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特許異議申立

2021-700374

テラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法

審判番号
2021-700374
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-092895
登録番号
6781424
請求日
2021年04月23日
審決日
2022年07月14日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】国立大学法人京都大学
  • 【権利者代理人】特許業務法人あい特許事務所
  • 【権利者】株式会社ナリス化粧品
  • 【権利者代理人】特許業務法人あい特許事務所
  • 【異議申立人】株式会社 レクレアル
  • 【異議申立人代理人】松浦 孝
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 井上 香緒梨
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P1651.537-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N) / P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6781424号発明「テラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6781424号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~6〕について訂正することを認める。 特許第6781424号の請求項3、5に係る特許を維持する。 特許第6781424号の請求項1、2、4、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6781424号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年5月5日に出願され、令和2年10月20日にその特許権の設定登録がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 4月23日 :特許異議申立人株式会社レクレアル(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 9月 3日付け:取消理由通知書 同年11月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同月29日付け:訂正請求があった旨の通知 令和4年 3月 3日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 3月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、当審は令和3年11月29日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行い、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。 そして、令和4年3月28日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立において提出された全ての証拠や特許異議申立書における申立人の主張を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると判断したことから、本件訂正請求書については、申立人にさらに意見書を提出する機会を与えなかった(審判便覧67-05.5の4.(1)参照)。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を同訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~6のとおりである。ここで、下線は特許権者が付したものである。以下、特段の断り書き(「下線は当審が付した。」等)がない限り、同様である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「試料に照射するテラヘルツ波の周波数は、 (1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係 を推定する工程と、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する工程と、 により決定された請求項1又は2に記載の皮膚角層水分量の計測方法。」と記載されているのを 「テラヘルツ波を用いた全反射減衰分光法により皮膚角層水分量を計測する方法であって、 テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率R(=Eout/Ein)又はATR信号量ATRint(=log(1/R))を求める工程と、 前記求められた反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を求める工程を有し、 前記角層水分量を求める工程において、水分量が既知である標準角層モデル用いて求められた反射率又はATR信号量と、試料から求められた反射率又はATR信号量との対比を行う工程をさらに有し、 試料に照射するテラヘルツ波の周波数は、 (1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程と、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する工程と、 により決定されることを特徴とするテラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を計測する方法において、 (1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程とを有し、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する方法。」 と記載されているのを 「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を計測する方法において、 (1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程とを有し、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する方法。」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 ここで、訂正前の請求項2~4は請求項1を引用するものであるから、請求項1~4は一群の請求項であるところ、上記訂正事項1~4はその一群の請求項においてなされたものである。また、訂正前の請求項6は請求項5を引用するものであるから、請求項5~6は一群の請求項であるところ、上記訂正事項5~6はその一群の請求項においてなされたものである。 よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1~2、4、6について 訂正事項1~2、4、6は、請求項を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、請求項の削除は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項3について ア 独立形式について 訂正前の「請求項1又は2に記載の皮膚角層水分量の計測方法」を、「テラヘルツ波を用いた全反射減衰分光法により皮膚角層水分量を計測する方法であって、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率R(=Eout/Ein)又はATR信号量ATRint(=log(1/R))を求める工程と、前記求められた反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を求める工程を有し、前記角層水分量を求める工程において、水分量が既知である標準角層モデルを用いて求められた反射率又はATR信号量と、試料から求められた反射率又はATR信号量との対比を行う工程をさらに有し、・・・ることを特徴とするテラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法」に訂正することは、訂正前の請求項3が、訂正前の請求項1又は2を引用して特定されるものであったのを、請求項1を直接的に引用する場合を削除すると共に、請求項2の記載を引用する請求項3の記載を、請求項2の記載を引用しないものとすることであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当し、また、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもない。 イ 「(1)」の工程について (ア)訂正の目的の適否 訂正前の「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める工程」を、「(1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程」に訂正することは、下記第4で記載する令和3年9月3日付け取消理由通知書の2及び3(1)でした指摘に対するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、上記訂正前の「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める工程」をより限定したものといえることから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、「テラヘルツ波時間領域分光法(THz-TDS法)」(段落【0003】)、「(1)THz-TDS装置(TAS7500SP、ADVANTEST社)を用い、表1に示す条件でブタ皮膚(n=4)の複素屈折率を測定した。・・・次に(2)ブタ皮膚の複素屈折率をもとにしみ出し深さdp_pig(数式3参照)と、数式4、数式5、数式6を用いて入射角51.6°における円偏光入射のATR信号量を算出した(図2(a)参照)。・・・そして、しみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線(図2(b)参照)を線形近似によって求めた。」(段落【0021】)、「図2(a)はブタ皮膚のしみ出し深さ及びATR信号量と周波数の関係を示す図であり」(段落【0029】)、と記載されており、また、段落【0022】【表1】には「THz-TDSの測定条件」として「測定帯域[GHz]」を「150-2000」とすることも記載されていることから、この訂正は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 そして、この訂正は、訂正前の発明特定事項を限定し明確にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 「(3)」の工程について (ア)訂正の目的の適否 訂正前の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」を、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」に訂正することは、下記第4で記載する令和3年9月3日付け取消理由通知書の3(1)でした指摘、及び、下記第5で記載する令和4年3月3日付け取消理由通知書(決定の予告)の第5の3(1)でした指摘に対するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、上記訂正前の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」をより限定したものといえることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件特許明細書等には、「次に(2)ブタ皮膚の複素屈折率をもとにしみ出し深さdp_pig(数式3参照)と、数式4、数式5、数式6を用いて入射角51.6°における円偏光入射のATR信号量を算出した(図2(a)参照)。・・・そして、しみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線(図2(b)参照)を線形近似によって求めた。・・・(4)(2)で求めた検量線に(3)で求めたヒト皮膚のATR信号量を代入して、680GHzにおけるヒト皮膚測定時のしみ出し深さdp_human(680)を推定した。(5)680GHzのブタ皮膚とTHz-CW法によるヒト皮膚測定時のしみ出し深さの比が各周波数ωで等しいと仮定し、次の数式7よりヒト皮膚測定時のしみ出し深さスペクトルを求めた。」(段落【0021】)、「図2(a)はブタ皮膚のしみ出し深さ及びATR信号量と周波数の関係を示す図であり」(段落【0029】)、と記載されていることから、この訂正は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 そして、この訂正は、訂正前の発明特定事項を限定し明確にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項5について ア 「(1)」の工程について 訂正前の「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める工程」を、「(1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程」に訂正することは、上記(2)イと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもない。 イ 「(3)」の工程について 訂正前の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」を、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」に訂正することは、上記(2)ウと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正により請求項1、2、4、6は削除された。そして、本件訂正後の請求項3、5に係る発明(以下「本件訂正発明3」、「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3、5に記載された以下のとおりのものである。 (本件訂正発明3) 「【請求項3】 テラヘルツ波を用いた全反射減衰分光法により皮膚角層水分量を計測する方法であって、 テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率R(=Eout/Ein)又はATR信号量ATRint(=log(1/R))を求める工程と、 前記求められた反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を求める工程を有し、 前記角層水分量を求める工程において、水分量が既知である標準角層モデルを用いて求められた反射率又はATR信号量と、試料から求められた反射率又はATR信号量との対比を行う工程をさらに有し、 試料に照射するテラヘルツ波の周波数は、 (1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程と、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する工程と、 により決定されることを特徴とするテラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法。」 (本件訂正発明5) 「【請求項5】 テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に試料である皮膚の表面を接触させて、テラヘルツ波を照射してその反射率又はATR信号量から試料の角層水分量を計測する方法において、 (1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める工程と、 (2)テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させて、任意の周波数のテラヘルツ波を照射してATR信号量を得る工程と、 (3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程とを有し、 (4)(3)で推定されたしみ出し深さと周波数の関係から、試料に照射するテラヘルツ波の周波数を決定する方法。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和3年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 請求項1、2、4に係る発明は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものか否かについて 請求項1、2、4に係る発明は課題を解決できると認識できる範囲を超えているから、請求項1、2、4に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 請求項3、5の「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率」について 「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率」という記載は意味が不明であるから、請求項3、5に係る発明及び請求項5を引用する請求項6に係る発明は明確でない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 請求項3、5の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」について (1)明確性について 「(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係」という記載は意味が不明であり、また、「(2)で得られたATR信号量」と「(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係」から「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係」を推定するとの記載は技術的に不明であるから、請求項3、5に係る発明及び請求項5を引用する請求項6に係る発明は明確でない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)サポート要件について 発明の詳細な説明には「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」は記載されていないから、請求項3、5に係る発明及び請求項5を引用する請求項6に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)実施可能要件について 発明の詳細な説明を参照してもいかにして「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」を実施するのか不明であるから、発明の詳細な説明は当業者が請求項3、5に係る発明及び請求項5を引用する請求項6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。本件特許は、その発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 請求項4の「0.1以上2.0THzの範囲、好ましくは0.6以上1.2THzの範囲であるテラヘルツ波」について 「好ましくは0.6以上1.2THzの範囲」とはどのような条件のときに「0.6以上1.2THzの範囲」となることを示しているのか不明であり、発明の範囲が不明確であるから、請求項4に係る発明は明確でない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 取消理由(決定の予告)の概要 令和4年3月3日付け取消理由通知(決定の予告)では、すでに取り下げられたとみなされている令和3年11月1日に提出された訂正請求書の訂正(以下「見なし取下げ訂正」という。)によっても解消されなかった下記「1」を通知すると同時に、前記訂正に伴い新たに生じた下記「2」について通知したものである。 当審が令和4年3月3日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 1 請求項3、5の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」について (1) 明確性について 見なし取下げ訂正後の請求項3、5における「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したATR信号量と周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」という記載は技術的に不明であるから、前記訂正後の請求項3、5に係る発明は依然として明確でない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) サポート要件について 発明の詳細な説明には、見なし取下げ訂正後の請求項3、5における「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したATR信号量と周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」は記載されていないから、前記訂正後の請求項3、5に係る発明は依然として発明の詳細な説明に記載したものといえない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3) 実施可能要件について 発明の詳細な説明を参照しても、いかにして見なし取下げ訂正後の請求項3、5における「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したATR信号量と周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」を実施するのか不明であるから、発明の詳細な説明は依然として当業者が前記訂正後の請求項3、5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。本件特許は、その発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 請求項3、5の「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」について 見なし取下げ訂正後の請求項3、5における「(1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さ及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量を算出し」との記載では、「参照皮膚モデルの複素屈折率」をもとに「テラヘルツ波の周波数」を算出するということの意味が不明であるから、前記訂正後の請求項3、5に係る発明は明確でない。本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第6 当審の判断 1 上記「第4」「1」について 本件訂正により、請求項1、2、4は削除されたから、上記「第4」「1」で指摘した取消理由の対象となる請求項が存在しないものとなった。 2 上記「第4」「2」について 本件訂正により、「(1)テラヘルツ波の周波数を変化させながら測定した参照皮膚モデルの複素屈折率」は、「(1)テラヘルツ波時間領域分光法による測定により参照皮膚モデルのテラヘルツ波の周波数と複素屈折率との関係を求め、参照皮膚モデルの複素屈折率」に訂正され、記載が明確になったので、上記「第4」「2」で指摘した取消理由は解消された。 3 上記「第4」「3」及び「第5」「1」について (1)上記「第4」「3」の「(1)」及び「第5」「1」の「(1)」について ア 本件訂正により、「(1)・・・参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める」が、「(1)・・・参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める」に訂正されたうえで、「(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係」が、「(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係」に訂正された。 この訂正により、(1)の工程においてテラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係を算出することが特定され、(3)の工程において当該関係を用いることが特定されることになるから、記載が明確になった。 イ 本件訂正により、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」が、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」に訂正された。 この訂正により「(2)で得られたATR信号量」、「(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係」、「(1)の工程で算出した」「ATR信号量としみ出し深さとの関係」から、「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係」を推定する点が明確になったので、記載が技術的に明確になった。 ウ したがって、上記「第4」「3」の「(1)」及び「第5」「1」の「(1)」で指摘した取消理由は解消された。 (2)上記「第4」「3」の「(2)」及び「第5」「1」の「(2)」について ア 本件訂正により、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で求められるATR信号量と周波数との関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」が、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」に訂正された。 イ ここで、発明の詳細な説明には、段落【0021】、【0028】、【0029】、図2~3より、下記の点が記載されていると認められる。 (ア)図1に示す構成を有する装置を用いて測定した680GHzにおけるヒト前腕皮膚のATR信号量を、THz-TDS装置を用いて測定したブタ皮膚の複素屈折率から求めたしみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線に代入して、680GHzにおけるヒト皮膚測定時のしみ出し深さdp_human(680)を推定し、数式7より図3に示されるヒト皮膚測定時のしみ出し深さスペクトルを求める。 (イ)図2(a)はブタ皮膚のしみ出し深さと周波数との関係及びATR信号量と周波数との関係を示す図である。 ウ そして、本件訂正発明3、5の「(2)で得られたATR信号量」、「(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係」、「(1)の工程で算出した」「ATR信号量としみ出し深さとの関係」、「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係」は、それぞれ、発明の詳細な説明の「図1に示す構成を有する装置を用いて測定した680GHzにおけるヒト前腕皮膚のATR信号量」、「図2(a)」の「ブタ皮膚」の「しみ出し深さと周波数との関係」、「THz-TDS装置を用いて測定したブタ皮膚の複素屈折率から求めたしみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線」、「図3に示されるヒト皮膚測定時のしみ出し深さスペクトル」に対応していると認められる。 エ そうすると、発明の詳細な説明には、「図1に示す構成を有する装置を用いて測定した680GHzにおけるヒト前腕皮膚のATR信号量」(本件訂正発明3、5の「(2)で得られたATR信号量」に対応。)、「図2(a)」の「ブタ皮膚」の「しみ出し深さと周波数との関係」(本件訂正発明3、5の「(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数との関係」に対応。)、「THz-TDS装置を用いて測定したブタ皮膚の複素屈折率から求めたしみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線」(本件訂正発明3、5の「(1)の工程で算出した」「ATR信号量としみ出し深さとの関係」に対応。)から、「図3に示されるヒト皮膚測定時のしみ出し深さスペクトル」(本件訂正発明3、5の「テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係」に対応。)を推定することが、記載されている。 したがって、本件訂正発明3、5は発明の詳細な説明に記載したものといえるから、本件訂正により、上記「第4」「3」の「(2)」及び「第5」「1」の「(2)」で指摘した取消理由は解消された。 (3)上記「第4」「3」の「(3)」及び「第5」「1」の「(3)」について 上記(2)で述べたとおり、「図1に示す構成を有する装置を用いて測定した680GHzにおけるヒト前腕皮膚のATR信号量」、「図2(a)」の「ブタ皮膚」の「しみ出し深さと周波数との関係」、「THz-TDS装置を用いて測定したブタ皮膚の複素屈折率から求めたしみ出し深さとATR信号量の関係を示す検量線」から、「図3に示されるヒト皮膚測定時のしみ出し深さスペクトル」を推定することができることから、発明の詳細な説明には、「(3)(2)で得られたATR信号量と、(1)の工程で算出したしみ出し深さと周波数の関係及びATR信号量としみ出し深さとの関係から、テラヘルツ波射出面であるプリズム表面に、試料の動物種と同一種の動物の皮膚表面を接触させた時の周波数としみ出し深さの関係を推定する工程」を当業者が実施できるように記載されているといえる。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明3、5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるから、上記「第4」「3」の「(3)」及び「第5」「1」の「(3)」で指摘した取消理由は解消された。 4 上記「第4」「4」について 本件訂正により、請求項4は削除されたから、上記「第4」「4」で指摘した取消理由の対象となる請求項が存在しないものとなった。 5 上記「第5」「2」について 本件訂正により、「(1)・・・参照皮膚モデルの複素屈折率から、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さの関係を求める」が、「(1)・・・参照皮膚モデルの複素屈折率をもとに、テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係及びテラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係を算出し、当該参照皮膚モデルにおけるATR信号量としみ出し深さとの関係を求める」に訂正された。 この訂正により、「参照皮膚モデルの複素屈折率」をもとに、「テラヘルツ波の周波数としみ出し深さの関係」及び「テラヘルツ波の周波数とATR信号量の関係」を算出する点が明確になったことから、上記「第5」「2」で指摘した取消理由は解消された。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった以下の特許異議申立理由は、いずれも本件訂正前の請求項1、2及び4に係る発明に対するものであり、これらの請求項は本件訂正により削除されたことから、申立ての対象が存在しないものとなった。 (1)特許法第29条第1項第3号について 本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、以下の甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件訂正前の請求項1、4に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第29条第2項について 本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、以下の甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)特許法第36条第6項第1号について 本件訂正前の請求項4の構成要件(4A)は、「0.1以上2.0THzの範囲、好ましくは0.6以上1.2THzの範囲であるテラヘルツ波を試料に照射して、反射率又はATR信号量を求める」というものであるが、「2.0THz」は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件訂正前の請求項4に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものといえず、本件訂正前の請求項4に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 甲第1号証:Handbook of Photonics for Biomedical Science, 23 Terahertz Tissue Spectroscopy and Imaging 甲第2号証:特開2016-53528号公報 甲第3号証:Routledge Handbooks Online, https://www.routledgehandbooks.com/doi/10.1201/9781439806296-c23 なお、甲第3号証は、甲第1号証の発行年月を示すものである。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3、5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項3、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件請求項1、2、4、6に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申し立てについて、本件請求項1、2、4、6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700374

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