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特許異議申立

2024-700079

蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置

審判番号
2024-700079
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-527554
登録番号
7318647
請求日
2024年02月01日
審決日
2024年05月09日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】凸版印刷株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】田中 俊子
審判長/審判官
  • 審判長 岩間 直純
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7318647号発明「蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7318647号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 特許第7318647号の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)年6月25日(優先日 平成30年6月27日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年2月1日に特許異議申立人田中 俊子により、請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議の申立てがなされた。 第2 本件特許発明 特許第7318647号の請求項1ないし14の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 蓄電装置用外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 ポリエステル系樹脂を含む内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、 前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有し、 前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、ポリエステル系樹脂を含む第二の層とを有する多層構造であり、 前記第二の層は、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する、外装材。 【請求項2】 前記第一の層の融点TAと前記第二の層の融点TBとの差TA-TBが10℃以上である、請求項1に記載の外装材。 【請求項3】 前記第二の層が熱硬化性樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載の外装材。 【請求項4】 蓄電装置用外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 ポリエステル系樹脂を含む内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、 前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有し、 前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、熱硬化性樹脂を含む第二の層とを有する多層構造である、外装材。 【請求項5】 前記第二の層が当該外装材の最内面を構成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項6】 全固体電池用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項7】 前記第一の層における前記第二の層が形成されている側と反対側の表面に形成された第三の層を更に備え、 前記第三の層は、ポリエステル系樹脂を含み、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項8】 前記第一の層における前記第二の層が形成されている側と反対側の表面に形成された第三の層を更に備え、 前記第三の層は、熱硬化性樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項9】 前記ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラート系樹脂の少なくとも一方である、請求項1~8のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項10】 前記ポリエチレンテレフタラート系樹脂は、エチレングリコールに由来する構造単位及びテレフタル酸に由来する構造単位と、その他の構造単位とを含み、 前記その他の構造単位の由来となる二価アルコール成分がネオペンチルグリコール、1,4-ブタジオール及びジエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項9に記載の外装材。 【請求項11】 前記ポリエチレンテレフタラート系樹脂は、エチレングリコールに由来する構造単位及びテレフタル酸に由来する構造単位と、その他の構造単位とを含み、 前記その他の構造単位の由来となる酸成分がイソフタル酸、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項9又は10に記載の外装材。 【請求項12】 前記第一の接着層及び前記第二の接着層が熱硬化性接着剤の硬化物からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の外装材。 【請求項13】 蓄電装置本体と、 前記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、 前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電装置本体を収容する、請求項1~12のいずれか一項に記載の外装材と、 を備える蓄電装置。 【請求項14】 全固体電池である、請求項13に記載の蓄電装置。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1 特許法第29条第2項(進歩性) 本件請求項1ないし14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 よって、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性) 本件請求項1ないし14に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 よって、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 〔提出された証拠〕 甲第1号証:特開2017-79199号公報 甲第2号証:特開2006-35646号公報 甲第3号証:国際公開第2016/136640号 甲第4号証:特開2018-32616号公報 甲第5号証:特開2013-226838号公報 甲第6号証:国際公開第2019/027052号 甲第7号証:プラスチックフィルム・レジン材料総覧2001 発行所:株式会社加工技術研究会 2006年6月26日発行 第406頁 第4 申立理由についての当審の判断 1 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。) 「【0001】 本発明は、突き刺し強さが高く、成形性にも優れた電池用包装材料に関する。」 「【0015】 1.電池用包装材料の積層構造 本発明の電池用包装材料は、第1の面31及び第2の面32を有するステンレス鋼箔3と、第1の面31側に積層された基材層1と、第2の面32側に積層されたシーラント層4とを備える積層体からなる。電池用包装材料が電池に使用される際には、基材層1が最外層になり、シーラント層4が最内層(電池素子側)になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。図3に示すように、本発明の電池用包装材料は、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着層2を有していてもよい。また、図4に示すように、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3とシーラント層4との間に接着層5を有していてもよい。 ・・・(中略)・・・。 【0017】 さらに、本発明の電池用包装材料においては、ステンレス鋼箔3の第1の面31側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第1の保護層を構成している。さらに、ステンレス鋼箔3の第2の面32側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第2の保護層を構成している。」 「【0033】 スリップ剤の薄膜層は、基材層1上にスリップ剤をブリードアウトにより表面に析出させて薄層を形成させる方法や、基材層1にスリップ剤を積層することで形成できる。スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドやエチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。」 「【0059】 [シーラント層4] 本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、ステンレス鋼箔3の第2の面32側に積層されており、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。シーラント層4は、複数の層により形成されていてもよい。」 「【0071】 接着層5を有する場合、シーラント層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。シーラント層4にこれら以外の樹脂成分を含有させる場合、シーラント層4中のこれらの樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10~95質量%、好ましくは30~90質量%、更に50~80質量%が挙げられる。必要に応じて含有できる樹脂成分としては、例えば、上記のエラストマーとしての特性を備えるものが挙げられる。また、必要に応じて含有できる樹脂成分の含有量については、本発明の目的を妨げない範囲で適宜設定される。例えば、シーラント層4にプロピレン系エラストマーを含有させる場合、シーラント層4中のプロピレン系エラストマーの含有量としては、通常5~70質量%、好ましくは10~60質量%、更に好ましくは20~50質量%が挙げられる。 【0072】 本発明の電池用包装材料のヒートシール後において、ヒートシール面の位置ズレなどを効果的に抑制する観点から、シーラント層4の融点Tm1としては、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃が挙げられる。また、同様の観点から、シーラント層4の軟化点Ts1としては、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~150℃が挙げられる。同様の観点から、シーラント層4の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1~25g/10分程度、より好ましくは2~15g/10分が挙げられる。 ・・・(中略)・・・。 【0074】 ここで、シーラント層4の融点Tm1は、シーラント層4を構成する樹脂成分の融点をJIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値である。また、シーラント層4が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その融点Tm1は、それぞれの樹脂の融点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。」 「【0078】 シーラント層4は、単層であってもよいし、多層であってもよい。また、シーラント層4は、必要に応じてスリップ剤などを含んでいてもよい。シーラント層4がスリップ剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。さらに、本発明においては、シーラント層4がスリップ剤を含むことにより、電池用包装材料の成形性だけでなく、絶縁性をも高め得る。シーラント層4がスリップ剤を含むことによって電池用包装材料の絶縁性が高められる詳細な機序は必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、シーラント層4がスリップ剤を含む場合、シーラント層4に外力が加わった際に、シーラント層4内において樹脂の分子鎖が動きやすくなり、クラックが生じにくくなると考えられる。特に、シーラント層4が複数種類の樹脂により形成される場合には、これらの樹脂の間に存在する界面において、クラックが生じやすいが、スリップ剤がこのような界面に存在することにより、界面において樹脂が動きやすくなることで、外力が加わった際にクラックに至ることを効果的に抑制できるものと考えられる。このような機序により、シーラント層にクラックが生じることによる絶縁性の低下が抑制されると考えられる。 【0079】 スリップ剤としては、特に制限されず、公知のスリップ剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。シーラント層4におけるスリップ剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01~0.2質量%程度、より好ましくは0.05~0.15質量%程度が挙げられる。」 「【0125】 本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。」 「図3 [図:0001410260000001.jpg] 」 「図4 [図:0001410260000002.jpg] イ 甲第1号証の上記記載事項によれば、次のことがいえる。 (ア)段落【0001】によれば、甲第1号証には、「電池用包装材料」が記載されており、段落【0125】によれば、電池用包装材料は二次電池用として使用されるといえる。 そして、段落【0015】によれば、電池用包装材料は、第1の面31及び第2の面32を有するステンレス鋼箔3と、第1の面31側に積層された基材層1と、第2の面32側に積層されたシーラント層4とを備える積層体からなり、基材層1が最外層に、シーラント層4が最内層(電池素子側)になり、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着層2を有し、ステンレス鋼箔3とシーラント層4との間に接着層5を有する。 (イ)段落【0017】によれば、ステンレス鋼箔3の第1の面31側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第1の保護層を構成し、ステンレス鋼箔3の第2の面32側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第2の保護層を構成する。 (ウ)段落【0071】によれば、接着層5を有する場合、シーラント層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。 (エ)段落【0072】、【0074】によれば、シーラント層4の融点Tm1としては、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃であり、融点Tm1は、JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値である。 (オ)段落【0059】によれば、シーラント層4は、複数の層により形成される。 ウ よって、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「第1の面及び第2の面を有するステンレス鋼箔と、第1の面側に積層され最外層になる基材層と、第2の面側に積層され最内層(電池素子側)になるシーラント層とを備える積層体からなり、基材層とステンレス鋼箔との間に接着層を有し、ステンレス鋼箔とシーラント層との間に接着層を有する二次電池用包装材料であって、 ステンレス鋼箔の第1の面側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第1の保護層を構成し、ステンレス鋼箔の第2の面側に積層された少なくとも1層が、JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上である第2の保護層を構成し、 シーラント層は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよく、 シーラント層の融点Tm1は、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃であり、融点Tm1は、JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値であり、 シーラント層は、複数の層により形成される、二次電池用包装材料。」 エ また、上記「イ(ア)」及び上記「ア」の段落【0033】、【0078】、【0079】の記載によれば、甲第1号証には、次の技術(以下、「甲第1号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「第1の面及び第2の面を有するステンレス鋼箔と、第1の面側に積層され最外層になる基材層と、第2の面側に積層され最内層(電池素子側)になるシーラント層とを備える積層体からなり、基材層とステンレス鋼箔との間に接着層を有し、ステンレス鋼箔とシーラント層との間に接着層を有する二次電池用包装材料であって、 シーラント層は電池用包装材料の成形性を高めるためのスリップ剤を含み、スリップ剤は、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドやエチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等から使用されること。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。) 「【請求項1】 23℃(±2℃)における破断伸びが20%以下のポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムとから構成され、突き刺し強度(1997年のJIS Z1707に準拠)の最大値が5~12Nであることを特徴とする多層フィルム。 【請求項2】 前記ポリエステル系シーラントフィルムを構成するシーラント層が、融点が120~200℃のポリエステル系樹脂、或いはガラス転移点温度が60℃以上で非晶性、低結晶性のポリエステル系樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。 【請求項3】 前記ポリエステル系シーラントフィルムが、融点が200℃を越えるポリエステル系樹脂、或いはガラス転移点温度が60℃以上のポリエステル系樹脂から成る他のポリエステル層(サポート層)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層フィルム。 ・・・(中略)・・・。 【請求項5】 基材フィルムが、少なくともアルミニウム箔、及び前記シーラント層よりも融点が高い2軸延伸フィルムの最外層からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の多層フィルム。」 「【0001】 本発明は、ポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムとから構成されるヒートシール性、及び突き刺し、引き裂き開口性に優れる多層フィルム、及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、食品、飲料等の包装容器として、透明性、ガスバリヤー性、耐衝撃性等に優れたポリエステル容器が採用されており、一方、このような容器の蓋材として、ある程度の引っ張り強度とガスバリヤー性を有することからポリエステル樹脂から成る蓋材が広く使用されている。 このような蓋材を用いた包装容器の一例として、ポリエステル樹脂から成るシートを成形してなるフランジ付容器のフランジ部に、アルミニウム箔、熱可塑性樹脂層等を積層した蓋材を、ヒートシール等により密封するコップ形状容器が知られている。これらの蓋材は、飲料等においては、開口部分を剥がして開口するピーラブル蓋材として使用されるか、蓋材を剥がさずにストロー等で直接突き刺したり、又はオーバーキャップで蓋材の一部を突き破る方法が採られている。 【0003】 一方、この種の包装容器に充填密封される各種飲料の分野では、その保存性を高めるため、内容物を高温で加熱殺菌し、25℃から35℃に冷却して無菌充填する方法や、65℃から90℃程度の温度でホット充填する方法が採用されており、また、55℃以上で約2週間程度の保存条件下でホットウォーマー販売される場合もあり、前述した包装容器、蓋材の使用量は増加している。 しかしながら、従来、後述する特許文献1や特許文献2においては、ストロー又は開封部材を有するオーバーキャップで、蓋材の一部を突き破って開口する際の開口性、或いは加熱殺菌、ホット充填、ホットウォーマー販売を考慮した蓋材の突き刺し、突き破りによる開口性は提案されてない。 ・・・(中略)・・・。 【0007】 本発明の目的は、耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムを提供することにある。 更に、本発明の他の目的は、上記した耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムの製造法を提供することにある。」 「【0018】 [他のポリエステル層] 本発明の多層フィルムにおけるポリエステル系シーラントフィルムは、前述したシーラント層と、該シーラント層の樹脂よりも高い融点のポリエステル系樹脂から成る他のポリエステル層を有する多層構成とすることもできる。」 「【0021】 尚、前述した「融点」とは、結晶性高分子が固体状態から液体状態に転移する温度をいい、本発明における融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)(1987年JIS K7121に準拠)により行われ、温度-△T曲線の融解ピーク温度(Tm)を融点とする。」 「【0023】 2.[基材フィルム] 基材フィルムは、一般的に引っ張り強度、ガスバリヤー性、水分遮断性、光線遮断性等を付与するために、前記ポリエステル系シーラントフィルムに積層されるものであり、必要に応じて印刷加工が施される場合もある。基材には、フランジ部を有するカップ形状容器に蓋材をヒートシールさせる際に、ヒートシールヘッドに融着しない程度の耐熱性が必要とされ、金属箔、又は前記ポリエステル系シーラントフィルムのシーラント層の樹脂よりも融点の高い熱可塑性樹脂が使用される。 基材フィルムは、金属箔の場合にはアルミニウム箔が例示でき、シーラント樹脂より融点の高い熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂等の一軸延伸乃至二軸延伸フィルムが例示できる。 ポリエチレンテレフタレート系樹脂の原料成分としては、前記した他のポリエステル系樹脂層に使用した樹脂と同種のものが使用できる。 ・・・(中略)・・・。 【0024】 基材フィルムは単層から構成されていてもよく、多層であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6等の樹脂からなる二軸延伸フィルムの一種乃至二種とアルミニウム箔を積層したものが挙げられる。 ・・・(中略)・・。 【0025】 3.[多層フィルム] 本発明の多層フィルムは、少なくともポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムとから構成されるが、ポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムは接着剤を介して積層させるのが好ましく、積層方法としては、公知のドライラミネート法、押出ラミネート法等が採用できる。ドライラミネート法を採用する際に使用できる接着剤として、公知のポリエーテルポリウレタン系、又はポリエステルポリウレタン系の接着剤が好適に使用できる。」 「【0031】 本発明の多層フィルムは、耐熱性、落下耐性、ヒートシール性に優れ、且つ易引き裂き開口性にも優れるので、カップ、コップ形状容器の蓋材として有用であり、特にストロー等で直接突き刺して開口するか、又は開封補助部材(オーバーキャップ)による引き裂き開封して内容物を飲むようにした蓋材に有効に使用することができる。 また、内容物を密封保存するための引き裂き開封する包装袋にも好適に使用できる。」 「【0034】 (2)[破断伸び] 以下の方法により、多層フィルムから基材フィルム層を取り除き、ポリエステル系シーラントフィルムの単体フィルムを得た。 まず、ポリエステル系シーラントフィルムにダメージを与えないようにするため、多層フィルムのシーラント面を内側にしてヒートシールして、多層フィルムからなる空の密封パウチを作成した。次に、パウチ外層の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除くため、この面に濃硫酸を塗布し、数分間放置後水洗して加水分解させた。この操作を数回繰り返し、外層を完全に取り除いた後、パウチを希塩酸に浸漬してアルミニウム箔層を溶解して除き、水洗、乾燥させて、基材フィルム層を完全に取り除いた部分のパウチ側壁を測定用の試料とした。」 「【0039】 [実施例1] 9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)と15μmのアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムとした。 一方、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を、それぞれ10μmと20μmの厚さとなるようにして共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成した。 このポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側をドライラミネートし、前記シーラント層がヒートシール面となるように多層フィルムを作成した。」 「【0053】 本発明の多層フィルムは、コーヒー、紅茶、緑茶、スープ各種飲料、食品等をホットウォーマー内等の高温保管下においても、耐熱性と引き裂き開口性に優れたカップ形状容器の蓋材として有用であり、特にストロー等で直接突き刺して開口するか、又は開封補助部材を有するオーバーキャップによる引き裂き開封を行って、飲料等の内容物を飲むカップ、コップ形状容器用の蓋材に有効に使用することができる。 また、内容物を密封保存するための引き裂き開封する包装袋にも好適に使用できる。」 イ 甲第2号証の上記記載事項によれば、次のことがいえる。 (ア)【請求項1】、段落【0001】によれば、甲第2号証には、ポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムとから構成される多層フィルムが記載されている。 また、【請求項2】、【請求項3】及び段落【0018】によれば、ポリエステル系シーラントフィルムは、シーラント層と他のポリエステル層を有する多層構成であり、【請求項5】、【0024】によれば、基材フィルムは、最外層である2軸延伸フィルムとアルミニウム箔を有する。 そして、段落【0023】、【0031】及び【0053】によれば、多層フィルムは、容器にヒートシールされる蓋材に用いられる。 (イ)段落【0039】には、実施例1である多層フィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムとし、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成し、このポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側をドライラミネートし、前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成される。 そして、段落【0025】の「ポリエステル系シーラントフィルムと基材フィルムは接着剤を介して積層させるのが好ましく、積層方法としては、公知のドライラミネート法、押出ラミネート法等が採用できる。ドライラミネート法を採用する際に使用できる接着剤として、公知のポリエーテルポリウレタン系、又はポリエステルポリウレタン系の接着剤が好適に使用できる。」との記載によれば、実施例1の多層フィルムにおいても、ポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側をドライラミネートとする際、接着剤を使用しているといえる。 (イ)【0023】の「基材フィルムは、金属箔の場合にはアルミニウム箔が例示でき、シーラント樹脂より融点の高い熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂等の一軸延伸乃至二軸延伸フィルムが例示できる。」との記載によれば、実施例1の多層フィルムにおける2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはポリエステル系シーラントフィルムよりも融点が高いといえる。 (ウ)段落【0021】によれば、融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)(1987年JIS K7121に準拠)により行われ、温度-△T曲線の融解ピーク温度(Tm)を融点とする。 ウ よって、甲第2号証に記載された実施例1に着目すると、上記アから、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「シーラント層と他のポリエステル層を有する多層構成であるポリエステル系シーラントフィルムと最外層である2軸延伸フィルムとアルミニウム箔を有する基材フィルムとから構成され、容器にヒートシールされる蓋材に用いられる多層フィルムであって、 多層フィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムとし、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成し、このポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側を接着剤を使用してドライラミネートし、前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成され、 2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはポリエステル系シーラントフィルムよりも融点が高く、 融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)(1987年JIS K7121に準拠)により行われ、温度-△T曲線の融解ピーク温度(Tm)を融点とする、多層フィルム。」 エ また、上記「イ(ア)」、「イ(イ)」によれば、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「シーラント層と他のポリエステル層を有する多層構成であるポリエステル系シーラントフィルムと最外層である2軸延伸フィルムとアルミニウム箔を有する基材フィルムとから構成され、容器にヒートシールされる蓋材に用いられる多層フィルムであって、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成すること。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。) 「[0020] [二次電池用外装材10] まず、本発明の一実施形態に係る二次電池用外装材10(以下、単に「外装材10」とも記す。)について説明する。外装材10は、図1に示すように、第1基材層1、第1接着剤層2、金属箔層4、腐食防止処理層5、第2基材層6、接着樹脂層7、及び熱融着樹脂層8がこの順に順次積層されてなる積層構造を有する。外装材10は、例えば、金属箔の一方の面上に腐食防止処理層5を形成し、金属箔の他方の面に第1接着剤を介して第1基材材料を貼り合わせ、腐食防止処理層5上に第2基材層6を形成し、第2基材層6上に接着樹脂を介して熱融着樹脂層8を形成することにより製造される。なお、第2基材層6が腐食防止機能を付与可能な後述する特定の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成される場合、外装材10は腐食防止処理層5を備えていなくてもよい。」 「[0041] (第2基材層6) 第2基材層6は、エンボス成型時の金属箔層4の破断又はピンホールの発生を防止し、また、金属箔層4と電池要素又はリード(金属端子)との接触を防止して両者の電気的絶縁性を得やすくする役割を果たす。さらに、外装材が金属箔層4の両側にそれぞれ第1基材層1と第2基材層6とを備えることにより、成型加工時の反りを低減することができる。」 「[0045] 第2基材材料は、例えば、溶液として金属箔層4又は腐食防止処理層5上に塗布され、加熱又は乾燥することにより第2基材層6となる。また、第2基材材料が硬化剤を含む場合、さらにエージングすることにより、硬化して第2基材層6となる。第2基材層6の融点は熱融着樹脂層8の融点よりも40℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましい。上記範囲の融点を有する第2基材層6を用いて外装材を熱融着することにより、熱融着時に第2基材層6が薄くなることを一層抑制することができる。その結果、金属箔層4と電池要素又はリード(金属端子)との接触を防ぎ、より優れた絶縁性を確保することができる。第2基材層6の融点と熱融着樹脂層8の融点との間の差が大きい場合、融着の機能と絶縁性とを両立しやすくなり、広い温度範囲から熱融着温度を設定できる。第2基材層6の融点は200℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましい。第2基材層6の融点が200℃以上であることにより、第2基材層6が熱融着時に薄くなりすぎず、金属箔層4と電池要素又はリード(金属端子)との接触を防ぎ、より確実に絶縁性を得ることができる。・・・(中略)・・・。なお、本明細書において、融点とは、DSC(示差走査熱量計)にて、試料を5℃/分で加熱したときの試料の融解に伴う吸熱ピークトップの温度を示す。」 「[図1] [図:0001410260000003.jpg] イ 甲第3号証の上記記載によれば、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「第1基材層、第1接着剤層、金属箔層、腐食防止処理層、第2基材層、接着樹脂層、及び熱融着樹脂層がこの順に順次積層されてなる積層構造を有する二次電池用外装材であって、第2基材層は、エンボス成型時の金属箔層の破断又はピンホールの発生を防止し、また、金属箔層と電池要素又はリード(金属端子)との接触を防止して両者の電気的絶縁性を得やすくする役割を果たし、第2基材層の融点は熱融着樹脂層の融点よりも40℃以上高く、熱融着時に第2基材層が薄くなることを一層抑制でき、第2基材層の融点は200℃以上であり、第2基材層が熱融着時に薄くなりすぎず、金属箔層4と電池要素又はリード(金属端子)との接触を防ぎ、より確実に絶縁性を得ることができること。」 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。) 「【0029】 前記蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4の一方の面に第1接着剤層5を介して基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に第2接着剤層6を介して内側シーラント層(内側層)3が積層一体化された構成からなる(図1、2参照)。」 「【0049】 本発明において、前記基材層(外側層)2は、耐熱性樹脂層で形成されているのが好ましい。前記耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、シーラント層3の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、シーラント層3の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。」 イ 甲第4号証の上記記載によれば、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「金属箔層の一方の面に第1接着剤層を介して基材層(外側層)が積層一体化されると共に、前記金属箔層の他方の面に第2接着剤層を介して内側シーラント層(内側層)が積層一体化された構成からなる蓄電デバイス用外装材であって、基材層(外側層)は、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用い、耐熱性樹脂としては、シーラント層の融点より高い融点を有する耐熱性樹脂を用いること。」 「【図1】 [図:0001410260000004.jpg] 」 (5)甲第5号証 ア 甲第5号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。) 「【0002】 レトルト食品などの食品類や医薬品あるいは工業薬品などの包装材として、内容物の化学変化、劣化、腐敗等を防止するために、酸素や水分のバリア性に優れている金属箔を使用し、該金属箔を基材フィルムとシーラント層の中間に積層したラミネート包装材が、従来から広く用いられている(特許文献1参照)。 【0003】 一方、近年、パソコン等のOA機器、携帯電話、ゲーム機、ヘッドフォンステレオ、電子手帳等の各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、電源部の電池としても小型化、軽量化を図る観点からリチウムイオンポリマー二次電池が多く用いられるようになってきている。このリチウムイオンポリマー二次電池は、電池内の電解液が水と反応してフッ酸が生成すると、電池の性能低下を来したり、ケースの腐食により液漏れが発生してしまうことから、そのケース(収容ケース)に用いられる材料として、水蒸気バリア性に優れた密封性の高い上記同様のラミネート包装材が用いられるようになってきている。」 イ 甲第5号証の上記記載によれば、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲第5号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「レトルト食品などの食品類や医薬品あるいは工業薬品などの包装材として、酸素や水分のバリア性に優れている金属箔を使用し、該金属箔を基材フィルムとシーラント層の中間に積層したラミネート包装材が、従来から広く用いられ、リチウムイオンポリマー二次電池のケース(収容ケース)に用いられる材料として同様のラミネート包装材が用いられるようになってきていること。」 (6)甲第6号証 ア 甲第6号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。) 「[0006] また、従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子(電解液、電極など)などを包装する材料として、金属などにより構成されたバリア層の一方面に基材層、他方面に熱融着性樹脂層が積層されたフィルム状の包装材料が知られている。例えば、特許文献2には、基材フィルム層と、バリア層と、シーラント層とが順次積層された加熱滅菌処理用包装材料が開示されている。 ・・・(中略)・・・。 [0008] 例えば、食品などを包装する食品用包装材料として、このようなバリア層を備えたフィルム状の包装材料を用いて、内容物である食品を密封することにより、内容物を光、酸素、水分、細菌などから保護することができる。内容物が、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子などである場合にも同様に、包装材料で内容物を密封することにより、内容物を保護することができる。」 イ 甲第6号証の上記記載によれば、甲第6号証には、次の技術(以下、「甲第6号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子(電解液、電極など)などを包装する材料として、金属などにより構成されたバリア層の一方面に基材層、他方面に熱融着性樹脂層が積層されたフィルム状の包装材料が知られており、食品などを包装する食品用包装材料として、このようなバリア層を備えたフィルム状の包装材料を用いて、内容物である食品を密封することにより、内容物を光、酸素、水分、細菌などから保護することができ、内容物が、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子などである場合にも同様に、包装材料で内容物を密封することにより、内容物を保護することができること。」 (7)甲第7号証 ア 甲第7号証には、次の「表1」が記載されている。 「表1 [図:0001410260000005.jpg] 」 上記表1によれば、PETフィルム(厚み25μm)の融点が265℃であることが見て取れる。 イ 甲第7号証の上記表1によれば、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲第7号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「PETフィルム(厚み25μm)の融点が265℃であること。」 2 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「基材層」、「ステンレス鋼箔」、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」は、本件発明1の「基材層」、「金属箔層」、「内層」に相当する。 そして、甲1発明では、「第1の面及び第2の面を有するステンレス鋼箔と、第1の面側に積層され最外層になる基材層と、第2の面側に積層され最内層(電池素子側)になるシーラント層とを備え」、「基材層とステンレス鋼箔との間に接着層を有し、ステンレス鋼箔とシーラント層との間に接着層を有する」ことから、「最外層になる基材層」と、「接着層」と、「ステンレス鋼箔」と、「接着層」と、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」とをこの順に積層される構造を有するといえる。 してみると、甲1発明における「最外層になる基材層」と、「接着層」と、「ステンレス鋼箔」と、「接着層」と、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」とをこの順に積層される構造と本件発明1の「積層構造」とは、本件発明1の「基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と」「内層と、をこの順で 外側から内側に向けて備える積層構造」である点で共通する。 ただし、内層に関し、本件発明1は「ポリエステル系樹脂」を含むのに対し、甲1発明は「酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよ」い点で相違する。 (イ)本件発明1の「融解ピーク温度」に関し、本件特許明細書段落【0042】に「融解ピーク温度(融点)」と記載されていることから、甲1発明の「JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される」「融点Tm1」は、本件発明1の「内層」が有する「示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度」に相当する。 そして、甲1発明の「シーラント層の融点Tm1」の範囲と本件発明1の「内層」の「融解ピーク温度」の範囲とは一部重複する。 してみると、甲1発明において「シーラント層の融点Tm1は、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃であり、融点Tm1は、JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値であ」ることと本件発明1とは、「前記内層は、所定の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有」する点で共通する。 ただし、本件発明1は内層が「160~280℃」の範囲に融解ピーク温度を有するのに対し、甲1発明はシーラント層が「好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃」の範囲に融点Tm1を有している点で相違する。 (ウ)本件発明1は「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」するのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。 (エ)本件発明1は「前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、ポリエステル系樹脂を含む第二の層とを有する多層構造であり、前記第二の層は、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する」のに対し、甲1発明は「シーラント層は、複数の層により形成される」点で相違する。 (オ)甲1発明の「二次電池用包装材料」は、本件発明1の「蓄電装置用外装材」に相当する。 上記「(ア)」ないし「(オ)」によれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「蓄電装置用外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、所定の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有する、外装材。」 (相違点1) 内層に関し、本件発明1は「ポリエステル系樹脂」を含むのに対し、甲1発明は、「酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよ」い点。 (相違点2) 本件発明1は内層が「160~280℃」の範囲に融解ピーク温度を有するのに対し、甲1発明はシーラント層が「好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃」の範囲に融点Tm1を有している点。 (相違点3) 本件発明1は「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」するのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明1は「前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、ポリエステル系樹脂を含む第二の層とを有する多層構造であり、前記第二の層は、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する」のに対し、甲1発明は「シーラント層は、複数の層により形成される」点。 イ 相違点に対する判断 (ア)事案に鑑み、まず相違点2について判断する。 甲第1号証によれば、甲1発明は、「積層体にステンレス鋼箔が積層されているにもかかわらず、突き刺し強さが高く、成形性にも優れた電池用包装材料を提供する」という課題(段落【0009】を参照)を解決するために、ステンレス鋼箔の両面側に「JIS K7127の規定に準拠した方法により測定された弾性率が100MPa以上」である「保護層」を有するよう構成したもの(段落【0010】、【0017】、【0022】を参照)であり、甲1発明におけるシーラント層の「融点Tm1」は、本件発明1の「内層」の「融解ピーク温度」の下限値である「160℃」以下の範囲も含む「90~245℃」又は「100~220℃」である。 そして、甲第1号証には、シーラント層の「融点Tm1」の下限値「90℃」又は「100℃」を変更する記載や示唆はない。また、該「融点Tm1」を「160℃」以上にあえて変更する格別な理由もなく、これを裏付ける証拠も提出されていない。 また、上記「1(1)」ないし「1(7)」で述べたように、甲第2号証ないし甲第7号証には、甲各号証に記載された各技術が記載されているものの、いずれにもシーラント層の「融点」の下限値を「160℃」以上に変更することは記載されていない。 してみれば、甲1発明におけるシーラント層の「融点Tm1」の範囲を「90~245℃」又は「100~220℃」から「160~280℃」に変更することは当業者が容易になし得えたこととはいえない。 よって、相違点2に係る構成は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得ことはいえない。 (イ)続いて、相違点1について判断する a 甲1発明の「シーラント層は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい」ところ、甲第1号証の段落【0062】には、「シーラント層4の形成に使用されるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。」と記載されている。 ここで、甲第7号証に記載された「PETフィルム(厚み25μm)の融点が265℃であること」との技術(「甲第7号証に記載された技術」)にも見られるように、「ポリエチレンテレフタレート」を含むポリエステル樹脂の融点は、通常200℃を超えることは技術常識(例えば、特開2015-72931号公報の段落【0017】の「ポリブチレンテレフタレート、ポリイソブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリシクロヘキセンテレフタレートなどの融点が220℃以上、好ましくは220~280℃の範囲であるポリエステル樹脂」、国際公開第2007/037290号の段落[0034]の「ポリカーボネート(PC、融点: 220~240°C)」、[0035]の「ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT、融点:約 160~230°C)、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:約 250~270°C)、ポリエチレンナフタレート(PEN 、融点: 272°C)、ポリブチレンナフタレート(PBN、融点: 245°C)等が挙げられる」、森川 武、特集=汎用高分子の高性能化、差別化 ポリエステル、高分子 37巻 11月号、1988年、819頁右欄5ないし6行の「PETの融点は、PBTの225℃にくらべて265℃と約40℃も高く」、[2024年4月15日検索]、インターネット <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/37/11/37_11_818/_pdf/-char/ja>)である。 そして、甲1発明におけるシーラント層の「融点Tm1」は、「より好ましくは100~220℃であ」ることから、シーラント層として単独で採用できる「ポリエステル樹脂」は限られる。 また、上記範囲外の「ポリエステル樹脂」を採用するにしても、「融点Tm1」を上記範囲内に調整する必要性があることは明らかであるものの、甲第1号証には、「融点Tm1」が「90~245℃」又は「100~220℃」であるシーラント層として「ポリエステル樹脂」を採用した実施例・比較例は記載されておらず、まして、「ポリエステル樹脂」を採用した場合、「90~245℃」又は「100~220℃」の範囲内に調整する記載や示唆はない。 さらに、シーラント層として「ポリエステル樹脂」を積極的に採用する格別な理由はなく、これを裏付ける証拠も提出されていない。 してみると、甲1発明において、「融点Tm1」が「90~245℃」又は「100~220℃」であるシーラント層を形成する樹脂として、必ずしも「ポリエステル樹脂」を選択するとは限らない。 b そして、本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、「内層」が「ポリエステル系樹脂を含」み且つ「160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有」することで、100~150℃という高い温度条件下で作動される蓄電装置において耐熱性に優れるという効果を奏するものである。(本件特許明細書の段落【0005】、【0009】、【0022】、【0023】を参照。) しかし、甲第1号証には、甲1発明の「シーラント層」を「ポリエステル樹脂」から形成し、且つ「融点Tm1」を「160~280℃」の範囲とすることで、100~150℃という高い温度条件下で作動される蓄電装置において耐熱性に優れるという効果を示唆する記載はなく、また、当該効果が予測し得るものであることを裏付ける証拠も何等提出されていないことから、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項から見て、本件発明1が奏する効果は当業者が予測できる範囲を越える顕著なものと認められる。 よって、甲1発明において、「融点Tm1」が「90~245℃」又は「100~220℃」であるシーラント層を形成する樹脂として、「ポリエステル樹脂」を選択することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 c 上記「1(2)エ」によれば、甲第2号証には「シーラント層と他のポリエステル層を有するポリエステル系シーラントフィルムと最外層である2軸延伸フィルムとアルミニウム箔を有する基材フィルムとから構成され、容器にヒートシールされる蓋材に用いられる多層フィルムであって、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成すること」の技術(「甲第2号証に記載された技術」)が記載されているものの、甲第2号証の段落【0002】、【0003】、【0031】、【0053】によれば、「容器」は食品、飲料等の容器であって、電池用包装材として使用することの記載や示唆はなく、さらに、甲第2号証の段落【0007】によれば、甲第2号証に記載された技術は、「耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムを提供する」という課題を解決するために成されたものであるから、甲1発明に、「突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルム」に係る甲第2号証に記載された技術を適用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 そして、甲第3号証ないし甲第6号証のいずれにも、電池用外装材において「ポリエステル系樹脂」を含み、且つ融点を「160~280℃」の範囲に有する「シーラント層」を採用する記載や示唆はない。 d よって、相違点2に係る構成は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得ことはいえない。 ウ 異議申立人の主張について (ア)異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 甲第1号証の【請求項1】、段落【0015】及び段落【0071】によれば、本件発明1の構成要件A「蓄電装置用外装材であって、基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と、ポリエステル系樹脂を含む内層と、をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、」を満たす電池用包装材料が開示されているといえる。 また、 甲第1号証の段落【0072】によれば、甲第1号証には、本件発明1の構成要件B「前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、」を満たす電池用包装材料が開示されているといえる。 (36頁4ないし下から2行) (イ)異議申立人の上記主張について判断する。 上記「イ」で判断したように、甲1発明におけるシーラント層の「融点Tm1」の範囲を「90~245℃」又は「100~220℃」から「160~280℃」に変更することは当業者が容易になし得えたこととはいえず、また、甲1発明において「融点Tm1」が「90~245℃」又は「100~220℃」であるシーラント層を形成する樹脂として、「ポリエステル樹脂」を選択することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない よって、異議申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (2)本件発明2、3、5について 請求項2、3、5は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2、3、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、3、5は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「基材層」、「ステンレス鋼箔」、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」は、本件発明4の「基材層」、「金属箔層」、「内層」に相当する。 そして、甲1発明では、「第1の面及び第2の面を有するステンレス鋼箔と、第1の面側に積層され最外層になる基材層と、第2の面側に積層され最内層(電池素子側)になるシーラント層とを備え」、「基材層とステンレス鋼箔との間に接着層を有し、ステンレス鋼箔とシーラント層との間に接着層を有する」ことから、「最外層になる基材層」と、「接着層」と、「ステンレス鋼箔」と、「接着層」と、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」とをこの順に積層される構造を有するといえる。 してみると、甲1発明における「最外層になる基材層」と、「接着層」と、「ステンレス鋼箔」と、「接着層」と、「最内層(電池素子側)になるシーラント層」とをこの順に積層される構造と本件発明4の「積層構造」とは、本件発明4の「基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と」「内層と、をこの順で 外側から内側に向けて備える積層構造」である点で共通する。 ただし、内層に関し、本件発明4は「ポリエステル系樹脂」を含むのに対し、甲1発明は「酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよ」い点で相違する。 (イ)本件発明4の「融解ピーク温度」に関し、本件特許明細書段落【0042】に「融解ピーク温度(融点)」と記載されていることから、甲1発明の「JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される」「融点Tm1」は、本件発明4の「内層」が有する「示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度」に相当する。 そして、甲1発明の「シーラント層の融点Tm1」の範囲と本件発明4の「内層」の「融解ピーク温度」の範囲とは一部重複する。 してみると、甲1発明において「シーラント層の融点Tm1は、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃であり、融点Tm1は、JIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値であ」ることと本件発明4とは、「前記内層は、所定の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有」する点で共通する。 ただし、融解ピーク温度に関し、本件発明4は内層が「160~280℃」の範囲に有するのに対し、甲1発明はシーラント層が「好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃」の範囲に有している点で相違する。 (ウ)本件発明4は「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」するのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。 (エ)本件発明4は「内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、熱硬化性樹脂を含む第二の層とを有する多層構造である」のに対し、甲1発明は「シーラント層は、複数の層により形成される」点で相違する。 (オ)甲1発明の「二次電池用包装材料」は、本件発明4の「蓄電装置用外装材」に相当する。 上記「(ア)」ないし「(オ)」によれば、本件発明4と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「蓄電装置用外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、所定の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有する、外装材。」 (相違点5) 内層に関し、本件発明4は「ポリエステル系樹脂」を含むのに対し、甲1発明は「酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよ」い点。 (相違点6) 融解ピーク温度に関し、本件発明4は内層が「160~280℃」の範囲に有するのに対し、甲1発明はシーラント層が「好ましくは90~245℃、より好ましくは100~220℃」の範囲に有している点。 (相違点7) 本件発明4は「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」するのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。 (相違点8) 本件発明4は「内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、熱硬化性樹脂を含む第二の層とを有する多層構造である」のに対し、甲1発明は「シーラント層は、複数の層により形成される」点。 イ 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点5及び相違点6についてまとめて判断する。 相違点5及び相違点6に係る構成は、相違点1及び相違点2に係る構成と同じであるから、相違点5及び相違点6は、相違点1及び相違点2に対する理由と同様な理由により、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4)本件発明5ないし14について 請求項5ないし14は、請求項1又は請求項4を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明5ないし14は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本件発明1又は本件発明4についての判断と同様の理由により、本件発明5ないし14は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)まとめ 以上のとおり、請求項1ないし14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 3 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「多層フィルム」は「容器にヒートシールされる蓋材に用いられる」ことから外装材といえ、本件発明1とは「外装材」である点で共通する。 ただし、外装材に関し、本件発明1は「蓄電装置用」であるのに対し、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。 (イ)甲2発明において「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムと」されるから、該「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」は基材層といえ、本件発明1の「基材層」に相当する。 また、甲2発明の「アルミニウム箔(Al箔)」は本件発明1の「金属箔層」といえる。 そして、甲2発明において「基材フィルム」が有する「2軸延伸フィルム」は「最外層」であり、「前記シーラント層がヒートシール面となる」ことから、「ポリエステル系シーラントフィルム」は、最外層である「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」に対して内側の層といえ、本件発明1の「ポリエステル系樹脂を含む内層」に相当する。 さらに、甲2発明の「多層フィルム」は「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムとし、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成し、このポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側を接着剤を使用してドライラミネートし、前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成され」ることから、該「多層フィルム」は、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」と、「ポリエステルポリウレタン系接着剤」と、「アルミニウム箔(Al箔)」と、「接着剤」と、「ポリエステル系シーラントフィルム」とをこの順で積層されているといえる。 してみれば、甲2発明において「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」と、「ポリエステルポリウレタン系接着剤」と、「アルミニウム箔(Al箔)」と、「接着剤」と、「ポリエステル系シーラントフィルム」とをこの順で積層された「多層フィルム」は、本件発明1の「基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と、ポリエステル系樹脂を含む内層と、をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造」に相当する。 (ウ)甲2発明において「融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)(1987年JIS K7121に準拠)により行われ、温度-△T曲線の融解ピーク温度(Tm)を融点とする」ことから、甲2発明の「ポリエステル系シーラントフィルムを作成」する「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」及び「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の各「融点」は、本件発明1の「示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度」に相当する。 そして、甲2発明における「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点170℃」及び「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点223℃」は、本件発明1の「160~280℃の範囲」内である。 よって、甲2発明において「ポリエステル系シーラントフィルムを作成」する「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」が「170℃」、「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」が「223℃」であることは、本件発明1の「前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有」することに相当する。 (エ)甲2発明の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはポリエステル系シーラントフィルムよりも融点が高」いことは、本件発明1の「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」することに相当する。 (オ)甲2発明における「他のポリエステル層の樹脂」は「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」でありポリエチレン系樹脂である。また、「他のポリエステル層」の「融点223℃」は、本件発明1の「170~280℃」の範囲内である。 そして、甲2発明では、「シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出し」され、「前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成され」ることから、「シーラント層」は「他のポリエステル層」の内側の面上に形成されるといえ、「シーラント層の樹脂」である「融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」はポリエステル系樹脂である。 してみると、甲2発明において「ポリエステル系シーラントフィルム」は、ポリエステル系樹脂であり「融点」が「223℃」である「他のポリエステル層」と、該「他のポリエステル層」の内側の面上に形成され、ポリエステル系樹脂からなる「シーラント層」との「多層構成である」ことは、本件発明1の「前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、ポリエステル系樹脂を含む第二の層とを有する多層構造であ」ることに相当する。 (カ)甲2発明における「シーラント層の樹脂」である「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」は「170℃」であり、本件発明1の「160~270℃」の範囲内である。 また、甲2発明における「他のポリエステル層」の樹脂である「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」は「223℃」であるから、「シーラント層」の「融点」は「他のポリエステル層」の「融点」より低いといえる。 してみると、甲2発明の「シーラント層」の「融点」は「170℃」であり、「他のポリエステル層」の「融点」よりも低いことは、本件発明1の「第二の層は、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する」ことに相当する。 よって、上記「(ア)」ないし「(カ)」によれば、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 ポリエステル系樹脂を含む内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、 前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有し、 前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成されており、ポリエステル系樹脂を含む第二の層とを有する多層構造であり、 前記第二の層は、160~270℃の範囲であり且つ前記第一の層の融解ピーク温度よりも低い融解ピーク温度を有する、外装材。」 (相違点9) 外装材に関し、本件発明1は「蓄電装置用」であるのに対し、甲2発明はその旨特定されていない点。 イ 相違点9に対する判断 上記「1(1)」ないし「1(6)」によれば、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第6号証には、電池用外装材に係る甲第1号証、甲第3号証ないし甲第6号証に記載された各技術が記載されている。 しかしながら、上記「2(1)イ(エ)」で述べたように、甲第2号証の段落【0002】、【0003】、【0031】、【0053】によれば、甲2発明における「容器」及び「蓋」は、食品、飲料用であって、甲第2号証には蓄電装置用として使用することの記載や示唆はなく、さらに、甲第2号証の段落【0007】によれば、甲2発明は「耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムを提供する」という課題を解決するために成されたものであるから、「突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルム」をあえて蓄電装置用に使用する動機付けはなく、蓄電装置用への使用はむしろ阻害要因があるといえる。 なお、甲第7号証に記載された技術(上記「1(7)」を参照)には、PETフィルムを電池用外装材に使用する記載や示唆はない。 してみれば、相違点9に係る構成は、甲2発明、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得ことはいえない。 ウ 異議申立人の主張について (ア)異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 甲第2号証には、「本発明の目的は、耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムを提供することにある。」(【0007】)と記載され、「本発明の多層フィルムは、コーヒー、紅茶、緑茶、スープ各種飲料、食品等をホットウォーマー内等の高温保管下においても、耐熱性と引き裂き開口性に優れたカップ形状容器の蓋材として有用であり、・・・また、内容物を密封保存するための引き裂き開封する包装袋にも好適に使用できる。」 と記載されている。 そして、食品等に使用されているラミネート包装材と同様のものが、電池の包装材料として使用されることは、例えば、甲第5号証の段落【0002】、【0003】、甲第6号証の段落【0006】、【0007】に記載されているように技術常識であるから、甲第2号証の実施例1の多層フィルムを、電池である蓄電装置用の外装材として適用することは当業者にとって容易であり、これを阻害する要因もない。(48頁下から3行ないし49頁8行参照) (イ)異議申立人の上記主張について判断する。 上記イで述べたように、甲2発明は「耐熱性とヒートシール性に優れ、かつ突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルムを提供する」という課題を解決するために成されたものであるから、「突き刺し開口性や引き裂き開封性に優れる多層フィルム」をあえて蓄電装置用に使用する動機付けはなく、蓄電装置用への使用はむしろ阻害要因があるといえる。 また、上記「1(5)」によれば、甲第5号証には、「レトルト食品などの食品類や医薬品あるいは工業薬品などの包装材として、酸素や水分のバリア性に優れている金属箔を使用し、該金属箔を基材フィルムとシーラント層の中間に積層したラミネート包装材が、従来から広く用いられ、リチウムイオンポリマー二次電池のケース(収容ケース)に用いられる材料として同様のラミネート包装材が用いられるようになってきていること」の技術(「甲第5号証に記載された技術」)が記載され、また、上記「1(6)」によれば、甲第6号証には、「従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子(電解液、電極など)などを包装する材料として、金属などにより構成されたバリア層の一方面に基材層、他方面に熱融着性樹脂層が積層されたフィルム状の包装材料が知られており、食品などを包装する食品用包装材料として、このようなバリア層を備えたフィルム状の包装材料を用いて、内容物である食品を密封することにより、内容物を光、酸素、水分、細菌などから保護することができ、内容物が、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子などである場合にも同様に、包装材料で内容物を密封することにより、内容物を保護することができること」の技術(「甲第6号証に記載された技術」)が記載されているものの、これらは、基材層、金属からなるバリア層及びシーラント層を積層したフィルム状の包装材が、食品や医薬品に限らず電池にも用いられていることを単に示しているに過ぎず、甲第2号証に記載された実施例1に基づく甲2発明が「蓄電装置」にも採用できることを裏付ける証拠であるとはいえない。 よって、異議申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (2)本件発明2、3、5について 請求項2、3、5は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2、3、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、3、5は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「多層フィルム」は「容器にヒートシールされる蓋材に用いられる」ことから外装材といえ、本件発明4とは「外装材」である点で共通する。 ただし、外装材に関し、本件発明4は「蓄電装置用」であるのに対し、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。 (イ)甲2発明において「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムと」されるから、該「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」は基材層といえ、本件発明4の「基材層」に相当する。 また、甲2発明の「アルミニウム箔(Al箔)」は本件発明4の「金属箔層」といえる。 そして、甲2発明において「基材フィルム」が有する「2軸延伸フィルム」は「最外層」であり、「前記シーラント層がヒートシール面となる」ことから、「ポリエステル系シーラントフィルム」は、最外層である「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」に対して内側の層といえ、本件発明1の「ポリエステル系樹脂を含む内層」に相当する。 さらに、甲2発明の「多層フィルム」は「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)とアルミニウム箔(Al箔)をポリエステルポリウレタン系接着剤でドライラミネートして基材フィルムとし、シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出して、ポリエステル系シーラントフィルムを作成し、このポリエステル系シーラントフィルムの他のポリエステル層面側と基材フィルムのアルミニウム箔面側を接着剤を使用してドライラミネートし、前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成され」ることから、多層フィルムは、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」と、「ポリエステルポリウレタン系接着剤」と、「アルミニウム箔(Al箔)」と、「接着剤」と、「ポリエステル系シーラントフィルム」とをこの順で積層されているといえる。 してみれば、甲2発明において「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BO-PET)」と、「ポリエステルポリウレタン系接着剤」と、「アルミニウム箔(Al箔)」と、「接着剤」と、「ポリエステル系シーラントフィルム」とをこの順で積層された「多層フィルム」は、本件発明4の「基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と、ポリエステル系樹脂を含む内層と、をこの順で 外側から内側に向けて備える積層構造」に相当する。 (ウ)甲2発明において「融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)(1987年JIS K7121に準拠)により行われ、温度-△T曲線の融解ピーク温度(Tm)を融点とする」ことから、甲2発明の「ポリエステル系シーラントフィルムを作成」する「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」及び「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の各「融点」は、本件発明4の「示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度」に相当する。 そして、甲2発明における「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点170℃」及び「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点223℃」は、本件発明4の「160~280℃の範囲」内である。 よって、甲2発明において「ポリエステル系シーラントフィルムを作成」する「ポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」が「170℃」、「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」の「融点」が「223℃」であることは、本件発明4の「前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有」することに相当する。 (エ)甲2発明の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはポリエステル系シーラントフィルムよりも融点が高」いことは、本件発明4の「前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有」することに相当する。 (オ)甲2発明における「他のポリエステル層の樹脂」は「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)」でありポリエチレン系樹脂である。また、「他のポリエステル層」の「融点223℃」は、本件発明1の「170~280℃」の範囲内である。 そして、甲2発明では、「シーラント層の樹脂として、融点170℃のポリブチレンテレフタレート系コポリマー(ポリプラスチックス(株)製)と、他のポリエステル層の樹脂として、融点223℃のポリブチレンテレフタレートホモポリマー(ポリプラスチックス(株)製)を共押出し」され、「前記シーラント層がヒートシール面となるよう作成され」ることから、「シーラント層」は「他のポリエステル層」の内側の面上に形成されるといえる。 してみれば、甲2発明における「ポリエステル系シーラントフィルム」は、ポリエステル系樹脂であり「融点」が「223℃」である「他のポリエステル層」と、該「他のポリエステル層」の内側の面上に形成される「シーラント層」との「多層構成である」ことと本件発明4とは、「前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成される第二の層とを有する多層構造であ」ることと共通する。 ただし、第二の層に関し、本件発明4は「熱硬化性樹脂を含む」のに対し、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。 よって、上記(ア)ないし(オ)によれば、本件発明4と甲2発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「外装材であって、 基材層と、 第一の接着層と、 金属箔層と、 第二の接着層と、 ポリエステル系樹脂を含む内層と、 をこの順で外側から内側に向けて備える積層構造を有し、 前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、 前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有し、 前記内層は、ポリエステル系樹脂を含み且つ融解ピーク温度が170~280℃である第一の層と、前記第一の層の内側の表面上に形成される第二の層とを有する多層構造である、外装材。」 (相違点10) 外装材に関し、本件発明4は「蓄電装置用」であるのに対し、甲2発明はその旨特定されていない点。 (相違点11) 第二の層に関し、本件発明4は「熱硬化性樹脂を含む」のに対し、甲2発明はその旨特定されていない点 イ 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点10について判断する。 相違点10に係る構成は、相違点9に係る構成と同じであるから、相違点10は、相違点9に対する理由と同様な理由により、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4)本件発明5ないし14について 請求項5ないし14は、請求項1又は請求項4を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明5ないし14は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1又は本件発明4についての判断と同様の理由により、本件発明5ないし14は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)まとめ 以上のとおり、請求項1ないし14に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700079

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