特許異議申立
2018-700227
缶蓋
- 審判番号
- 2018-700227
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-120013外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月16日
- 審決日
- 2018年10月31日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユニバーサル製缶株式会社
- 【権利者代理人】青山 正和
- 【権利者】コンテナ・ディベロップメント・リミテッド
- 【権利者代理人】青山 正和
- 【異議申立人】太田 千香子
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6205461号発明「缶蓋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6205461号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕ついて訂正することを認める。
特許第6205461号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6205461号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成23年9月21日に出願された特願2012-535055号の一部を、平成28年6月16日(優先権主張 平成22年9月22日)に新たな特許出願(特願2016-120013号)として出願したものであって、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、平成29年9月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年3月16日に特許異議申立人太田千香子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年7月12日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年9月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、平成30年10月12日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
上記平成30年9月12日付けの訂正請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
1. 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1-1
本件特許請求の範囲の請求項1に、
「タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、」という記載があるのを、
「タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、板厚が0.240mm以下で、前記カール部の最外径が62.4mm以下であり、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、」と訂正する。
(2)訂正事項1-2
本件特許請求の範囲の請求項1に、
「かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする缶蓋。」という記載があるのを、
「かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径が48.9mm以下、前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする缶蓋。」と訂正する。
(3)訂正事項2-1
本件明細書の段落【0006】に、
「本発明の缶蓋は、タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、」という記載があるのを、
「本発明の缶蓋は、タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、板厚が0.240mm以下で、前記カール部の最外径が62.4mm以下であり、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、」と訂正する。
(4)訂正事項2-2
本件明細書の段落【0006】に、
「かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする。」という記載があるのを、
「かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径が48.9mm以下、前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする。」と訂正する。
2. 一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、請求項2は、請求項1についての訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正事項1-1及び1-2は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。また、明細書についてする訂正事項2-1及び2-2は、一群の請求項〔1、2〕について請求されたものである。
(2)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に記載された「缶蓋」について、「板厚が0.240mm以下で、前記カール部の最外径が62.4mm以下」との事項を付加し、構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
以下に示した、本件特許明細書の段落【0026】の【表1】、段落【0027】の【表2】及び段落【0028】の【表3】には、それぞれ公称径204、202及び206の缶蓋の試料について、振動漏れ試験及び耐圧試験の結果が良品とされ、かつ、缶蓋の全体の高さが7.2mm以内のものを、「判定」において「○」と記載されている。(段落【0023】、【0025】) そして、その判定が「○」とされたものの板厚をみると、最大値は、0.24mmである。また、本件特許明細書段落【0017】に「カール部8の最外径が62.0~62.4mm」という記載がある。そうすると、訂正事項1-1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でしたものである。そして、訂正事項1-1が、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
段落【0026】の【表1】
段落【0027】の【表2】
段落【0028】の【表3】
(3)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項2に記載された「缶蓋」の「パネル部」について、「前記パネル部の外径が48.9mm以下」との事項を付加し、構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(1)に示した【表1】~【表3】に記載された判定をみると、「○」とされたものパネル部の外径のうち、最大値は、「48.9mm」である。そうすると、訂正事項1-2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でしたものである。そして、訂正事項1-2が、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
(4)訂正事項2-1及び2-2について
訂正事項2-1及び2-2は、それぞれ訂正事項1-1及び1-2により訂正された本件特許請求の範囲の記載と整合するように、本件特許明細書の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、上記(1)及び(2)から、訂正事項2-1及び2-2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
さらに、本件特許明細書の段落【0006】には、請求項1に対応する構成が記載されているから、訂正事項2-1及び2-2による明細書の訂正に係る請求項は請求項1である。よって、請求項1を含む一群の請求項である請求項〔1、2〕のすべてが訂正事項2-1及び2-2の対象となる。
3.訂正の適否についての小括
訂正事項1-1及び1-2、並びに、訂正事項2-1及び2-2からなる訂正は、上記2.に示したとおりのものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
したがって、本件特許明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載した事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、板厚が0.240mm以下で、前記カール部の最外径が62.4mm以下であり、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、前記チャック壁部は、半径方向内方に向けて凸となる第1湾曲部と、半径方向外方に向けて凸となる第2湾曲部とが前記カウンターシンク部の外周縁から前記ショルダー部の内周縁にかけて順に形成され、前記第1湾曲部外面の曲率半径が1.2mm~4.0mm、前記第2湾曲部外面の曲率半径が0.6mm~3.0mm、前記ショルダー部外面と前記第1湾曲部外面との共通接線が前記パネル部外面となす角度が55°~70°とされ、前記共通接線から前記第2湾曲部外面までの最大距離が0.3mm~0.6mmとされ、前記第2湾曲部外面と前記カウンターシンク部の内底面との共通接線から前記第1湾曲部外面までの最大距離が0.4mm~0.7mmとされ、前記カウンターシンク部の内底面の曲率半径が0.75mm以下であり、かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径が48.9mm以下、前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記パネル部から前記カウンターシンク部に至るコーナー部は、前記パネル部に隣接状態の内側屈曲部と、前記カウンターシンク部の内側壁部に隣接状態の外側屈曲部と、これら両屈曲部の間を連結する傾斜部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の缶蓋。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1. 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、特許権者に通知した平成30年7月12日付け取消理由通知の要旨は、次のとおりである。なお、申立人が特許異議申立書に記載した全ての取消理由が通知された。
【理由1】
本件出願の下記の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(なお、申立人が特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証等を、以下「甲1」等という。また、「甲1」に記載された発明あるいは事項を、それぞれ、「甲1発明」、「甲1事項」という。)
記
(1) 請求項1に係る発明について
本件特許の請求項1に係る発明は、甲1発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(2) 請求項2に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲2事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
<刊 行 物 一 覧>
甲1:特許第4388726号公報
甲2:特表2007-526859号公報
2. 刊行物の記載
甲1には、段落【0021】の【表1】、【0023】の記載があり、それらを総合すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
「タブが取り付けられるセンターパネル2の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成する強化環状溝3が連続して形成されるとともに、該強化環状溝3の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャックウォール4が形成され、チャックウォール4から半径方向外方に広がるカール部5の内方を介して外周縁部を下方に向けて折り返してなるカール部5の外方が連続形成された缶蓋において、
板厚が0.25mmであり、
前記カール部の最外径が67.5mmであり、
前記カール部5の内方は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、前記チャックウォール4は、半径方向内方に向けて凸となる湾曲部17と、半径方向外方に向けて凸となる湾曲部18とが前記強化環状溝3の外周縁から前記カール部5の内方の内周縁にかけて順に形成され、
前記湾曲部17の曲率半径が2.1mm、
前記湾曲部18の曲率半径が0.65mm、
前記強化環状溝3の内底面の曲率半径が0.52mmであり、
かつ、前記カール部5の内方からカール部5の外方にかけた部分の頂点からセンターパネル2までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径が51.98mmであり、
前記センターパネル2の外径に対する前記パネル深さの比率が10.42%で、
かつ缶蓋の全体高さが7.09mmである、
缶蓋」
3. 当審の判断
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明を、以下「本件発明1」等という。
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で両者は相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「D:前記ショルダー部外面と前記第1湾曲部外面との共通接線が前記パネル部外面となす角度が55°~70°」であるのに対し、甲1発明がそのようなものであるかが明らかではない点。
<相違点2>
本件発明1は、「E:前記共通接線から前記第2湾曲部外面までの最大距離が0.3mm~0.6mm」であるのに対し、甲1発明がそのようなものであるかが明らかではない点。
<相違点3>
本件発明1は、「F:前記第2湾曲部外面と前記カウンターシンク部の内底面との共通接線から前記第1湾曲部外面までの最大距離が0.4mm~0.7mm」とされているのに対し、甲1発明がそのようなものであるかが明らかではない点。
<相違点4>
本件発明1は、「缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84である」のに対し、甲1発明がそのようなものであるかが明らかではない点。
<相違点5>
本件発明1は「板厚が0.240mm以下」であるのに対して、甲1発明では0.25mmである点。
<相違点6>
本件発明1は、「カール部の最外径が62.4mm以下」であるのに対して、甲1発明は67.5mmである点。
<相違点7>
本件発明1は「パネル部の外径が48.9mm以下」であるのに対して、甲1発明がそのようなものであるか特定されていない点。
イ.判断
本件訂正後の特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
・・・内容物が充填された缶は、殺菌のため熱処理された後、複数本ずつカートンに詰められた状態で各地に輸送されるが、その熱処理時に内圧が高まることにより、缶蓋中央のパネル部が膨出する現象が生じる。その膨出により、缶蓋のタブが缶の上端よりも突出する状態になると、タブを外力から保護できなくなるので、不良品(いわゆるバルジ不良)として処分される。また、パネル部がさらに膨出すると、カウンターシンク部が反転するバックリング現象が生じる場合もある。そのようなバルジ不良やバックリングとなるほどの膨出が生じない場合でも、カートンに詰められて長距離輸送される際に、その振動によりタブがカートンに接触するなどの原因で漏れが生じるおそれがある。
また一方では、材料コストの低減のため、缶蓋の板厚を薄肉化することも求められており、このため、さらなる耐圧性の向上が求められている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、耐圧性を高めて、バルジ不良や輸送時の漏えいの発生を防止することができる缶蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶蓋は、タブが取り付けられるパネル部の外周縁に、上方に向けた環状凹部を形成するカウンターシンク部が連続して形成されるとともに、該カウンターシンク部の外周縁から上方に向かうにしたがって漸次拡径するチャック壁部が形成され、該チャック壁部から半径方向外方に広がるショルダー部を介して外周縁部を下方かつ半径方向内方に向けて折り返してなるカール部が連続形成された缶蓋において、板厚が0.240mm以下で、前記カール部の最外径が62.4mm以下であり、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、前記ショルダー部は上方に向けて凸となる円弧状に湾曲形成されるとともに、前記チャック壁部は、半径方向内方に向けて凸となる第1湾曲部と、半径方向外方に向けて凸となる第2湾曲部とが前記カウンターシンク部の外周縁から前記ショルダー部の内周縁にかけて順に形成され、前記第1湾曲部外面の曲率半径が1.2mm~4.0mm、前記第2湾曲部外面の曲率半径が0.6mm~3.0mm、前記ショルダー部外面と前記第1湾曲部外面との共通接線が前記パネル部外面となす角度が55°~70°とされ、前記共通接線から前記第2湾曲部外面までの最大距離が0.3mm~0.6mmとされ、前記第2湾曲部外面と前記カウンターシンク部の内底面との共通接線から前記第1湾曲部外面までの最大距離が0.4mm~0.7mmとされ、前記カウンターシンク部の内底面の曲率半径が0.75mm以下であり、かつ、前記ショルダー部からカール部にかけた部分の頂点からパネル部表面までの鉛直方向寸法をパネル深さとしたときの前記パネル部の外径が48.9mm以下、前記パネル部の外径に対する前記パネル深さの比率が10.17%以上でかつ缶蓋の全体高さが7.2mm以下であり、缶体に巻き締めたときの巻き締め部の最外径D2に対する前記パネル部の外径D1の比が0.69~0.84であることを特徴とする。
【0007】
つまり、タブが缶の上端より上方に突出するのは、パネル部が上方に持ち上がるように変位することによるものであり、したがって、このパネル部の変位を抑制することにより、バルジ不良や輸送時の漏れを防止することができる。このため、本発明の缶蓋では、カウンターシンク部の内底面の曲率半径を0.75mm以下と小さくして、カウンターシンク部の変形強度を高めることにより、カウンターシンク部を起点とするパネル部の変位を抑制するとともに、パネル部の外径とパネル深さとの比率を10.17%以上とすることにより、パネル部の外径に対するパネル深さを比較的大きい設計として、パネル部が膨出してもタブが缶の上端から突出しにくくした。その効果を得るには10.17%以上必要であるが、缶蓋の全体高さが7.2mmを超えると、充填時の缶蓋供給の際にトラブルが発生したり、充填速度の高速化を妨げるなどの不都合が生じる。
また、チャック壁部については、半径方向内方に凸となる第1湾曲部と半径方向外方に凸となる第2湾曲部とにより、内圧が作用すると、湾曲部の曲率を拡大又は縮小することによって変形を吸収して、パネル部の膨出やバックリングの発生を防止することができる。
【0008】
また、本発明の缶蓋において、前記パネル部から前記カウンターシンク部に至るコーナー部は、前記パネル部に隣接状態の内側屈曲部と、前記カウンターシンク部の内側壁部に隣接状態の外側屈曲部と、これら両屈曲部の間を連結する傾斜部とから構成されているとよい。
コーナー部に傾斜部を有する分、パネル部の外周縁がカウンターシンク部から離間させられる。したがって、カウンターシンク部及びその外側のチャック壁部の形状、寸法を変えることなく、パネル部の外径を小さくすることができ、パネル部の膨出をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の缶蓋によれば、カウンターシンク部の曲率半径を小さくして、カウンターシンク部の変形強度を高めることにより、カウンターシンク部を起点とするパネル部の変位を抑制するとともに、パネル部の外径に対するパネル深さを比較的大きい設計としてタブが缶の上端から突出しにくくしている。また、チャック壁に半径方向内方に凸となる第1湾曲部と半径方向外方に凸となる第2湾曲部とを設けたことにより、内圧に対する変形を吸収することができる。これらの相乗作用により、耐圧性を高めて、バルジ不良やバックリング、輸送時の漏えいの発生を防止することができる。」
そうすると、本件発明1は、内容物が充填された缶が、殺菌のため熱処理時に内圧が高まることにより、缶蓋中央のパネル部が膨出し、缶蓋のタブが缶の上端よりも突出する状態になると、不良品(いわゆるバルジ不良)として処分されたり、また、パネル部がさらに膨出すると、カウンターシンク部が反転するバックリング現象が生じる場合があり、さらに、そのようなバルジ不良やバックリングに匹敵するほどの膨出が生じない場合でも、カートンに詰められて長距離輸送される際に、その振動によりタブがカートンに接触するなどの原因で漏れが生じるおそれがあるといった問題点を、缶蓋の板厚を薄肉化しコストを削減しつつ、解決しようとしたものである。(段落【0004】)
そのために、本件発明1は、上記相違点1~4に係る構成を含む特定事項を備えたものであり、カウンターシンク部の外周縁からショルダー部の内周縁までの間のチャック壁部を第1湾曲部と第2湾曲部とにより構成し、それぞれの曲率半径、特定の共通接線からの深さ、上記の角度を規定し、これに加えて、パネル部の外径、パネル部の外径に対するパネル深さの比率、缶蓋の全体高さ、巻き締め部の最外径に対するパネル部の外径の比をそれぞれ規定することで、カウンターシンク部の曲率半径を小さくして、カウンターシンク部の変形強度を高めることにより、カウンターシンク部を起点とするパネル部の変位を抑制するとともに、パネル部の外径に対するパネル深さを比較的大きい設計としてタブが缶の上端から突出しにくくしている。また、チャック壁に半径方向内方に凸となる第1湾曲部と半径方向外方に凸となる第2湾曲部とを設けたことにより、内圧に対する変形を吸収することができる。これらの相乗作用により、耐圧性を高めて、バルジ不良やバックリング、輸送時の漏えいの発生を防止することができる。さらに、上記相違点5~7に係る構成を本件発明1は備えるから、上記相乗効果を発揮しつつも、板厚が薄く、カール部の最外径やパネル部の外径が小さい缶蓋、すなわち、材料コストが削減でき、カール部の最外径やパネル部の外径が小さい小型軽量の缶蓋が提供できるとの、格別な作用効果を奏する。
一方、甲1には、甲1発明が相違点1~7を備えることについて記載もないし示唆する記載もない。そもそも、甲1には、缶の内圧上昇時に、センターパネル2に取り付けたタブが缶の上端から突出することの記載もないし示唆する記載もない。
また、甲2にも、缶蓋において上記相違点1~7に係る構成を備えることは記載されていないし、甲1発明が上記相違点1-7に係る構成を備えるべきものであることを示唆する記載もない。
以上のとおりであるから、甲1発明について、上記相違点1~7における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
なお、申立人は、平成30年10月12日付け意見書の「3.意見の内容」において、相違点5~7に係る構成は甲2に記載された事項であるから、本件発明1は、甲1発明に甲2事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張する。
しかし、甲2事項には、相違点5~7に係る甲1発明の構成が記載されていたとしても、相違点5~7に係る構成を備えることで、上記本件発明1が奏する格別な作用効果を生じせしめるとの技術的思想までもが記載されてはいないし、かつ、示唆する記載もないから、甲2事項のうち、上記構成のみを取り出して甲1発明に適用しようとすることの動機付けは、甲1発明にはなく、上記申立人の意見を採用することはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものである。そうすると、上記(1)で示したように本件発明1は、甲1発明及び甲2事項から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定された本件発明2も、甲1発明及び甲2事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、それらの特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として、取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700227