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特許異議申立

2018-700576

積層ポリエステルフィルム

審判番号
2018-700576
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-013839
登録番号
特許第6260727号(P6260727)
請求日
2018年07月13日
審決日
2019年11月26日
公報発行日
2020年02月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】渡辺 広基
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 渡邊 豊英
  • 審判官 佐々木 正章
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6260727号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6260727号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第6260727号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6260727号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年8月1日に特許出願された特願2015-153001号(優先権主張 平成26年8月6日)の一部を平成29年1月30日に新たな特許出願としたものであって、平成29年12月22日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報平成30年1月17日発行)、その後、本件特許について、平成30年7月13日に特許異議申立人渡辺広基(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成30年10月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年12月27日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がなされ、前記訂正の請求に対して、平成31年2月20日に申立人から意見書の提出がなされ、平成31年4月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和元年7月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)があり、その指定期間内である令和元年8月22日に申立人より意見書が提出されたものである。 なお、平成30年12月27日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、膜厚が0.8~2.0μmである塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」 と記載されているのを、 「ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、膜厚が0.8~2.0μmである塗布層を有し、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり、該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」 に訂正する。(請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。) イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、3.0重量%以上、20重量%である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。」 と記載されているのを、 「ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、膜厚が0.8~2.0μmである塗布層を有し、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」 に訂正する。(請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。) (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1~3について、訂正前の請求項3は、訂正前の請求項1又は2を直接又は間接的に引用しているものであって、請求項1及び2の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~3に対応する訂正前の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 本件訂正請求は、前記一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 (3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1における「(メタ)アクリレート化合物」は「イソシアヌレート構造を有するもの」を除いたものであることを明瞭にし、かつ、限定するとともに、「イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合(以下、「本件含有割合」という。)」を「4.7重量%以上、16.4重量%未満」に限定し、さらに、前記「イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体であること」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項1のうち、「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」と訂正する点は、本件特許明細書の「【0029】 本発明で塗布層の形成に使用される(メタ)アクリレート化合物とは、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。・・・【0030】 単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート・・・(メタ)アクリル酸等が挙げられ・・・【0031】 二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート・・・エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられ・・・三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート・・・テトラメチロールメタンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート」との記載及び「【0094】(化合物例)・(メタ)アクリレート化合物:(I) ジペンタエリスリトールペンタアクリレート30重量%およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70重量%の混合物100部、ポリアルキレンオキサイド系界面活性剤5部、イオン交換水230部を混合して撹拌した後、超音波分散機と高圧ホモジナイザーで処理をした水分散体・・・」との記載に基づくものである。 また、「イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合(以下、「本件含有割合」という。)が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり」と訂正する点のうち、本件含有割合を4.7重量%以上とする点は、本件特許明細書に記載された実施例1~11(塗布液1~8を用いた実施例、【表1】及び【表2】等を参照)で用いられたイソシアヌレート構造を有する化合物(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)が、それぞれ、イソシアネート構造含有量が6.2重量%、6.9重量%、4.7重量%のものであること(段落【0095】~【0097】を参照)され、一方、16.4重量%未満とする点は、甲2に記載された、本件含有割合が16.4重量%の例を除くためのものであって、新たな技術的事項を導入するものではないと解されるから、いわゆる新規事項の追加にはあたらないといえる。 さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と訂正する点は、本件特許明細書の段落【0038】の「イソシアヌレート構造を有する化合物とは、分子内にイソシアヌレート基を有する化合物であり、従来公知のものを使用でき特に限定されないが、例えば、イソシアネート系化合物の三量体が挙げられる。」との記載に基づくものである。 ゆえに、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項1による訂正は、請求項1及び3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 イ.訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、訂正事項1による訂正後の請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項2及び当該請求項2の記載を引用する請求項3における「(メタ)アクリレート化合物」は「イソシアヌレート構造を有するもの」を除いたものであることを明瞭にし、かつ、限定するとともに、上記本件含有割合が、「3.0重量%以上、20重量%」であったところ、これを「4.7重量%以上、16.4重量%未満」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、3号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項2のうち、「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」と訂正する点は、本件特許明細書の「【0029】 本発明で塗布層の形成に使用される(メタ)アクリレート化合物とは、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。・・・【0030】 単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート・・・(メタ)アクリル酸等が挙げられ・・・【0031】 二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート・・・エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられ・・・三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート・・・テトラメチロールメタンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート」との記載及び「【0094】(化合物例)・(メタ)アクリレート化合物:(I) ジペンタエリスリトールペンタアクリレート30重量%およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70重量%の混合物100部、ポリアルキレンオキサイド系界面活性剤5部、イオン交換水230部を混合して撹拌した後、超音波分散機と高圧ホモジナイザーで処理をした水分散体・・・」との記載に基づくものである。 また、「イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合(以下、「本件含有割合」という。)が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり」と訂正する点のうち、本件含有割合を4.7重量%以上とする点は、本件特許明細書に記載された実施例1~11(塗布液1~8を用いた実施例、【表1】及び【表2】等を参照)で用いられたイソシアヌレート構造を有する化合物(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)が、それぞれ、イソシアネート構造含有量が6.2重量%、6.9重量%、4.7重量%のものであること(段落【0095】~【0097】を参照)され、一方、16.4重量%未満とする点は、甲2に記載された、本件含有割合が16.4重量%の例を除くためのものであって、新たな技術的事項を導入するものではないと解されるから、いわゆる新規事項の追加にはあたらないといえる。 ゆえに、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項2による訂正は、請求項2及び3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 3.本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1~3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、膜厚が0.8~2.0μmである塗布層を有し、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり、該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。 【請求項2】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、膜厚が0.8~2.0μmである塗布層を有し、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の積層ポリエステルフィルム用いたITOフィルムを部材とするタッチパネル。 4.取消理由の概要 本件発明1~3に係る特許に対して、特許権者に通知した、平成30年10月26日付け取消理由及び平成31年4月23日付け取消理由<決定の予告>の要旨は、次のとおりである。 《理由1》 本件発明1~3は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 《理由2》 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 《理由3》 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 《刊行物一覧》 甲1.特開2013-76029号公報 甲2.特開2012-82274号公報 甲3.特開2010-254840号公報 甲4.特開2014-37453号公報 甲5.特開2000-230107号公報 甲6.特開2006-233167号公報 甲1~甲6は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証~甲第6号証であり、甲1~甲6の各々に記載された発明及び事項を各々、甲1発明~甲6発明及び甲1記載事項~甲6記載事項という。 (1)理由1について ア.甲5を主たる証拠とした理由 本件発明1及び3は、甲5発明、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ.甲1を主たる証拠とした理由 本件発明1~3は、甲1発明、甲1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ.甲2を主たる証拠とした理由 本件発明1~3は、甲2発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ.甲3を主たる証拠とした理由 本件発明1~3は、甲3発明、甲3記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ.甲4を主たる証拠とした理由 本件発明1及び3は、甲4発明、甲4記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ.甲6を主たる証拠とした理由 本件発明1及び3は、甲6発明、甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)理由2について 種々の官能基を有するものが含まれ、その分子量も数百程度から数千程度と幅がある種々の構造が含まれる「イソシアヌレート構造を有する化合物」を発明特定事項とする本件発明1~3は、「優れた表面硬度、耐摩耗性を有し、さらにポリエステルフィルムとハードコート層との密着性が良好な積層ポリエステルフィルムを提供する」という課題を解決しないものをも含み得るものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは、必ずしもいえない。 (3)理由3について 本件発明1における(B)「(メタ)アクリレート化合物」と(D)「イソシアヌレート構造を有する化合物」との関係が明確でない。 5.当審の判断 (1)理由1について ア.甲5を主たる証拠とした理由 (ア)甲5記載事項及び甲5発明 甲5には以下の記載事項が記載されている。なお、「・・・」は記載の省略を意味する。 a.「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂組成物及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、本発明は、各種基材(例えばプラスチック(ポリカ-ボネ-ト、ポリメタクリレ-ト、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレ-ト等)の表面に高硬度、耐擦傷性、低カ-ル性、密着性及び透明性に優れた被膜を形成し得る、硬化性に優れた樹脂組成物及びその硬化物に関する。本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;各種基材の接着剤、シ-リング材;印刷インクのバインダ-材等として好適に用いることができる。」 b「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなコーティング材料は、樹脂としての硬化性、並びに硬化被膜とした場合の高硬度、耐擦傷性、低カ-ル性、密着性及び透明性の全てを必ずしも十分に満足するものではなかった。・・・本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、各種基材の表面に高硬度、耐擦傷性、低カ-ル性、密着性及び透明性に優れた被膜を形成し得る、硬化性に優れた樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。」 c.「【0035】有機化合物の合成において、前記ポリイソシアネ-ト化合物と付加反応により[-O-C(=O)-NH-]基を介し結合できる活性水素含有重合性不飽和化合物の例としては、分子内にイソシアネ-ト基との付加反応により[-O-C(=O)-NH-]基を形成できる活性水素原子を1個以上有し且つ重合性不飽和基を1個以上含む化合物を挙げることができる。これらの活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、・・・等を挙げることができる。・・・これらの化合物の中では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリト-ルトリ(メタ)アクリレ-ト等が好ましい。これらの化合物は1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。」 d.「【0055】本発明の組成物は被覆材として好適であり、被覆の対象となる基材としては、例えばプラスチック(・・・ポリエステル・・・等)、金属、木材、紙、ガラス、スレ-ト等挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコ-ト、スプレ-コ-ト、フロ-コ-ト、シャワ-コ-ト、ロ-ルコ-ト、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1~400μmであり、好ましくは1~200μmである。」 e.「【0057】本発明の硬化物は、高硬度、耐擦傷性、低カ-ル性、密着性及び透明性に優れた特徴を有しているので、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子・・・等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材(特に、透明性を要求されるプラスチックシート、プラスチックフィルム等のハードコート材として好適に用いられる。)・・・等として好適に用いられる。・・・」 f.「【0058】 【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、部、%は特に記載しない限り、それぞれ重量部、重量%を示す。また、本発明において「固形分」とは、組成物から溶剤等の揮発成分を除いた部分を意味し、具体的には、組成物を120℃のホットプレート上で1時間乾燥して得られる残渣物(不揮発成分)を意味する。 【0059】有機化合物の合成 合成例1 乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8部、ジブチルスズジラウレート0.2部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間攪拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート71.4部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌することで有機化合物(S1)を得た。生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550カイザ-の吸収ピ-ク及びイソシアネ-ト基に特徴的な2260カイザ-の吸収ピ-クが消失し、新たに、[-O-C(=O)-NH-]基及び[-S-C(=O)-NH-]基に特徴的な1660カイザ-のピ-ク及びアクリロイル基に特徴的な1720カイザ-のピ-クが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロイル基と[-S-C(=O)-NH-]基、[-O-C(=O)-NH-]基を共に有する有機化合物が生成していることを示した。 ・・・ 【0062】製造例1 窒素気流下、合成例1で合成した有機化合物(S1)8.7部、メチルエチルケトンシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK-ST、数平均粒子径0.022μm、シリカ濃度30%)91.3部、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の架橋性粒子(A)分散液(分散液a)を得た。分散液aをアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35%であった。」 g.「【0075】実施例1 乾燥空気気流下、紫外線を遮蔽した容器中において、製造例1で製造した分散液a70部、ジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-ト20部、トリメチロールプロパントリアクリレート10部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1.5部、及び2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパノン-1 1.5部を室温下、30分攪拌することで均一な溶液の組成物を得た。 【0076】同様の操作法により、表2に示す実施例2~9、比較例1~3の各組成物を得た。 【0077】 【表2】 P1:メチルエチルケトンシリカゾル M1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート M2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート M3:ペンタエリスリトールテトラアクリレート N1:トリメチロールプロパントリアクリレート N2:ペンタエリスリトールトリアクリレート N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート N4:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート R1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン R2:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1 【0078】硬化物の評価 本発明の組成物の効果を明らかにするため、上記組成物を用いて塗布、乾燥、光照射して得られた硬化物の評価を行った。以下にその評価方法を示す。また、評価結果を表3に示す。 【0079】1.塗布、乾燥、硬化条件 表3の実施例1~9及び比較例1~3においては、基材上にバ-コ-タ-を用いて、乾燥膜厚10μmになるように塗布した後、80℃の熱風式乾燥機中で3分間乾燥後、コンベア式水銀ランプを用いて1J/cm2の光量で照射後、25℃で、24時間保管後評価した。 【0080】2.基材 鉛筆硬度試験及び透明性評価(光透過率の測定)においてはガラス板を、また、耐スチールウール擦傷性、密着性評価及びカールの評価においては厚さが188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。 【0081】3.評価法 ・塗膜外観:異物の存在や、塗りムラ、はじき、異物、白化等の異常の発生を目視により判定した。異物の存在及び異常の発生がない場合を○、1以上の、異物の存在又は異常の発生がある場合を×とした。 ・光透過率(%):透明性評価のため、分光光度計を用い、波長500nmでの光透過率を求めた。なお、測定値は基材の透過率を補正した後の値である。 ・鉛筆硬度:JIS K5400に準拠し、ガラス基板上で硬化させた被膜を評価した。 ・密着性(%):JIS K5400における碁盤目セロハンテ-プ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率で評価した。 ・耐スチールウール(SW)擦傷性:テスター産業(株)製 学振型耐磨耗試験機を、500g荷重をかけた#0000スチールウールにて30往復し、試験した塗膜面の傷つき状態を目視にて評価した。傷なしの場合を○、1~10本の傷がある場合を△、10本を超える傷がある場合を×とした。 ・カール(mm):本発明の組成物を188μm厚さのPET上に、前述の塗布、硬化条件で製膜直後、カッターナイフにて、10cm×10cm片に切り出し、25℃、相対湿度50%にて24時間放置後、4つの角の基準面からのそり量の平均値(mm)を求めた。 【0082】 【表3】 」 上記a.~g.の記載(特に、実施例4~6に関する記載)を踏まえると、甲5には以下の甲5発明が記載されている。 《甲5発明》 ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、M1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートを含む有機化合物(S1)とメチルエチルケトンシリカゾル等から製造された架橋性粒子(A)およびN3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む組成物を塗布、乾燥、紫外線照射して形成された、乾燥膜厚が10μmである被膜を有する、フィルム。 (イ)本件発明2について (本件発明2は、前記取消理由<決定の予告>においては、取消理由があるものとはなってはいないが、便宜上、検討する。) 本件発明2と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム」、「M1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」、「ペンタエリスリトールトリアクリレートを含む有機化合物(S1)とメチルエチルケトンシリカゾル等から製造された架橋性粒子(A)」、「N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート」、「組成物」、「被膜」、「フィルム」は、各々、本件発明2の「ポリエステルフィルム」、「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」、「積層ポリエステルフィルム」に相当する。 そして、甲5発明におけるイソシアヌレート構造を有する化合物である「N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート」は以下の「N3構造式」に示す構造であるところ、《A》部分の分子量は98と算出され、イソシアヌレート構造部分の分子量は126と算出され、化合物の全分子量は420と算出されるから、前記「N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート」に対するイソシアヌレート構造の割合は、126/420=30重量%であると解される。 「N3構造式」 してみると、本件発明2と甲5発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 《一致点》 ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接、(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカおよびイソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布液から形成された、塗布層を有する積層ポリエステルフィルム。 《相違点1》 塗布層の膜厚が、本件発明2では0.8~2.0μmであるのに対し、甲5発明では乾燥膜厚が10μmである点。 《相違点2》 本件発明2は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であるのに対し、甲5発明は、N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに対するイソシアヌレート構造の割合30重量%である点。 まず、上記《相違点1》について検討するに、甲5には、上記ア.(エ)に示したように、「これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1~400μmであり、好ましくは1~200μmである。」と記載されており、この記載に基いて、甲5発明の乾燥膜厚を0.8~2.0μm程度とすることは、当業者が容易になし得たことというべきである。 次に、上記《相違点2》について検討するに、甲5及び甲1~甲4並びに甲6には、甲5発明において、N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに対するイソシアヌレート構造の割合を4.7重量%以上、16.4重量%未満に変更すべきことについて記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲5発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、申立人は、令和元年8月22日提出の意見書に添付して甲第8号証(特開2012-869号公報、以下「甲8」という。)を提示し、甲8には、式(P-II)で表されるイソシアヌレート構造の割合が14.8重量%の化合物、式(P-IV)で表されるイソシアヌレート構造の割合が13.5重量%の化合物、式(P-VI)で表されるイソシアヌレート構造の割合が8.2重量%の化合物が記載されており、甲5発明及び甲8に記載された事項に基いて、イソシアヌレート構造の割合を、4.7重量%以上、16.4重量%未満とすることは容易である旨を主張している。 しかし、同意見書には、式(P-II)で表される化合物のイソシアヌレート構造の割合が14.8重量%であり、式(P-IV)で表される化合物のイソシアヌレート構造の割合が13.5重量%であり、式(P-VI)で表される化合物のイソシアヌレート構造の割合が8.2重量%であるとする計算過程等、その根拠が示されていないし、このことを差し置いたとしても、甲5発明の「組成物」において、N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに代えて、上記式(P-II)で表される化合物や式(P-IV)で表される化合物や式(P-VI)で表される化合物を採用するべき動機付けは、甲1~6及び甲8に記載されていないし、これを示唆する記載もない。 したがって、上記主張は採用できない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲5発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ.甲1を主たる証拠とした理由 (ア)甲1記載事項及び甲1発明 甲1記載事項、すなわち、甲1の【請求項1】、【請求項6】、【請求項13】、段落【0001】~【0015】、【0029】、【0102】、【0108】~【0110】、【0115】、【0118】~【0123】及び【表1】(特に、実施例2及び9を参照)の記載、及び、段落【0109】に記載された「フッ素化ウレタンアクリレート3」の化学構造式が同段落【0109】の【化7】で示されることが記載され、これを合成するに際して、その分子量が2000であることが知られている(必要であれば、特開平8-63738号公報の段落【0015】、特開平9-291296号公報の段落【0090】、特開2012-128324号公報の段落【0103】等を参照)「パーフルオロポリエーテルモノオール(ダイキン工業(株)製、Demnum-SA )」を用いたことが記載されていることから、「フッ素化ウレタンアクリレート3」の全分子量は2736であり、そのうちのイソシアヌレート構造の分子量は126であり、全分子量(2736)に対するイソシアヌレート構造の分子量(126)の割合は、4.6重量%であることが算出されることを踏まえると、甲1には以下の甲1発明が記載されている。 《甲1発明》 ポリエチレンテレフタレート(PET)製であるコスモシャインA-4300のフィルムの表面上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したもの)およびフッ素化ウレタンアクリレート3(段落【0108】~【0110】を参照)を含有するハードコート剤を塗布、加熱、紫外線照射して形成された、硬化後の厚さ10μmであるハードコート層を有し、前記フッ素化ウレタンアクリレート3に対するイソシアヌレート構造の割合が4.6重量%である、ハードコートフィルム。 (イ)本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」、「反応性基修飾コロイダルシリカ」、「フッ素化ウレタンアクリレート3」、「ハードコート剤」、「ハードコート層」、「ハードコートフィルム」は、各々、本件発明1の「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」、「積層ポリエステルフィルム」に相当するから、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも以下の相違点Aで相違する。 《相違点A》 本件発明2の塗布液は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり、該塗布液から形成された塗布層が、ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接形成されるのに対し、甲1発明のハードコート剤は、フッ素化ウレタンアクリレート3に対するイソシアヌレート構造の割合が4.6重量%であり、該ハードコート剤から形成されたハードコート層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であるコスモシャインA-4300のフィルムの表面上に形成されており、ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接形成されるかは不明である点。 上記《相違点A》について検討するに、平成30年12月27日に特許権者から提出された意見書に添付された乙第1号証(コスモシャイン〇R(当審注:〇内にRの文字)A4300,東洋紡株式会社,2005年7月26日,2013年5月28日改,http://www.toyobo.co.jp/seihin/film/kogyo/list/pdf/A4300.pdf)及び乙第2号証(易接着加工透明ペットフィルム,松原商事株式会社,2018年12月26日印刷,http://matsubara-shouji.net/transparency_myler_adherent.html)からみて、甲1発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)製であるコスモシャインA-4300のフィルム」は、コーティングによる易接着加工されたものであるところ、これを易接着加工されていない通常のポリエチレンテレフタレートフィルムに置換するべきこと、及び、フッ素化ウレタンアクリレート3に対するイソシアヌレート構造の割合を4.6重量%から、4.7重量%以上、16.4重量%未満の値に変更すべきことは、甲1及び甲2~甲6には記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記置換や変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲1発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲1発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ.甲2を主たる証拠とした理由 (ア)甲2記載事項及び甲2発明 甲2記載事項、すなわち、甲2の【請求項1】、段落【0001】~【0006】、【0018】~【0020】、【0043】、【0053】、【0056】、【0058】~【0074】(特に、【表3】の実施例12を参照)の記載、及び、段落【0064】に記載された「M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート」については、その化学構造式が知られており(必要であれば、特開2012-31357号公報の段落【0017】等を参照)いることから、甲2発明における「M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート」の全分子量が765であり、そのうちのイソシアヌレート構造の分子量が126であり、全分子量(765)に対するイソシアヌレート構造の分子量(126)の割合は、16.4重量%であることが算出されることを踏まえると、甲2には以下の甲2発明が記載されている。 《甲2発明》 易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚100μm、東洋紡(株)製)上に、化合物A-1、コロイダルシリカMEK-AC2101およびM-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートを含有する組成物を塗布、乾燥、紫外線照射して形成された、塗布膜厚が3μmである塗膜層を有し、前記M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が16.4重量%である、試験体。 (イ)本件発明2について 本件発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「化合物A-1」、「コロイダルシリカMEK-AC210」、「M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート」、「組成物」、「塗膜層」、「試験体」は、各々、本件発明1の「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」、「積層ポリエステルフィルム」に相当するから、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点Bで相違する。 《相違点B》 本件発明2の塗布液は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であり、該塗布液から形成された塗布層が、ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接形成されるのに対し、甲2発明の組成物は、M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が4.6重量%であり、該組成物から形成された塗膜層が、易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚100μm、東洋紡(株)製)の表面上に形成されており、ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に直接形成されるかは不明である点。 上記《相違点B》について検討するに、上記乙第1号証及び乙第2号証からみて、甲2発明の「易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚100μm、東洋紡(株)製)」は、コーティングによる易接着加工されたものであるところ、これを易接着加工されていない通常のポリエチレンテレフタレートフィルムに置換するべきこと、及び、M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合を16.4重量%から、4.7重量%以上、16.4重量%未満の値に変更すべきことは、甲2及び甲1、甲3~甲6には記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記置換や変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲2発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲2発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ.甲3を主たる証拠とした理由 (ア)甲3記載事項及び甲3発明 甲3記載事項、すなわち、甲3の【請求項1】、段落【0001】~【0005】、【0038】、【0039】、【0043】~【0065】(特に、【表2】実施例10を参照)の記載、及び、甲3には、イソシアヌレート構造を有する化合物である「TAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート」が、「商品名「アロニックスM-327」、東亞合成(株)製」であると記載されている(段落【0064】を参照)ところ、上記ウ.(ア)で示したように、その全分子量(765)に対するイソシアヌレート構造の分子量(126)の割合は、16.4重量%であることが算出されることを踏まえると、甲3には以下の甲3発明が記載されている。 《甲3発明》 ポリカーボネ-ト樹脂板の表面に、TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、MCS分散体(段落【0054】を参照)およびTAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(段落【0064】を参照)を含有する被覆組成物を塗布、加熱、紫外線照射して形成された、硬化後の厚さ8μmである硬化被膜を有すし、TAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が16.4重量%である、試料。 (イ)本件発明2について 本件発明2と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート」、「MCS分散体」、「TAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート」、「被覆組成物」、「硬化被膜」は、各々、本件発明1の「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」に相当するから、本件発明2と甲3発明とは、少なくとも以下の相違点Cで相違する。 《相違点C》 本件発明2の塗布液は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であるのに対し、甲3発明の被覆組成物は、TAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が16.4重量%である点。 上記《相違点C》について検討するに、TAIC-3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合を16.4重量%から、4.7重量%以上、16.4重量%未満の値に変更すべきことは、甲3及び甲1、甲2、甲4~甲6には記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲3発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲3発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ.甲4を主たる証拠とした理由 (ア)甲4記載事項及び甲4発明 甲4記載事項、すなわち、甲4の【請求項1】、【請求項2】、段落【0001】~【0009】、【0064】、【0065】、【0086】、【0109】、【0120】~【0142】(特に、【表1】の実施例3を参照)の記載を踏まえると、甲4には以下の甲4発明が記載されている。 《甲4発明》 ポリメチルメタクリレートフィルムに、ウレタンアクリレート1(段落【0128】を参照)、表面装飾コロイド状シリカ3(段落【0124】を参照)およびM315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレートを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥、紫外線照射して形成された、乾燥後の塗膜の厚さが7μmであるハードコート層を有する、ハードコートフィルム。 (イ)本件発明2について 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「ウレタンアクリレート1」、「表面装飾コロイド状シリカ3」、「M315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート」、「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」、「ハードコート層」は、各々、本件発明2の「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」に相当するから、本件発明1と甲4発明とは、少なくとも以下の相違点Dで相違する。 《相違点D》 本件発明2の塗布液は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であるのに対し、甲4発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、M315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が、甲4には明記されていない点。 上記《相違点D》について検討するに、M315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレートは、前記ア.(ア)で示した「N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート」と同じであるから、化合物に対するイソシアヌレート構造の割合は、前記ア.(ア)での検討と同様に、30重量%である。そして、その割合を、4.7重量%以上、16.4重量%未満の値に設定すべきことは、甲4及び甲1~甲3、甲5、甲6には記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲4発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲4発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ.甲6を主たる証拠とした理由 (ア)甲6記載事項及び甲6発明 甲6記載事項、すなわち、甲6の【請求項1】、【請求項2】、【請求項6】、段落【0001】~【0006】、【0011】~【0046】、【0057】、【0059】、【0060】、【0063】~【0079】(特に、【表2】の実施例1~4を参照)の記載を踏まえると、甲6には以下の甲6発明が記載されている。 《甲6発明》 トリアセチルセルロース(TAC)フィルムに、D-2:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を原料とする有機化合物(Ab)とシリカ粒子等から得られた反応性シリカ粒子分散液(A-1)およびB-1:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを含む組成物を塗布、乾燥、紫外線照射して形成された、乾燥膜厚が20μmである硬化被膜を有する、フィルム。 (イ)本件発明2について 本件発明2と甲6発明とを対比すると、甲6発明の「D-2:ペンタエリスリトールテトラアクリレート」、「ペンタエリスリトールトリアクリレート等を原料とする有機化合物(Ab)とシリカ粒子等から得られた反応性シリカ粒子分散液(A-1)」、「B-1:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート」、「組成物」、「硬化被膜」は、各々、本件発明1の「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」、「(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカ」、「イソシアヌレート構造を有する化合物」、「塗布液」、「塗布層」に相当するから、本件発明1と甲6発明とは、少なくとも以下の相違点Eで相違する。 《相違点E》 本件発明2の塗布液は、イソシアヌレート構造を有する化合物に対するイソシアヌレート構造の割合が、4.7重量%以上、16.4重量%未満であるのに対し、甲6発明の組成物は、B-1:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートに対するイソシアヌレート構造の割合が、甲6には明記されていない点。 上記《相違点E》について検討するに、B-1:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートは、前記ア.(ア)で示した「N3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート」と同じであるから、化合物に対するイソシアヌレート構造の割合は、前記ア.(ア)での検討と同様に、30重量%である。そして、その割合を、4.7重量%以上、16.4重量%未満の値に設定すべきことは、甲6及び甲1~甲5には記載されていないし、これを示唆する記載もないし、上記変更すべきことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、本件発明2は、甲6発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1及び3について 本件発明1は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに、「該イソシアヌレート構造を有する化合物が分子内にイソシアネート基を有する化合物の三量体である」と限定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(イ)で述べたことと同様に、甲6発明、甲1~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 キ.小括 以上のとおり、本件発明1~3は、甲1発明~甲6発明、甲1記載事項~甲6記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号に該当することを理由として取り消されるべきものではない。 (2)理由2について 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「イソシアヌレート構造を有する化合物」であれば、それが、例え、種々の官能基を有するものを含み、その分子量も数百程度から数千程度と幅がある種々の構造を含むものとしても、「優れた表面硬度、耐摩耗性を有し、さらにポリエステルフィルムとハードコート層との密着性が良好な積層ポリエステルフィルムを提供する」という本件発明1~3が解決すべき課題(段落【0007】を参照)を解決し得る仕組み(機序)が、具体的に説明されているわけではない。 しかし、本件特許明細書の段落【0037】には、「本発明で塗布層形成に用いられるイソシアヌレート構造を有する化合物は、塗布層とポリエステルフィルムとの密着性向上を目的として使用される。また、イソシアヌレート構造を有することで、塗布層の表面硬度、耐摩耗性を大きく低下させることなく、密着性を向上させることができる。」と記載されているところ、特許権者は、令和元年7月8日提出の意見書において、以下a.~d.のように、イソシアヌレート構造を有することで、塗布層の表面硬度、耐摩耗性を大きく低下させることなく、密着性を向上させる効果が奏される理由を説明しており、この説明は、技術的に妥当であると解される。 《特許権者の説明》(前記令和元年7月8日提出の意見書の4頁23行~6頁12行を参照) a.イソシアヌレート構造を有する化合物は、イソシアネートの多量化反応から生成されるイソシアヌレート環を構造上有するものであるところ、イソシアヌレート環は、剛直な環構造を有するため、硬化収縮が小さく、また、極性が高い構造を有する。 b.ゆえに、イソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布層は、イソシアヌレート環が有する剛直な環構造故に物理的形態が安定し、塗布層の表面硬度と耐摩耗性が維持され、また、同環は極性が高い構造を有する故に、同じく極性の高いポリエステルとの親和性がある結果、ポリエステルフィルムとの密着性が良好となる。 c.また、イソシアヌレート構造を有する化合物を含有する塗布層は、剛直な環構造に加え、複数の架橋点となり得る構造を有することから、3次元網目構造を形成し得る場合があり、前記剛直な環構造と相まって、塗布層の表面硬度と耐摩耗性が維持される。 d.上記効果は、本件特許明細書に記載された、塗布液中にイソシアヌレート構造を有するポリブロックイソシアネート化合物を含む実施例2(塗布液1)で得られた積層ポリエステルフィルムと、イソシアヌレート構造を有さないポリブロックイソシアネート化合物を含む比較例4(塗布液12)で得られた積層ポリエステルフィルムの評価結果の比較に裏付けられる。 ゆえに、前記「イソシアヌレート構造を有する化合物」を含有する本件発明1~3は、イソシアヌレート環を構造上有することにより、表面硬度、耐摩耗性が維持され、ポリエステルフィルムとの密着性が良好であるものと解されるから、上記課題を解決し得ないものをも含み得るものとはいえない。 なお、申立人は、令和元年8月22日提出の意見書において、種々の官能基を有するものが含まれ、その分子量も数百程度から数千程度と幅がある種々の構造が含まれる「イソシアヌレート構造を有する化合物」を発明特定事項とする本件発明1~3は、上記課題を解決しないものをも含み得るものである旨を主張しているが、申立人は、「イソシアヌレート構造を有する化合物」であっても課題を解決できない具体的な事例を示しているわけではなく、上記課題を解決しないものをも含む可能性があると述べているにすぎない。 そして、官能基や構造が異なれば、得られる「塗布層」の物性に影響を与えるとしても、当該影響は、上記効果の程度の差として現れるにとどまると解されるから、上記課題を解決し得ないものを含むとまではいえない。 したがって、上記申立人の主張は、採用できない。 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとなったから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第4号に該当することを理由として取り消されるべきものではない。 (3)理由3について 上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、訂正前の本件発明1における「(メタ)アクリレート化合物」は、本件発明1において、「(メタ)アクリレート化合物(イソシアヌレート構造を有するものを除く)」となり、「(メタ)アクリレート基を有し、かつ、イソシアヌレート構造を有する化合物」は、「イソシアヌレート構造を有する化合物」に該当することが明らかとなったから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確なものとなった。 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確なものとなったから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第4号に該当することを理由として取り消されるべきものではない。 (4)取消理由では、採用しなかった異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1~3に記載の発明は、甲1発明~甲6発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨を主張するが、上記(1)ア.~カ.で示したように、本件発明1~3と甲1発明~甲6発明とは、各々、《相違点1》、《相違点2》、《相違点A》~《相違点E》で相違し、これらの相違点はいずれも実質的な相違点であり、本件発明1~3は、甲1発明~甲6発明ではないから、申立人のかかる主張は、採用することができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができず、また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、結論のとおり決定する。

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2018-700576

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