特許異議申立
2018-700969
安定化スブチリシン組成物
- 審判番号
- 2018-700969
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-517745外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月30日
- 審決日
- 2020年01月16日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】渡辺 陽一
- 【権利者代理人】中島 勝
- 【権利者代理人】武居 良太郎
- 【権利者代理人】池田 達則
- 【権利者代理人】石田 敬
- 【権利者代理人】福本 積
- 【権利者代理人】古賀 哲次
- 【異議申立人】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
- 【異議申立人代理人】特許業務法人平木国際特許事務所
- 分類
- P1651.121-YAA(C12N) / P1651.536-YAA(C12N) / P1651.537-YAA(C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法114条4項特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第114条第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6334396号発明「安定化スブチリシン組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6334396号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第6334396号の請求項2-15に係る特許を維持する。
特許第6334396号の請求項1に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6334396号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成24年6月29日に出願され、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は概ね次のとおりである。
平成30年11月30日 特許異議申立人 ビーエーエスエフ
ソシエタス・ヨーロピアによる
請求項1~15に係る特許に対する
特許異議の申立て
平成31年 1月21日付け 取消理由通知書
平成31年 4月23日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 1年 7月 4日付け 訂正請求があった旨の通知書
(特許法第120条の5第5項)
令和 1年 8月27日 特許異議申立人より意見書の提出
令和 1年 9月12日付け 取消理由通知書
令和 1年12月18日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、平成31年4月23日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
また、令和1年12月18日の訂正請求は、平成31年4月23日の訂正請求で訂正された特許請求の範囲の記載における軽微な不備を解消するものであるから、特許異議申立人にさらに意見を求める必要があるものではない。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
訂正前の一群の請求項〔1-15〕に対して請求された、令和1年12月18日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「Rが、NH-CHR-COをTyr、m-チロシン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、Phe、Val、Met、Nva、Leu、Ile、またはNleのLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基である、請求項1に記載の組成物。」とあるのを、「スブチリシンと、式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3M
(式中、
a)Mは、H(水素)またはアルカリ金属であり、
b)Rは、NH-CHR-COをLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基であり、
c)B1は、Ala、Cys、Gly、Pro、Ser、Thr、Val、Nva、またはNleの残基であり、かつ
d)Xは、Z-B2またはZ-B3-B2であり、ここで、B2およびB3が、それぞれ、1個のアミノ酸残基を表し、かつZが、N末端保護基であり、B2が、Val、Gly、Ala、Arg、Leu、Phe、またはThrの残基であり、そしてB3が、Phe、Tyr、Trp、フェニルグリシン、Leu、Val、Nva、Nle、またはIleの残基である)
を有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物と、を含む組成物であって、Rが、NH-CHR-COをTyr、m-チロシン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、Phe、Val、Met、Nva、Leu、Ile、またはNleのLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基である、組成物。」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、「(式中、B2およびZは、請求項1のように定義される)」の記載を削除し、「請求項1または2に記載の組成物。」の記載を「請求項2に記載の組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2または3に記載の組成物。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2~6のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2~7のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9において、「請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。」の記載を「請求項2~8のいずれか一項に記載の組成物。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9の「第2の酵素、特定的には、」の記載を「第2の酵素として、」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10において「(式中、M、R、B1、およびXは、請求項1のように定義される)」の記載を削除し、「請求項1~9のいずれか一項に記載の」の記載を「請求項2~9のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11において「MおよびXは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、「請求項1~9のいずれか一項に記載の」の記載を「請求項2~9のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14において「RおよびMは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、「請求項1~9のいずれか一項に記載の」の記載を「請求項2~9のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15において「RおよびMは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、「請求項1~9のいずれか一項に記載の」の記載を「請求項2~9のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0028】の「Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)、」の記載を削除する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は 請求項1を引用していた訂正前の請求項2について、請求項1を引用しない独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項1を削除したことに伴い、請求項3において請求項1に関する、「(式中、B2およびZは、請求項1のように定義される)」の記載を削除し、同時に請求項1を引用しないものとする訂正であるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(4)訂正事項4~9
訂正事項4~9は、請求項1を削除したことに伴い、請求項4~9において請求項1を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4~9が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(5)訂正事項10
訂正事項10は、請求項9の「第2の酵素、特定的には、」という記載を「第2の酵素として、」と訂正して、請求項9に係る発明を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項10が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(6)訂正事項11
訂正事項11は、請求項1を削除したことに伴い、請求項10において請求項1に関する「(式中、M、R、B1、およびXは、請求項1のように定義される)」の記載を削除し、同時に請求項1を引用しないものとする訂正であるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項11が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(7)訂正事項12
訂正事項12は、請求項1を削除したことに伴い、請求項11において請求項1に関する「MおよびXは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、同時に請求項1を引用しないものとする訂正であるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項12が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(8)訂正事項13
訂正事項13は、請求項1を削除したことに伴い、請求項14において請求項1に関する「RおよびMは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、同時に請求項1を引用しないものとする訂正であるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項13が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(9)訂正事項14
訂正事項14は、請求項1を削除したことに伴い、請求項15において請求項1に関する「RおよびMは、請求項1のように定義され、」の記載を削除し、同時に請求項1を引用しないものとする訂正であるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項14が同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであることは明らかである。
(10)訂正事項15
訂正事項15は、訂正前の明細書の段落【0028】に市販のスブチリシンの例として挙げられていた「Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)」を削除するものである。
「Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)」(膵臓トリプシン製品)は脊椎動物の消化酵素である酸性プロテアーゼであって、細菌のアルカリプロテアーゼであるスブチリシンとは異なるものと認められるから、「Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)」が市販のスブチリシンの例に該当するとはいえず、「Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)、」の記載を削除する訂正事項15は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項15は、願書に添付した明細書に記載した範囲内の訂正であると認められ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、同法120条の5第9項で準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものと認められる。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1ないし4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2~15に係る発明(以下「本件発明2」、「本件発明3」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
(【請求項1】は削除された。)
【請求項2】
スブチリシンと、式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3M
(式中、
a)Mは、H(水素)またはアルカリ金属であり、
b)Rは、NH-CHR-COをLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基であり、
c)B1は、Ala、Cys、Gly、Pro、Ser、Thr、Val、Nva、またはNleの残基であり、かつ
d)Xは、Z-B2またはZ-B3-B2であり、ここで、B2およびB3が、それぞれ、1個のアミノ酸残基を表し、かつZが、N末端保護基であり、B2が、Val、Gly、Ala、Arg、Leu、Phe、またはThrの残基であり、そしてB3が、Phe、Tyr、Trp、フェニルグリシン、Leu、Val、Nva、Nle、またはIleの残基である)
を有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物と、を含む組成物であって、Rが、NH-CHR-COをTyr、m-チロシン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、Phe、Val、Met、Nva、Leu、Ile、またはNleのLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基である、組成物。
【請求項3】
Xが、Z-B2である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
B2が、Gly、Arg、またはLeuの残基である、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
B3が、Phe、Tyr、Trp、または、Leuの残基である、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
Zが、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、p-メトキシベンジルカルボニル(MOZ)、ベンジル(Bn)、ベンゾイル(Bz)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、ホルミル、アセチル(Ac)、メチルオキシ、またはメチルオキシカルボニルである、請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
液体形態または顆粒形態である、請求項2~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤をさらに含む洗剤である、請求項2~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
第2の酵素として、リパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼ、またはペルオキシダーゼをさらに含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
スブチリシンと、式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3Mを有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物を含む水性溶液と、任意選択で界面活性剤と、を混合することを含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項11】
式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3M(式中、B1は、Ala、Cys、Gly、Ser、Thr、Val、Nva、またはNleの残基であり、かつRは、NH-CHR-COをTyr、m-チロシン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、Phe、Val、Met、Nva、またはNleのLまたはD-アミノ酸残基であるようにする基である)を有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物である、請求項2~9のいずれか一項に記載の組成物で使用するための化合物。
【請求項12】
Cbz-RA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Ac-GA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Cbz-GA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Cbz-GG-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Cbz-RV-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Cbz-LV-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Ac-LGA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Ac-FGA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Ac-YGA-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H、Ac-FGV-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-HまたはAc-WLV-NHCH(CH2C6H4OH)C(OH)(SO3M)-H(ここで、Acは、アセチルであり、かつCbzは、ベンジルオキシカルボニルである)である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Cbz-GA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、Cbz-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、Cbz-GA-NHCH(CH2Ph)C(OH)(SO3M)-H、Cbz-GA-NHCH(CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、Cbz-GG-NHCH(CH2Ph)C(OH)(SO3M)-H、Ac-FGA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、Ac-FGA-NHCH(CH2Ph)C(OH)(SO3M)-H、Ac-FGA-NHCH(CH2CH2SCH3)(SO3M)-H、MeO-CO-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、MeNCO-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、MeO-CO-FGA-NHCH(CH2CH(CH3)2))-C(OH)(SO3M)-H、MeO-CO-FGA-NHCH(CH2Ph)C(OH)(SO3M)-H、MeSO2-FGA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、MeSO2-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、PhCH2O(OH)(O)P-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、EtSO2-FGA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、PhCH2SO2-VA-NHCH(CH2CH(CH3)2))-C(OH)(SO3M)-H、PhCH2O(OH)(O)P-LA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、PhCH2O(OH)(O)P-FA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H、およびMeO(OH)(O)P-LGA-NHCH(CH2CH(CH3)2))C(OH)(SO3M)-H(ここで、Acは、アセチルであり、かつCbzは、ベンジルオキシカルボニルである)である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3M(式中、B1は、Ala、Cys、Gly、Ser、Thr、Val、Nva、またはNleの残基を表し、Xは、Z-B2、Z-B3-B2であり、B3およびB2は、それぞれ、1個のアミノ酸残基を表し、Zは、N末端保護基であり、B3は、Phe、Tyr、Trp、フェニルグリシン、Leu、Val、Nva、Nle、またはIleであり、かつB2は、Gly、Thr、またはValである)を有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物である、請求項2~9のいずれか一項に記載の組成物で使用するための化合物。
【請求項15】
式X-B1-NH-CHR-CHOH-SO3M(式中、B1は、Ala、Cys、Gly、Ser、Thr、Val、Nva、またはNleの残基を表し、Xは、Z-B3-B2であり、B3およびB2は、それぞれ、1個のアミノ酸残基を表し、Zは、N末端保護基であり、B3は、Phe、Tyr、Trp、フェニルグリシン、Leu、Val、Nva、Nle、またはIleであり、かつB2は、Val、Gly、Ala、Arg、Leu、Phe、またはThrの残基である)を有するペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物である、請求項2~9のいずれか一項に記載の組成物で使用するための化合物。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
(1)平成31年1月21日付け取消理由通知
訂正前の請求項1~15に係る特許に対して、当審が平成31年1月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(進歩性)本件発明1~15は、下記引用例1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
2.(サポート要件、実施可能要件)本件発明1~15は、特許法第36条第6項第1号の規定、および同法第36条第4項第1号の規定に違反して特許されたものである。
3.(明確性要件)本件発明9~15は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。
したがって、請求項1~15に係る発明の特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。
引用例1:国際公開第2011/036153号(甲第1号証)
引用例2:特表2011-515449号公報(甲第2号証)
引用例3:特開昭59-205359号公報(甲第4号証)
(2)令和1年9月12日付け取消理由通知
見なし取下げとなった平成31年4月23日の訂正請求により訂正された請求項1~15に対して、当審が令和1年9月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(明確性要件)訂正された請求項3~15に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.引用例の記載事項
取消理由通知において引用した引用例1~3には以下の事項が記載されている。なお、引用例1は英文であるから翻訳文を記載する。また、下線は当審が付したものである。
(1)引用例1
ア 「【請求項1】
界面活性剤および/または助剤、プロテアーゼ、およびプロテアーゼ阻害剤を含む、粉末状洗浄剤組成物。
【請求項2】
洗浄力または前記洗浄剤溶液中の前記プロテアーゼの洗浄中の安定性の増加のために効果的な量の阻害剤を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
・・・・
【請求項9】
前記プロテアーゼがサブチリシンまたは10Rプロテアーゼである、請求項1‐8のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
・・・・
【請求項14】
前記阻害剤が、式B2‐B1‐B0‐R:
[式中、
a)Rが、水素、CH3、CX3、CHX2、またはCH2X、ここでXが、ハロゲン原子であり;
b)B0が、単一アミノ酸残基であり;
c)B1が、単一アミノ酸残基であり;および
d)B2が、場合により、N末端保護基を含む、一またはそれ以上のアミノ酸残基からなる(好ましくは、一または二)。] を有するペプチドアルデヒドである、請求項1-13のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。」(特許請求の範囲)
イ 「B1は、場合により、脂肪族側鎖、好ましくはアラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン、ノルバリンまたはノルロイシンで置換された小さな残基でもよい。」(5頁4~5行)
(2)引用例2
ア 「【要約】 C末端残基としてOH置換フェニルアラニンアルデヒドを有するペプチド化合物をはじめとする、ペプチドアルデヒド又はケトン誘導体は特に、液体洗剤のような水性組成物中のサブチリシン型プロテダーゼを安定化するのに効果的である。」(要約)
イ 「【請求項1】
サブチリシンと式B2-B1-B0-Rのペプチド化合物とを含んでなる液体組成物であって、ここで
Rは水素、CH3、CX3、CHX2又はCH2X(Xはハロゲン原子である)であり;
B0はパラ位及び/又はメタ位にOH置換基を有するフェニルアラニン残基であり;
B1は単一アミノ酸残基であり;そして
B2は随意にN末端保護基を含んで成る1又は複数個のアミノ酸残基から成ることを特徴とする液体組成物。」(特許請求の範囲)
ウ 「【0021】
本発明の特定の一態様では、ペプチド化合物は、C末端残基を包含する3個のみのアミノ酸残基を含んで成る。本発明のこの観点では、合成はよりコストが効果的であり、化合物はより高度に効果的な酵素活性阻害剤であると証明された。好ましくは、わずか3個のアミノ酸残基を有するペプチド化合物は、N末端保護基により保護される。従って、この観点では、本発明は、B2がN末端保護基を含んで成る単一アミノ酸残基である化合物に関する。
【0022】
本発明の好ましい観点では、ペプチド化合物は3個のみのアミノ酸残基を含んで成り、B2がN末端保護基を含有するアルギニン、グリシン及びロイシンの中から選択されるというアルデヒド化合物である。ペプチド化合物がわずか3個のアミノ酸残基を含んで成るアルデヒドである場合、B2は好ましくはN末端保護基を含有するアルギニンとグリシンの中から選択される。
【0023】
本発明の別の観点では、ペプチド化合物は少なくとも4個のアミノ酸残基を含んで成る。好ましくは、少なくとも4個のアミノ酸残基を有するペプチド化合物がN末端保護基により保護される。従って、この観点では、本発明は、B2がN末端保護基を含んで成る少なくとも2個のアミノ酸残基である化合物に関する。
【0024】
好ましい観点では、ペプチド化合物が少なくとも4個のアミノ酸残基を含んで成る場合、B2は無極性の側鎖を有するN末端アミノ酸残基を含んで成る。より具体的な態様では、B1への結合箇所から数えてB2の2番目のアミノ酸残基は無極性の側鎖を有する。更により具体的な態様では、ペプチド化合物は4個のアミノ酸残基を含んで成り、ここで無極性の側鎖を有するN末端アミノ酸残基はグリシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンの中から選択される。好ましくは、該N末端アミノ酸残基が更にN末端保護基を含んで成る。
【0025】
B1は小型のアミノ酸残基であるのが好ましい。より好ましくは、B1はアラニン又はバリンである。この点では、次のものが小型アミノ酸であるとみなされる:アラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン、ノルバリン、ノルロイシン。
【0026】
ペプチド化合物は、Rが水素であり、B1が好ましくはバリンやアラニンのような小型アミノ酸の中から選択された単一アミノ酸であり、B2が少なくとも2個のアミノ酸残基を含んで成り、そして前記2個のアミノ酸残基のうちの少なくとも1個がフェニルアラニン、グリシン及びロイシンの中から選択され、そしてB2の2番目のアミノ酸残基がフェニルアラニン、グリシン、ロイシン、チロシン及びトリプトファンの中から選択された無極性の側鎖を有するというアルデヒドである。好ましくは、B2はアセチル(Ac)N末端保護基を含んで成り、特に、ペプチドアルデヒド化合物Ac-FGAY-H,Ac-LGAY-H,Ac-YGAY-H,Ac-FGVY-H及びAc-WLVY-Hを提供する。好ましくは、本発明のこの観点に従う化合物は、10個未満の残基、例えば9,8,7,6,5個又は最も好ましくは4個のアミノ酸残基を含んで成る。」
(3)引用例3
ア 「1 発明の名称
プロリン誘導体、その製法、これを含有するヒト白血球エラスタ-ゼ
2 特許請求の範囲
1. 式(I)、(II)又は(III):
〔式中R1、R5及びR9は炭素原子数3~6を有する低級アルキル基を表わし、R2、R3、R6、R7及びR10は、場合により1個の単環式アリール基によって又は1個のアミド、尿素又はカルバメート基によりその窒素原子を介して置換されていてよい、炭素原子数1~10のアルキル基を表わし、R4及びR11は、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ又は置換低級アルコキシ基(ここでアルキル又はアルコキシは炭素原子数1~6個を有する)又は単環式又は二環式アリール基を表わし、R8はヒドロキシ、炭素原子数1~6を有する低級アルコキシ基又は炭素原子数7~12を有するアルアルコキシ基を表わし、式中-CHR2-、-CHR3-、-CHR6-、-CHR7-、-CHR10-及びプロリン基は、L-配置のものである〕のプロリン誘導体又はその薬物学的に認容性の酸-又は塩基-付加塩又はアルデヒド群の薬物学的に認容性の平衡付加化合物。」(1頁下欄)
イ 「式(I)、(II)及び(III)の本発明の化合物は、ヒト白血球エラスターゼ(HLE)の強力で、可逆性の、選択的で競争性の阻害剤である。これら化合物は、公知文献に記載の最も強力なアルデヒドHLE阻害剤よりも、40000倍までも大きい能力を有し(Szabo等による前記引用文献参照)、組織変性疾病例えば 気腫、アテローム性動脈硬化症、骨関節炎及びリウマチ性関節炎の治療及び予防に有用である。」(6頁左下欄9~17行)
ウ 「(I)、(II)又は(III)式のアルデヒド群の平衡付加化合物には重亜硫酸塩、ヘミアセタール及びヘミアミナール、同様にザ・ケミストリイ・オブ・ファンクショナル・グループス(The Chemistry of Functional Groups)、S.Patai Interscience Publishers,a division of John Wiley & Sons,New York(1970年)発行シリーズ第2巻のザ・ケミストリイ・オブ・ザ・カルボニル・グループ(The Chemistry of the Carbonyl Group)に記載のような他の遮へいされたアルデヒドが包含される。
この重亜硫酸塩付加生成物は、中の-CHO基が例えば亜硫酸塩例えば式NaHSO3の亜硫酸水素ナトリウムとの反応により-CHOHSO3Hに変えられているものである。」(7頁右下欄3~17行)
3.引用例1を主引用例とした進歩性
(1)引用発明1
上記2.(1)より、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「界面活性剤および/または助剤、プロテアーゼ、およびプロテアーゼ阻害剤を含む、粉末状洗浄剤組成物であって、
前記プロテアーゼ阻害剤が、式B2‐B1‐B0‐R:
[式中、
Rが、水素、CH3、CX3、CHX2、またはCH2X、ここでXが、ハロゲン原子であり;
B0が、単一アミノ酸残基であり;
B1が、アラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン、ノルバリンまたはノルロイシンから選ばれるアミノ酸残基であり;および
B2が、N末端保護基を含む、一またはそれ以上のアミノ酸残基である]
を有するペプチドアルデヒドである、洗浄剤組成物。」
(2)対比
本件発明2と引用発明1を対比する。
引用例1にはプロテアーゼとしてスブチリシンも例示されている(引用例1の請求項9など)。
また、引用例3(上記2.(3)ウ)に記載されるように、ペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物、すなわちペプチドアルデヒドの重亜硫酸塩付加生成物とは、ペプチドアルデヒドの-CHO基に亜硫酸水素ナトリウム(「重亜硫酸ナトリウム」と同義。)などを反応させることにより、-CHO基が-CHOH-SO3Hに変えられたものと認められるから、引用発明1の「式B2‐B1‐B0‐R」を有するペプチドアルデヒドは、「ペプチドアルデヒド化合物」に対して上記反応を行って本件発明1の「ペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物」とする前の「ペプチドアルデヒド化合物」に相当すると認められる。
したがって、両者は以下の点で相違すると認められる。
(相違点1)
「ペプチドアルデヒド化合物」が、本件発明2ではヒドロ亜硫酸付加物であるのに対して、引用発明1ではヒドロ亜硫酸付加物ではない点。
(3)判断
本件特許明細書の段落【0026】には「本発明に係るスブチリシンは、Siezen et al.(supra)により提案されたサブグループで表されるスブチラーゼと機能的に等価でありうる。」と記載され、さらに、本件明細書の段落【0028】の記載が訂正されたことからみて、本件発明2にいう「スブチリシン」とは、当業界において通常「スブチリシン」と呼ばれる範疇のものと認められ、当業者の技術常識に照らせば、引用例3に記載されたヒト白血球エラスターゼは、本件発明2にいう「スブチリシン」とは異なるものと認められる。
引用例3には、式(I)、(II)、又は(III)のプロリン誘導体又はその平衡付加化合物がヒト白血球エラスターゼの阻害剤であることが記載され(上記2.(3)イ)、該平衡付加化合物の具体例として重亜硫酸塩が記載されており(上記2.(3)ウ)、引用例3の記載から、式(I)、(II)、又は(III)のプロリン誘導体とその重亜硫酸塩は、いずれもヒト白血球エラスターゼという特定の酵素の阻害剤として機能することまでは理解できるが、ヒト白血球エラスターゼとは異なる酵素、例えば「スブチリシン」の場合にも同様であるかは明らかでない。
また、引用例3は式(I)、(II)、又は(III)のプロリン誘導体について記載するものであるところ、本件発明2と同様にB2にN末端保護基を含むものである引用発明1の「ペプチドアルデヒド化合物」は、N末端保護基を含まないこのプロリン誘導体とは異なる化合物である。しかも、該「ペプチドアルデヒド化合物」のN末端保護基以外の部分は、このプロリン誘導体以外を広く含む化合物であるから、引用発明1の「ペプチドアルデヒド化合物」を重亜硫酸塩とすることについて引用例3に示唆されているとはいえない。
そうすると、特に、引用発明1のプロテアーゼがヒト白血球エラスターゼとは異なる酵素である「スブチリシン」などである場合に、引用発明1の「ペプチドアルデヒド化合物」に替えて該化合物のヒドロ亜硫酸付加物を用いることを当業者が容易に想到するとはいえない。
したがって、本件発明2は、引用例1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明3~9は、本件発明2をさらに減縮したものであり、本件発明10~15は本件発明2を引用するものであるから、本件発明3~15についても、本件発明2についての判断と同様の理由により、引用例1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.引用例2を主引用例とする進歩性
(1)引用発明2
上記2.(2)より、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「サブチリシンと、酵素活性阻害剤である式B2-B1-B0-Rのペプチドアルデヒド化合物とを含んでなる液体組成物であって、ここで
Rは水素、CH3、CX3、CHX2又はCH2X(Xはハロゲン原子である)であり;
B0はパラ位及び/又はメタ位にOH置換基を有するフェニルアラニン残基であり;
B1はアラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン、ノルバリンまたはノルロイシンのアミノ酸残基であり;そして
B2はN末端保護基を含んで成る1又は複数個のアミノ酸残基から成ることを特徴とする液体組成物。」
(2)対比
本件発明2に特定される式において、Rがパラ位及び/又はメタ位にOH置換基を有するフェニルアラニン残基であるようにする基である場合の本件発明2と、引用発明2とを対比する。
上記3.(2)のとおりであるから、引用発明2の「式B2-B1-B0-Rのペプチドアルデヒド化合物」は、「ペプチドアルデヒド化合物」の-CHO基に亜硫酸水素ナトリウムなどを反応させて本件発明2の「ペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物」とする前の「ペプチドアルデヒド化合物」に相当すると認められる。
したがって、両者は以下の点で相違すると認められる。
(相違点2)
「ペプチドアルデヒド化合物」が、本件発明2ではヒドロ亜硫酸付加物であるのに対して、引用発明2ではヒドロ亜硫酸付加物ではない点。
(3)判断
上記3.(3)のとおり、引用例3の記載から、式(I)、(II)、又は(III)のプロリン誘導体とその重亜硫酸塩は、いずれもヒト白血球エラスターゼという特定の酵素に対する阻害剤として機能することまでは理解できるが、引用発明2のサブチリシン(スブチリシン)はヒト白血球エラスターゼとは異なる酵素であり、引用例3の記載からスブチリシンの場合にも同様であるかは明らかでない。
また、引用例3は式(I)、(II)、又は(III)のプロリン誘導体について記載するものであるところ、本件発明2と同様にB2にN末端保護基を含むものである引用発明2の「ペプチドアルデヒド化合物」は、N末端保護基を含まないこのプロリン誘導体とは異なる化合物である。しかも、該「ペプチドアルデヒド化合物」のN末端保護基以外の部分は、このプロリン誘導体以外を広く含む化合物であるから、引用発明2の「ペプチドアルデヒド化合物」を重亜硫酸塩とすることについて引用例3に示唆されているとはいえない。
そうすると、「サブチリシン(スブチリシン)」を含む引用発明2の「ペプチドアルデヒド化合物」に替えて該化合物のヒドロ亜硫酸付加物を用いることを当業者が容易に想到するとはいえない。
したがって、本件発明2は、引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明3~9は、本件発明2をさらに減縮したものであり、本件発明10~15は本件発明2を引用するものであるから、本件発明3~15についても、本件発明2についての判断と同様の理由により、引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.実施可能要件、サポート要件について
本件発明2の解決しようとする課題は、本件特許明細書の記載からみて、組成物中のスブチリシンが安定化された組成物の提供であると認められ、本件特許明細書の実施例には、いわゆる狭義のスブチリシンに該当すると認められるサビナーゼを使用した洗剤組成物における安定化について具体的に記載されていると認められる。
そして、令和1年12月18日の訂正請求により訂正された本件特許明細書の段落【0026】~【0028】の記載から、本件発明2にいう「スブチリシン」とはいわゆる狭義のスブチリシンと機能的に等価なものであることが理解でき、本件特許明細書の記載から、そのような「スブチリシン」であれば、本件特許明細書の実施例と同様の効果が得られることが推認される。
したがって、実施可能要件、サポート要件に関する取消理由は、訂正によっていずれも理由がなくなったといえる。
5.明確性要件について
明確性要件に関する取消理由は、令和1年12月18日の訂正請求による訂正によって、いずれも理由がなくなった。
第5 取消理由で採用しなかった特許異議申立人が主張する取消理由について
1.特許異議申立人の取消理由
取消理由で採用しなかった特許異議申立人が主張する取消理由は概ね次のとおりである。
(1)請求項1~15に係る発明は、主引用文献として甲第1号証、副引用文献として甲第3号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである。
(2)請求項1、3、4、7、8、9、10に係る発明は、主引用文献として甲第1号証、副引用文献として甲第3号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである。
(5)請求項1~15に係る発明は、主引用文献として甲第1号証、副引用文献として甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである。
(6)請求項1~15に係る発明は、主引用文献として甲第2号証、副引用文献として甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである。
なお、甲第1号証(以下「甲1」という。他の甲号証についても同様。)及び甲2は上記第4の1.の引用例1、引用例2であり、甲4は引用例3であるから、
(3)請求項1~15に係る発明は、主引用文献として甲第1号証、副引用文献として甲第4号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである、及び
(4)請求項1~15に係る発明は、主引用文献として甲第2号証、副引用文献として甲第4号証に記載された発明により当業者が容易に発明できたものである旨の理由については、上記第4の3.及び4.のとおりである。
2.引用文献の記載事項
(1)主引用文献
上記第4の2.(1)(引用例1:甲1)、(2)(引用例2:甲2)のとおりである。
(2)副引用文献
ア 甲3には、トロンビン阻害剤であるL-アルギニンアルデヒド誘導体のアルデヒド基は配位反転してエピマー化するから、配位反転に対して安定化された亜硫酸水素塩付加物とすることが記載されている。(段落【0004】、【0005】)
イ 甲5には、4-アリーデン-2-フェニル-5(4H)-オキサゾロンを合成する際に、アリールアルデヒド重亜硫酸付加物を用いること、アルデヒドの重亜硫酸付加物は塩基条件下でのアルデヒドの保護基として用いられることが記載されている。(要約、683頁左欄2段落)
ウ 甲6には、図1に、ピペリジニルインドリンンシンナミドを合成するために、2-シクロペンチルアセトアルデヒド(化合物2)を用いることが示され、図4に、2-シクロペンチルアセトアルデヒド(化合物2)に代えてその重亜硫酸付加物(化合物2a)を用いることが記載され、重亜硫酸付加物は通常結晶性固体であり、取り扱いが容易で、長期間にわたり安定であること(4032頁左欄1~5行)が記載されている。
エ 甲7には、還元的アミノ化反応において、アルデヒドの代替物として重亜硫酸付加物を使用すること、アルデヒドは不安定、非結晶性であるが、重亜硫酸付加物は安定であり、魅力的な中間体であることが記載されている。(要約、155頁左欄イントロダクション2段落、156頁左欄12~18行)
オ 甲8には、1,1-ジオキソ-ヘキサヒドロ-1λ6-チオピラン-4-カルボアルデヒドの単離・精製の際に、該アルデヒドを結晶形態の重亜硫酸付加物へ変換することが記載されている。(要約)
3.判断
(1)本件発明2について
甲1又は甲2に記載された発明(引用発明1又は引用発明2)と本件発明2とは、上記第4の3.及び4.のとおり、「ペプチドアルデヒド化合物」が、本件発明2ではヒドロ亜硫酸付加物であるのに対して、甲1又は甲2に記載された発明ではヒドロ亜硫酸付加物ではない点で相違する。
そこで、以下検討する。
まず、甲3にはL-アルギニンアルデヒド誘導体が配位反転しないようにするために、亜硫酸水素塩付加物とすることは記載されているが、L-アルギニンアルデヒド誘導体は甲1又は甲2に記載される「ペプチドアルデヒド化合物」とは異なる化合物であり、甲3にL-アルギニンアルデヒド誘導体ではない化合物、例えば甲1又は甲2に記載される「ペプチドアルデヒド化合物」をヒドロ亜硫酸付加物とすることが示唆されているとはいえない。
次に、甲5~8には甲1又は甲2に記載される「ペプチドアルデヒド化合物」は記載されておらず、甲5~8にはそれぞれの文献に記載された化合物ではない「ペプチドアルデヒド化合物」をヒドロ亜硫酸付加物とすることが示唆されているとはいえない。
したがって、本件発明2は、甲1~3、5~8に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。
特許異議申立人は、本件特許明細書にペプチドアルデヒドヒドロ亜硫酸付加物はペプチドアルデヒドと比較して水溶性が高いことの実験結果が示されていないことを指摘して、本件発明2の効果が格別でないことを主張しているが、甲1~3、5~8に記載された発明から本件発明2を容易に想到できないことは上述のとおりであるから、水溶性についての具体的な実験結果が示されていないことは、上記判断を左右しない。
(2)本件発明3~15について
本件発明3~15は、本件発明2をさらに減縮したものであるから、本件発明2についての判断と同様の理由により、甲1~3、5~8に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項2~15に係る発明について結論のとおり決定する。
本件請求項1に係る特許は、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項1に対する特許異議申立てについては、対象とする請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700969