特許異議申立
2018-700695
非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法
- 審判番号
- 2018-700695
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-123044外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月27日
- 審決日
- 2019年04月01日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】棚井 澄雄
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 分類
- P1651.536-YAA(C12G) / P1651.537-YAA(C12G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第4項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6284581号発明「非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6284581号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。
特許第6284581号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6284581号の請求項1ないし7に係る特許は、2013年10月24日(優先権主張 2013年1月31日)を国際出願日とする出願である特願2014-520446号の一部を新たな特許出願とした特願2014-143632号の一部を新たな特許出願とした特願2014-253185号の一部を平成28年6月21日に新たな特許出願としたものであって、平成30年2月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について平成30年8月27日に特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年10月18日に取消理由(以下、「取消理由」という。)を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年12月21日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
その後、当審は、平成31年1月8日に訂正の請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行い、異議申立人に対して相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、何らの応答もなかった。
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成30年12月21日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項よりなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である)。
(1)訂正事項1
明細書の段落【0007】に「特にビール様の泡持ちや色度を保持している」と記載されているのを、「特にビール様の泡持ちを保持している」に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0010】に「泡持ちや色といった外観上重要な品質において充分なビールらしさが保持された」と記載されているのを、「泡持ちといった外観上重要な品質において充分なビールらしさが保持された」に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0071】に「[実施例3]」と記載されているのを、「[実施例3](参考例)」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、明細書の段落【0007】における記載である「泡持ちや色度」から「や色度」を削除する訂正であって、新たな技術的事項を追加するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
明細書における実施例1(明細書の段落【0063】ないし【0068】の記載)、及び実施例2(明細書の段落【0069】ないし【0070】の記載)は、非発酵発泡性飲料における「泡持ちや色度」のうちの「泡持ち」に関するものである。
一方、明細書における実施例3(段落【0071】ないし【0074】)の記載は、非発酵発泡性飲料における「泡持ちや色度」のうちの「色度」に関するものであって、発泡剤の添加によってビール様の泡持ちを保持することと、カラメル色素の添加によってビール様の色度とすることは、それぞれ別の実施例において示されている。
そうすると、明細書の段落【0007】に記載された「特にビール様の泡持ちや色度を保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という課題において、ビール様の泡持ちを保持することと、ビール様の色度を保持することとは互いに関連のないそれぞれ独立した別個の課題であって、訂正事項1は「泡持ちや色度」のうち、「泡持ち」を選択したものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、明細書の段落【0010】の記載における「泡持ちや色」から「(や)色」を削除する訂正であって、新たな技術的事項を追加するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
明細書における実施例1(明細書の段落【0063】ないし【0068】の記載)、及び実施例2(明細書の段落【0069】ないし【0070】の記載)は、非発酵発泡性飲料における「泡持ちや色度」のうちの「泡持ち」に関するものである。
一方、明細書における実施例3(段落【0071】ないし【0074】)の記載は、非発酵発泡性飲料における「泡持ちや色度」のうちの「色度」に関するものであって、発泡剤の添加によってビール様の泡持ちを保持することと、カラメル色素の添加によってビール様の色度とすることは、それぞれ別の実施例において示されている。
そうすると、明細書の段落【0007】に記載された「特にビール様の泡持ちや色度を保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という課題において、ビール様の泡持ちを保持することと、ビール様の色度を保持することとは互いに関連のないそれぞれ独立した別個の課題であって、訂正事項2は「泡持ちや色」のうち、「泡持ち」を選択したものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項3は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、明細書の段落【0071】ないし【0074】における実施例3の記載を参考例の記載とする訂正であって新たな技術的事項を追加するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、明細書の段落【0071】において「[実施例3]」と記載されているのを、「[実施例3](参考例)」と訂正することにより、明細書における実施例3の記載を参考例の記載とする訂正であるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 願書に添付した明細書の訂正に係る請求項についての説明
訂正事項1ないし3による明細書の段落【0007】、【0010】及び【0071】の訂正は、当該明細書の訂正に関連する請求項の全てである請求項1ないし7に関係するものである。
したがって、訂正事項1ないし3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。
4 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項である。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明について
本件の請求項1ないし7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
大豆食物繊維、大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を原料とし、かつ
プリン体を含む原料の添加量を調整してプリン体濃度が0.2mg/100mL以下の非発酵ビール様発泡性飲料を製造し、
製造された非発酵ビール様発泡性飲料が、穀物様香気成分として、3-メチル-1-ブタノール、イソバレリン酸、γ-ノナラクトン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、2-アセチルチアゾール、4-ビニルグアイアコール、2-アセチル-1-ピロリン、及び2-プロピル-1-ピロリンからなる群より選択される1種以上の化合物を含有し、
ホップ様香気成分として、ミルセン、リナロール、β-ダマセノン、フェネチルアルコール、及びシス-3-ヘキセノールからなる群より選択される1種以上の化合物を含有し、
含硫香気成分として、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、メチオノール、及び2-メチル-3-フランチオールからなる群より選択される1種以上の化合物を含有する、非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項2】
製造された非発酵ビール様発泡性飲料が、3-メチル-1-ブタノール、イソバレリン酸、γ-ノナラクトン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、2-アセチルチアゾール、4-ビニルグアイアコール、2-アセチル-1-ピロリン、2-プロピル-1-ピロリン、ミルセン、リナロール、β-ダマセノン、フェネチルアルコール、シス-3-ヘキセノール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、メチオノール、及び2-メチル-3-フランチオールを含有する、請求項1に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項3】
製造された非発酵ビール様発泡性飲料の前記穀物様香気成分として含有される化合物の濃度が0.24~30000ppbであり、
製造された非発酵ビール様発泡性飲料の前記ホップ様香気成分として含有される化合物の濃度が0.2~250000ppbであり、
製造された非発酵ビール様発泡性飲料の前記含硫香気成分として含有される化合物の濃度が0.001~3000ppbである、請求項2に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項4】
製造された非発酵ビール様発泡性飲料が、さらに、苦味料を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項5】
製造された非発酵ビール様発泡性飲料が、さらに、酸味料を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項6】
製造された非発酵ビール様発泡性飲料が、さらに、エタノールを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項7】
プリン体除去工程を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法。」
2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由
[理由]本件特許は、特許請求の範囲が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
記
本件特許の請求項1に係る発明は、「プリン体濃度が非常に低いにもかかわらず、「ビールらしさ」、特にビール様の泡持ちや色度を保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」(本件特許明細書、段落【0007】)ことを課題とする発明である。
そして、上記課題であるビール様の色度を保持することについて、発明の詳細な説明には、「本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料が含有する色素としては、ビールらしい色を付与可能であり、かつ飲食可能な色素であれば特に限定されるものではないが、カラメル化反応物(カラメル色素)が特に好ましい。」(同、段落【0018】)と記載されており、実施例3の記載(同、段落【0071】ないし【0074】【表6】)には、カラメル色素の含有量と色度との関係について示されている。
しかし、非発酵ビール様発泡性飲料が、上記課題であるビール様の色度を保持するための色素を含むことにつき、本件特許の請求項1に係る発明において具体的に特定されていない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明においては、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な発明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる。
本件特許の請求項1を引用する請求項2ないし7に係る発明においても同様である。
(2)当審の判断
上記訂正事項1により、明細書の段落【0007】における記載である「泡持ちや色度」から「や色度」を削除する訂正、上記訂正事項2により、明細書の段落【0010】の記載における「泡持ちや色」から「や色」を削除する訂正、及び上記訂正事項3により、明細書の段落【0071】ないし【0074】における「[実施例3]」を「[実施例3](参考例)」とする訂正がされた。
そうすると、上記訂正事項1ないし3の訂正により、発明の詳細な説明に記載された発明の課題からビール様の色度を保持することが削除されたことに伴って、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段を全て反映するものとなった。
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議理由について
異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証の1ないし3及び甲第2号証を提出し、概ね以下の異議理由を主張している。
(1)証拠方法
ア 甲号証
(ア)甲第1号証の1ないし3:財団法人日本食品分析センター、分析試験成績書、2012年12月25日
(イ)甲第2号証:特開2011-19471号公報
イ 各甲号証の記載
(ア)甲第1号証の1ないし3には、本件明細書の実施例で使用されている「キラヤニンC-100(丸善製薬株式会社製)」のプリン体の含有量について、財団法人日本食品分析センターにて分析し、0.2mg/100g~0.4mg/100g程度であるとの結果が示されている。
(イ)甲第2号証には以下の記載がある。
「【0004】
上記のように、従来の低アルコール麦芽飲料の製造方法は、通常のビール飲料同様、酵母による発酵を行うことで香味をビール風味に近づけ、同時に発酵抑制又は発酵後のアルコール除去といった、単一若しくは複数の方法によりアルコールを低減しており、いずれも酵母による発酵を行う方法が採られている。しかし、発酵を伴う場合、厳密な制御を行いアルコール生成量を抑制したとしても、酵母による発酵が不十分となることは避けられず、麦汁に由来するオフフレーバーが顕在化し、好ましくない香味の特徴を有するという問題が残る。また、発酵を行わない場合にも、酵母による発酵を経ないことから、同様の問題が残る。」(下線は理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)
(2)異議理由1
本件特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
ア 大豆食物繊維、大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上の原料及びその含有量について
(ア)「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」以外の起泡剤の泡持ち効果について
実施例の記載において、起泡剤として、「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」により課題が解決できることが示されているが、起泡材によって特性が異なることは技術常識であるから、請求項1ないし7に記載の発明において、これら以外の起泡剤を使用したときに、当業者が「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」と同等の泡持ち効果を奏することにより本件発明の課題を解決できるとは認識できない。
(イ)起泡剤の含有量の特定について
実施例(段落【0069】)の記載によれば、キラヤサポニン含有量が0.01g/Lでは不十分であり、少なくとも0.05g/L含有することが必須であると解されるが、請求項1ないし7に係る発明においては、起泡剤の含有量が特定されていない。
イ プリン体を含む原料について
実施例1の記載において原料(「50%発酵乳酸」、「キラヤニン」、「ソヤファイブ」・・)のうち、いずれが「プリン体を含む原料」であるのか不明であり、どのように「プリン体を含む原料の添加量を調整して」、「プリン体濃度を0.2mg/100ml」以下としたのか示されていない。
実施例2の記載において、キラヤニンがプリン体を含む原料であるとしても、0.01ないし0.2g/L程度であれば、0.00004mg/100mlないし0.00008mg/100mlに過ぎないから、そもそもプリン体濃度を調整する必要がない。
よって、「プリン体を含む原料」、「プリン体を含む原料の添加量を調整」することに関して、当業者が実施することができない。
仮に、プリン体を多く含む原料が麦芽であったとしても、発酵工程を経ない場合は、麦芽のオフフレーバによりビールらしい味が損なわれるものである(甲第2号証)から、結局、何が「プリン体を含む原料」であるか請求項1ないし7に係る発明において特定されていない。
ウ 最終製品中のプリン体濃度について
請求項1に係る発明において特定された、プリン体濃度を「0.2mg/100ml」にまで低減することについて、段落【0061】の記載によればプリン体含有量を0.08mg/100ml以下に低減することを従来技術との相違点として認識していることは明らかであるから、「0.08ないし0.2mg/100ml」のプリン体含有量の範囲は発明の詳細な説明に記載したものではない。
エ 穀物様香気成分、ホップ様香気成分及び含硫香気成分、並びにそれらの含有量について
(ア)香気成分の組合せについて
請求項1に係る発明において、穀物様香気成分、ホップ用香気成分及び含硫香気成分のそれぞれ1種以上の化合物を任意に組み合わせて含有することが特定されている。
【表11】及び【表13】には、4種類の組みあわせが記載されており、それらを組み合わせたものと、実施例7(表12)の16種全てを含有したものとの間に評価に関して大きな差異はないことからみて上記4種の組合せが大きく寄与していることは明らかである。
そうすると、上記4種の組みあわせ以外の組合せを採用した場合、ビールらしい味を呈するとは認められないから、実施例で確認されていない組み合わせについて、課題を解決できるとは認識できない。
(イ)香気成分の含有量について
実施例6ないし8には、穀物様香気成分、ホップ用香気成分及び含硫香気成分それぞれの含有量(濃度)が記載されているところ、請求項1及び2に係る発明においては各香気成分の濃度が特定されていないから、実施例に記載された以外の濃度範囲において課題が解決できるとは認識できない。
また、請求項3に係る発明において特定された各香気成分の濃度範囲は、実施例に記載されたものに比べて広く、実施例において確認されていない範囲においては課題を解決できない。
(3)異議理由2
本件特許は、以下の点で特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
ア 請求項1ないし7に係る発明において特定された「起泡剤の範囲」、「プリン体を含む原料の範囲」、「最終製品中のプリン体濃度の範囲」、及び「香気成分の範囲」が実施例に記載されたものに比べて広いので、実施例において確認されていない範囲について課題を解決できるとは認識できないものであるから、実施例において確認されていない範囲について何等かの技術的意義のある態様で実施できる程度に明細書が記載されていない。
イ 「起泡剤の含有量」、「香気成分の含有量」、「カラメル色素を含有すること」及び「カラメル色素の含有量」が特定されていないので、本件発明の課題を解決するうえで不可欠な手段を反映するものではなく、非発酵ビール様発泡性飲料を製造するうえで当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。
(4)異議理由1についての当審の判断
ア 課題及び課題解決手段について
本件訂正により訂正された本件特許明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)には、本件発明の課題について、次の記載がある。
「【0006】
活性炭やゼオライトは多種多様な物質を吸着するため、活性炭処理やゼオライト処理によりプリン体以外の多くの成分も除去されてしまう結果、泡持ちや色といった外観上重要なビールらしさが損なわれやすいという問題がある。また、吸着剤処理により大きくコストがかかるという問題もある。一方で、特許文献3又は4に記載の方法では、麦芽等のプリン体を多く含む原料の添加量を調整することにより、プリン体含有量が充分に低減されたビール様発泡性飲料を製造できると期待される。しかし、充分量の麦芽を使用しなければ、原料由来のプリン体の混入を抑制できる一方で、ビールの泡持ちや色度は主に麦芽由来の成分によるため、ビールの泡立ちが低減し、色が薄くなるという難点がある。このため、充分量の麦芽を使用せずにビールらしい外観(泡や色度)を達成することは非常に困難である。
【0007】
本発明は、プリン体濃度が非常に低いにもかかわらず、「ビールらしさ」、特にビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供することを目的とする。」
上記記載によれば、原料由来のプリン体の混入を抑制するために充分量の麦芽を使用せずともビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供することを課題とするものである。
そして、上記課題を解決する手段について、
「【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、麦芽等のプリン体を比較的多く含む原料の添加量を調整すること、かつ発酵工程を経ずに製造することによって、最終製品中のプリン体濃度が0.2mg/100mL以下という従来になく低い非発酵ビール様発泡性飲料を製造することができること、このように製造された非発酵ビール様発泡性飲料に、起泡剤及び色素を含有させることにより、ビールらしい泡持ちや色度を付与できることを見出し、本発明を完成させた。」と記載されている。
イ 大豆食物繊維、大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上の原料及びその含有量について
(ア)「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」以外の起泡剤の泡持ち効果について
本件訂正明細書には、起泡剤に関して次の記載がある。
「【0016】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料が含有する起泡剤としては、例えば、大豆食物繊維、大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、キラヤサポニン等が挙げられる。これらの起泡剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、大豆食物繊維、大豆サポニン、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、大豆食物繊維、大豆サポニン及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することがより好ましい。
【0017】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料における当該起泡剤の含有量は、用いる起泡剤の種類や組合せ、最終製品に求められる品質特性等に応じて適宜調整される。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、気泡剤が、飲料のNIBEM値が80以上となるように添加されていることが好ましく、100以上となるように添加されていることがより好ましく、150以上となるように添加されていることがさらに好ましい。なお、NIBEM値は、注がれた泡の崩壊速度を電気伝導度で測定したものであり、ビール等の泡持ち評価に一般的に用いられているものである。非発酵ビール様発泡性飲料のNIBEM値は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica-EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。」
上記本件訂正明細書、段落【0016】の記載によれば、起泡材としては「大豆食物繊維、大豆サポニン、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、大豆食物繊維、大豆サポニン及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することがより好ましい」のであって、実施例の記載における「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」は、これらの起泡剤のうち、より好ましい例として挙げられたものである。
そうすると、起泡剤として実施例の記載における「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」以外のものを用いることは上記訂正明細書の段落【0016】に記載されており、起泡剤であれば、種類によって程度の差はあるものの泡立ちに寄与するのであるから、「キラヤニンC-100」、「ソヤファイブ-S-LN」以外のものを起泡剤として用いた場合において課題を解決できないとする根拠はない。
したがって、上記(2)ア(ア)における異議申立人の主張には理由がない。
(イ)起泡剤の含有量の特定について
上記(ア)における本件訂正明細書の段落【0017】の記載によれば、「起泡剤の含有量は、用いる起泡剤の種類や組合せ、最終製品に求められる品質特性等に応じて適宜調整される」のであって、起泡剤としての機能を果たすために起泡剤の含有量をどの程度とすればよいのかは当業者であれば技術常識から理解できると認められる。
したがって、上記(2)ア(イ)における異議申立人の主張には理由がない。
ウ プリン体を含む原料について
上記アの本件訂正明細書の段落【0008】の記載「麦芽等のプリン体を比較的多く含む原料の添加量を調整すること、かつ発酵工程を経ずに製造することによって、最終製品中のプリン体濃度が0.2mg/100mL以下という従来になく低い非発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる」からみて、請求項1ないし7に係る発明において特定された「プリン体を含む原料」とは、主に麦芽であり、麦芽等の添加量を調整することによりプリン体濃度を調整することが理解できる。
また、「発酵工程を経ない場合は、麦芽のオフフレーバによりビールらしい味が損なわれる」としても、「原料由来のプリン体の混入を抑制するために充分量の麦芽を使用せずともビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という課題は解決されるものと認められる。
したがって、上記(2)イにおける異議申立人の主張には理由がない。
エ 最終製品中のプリン体濃度について
本件訂正明細書には、市販品のビール様発泡性飲料におけるプリン体含有量について次の記載がある。
「【0060】
[参考例1]
市販されているビール類、ノンアルコールビール、チューハイ類等のプリン体分析を実施した。市販品ビール類A(原料として麦芽とホップを使用。発酵有り。プリン体除去処理によるプリン体カット商品。)、市販品ビール類B(原料として麦芽とホップを使用。発酵有り。プリン体カット商品。)、市販品ノンアルコールビールC(原料として麦芽とホップを使用。発酵無し。糖質含有量:0.5g未満/100mL)、市販品ノンアルコールビールD(原料として麦芽とホップを使用。発酵無し。)、市販品ノンアルコールビールE(原料として麦芽とホップを使用。発酵無し。)、市販品チューハイ類F(原料として麦芽とホップを未使用。果肉を含有。発酵無し。)、及び市販品チューハイ類G(原料として麦芽とホップを未使用。果肉を含有。発酵無し。)の計7種を分析対象とした。
各飲料中のプリン体含有量は、過塩素酸による加水分解後にLC-MS/MSを用いた方法(日本食品分析センター:「酒類のプリン体の微量分析のご案内」)により測定した。当該測定方法においては、アデニン、グアニン、キサンチン、及びヒポキサンチンのそれぞれについての定量限界値は、0.02mg/100mLであった。
【0061】
測定結果を表1に示す。この結果、ビール様発泡性飲料である市販品A~Eは、いずれも麦芽とホップを使用していた。また、プリン体を吸着処理により除去した市販品Aでは、プリン体含有量が0.11mg/100mLと低かったが、除去工程の使用の有無が開示されていない市販品B~Eでは、プリン体含有量は0.2mg/100mL以上であった。また、従来の技術では、吸着除去工程を行ったとしても、飲料中のプリン体含有量を0.08mg/100mL以下にまで低減させることは実現できなかったことが示された。
【0062】
【表1】
」
上記本件訂正明細書の段落【0061】の記載からみて、除去工程の使用の有無が開示されていない市販品B~Eのプリン体含有量が0.2mg/100mL以上であって、本件請求項1に係る発明において特定された、「プリン体濃度が0.2mg/100mL以下」は、客観的にみて市販されている麦芽とホップを原料としたビール様発泡性飲料よりもプリン体濃度が低いとするための基準として特定されたものと認められるから発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。
したがって、上記(2)ウにおける異議申立人の主張には理由がない。
オ 穀物様香気成分、ホップ様香気成分及び含硫香気成分、並びにそれらの含有量について
(ア)本件訂正明細書には、穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分をそれぞれ添加してビールらしさを付与することについて以下の記載がある。
「【0075】
[実施例4]
表7に記載の組成により、酸味料、色素、及び起泡剤を含有する調合液を調製した後、これに炭酸ガスを3.0gas volになるように加えることにより、サンプル4-1を調製した。サンプル4-1の原料としては、表7中に示すベーガン通商株式会社製の「50%発酵乳酸BM-G」(製品名)、天野実業株式会社製の「カラメルSP」(製品名)、丸善製薬株式会社製の「キラヤニンC-100」(製品名)、扶桑化学工業株式会社の「クエン酸フソウ(無水)」(製品名)、「ヘルシャスA」(製品名)を用いた。
【0076】
【表7】
【0077】
サンプル4-1のプリン体含有量を参考例1と同様にして測定したところ、アデニン、グアニン、キサンチン、及びヒポキサンチンのいずれも検出されなかったことから、サンプル4-1のプリン体含有量は検出限界値未満(0.08mg/100mL)であるとわかった。さらに、サンプル4-1の糖質含量を測定したところ、0.1g/100mLであったことがわかった(共に、財団法人日本食品分析センターにて分析した。)。
【0078】
[実施例5]
ビールに含まれる主要香気成分のうちの特に匂い強度の強い16成分(3-メチル-1-ブタノール、イソバレリン酸、γ-ノナラクトン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、2-アセチルチアゾール、4-ビニルグアイアコール、2-アセチル-1-ピロリン、2-プロピル-1-ピロリン、ミルセン、リナロール、β-ダマセノン、フェネチルアルコール、シス-3-ヘキセノール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、メチオノール、及び2-メチル-3-フランチオール)を実施例4で製造したサンプル4-1に様々な濃度で添加し、ビールらしさについて官能評価を実施した。官能評価は、2名の専門パネルにより、サンプル4-1の評価を中心値4とした7段階評価(ビールらしさが感じられない場合を1とし、非常に強く感じられた場合を7とする。)にて行った。また、表8~10には、評価に当たり各パネルが述べたコメントも記載した。」、
「【0082】
表8~10に示すように、いずれの成分も、濃度に差はあるが、低濃度で添加した場合には添加の効果が官能上わからず、サンプル4-1と変わらないが、添加濃度を高くするにつれてビールらしさが高くなり、ある濃度でピークに達し、さらに添加濃度が高くなるにつれて特有の香気が強くなりすぎてビールらしさが低下する傾向が観察された。つまり、これらの16成分のうちの少なくとも1種類を適切な濃度で含有させることにより、ビールらしさがより強く付与されることがわかった。
【0083】
[実施例6]
実施例4で製造したサンプル4-1に、前記16成分のうち、穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分をそれぞれ1種類ずつ添加し、実施例5と同様にしてビールらしさの官能評価を行った。具体的には、表11に示すように、穀物様香気成分として3-メチル-1-ブタノール又は4-ビニルグアイアコールを、ホップ様香気成分としてミルセン、リナロール、又はシス-3-ヘキセノールを、含硫香気成分として3-メチル-2-ブテン-1-チオール、メチオノール、又は2-メチル-3-フランチオールを、それぞれ実施例5でビールらしさの評価が高かった濃度で添加したサンプル6-1~6-4を調製し、ビールらしさを評価した。評価結果を表11に示す。この結果、サンプル6-1~6-4のいずれにおいても、ビールらしさが非常に高く、穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分を添加することにより、各香気成分を単独で添加した場合よりも、ビールらしさを非常に強く付与し得ることがわかった。
【0084】
【表11】
【0085】
[実施例7]
実施例4で製造したサンプル4-1に、前記16成分全てを、それぞれ実施例1でビールらしさの評価が高かった濃度で添加したサンプル7-1を調製し、実施例5と同様にしてビールらしさの官能評価を行った。サンプル7-1における各香気成分の濃度は、3-メチル-1-ブタノールが6000ppb、イソバレリン酸が1000ppb、γ-ノナラクトンが120ppb、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノンが80ppb、2-アセチルチアゾールが30ppb、4-ビニルグアイアコールが800ppb、2-アセチル-1-ピロリンが2.4ppb、2-プロピル-1-ピロリンが2.4ppb、ミルセンが40ppb、リナロールが160ppb、β-ダマセノンが1ppb、フェネチルアルコールが5000ppb、シス-3-ヘキセノールが2150ppb、3-メチル-2-ブテン-1-チオールが0.5ppb、メチオノールが600ppb、及び2-メチル-3-フランチオールが0.01ppbであった。評価結果を表12に示す。
サンプル7-1では、ビールらしさが非常に強く付与されており、ほぼビールと同様の官能評価が得られた。この結果、起泡剤と色素を含有するが原料として麦芽やホップを用いていない非発酵ビール様発泡性飲料に前記16成分を全て適切な濃度で含有させることにより、ビールとほぼ同等の香味を有する非発酵ビール様発泡性飲料を製造し得ることがわかった。
【0086】
【表12】
【0087】
[実施例8]
実施例4で製造したサンプル4-1に、前記16成分のうち、穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分をそれぞれ1種類ずつ添加し、さらにエタノールを0~1容量%含有させたサンプル8-1~8-3を調製し、実施例5と同様にしてビールらしさの官能評価を行った。香気成分は、具体的には、穀物様香気成分として3-メチル-1-ブタノールを6000ppb、ホップ様香気成分としてミルセンを40ppb、含硫香気成分として3-メチル-2-ブテン-1-チオールを0.5ppbを添加した。評価結果を表13に示す。この結果、16成分全てではなく、穀物様香気成分、ホップ様香気成分、及び含硫香気成分を少なくとも1種類ずつ添加した場合でも、エタノールをさらに添加することにより、より強くビールらしさが付与されることがわかった。
【0088】
【表13】
」
上記本件訂正明細書の段落【0075】ないし【0078】、【0082】及び【0083】には、酸味料、色素、及び起泡剤を含有する調合液を調製した後、これに炭酸ガスを加えたサンプル4-1に、ビールに含まれる主要香気成分である穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分を添加することによりビールらしさを付与することについて記載されている。
(イ)香気成分の組合せについて
上記の本件訂正明細書の段落【0075】ないし【0078】、【0082】及び【0083】の記載によれば、ビールに含まれる主要香気成分である穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分をサンプル4-1に添加してビールらしさを付与するものであるから、16種のうちの何れかの穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分がそれぞれサンプル4-1に添加されれば添加されていないものと比較してビールらしさが付与されると当業者であれば理解する。
そうすると、【表11】及び【表13】に示された香気成分の組合せ以外のものを採用した場合においてもビールらしい味を呈すると認められる。
さらに、ビールらしい味を呈することは、「ビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という本件の課題の解決において必須であるとはいえないから、【表11】及び【表13】に示された香気成分の組合せ以外のものを採用した場合において課題を解決できないとはいえない。
したがって、上記(2)エ(ア)における異議申立人の主張には理由がない。
(ウ)香気成分の含有量について
上記(イ)においての判断と同様に、16種のうちの何れかの穀物様香気成分とホップ様香気成分と含硫香気成分がそれぞれサンプル4-1に添加されれば添加されていないものと比較してビールらしさが付与されると当業者であれば理解するのであって、その際の香気成分の濃度についても香りのバランスなどを考慮して任意の量を添加すると認められる。
そうすると、請求項1及び2に係る発明において各香気成分の濃度が特定されていないこと、及び請求項3に係る発明において各香気成分の濃度範囲が実施例に比べて広いことをもってビールらしい味を呈することが認められないとまではいえない。
そして、ビールらしい味を呈することは、「ビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という本件の課題の解決において必須であるとはいえないから、任意の香気成分の量を添加した場合において課題を解決できないとはいえない。
したがって、上記(2)エ(イ)における異議申立人の主張には理由がない。
(5)異議理由2についての当審の判断
ア 上記(4)イないしオで判断したとおり、請求項1ないし7に係る発明において特定された「起泡剤の範囲」、「プリン体を含む原料の範囲」、「最終製品中のプリン体濃度の範囲」及び「香気成分の範囲」は、課題を解決できない範囲を含むとはいえない。
そして、技術常識を考慮すると本件訂正明細書に記載されていない範囲について請求項1ないし7に係る発明を実施できないとまではいえないから、本件訂正明細書の記載は、請求項1ないし7に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
したがって、上記(3)アにおける異議申立人の主張には理由がない。
イ 上記(4)イ(イ)で判断したとおり、「起泡剤の含有量」については、起泡剤としての機能を果たすために、その含有量をどの程度とすればよいのかは当業者であれば技術常識から理解できるものであり、「香気成分の含有量」については、上記(4)オ(ウ)で判断したとおり、「ビール様の泡持ちを保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供する」という本件の課題の解決において必須であるとはいえないから、任意の香気成分の量を添加した場合において課題を解決できないとはいえず、「カラメル色素を含有すること」及び「カラメル色素の含有量」については、上記訂正事項1及び2の訂正によって、「色度」や「色」に関する課題を削除する訂正がされたことに伴い、本件発明の課題の解決において必須であるとはいえない。また、当業者であれば「カラメル色素を含有すること」及び「カラメル色素の含有量」については過度の試行錯誤をせずとも任意に決定し得るものである。
そして、技術常識を考慮すると本件訂正明細書の記載によって請求項1ないし7に係る発明を実施できないとまではいえないから、本件訂正明細書の記載は請求項1ないし7に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
したがって、上記(3)イにおける異議申立人の主張には理由がない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700695