特許異議申立
2021-700786
フライ油劣化判定装置及びフライ油劣化判定方法
- 審判番号
- 2021-700786
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-564970
- 登録番号
- 6829347
- 請求日
- 2021年08月06日
- 審決日
- 2023年01月16日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社J-オイルミルズ
- 【権利者代理人】特許業務法人創成国際特許事務所
- 【異議申立人】中野 圭二
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 樋口 宗彦
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6829347号発明「フライ油劣化判定装置及びフライ油劣化判定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6829347号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
特許第6829347号の請求項1~5、7~9に係る特許を維持する。
特許第6829347号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第6829347号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)8月6日(優先権主張 令和元年9月17日)を国際出願日とする出願であって、令和3年1月25日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月10日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた(各書面の略称を括弧内に付記した。)。
・令和3年 8月 6日 :特許異議申立人中野圭二(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
・令和3年10月27日付け:取消理由通知書(これによる取消理由の通知を以下「取消通知1」という。)
・令和3年12月27日 :特許権者による意見書(「Y意見書1」)及び訂正請求書の提出
・令和4年 2月16日付け:訂正拒絶理由通知書
・令和4年 3月24日 :特許権者による訂正請求書の手続補正書及び意見書(「Y意見書2」)の提出
・令和4年 5月17日 :申立人による意見書(「X意見書1」)の提出
・令和4年 7月11日付け:取消理由通知書(決定の予告)
・令和4年 9月 5日 :特許権者に対する面接審理
・令和4年 9月16日 :特許権者による意見書(「Y意見書2」)及び訂正請求書(「本件訂正請求書」;これによる訂正を「本件訂正」という。)の提出
・令和4年11月22日 :申立人による意見書(「X意見書2」)の提出
第2.訂正の適否の判断
1 訂正の内容
訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下の訂正事項1~9のとおりである。なお、各構成単位冒頭に記した「A01」などは当審にて付した分説番号であり、以下、該各構成単位を分説番号を用い「構成A01」などということがある(以下同様)。また、下線は訂正箇所を示すために当審で付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「A01 フライヤー内のフライ油で揚げた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
A02 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
A03 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備えることを特徴とする
A04 フライ油劣化判定装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「A11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
A12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
A13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備えることを特徴とする
A14 フライ油劣化判定装置。」
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「B04 前記相関データは、揚げ物の種類別に、フライ油の1又は2以上の劣化指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す劣化指標別データを含み、
B05 前記判定部は、前記劣化指標別データに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記劣化指標の値を評価するとともに、
B06 評価された該値に基づいて、該フライ油の劣化度を判定することを特徴とする
B07 請求項1に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「B11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
B12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
B13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
B14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣化指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
B15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
B16 評価された前記複数の劣化指標の値に基づいて、廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定することを特徴とする
B17 フライ油劣化判定装置。」
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「C06 前記判定部は、評価された前記フライヤー内のフライ油の前記劣化指標のいずれか1つの値が所定の閾値を超えていたときは、該フライ油の劣化度が所定の劣化度であると判定することを特徴とする
C07 請求項2に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「C11 フライヤー内の同一のフライ油で楊げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
C12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
C13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
C14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣化指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
C15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
C16 評価された前記フライヤー内のフライ油の前記劣化指標のいずれか1つの値が所定の閾値を超えていたときは、該フライ油の劣化度が廃油時期を決定するための劣化度であると判定することを特徴とする
C17 フライ油劣化判定装置。」
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「D07 前記劣化指標には、フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物について、揮発性成分量及び風味のうちの少なくとも1つ含まれていることを特徴とする
D08 請求項2又は3に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「D11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
D12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
D13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
D14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣止指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
D15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
D16 評価された前記複数の劣化指標の値に基づいて、廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定し、
D17 前記劣化指標には、フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物について、揮発性成分量及び風味のうちの少なくとも2つ含まれていることを特徴とする
D18 フライ油劣化判定装置。」
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「E04 さらに、前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数、又は前記フライヤー内の前記フライ油の残油の一部廃棄又は廃棄無しで前記フライヤー内に新油を付加する新油付加処理における廃棄量及び付加量を決定する決定部を備えることを特徴とする
E05 請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「E11 フライヤー内のフライ油で揚げた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
E12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
E13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
E14 さらに、前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な楊げ個数を揚げ物の種類別に決定する決定部を備えることを特徴とする
E15 フライ油劣化判定装置。」
(6)訂正事項6
「F04 さらに、前記決定部による決定結果及び該決定結果に基づく前記新油付加処理の実施タイミングを報知する報知部を備えることを特徴とする
F05 請求項5に記載の装置。」
なる構成を備える特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「G04 さらに、前記判定部による判定結果を報知する報知部を備えることを特徴とする
G05 請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「G11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
G12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と
G13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
G14 さらに、前記判定部による判定結果を報知する報知部を備えることを特徴とする
G15 フライ油劣化判定装置。」
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「H04 前記記録部は、前記フライ油で揚げられた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を、前記フライヤー内を撮像するカメラの出力画像、前記フライヤーの操作部に対する操作、前記フライ油で揚げた揚げ物の販売記録、及び調理者の調理作業記録の少なくとも1つに基づいて、認識して記録することを特徴とする
H05 請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されるのを、次のように訂正する。
「H11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
H12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
H13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
H14 前記記録部は、前記フライ油で揚げられた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を、前記フライヤー内を撮像するカメラの出力画像、前記フライヤーの操作部に対する操作、前記フライ油で揚げた揚げ物の販売記録、及び調理者の調理作業記録の少なくとも1つに基づいて、認識して記録することを特徴とする
H15 フライ油劣化判定装置。」
(9)訂正事項9(訂正請求書7-2(2)ア記載の「訂正事項1」)
特許請求の範囲の請求項9に、
「I01 記録部が、フライヤー内のフライ油で揚げた揚げ物の種類と種類別の揚げ個数とを記録する記録ステップと、
I02 判定部が、記録された揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする
I03 フライ油劣化判定方法。」
とあるのを、次のように訂正する。
「I11 記録部が、フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類と種類別の揚げ個数とを記録する記録ステップと、
I12 判定部が、記録された揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データとに基づいて、廃油時期を決定するために、前記いずれかの劣化指標について前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする
I13 フライ油劣化判定方法。」
(10)訂正の単位について
本件訂正前の請求項2~8は同請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、同請求項1~8は一群の請求項であり、上記訂正事項1~8は、該一群の同請求項1~8においてなされたものである。
また、上記訂正事項9は、他の請求項と引用関係を有しない本件訂正前の請求項9に対して請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されているものである。
また、特許権者は、訂正後の請求項1~8に係る訂正について、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の構成A01で特定される「揚げ物」について、それが「複数種類」であることを限定し、該限定に伴い、同「フライ油」について、前記複数種類である揚げ物のフライ油が「同一」であることを限定する訂正要素。
(イ)本件訂正前の構成A02で特定される「揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データ」について、それが「フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について」のものである点を限定し、それに伴い、同構成A03の「前記創刊データ」についても「前記いずれかの劣化指標についての」ものである点を限定する訂正要素。
(ウ)本件訂正前の構成A03で特定される「フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する」ことについて、その劣化度やその判定が「廃油時期を決定するための」ものである点を限定する訂正要素。
イ 上記ア(ア)~(ウ)の各訂正要素はいずれも、本件訂正前の請求項1に記載された特定事項を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 上記ア(ア)~(ウ)の各訂正要素により加入された事項は、それぞれ願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び同図面(以下「本件特許図面」という。)の、上記ア(ア)については【0056】及び【図5】、上記ア(イ)については同【0044】・【0064】~【0069】、上記ア(ウ)については同【0089】~【0091】の記載事項により裏付けられるものであるから。新規事項の追加に該当しない。
また、当該各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項2が同請求項1を引用する形式で記載されていたところ、訂正前の請求項1の構成に対応する構成B11~B13を追加し、構成B07の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)上記(ア)に関係し、本件訂正前の請求項1における構成A01について、上記(1)ア(ア)と同様の限定を行い構成B11とする訂正要素。
(ウ)構成B04について、「1又は2以上の劣化指標」を「2以上の劣化指標」と限定し、「劣化指標別データ」を「複数の劣化指標別相関データ」と限定する訂正要素。
(エ)列挙される上記(ウ)の各「指標」及び「データ」について、構成B04では「、」で接続されていたところを構成B14では「かつ」で接続する形態に変更する訂正要素。
(オ)構成B05の「劣化指標別データに基づいて」(・・・評価する)こと、「劣化指標の値」について、それぞれ「前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、複数の劣化指標別相関データに基づいて(・・・評価する)」こと、「複数の劣化指標の値」、と限定して構成B15とする訂正要素。
(カ)構成B06の「該値」、「該フライ油の劣化度を判定すること」について、それぞれ「前記複数の劣化指標の値」、「廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定すること」、と限定して構成B16とする訂正要素。
(キ)末尾構成B06の「装置」を「フライ油劣化判定装置」と変更する訂正要素。
イ(ア)上記ア(イ)・(ウ)・(オ)・(カ)の訂正要素はいずれも本件訂正前の請求項2に記載された特定事項を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)上記ア(エ)・(キ)の訂正要素はいずれも、本件訂正前の請求項2に記載された特定事項を限定または明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
ウ 上記アに挙げた各訂正要素は、主として本件特許請求の範囲の【請求項1】、本件特許明細書の【0054】・【0055】・【0109】、本件特許図面の【図5】の記載事項により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、当該各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項3が請求項2を引用する形式で記載され、該請求項2は請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1・2の構成A01~A03・B04・B05にそれぞれ対応する構成C11~C15を追加し、構成B07の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)上記(ア)に関連し、上記(1)ア(ア)と同様の訂正を行い構成C11とする訂正要素。
(ウ)上記(ア)に関連し、上記(2)ア(ウ)・(エ)と同様の訂正を行い構成C14とする訂正要素。
(エ)上記(ア)に関連し、上記(2)ア(オ)と同様の訂正を行い構成C15とする訂正要素。
(オ)構成C06の「所定の劣化度」を「廃油時期を決定するための劣化度」と限定する訂正要素。
(カ)構成C07について上記(2)ア(キ)と同様の訂正を行い構成C17とする訂正要素。
イ(ア)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)上記ア(イ)~(エ)・(カ)の訂正要素は、上記(1)イ及び(2)イ(ア)・(イ)での説示と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)上記ア(オ)の訂正要素は、訂正前の特定事項を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 上記アに挙げた訂正要素は、本件訂正前の請求項1・2に記載された事項のほか、上記(1)ウ・(2)ウでも説示したとおり、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、当該各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項4が請求項2・3を引用する形式で記載され、そのうち請求項2は請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1・2の構成A01~A03・B04~B06にそれぞれ対応する構成D11~D16を追加し、構成D08の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)上記(ア)に関連し、上記(1)ア(ア)と同様の訂正を行い構成D11とする訂正要素。
(ウ)上記(ア)に関連し、上記(2)ア(ウ)・(エ)と同様の訂正を行い構成D14とする訂正要素。
(エ)上記(ア)に関連し、上記(2)ア(オ)と同様の訂正を行い構成D15とする訂正要素。
(オ)上記(ア)に関連し、本件訂正前の構成B06における「評価された該値」、「該フライ油の劣化度を判定」することを、それぞれ「評価された前記複数の劣化指標の値」、「廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定」することに限定し、構成D16とする訂正要素。
(カ)本件訂正前の構成D07の「前記劣化指標には、フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物について、揮発性成分量及び風味のうちの少なくとも1つ含まれていること」を、「前記劣化指標には、フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物について、揮発性成分量及び風味のうちの少なくとも2つ含まれていること」に限定し、構成D17とする訂正要素。
(キ)構成D08について上記(2)ア(キ)と同様の訂正を行い構成D18とする訂正要素。
(ク)上記(ア)の訂正要素に関連し、本件訂正後の請求項4は、本件訂正前の請求項3が備えた構成C06に対応する構成を備えないから、訂正事項4は実質的に、請求項3の引用を削除する訂正要素を含む。
イ(ア)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)上記ア(イ)~(エ)・(キ)の訂正要素は、上記(1)イ及び(2)イ(ア)・(イ)での説示と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)上記ア(オ)・(カ)の訂正要素は、訂正前の特定事項を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)上記ア(ク)の訂正要素は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 上記アに挙げた各訂正要素は、本件訂正前の請求項1・2に記載された事項のほか、上記(1)ウ・(2)ウでも説示したとおり、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、当該各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項5が請求項1~4を引用する形式で記載されていたところ、訂正前の請求項1の構成A01~A03にそれぞれ対応する構成E11~E13を追加し、構成E05の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)構成E04の「該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数、又は前記フライヤー内の前記フライ油の残油の一部廃棄又は廃棄無しで前記フライヤー内に新油を付加する新油付加処理における廃棄量及び付加量を決定する」ことを、「該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する」ことに変更して構成E14とする訂正要素。
(ウ)上記(ア)に関連し、上記(2)ア(オ)と同様の訂正を行い構成E15とする訂正要素。
(エ)上記(ア)の訂正要素に関連し、本件訂正後の請求項5は、本件訂正前の請求項2~4が備えた構成B04~B06・C06・D07に対応する構成を備えないから、訂正事項5は実質的に、請求項2~4の引用を削除する訂正要素を含む。
イ(ア)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)上記ア(イ)の訂正要素(以下訂正要素イ」という。)については、次のとおり。
a.訂正要素イの内容
訂正要素イに係る、訂正前の請求項5の特定事項は、
・対象1)該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を決定すること、
・対象2)前記フライヤー内の前記フライ油の残油の一部廃棄又は廃棄無しで前記フライヤー内に新油を付加する新油付加処理における廃棄量及び付加量
の2種類の量を決定すること、
を択一的に特定するものである。
そして、訂正要素イは、前記「対象2」を削除し、前記「対象1」について、次の2点の変更を加えたものである。
・変更1)「揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数・・・を決定」することを、「揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する」ことへと変更すること。
・変更2)「揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数」を決定(揚げ個数を揚げ物の種類別に決定)することについての条件を、「フライ油で揚げることを許可される」ことから、「フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能」であることへと変更すること。
b.変更1について
「揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する」ことを行おうとすれば、揚げ物の種類を列挙した上で、該列挙した揚げ物の種類ごとに揚げ個数を決定することにならざるを得ず、ここでの「揚げ物の種類を列挙すること」は、訂正前の請求項5の「揚げ物の種類・・・を決定」することに該当する。
そうすると、上記《変更1》は、表現上の相違であって、実質的な内容の変更を伴うものではない。
そして、訂正前の上記《対象1》では、「該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の・・・種類別の揚げ個数を決定」するとの特定事項が、前記のとおり、揚げ物の種類を列挙すること、すなわち、揚げ物の種類を決定することを前提として含んでいるにもかかわらず、別に「該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の種類・・・を決定する」という特定事項を直列的に備えているために、実質的に「揚げ物の種類を決定」する機能を重複して特定されていることになり、「該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の・・・種類別の揚げ個数を決定」することに加え、揚げ物の種類を決定することの技術的意義が不明確であるといえ、当該訂正事項5によって、前記重複による不明確性が解消したといえる。
よって、上記《変更1》は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
c.対象2の削除について
前記「対象2」の削除は、択一的な要素の削除にあたり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
d.変更2について
上記《変更2》は、「フライ油で揚げることを許可される」条件について、「フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能」であることへと具体化したものであり、「上位概念から下位概念への変更」にあたり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
(ウ)上記ア(ウ)の訂正要素は、上記(1)イ及び(2)イ(ア)・(イ)での説示と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(エ)上記ア(エ)の訂正要素は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ(ア)上記ア(ア)・(エ)の訂正要素は、本件訂正前の請求項1・5に記載された事項により裏付けられる。
(イ)上記ア(イ)の訂正要素(訂正要素イ)は、本件特許明細書・同図面の【0062】・【0063】及び【図7】の記載事項により裏付けられる。
(ウ)上記ア(ウ)の訂正要素は、上記(1)ウ・(2)ウでも説示したとおり、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、当該各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(エ)また、上記アの各訂正要素は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項6を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載事項に対し新規事項を追加するものでもない。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項7が請求項1~6を引用する形式で記載されていたところ、訂正前の請求項1の構成A01~A03にそれぞれ対応する構成G11~G13を追加し、構成G05の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)上記(ア)に関連し、上記(1)ア(ア)~(ウ)と同様の限定を行い構成G11~G13とする訂正要素。
(ウ)構成G05について上記(2)ア(キ)と同様の訂正を行い構成G15とする訂正要素。
(エ)上記(ア)の訂正要素に関連し、本件訂正後の請求項7は、本件訂正前の請求項2~6が備えた構成B04~B06・C06・E04・F04に対応する構成を備えないから、訂正事項7は実質的に、請求項2~6の引用を削除する訂正要素を含む。
イ(ア)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)上記ア(イ)・(ウ)の訂正要素は、上記(1)イ・(2)イ(イ)の説示と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)上記ア(エ)の訂正要素は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 上記ア(ア)~(エ)の訂正要素は、上記(1)ウ・(2)ウと同様の理由により、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、下記の訂正要素を含む。
(ア)本件訂正前の請求項8が請求項1~7を引用する形式で記載されていたところ、訂正前の請求項1の構成A01~A03にそれぞれ対応する構成H11~H13を追加し、構成H05の引用記載を削除して独立請求項とする訂正要素。
(イ)上記(ア)に関連し、上記(1)ア(ア)~(ウ)と同様の限定を行い構成H11~H13とする訂正要素。
(ウ)構成H05について上記(2)ア(キ)と同様の訂正を行い構成H15とする訂正要素。
(エ)上記(ア)の訂正要素に関連し、本件訂正後の請求項8は、本件訂正前の請求項2~7が備えた構成B04~B06・C06・E04・F04・G04に対応する構成を備えないから、訂正事項8は実質的に、請求項2~6の引用を削除する訂正要素を含む。
イ(ア)上記ア(ア)の訂正要素は特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)上記ア(イ)・(ウ)の訂正要素は、上記(1)イ・(2)イ(イ)の説示と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮または同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)上記ア(エ)の訂正要素は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 上記ア(ア)~(エ)の訂正要素は、上記(1)ウ・(2)ウと同様の理由により、本件特許請求の範囲・同明細書・同図面の記載により裏付けられるものであるから、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項9に対し、上記(1)アで説示した訂正事項1に係る訂正と同様の訂正を行うものである。
よって、上記(1)イの説示と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(1)ウの説示と同様の理由により、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(10)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、本件訂正前の全ての請求項について特許異議申立の対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
第3.本件訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
A11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
A12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
A13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備えることを特徴とする
A14 フライ油劣化判定装置。
【請求項2】
B11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
B12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
B13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
B14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣化指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
B15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
B16 評価された前記複数の劣化指標の値に基づいて、廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定することを特徴とする
B17 フライ油劣化判定装置。
【請求項3】
C11 フライヤー内の同一のフライ油で楊げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
C12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
C13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
C14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣化指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
C15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
C16 評価された前記フライヤー内のフライ油の前記劣化指標のいずれか1つの値が所定の閾値を超えていたときは、該フライ油の劣化度が廃油時期を決定するための劣化度であると判定することを特徴とする
C17 フライ油劣化判定装置。
【請求項4】
D11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
D12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
D13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
D14 前記相関データは、揚げ物の種類別に、かつ、フライ油の2以上の劣止指標ごとに、前記劣化指標の値と揚げ個数との関係を示す複数の劣化指標別相関データを含み、
D15 前記判定部は、前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記複数の劣化指標別相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油に関する前記複数の劣化指標の値を評価するとともに、
D16 評価された前記複数の劣化指標の値に基づいて、廃油時期を決定するための該フライ油の劣化度を判定し、
D17 前記劣化指標には、フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物について、揮発性成分量及び風味のうちの少なくとも2つ含まれていることを特徴とする
D18 フライ油劣化判定装置。
【請求項5】
E11 フライヤー内のフライ油で揚げた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
E12 揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
E13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記相関データとに基づいて、前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
E14 さらに、前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な楊げ個数を揚げ物の種類別に決定する決定部を備えることを特徴とする
E15 フライ油劣化判定装置。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
G11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
G12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と
G13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
G14 さらに、前記判定部による判定結果を報知する報知部を備えることを特徴とする
G15 フライ油劣化判定装置。
【請求項8】
11 フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部と、
H12 フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データを保持する保持部と、
H13 前記記録部が記録した揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、前記いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定部と、を備え、
H14 前記記録部は、前記フライ油で揚げられた揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を、前記フライヤー内を撮像するカメラの出力画像、前記フライヤーの操作部に対する操作、前記フライ油で揚げた揚げ物の販売記録、及び調理者の調理作業記録の少なくとも1つに基づいて、認識して記録することを特徴とする
H15 フライ油劣化判定装置。
【請求項9】
I11 記録部が、フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物について揚げ物の種類と種類別の揚げ個数とを記録する記録ステップと、
I12 判定部が、記録された揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、フライ油についての酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について、揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データとに基づいて、廃油時期を決定するために、前記いずれかの劣化指標について前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする
I13 フライ油劣化判定方法。」
第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4・7~9に係る特許に対して、当審が令和4年7月11日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
ア 新規性欠如について
(ア)請求項1~3・7~9に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)請求項1・2・4・7・9に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 進歩性欠如について
(ア)請求項1~4・7~9に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(イ)請求項1~4・7~9に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 引用文献等一欄
申立人により提示され、取消理由通知書に引用文献として挙げられた甲号証は、以下に示す甲第1~14号証である。以下、略してそれぞれ「甲1」~「甲14」という。
甲第1号証(甲1;引用文献1):特開2004-81431号公報
甲第2号証(甲2;引用文献2):特開平8-182624号公報
甲第3号証(甲3;引用文献3):特表2010-519982号公報
甲第4号証(甲4;引用文献4):「大量調理における揚げ油の化学性状と色相の変化の一例」, 栄養学雑誌, 2011年, Vol.69, No.2, p82-89
甲第5号証(甲5;引用文献5):「フライ油の劣化に及ぼす魚肉リン脂質の影響」, 調理科学,1986年, Vol.6, No.2, p.118-124
甲第6号証(甲6;引用文献6):「揚げ物調理の条件が揚げ油の劣化と揚げ物の官能評価に及ぼす影響」, 日本食生活学会誌, 2009年, Vol.20, No.1, p47-54
甲第7号証(甲7;引用文献7):「使用限界(風味点数3)に達したフライ油の特性」, 日本調理科学会誌, 2010年, Vol.43, No.1, p38-43
甲第8号証(甲8;引用文献8):「家庭における揚げ油の使用」, 日本調理科学会誌, 1996年, Vol.29, No.1, p17-24
甲第9号証(甲9;引用文献9):太田静行・湯木悦二著,「フライ食品の理論と実際」, 幸書房, 1994年10月20日(改訂第2刷),p48-51,56-59,76-83
甲第10号証(甲10;引用文献10):「油の性状と発煙点について」, 家政学雑誌, 1961年, Vol.12, No.4, p309-311
甲第11号証(甲11;引用文献11):「フライ時に発生する揮発性分解生成物の検索」, 油化学, 1967年, Vol.16, No.12, p681-689
甲第12号証(甲12;引用文献12):特開2011-205924号公報
甲第13号証(甲13;引用文献13):特許第5457587号公報
甲第14号証(甲14;引用文献14):特許第5462985号公報
第5.引用文献の記載事項
申立人が提出した甲号証等(甲1~甲14)は、令和3年8月6日に申立人が提出した証拠説明書に記載された、上記第4.2に挙げたとおりのものであり、何れも、本件特許の優先権主張日である令和元年(西暦2019年)9月17日より前に公知となったものである。
1 甲1の記載事項
(1)甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。なお、下線は当審にて付した。以下同様である。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油槽に満たされた調理用油を介して食材を加熱調理するフライヤーに関する。」
「【0004】
そこで、この問題を解決するために、各メニュースイッチをONした回数がそれぞれのメニュースイッチ毎に予め設定した個別基準回数以上、または、全ての調理スイッチをONした合計回数が予め設定した全基準回数以上になった時に濾過作業を促すようにしているフライヤーもあった。
ところが、調理の種類毎に揚げカスの発生量は異なるにもかかわらず、あくまでも調理回数のみに基いて報知が行われるため、一種類しか調理を行わない場合には最適なタイミングで濾過時期を報知できるものの、複数種類の調理が行われた場合には報知時期のタイミングがずれてしまうという問題があった。つまり、揚げカスの発生量が多い調理が多く行われると全調理スイッチの合計ON回数が全基準回数以上となった時には、油槽中の揚げカスが多くなりすぎてしまっているし、反対に、発生量の少ない調理が多く行われると全調理スイッチの合計ON回数が全基準回数以上となっても、油槽中にはそれほど揚げカスがたまっていない。
本発明のフライヤーは上記課題を解決し、最適なタイミングで調理用油を濾過する時期を報知することを目的とする。」
「【0010】
図2は、本発明の一実施形態としての業務用フライヤー(以下、単にフライヤーと呼ぶ)の概略構成図である。
フライヤー1は、ケーシング2内に、食材を揚げるための調理用油が満たされる油槽3と、油槽3内の油を加熱するためのパルス燃焼器4と、主にパルス燃焼器4の燃焼を制御して油を設定温度に維持する加熱コントローラ(図示略)と、各種調理メニュー毎に調理タイマを備えそれらのタイムアップ時に報知をおこなう調理コントローラ6と、油槽3の油を濾過するためのオイルクリーナー7とを備える。」
「【0016】
ここで、上述した構成のフライヤー1の動作について述べる。
油槽3に油を入れて運転スイッチ13を押すと、パルス燃焼器4が燃焼を開始し調理用油を加熱して、予め設定された設定温度(340°F)に保持する。そして、調理を行うメニューに対応したメニュースイッチを押して各メニュー毎に異なるタイムアップ時間が設定された調理タイマをスタートさせ、食材を油槽3に入れて調理を開始する。つまり、設定温度は、いずれの調理メニューでも同一温度であり、各メニュー毎に調理時間のみが異なっているのである。また、押されたメニュースイッチは、内蔵されたLEDが点灯する。そして、調理タイマがタイムアップすると、ブザーが鳴動して調理終了を報知するので、食材を油槽3から取り出す。
【0017】
メニュースイッチは複数設けられており、複数の食材を同時に油槽3に入れて、並行して調理を行うことができる。つまり、あるメニューの調理中であっても、他の食材を投入し並行して調理をすることができる。この場合、食材を投入するたびに他のメニュースイッチを押すことで、それぞれの調理の終了を各調理タイマのタイムアップにより知ることができる。
メニュースイッチM1,M7はポテトを調理する時に、メニュースイッチM2,M8はフィッシュを調理する時に、メニュースイッチM3,M9はチキンカツを調理する時に、メニュースイッチM4,M10はナゲットを調理する時に、メニュースイッチM5,M11はコロッケを調理する時に使用するメニュースイッチである。同じ調理メニューのスイッチには、同じ調理時間のタイマが設定される。同じ調理メニューのスイッチがそれぞれ二つづつ設けられているため、同じ調理も同時に二つ行うことができる。尚、メニュースイッチM6,M12は予備用である。
・・・
【0019】
ここで、報知時期について説明する。
一回の調理によって発生する揚げカスの量は、各調理メニュー毎にほぼ一定である。そこで、各調理メニュー毎に一回の調理で発生すると予想される揚げカスの量に対応する度数を予め調理コントローラ6に記憶しておいて、メニュースイッチが押されるたびにそれらの値を積算していって、その積算値が予め設定した所定の報知値を超えたら報知を行う。
この揚げカスの度数は、50で油の濾過が必要となるように設定されている。
具体的には、調理コントローラ6がメニュースイッチM1,M7のポテト調理では発生する揚げカス量として度数3を予め記憶し、メニュースイッチM2,M8のフィッシュ調理では度数7を記憶し、メニュースイッチM3,M9のチキンカツ調理では度数10を記憶し、メニュースイッチM4,M10のナゲット調理では度数3を記憶し、メニュースイッチM5,M11のコロッケ調理では度数8を記憶する。
そして、度数の積算値が50を超えたら、油槽3に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断できるので、表示部14にフィルタリングサインである「*」を点滅表示して濾過作業を促す。」
「【0021】
次に、調理コントローラ6が行う上述したような濾過時期報知の処理について図1に示すフローチャートを用いて説明する。
器具の電源プラグを100Vのコンセントに差し込んで電源を投入すると本ルーチンが起動し、まず、積算揚げカス量Nを0にセットする(S1)。そして、運転スイッチ13が押され運転がON状態にされた後(S2:YES)、各メニュースイッチ(M1~M5,M7~M11)が押されるたびに、メニュースイッチの種類に応じて予め記憶した揚げカス量の度数を積算していく。メニュースイッチM1,M7の場合には度数は3であり、メニュースイッチM2,M8の場合には度数は7であり、メニュースイッチM3,M9の場合には度数は10であり、メニュースイッチM4,M10の場合には度数は3であり、メニュースイッチM5,M11の場合には度数は8である。(S3~S12,S13:NO,S14:NO)。
各種調理が繰り返され、上述したようにして積算していった積算揚げカス量Nが50以上になると(S14:YES)、表示部14の右端にフィルタリングサイン「*」を点滅表示させて使用者に油を濾過すべき時期であることを報知する(S15)。
そして、濾過作業が行われたと判断すると(S17:YES)、フィルタリングサイン「*」の表示を止めて報知を終了し(S18)、ステップ1に戻り積算揚げカス量Nを0に戻す。
ここで、濾過作業検知について説明する。使用者はオイルクリーナー7で濾過作業をする際には、運転スイッチ13を押して運転をオフしパルス燃焼器4の燃焼を止めた後に、油をオイルタンク7aに落とし込みオイルポンプ7cを駆動してオイルフィルタ7bを通過した油を油槽3に戻すのであるが、オイルポンプ7cがオンされた後にオフされたことを検知すると濾過作業が行われたと判断するのである。
【0022】
ステップ15で濾過時期を報知しても、運転をOFF状態にして濾過作業が行われない場合(S16:NO)、あるいは、一旦運転がOFF状態にされても濾過されずに運転が再びON状態にされた場合などには(S17:NO)、フィルタリングサイン「*」による報知を続けたまま、積算揚げカス量Nへの積算を続けていく。尚、パルス燃焼器4の燃焼を停止せずに濾過作業を行うと油槽3の空炊きとなってしまい危険であるから、運転をOFF状態にせずに排出バルブ10を開くとブザーが鳴動して危険を報知する。
【0023】
そして、積算揚げカス量Nが75以上になると(S13:YES)、調理タイマの新たなON動作を禁止する(S19)。すなわち、油が非常に汚れてしまっていると判断できるため、強制的に新たなタイマ調理を開始できなくするのである。尚、積算揚げカス量Nが75以上になった時に既に動作を開始していた調理タイマはタイムアップするまで通常どおり動作する。
この調理タイマのON動作の禁止は、上述したようにして濾過作業がなされたことを検知するまで継続する(S20:NOorS21:NO)。
そして、濾過作業が行われたことを検知すると(S21:YES)、調理タイマのON動作の禁止を解除し(S22)、フィルタリングサイン「*」の表示を止めて報知を終了し(S18)、ステップ1に戻り積算揚げカス量Nを0に戻す。
【0024】
以上説明したように本実施形態のフライヤー1によれば、調理メニュー毎に調理を行った際に発生する揚げカスの量の重み付けを行うことにより、単純に調理回数だけではなく、実際に発生する食材毎の揚げカス発生量の違いをも考慮に入れて、濾過時期報知のタイミングを決定することができる。つまり、それまでの調理によって発生したと予想される揚げカス量に基いて、最適なタイミングで油を濾過する時期を報知することができる。
このため、常に濾過作業を最適なタイミングで実行できるので、油の劣化を防止して調理性能を向上させることができる。また、的確な時期に濾過作業を行うことにより揚げカスが極端に溜まることもないため、排出管8が揚げカスによって詰まってしまうという不具合も防止できる。また、油がそれほど汚れていないにもかかわらず濾過作業を行ってしまうことも防止できるため、作業効率がよくなり経済的である。」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載事項から、甲1には次の各発明(甲1発明1、2)が記載されていると認められる。ここで、分説記号や構成単位の呼び方については上述のとおりである。また、各構成単位末尾の括弧内は、引用元の記載個所を示す。以下、他の甲号証についても同様である。
ア 甲1発明1
「1a 調理を行うメニューに対応したメニュースイッチを押して各メニュー毎に異なるタイムアップ時間が設定された調理タイマをスタートさせ、食材を油槽に入れて調理を開始するフライヤーにおいて、各メニュースイッチが押されるたびに、メニュースイッチの種類に応じて予め記憶した一回の調理で発生する揚げカス量の度数を積算していく処理を行い、(【0021】)
1b 各調理メニュー毎に一回の調理で発生すると予想される揚げカス量に対応する度数を予め記憶し、(【0016】、【0019】)
1c その積算値が予め設定した所定の報知値を超えたら、油槽に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断し、(【0019】)
1d 調理用油の濾過時期報知のタイミングを決定し、常に濾過作業を最適なタイミングで実行できるので、油の劣化を防止して調理性能を向上させることができる、油槽に満たされた調理用油を介して食材を加熱調理するフライヤーにおける調理コントローラ、であって、(【0004】、【0024】)
1e 前記記憶する、各調理メニュー毎に一回の調理で発生すると予想される揚げカス量に対応する度数はメニュースイッチの種類に応じたものであり、具体的にはメニュースイッチM1,M7のポテト調理では発生する揚げカス量として度数3を、メニュースイッチM2,M8のフィッシュ調理では度数7を、メニュースイッチM3,M9のチキンカツ調理では度数10を、メニュースイッチM4,M10のナゲット調理では度数3を、メニュースイッチM5,M11のコロッケ調理では度数8を記憶するものであり、(【0019】)
1f 度数の積算値が50を超えたら、油槽に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断し、
1p 度数の積算値が50を超えたら、油槽3に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断できるので、表示部14にフィルタリングサインである「*」を点滅表示して濾過作業を促し、(【0019】)
1r 器具の各メニュースイッチ(M1~M5,M7~M11)が押されるたびに、メニュースイッチの種類に応じて予め記憶した揚げカス量の度数を積算してゆき、(【0021】)
濾過作業が行われたことを検知すると積算値を0に戻す、(【0023】)
1s 調理コントローラ。」
イ 甲1発明2
「1t 各メニュースイッチが押されるたびに、メニュースイッチの種類に応じて予め記憶した揚げカス量の度数を積算していく処理を行い、(【0021】)
1u 各調理メニュー毎に一回の調理で発生すると予想される揚げカスの量に対応する度数を予め記憶し、(【0019】)
その積算値が予め設定した所定の報知値を超えたら、油槽に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断する、(【0019】)
1v 常に濾過作業を最適なタイミングで実行できるので、油の劣化を防止して調理性能を向上させることができる、調理用油の濾過時期報知のタイミングを決定する方法。(【0004】、【0024】)」
2 甲2に記載された事項
(1)甲2の記載事項
甲2には次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、天ぷらやフライ等の揚げものの作業をしている最中に、揚げ油の劣化度を検知する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、天ぷらやフライに用いる食用油(以下、揚げ油ということがある)の劣化度は、見た目や臭い、色調等の感覚に頼る方法、単に食用油を揚げものに使用した時間や期間で経験的に判断する方法、フライ作業等が終了した後に揚げ油が冷えるのを待ってサンプリングし、酸価や屈折率等の物性を分析するという方法等により判断されていた。
・・・
【0004】一方、揚げ油を冷却後サンプリングして物性を分析する方法は、正確な物性値は得られるが、そのための時間がかかりすぎ、揚げ油が使用限界に達しているか否か、または差し油をすべきかどうかの即断は不可能であった。実際、この方法を採用し、そのままフライ作業を続行したため大量の不良製品が発生したケースがある。
・・・
【0008】本発明では、揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定し、その変化度合をもって揚げ油の品質の劣化度を判定するものであり、このためあらかじめ泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係を求めておくことにより、泡の発生量の変化具合をもって揚げ油の劣化度を知ることができる。
【0009】本発明において、泡立ちの発生量は例えば以下のようにして検知する。すなわち、フライヤーの上方に備え付けられた照度計により揚げ油の表面の照度を測定する。泡立ちの変化を捉え易くするため、スポットライトを用いて揚げ油の表面に照光することが好ましい。また初期照度を一定に保つため、揚げ油の表面に照射される光の強さを例えば5~15ルックスに調節するとよい。なお泡の量を検知する手段として照度計の代わりに画像認識装置等を用いることも可能である。
【0010】揚げ種の投入直後は、水分の蒸発が激しいため泡の発生も著しく、そのときの照度は最大の値を示す。しかし揚げ時間が経過するにつれて泡立ちが減り、それにともない揚げ油の表面の照度も低いレベルになり、やがて照度の減少もほぼ止まり一定の値を維持しこのまま推移する。
【0011】このような揚げ油の状態変化をともなう揚げもの作業において、揚げ油の使用開始時から連続使用中そして劣化して使用限界になった時までの照度を経時的に測定し、その最大値から一定値(上記の照度が一定になった時の値)に至る変化度合すなわち揚げる回数毎の照度の減少度および揚げる回数を重ねることにともなう照度の一定値の増加度と、揚げ油の品質(例えば酸価、屈折率等)や揚げものの品質等とを記録しておき、または出力信号としてマイクロプロセッサー等を介して記憶させておき、このデータと比較することにより、別に新たに使用している揚げ油の劣化度がわかる。また、所定の使用限界条件を設定しておくことにより、揚げ油がひき続き使用可能か否かの判断が容易に可能になる。
その際、ランプやブザー等により、その設定値を知らせることができる。
【0012】以上に述べた本発明の方法によれば、揚げ油の種類が異なる場合、例えば大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、ごま油等およびこれらの混合油でも同様の傾向を示す。また、揚げ種が異なる場合、揚げ種がミックスされているもの、例えばコロッケとエビを交互に揚げる場合には、1種類の揚げ種を連続して揚げた場合に比べ、各々を単独で揚げた場合の泡の変化具合を併せて比較検討することが必要であるが、揚げ種が1種類であれば、それがエビであるかコロッケであるか、またはジャガ芋であるかを問わず上記の傾向をはっきり示した。
【0013】
【実施例】
実施例1
揚げ油として大豆油を用い、180℃に加熱し、これに揚げ種としてポテトをおおよそ直方体(1cm×1cm×4cm)に切り揃えたものを50g投入した。揚がりきった時点(フライ時間:4分)でフライを終了し、揚げ種を取り出した。この作業を20分間毎に20回繰り返した。揚げ油の表面の照度の測定はフライヤーの真上部15cmに照度計を取り付け、またスポットライトを用いて揚げ油の表面を8ルックスで照光しながら行った。フライ回数が1回目、3回目、6回目、9回目、12回目、15回目、18回目および20回目にそれぞれ測定した。また同時に、揚げ油の劣化具合の判断のため酸価および屈折率の測定も併せて行った。このうちフライ回数が1回目、12回目、および20回目の揚げ油の表面の照度の変化を図1に、またそのとき使用した揚げ油の酸価および屈折率を表1に示す。
【0014】
【表1】
[図:0001396251000001.jpg]
【0015】
図1および表1のデータより、照度の最大値および一定値はフライ回数を重ねるにしたがって、つまり揚げ油が劣化するにともなって変化し、とくに照度の一定値が徐々に上昇することがわかる。そして揚げ油の表面の照度の最大値および一定値やその変化具合から、別途新たに使用する揚げ油の劣化度が揚げもの作業中の照度測定により推定できる。
【0016】
実施例2
揚げ油として大豆油、揚げ種として皮をむいた生エビ(20g)3尾(衣液およびパン粉を付着させたもの)を用い、実施例1と同様に揚げ、その際の揚げ油の表面の照度(図2参照)、揚げ油の酸価および屈折率(表2参照)を経時的に測定した。この結果、揚げ種が異なっても、揚げ油の表面に発生する泡による照度の変化は、揚げ油の品質の変化に対応することが認められた。したがって、別途新たに同様の揚げもの操作を行う場合、揚げ油の表面の照度を測定しながら、予め設定した揚げ油の品質になるまで揚げもの作業を続けることができる。
【0017】
【表2】
[図:0001396251000002.jpg]
・・・
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、以下のような効果を奏する。
(1)揚げ油の見た目や臭い、色調等の感覚に頼らず、揚げ油の劣化度合の識別が客観的基準で、正確にでき、かつ信頼性が高い。
(2)揚げ種による揚げ油の劣化度の違い、差し油による劣化度の変化にも応用でき、種々の条件の揚げもの作業に柔軟に対応出来る。
(3)揚げもの作業中に操作を中止することなく、また連続して測定が行える。
(4)検知方法が簡便なため、誰にでも簡単に測定が行える。
(5)測定にあたり、揚げ油の冷却処理および時間、分析時間が不要となるため、すぐに揚げ油の劣化度がわかり、差し油の必要性、揚げ油の交換の必要性等がその場で即断できる。
(6)所要の装置の組み合わせおよび構造が単純であるため、一体化、小型化がしやすく、単独またはフライヤーに装着することにより利用できる。」
・・・
【図1】
[図:0001396251000003.jpg]
・・・
【図2】
[図:0001396251000004.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
上記(1)の記載事項から、甲2には次の各発明(甲2発明1、2)が記載されていると認められる。
ア 甲2発明1
「2a フライヤーで揚げ種(ポテト、生エビなど)をフライし、揚げ種ごとに、揚げ油の表面の照度の測定による泡立ちの発生量の検知、揚げ油の酸価及び屈折率の測定を併せて行う作業を20分間ごとに20回繰り返し、照度が最大値から一定値(上記の照度が一定になった時の値)に至る変化度合すなわち揚げる回数毎の照度の減少度および揚げる回数を重ねることにともなう照度の一定値の増加度と、揚げ油の品質(例えば酸価、屈折率等)や揚げものの品質等とを記録し、(【0008】、【0009】、【0011】、【0013】~【0015】、【0016】~【0017】)
2b1 揚げ種の種類別に、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係、及び、(【0013】、【表1】、【表2】)
フライ回数が1回目、12回目、および20回目の揚げ油の表面の照度の変化を測定し、(【0013】、【図1】、【図2】)
2b2 それらのデータより、照度の最大値および一定値はフライ回数を重ねるにしたがって、つまり揚げ油が劣化するにともなって変化し、とくに照度の一定値が徐々に上昇することがわかり、
2b3 揚げ油の表面の照度の最大値および一定値やその変化具合から、別途新たに使用する揚げ油の劣化度が揚げもの作業中の照度測定により推定できることから、(【0015】)
2b4 あらかじめ泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係を求めておくことにより、(【0008】、【0013】~【0015】、【0016】~【0017】)
2c 揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定し、その変化度合をもって揚げ油の品質の劣化度を判定する、(【0008】)
2d 揚げ油の劣化度を検知する方法に所用の装置であって、(【0001】、【0026】)
2e 上記データには、揚げ種の種類別に、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係を含み、(【0013】、【表1】、【表2】)
2f 前記揚げ種の種類別の、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係のデータと、
フライ回数が1回目、12回目、および20回目の揚げ油の表面の照度の変化のデータと、
泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係と、
揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定したその変化度合と、
により、揚げ油の劣化度を知るものであり、(【0008】、【0013】、【0015】)
2h 所定の使用限界条件を設定しておくことにより、揚げ油がひき続き使用可能か否かの判断を行い、(【0011】)
2j 揚げ油の品質には、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性が含まれ、(【0008】、【0013】~【0017】)
2p 前記揚げ油がひき続き使用可能か否かの判断に際しては、ランプやブザー等により、その設定値を知らせることができる、前記所用の装置。(【0011】)」
イ 甲2発明2
「2t フライヤーで揚げ種(ポテト、生エビなど)をフライし、揚げ種ごとに、揚げ油の表面の照度の測定による泡立ちの発生量の検知、揚げ油の酸価及び屈折率の測定を併せて行う作業を20分間ごとに20回繰り返し、最大値から一定値(上記の照度が一定になった時の値)に至る変化度合すなわち揚げる回数毎の照度の減少度および揚げる回数を重ねることにともなう照度の一定値の増加度と、揚げ油の品質(例えば酸価、屈折率等)や揚げものの品質等とを記録し、(【0008】、【0009】、【0011】、【0013】~【0015】、【0016】~【0017】)
2u 揚げ種の種類別に、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係、及び、(【0013】、【表1】、【表2】)
フライ回数が1回目、12回目、および20回目の揚げ油の表面の照度の変化を測定し、(【0013】、【図1】、【図2】)
それらのデータより、照度の最大値および一定値はフライ回数を重ねるにしたがって、つまり揚げ油が劣化するにともなって変化し、とくに照度の一定値が徐々に上昇することがわかり、
揚げ油の表面の照度の最大値および一定値やその変化具合から、別途新たに使用する揚げ油の劣化度が揚げもの作業中の照度測定により推定できることから、(【0015】)
あらかじめ泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係を求めておくことにより、(【0008】、【0013】~【0015】、【0016】~【0017】)
揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定し、その変化度合をもって揚げ油の品質の劣化度を判定する、(【0008】)
2d 揚げ油の劣化度を検知する方法。(【0001】、【0026】)」
3 甲3の記載事項
甲3には次の記載がある。
「【0003】
[0003]揚げ調理によって食料製品を調理する過程において、油は、粒子状の食物および他の残滓で汚染される。時間とともに、調理プロセスは、油の中に蓄積する不純物の量が増加することによって、例えば、油の中の遊離脂肪酸および全体的な極性化合物のレベルが増加することなどによって、油の劣化の増大を引き起こす。それに加えて、調理油は、高い加熱温度に晒されていることによって、一定期間にわたって劣化する。油は、特に魚などの風味の強い食品を調理するとき、食料製品から風味および匂いも吸収することがある。劣化したバット油を用いて調理し続けると、望ましくない嫌な匂いが食料製品に付いて、調理済みの食料製品の品質に影響する。最も顕著には、完成した食料製品の味および外見が容認できる品質基準よりも落ちる。したがって、最適な食品品質にとって、フライヤーバット内の油を新しい油と周期的に交換することが必要である。商業レストランの揚げ調理業務における交換油と廃棄油のコストを併せたものは、調理済みの食料製品の合計コストの著しい割合を占める場合がある。油使用量に関する別のコスト検討は、油の取替えに労力がかかり、したがって時間と費用がかかる作業となることである。
・・・
【0005】
[0005]これらの不利な点に対処するため、半自動濾過方法が提案されてきた。これらの方法により、使用済みの油がそこを介してバットからフィルタへ、また濾過済みの油をフライヤーバットに戻すポンプまたは他の手段へと導かれる油出口を設けることによって、手作業での濾過が不要になる。一般的に、食料製品のバッチ数が計数され、予め定められたバッチ数に達すると、油が濾過される。しかし、調理している食料製品の種類、油の温度、および他の要因に応じて、バッチ数だけでは油の濾過が必要か否かの正確な指標とならないことがある。食品を熱した油の中で調理するのにつれて、遊離脂肪酸および全体的な極性化合物のレベルが増加することに起因して油が劣化する。バッチ計数のみを使用すると、例えば、1日に比較的少数のバッチを調理した場合、その日に1回だけ油が濾過されることがあるが、他の要因が油の質に悪影響を及ぼすことがあるので、油がより頻繁に濾過されない場合、食料製品の品質が損失を被ることがある。また、実際問題として、レストランの職員が営業日の終了時にのみ半自動濾過を行うように選択することがあり、そのことも、濾過サイクルの間の食料製品の品質劣化をもたらすことがある。
・・・
【0020】
[0020]本発明の別の態様によれば、調理油を前回濾過してからの経過時間を監視する工程と、油の中で調理された食料製品のバッチ数を監視する工程と、前回濾過してからの経過時間と調理されたバッチ数とに基づいて、予め定められた閾値に達すると油を濾過する工程とを含む、調理油の中で食料製品を調理する改善された方法が提供される。
【0021】
[0021]本発明のさらに別の態様によれば、予め定められた閾値に達したときに濾過する前に、人間の操作者に対する入力要求が提供される。
【0022】
[0022]本発明の別の態様では、調理された食品のバッチ数と前回濾過してからの経過時間との関数として閾値を定義する方程式に基づいて、油が濾過される。
【0023】
[0023]本発明の別の態様によれば、食料製品を揚げるのに使用した調理油を処理する方法は、油を前回濾過してからの経過時間を監視する工程と、油の中で調理された食品の量を監視する工程と、前回濾過してからの経過時間と油の中で調理された食料製品の量とに基づいて、予め定められた閾値に達すると調理油を濾過する工程とを含む。
【0024】
[0024]本発明の別の態様によれば、食料製品を揚げるのに使用した調理油を処理する方法は、油を前回濾過してからの経過時間を監視する工程と、油の中で調理された食品の量を監視するため、調理前に食料製品を秤量する工程と、前回濾過してからの経過時間と油の中で調理された食料製品の量とに基づいて、予め定められた閾値に達すると調理油を濾過する工程とを含む。
・・・
【0027】
[0027]本発明の別の態様では、コンピュータは、調理された食品の量および油を前回濾過してからの経過時間の関数として閾値を定義する方程式を使用して、閾値を計算するようにプログラムされる。」
「【0039】
・・・一般的な使用の際、揚げるべき食品の各バッチは、一般に、均一であって予め定められているか、または予め計量されており、したがって、調理された食品の合計重量は、調理されたバッチ数を単に計数することによって計算することができる。あるいは、食料製品が調理される前にそれらを秤量して、調理済みの食品の重量を監視するための秤56が設けられてもよい。
【0040】
[0044]食料製品の調理サイクルを制御して、調理油の加熱履歴(すなわち、食品の調理が始まってからの時間)と、バット14Aおよび14Bそれぞれで調理された食料製品のバッチ数とを監視し、濾過プロセスを制御し、かつ油を満杯にするプロセスを制御するコントローラ60が設けられる。図2に示されるように、コントローラ60は、バット14A、14Bそれぞれのバスケットセンサ50、温度センサ52、および油面センサ54と、秤56(存在する場合)とから入力を受け取るとともに、制御表示パネル20上のキーまたはボタンからの人間の操作者による入力を受け取る。コントローラ60は、制御表示パネル20に対して表示信号を出力するとともに、バーナーまたは発熱体15、弁34、41、および80、ポンプ38および68、ならびにフライヤー10の他の部品に対して制御信号を出力する。コントローラ60は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、専用マイクロコントローラ(所望のように各バット向けになど)、マイクロプロセッサ、またはカスタム用論理回路であってもよい。
【0041】
[0045]図3は、本発明による自動断続濾過(AIF)方法のフローチャートである。バット14を油で充填し、適切な調理温度まで加熱する。食料製品をバスケット16に入れ、バスケット16をバット14内の熱した油に入れる。任意のバスケットセンサ50を有する実施形態では、バスケット16がバット14に入ると、それによってバスケットセンサ50が起動されて、センサ50がコントローラ60に信号を送る。バスケットセンサがない場合、例えば、操作者が制御表示パネル20上の製品キーを押して、食料製品、例えばフレンチフライ用にプログラムされた調理サイクルを開始させる。プログラムされた調理サイクルは、選択された食料製品に対する適切な調理時間および温度を含む。
【0042】
[0046]製品キーの作動に応答して、システムは、制御表示パネル20上の特別な種類のキーが選択されたかを確認する。例えば、魚製品は他の多くの食料製品とは異なる特性を有するので、魚製品専用のバットを利用し、濾過が望ましいであろうと操作者が考えるときに(フレンチフライなど、より軽い風味の食品の場合よりも頻繁なことがある)、要求があった場合にのみ調理油を濾過することが望ましいことがある。したがって、「魚」製品キーが選択された場合、システムはAIFモードを使用不能にし、手動でそのように命令されたときにのみ濾過する。
【0043】
[0047]特別な種類のキーが作動していない場合、バッチカウンタが設定され増分される。バッチは、操作者が制御表示パネル20上のキーを押して、食品のバッチに対する調理サイクルを開始するごとに計数される。あるいは、バッチは、バスケット16がバット14に入れられる際に、バスケット16がバスケットセンサ50を通過すると計数されてもよい。所望に応じて、現在のバッチ計数が制御表示パネル20上に表示されてもよい。システムはまた、油が調理温度まで加熱されてからの経過時間を監視する。カウンタが、予め定められた数、例えば、10バッチの食料製品が調理されたことを示す10に達すると、および/または、油が調理温度もしくは別の予め定められた温度である間に予め定められた時間、例えば1時間が経過すると、濾過手順が開始される。
【0044】
[0048]コントローラ60は、濾過手順をいつ開始するかを決定するため、時間およびバッチ計数の情報を格納する。油を前回濾過してからの経過時間、ならびにバッチ数および/または油の中で調理された食品の重量は、最適な調理性能のために油をいつ濾過すべきか、また、油の延長使用寿命に関して、バッチ計数のみよりも有益な指標となる。
【0045】
[0049]上述したように、一般的なレストランでは、揚げ調理すべき食品の各バッチは予め計量されているので、調理された食品の合計重量は、単に調理されたバッチ数を計数することによって計算できる場合が多い。例えば、フレンチフライのバッチは約1.5ポンドで標準化されてもよい。
【0046】
[0050]濾過を起動させるための閾値は、閾値Fthを、調理された食品
の量および経過時間の関数として定義する、例えば次式のような方程式で表されてもよい。
b+kt=Fth
式中、bは、調理された食品のバッチ数、kは、所望の濾過頻度を達成するように選択された定数、tは、前回濾過してから経過した時間単位である。
代表的な一実施形態では、時間単位tは数分の1時間として表されてもよい。例えば、1単位tは、1/10時間(6分)として定義されてもよく、定数kは1であってもよい。
閾値Fは10で設定されてもよい。この例では、前回の濾過以降のバッチ数bと1/10時間間隔の数との合計が10に等しいとき、濾過手順が起動される。食品の各バッチが約3分で調理される事実上継続的な調理期間(例えば、レストランが混雑する時間の間)において、10バッチごとに(すなわち、約30分ごとに)油を濾過することによって、良好な油の質と均一性が維持され、それによって、1日を通して食品を揚げ調理してその日の終わりに濾過するような濾過頻度が少ない場合に比べて、調理結果が改善されるとともにより均一になることが分かっている。1時間に数バッチしか調理されないような、より断続的な調理期間の間(例えば、レストランが暇な時間の間)は、いくらかの食品滓(例えば、パン粉のくずなど)が熱した油の中に残り、炭化し続けるので、油の質が時間とともに劣化することが分かっている。経過時間単位tをバッチ数bと組み合わせて使用することによって、断続的な調理期間の間であっても確実に適切な間隔で油が濾過され、その結果として油の質が維持される。したがって、本発明のシステムおよび方法は、継続的および断続的両方の調理期間を考慮し、改善された油および食品の品質を実現させる。方程式および定数kは、コントローラ60にプログラムされてもよく、そのコントローラ60は、制御表示パネル20、バスケットセンサ50(使用される場合)、および/または秤56からのデータを使用して、閾値を計算する。
・・・
【0049】
[0053]あるいは、濾過およびすすぎサイクルが完了すると、弁34を閉じ、ポンプ38をオンにする。濾過された油はバット14に再び給送し、必要に応じて、油面センサ54によって検出される適切な油面に達するように、手動でまたは自動注油システム55によって新しい油を追加する。バーナーまたは発熱体15を再びオンにし(例えば、油面が発熱体15に及んだとき)、油を再び調理温度にする。特定の濾過実施形態にかかわらず、上述の工程はすべて、コントローラ60上で動作するソフトウェアによって自動的に制御される。
【0050】
[0054]任意に、濾過手順が開始される前に、人間の操作者に対して入力要求が行われ、その時点で油を濾過したいか否かを尋ねられる。操作者は、例えば、レストランが非常に混雑している時間であり、バットを使用停止にしたくない場合、濾過を延期することを選択してもよい。操作者が制御パネル20上の「no」ボタンを押した場合、濾過は延期され、調理を継続することができる。しかし、製品の計数が2で割られ、カウンタがリセットされるので、濾過に対する次の入力要求はより早く起こる。任意に、計数が1に達すると、制御パネル20上の赤色光もしくはLEDまたは他のインジケータが起動されて、次の調理サイクルで濾過の期限が来ることを操作者に警告してもよい。任意に、システムは、その時点で濾過するか否かに関して操作者がコマンドを入力した後に、「本当によろしいですか?(Are you sure?)」などのメッセージに対するyesまたはnoの応答をするように操作者に入力要求してもよい。
・・・
【0065】
[0069]大型クイックサービスレストランなどの商業調理業務では、調理油の質の変化に対して特別に考慮する必要もある。これは、一定期間にわたって調理油64に蓄積する不純物の量が増加することに起因して、調理プロセスが油の劣化を引き起こすためであることがある。例えば、上述したように、食料製品の調理によって、油の中の遊離脂肪酸および全体的な極性化合物の量が増加する。それに加えて、調理油は、高い調理温度に晒されていることに起因して、一定期間にわたって劣化することがある。理由にかかわらず、長期使用後、油の質は、劣化した油が調理された食料製品の品質に顕著に影響し始める段階まで低下する。最も著しくは、完成した食料製品の味および外見が容認できる品質基準よりも低下する。したがって、高品質な食品の製造を維持するため、調理油64を周期的に取り替えることが必要である。調理油64の取替えは、一般的に、調理油64をほぼすべて回収または排出し、次に、予め定められた油面までバット14に新しい油を再充填することによって遂行される。調理油64の排出は、便利には、弁34を開いて、出口32および配管36を介して油受け24内へと調理油64を排出し、その後、油受け24から油を廃棄することによって遂行されてもよい。油を取り替えるプロセスの間、バット14の表面からも、手作業または別の形で、あらゆる残留物もしくは残滓および/または廃棄油を取り除いてもよい。バット14に調理油64を再充填することは、手作業でバット14に新しい油を充填することによって、または、大容量の給油源からもしくは給油源66から油入口74においてバット14内へと新しい油を給送することによって遂行されてもよい。
【0066】
[0070]バット14の油を取り替えることが必要になる時点の決定は、当業者には良く知られているような様々な試験方法によって確認することができる。簡潔には、これらの試験としては、調理済みの食品の味の試験、調理中の油の特性の検査、調理中に放出される煙の量の観察、使用済みの調理油64の色と既知の色標準との比較などが挙げられる。味の試験では、焦げた味、苦味、または悪臭のする味について、調理済みの食料製品を試食する。いずれかのそのような味が認められる場合、油は取り替える必要がある。容認できる質の油で調理すると、食料製品を調理する際に勢いの良い泡(比較的速く上昇する)が食料製品から出る。遅く緩慢な泡(比較的遅く上昇する)が観察されることは、油の分解が起こっており、調理油64を廃棄する必要があることを示す。また、過度の黄色い泡を生じる油は取り替える必要がある。それに加えて、調理中の過度の煙は、黄色い発泡と古くなった味とを伴う場合が多いが、油を廃棄して交換すべき程度まで油が劣化していることの表れである。」
4 甲4の記載事項
甲4には次の記載がある。
・記載82(82頁「1.緒言」項冒頭)
「 揚げ油として菜種油(キャノーラ油),大豆油,サフラワー油,パーム油,オリーブ油,ひまわり油,ブレンド油(菜種油+大豆油など),ラード等が市販されている。
開封直後のこれら新鮮油は,酸価(AV)<0.1,カルボニル価(COV)<5,過酸化物価(POV)<5meq/kg,極性化合物量(PC)<5%,トリアシルグリセロール量(TG)>98%,色相ガードナー(G)1を示すことが多い。一方,我が国の市販加工食品の成分規格として,食品中の油脂はAV≦3,POV≦30であることが定められている。
大量の揚げ作業を行う場合,作業の進行とともに揚げ油が揚げだねに吸収されるため,適宜新鮮油が追加される。しかし,加熱酸化や重合反応が進行すると上記の化学性状が悪化するとともに,揚げ油の風味が劣り,粘度が上昇して食感が重くなりフライの品質も落ちる。また,脂肪酸分解により低分子量物質が増えるにしたがい,加熱しても煙が大量に発生して目標の揚げ温度に到達できなくなる。この時点で揚げ油は物理的に使用不能となる。
大量調理に使用された後,直ちに回収・ろ過された廃食用油(回収油)は約数十万トン/年集められ(ミヨシ油脂株式会社からの情報),家畜の飼料原料やペイント・脂肪酸などの工業原料として再利用されている。回収油の劣化の程度は我々の予想をはるかに超えており,肉眼的には麦茶程度の茶色を示し,濁りのある粘稠な液体で不快臭を放つ。
近年は調理済みフライやファーストフード店のフライ製品の流通量は莫大であるが,加熱劣化油が原因となる食中毒の報告は殆ど見られない。一方,加熱劣化油の変異原性(分析)・細胞毒性(ヒトの細胞使用)・催奇形性(ラット使用)・発がん性(細菌使用)等について報告がなされている。Velascoらは,オリーブ油やサフラワー油中のオレイン酸から生成するモノエポキシ脂肪酸について分析し,高温下で生成する酸化脂肪酸はモノエポキシドが主たる成分であることを報告している。
さらに,スペインのレストランやファーストフード店で使用している油中にモノエポキシドが3.37~14.42mg/goil検出し,警鐘を鳴らしている。また,Morley-Johnら)は,ニュージーランドのファーストフード店で販売されるホットチップスの脂質含量や揚げ油の品質のデータを集め,AV(推奨値<2.5%)とPC(推奨値<25%)が推奨値を超えている店はそれぞれ5%と54%であったことを報告している。Soriguerら10)は揚げ油中の極性化合物の摂取が高血圧の発症原因として単独で強く関わっていることを報告している。このように劣化した揚げ油は,残念ながら世界中で広く使用されている可能性が高いが,急性毒性を示さないため黙認されていることが多いと思われる。」
・記載83(「II.方法」項の1.~4.)
「1.化学性状分析
AV,COVは日本油化学会基準油脂分析試験法に基づいて分析を行った。PCは,PCテスター(3M,フランス ローモン サンタン)を用いて測定し,トリアシルグリセロール含有量は,Chromarodに試料を点着し,ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸,50:10:1v/v/vを用いて展開後,IatroscanTLC/FID MK6-s(三菱化学ヤトロン,千葉)で分析した。標品を用いてRf値0.16のスポットをトリアシルグリセロールと同定したあと,水素炎検出器を用いて各スポットを検出し,得られたピークの割合をHITACHI Integrator D-7500により算出した。
すべての値は3回測定して得られた分析値の平均値である。色相ガードナーは,化学製品の色試験方法第2部ガードナー色数に従った。すなわち,ガードナー・ホルト試料管(内径10.65±0.025mm,外径12.3mm,長さ約114±1mmの平底硬質ガラス管)に入った試料の透過色を,ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム,塩化鉄(III),塩化コバルト(II)および塩酸を用いて調製した1~18の範囲のガードナー色数標準液の透過色と比較して決定した。
2.新鮮揚げ油の脂肪酸分析
大学内食堂で使用する新鮮揚げ油(日清サラダ油,日清オイリオグループ,東京,消泡剤としてジメチルポリシロキサンを数ppm含有)をナトリウムメトキシド/メタノールを用いてメチルエステル化し,島津GC-14A ガスクロマトグラフ(島津シンクロームE71 5%/シマライト8010-0を充填した3.2mmF×3.1 mのガラスカラム,カラム温度 200°C,FID検出器)を用いて分析した。
3.大学内食堂で使用された揚げ油の化学性状分析
神戸学院大学有瀬キャンパスにある複数の大学内食堂のうちの一つの食堂の協力により,揚げ調理に使用中の油が,2009年4月から10月の期間に提供された。揚げ油は月曜日~金曜日の10:00から13:00の揚げ作業の間,フジマック社製ガスフライヤーFGF21HKA内で180°C(デジタル式温度調節)に加熱された。基本的に毎週月曜日の朝に20lの新鮮揚げ油の使用を開始し,火・水曜日の朝は,前日使用した油に新鮮油を足して20lとしてから一連の揚げ作業を行っていた。月曜日から木曜日は業務終了後,油が温かいうちに油こしでろ過して揚げかすを除去し,専用の容器に室温下で保存した。木・金曜日の朝はさし油をせずに専用容器中の油のみを使用し,金曜日の午後廃棄(12~13l)した。場合によっては2週間1バッチに,朝足し油をしながら使い続けることもあった。新学期が始まった4月・5月は多くの学生が来店していたのでフライの売り上げ量が多く,1週間で油の交換を行っていたが,その後,徐々に来店学生数が減少して1バッチの油を2週間使用したとの説明を受けた。揚げあがったフライは油槽の側部に設置した網の上で油切され,フライから滴る油はバットに受け加熱油中にもどされる。油サンプルは,業務終了時のろ過後に50ml分与され,分析するまで窒素雰囲気下-80°Cで保存された。これらの油サンプルについて,AV,COV,PC,TG,色相ガードナーを測定した。
4.揚げ調理中に発生する揮発物質の分析
大学内食堂が調理に使用する新鮮揚げ油1kgを2lのセパラブルフラスコに入れ,その上方に隙間を10cmあけてセパラブルカバーを設置し,180°Cで1時間加熱した。加熱後にセパラブルカバーの内壁に捕獲した褐色の揮発物質とフラスコ中の揚げ油のCOV,色相ガードナーを測定した。また,同様の加熱形態で鶏卵10個をひとつずつ1時間かけて揚げ調理し,加熱後にセパラブルカバーの内壁に捕獲した揮発物質と揚げ油のCOV,色相ガードナーも測定した。」
5 甲5の記載事項
甲5には次の記載がある。
・記載118(118頁左欄冒頭~右欄5行目)
「長時間フライを継続していると油は重合,分解などの変化を受けて劣化する。この油の劣化の程度は揚材料によっても異なり,動物性食品を揚げた場合は変化を受けやすい。とくに魚を揚げた場合,油の劣化が激しいことは日常経験するところである。魚を揚げたときのフライ油の劣化については多くの報告があるが,梶本ら1)の報告にもあるように魚からフライ油に移行する高度不飽和酸により油は劣化するという考えが通説となっている。
しかし,魚肉中には高度不飽和酸に富む中性脂質よりはるかに反応性に富むリン脂質も存在している。ところがフライ油に及ぼす揚材料中のリン脂質の影響についてはほとんど知られておらず,太田らがフライの衣にケイ卵を加えた場合,卵中のレシチンがフライ油に混入して着色と泡立ちに影響を与えると報告している程度である,そこで魚を揚げた時に認められるフライ油の劣化に及ぼすリン脂質の影響を中性脂質と比較して検討した。
実験の部
実験1 サバを揚げた時の油の変化
まず,魚を揚げた場合,植物性食品に比べフライ油がどのように劣化するかを検討した。
I-1 揚げ方と特数測定法
新鮮大豆油1.5kgをほうろう引きの鍋に取り180°Cでサバとジャガイモを揚げた。サバは体長40cm程度のものを三枚におろした後,全体を15枚ぐらいに切ったものを用いた。ジャガイモは厚さ約1mmの輪切りにし,サバ,ジャガイモとも衣なしで3~5分ずつ,1kg/hrの割合で12時間フライを継続した。また2時間ごとにフライ油40gを採取し,特数測定用サソプルとした。なお,コソトロールとして揚げ材料を加えず,同一条件下で加熱のみを行なった区を設けた。AV,IVは常法,COVは熊沢法により,色の測定は熊沢らの方法に準じて440mμと530mμの吸光度の測定によった。粘度測定は25°±0.2°Cでウベローデ粘度計を用いた。サバ揚げ油中の経時的リン量は油化学協会所定の方法に準じ,試料油を灰化後モリブデン酸を用いて発色させ定量した。」
6 甲6の記載事項
甲6には次の記載がある。
・記載49(49頁左欄30行~右欄1行)
「鶏肉の試料を揚げ種として,サラダ油と大豆胚芽油とを用いて間歇揚げの方法により得られた“鶏から揚げ”を官能テストの試料とした。女子大学生5人をパネルとし,1セット毎に2種類の揚げ油による“鶏から揚げ”をパネルに供し,揚げ色,ジューシーさ,美味しさ,サッパリさの4つの表か項目について5段階評価の評点法(良い~悪い:5点~1点)により調べた。」
・記載53(53頁左欄38行~43行)
「揚げ物調理において,食材,揚げ方法の条件が揚げ油の劣化に如何に影響するかを,過酸化物価(POV)と酸価(AV)により継時的に調べた。更に,揚げ油としてはサラダ油と大豆胚芽油とを用いて,揚げ油の劣化の継時的な変化とその揚げ物(鶏から揚げ)に対する嗜好を官能評価により比較した。」
7 甲7の記載事項
甲7には次の記載がある。
・記載38(38頁「緒言」項)
「フライ油を繰り返し使用すると加熱劣化により風味が低下するだけでなく,毒性を示すことが報告されている1―4)。
最近の食用油の高騰を受け,フライ油の使用限界をどのように判定するのかについては揚げ物のおいしさだけでなく,経済性や安全性の面からも重要視されている。これまで日本調理科学会近畿支部,揚げる・炒める分科会では,このフライ油の使用限界をどのような基準で判定するのかについて着目し,分析機器などの設備がない家庭でおいしい揚げ物を作るためのフライ油の使用限界について,官能検査法で評価できるかを検討してきた。その結果,暫定油脂分析試験法(現在は基準油脂分析試験法2003年版)による官能検査における風味の分類5,6)で,油自体の風味点数が3に達した時(油っぽく,重く,油臭く,口中での消去性の悪い状態)が使用限界の目安になることを示した7)。
さらに合同実験を重ねることによって,野菜類(植物性素材)や肉類・魚類(動物性素材)の素揚げといった揚げ種の違いや衣揚げ,パン粉揚げといった揚げ方法の違いにおいても,有効な目安となることを明らかにしてきた8―11)。
これまでに加熱油の劣化度と風味に関しては,変敗臭や油っぽさにはカルボニル化合物が関与し12,13),アニシジン価(An.V)やカルボニル価(CV)などの化学的特数値と官能検査による風味は比較的よく一致していることが報告されている14)。本分科会でも極性化合物がフライ油の風味評価に関わっていることを明らかにしている15)。また,フライ油の着色度の観点から,色による使用限界の判定についてもいくつかの報告がなされている16―18)。このようにフライ油の劣化程度を測定するための分析法は多種類あるが,一つの分析値で指標となる総合的なものはない。特に風味については一義的にとらえられる指標はなく複合的な評価が必要となることがこれまでの報告11)で明らかとなってきた。そこで,本研究では分科会でこれまで行ってきた酸価(AV),An.V,CV,色などフライ油の油っぽさや油臭さ,着色に関連する分析項目に加えて,風味点数3に達した油の「口中での消去性の悪さ」に着目して粘度の分析を行い,風味点数3に達した油の官能評価と各分析値との関連からその特性を明らかにすることを目的とした。」
・記載39(39頁左欄32行~右欄3行)
「4.官能評価法
分科会のメンバー16名(20,..,60歳代,男性4名,女性12名)をパネルとして,揚げ操作ごとにフライ油の性状(油臭さ,粘度,色)について前報8-11)と同様,評点法(+2~-2)により評価を行った。フライ油は室温に冷却後,官能評価を行った。また,これと合わせて,暫定油脂分析試験法に基づく風味点数を記録した。この分類で油自体の風味が風味点数3(「油っぽく,重く,油臭く,口中での消去性の悪い状態」と感じた点)になったときを油の使用限界とした。この使用限界の判定のため,風味点数3の基準油を準備して評価をおこなった。
5.油脂の劣化度の測定
フライ油は揚げ操作後濾過し,冷凍保存したものについて,以下の測定を行った。すなわち,AV,An.V,CVを基準油脂分析試験法に準じて測定した。また油の色は,基準油脂分析試験法のガードナー法(G法),粘度はオストワルド法に従い測定した。なお粘度は,新鮮油の粘度を100%とし,次式に従い粘度上昇率(%)で示した。
粘度上昇率(%)={(試料の粘度/新鮮油の粘度)X100}-100」
8 甲8の記載事項
甲8には次の記載がある。
・記載21-1(21頁左欄11行~右欄4行)
「揚げ油の使用をストップする目安の項目は,予備調査により決定した。質問紙の回答は複数回答とした。その結果,ストップの目安は(1)揚げ油の色が悪くなった,(2)健康によくない,(3)カラッ卜揚がらない,(4)泡だち易くなった,(5)油臭い,(6)粘りが大きい,(7)油切れが悪い,(8)揚げ物がまずいの順で,1位は「色」で34%であった。」
(当審註:数字を○で囲んだ記号はすべて、当該数字を括弧で囲んだものに置き換えた。)
・記載21-2(21頁右欄11行~22頁右欄1行)
「図8に廃油の化学・物理的測定値の分布を示した。酸価の平均値は0.53で,新油のそれは実線で示した。廃油の約80%が新油と同じ分布幅の中にある。厚生省の「弁当及びそうざいの衛生規範」の油脂の取扱いに関する指導基準l5)では「使用油脂は酸価l以下で酸価2.5を越えたものは新しい油脂と交換すること」と示されている。しかしながら,殆んどの廃油の酸価が1以下であることから,まだまだ使用可能な油が廃油になっていると言える。」
9 甲9の記載事項
甲9には次の記載がある。
・記載56(56頁16行~30行)
「2.3.2 揚油の発煙
揚物工場で油の発煙のため、作業上ぐあいが悪く,衛生上問題になることがある.大豆油,ナタネ油系のヨウ素価が比較的高い油では,揚物による油の変質は酸化重合が主反応であるが,ヤシ油,パーム油のようなヨウ素価の低い油では加水分解が主反応となるといわれている.油を加熱した場合および油を揚物に使用した場合に加熱時間あるいは揚げの回数の増加に伴い,発煙点が低下することはよく知られており,主として油の酸価の増加と関連が強い.図2.7にドーナツ揚油における酸価と発煙点の関係を示す.酸価の増加と発煙点の低下の関係が良く示されている.油の成分は油脂の揮発性分解生成物であって,脂肪酸以外にアブデヒド,ケトン,アルコール,炭化水素など極めて多種類のものから成るが,その量は極めてわずかなものである.発煙点の低下を揚油の劣化の基準にしようとする試みもあるが,他の測定値とともに総合判断することが必要であろう.」
・記載77(77頁11行~78頁2行)
「揚物の条件にもよるが,脂肪回転速度が“ltol”または“8時間に1回転”以上(新油添加率12.5%/h以上)であれば非常に良い回転といわれ,揚油の変質は非常に小さい.例えば,即席ラーメン,小麦粉あられなどは脂肪の回転の良い(新油添加率10~25%/h)フライ食品であり揚油の変質は小さく,とうふ油揚,揚かまぼこなどは脂肪の回転の悪い(新油添加率1.5~7%/h)フライ食品であり揚油の変質が著しい.」
・記載80(80頁6行~9行)
「粘度、泡立ちなどの酸化重合による変質は揚油のヨウ素価と一説な関係があり,ヨウ素価の大きい揚油の場合に起こりやすい(図2.22参照).」
10 甲10の記載事項
甲10には次の記載がある。
・記載310(310頁5行~16行)
「3.揚げの回数と油の性状及び発煙点について
揚げ物をあげる場合通常その油を何度も使用する。したがって加熱による油の性状はあげる度に変化している。そこで揚げの回数と油の性状及び発煙点との関係をみた。
揚げ方は、小麦粉をねり10gの円ばん形をつくり、大豆油(1)で1日1回、170℃の油温で5分間処理を行ない、10日間同様の操作を繰返した。
酸価、過酸化物価、発煙点は各揚げる前の油を一部とり求めた。その結果は第4表及び第2図の如し。
凡その頻向として揚げる回数が増すにしたがい油の酸価、過酸化物価はあがり、発煙点は低下している。」
11 甲11の記載事項
甲11には次の記載がある。
・記載682-1(682頁左欄10行~22行)
「これら試料の化学的,物理的分析の結果から油の品質の劣化はその油脂の飽和度よりもむしろ油の使用方法に関係があることを示している(Table-1,2)。すなわちある食品工場でフライに用いられた綿実油はほかの食品会社で用いられた水添ショートニングよりもその品質劣化は少なかった。たとえば一つの綿実油試料は使用後,ヨウ素価とリノール酸含量がわずかに減少し,粘度と尿素非付加体が少し増加したが,他方もう一つの綿実油試料はヨウ素価が6,リノール酸含量が12%も減少し,粘度が1.1cst増加した。またその尿素非付加体の大きな増加はcyclic monomerやpolymerの存在を意味するものである。同様のことが水添油のショートニングの場合にもいえるであろう。」
・記載682-2(682頁右欄15行~683頁9行)
「フライ中の揮発性分解生成物(volatile decomposition products 以下VDPと記す)の系統的検索はつぎの三つの観点から重要である。まず第一にこれら化合物の生成機構はフライ中に起こる化学反応を理解するのに役だつ。また不揮発性分解物の生成も同時に起こるから揮発性分解物の構造は不揮発性分解物の解明にも役にたつであろう。第二にVDPはフライ中作業員や料理人が呼吸とともに吸い込み,またわれわれの研究によるとVDPはフライした油にもまた残っており,そして食事のとき揚げものを経て消費者に摂取される。したがってこれら生成物の同定はそれらの人体に及ぼす影響を知るのに役だつであろう。第三にフライした食品の風味は一面でVDPに大きい影響を受ける。またVDPの化学構造を知ることはフライのかおりを強化したり,フライをしないでフライのかおりを付与したような食品を製造するに際し,添加使用できる合成フレーバーの製造にもつながる。」
・記載684(684頁右欄6行~685頁左欄2行)
「トウモロコシ油を用いてそれぞれ6,12,30hrフライしたとき生成するVDPの中性成分のガスクロマトグラムをFig.6に示す。30hrフライのガスクロマトグラムのピークの数は6hrフライのものに比し,非常に増加している。60hrと90hrのフライでは新しいピークは認められなかった。これらのことから業務用フライの条件で揚げた場合まだ油の品質がよくて繰り返し使用できると一般にいわれている30hr程度の揚げ時間から一般に品質が悪くなってもはや使用できないとされる90hrの揚げ時間までの間のVDPは本質的にほとんど変わっていないと考えられる。」
12 甲12の記載事項
甲12には次の記載がある。
「【0056】
〔実施例1〕
精製大豆油を70℃に加温し、精製大豆油100重量部に対して0.5%アスコルビン酸水溶液を1重量部加えて混合した。70℃、40Torr以下の減圧条件下で撹拌しながら20分間脱水処理を行った。ろ別した後、大豆脱ガム油(抽出油に水を添加し、リン脂質を主成分とするガム質を水和処理した油)を2重量部添加して油脂組成物を調製した。アスコルビン酸残存量を確認した結果、アスコルビン酸当量として、8.6ppmであった。
【0057】
〔実施例2〕
精製大豆油を100℃に加温し、精製大豆油100重量部に対してアスコルビン酸パルミテートを0.01重量部加えた。100℃、10分間混合しアスコルビン酸パルミテート添加油脂を調製した。精製大豆油70重量部に対して、得られたアスコルビン酸パルミテート添加油脂を30重量部加えた。さらに、大豆脱ガム油を2重量部添加して油脂組成物を調製した。
・・・
【0064】
〔比較例1〕
通常の精製工程を経て製造した精製大豆油を用いた。
【0065】
〔比較例2〕
精製大豆油100重量部に対し、大豆脱ガム油を2重量部添加して油脂組成物を調製した。
【0066】
〔比較例3〕
精製大豆油を70℃に加温し、精製大豆油100重量部に対して0.5%アスコルビン酸水溶液を1重量部加えて混合した。70℃、40Torr以下の減圧条件下で撹拌しながら20分間脱水処理を行い、ろ別して油脂組成物を調製した。アスコルビン酸残存量を確認した結果、アスコルビン酸当量として、5.2ppmであった。
【0067】
〔比較例4〕
精製大豆油70重量部に対して、実施例2で得られたアスコルビン酸パルミテート添加油脂を30重量部加え、油脂組成物を調製した。
・・・
[図:0001396251000005.jpg]
」
13 甲13の記載事項
甲13には次の記載がある。
「【0004】
一方、油脂の劣化は、フライ調理時の劣化と実質調理をしていないアイドリング時の劣化のふたつに大別される。油脂を適正に使用するには、それらふたつの劣化を区別して評価することが重要である。特にアイドリング時の劣化を把握することは、無駄な加熱による劣化を抑制できるため非常に有用である。しかしながら、アイドリング時の劣化は、水分の影響がほとんどないため、加水分解による遊離脂肪酸の生成は起こりにくく、酸価による評価ではその劣化要因を正確に評価できていない。また、その他の劣化指標においても、アイドリング時の劣化に着目した評価は、なされていない。
・・・
【0006】
このように、これまでの油脂の酸価やその他の劣化指標では、それがフライ調理時の劣化によるものか、アイドリング時の劣化によるものかの区別できなかった。そこで、本発明では、アイドリング時間の異なる2種以上の劣化油脂において、油脂中のカルボン酸に対する分子量300以上のカルボン酸の割合を算出することで、加熱時間に対するアイドリング時間の割合を相対評価する方法を提供することを目的とする。また、本発明では、油脂中のカルボン酸に対する分子量300以上のカルボン酸の割合を算出することで、加熱により劣化した油脂の加熱時間中のアイドリング時間の割合を推定する方法を提供することを目的とする。さらに、本発明では、油脂中のカルボン酸に対する分子量300以上のカルボン酸の割合を、前記油脂で調理した食品の風味劣化の指標とする方法を提供することを目的とする。
・・・
[図:0001396251000006.jpg]
・・・
[図:0001396251000007.jpg]
」
14 甲14の記載事項
甲14には次の記載がある。
「【発明の効果】
【0018】
本発明の油脂組成物は、180℃以上といった高温下で長期間の加熱耐性を有する。加熱耐性には、酸価上昇抑制及び加熱着色抑制が含まれる。したがって、本発明の油脂組成物は、揚げ物用油脂としての用途に好適である。
・・・
[図:0001396251000008.jpg]
」
第6.当審の判断
第6-1.理由1(新規性欠如)・理由2(進歩性欠如)について
1 甲1に記載された発明に対する新規性・進歩性欠如について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1との対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア)構成1aにおいて、「各メニュースイッチが押されるたびに、メニュースイッチの種類に応じて予め記憶した一回の調理で発生する揚げカス量の度数を積算していく処理」は、調理メニュー別の度数値を、その調理回数分すなわち一定の調理個数または一定の調理重量(単位調理重量)ごとに加算してゆく処理、言い換えれば、調理メニュー別の調理個数または単位調理重量を、度数値との積の値で記録することに外ならない。
よって、構成1aは構成A11の「揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する」ことに相当するといえる。
また、構成1aにおいて「・・・記録する」機能を担う手段が備わることは明らかであり、これは構成A11の「記録部」に相当する。
(イ)構成1bで記憶対象とされる「各調理メニュー毎に一回の調理で発生すると予想される揚げカスの量に対応する度数」は、構成A12の「相関データ」に相当する。
また、構成1bにおいて、「・・・記憶」する機能を担う手段が備わることは明らかであり、これは構成A12の「保持部」に相当する。
(ウ)構成1cの「油槽に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断」することは、構成A13の「劣化度を判定する」ことに相当する。
また、構成1cにおいて、「・・・判断」する機能を担う手段が備わることは明らかであり、これは構成A13の「判定部」に相当する。
(エ)構成1dの「調理用油の濾過時期報知のタイミングを決定し、常に濾過作業を最適なタイミングで実行できるので、油の劣化を防止して調理性能を向上させることができる、油槽に満たされた調理用油を介して食材を加熱調理するフライヤーにおける調理コントローラ」は、構成A14の「フライ油劣化判定装置」に相当する。
イ 相違点
上記アをふまえると、本件発明1と甲1発明1とは、少なくとも以下の点で両者は相違する。
(ア)相違点1A1(構成A12)
フライ油の劣化度を判定するための「複数種類の揚げ物について」の「揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データ」が、「フライ油について、酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味のうちのいずれかの劣化指標について」のものであるのに対し、甲1発明1では、「揚げカス量」についてのものである点。
(イ)相違点1A2(構成A13)
判定対象となる劣化度が、本件発明1では「廃油時期を決定するための」ものであるのに対し、甲1発明1では「油槽3に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断」して「濾過時期報知のタイミングを決定」すためのもの(構成1c・1d・1p)である点。
イ 相違点についての検討
(ア)相違点1A1について
調理用油の劣化指標として、構成A12に列挙された調理用油の液自体や揚げ物の品質・性状に関する「酸価」等の劣化指標(「酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価、極性化合物量、ヨウ素価、発煙時の油温、揮発性成分量、揮発成分組成及び風味、並びにフライ油で揚げた前記揚げ物についての揮発性成分量及び風味」;以下「A12指標群」いう。)が周知であることや、該各指標を用いて揚げ油の品質を評価することが周知であることは、甲2~7・9・11の記載事項によっても裏付けられるとおりである。
しかし、揚げ物の種類が複数混在する場合に、A12指標群のいずれかについて、「揚げ物の種類別に揚げ個数とフライ油の劣化度との関係を示す相関データ」を作成して、該相関データと揚げ物の種類別に揚げ個数とに基づいて劣化度を判定することについては、甲2~14のいずれにも開示がない。
甲1発明1が用いる固形浮遊物である「揚げカス量」では、複数種の揚げ物が混在する場合には揚げ物毎に生成される揚げカスの総量は、単純に個々の揚げ物の生成量の総和となることが明らかであるが、成分濃度や温度、風味に関する前記A12指標群の場合、同様の単純な積算が成り立つことが裏付けなく直ちに明らかであるとはいえない。このことは、甲2の【表1】・【表2】によれば、揚げ物の個数に相当する「フライ回数」の増分と、A12指標群のひとつである「酸価」の増分とは、明確な比例関係を示しているとは認められないことからも裏付けられる。
よって、甲1発明1において判定される劣化度が「廃油時期を決定するための」ものである点を措いても、甲1発明1において、劣化指標を「揚げカス量」からA12指標群に置き換えて相違点1A1の構成とすることは、該置き換えによって劣化指標を同様に扱うことができると期待することができないため、当業者にとって、その動機付けを欠き、容易になし得たこととはいえない。
(イ)相違点1A2について
(イ1)甲2(【0002】・【0004】)には、調理用油について、上記A12指標群に含まれる「酸価」などの物性を分析し、それをもとに「揚げ油が使用限界に達しているか否か」について判断する技術が示唆されている。
また、甲3(【0066】)には、上記A12指標群に含まれる揚げ物の味(風味)に基づいて調理用油の廃棄・交換を行う必要性について記載されている。
(イ2)一方、甲1発明1において、相違点1A2の構成に至るためには、
a.まず劣化指標をA12指標群に置き換えて相違点1A1に係る構成とした上で、さらに、
b.揚げカス量の「積算値が予め設定した所定の報知値を超えたら、油槽に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断し、調理用油の濾過時期報知のタイミングを決定」(構成1c・1d)したり、「度数の積算値が50を超えたら、油槽3に所定量以上の揚げカスがたまっていると判断できるので、表示部14にフィルタリングサインである「*」を点滅表示して濾過作業を促し」たり(構成1p)するとの機能を、相違点1A2に係る、「揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、」「いずれかの劣化指標についての前記相関データとに基づいて、廃油時期を決定するための前記フライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する廃油時期を決定する」という機能に置き換える、
という2段階の変更を要する。
しかし、甲1発明1において、前記2段階の変更のうちa.の第1の段階にあたる、劣化指標を「揚げカス量」からA12指標群に置き換えて相違点1A1の構成とすることが当業者にとって容易になし得ないことは、上記(ア)で説示したとおりである。よって、甲1発明1において、該第1の段階を含む前記2段階の変更を経て相違点1A2の構成に至ることも、当業者にとって容易になし得たこととはいえない。
(イ3)また、前記第1の段階の非容易想到性を措くとしても、甲1発明1の構成1rにおいて「濾過作業が行われたことを検知すると積算値を0に戻す」と特定されるように、濾過後油の利用を続けることを前提に、揚げカスの濾過を行うタイミングを揚げカス量の度数積算値により判断することを目的とする甲1発明1において、判断に用いる劣化指標を置き換えて、さらに油を廃棄するタイミングを判断するように変更することは、発明が解決しようとする課題と、その解決手段とを共に変更するもので、適用し得る技術が周知のものであっても、当業者にとって、甲1発明1にそのような変更を行うことの動機付けを欠くといえる。
(イ4)さらに、劣化指標の内容に関する相違点1A1の存在を措くとしても、甲1発明1は、揚げカス量(の度数積算値)に応じて油を廃棄するという技術事項も、その前提となる揚げカス量が過多になると(揚げカス濾過後の)油自体の使用ができなくなるとの技術事項も含まない。また、甲2~14を参酌しても、揚げカスの濾過タイミングと油の廃棄タイミングとが同じであるとか、揚げカスの量に応じて油の廃棄タイミングが設定されうるとの技術事項の開示はなく、技術常識であるともいえない。
そうすると、甲1発明1において、判定対象となる劣化度を「廃油時期を決定するための」ものと変更することは、そのような判定を揚げカス量に基づいて行い、該判定のための揚げカス量の値を定めることが、甲2~14に開示されておらず、周知技術であるともいえないから、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 小括
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明1との間には相違点が存在するから、本件発明1は甲1発明1であるとはいえない。
また、上記イのとおり、甲1発明1について、上記相違点1A1・1A2の構成とすることは、甲1~14の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2~4・7~9について
ア 上記相違点1A1に係る構成A12と同様の、A12指標群についての特定事項は、本件発明4(D17)、本件発明7(G12)、本件発明8(H12)、本件発明9(I12)が備える。
また、上記相違点1A2に係る、≪揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数と、劣化指標についての相関データとに基づいて、廃油時期を決定するためのフライヤー内のフライ油の劣化の度合いである劣化度を判定する≫ことに対応する特定事項は、本件発明2(B15・B16)、本件発明3(C14~C16)、本件発明7(G13)、本件発明8(H13)、本件発明9(I12)が備える。
イ 新規性について
上記アによれば、本件発明2~4・7・8は甲1発明1との間に少なくとも相違点1A1と同様の相違点が存在するから、本件発明2~4・7・8が甲1発明1であるとはいえない。
また、同様に、本件発明9は甲1発明2との間に少なくとも相違点1A1と同様の相違点が存在するから、本件発明9が甲1発明2であるとはいえない。
ウ 進歩性について
甲1発明1について、相違点1A1・1A2の構成とすることについては、上記(1)イのとおりであるから、該各相違点のいずれかに対応する特定事項を含む本件発明2~4・7・8の構成とすることは、甲1発明1及び甲2~14の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
また、甲1発明2について、相違点1A1・1A2と同様の構成とすることについても、上記(1)イのとおりであるから、該各相違点に対応する特定事項を含む本件発明9の構成とすることは、甲1発明2及び甲2~14の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明1との相違点
本件発明5と甲1発明1とを対比すると、少なくとも以下の点で両者は相違する。
<相違点1E1(構成E14)>
本件発明5が「前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する決定部を備える」のに対し、甲1発明1は相当する構成を備えない点。
イ 相違点1E1について
(ア)甲3の【0043】には、「バッチは、バスケット16がバット14に入れられる際に、バスケット16がバスケットセンサ50を通過すると計数されてもよい。所望に応じて、現在のバッチ計数が制御表示パネル20上に表示されてもよい。システムはまた、油が調理温度まで加熱されてからの経過時間を監視する。カウンタが、予め定められた数、例えば、10バッチの食料製品が調理されたことを示す10に達すると、および/または、油が調理温度もしくは別の予め定められた温度である間に予め定められた時間、例えば1時間が経過すると、濾過手順が開始される。」との記載があり、【0046】には、「濾過を起動させるための閾値は、閾値Fthを、調理された食品の量および経過時間の関数として定義する、例えば次式のような方程式で表されてもよい。
b+kt=Fth
式中、bは、調理された食品のバッチ数、kは、所望の濾過頻度を達成するように選択された定数、tは、前回濾過してから経過した時間単位である。
・・・
閾値Fは10で設定されてもよい。この例では、前回の濾過以降のバッチ数bと1/10時間間隔の数との合計が10に等しいとき、濾過手順が起動される。」との記載があり、【0050】には、「操作者が制御パネル20上の「no」ボタンを押した場合、濾過は延期され、調理を継続することができる。しかし、製品の計数が2で割られ、カウンタがリセットされるので、濾過に対する次の入力要求はより早く起こる。任意に、計数が1に達すると、制御パネル20上の赤色光もしくはLEDまたは他のインジケータが起動されて、次の調理サイクルで濾過の期限が来ることを操作者に警告してもよい。」との記載がある。
(イ)上記イの【0046】の記載において、方程式「b+kt=Fth」について「閾値Fは10で設定されてもよ」く、「前回の濾過以降のバッチ数bと1/10時間間隔の数との合計が10に等しいとき、濾過手順が起動される。」ことは、ある揚げ物種別について設定された「10」なる揚げバッチ数(ただし、油の経過時間tにより減数される)、すなわち新油に対し濾過手順が起動されるまでの揚げ個数が設定された状態で、揚げバッチ数(揚げ個数)「b」が計数され、それが10に達したときに、濾過手順が起動されることを意味すると理解される。
(ウ)また、上記イの【0050】の記載は、上記ウの濾過手順起動のタイミングで操作者が「no」を選択することで、新たに、上記Fの半値からなる閾値(例えば5)が設定された上で、揚げ数の計数が再度0から開始され、前記半値からなる閾値までの揚げバッチ残数があと1となった際に、「次の調理サイクルで濾過の期限が来ることを操作者に警告」するとの技術事項を意味すると理解される。
(エ)そして、前記半値からなる閾値までの揚げバッチ残数があと1となった際に、「次の調理サイクルで濾過の期限が来ることを操作者に警告」することは、対象となる揚げ物種別(現在揚げ続けている揚げ物種別)について、残りの揚げバッチ数(単位揚げ個数)が1であることが、装置内部において揚げバッチ数の計数と、前記半値からなる閾値との比較により決定され、その結果を「警告」の形で報知していることにほかならない。
(オ)甲3の【0024】には「前回濾過してからの経過時間と油の中で調理された食料製品の量とに基づいて、予め定められた閾値に達すると調理油を濾過する工程」との記載があり、調理された(揚げられた)食料製品の量が油濾過のタイミングや閾値を決めるとの技術事項は読み取ることができる。
しかし、甲3の【0005】には、「一般的に、食料製品のバッチ数が計数され、予め定められたバッチ数に達すると、油が濾過される。しかし、調理している食料製品の種類、油の温度、および他の要因に応じて、バッチ数だけでは油の濾過が必要か否かの正確な指標とならないことがある。」との記載があるものの、この記載でも、「調理している食料製品の種類」は、バッチ数以外の油の濾過タイミングを決める指標となりうることを示唆するものであるし、その他、例えば【0039】の「一般的な使用の際、揚げるべき食品の各バッチは、一般に、均一であって予め定められているか、または予め計量されており、したがって、調理された食品の合計重量は、調理されたバッチ数を単に計数することによって計算することができる。」なる記載をはじめ、「調理している食料製品の種類」すなわち揚げ物の種別が、油が濾過されるタイミングまでの「予め定められたバッチ数」を決めたり、それに影響すると明確に読み取ることができる記載は甲3の記載中に見いだせない。
(カ)また、上記オで認定した「残りの揚げバッチ数(単位揚げ個数)が1であることが、装置内部において揚げバッチ数の計数と、前記半値からなる閾値との比 較により決定され、その結果を「警告」の形で報知していることにほかならない」との技術事項において、該技術事項が仮に複数種の揚げ物種別を対象とするものであるとしても、「決定」されるのは常に、残りの揚げバッチ数が1であること、にとどまる。
(キ)以上(オ)・(カ)から、揚げ物の種別別、すなわち複数種の揚げ物の種類ごとに仕分けて残りの揚げ個数を決定する、という技術思想に直ちに結びつかないから、構成E14のうち、「揚げ物の種類」が複数である場合(態様)について、それに相当する技術事項を甲3に記載された事項から導き出すことができない。
(ク)構成E14は、「揚げ物の種類」が単数である場合(態様)も含む。しかし、この態様についても、以下a.・b.に示すとおり、該態様に相当する技術事項を甲3の記載から導き出すことができない。
a.そもそも、揚げ物の種類ごとに、揚げ個数に応じた油の劣化の度合いが異なることは、甲1・甲2にも記載されたとおり、技術常識である。しかし、甲3では、複数種別の揚げ物(食料製品)を対象とすることは示唆されるものの、油濾過までの揚げバッチ数を食料製品ごとに相違させることについては明確な記載がない。そうすると、【0046】で規定される、現在揚げている揚げ物種別に対し予め定められた揚げバッチ数の閾値(Fth)が、なんらかの油の劣化指標をもとに定められたものであるのか定かではないこととなり、該閾値(Fth)が構成E14の「フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値」に明確に相当するとはいえない。
b.さらに、上記エ・オで認定したとおり、甲3の【0050】に記載された「決定と報知」は、「操作者が制御パネル20上の「no」ボタンを押」すことで、現在揚げている揚げ物種別に対し予め定められた揚げバッチ数の閾値(Fth)を超過してさらに揚げ続けることを選択した場合にのみ行われる処理である。
そうすると、仮に、甲3の【0046】に記載された閾値(Fth)が構成E14の「フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値」に相当する、油の劣化指標に依拠した数値であるとしても、前記【0050】における「決定と報知」の対象となる閾値は、操作者の選択によって、劣化指標について設定した閾値である閾値(Fth)を超えて油を使用し続けた場合における、予め取り決めにより定められた油使用の許容限界値であり、「計数が2で割られ」すなわち閾値(Fth)の半値という数値の根拠も示されておらず、前記「決定と報知」の根拠となる該閾値までもが、構成E14の「フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値」に相当するといえる根拠が見いだせない。
(ケ)その他、甲4~14にも、相違点1E1(構成E14)に相当する技術事項の開示は見いだせない。
(コ)以上(イ)~(ケ)のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明1及び甲2~14の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ 小括
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明1との間には相違点が存在するから、本件発明5は甲1発明1であるとはいえない。
また、上記イのとおり、甲1発明1について、相違点1E1の構成とすることは、甲1~14の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
2 甲2に記載された発明に対する新規性・進歩性欠如について
(1)甲2発明1について
ア 本件発明1と甲2発明1との相違点
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1は、複数種類の揚げ物について、揚げ物の種類別に揚げ回数(即ち揚げ個数)と酸価等の劣化指標の値との関係、即ち相関を測定する構成は備えている(構成2b1)。
しかし、該測定は、「揚げ油の表面の照度の最大値および一定値やその変化具合から、別途新たに使用する揚げ油の劣化度が揚げもの作業中の照度測定により推定」するため(2b3)に、「あらかじめ泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係を求め」る(2b4)ことを目的として事前に行われるものであり、劣化を判定する対象のフライ油に対しては、「揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定し、その変化度合をもって揚げ油の品質の劣化度を判定する」(2c)ものである。
よって、甲2発明1における前記相関は、揚げ物の種類毎に、初期状態の油(新油)から揚げ回数を重ねつつ測定されるものであり、該測定は、ある種類の揚げ物をある回数揚げて劣化が進んだ油に、別の揚げ物を揚げてさらに劣化を進ませる測定を行うような測定を伴わない。
したがって、本件発明1と甲2発明1とは、少なくとも次の点で相違する。
<相違点2A1(構成A11)>
本件発明1が、フライ油の劣化度を判定するための「フライヤー内の『同一の』フライ油で揚げた『複数種類の』揚げ物について揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を記録する記録部」を備えるのに対し、甲2発明1では、フライ油の照度と酸価および屈折率との関係を求めるために「揚げ種の種類別に、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係」を測定する機能は備えるものの、それはフライ油の劣化度を直接『判定』するための機能ではなく、また、前記測定する機能は、フライヤー内の同一のフライ油で揚げた複数種類の揚げ物、すなわち、同一のフライ油で同時に又は順次複数種類の揚げ物を揚げる作業について測定または記録するものでもない点。
イ 相違点2A1について
甲2発明1は、酸価などに関連付けてはいるものの、実際に測定するのは「揚げ油の表面の照度」から推定される「揚げものの作業中に発生する泡の量」(構成2c)やその「変化度合」(2a)である。
そして、構成2hの「所定の使用限界条件を設定しておくことにより、揚げ油がひき続き使用可能か否かの判断を行」う機能における揚げ油の「所定の使用限界条件」とは、構成2fによれば「前記揚げ種の種類別の、フライ回数と使用した揚げ油の酸価および屈折率との関係のデータと、フライ回数が1回目、12回目、および20回目の揚げ油の表面の照度の変化のデータと、泡の発生量と揚げ油の品質、例えば酸価、屈折率、カルボニル価等の物性との相関関係と、揚げものの作業中に発生する泡の量を実際に測定したその変化度合と」に基づいて知れるに到った揚げ油の「劣化度」に対応した「条件」であり、条件を定める要素である「フライ回数」、「酸価」などの揚げ油の物性(構成Hの「劣化指標」に相当する)、「泡の量」は相互に直接的または間接的な相関関係で結ばれているといえる。
しかし、複数種類の揚げ物を揚げる場合については、甲2の【0012】に「例えばコロッケとエビを交互に揚げる場合には、1種類の揚げ種を連続して揚げた場合に比べ、各々を単独で揚げた場合の泡の変化具合を併せて比較検討することが必要である」との記載があるにとどまり、「交互に揚げる場合」について、照度で推定した泡の量やその変化度合から、油の劣化度が求められる可能性すら示されているとはいえない。
また、泡の量やそれを反映する揚げ油の照度から劣化指標の値や劣化度を推定することを、フライヤー内の同一のフライ油で複数種類の揚げ物を揚げた場合について行うことについても、前記場合の酸価などの劣化指標を揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数^から推定することについても、甲1・甲3~甲14のいずれにも開示がない。
そうすると、泡の量を測定することで、泡の量と相関する酸価等の劣化指標を推定する甲2発明1において、揚げ物を複数種、同一の油で(同時にまたは順次)揚げる場合に前記推定を行うようにして相違点2A1の構成とすることは、甲1・甲3~甲14に記載された技術事項によっても、当業者が容易に想到得たこととはいえない。
(2)本件発明2~4・7~9について
本件発明2~4・7~9はいずれも、上記相違点2A1に係る構成A11と同様の(共通する)構成(B11、C11、D11、G11、H11、I11)を備えているから、上記(1)イと同様の理由により、甲2発明1または2及び甲1・甲3~甲14に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)本件発明5について
ア 本件発明5と甲2発明1との相違点
本件発明5と甲2発明1とは、少なくとも次の点で相違する。
<相違点2E1(構成E14)>
本件発明5が「前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する決定部を備える」のに対し、甲2発明1は相当する構成を備えない点。
イ 相違点2E1について
相違点2E1に係る構成E14に相当する技術事項が甲1・甲3~甲14のいずれにも開示がないことは、上記1(3)イで説示したとおりである。
よって、本件発明5は、甲2発明1及び甲1・甲3~甲14の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
3 まとめ
以上、1・2のとおりであるから、本件発明1~5・7~9は、甲1~甲14のいずれに記載された発明でもなく、また、甲1~甲14のいずれに記載された発明や技術事項に基づいても当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同第2項の規定に違反しない。
第6-2.理由3(実施可能要件)について
1(1)取消通知1において通知した実施可能要件に係る理由3の1は、概ね、「本件発明5に関し、どのように複数種の揚げ物を複数の劣化指標に対し均衡化するのかについて、本件明細書中に具体的な開示がない。」という趣旨のものである。
(2)これに対し、本件発明5は本件訂正により訂正され、本件訂正前の構成Lである、「さらに、前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油で揚げることを許可される揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数、又は前記フライヤー内の前記フライ油の残油の一部廃棄又は廃棄無しで前記フライヤー内に新油を付加する新油付加処理における廃棄量及び付加量を決定する決定部を備える」は、本件訂正後の構成L’である「L’ さらに、前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまでに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する決定部を備える」へと変更された。
(3)この訂正により、揚げ物の種類別に決定される調理可能な揚げ個数が、「該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまで」のものであること、すなわち、劣化指標値ごとに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定することに限定されたと理解される。
(4)そうすると、取消通知1における上記1の指摘の対象となった、本件特許明細書【0020】の「フライ油で揚げる揚げ物の種類が特定の種類に偏ると、劣化指標の値の増大が、複数の劣化指標間で不均衡になることがある。この構成によれば、決定部が、フライ油で揚げることを許可する揚げ物の種類及び種類別の揚げ個数を決定することにより、劣化指標の値の増大を、複数の劣化指標間で均衡化し、フライ油を長持ちさせることができる。」なる記載に対応する、複数の劣化指標がそれらに設定した閾値に達するように、調理可能な複数種の揚げ物の種類別の揚げ個数を決定する、との態様が、本件訂正後の構成L’においては排除されていると解される。よって、本件訂正により、当該理由3の1は論拠を欠くこととなり、解消した。
2 取消通知1において通知した実施可能要件に係る理由3の2は、本件訂正により請求項5から削除された、「前記フライヤー内の前記フライ油の残油の一部廃棄又は廃棄無しで前記フライヤー内に新油を付加する新油付加処理における廃棄量及び付加量を決定する」という「決定部」の機能について、明細書に裏付けとなる記載がないことを趣旨とするものである。
よって、本件訂正により、当該理由3の2は論拠を欠くこととなり、解消した。
3 以上のとおりであるから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を充足する。
第6-3.理由4(サポート要件)について
上記第6-2.1(3)で説示したとおり、本件訂正によって、本件発明5は、揚げ物の種類別に決定される調理可能な揚げ個数が、「該フライ油の各劣化指標の指標値が、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値に達するまで」のものであること、すなわち、劣化指標値ごとに調理可能な揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する、との技術事項に限定されたと理解される。
そして、該技術事項が、明細書の【0063】・【0064】の記載事項に裏付けられることは、上記第2.2(5)ウで説示したとおりである。
よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。
第7.申立人の主張について
申立人がX意見書2においてする主張については以下のとおりである。
1 X意見書2における申立人の主張
(1)訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に違反している(訂正要件違反)。
(2)本件発明1・2・4・7・9は依然として特許法第29条第1項第3号に違反している(新規性欠如)。
(3)本件発明1~5・7~9は依然として特許法第29条第2項に違反している(進歩性欠如)。
(4)本件発明1・5・7~9は特許法第36条第6項第1号に違反している(サポート要件違反)。
(5)本件発明5は特許法第36条第6項第3号に違反している(簡潔性要件違反)。
2 申立人の主張について
(1)上記1(1)については上記第2.2(5)で説示したとおりであり、訂正事項5は訂正要件を満たしている。
(2)上記1(2)~(3)については、上記第6-1・第6-3において説示したとおり、本件発明1~5・7~9は新規性・進歩性を有する。
(3)上記1(4)については、上記第6-3において説示したとおりであり、本件発明1~5・7~9はサポート要件に違反しない。
ア ここで、申立人は特に、下記の点を主張する。
(ア)本件特許明細書の記載では、既知の揚げ個数を閾値にしているのみであり、フライ油の交換時期として該劣化指標について設定した閾値を用いる構成は記載されていないこと。
(イ)本件特許明細書には、「前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて、揚げ個数を揚げ物の種類別に決定する」構成が記載されていないこと。
イ しかし、本件特許明細書【0063】には、酸価Pについて、「フライ油17の廃油ポイントを2.5に設定している場合で説明する。P=2.5になるときのチキン、ポテト、コロッケの揚げ個数(量)は、既知とする。」と記載されているとおり、上記ア(ア)の「既知の揚げ個数」は、酸価を例とした劣化度に基づいて設定されたものであるから、申立人による上記アの主張は当たらない。
(4)上記1(5)については、上記(3)で説示したとおり、劣化度に基づいて揚げ物の種類別に揚げ個数の閾値を設定することが本件特許明細書の記載に裏付けられることから、本件発明5の「前記判定部により判定された前記フライヤー内のフライ油の劣化度に基づいて」との記載は、技術的意義がなく意味のない記載であるとまでいえず、申立人の主張は当たらない。
第8.むすび
以上のとおり、本件発明1~5・7~9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、上記以外に、前記各特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1~5・7~9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきもの、であるとはいえない。
また、請求項6に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700786