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特許異議申立

2018-700963

ラテラルフロー用テストストリップ

審判番号
2018-700963
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-204855外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年11月29日
審決日
2019年10月23日
公報発行日
2020年01月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6331311号発明「ラテラルフロー用テストストリップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6331311号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。 特許第6331311号の請求項2、6、7及び10に係る特許を維持する。 特許第6331311号の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6331311号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、平成25年9月30日に出願され、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同月30日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年11月29日  :特許異議申立人 秋本 悠太 による請求項 1ないし19に係る特許に対する特許異議の 申立て 平成31年 1月28日付け:取消理由通知 同年 4月 2日  :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和 1年 5月21日  :特許異議申立人 秋本 悠太 による意見書 の提出 同年 6月 4日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 8月 7日  :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 なお、特許異議申立人 秋本 悠太 (以下単に「申立人」という。)に対して、特許権者が令和元年8月7日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)に対する意見書を提出する機会を与えたが、申立人による意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1)本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし19を一群の請求項として訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし19のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項2の「前記所定時間は、前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短く、 前記シグナル増加率は、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出されることを特徴とする請求項1に記載のラテラルフロー用テストストリップ。」との記載を、「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、 前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、 前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体と、 前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、 が直列に連結され、 前記分析対象物は抗原であり、 前記第一物質は抗体であり、 前記第一支持体は粒子径が20nm~1000nmの金コロイドであり、 前記第二物質は抗体であって、前記第二支持体に幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され、 前記第二支持体は、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであり、 前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下であることを特徴とするラテラルフロー用テストストリップ。」に訂正する。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項6、7及び10も同様に訂正する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項6に係る「行われることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に」を、「行われる請求項2に」に訂正する。 請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7及び10も同様に訂正する。 (訂正事項7) 特許請求の範囲の請求項7に係る「行われることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に」を、「行われる請求項2または請求項6に」に訂正する。 請求項7の記載を直接引用する請求項10も同様に訂正する。 (訂正事項8) 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (訂正事項9) 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (訂正事項10) 特許請求の範囲の請求項10に係る「によって第一支持体に固定化されていることを特徴とする請求項1から請求項9の」を、「によって前記第一支持体に固定化されていることを特徴とする請求項2、請求項6、請求項7の」に訂正する。 (訂正事項11) 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (訂正事項12) 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (訂正事項13) 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (訂正事項14) 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (訂正事項15) 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (訂正事項16) 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (訂正事項17) 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (訂正事項18) 特許請求の範囲の請求項18を削除する。 (訂正事項19) 特許請求の範囲の請求項19を削除する。 (2)訂正の単位について 訂正事項1ないし19は、訂正前に引用関係を有する請求項1ないし19に対して請求されたものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項〔1-19〕に対して請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、3ないし5、8、9及び11ないし19について 訂正事項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項2が、訂正前の請求項1を引用して特定されるものであったのを、引用関係を解消して独立形式の請求項とし、 (ア)「分析対象物」について、「抗原であ」ること (イ)「第一物質」について、「前記分析対象物に特異的親和性のある」「抗体であ」ること (ウ)「第二物質」について、「前記分析対象物に特異的親和性のある」「抗体であって、前記第二支持体に幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され」ていること、 (エ)「検出可能なシグナル」について、「光学的手法によって」検出可能であり、「光学的手法により」測定されること、 (オ)「第二支持体」について、「ブロッキングされている」、「ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであ」ること、 (カ)「ラテラルフロー用テストストリップ」について、「前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子であ」り「粒子径が20nm~1000nmの金コロイドであ」る「第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、」「第二支持体と、前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、が直列に連結され」ており、「前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下である」こと、 を発明特定事項として追加し、 (キ)「・・・測定し、・・・算出し、・・・判断し、」との方法的な記載を、「・・・測定し、・・・算出し、・・・判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、」と用途を特定する記載にするとともに、表記を整えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、同ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)上記アの(ア)に係る訂正事項は、本件特許明細書等の段落【0023】の「本発明の実施形態における分析対象物は、例えば、・・・抗原・・・のいずれか1つである。より詳しくは、例えば、・・・特に、・・・抗原・・・である。」、及び、段落【0050】の「分析対象物をPSA(Prostate Specific Antigen:前立腺特異抗原)とし、」との記載に基づくものである。 (イ)上記アの(イ)に係る訂正事項は、本件特許明細書等の段落【0029】の「分析対象物に特異的親和性のある第一物質が標識された粒子」、段落【0037】の「標識粒子に備わる抗体(第一物質)」、及び、段落【0051】の「 マウスモノクローナル抗PSA抗体(5A6)を透析し、・・・本抗体溶液を加え・・・金コロイド溶液とした。」との記載に基づくものである。 (ウ)上記アの(ウ)に係る訂正事項は、本件特許明細書等の段落【0029】の「分析対象物に特異的親和性のある第二物質が固相化された部位(テストライン)」、段落【0039】の「固定化抗体-分析対象物-標識粒子からなる免疫反応が行われる抗体固定化部(テストライン)・・・固定化抗体(第二物質)」、段落【0040】の「上記メンブレンにおける抗体固定化部(判定部)の形状としては、・・・幅0.5~2.0mmのライン状であることが好ましく、また、1cmあたりの抗体量が0.1~2μgであることが好ましい」、及び、段落【0050】の「メンブレン固相化抗体にはマウスモノクローナル抗PSA抗体1H12(HyTest社製)を使用した」との記載に基づくものである。 (エ)上記アの(エ)に係る訂正事項は、段落【0010】の「前記シグナルは、光学的、・・・手法のうちいずれか1つによって検出可能なものであり、前記測定は、光学的・・・手法のうちいずれか1つを用いた測定であることとしてもよい」、段落【0030】の「光学的手法を用いて、第二物質が固定化された部位のシグナルを経時的に検出する」、段落【0040】の「赤色系/青色系を経時的に検出できる装置としては、イムノクロマトリーダC10066-10(浜松ホトニクス社製)等が挙げられる」、及び、段落【0055】の「滴下開始後、イムノクロマトリーダC10066-10(浜松ホトニクス社製)内の測定位置に設置し、1分間隔で30分間継続して測定した」との記載に基づくものである。 (オ)上記アの(オ)に係る訂正事項は、段落【0041】の「抗体をメンブレンに固定化した後、タンパク質の非特異的吸着を防ぐために、例えば、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等のブロッキング剤の溶液でそのメンブレンを浸潤させた後に乾燥させるのが好ましい」、段落【0053】の「メンブレン(HiFlow Plus HF120、Millipore社製)に抗体塗布機XYZ3060(BioDot社製)で、上記(1)で調整した抗体(固相化抗体)を1μl/cmで塗布した。塗布後、0.5%乳性カゼイン溶液でブロッキングし、スクロースや界面活性剤を含む洗浄液で洗浄・安定化して、一晩室温で乾燥させた」、及び、段落【0034】の「第二物質が固定化されたメンブレン(第二支持体)は、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成される」との記載に基づくものである。 (カ)上記アの(カ)に係る訂正事項は、段落【0029】の「本実施形態に係るラテラルフロー用テストストリップは、試料に含まれる分析対象物を検出して定量するものであって、試料滴下部材であるサンプルパッド、試料が流れる方向に分析対象物に特異的親和性のある第一物質が標識された粒子が乾燥固化されている結合パッド、そして分析対象物に特異的親和性のある第二物質が固相化された部位(テストライン)と粒子表面の第一物質を認識する第二物質が固相化された部位(コントロールライン)を持つ展開膜(メンブレン)、更にその下流に毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドの4種の部材が直列に連結されたものである。なお、上述の分析対象物に特異的親和性のある第一物質が標識された粒子は、例えば、平均粒径20~100nmの金コロイド粒子である。」、段落【0051】の「金コロイド(粒子径40nm、田中貴金属工業社製)」、段落【0054】の「乾燥させたメンブレン、吸収パッド(CFSP203000、Millipore社製)、結合パッド、サンプルパッドのそれぞれをバッキングシート(Adhesive Research社製)に貼り付け」、段落【0056】の「傾きがゼロとなる30分後でのシグナル強度を各抗原濃度での反応飽和におけるシグナル強度とした」、段落【0059】の「表2は、測定開始時間(0分)からの所定経過時間を経過算出始点時間とし、1分間隔で算出終点時間を設定し、シグナル強度の傾きと30分後のシグナル強度との相関係数を算出した結果である。なお、傾きは、各算出始点時間から1分後の算出終点時間までの2点間におけるシグナル強度から算出したものである。」、並びに、段落【0060】の【表2】中の「算出始点時間(分)」「3」、「4」、「5」及び「6」それぞれに対する「相関係数」「0.9897」、「0.9992」、「0.9909」及び「0.9717」との記載に基づくものである。 (キ)よって、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項6について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、請求項6において、請求項1及び3ないし5の削除に伴い引用する請求項から請求項1及び3ないし5を削除するとともに、物の発明でありながら「行われることを特徴とする請求項・・・記載のラテラルフロー用テストストリップ」と方法的な内容を特徴としていた記載を、「行われる請求項・・・記載のラテラルフロー用テストストリップ」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、請求項7において、請求項1及び3ないし5の削除に伴い引用する請求項から請求項1及び3ないし5を削除するとともに、物の発明でありながら「行われることを特徴とする請求項・・・記載のラテラルフロー用テストストリップ」と方法的な内容を特徴としていた記載を、「行われる請求項・・・記載のラテラルフロー用テストストリップ」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項10について ア 訂正の目的の適否 訂正事項10は、請求項10において、請求項1、3ないし5、8及び9の削除に伴い引用する請求項から請求項1、3ないし5、8及び9を削除するとともに、引用する請求項2が特定事項として「第一支持体」を含むものに訂正されることに伴い、「第一支持体」を「前記第一支持体」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項10は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、訂正事項6、7及び10に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正により請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は削除された。そして、本件訂正後の請求項2、6、7及び10に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件訂正発明2」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2、6、7及び10に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (本件訂正発明2) 「【請求項2】 分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、 前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、 前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体と、 前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、 が直列に連結され、 前記分析対象物は抗原であり、 前記第一物質は抗体であり、 前記第一支持体は粒子径が20nm~1000nmの金コロイドであり、 前記第二物質は抗体であって、前記第二支持体に幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され、 前記第二支持体は、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであり、 前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下であることを特徴とするラテラルフロー用テストストリップ。」 (本件訂正発明6) 「【請求項6】 前記分析対象物と前記第一物質との反応は、前記分析対象物と前記第一物質とを混合する手段によって行われる請求項2に記載のラテラルフロー用テストストリップ。」 (本件訂正発明7) 「【請求項7】 前記複合物と前記第二物質との反応は、前記分析対象物と前記第二物質とを混合する手段によって行われる請求項2または請求項6に記載のラテラルフロー用テストストリップ。」 (本件訂正発明10) 「【請求項10】 前記第一物質は、化学結合または物理結合によって前記第一支持体に固定化されていることを特徴とする請求項2、請求項6、請求項7のいずれか一項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項2ないし18に係る特許に対して、当審が令和元年6月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項2ないし12及び14ないし16に係る発明(以下、本件訂正前の各請求項に係る発明を、それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明2」などという。)は、甲第11号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。 よって、本件発明2ないし12及び14ないし16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)本件発明2ないし18は、甲第11号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件発明2ないし18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第11号証:特開2000-266752号公報(以下「甲11」という。) 甲第1号証:国際公開第2005/121794号(以下「甲1」という。) 甲第2号証:国際公開第2010/058472号(以下「甲2」という。) 甲第12号証:特表2004-526156号公報(以下「甲12」という。)(周知例) 2 甲11について (1)甲11には、以下の記載がある。 (甲11-ア)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、水中微生物を検出する検出装置や、体液中の微量マーカー物質を検出する診断装置に関する。さらに詳しくは、簡便かつ迅速な測定が可能な免疫クロマトグラフィーの性能向上を図るものである。 【0002】 【従来の技術】免疫クロマトグラフィーは、抗原抗体反応の高い特異性と検出感度を利用し、測定すべき物質と特異的に反応する物質(抗体)を検出手段の材料として用いた測定方法である。この方法は現在、体外診断薬の基盤技術として広く利用されている。なかでも、妊娠診断薬は典型的な免疫クロマトグラフィーデバイスであり、その代表的な構造が、たとえば米国特許第5602040号に開示されている。 【0003】以下に、最も簡単な免疫クロマトグラフィーの構造と動作について、妊娠検査器を例にして説明する。図1に典型的な免疫クロマトグラフィーデバイスに使用される多孔質担体の構造を示す。多孔質担体1は、抗体の固定のしやすさからニトロセルロースが最も広く用いられている。ただし、全体をニトロセルロースで構成すれば試料の流速が著しく低下するので、判定部だけをニトロセルロースで構成し、その他の部分は試料の流速のより早いガラスろ紙などで構成するのが好ましい。担体の一端にある試料導入部2は、試料が迅速に吸収され、しかしながら保持力は弱く、速やかに反応部に試料が流れていくような性質の、ガラスろ紙などの多孔質担体で構成されている。多孔質担体を中空のケースに収容する場合は、試料導入部2は比較的長い構成とし、その一部をケースから露出することによって、直接試料導入部に尿を導入することができる。あるいは、試料導入部もケース内に収納されているときは、ケースに穴を空けておき、そこから試料導入部に、試料を添加することができる。 【0004】標識部3は、金コロイドもしくは着色ラテックスに吸着した抗hCG抗体の水溶液をガラスろ紙に含浸させた後、凍結乾燥させることにより作製したものである。判定部4は、ニトロセルロースのシート上に抗体の水溶液を任意の形状に滴下した後乾燥し、洗浄することにより作製したものである。ニトロセルロースの非常に強固な非特異吸着特性により、抗体がニトロセルロース上に担持されている。抗体を固定化した後、検出反応の際の非特異吸着によるバックグラウンドの発色を防止するため、たとえば牛血清アルブミン(BSA)などで表面処理を施すことができる。この操作はブロッキングと呼ばれている。担体の他方の端部にある吸液部5は、過剰の試料を迅速に吸収するため、優れた吸液力、吸液容量を有する材料、ガラスろ紙が、たとえば用いられる。 【0005】試料として、女性の尿をクロマトグラフィーデバイスの形状にあわせて定められた量(通常0.1~2ml)を試料導入部2に添加する。試料は標識部3を経由し、判定部4を通過して、吸液部5に向かって移動する。その際、標識部3を試料が通過する際には、標識部に担持されていた標識抗体が試料の水分に溶解し試料とともに移動を開始する。その後、溶解した標識抗体は判定部4を経過する。ここで、抗原・抗体の特異的結合反応に基づき、陽性の場合、判定部4で固定化抗体と標識抗体とが抗原を介して反応し、判定部が着色される。陰性の場合は、反応が起こらず、標識抗体が判定部4を通過し吸液部5に吸収される。これにより、水性試料液中の抗原の有無を判定することができる。」 (甲11-イ)「【0007】本発明は、上記に鑑み、水性試料液中の抗原を正確に定量測定することができる、免疫クロマトグラフィー測定装置を提供することを目的とする。」 (甲11-ウ)「【0013】本発明の免疫クロマトグラフィー測定装置は、図2に示した構成からなる。免疫クロマトグラフィーデバイスの試料導入部に検体試料を、形状に合わせて定められた量(通常0.1ml~2ml)添加し、3分~20分水平状態で静置して判定部に呈色像を形成させる。形成した呈色像をイメージセンサ、たとえばCCDカメラを用いて撮像し、得られた画像の彩度・明度を調整した後、バックグラウンドの補正を行って呈色像を強調する。この強調された画像の呈色度をX成分およびY成分ついて測定し、その積分値(X成分、Y成分についての積分値)を求め、解析装置内にあらかじめ保有させておいた積分値と測定対象物濃度との相関関係の情報を用いて、積分値に対応する濃度の値を求める。こうすることによって、免疫クロマトグラフィーデバイスを用いて、検体試料中の測定対象物濃度を定量的に求めることができる。 【0014】 【実施例】以下に本発明の実施例をあげてさらに詳しく説明する。なお、本実施例においては、イメージセンサとしてCCDカメラ、解析装置としてパーソナルコンピュータ、測定対象物としてサルモネラ菌を用いた。」 (甲11-エ)「【0022】<サルモネラ菌の測定>以下に、サルモネラ菌を対象として実際の測定を行った結果を示す。 【0023】1)呈色度の積分値とサルモネラ菌濃度との相関関係 サルモネラ菌の濃度がそれぞれ0、105、106、107、108、109cells/mlの試料250μlを、試料導入部6に添加し、10分間水平状態で静置した後、判定部の呈色度を前述した手法によって測定し、得られた積分値と試料中のサルモネラ菌濃度との相関関係を求めた。その結果を図3に示す。 【0024】2)未知濃度の検体試料の測定 前述の相関関係を用いて、未知濃度の検体試料の測定を行った。各試料について測定した判定部の呈色度(積分値)と、その値から求めたサルモネラ菌の濃度を図4に示す。 【0025】 【発明の効果】以上述べたように、本発明の装置を用いれば、従来定性判定のみに利用されてきた免疫クロマトグラフィーで、定量的な測定が可能となる。また、免疫クロマトグラフィーに適した画像強調を施すことにより、クロマトの持つ弱点(低濃度領域での薄い発色やバックグラウンドの発色)を補うことができ、結果としてその性能を向上させることができる。これにより、これまでバックグラウンドや呈色度等の理由から免疫クロマトグラフィーでの測定が困難であった物質、たとえば血液中の各種マーカ等、多くのものが測定できるようになる。」 (甲11-オ)【図1】 「 」 (甲11-カ)【図2】 「 」 (2)甲11に記載された発明 ア (甲11-カ)の【図2】には、免疫クロマトグラフィー測定装置の構成が示されているが、免疫クロマトグラフィーデバイスの詳細は示されていない。また、甲11全体の記載を見ても、免疫クロマトグラフィー測定装置における免疫クロマトグラフィーデバイスの詳細に関する記載は見当たらない。 そして、甲11には、免疫クロマトグラフィー測定装置により免疫クロマトグラフィーデバイスの呈色像を撮像するために、免疫クロマトグラフィーデバイスが特別な構造を有する必要があると解される記載もない。 そうすると、甲11に記載された免疫クロマトグラフィー測定装置における免疫クロマトグラフィーデバイスの構造は、甲11の【従来の技術】に記載された免疫クロマトグラフィーデバイスと同様のものであると解するのが相当である。 イ また、実施例において、測定対象物としてサルモネラ菌を用いていることから、標識抗体及び捕捉抗体として抗サルモネラ菌抗体を用いているものと認められる。 ウ (甲1-イ)の【図1】の記載から、直線状の多孔質担体1の一端側から他端側にかけて、試料導入部2、標識部3、判定部4及び吸液部5が順に形成されている点が見て取れる。 エ そうすると、(甲11-ア)ないし(甲11-カ)の記載から、甲11には、 「 免疫クロマトグラフィーデバイスの試料導入部2に検体試料を定められた量添加し、3分~20分水平状態で静置して判定部4に呈色像を形成させ、形成した呈色像をCCDカメラを用いて撮像し、得られた画像の彩度・明度を調整した後、バックグラウンドの補正を行って呈色像を強調し、この強調された画像の呈色度をX成分およびY成分ついて測定し、その積分値を求め、解析装置内にあらかじめ保有させておいた積分値と測定対象物であるサルモネラ菌濃度との相関関係の情報を用いて、積分値に対応する濃度の値を求める免疫クロマトグラフィー測定装置において使用する、免疫クロマトグラフィーデバイスであって、 直線状の多孔質担体1の一端側から他端側にかけて、試料導入部2、標識部3、判定部4及び吸液部5が順に形成されており、 多孔質担体1の一端にある試料導入部2は、試料が迅速に吸収され、しかしながら保持力は弱く、速やかに反応部に試料が流れていくような性質の、ガラスろ紙などの多孔質担体で構成されており、 標識部3は、金コロイドに吸着した抗サルモネラ菌抗体の水溶液をガラスろ紙に含浸させた後、凍結乾燥させることにより作製したものであり、 判定部4は、ニトロセルロースのシート上に抗サルモネラ菌抗体の水溶液を任意の形状に滴下した後乾燥し、洗浄することにより作製したものであり、ニトロセルロースの非常に強固な非特異吸着特性により、抗サルモネラ菌抗体がニトロセルロース上に担持されており、抗サルモネラ菌抗体を固定化した後、検出反応の際の非特異吸着によるバックグラウンドの発色を防止するため、牛血清アルブミン(BSA)などでブロッキングと呼ばれている表面処理を施してあり、 多孔質担体1の他方の端部にある吸液部5は、過剰の試料を迅速に吸収するため、優れた吸液力、吸液容量を有するガラスろ紙が用いられている、 免疫クロマトグラフィーデバイス。」 の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。 3 甲1について (1)甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。 (甲1-ア)「[0068] 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 [0069]実施例1 A型インフルエンザウイルスの検出におけるコンドロイチン硫酸の非特異反応の除去(図3) (1)金コロイド抗体の調製 10mLの金コロイドを取り、100mM炭酸カリウムでpHを7.0に調整する。2mMホウ酸溶液で透析、遠心分離し精製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2mMホウ酸溶液で100μg/mLの濃度になるように調製する。調製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の最終濃度が10μg/mLとなる量を十分撹拌させながら金コロイドに加える。5分後10%BSAを1mL加え、穏やかに10分間ローテーターで撹拌する。全量を遠心管に移し、14000rpm、30分、4℃で遠心する。遠心後上清を吸引廃棄し、沈殿している金コロイドと抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の感作されたものに、10mMホウ酸緩衝液1mLで浮遊する。 [0070](2)金コロイド抗体の乾燥化 前項で作製した金コロイド抗体を陽圧噴霧装置(BioDot社製、BioJet)を用いて6.0OD520、10μL/cmの速度、及び量で10mm×300mmのポリスチレン不織布に噴霧する。次いで減圧装置内で1時間減圧乾燥し、乾燥金コロイド抗体パッドとした。使用時には4mm間隔で裁断し、標識試薬部位3として用いた。 [0071](3)DEAE-Dextranパッドの作製 ガラス系繊維濾紙を2~10%DEAE-Dextran溶液に浸漬し、45℃で一晩乾燥させ、10mm×4mmに裁断し、機能部位1として用いた。 [0072](4)固相支持体6及び捕捉試薬部位4及び対照部位5の設定 捕捉試薬として抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2.0OD280になるよう調製した10mMトリス緩衝液(pH7.5)、及び対照用試薬としてAnti-Mouse IgG(Dako社)を3.8mg/mlになるよう調製した10mMリン酸溶液(pH7.5)をそれぞれ陽圧噴霧装置(BioDot社製、BioJet)を用いて1.04μl/cmで20mm×200mmのMillipore Highflow HF12004(Millipore)に塗布し45℃で60分乾燥させ、20mm×4mmに裁断し、固相支持体6として用いた。 [0073](5)イムノクロマトグラフィー式検出装置の製作 トップラミネート8上に捕捉試薬部位4及び対照部位5を含む固相支持体6を配置し、標識試薬部位3、機能部位1、検体供給部位2としてガラス系繊維濾紙、吸収部位7として厚めの濾紙を用いて任意の場所に配置した。また、従来品として機能部位1がないイムノクロマトグラフィー式検出装置を作製し、比較対照とした(図7)。 [0074](6)検出方法 陽性検体として、A型インフルエンザウイルス抗原をリン酸緩衝液に浮遊させたものを使用した。また、非特異検体としてコンドロイチン硫酸を2%になるようリン酸緩衝液に浮遊したものを使用した。前項で制作した機能部位1を含む発明品と機能部位1を含まない従来品をそれぞれ各検体150μlに検体供給部位2を浸漬して、コンドロイチン硫酸による非特異反応を比較試験した。 [0075](7)試験結果 従来品は陽性検体に対して陽性反応を示したが、非特異検体に対しても陽性反応を示した。一方、発明品においては陽性検体に対して陽性反応を示し、非特異検体に対しては陰性を示した。」 (甲1-イ)[図3] 「 」 (2)甲1に記載された発明 (甲1-イ)の[図3]の記載から、固相支持体6の捕捉試薬部位4側の端部に標識試薬部位3、機能部位1及び検体供給部位2を配置し、対照部位5側の端部に吸収部位7を配置している点が見てとれる。 そして、(甲1-イ)の[図3]に記載されたイムノクロマトグラフィー式検出装置の構造から、ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー式検出装置であることは明らかである。 そうすると、(甲1-ア)及び(甲1-イ)の記載から、甲1には、 「 トップラミネート8上に捕捉試薬部位4及び対照部位5を含む固相支持体6を配置し、固相支持体6の捕捉試薬部位4側の端部に標識試薬部位3、機能部位1及び検体供給部位2を配置し、対照部位5側の端部に吸収部位7を配置した、ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー式検出装置であって、 固相支持体6は、捕捉試薬として抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2.0OD280になるよう調製した10mMトリス緩衝液(pH7.5)、及び対照用試薬としてAnti-Mouse IgG(Dako社)を3.8mg/mlになるよう調製した10mMのリン酸溶液(pH7.5)を、それぞれ1.04μl/cmでMillipore Highflow HF12004(Millipore)に塗布して乾燥させたものであり、 標識試薬部位3は、金コロイドと抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の感作されたものを10mMホウ酸緩衝液1mLに浮遊させた金コロイド抗体をポリスチレン不織布に噴霧して減圧乾燥し、乾燥金コロイド抗体パッドとしたものであり、 機能部位1は、ガラス系繊維濾紙を2~10%DEAE-Dextran溶液に浸漬し乾燥させたものであり、 検体供給部位2は、ガラス系繊維濾紙であり、 吸収部位7は、厚めの濾紙である、 A型インフルエンザウイルスの検出に用いるラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー式検出装置。」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 4 甲2について (1)甲2には、以下の記載がある。 (甲2-ア)「[0014] さらに、試薬保持部92に固定された試薬には、検体との反応によっていったん呈色した後に不当に長い時間が経過すると、退色または変色してしまうものがあり、色が薄くなってしまうことがある。また単位時間当たりの発色スピードを測定する、いわゆるレートアッセイにおいては、発色し始める時間情報が重要である。これらのような場合、検体を点着し終えた試験片Yを誤って長時間放置してしまうと、この試験片Yをイムノクロマトグラフィ装置Xに装填しても適切な検査結果が得られないおそれが大きい。」 (2)甲2に記載された発明 (甲2-ア)の記載から、甲2には、 「 試験片Yをイムノクロマトグラフィ装置Xに装填して、単位時間当たりの発色スピードを測定するレートアッセイを行うこと」(以下「甲2技術事項」という。)、及び、 「イムノクロマトグラフィ装置Xに装填して行う単位時間当たりの発色スピードを測定するレートアッセイに用いる試験片Y。」(以下「甲2発明」という。) が記載されているものと認められる。 5 甲12について 甲12には、以下の記載がある。 (甲12-ア)「【0054】 実施例 ミオグロビンを対象としたサンドイッチアッセイ法 直径約0.3ミクロンのラテックス粒子(Interfacial Dynamics、Portland、OR)を入手し、粒子内にインターカレートする蛍光色素で着色した(Molecular Probes、Eugene OR、またはDuke Scientific、Palo Alto、CA)。着色後のラテックス粒子を、分析物結合抗体と以下の手順で結合した。まず粒子を遠心分離して洗浄し、リン酸緩衝液中に約0.2%(固体)の濃度になるように再懸濁した。抗体(ミオグロビンに対するマウス抗体)を1 mg/mlの濃度になるように調製した。次に0.5 mlの2%ラテックス粒子懸濁物を4 mlの抗体溶液に添加し、抗体と粒子間に共有結合をもたらすような、シアノホウ化水素ナトリウムおよびスキムミルクの溶液とインキュベートし、粒子の残りの表面をスキムミルクタンパク質で飽和させた。この懸濁物を次にボルテックミキサーで攪拌し、超音波処理を行って凝集物を破壊した。 【0055】 膜ストリップは、ニトロセルロース膜(Sartorius)を用いて作製した。試料捕捉剤および対照捕捉剤は、膜ストリップ上のそれぞれ試料捕捉ゾーンおよび対照捕捉ゾーンに、直線ストリップ作製装置(IVEK)を用いて固定した。ミオグロビンのアッセイ法を行う場合は、ヤギ抗ミオグロビンポリクローナル抗体(1 mg/ml)を試料捕捉剤として、またヤギ抗マウス免疫グロブリン(0.4 mg/ml)を対照捕捉剤として使用した。次に膜ストリップを乾燥した。 【0056】 膜ストリップをポリビニルアルコール(PVA)の1%溶液に浸してブロックし、余分なタンパク質結合を防いだ。次に、膜ストリップを水で洗浄してから乾燥した。 【0057】 次に分析物結合粒子を、膜ストリップの接触領域にアプライした。最初に接触領域に30%ショ糖溶液でストライプをつけてから乾燥した。次に粒子を0.1%の懸濁物として、2 μl/cmのストライプ生成速度でアプライした。次に、膜を乾燥させてからアッセイ法を行った。」 (甲12-イ)【図1】 「 」 6 当審の判断 (1)特許法第29条第1項第3号に係る取消理由について ア 本件訂正発明2について (ア)本件訂正発明2と甲11発明とを対比する。 a 甲11発明の「測定対象物であるサルモネラ菌」、「金コロイドに吸着した抗サルモネラ菌抗体」、「ニトロセルロース上に担持されて」いる「抗サルモネラ菌抗体」、「呈色像」、「CCDカメラを用いて撮像し」、「画像の呈色度」、「解析装置内にあらかじめ保有させておいた積分値と測定対象物であるサルモネラ菌濃度との相関関係の情報」及び「濃度の値を求める」は、それぞれ本件訂正発明2の「分析対象物」である「抗原」、「前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質」である「抗体」、「前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質」である「抗体」、「光学的手法によって検出可能なシグナル」、「光学的手法により測定し」、「シグナルの強度」、「基準値」及び「濃度を判断する」に相当する。 b 甲11発明の「免疫クロマトグラフィーデバイス」において、「サルモネラ菌」を含む「検体試料」を「試料導入部2」に「添加し」た場合、「標識部3」に流れた「サルモネラ菌」が「金コロイドに吸着した抗サルモネラ菌抗体」と結合し、更にその結合体が「判定部4」に流れて「ニトロセルロースのシート上」の「抗サルモネラ菌抗体」と結合し、「呈色像を形成」することは明らかである。 c 上記a及びbを踏まえると、甲第11発明の「免疫クロマトグラフィーデバイス」と、本件訂正発明2の「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップ」とは、「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度に関する情報を予め設定した基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップ」で共通する。 d 甲11発明の「ガラスろ紙などの多孔質担体で構成されて」いる「検体試料を定められた量添加」する「試料導入部2」は、本件訂正発明2の「前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッド」に相当する。 e 甲11発明の「抗サルモネラ菌抗体」が「吸着した」「金コロイド」は、本件訂正発明2の「前記第一物質が標識された粒子である第一支持体」である「金コロイド」に相当する。 f 上記d及びeを踏まえると、甲11発明の「試料導入部2」の次に形成されている「金コロイドもしくは着色ラテックスに吸着した抗サルモネラ菌抗体の水溶液をガラスろ紙に含浸させた後、凍結乾燥させることにより作製したものであ」る「標識部3」は、本件訂正発明2の「前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッド」に相当する。 g 甲11発明の「抗サルモネラ菌抗体の水溶液を任意の形状に滴下した後乾燥し、洗浄することにより作製したものであり、ニトロセルロースの非常に強固な非特異吸着特性により、抗サルモネラ菌抗体がニトロセルロース上に担持されており、抗サルモネラ菌抗体を固定化した後、検出反応の際の非特異吸着によるバックグラウンドの発色を防止するため、牛血清アルブミン(BSA)などでブロッキングと呼ばれている表面処理を施してあ」る、「判定部4」である「ニトロセルロースのシート」は、本件訂正発明2の「前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体」に相当する。 h 甲11発明の「判定部4」の次に形成されている「過剰の試料を迅速に吸収するため、優れた吸液力、吸液容量を有するガラスろ紙が用いられている」「吸液部5」は、本件訂正発明2の「前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッド」に相当する。 i 甲11発明の「直線状の多孔質担体1の一端側から他端側にかけて、試料導入部2、標識部3、判定部4及び吸液部5が順に形成されて」いることは、本件訂正発明2の「サンプルパッドと、」「結合パッドと、」「第二支持体と、」「吸収パッドと、が直列に連結されていること」に相当する。 j 甲11発明の「ニトロセルロースのシート」は、本件訂正発明2の「前記第二支持体は、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであ」ることを満たす。 (イ)そうすると、本件訂正発明2と甲11発明とは、 「 分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度に関する情報を予め設定した基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、 前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、 前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体と、 前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、 が直列に連結され、 前記分析対象物は抗原であり、 前記第一物質は抗体であり、 前記第一支持体金コロイドであり、 前記第二物質は抗体であって、前記第二支持体に固定され、 前記第二支持体は、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンである、 ラテラルフロー用テストストリップ。」 の発明である点において一致し、次の相違点1ないし4において相違する。 (相違点1) 分析対象物の濃度を判断するために用いる「シグナルの強度に関する情報」及び「基準値」について、本件訂正発明2においては、それぞれ「前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して」「算出した前記シグナル増加率」及び「シグナル増加率の基準値」と特定されているのに対し、甲11発明においては、それぞれ「画像の呈色度をX成分およびY成分ついて測定し」たもの「の積分値」及び「積分値と測定対象物であるサルモネラ菌濃度との相関関係の情報」と特定されている点。 (相違点2) 第一支持体である金コロイドの粒子径が、本件訂正発明2においては、「20nm~1000nm」であるのに対し、甲11発明においては、粒子径が特定されていない点。 (相違点3) 第二支持体に固定される第二物質である抗体について、本件訂正発明2においては、「幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され」ているのに対し、甲11発明においては、「抗サルモネラ菌抗体の水溶液を任意の形状に滴下した後乾燥」させて「固定化した」ものであり、「固定化」される「抗サルモネラ菌抗体」の量は不明である点。 (相違点4) 本件訂正発明2は、「前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下である」のに対し、甲11発明は、そのような相関係数が不明である点。 (ウ)上記相違点4について検討する。 特定の時間におけるシグナル強度の時間変化率の反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数は、ラテラルフロー用テストストリップを構成する標識抗体、標識及び捕捉抗体の種類及び量並びにメンブレンの種類などに応じて異なるものと認められるところ、甲11発明においては、標識となる金コロイド並びに標識抗体及び捕捉抗体となる抗サルモネラ菌抗体の量は不明であり、甲11発明が、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における画像の呈色度の時間変化率の、反応飽和時における前記画像の呈色度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下であることを満たすといえる根拠は見いだせない。 そうすると、上記相違点4は実質的な相違点である。 よって、本件訂正発明2は甲11発明でない。 イ 本件訂正発明6、7及び10について 本件訂正発明6、7及び10は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件訂正発明2が甲11発明でないことは、上記アで検討したとおりであるから、本本件訂正発明6、7及び10も本件訂正発明2と同じ理由により、甲11発明でない。 ウ 本件訂正により請求項3ないし5、8、9及び11ないし18は削除されたため、本件訂正前の請求項3ないし5、8、9及び11ないし18に係る取消理由の対象となる請求項は存在しない。 (2)特許法第29条第2項に係る取消理由について ア 甲11発明を主引用発明とした場合について (ア) 本件訂正発明2について a 本件訂正発明2と甲11発明との対比、一致点及び相違点は、上記(1)ア(ア)及び(イ)に示したとおりである。 b 事案に鑑み、最初に上記相違点4について検討する。 甲2は、試験片Yをイムノクロマトグラフィ装置Xに装填して、単位時間当たりの発色スピードを測定するレートアッセイを行うこと(甲2技術事項)を開示するが、発色スピードの算出方法及び算出タイミングについての詳細、並びに、発色スピードの反応飽和時の測定値に対する相関係数を開示又は示唆する記載は見当たらない。 また、レートアッセイにおいて、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間におけるシグナル強度の時間変化率の、反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下とすることが、本件特許に係る出願の出願時における技術常識であったとも認められない。 そうすると、仮に、甲11発明を用いてレートアッセイを行うとしても、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における画像の呈色度の時間変化率の、反応飽和時における前記画像の呈色度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下となるように、標識である金コロイド並びに標識抗体及び捕捉抗体である抗サルモネラ菌抗体の量などを調整することは、当業者といえども容易に想起し得たこととはいえない。 c したがって、上記相違点1ないし3について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲11発明及び甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件訂正発明6、7及び10について 本件訂正発明6、7及び10は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件訂正発明2が甲11発明及び甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、上記(ア)で検討したとおりであるから、本件訂正発明6、7及び10も本件訂正発明2と同じ理由により、甲11発明及び甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件訂正により請求項3ないし5、8、9及び11ないし18は削除されたため、本件訂正前の請求項3ないし5、8、9及び11ないし18に係る取消理由の対象となる請求項は存在しない。 イ 甲1発明を主引用発明とした場合について (ア)本件訂正発明2について a 本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。 (a)甲1発明の「A型インフルエンザウイルス」、「抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」及び「抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」は、それぞれ本件訂正発明2の「分析対象物」である「抗原」、「前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質」である「抗体」及び「前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質」である「抗体」に相当する。 (b)甲1発明の「ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー式検出装置」において、「A型インフルエンザウイルス」を含む検体を付与した場合、「A型インフルエンザウイルス」と「標識試薬部位3」にある「金コロイド」と「感作された」「抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」が結合し、更にその結合体の「A型インフルエンザウイルス」が「固相支持体6の捕捉試薬部位4」にある「抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」に結合し、目視可能な発色を呈することは明らかである。 (c)上記(a)及び(b)を踏まえると、甲1発明の「ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー式検出装置」と、本件訂正発明2の「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップ」とは、「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを発生させるために使用されるラテラルフロー用テストストリップ」で共通する。 (d)甲1発明の「ガラス系繊維濾紙であ」る「検体供給部位2」は、本件訂正発明2の「前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッド」に相当する。 (e)甲1発明の「抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」が「感作された」「金コロイド」は、本件訂正発明2の「前記第一物質が標識された粒子である第一支持体」である「金コロイド」に相当する。 (f)上記(e)を踏まえると、甲1発明の「固相支持体6の捕捉試薬部位4側の端部に」「配置」され、「金コロイドと抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の感作されたものを10mMホウ酸緩衝液1mLに浮遊させた金コロイド抗体をポリスチレン不織布に噴霧して減圧乾燥し、乾燥金コロイド抗体パッドとしたものであ」る「標識試薬部位3」は、本件訂正発明2の「前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッド」に相当する。 (g)甲1発明の「捕捉試薬として抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2.0OD280になるよう調製した10mMトリス緩衝液(pH7.5)、及び対照用試薬としてAnti-Mouse IgG(Dako社)を3.8mg/mlになるよう調製した10mMのリン酸溶液(pH7.5)を、それぞれ1.04μl/cmでMillipore Highflow HF12004(Millipore)に塗布して乾燥させたものであ」る「固相支持体6」と、本件訂正発明2の「前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体」とは、「前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定されている第二支持体」で共通する。 (h)甲1発明の「固相支持体6の」「対照部位5側の端部に」「配置」された「厚めの濾紙である」「吸収部位7」は、本件訂正発明2の「前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッド」に相当する。 (i)甲1発明の「捕捉試薬部位4及び対照部位5を含む固相支持体6」「の捕捉試薬部位4側の端部に標識試薬部位3、機能部位1及び検体供給部位2を配置し、対照部位5側の端部に吸収部位7を配置した」ことは、本件訂正発明2の「サンプルパッドと、」「結合パッドと、」「第二支持体と、」「吸収パッドと、が直列に連結されていること」に相当する。 b そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、 「 分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを発生させるために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、 前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、 前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定されている第二支持体と、 前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、 が直列に連結され、 前記分析対象物は抗原であり、 前記第一物質は抗体であり、 前記第一支持体は金コロイドであり、 前記第二物質は抗体であって、前記第二支持体に固定されている、 ラテラルフロー用テストストリップ。」 の発明である点において一致し、次の相違点5ないし10において相違する。 (相違点5) 分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを発生させるために使用されるラテラルフロー用テストストリップが、本件訂正発明2は、「光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用される」(以下「本件特定事項1」という。)と特定されているのに対し、甲1発明は、「抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」との反応によって形成された複合物と、「抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体」とを反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを検出して「A型インフルエンザウイルス」の存在を判断するために使用されるものであるが、本件特定事項1のような特定がされていない点。 (相違点6) 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定されている第二支持体が、本件訂正発明2は、「ブロッキングされている」のに対し、甲1発明は、そのような特定がされていない点。 (相違点7) 第一支持体である金コロイドの粒子径が、本件訂正発明2においては、「20nm~1000nm」であるのに対し、甲1発明においては、粒子径が特定されていない点。 (相違点8) 第二支持体に固定される第二物質である抗体について、本件訂正発明2においては、「幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され」ているのに対し、甲1発明においては、「捕捉試薬として抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2.0OD280になるよう調製した10mMトリス緩衝液(pH7.5)」を「1.04μl/cmで」「塗布して乾燥させた」点。 (相違点9) 第二支持体が、本件訂正発明2は、「ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであ」るのに対し、甲1発明は、「Millipore Highflow HF12004(Millipore)」で構成される「固相支持体6」であるものの、素材は明らかではない点。 (相違点10) 本件訂正発明2は、「前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下である」のに対し、甲1発明は、そのような相関係数が不明である点。 c 事案に鑑み、最初に上記相違点10について検討する。 甲2は、試験片Yをイムノクロマトグラフィ装置Xに装填して、単位時間当たりの発色スピードを測定するレートアッセイを行うこと(甲2技術事項)を開示するが、発色スピードの算出方法及び算出タイミングについての詳細、並びに、発色スピードの反応飽和時の測定値に対する相関係数を開示又は示唆する記載は見当たらない。 また、レートアッセイにおいて、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間におけるシグナル強度の時間変化率の、反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下とすることが、本件特許に係る出願の出願時における技術常識であったとも認められない。 そうすると、仮に、甲1発明を用いてレートアッセイを行うとしても、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における発色の時間変化率の、反応飽和時における前記発色に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下となるように、標識である金コロイド、標識抗体である抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体及び捕捉抗体である抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の量などを調整することは、当業者といえども容易に想起し得たこととはいえない。 なお、甲11及び甲12から把握されるラテラルフロー用テストストリップの構成部材をブロッキングするという従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)は、上記相違点10の想到容易性の判断を左右するものではない。 d したがって、上記相違点5ないし9について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件訂正発明6、7及び10について 本件訂正発明6、7及び10は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件訂正発明2が甲1発明、甲2技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、上記(ア)で検討したとおりであるから、本件訂正発明6、7及び10も本件訂正発明2と同じ理由により、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件訂正により請求項3ないし5、8、9及び11ないし18は削除されたため、本件訂正前の請求項3ないし5、8、9及び11ないし18に係る取消理由の対象となる請求項は存在しない。 ウ 甲2発明を主引用発明とした場合について (ア)本件訂正発明2について a 本件訂正発明2と甲2発明とを対比する。 (a)甲2発明の「発色」が、被測定物の反応により発生すること、「発色スピード」の「測定」が、「発色」を光学的に検出してその時間変化率を算出して行われること、及び「発色スピード」が、被測定物について判断するために基準値と比較されることは、いずれも明らかである。 (b)甲2発明の「発色」及び「発色スピード」は、それぞれ本件訂正発明2の「光学的手法によって検出可能なシグナル」及び「シグナル増加率」に相当する。 (c)甲2発明の「試験片Y」と、本件訂正発明2の「ラテラルフロー用テストストリップ」は、「試験デバイス」で共通する。 (d)上記(a)ないし(c)を踏まえると、甲2発明の「単位時間当たりの発色スピードを測定するレートアッセイに用いる試験片Y」と、本件訂正発明2の「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する、光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から前記複合物と前記第二物質との反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物と前記第一物質との反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで前記分析対象物の濃度を判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップ」とは、「分析対象物の反応により発生する光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から分析対象物の反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物の反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで、前記分析対象物について判断するために使用される試験デバイス」で共通する。 b そうすると、本件訂正発明2と甲2発明とは、 「 分析対象物の反応により発生する光学的手法によって検出可能なシグナルを光学的手法により測定し、測定した前記シグナルの強度から分析対象物の反応が飽和するまでの時間よりも短い所定時間におけるシグナル増加率を、前記分析対象物の反応開始時から前記所定時間までの前記シグナル強度の時間変化率を利用して算出し、算出した前記シグナル増加率を予め設定したシグナル増加率の基準値と比較することで、前記分析対象物について判断するために使用される試験デバイス」 の発明である点において一致し、次の相違点11ないし14において相違する。 (相違点11) 光学的手法によって検出可能なシグナルが、本件訂正発明2においては、「分析対象物と前記分析対象物に特異的親和性のある第一物質との反応によって形成された複合物と、前記分析対象物に特異的親和性のある第二物質と、を反応させることで発生する」のに対し、甲2発明においては、被測定物の反応により発生するものの、反応の詳細については特定されていない。 (相違点12) 分析対象物についての判断が、本件訂正発明2においては、「分析対象物の濃度を判断」するのに対し、甲2発明においては、判断の内容が特定されていない点。 (相違点13) 試験デバイスの構造について、本件訂正発明2は、「前記分析対象物を含む試料が滴下される部材であるサンプルパッドと、 前記試料が流れる方向に前記第一物質が標識された粒子である第一支持体が乾燥状態で保持されている結合パッドと、 前記第二物質が化学結合または物理結合によって固定され、ブロッキングされている第二支持体と、 前記第二支持体の下流に配置され、毛細管現象により浸潤してきた試料を吸収する吸収パッドと、 が直列に連結され、 前記分析対象物は抗原であり、 前記第一物質は抗体であり、 前記第一支持体は粒子径が20nm~1000nmの金コロイドであり、 前記第二物質は抗体であって、前記第二支持体に幅0.5~2.0mmのライン状に1cmあたり0.1~2μgとなる量が固定され、 前記第二支持体は、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、ニトロセルロース、シリコンの樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、セラミックス及びその複合体のいずれか1つによって構成されるメンブレンであ」る「ラテラルフロー用テストストリップ」であるのに対し、甲2発明は構造の詳細は特定されていない「試験片Y」である点。 (相違点14) 本件訂正発明2は、「前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下である」のに対し、甲2発明は、そのような相関係数が不明である点。 c 事案に鑑み、最初に上記相違点14について検討する。 甲2には、発色スピードの算出方法及び算出タイミングについての詳細、並びに、発色スピードの反応飽和時の測定値に対する相関係数を開示又は示唆する記載は見当たらない。 また、レートアッセイにおいて、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間におけるシグナル強度の時間変化率の、反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下とすることが、本件特許に係る出願の出願時における技術常識であったとも認められない。 そうすると、甲2発明を、測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における発色の時間変化率の、反応飽和時における前記発色に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下となるように構成することは、当業者といえども容易に想起し得たこととはいえない。 なお、サンプルパッド、標識抗体を含む結合パッド、捕捉抗体を固定した検出部位を有するメンブレン及び吸収パッドを直列に連結させた従来周知なラテラルフロー用テストストリップの構造、並びに、上記周知技術1は、上記相違点14の想到容易性の判断を左右するものではない。 d したがって、上記相違点10ないし13について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲2発明、周知技術1及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件訂正発明6、7及び10について 本件訂正発明6、7及び10は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件訂正発明2が甲2発明、周知技術1及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、上記(ア)で検討したとおりであるから、本件訂正発明6、7及び10も本件訂正発明2と同じ理由により、甲2発明、周知技術1及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件訂正により請求項3ないし5、8、9及び11ないし18は削除されたため、本件訂正前の請求項3ないし5、8、9及び11ないし18に係る取消理由の対象となる請求項は存在しない。 (3)小括 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第29条第1項第3号に係る特許異議申立理由について (1)申立人は、特許異議申立書において、本件の請求項1ないし19に係る発明は、甲1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 しかしながら、上記第4(2)イで示したように、本件訂正発明2、6、7及び10と甲1発明とは、少なくとも上記相違点10において実質的に相違するから、本件訂正発明2、6、7及び10は、甲1発明でない。 よって、申立人の上記特許異議申立理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 なお、本件訂正により請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は削除されたため、請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に係る特許異議申立理由の対象となる請求項は存在しない。 (2)申立人は、特許異議申立書において、本件の請求項1ないし19に係る発明は、甲2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 しかしながら、上記第4(2)ウで示したように、本件訂正発明2、6、7及び10と甲1発明とは、少なくとも上記相違点14において実質的に相違するから、本件訂正発明2、6、7及び10は、甲2発明でない。 よって、申立人の上記特許異議申立理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 なお、本件訂正により請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は削除されたため、請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に係る特許異議申立理由の対象となる請求項は存在しない。 2 特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について (1)申立人は、特許異議申立書において、周知例として以下の甲第3号証ないし甲第10号証を提示し、本件の請求項1ないし19に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明、及び、技術常識又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 甲第3号証:特開2000-321277号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2006-201062号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特開2010-207123号公報(以下「甲5」という。) 甲第6号証:田中貴金属工業、金コロイドを用いた高感度体外診断薬キットの開発に成功、田中貴金属|ニュース/リリース、2010年9月1日(以下「甲6」という。) 甲第7号証:特開平8-94620号公報(以下「甲7」という。) 甲第8号証:生化学辞典、1998年10月8日発行、第3版、p.1086-1087,1288(以下「甲8」という。) 甲第9号証:特開2002-171970号公報(以下「甲9」という。) 甲第10号証:国際公開第2005/038044号(以下「甲10」という。) (2)しかしながら、上記第4(2)イで検討したように、本件訂正発明2、6、7及び10は、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記第4(2)ウで検討したように、本件訂正発明2、6、7及び10は、甲2発明、周知技術1及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 甲3はクロマトの呈色度合いを光学的に定量測定する装置を、甲4は核酸クロマトグラフィーのプローブとしてオリゴヌクレオチドを用いることを、甲5は着色粒子に対する結合パートナーの結合を物理的吸着又は化学的結合により行うことを、甲6はPSAを検出するイムノクロマト診断薬キットを、甲7は2時点間の吸光度変化量から濃度を決定するレート法を、甲8はビオチン及び補因子の説明を、甲9は組織免疫染色法を、甲10はフローサイトメトリー法を、それぞれ開示している。 しかしながら、甲3ないし10が開示する事項は、上記相違点4、10及び14に係る「前記測定の開始時から3分、4分、5分、6分経過時を始点とした1分間を測定時間としたときの、前記測定時間における前記シグナル強度の時間変化率の、前記複合物と前記第二物質との反応飽和時における前記シグナル強度に対する相関係数が、0.9717以上0.9992以下である」について、甲11発明、甲1発明及び甲2発明における上記の相関係数の値が0.9717以上0.9992以下であるといえる根拠を示すものではないし、甲11発明、甲1発明及び甲2発明において上記の相関係数の値が0.9717以上0.9992以下となるように調整することを動機付けるものでもない。 よって、申立人の上記特許異議申立理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 なお、本件訂正により請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は削除されたため、請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に係る特許異議申立理由の対象となる請求項は存在しない。 3 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に係る特許異議申立理由について (1)申立人は、特許異議申立書において、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項4、11ないし15、18及び19に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、その特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、請求項4、11ないし15、18及び19に係る発明は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 (2)しかしながら、本件訂正により請求項4、11ないし15、18及び19は削除されたため、請求項4、11ないし15、18及び19に係る特許異議申立理由の対象となる請求項は存在しない。 なお、申立人が請求項4、11ないし15、18及び19に対して具体的に不備を指摘する事項について、本件訂正により請求項2、6、7又は10に追加された事項はない。 4 特許法第36条第6項第2号に係る特許異議申立理由について (1)申立人は、特許異議申立書において、請求項1、5、12及び15に係る発明は明確でないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 (2)本件訂正により請求項1、5、12及び15は削除されたため、請求項1、5、12及び15に係る特許異議申立理由の対象となる請求項は存在しないが、申立人が請求項1、5、12及び15に対して具体的に不備を指摘する事項のうち、本件訂正により請求項2、6、7又は10に追加された事項について、以下検討する。 ア 請求項1に対して指摘する不備について (ア)申立人は、「・・・測定し、・・・算出し、・・・判断し、」を、ラテラルフロー用テストストリップが行うという表現は日本語として不明瞭であり、また、ラテラルフロー用テストストリップの物としての構成を特定するものとは認められず、物の発明としての構成が技術的に十分に特定されていない旨主張している。 (イ)しかしながら、本件訂正により、申立人が指摘する請求項1の記載が追加された請求項2において、「・・・測定し、・・・算出し、・・・判断するために使用されるラテラルフロー用テストストリップであって、・・・」と訂正された結果、ラテラルフロー用テストストリップの用途を特定する記載であることが明確になった。 また、請求項2では、サンプルパッド、結合パッド、第二支持体及び吸収パッドといった構成が特定されているから、物の発明としての構成が技術的に十分に特定されていないとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 イ 請求項5に対して指摘する不備について (ア)申立人は、請求項5に記載された「メンブレン」に関する説明が、引用する請求項1ないし4を含めて記載されておらず、明確でない旨主張している。 (イ)しかしながら、本件訂正により、独立項となった請求項2において、「・・・前記第二支持体は、・・・によって構成されるメンブレンであり、・・・」と訂正された結果、第二支持体がメンブレンであることが明確になった。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 請求項15に対して指摘する不備について (ア)申立人は、第二支持体の素材として、ポリカーボネートなど、疎水性を持ち、毛細管現象を利用して検査を進めるイムノクロマト法における固相支持体として明らかに適切でない素材が含まれており、明確でない旨主張している。 (イ)本件訂正により、第二支持体の素材を特定する記載は、請求項2に追加されたが、疎水性の素材を含むことにより、発明が明確でないとまではいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、申立人の上記特許異議申立理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 第6 請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に対する特許異議の申立てについて 本件特許の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19についての申立人がした特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。 よって、本件特許の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19についての申立人の特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2、6、7及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件特許の請求項1、3ないし5、8、9及び11ないし19に対して申立人がした特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700963

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