制御しなければ、露点温度を調整できないことは明らかである(例えば、ダンパD4が全閉の場合、排気ファン29の運転動作を調節しても、露点温度は調整できない。)。 また、上記イで説示したとおり、引用発明の除湿装置4の給気ファン28の運転動作を調節することにより、露点温度が調整されることは自明ないし当業者が容易になし得るものであるところ、給気ファン28からの給気路S上で除湿ロータ20の後段に設けられているダンパD3の開度を制御しなければ、露点温度を調整できないことも明らかである。 さらに、引用文献1の段落【0004】には、従来技術について「また、低露点室の露点温度を制御する方法として、下記特許文献3では、ドライルーム内に設置された露点計によってドライルーム内の露点温度を検出し、その検出値を制御装置に伝達するとともに、制御装置は検出された露点温度に応じて、バイパスダンパ、比例制御ダンパ及び露点制御ファンを制御し、1段目ロータの除湿部前後の露点温度が高い処理エアを2段目ロータの除湿部で低露点に除湿されたドライエアと混合して、ドライルーム内に供給されるドライエアの露点温度を調整する方法が開示されている。」との記載があり、除湿ロータを用いた除湿装置において、ダンパの開度を調整することにより、露点温度を調整することは、技術常識であるとも認められるため、当該技術常識を踏まえれば、引用発明のダンパD3、D4の開度を調節することにより、露点温度が調整されることは、自明ないし当業者が容易になし得るものであるともいえる。 オ 以上、イ~エで示したとおり、引用発明において、排気ファン29以外のパラメータである、除湿装置4の給気ファン28、除湿ロータ20、ダンパD3及びダンパD4の運転動作を調節することによっても、露点温度が調整されることは自明ないしは当業者にとって容易になし得るものである。 したがって、相違点に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものである。 カ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 キ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ケ 請求人の主張について 請求人は、令和7年10月6日提出の意見書において、以下の旨を主張しているから検討する。 (ア)本件補正発明は、露点温度を調整するにあたって、「除湿機能に対する寄与率の大きい第1の制御と寄与率の小さい第2の制御」を組み合わせて露点温度を調整するという技術的思想に基づいており、このような「除湿機能に対する寄与率」に基づく制御対象の分類と、粗調整と微調整の役割分担による制御は、引用文献1にも引用文献2にも一切記載されておらず、単なる複数制御の併用とは技術的に一線を画すものである。 (イ)本件補正発明は、寄与率の大きい第1の制御として「除湿機能に対する寄与率が大きい排気ファンの回転速度、除湿ロータの回転速度、排気風量調節ダンパの開度」という具体的な3つの機能部をそれぞれ調節する構成であり、かつ、寄与率の小さい第2の制御として「吹出風量調節ダンパの開度、供給ファンの回転数」という具体的な2つの機能部をそれぞれ調節するものであり、このように、「除湿機能に対する寄与率」に応じて制御対象を分類し、複数の機能部のそれぞれをバランス良く調整することで露点温度を最適化するという制御は、引用文献1及び2のいずれにも記載されておらず、また示唆もされていない。 (ウ)仮に除湿ロータへの空気の供給量や排気量が、供給側及び排気側のダンパの開度に影響されることが技術常識であったとしても、それをもって引用文献1及び2において、本件補正発明のような制御対象の定量的評価やその大小に応じて制御を行うという技術的思想が記載されているとはいえない。 上記請求人の主張について検討する。 (ア)と(イ)について検討する。 まず、本件補正発明においては、「除湿機能に対する寄与率が大きい」制御対象として「排気ファンの回転速度」、「除湿ロータの回転速度」及び「排気風量調節ダンパの開度」が選択され、それぞれ制御されるとともに、「除湿機能に対する寄与率が小さい」制御対象として「吹出風量調節ダンパの開度」及び「供給ファンの回転数」が選択され、それぞれ制御されているところ、引用発明においても、排気ファン29、除湿ロータ20、ダンパD4、除湿装置4の給気ファン28、ダンパD3は、いずれも除湿機能を発揮する又は維持するためにそれぞれの運転動作が制御されているから、制御対象について、本件補正発明と引用発明とが異なるとは認められない。 続いて、本件補正発明において、制御対象が分類されていることについて検討してみても、本願明細書の段落【0042】には、「なお、寄与率とは、当該機能部の制御パラメータのみを変動した際に、露点温度の変動量の大きさを評価したものである。」と記載され、段落【0022】~【0040】に、「排気ファンの回転速度」、「除湿ロータの回転速度」、「排気風量調節ダンパの開度」、「吹出風量調節ダンパの開度」、「供給ファンの回転数」のそれぞれを制御することにより、露点温度がどのように調整されるのかについての記載はあるものの、一つの制御対象の寄与率と他の制御対象の寄与率とを比較して(例えば、「排気ファンの回転速度」による寄与率と、「供給ファンの回転数」による寄与率とを比較して)、それぞれの寄与率の大小を示すような実験結果などは記載も示唆もされていない。 さらに、本願明細書の段落【0046】には、「この制御プログラムは、任意の露点温度の設定値に対する供給ファン2 、除湿ロータ7、吹出風量調節ダンパ17、排気ファン18、排気風量調節ダンパ19の寄与率を実測値から算出し、各運転動作を最適化した運動制御アルゴリズムを含む。」と記載されているものの、供給ファン2、除湿ロータ7、吹出風量調節ダンパ17、排気ファン18、排気風量調節ダンパ19の具体的な寄与率の値も、制御プログラムによる具体的な算出方法も記載されていないから、特定の制御対象が他の制御対象よりも、除湿機能に対する寄与率が大きい又は小さいと理解することはできない。 加えて、寄与率(露点温度の変動量の大きさ)は、制御対象の操作量の大きさ等によっても変化することが技術常識であるから、露点温度に影響を及ぼす各制御対象において、それぞれの操作量を特定することなく、一の制御対象が他の制御対象よりも、寄与率が大きい又は小さいということもできない。 以上からすると、本件補正発明における、「排気ファンの回転速度」、「除湿ロータの回転速度」及び「排気風量調節ダンパの開度」が「除湿機能に対する寄与率が大きい」制御対象であり、「吹出風量調節ダンパの開度」及び「供給ファンの回転数」が「除湿機能に対する寄与率が小さい」制御対象であることは、本願明細書に示されていない。そして、本願明細書の記載及び技術常識に照らすと、露点温度を調整するための各制御対象について、「除湿機能に対する寄与率」に応じて分類を行ったことに、実質的な意味はない。よって、本件補正発明において、「除湿機能に対する寄与率」に応じて制御対象を分類したことの技術的意義を認めることはできず、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項において、排気ファン29、除湿ロータ20、ダンパD4、除湿装置4の給気ファン28、ダンパD3を制御したものと、実質的に相違するとはいえない。 さらに、本件補正発明には、それぞれの制御対象について、具体的にどの程度の操作量で操作するか特定されていないから、粗調整と微調整の役割分担による制御がなされるとか、複数の機能部のそれぞれをバランス良く調整することで露点温度を最適化するという制御である旨の主張も採用できない。 (ウ)について検討する。 本願明細書には、各制御対象の定量的評価は記載されていないし、本件補正発明には、それぞれの制御対象について、具体的にどの程度の操作量で操作するか特定されておらず、制御対象の定量的評価の大小に応じて制御を行うことが特定されているともいえないから、請求人の主張は採用できない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和7年10月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和7年7月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。 2 令和7年7月30日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における、拒絶の理由 令和7年7月30日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における、拒絶の理由2(進歩性)は、この出願の請求項1~5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2011-190989号公報 引用文献2:中国特許出願公開第104699147号明細書 3 引用文献 引用文献1、2及びそれら記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「調整部」、「第1の制御」及び「第2の制御」のそれぞれについて、露点温度を調整するために列記されている複数の制御対象の調節について、「から選択される少なくとも1つの運転動作」又は「の内少なくとも1つ」との要件を付加して、列記されている複数の制御対象を全て調節する旨の限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-022373

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