特許異議申立
2018-700135
基礎構造の設計方法
- 審判番号
- 2018-700135
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-138432外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月16日
- 審決日
- 2018年12月18日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(E02D) / P1651.121-YAA(E02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6210760号発明「基礎構造の設計方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6210760号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕,5について訂正することを認める。
特許第6210760号の請求項5に係る特許を維持する。
特許第6210760号の請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6210760号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年7月1日に特許出願され、平成29年9月22日付けでその特許権の設定登録がされ、平成29年10月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について平成30年2月16日に特許異議申立人清水仁(以下、「申立人」という。)より請求項1ないし5に対して特許異議の申立てがされ、平成30年6月25日付けで取消理由(発送日同年6月28日)が通知され、その指定期間内である同年8月27日に意見書の提出及び訂正請求がなさたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1~4について
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(2)明細書について
ア 訂正事項5
明細書の【発明の名称】の「基礎構造及び基礎構造の設計方法」を「基礎構造の設計方法」に訂正する。
イ 訂正事項6
明細書の段落【0001】の「本発明は、基礎構造及び基礎構造の設計方法に関する。」を「本発明は、基礎構造の設計方法に関する。」に訂正する。
ウ 訂正事項7
明細書の段落【0009】の「請求項1の発明」を「第一態様の基礎構造」に訂正する。
エ 訂正事項8
明細書の段落【0010】の「請求項1に記載の発明」を「第一態様の基礎構造」に訂正する。
オ 訂正事項9
明細書の段落【0011】の「請求項2の発明」を「第二態様の基礎構造」に訂正する。
カ 訂正事項10
明細書の段落【0012】の「請求項2に記載の発明」を「第二態様の基礎構造」に訂正する。
キ 訂正事項11
明細書の段落【0013】の「請求項3の発明」を「第三態様の基礎構造」に訂正する。
ク 訂正事項12
明細書の段落【0014】の「請求項3に記載の発明」を「第三態様の基礎構造」に訂正する。
ケ 訂正事項13
明細書の段落【0015】の「請求項4の発明」を「第四態様の基礎構造」に訂正する。
コ 訂正事項14
明細書の段落【0016】の「請求項4に記載の発明」を「第四態様の基礎構造」に訂正する。
サ 訂正事項15
明細書の段落【0017】の「請求項5の発明」を「第五態様の基礎構造の設計方法」に訂正する。
なお、訂正請求書の6頁23~24行には、「明細書の段落【0017】に記載された『請求項5の発明』を『第五態様の基礎構造』に訂正する。」と記載されているが、訂正明細書の段落【0017】には、「第五態様の基礎構造の設計方法は、・・・」と記載されており、また、訂正請求書の14頁25~26行には、「訂正事項15は、上記訂正事項1~4に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。」と記載されていることから、訂正請求書の上記箇所は、「明細書の段落【0017】に記載された『請求項5の発明』を『第五態様の基礎構造の設計方法』に訂正する。」と記載すべきところの誤記と認める。
シ 訂正事項16
明細書の段落【0018】の「請求項5に記載の発明」を「第五態様の基礎構造の設計方法」に訂正する。
なお、訂正請求書の6頁26~27行には、「明細書の段落【0018】に記載された『請求項5に記載の発明』を『第五態様の基礎構造』に訂正する。」と記載されているが、訂正明細書の段落【0018】には、「第五態様の基礎構造の設計方法では、・・・」と記載されており、また、訂正請求書の15頁17~18行には、「訂正事項16は、上記訂正事項1~4に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。」と記載されていることから、訂正請求書の上記箇所は、「明細書の段落【0018】に記載された『請求項5に記載の発明』を『第五態様の基礎構造の設計方法』に訂正する。」と記載すべきところの誤記と認める。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1~4について
訂正事項1~4は、それぞれ請求項1~4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから請求項1~請求項4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項5~16について
訂正事項5~16は、訂正事項1~4に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1~5の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項5に係る発明
本件訂正後の請求項5に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。
本件発明
「【請求項5】
軟弱地盤に設けられた基礎部と、
前記基礎部に設置され、構造物を支持する免震装置と、
前記軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高く、前記軟弱地盤よりも下層にある該軟弱地盤よりも固い支持層に到達していない地盤改良体と、
を備える基礎構造に適用され、
前記免震装置の非線形性によって励起される地震動の短周期の卓越成分を計算する第一工程と、
前記第一工程で求められた短周期の卓越成分による前記構造物の二次周期の応答を小さくするように、前記地盤改良体の構造を、該地盤改良体による前記軟弱地盤の改良率を計算した計算結果に基づき、前記軟弱地盤のせん断剛性と等価な地盤を設定し、前記地盤の地表面の加速度応答を評価して決定する第二工程と、
を備える基礎構造の設計方法。」
2 取消理由の概要
(1)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証及び本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:鬼丸貞友、外3名、“格子状地盤改良を有する免震建物の動 的相互作用効果の観測と解析”、[online]、
2012年10月、日本建築学会、技術報告集、第18巻、 第40号、第871~876頁
[平成30年2月14日検索]、インターネット
〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/18/40/18_
871/_pdf〉
甲第2号証:斉藤賢二、外5名、“埋立て地盤上に建つ大規模免震建物を 支持する格子状基礎その1~その5”、日本建築学会、
2002年度大会(北陸)、大会学術講演梗概集、
2002年6月30日、第467~476頁
3 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
(ア)「1.はじめに
近年、・・大規模建築物においても杭に替えて地盤改良により支持する場合が見られるようになってきた。また,杭基礎と併用し,液状化対策として格子状地盤改良を実施するケースも増加している。地盤改良としては深層混合処理工法によりセメント系固化材を混合して改良を実施しているが,地盤に比べ剛性の高い改良地盤を作成することになり,地盤との間に動的相互作用効果が生じ,建物に作用する入力動に影響すると考えられる。
著者らは,東京都江東区に建つパイルド・ラフトと格子状地盤改良を併用した12階建ての免震建物で,建設時点から地震観測を実施・・しており,2011年東北地方太平洋沖地震とその余震を含む多数の地震について良好な観察記録を得ることが出来た・・。更に,地盤と杭および格子状地盤改良を出来るだけ詳細にモデル化した3次元FEMモデルを作成して,建物の応答のシミュレーション解析を実施し,相互作用効果の分析を実施した。」(871頁左欄1-18行)
(イ)「2 観測建物と地震観測の概要
2.1 建物概要
(1)建物
建物は・・・免震構造で,・・・12階建ての集合住宅である。免震装置は鉛プラグ入り積層ゴム12基と天然ゴム系積層ゴム4基に回転摩擦ダンパー,オイルダンパーを組合せて用いている。図1に建物の概略形状を示す。」
(2)地盤・基礎
図1に地盤の概要を示す。地盤は東京都江東区の厚く軟弱な粘性土層が堆積した地盤で,GL-7mまでは,埋土,軟弱なシルト層,緩いシルト質細砂層である。その下,GL-44mまではN値が0~3程度の非常に軟弱な沖積粘性土層であり,GL-44m以深でN値60以上の砂礫層が出現する。
基礎は,格子状地盤改良を併用したパイルド・ラフト基礎である。杭と格子状地盤改良の配置を図2に示す。地表面加速度200cm/s2で液状化の可能性がある3m~7mの緩いシルト質細砂層に対して格子状地盤改良工法を採用し,液状化対策とし,沈下を抑制するために,直径0.8m~1.2m,長さ45mの既製杭(SC+PHC)を16本打設し,パイルド・ラフト基礎としている。・・・
2.2 観測概要
パイルド・ラフトと格子状地盤改良に作用する荷重に着目した長期的な計測と同時に,地盤系と建物系の地震観測を実施している・・。加速度計の配置を図1に併せ示す。建物系は免震層より下の免震ピット上と免震層より上の一階,および12階の3レベル、地盤系は建物から約10m離れた位置の地表と格子状地盤改良の下端に当るGL-15mおよび杭先端の砂礫層に3深度で実施している。」(871頁左欄19行~872頁右欄2行)
(ウ)「3.地震観測記録の検討
3.1 観測地震の概要
・・・
図6に地表に対する免震ピット上の最大加速度の比を示す。免震ピットがGL-4.8mまで埋め込まれていること,その下にGL-16mまで格子状地盤改良が施工されていることから免震ピット上の加速度は地表に比べ大きく低下し,概ねGL-15mの地盤の応答と同等か,それよりも更に小さい値となっている。・・・
3.2 免震ピットの応答低減
免震ピット上での応答低減は,地盤に比べ剛性の高い免震ピットと格子状地盤改良により,動的相互作用の代表的効果の一つである入力損失が生じていると考えられる。・・・
3.3 地盤の卓越周期
表層地盤の特定を確認するため,表1に示した5地震について,GL-50mに対するGL-1.5mの伝達関数を求め、図8に示した。表層の卓越周期はほぼ1秒付近にあり,本震ではやや長周期化している。また,3.2節に示した入力損失の効果が表層地盤の卓越周期よりも更に短周期側で生じていることが分かる。・・・」(872頁右欄9行~873頁右欄12行)
(エ)「4.観測記録のシミュレーション解析
観測記録から相互作用効果が明瞭に確認できたことから,より詳細な分析を目的に,3次元FEMにより地盤と杭や格子状改良地盤および建物を出来るだけ詳細にモデル化し,本震を対象にシミュレーション解析を実施した。
・・・
4.2 地盤-基礎-建物系の応答解析
(1)FEMモデルの作成
図14に作成した3次元FEMモデルを示す。・・・・
b)杭と格子状地盤改良のモデル化
杭は梁要素で,格子状地盤改良はシェル要素でモデル化した。格子状地盤改良の剛性については,既往の調査事例・・などを参考にせん断波速度Vs=800m/s程度とし,せん断剛性を1000MN/m2とした。
c)免震層のモデル化
免震層に関しては設計時に設定した,各装置の規格仕様に基づく特性をそのまま用い,バイリニア型のばね要素でモデル化した。
・・・
(3)相互作用効果に及ぼす影響要因の検討
・・・
a)慣性の相互作用の影響
免震ピット上の応答は地盤からの応答と建物からの応答が複合している。・・・」(874頁左欄8行~875頁右欄12行)
(オ)「5.まとめ
・・・
・観測記録の地表と免震ピット上の加速度応答スペクトルの比をとると2秒付近から短周期になるにつれ低減の程度が増加し,基礎による入力低減効果が明瞭に見られた。・・・
・・・
・検討建物地下部には免震ピットと格子状地盤改良があることから,免震ピット上の応答の低減には両者が影響するため,格子状地盤改良が無い場合を解析的に検討した結果,入力低減には免震ピットと改良地盤がそれぞれ50%程度寄与していることが確認できた。」(875頁右欄28~47行)
(カ)図1
「
」
(キ)図14
「
」
(ク)図1からは、地盤改良が、GL-44m以深に出現するN値60以上の砂礫層に到達していない点が看て取れる。
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アによれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「建物地下部に免震ピットと格子状地盤改良があり、
免震層より下に免震ピットがあり、免震装置は、鉛プラグ入り積層ゴム12基と天然ゴム系積層ゴム4基に回転摩擦ダンパー、オイルダンパーを組合せて用いているものであり、
GL-7mまでは、埋土,軟弱なシルト層、緩いシルト質細砂層であって、その下、GL-44mまではN値が0~3程度の非常に軟弱な沖積粘性土層であり、
免震ピットがGL-4.8mまで埋め込まれ、その下にGL-16mまで格子状地盤改良が施工され、地盤改良として深層混合処理工法によりセメント系固化材を混合して改良を実施し、地盤に比べ剛性の高い改良地盤を作成するものであって、GL-44m以深に出現するN値60以上の砂礫層に到達していないものであって、
地表と免震ピット上の加速度応答スペクトルの比をとると2秒付近から短周期になるにつれ低減の程度が増加し、基礎による入力低減効果が明瞭に見られる観測記録があり、
観測記録から相互作用効果が明瞭に確認できたことから、より詳細な分析を目的に,3次元FEMにより地盤と杭や格子状改良地盤および建物を出来るだけ詳細にモデル化し,本震を対象にシミュレーション解析を実施するにあたって、
地盤-基礎-建物系の応答解析において、
免震層に関しては設計時に設定した、各装置の規格仕様に基づく特性をそのまま用い、バイリニア型のばね要素でモデル化し、
格子状地盤改良の剛性については、既往の調査事例などを参考にせん断波速度Vs=800m/s程度とし、せん断剛性を1000MN/m2として、モデル化した解析方法。」
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証は、5つに分けられており、それぞれ副題が付けられている(「その1 計画の概要と格子状基礎の評価」(467~468頁)、「その2 連成系地震応答解析による基礎構造と自由地盤応答」(469~470頁)、「その3 上部構造の地震応答性状と免震効果」(471~472頁)、「その4 液状化防止効果」(473~474頁)、「その5 不同沈下抑止効果」(475~476頁))。
(ア)「1.はじめに
・・・基礎構造の計画上、層厚が18mの厚い埋土層の液状化対策、軟弱地盤上での免震建物の地震時挙動と免震効果、不同沈下対策等がポイントとなり、杭基礎案と格子状基礎案を想定した。本報告(その1)では、上部構造、基礎、地盤の概要と、両基礎案について、沈下性状、および地震時挙動を解析的に検討した結果をまとめて報告し、本報告(その2)~(その5)では、各解析・検討の詳細を報告する。」((その1)467頁左欄1~10行)
(イ)「2.建物および地盤の概要と基礎構造の計画
建物は、・・鉄骨構造である・・。大地震時にも通信施設としての機能の確保を図るため、1階と基礎の間に免震装置を設置した免震構造となっている。
敷地地盤は、図2に示すように、地表面から深さ40mまで厚さ18mの埋立て土層と厚さ22mの沖積粘性土層からなる軟弱な地層が堆積し、以下、密実な砂礫層と堅い粘土層の互層からなる洪積層が続いている。上部の埋立て土層は、日本建築学会、建築基礎構造設計指針(2001)の液状化判定法によると、地表面加速度が200gal程度の地震時には部分的に、また400gal程度の地震時には、全面的に液状化する可能性が高い。・・・
格子状基礎案・・・:連続地中壁を格子状に配置した格子状基礎よって、深さ44m付近の第1天満礫層に支持させる。」((その1)467頁左欄11行~右欄13行)
(ウ)「1.はじめに
本報では免震建物の基礎構造として格子状基礎と杭基礎を用いた場合に、レベル2の地震動に対する応答(自由地盤,基礎構造の応答)について検討する。」((その2)469頁左欄1~4行)
(エ)「2.解析モデル
・・地盤-連続地中壁-上部構造体連成系および地盤-杭-上部構造体連成系を修正Penzienモデルによりモデル化する。
自由地盤系は地盤踏査結果に基づき第2天満層より上部の地盤をせん断型弾塑性モデルとする。・・
上部構造は上部構造体は建物を12質点の等価せん断モデルとし,免震装置は図3に示すBilinear型の履歴特性を与える。・・・
基礎構造は連続地中壁による格子状基礎と鋼管巻きコンクリート杭による杭基礎の2種類を考える。連続地中壁および杭基礎を曲げせん断弾性梁にモデル化する。連続地中壁先端は第1天満層に,杭は第2天満層に根入れさせている。」((その2)469頁左欄5~22行)
(オ)「2.上部構造の地震応答
・・・
格子状基礎は周囲の地盤に比較してかなり剛な構造体であり固有周期も短周期側にある。・・・
図3は建物頂部における加速度応答スペクトルである。約5秒に免震1次の卓越周期のピークが,0.8秒には地盤-基礎構造系の固有周期に対応すると考えられるピークが見られる。スペクトル全体では1秒より短周期成分では格子状基礎の場合が,長周期成分では杭基礎の場合が大きな応答を示している。また,杭基礎の場合は方向による差異は小さいが,格子状基礎の場合はより剛性の高いX(長辺)方向の応答が短周期成分で小さくなり,基礎構造の剛性の差異が現われた結果といえる。」((その3)471頁左欄5行~右欄7行)
(カ)「3.免震層の地震応答
・・・格子状基礎では0.7秒付近に単一のピークが見られる。杭基礎では明瞭なピークは見られずほぼ自由地盤と等しいスペクトル特性となっている。・・・免震装置の機能する周期帯において杭基礎に比べ格子状基礎では地震動の入力低減効果がみられることがわかる。」((その3)472頁左欄10~17行)
(キ)「4.まとめ
埋立て地盤に建つ大規模免震建物の基礎構造として格子状基礎と杭基礎を用いた場合にレベル2の地震動に対する応答を地盤-基礎構造-上部建物連成系モデルにより検討した。」((その3)472頁右欄4~7行)
(ク)「2.検討方法
・・・
2)地震応答解析
・・・
地盤は平面要素でモデル化し、等価線形化手法により非線形性を考慮した。」((その4)473頁左欄7~20行)
(ケ)「5.おわりに
格子状基礎および拡底杭基礎の即時および圧密沈下性状に関する予測解析結果に基づき、拡底杭基礎で本建物を支持する場合には第2天満礫層(Dg2層)を支持層とする必要があるが、格子状基礎で支持する場合には第1天満礫層(Dg1層)で支持可能であることが分かった。」((その5)476頁右欄1~6行)
(コ)(その1)の図2
「
」
(サ)上記(イ)及び(コ)の(その1)図2から、地表面から深さ40mまで厚さ18mの埋立て土層と厚さ22mの沖積粘性土層からなる軟弱な地層に配置され、深さ44m付近の第1天満礫層に支持され、深さ66m付近の第2天満礫層に支持されていない、格子状基礎が看て取れる。
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アによれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「建物は鉄骨構造であって、1階と基礎の間に免震装置を設置した免震構造となっており、
軟弱な地層に配置されるとともに、深さ44m付近の第1天満礫層に支持され、深さ66m付近の第2天満礫層に支持されていない、周囲の地盤に比較してかなり剛な構造体である格子状基礎とを備え、
地表面から深さ40mまで厚さ18mの埋立て土層と厚さ22mの沖積粘性土層からなる軟弱な地層が堆積し、以下、密実な砂礫層と堅い粘土層の互層からなる洪積層が続いており、
基礎構造として格子状基礎を用いた場合の、地震動に対する応答解析において、
免震装置はBilinear型の履歴特性を与え、
基礎構造は連続地中壁による格子状基礎を曲げせん断弾性梁にモデル化し、
免震層の地震応答について、免震装置の機能する周期帯において杭基礎に比べ格子状基礎では地震動の入力低減効果がみられるようにした解析方法。」
4 判断
(1)新規性欠如・進歩性欠如について(特許法第29条第1項第3号、第29条第2項)
ア 甲1発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の建物地下部にある「免震ピット」は、本件発明の「基礎部」に相当し、また、GL-7mまでは,埋土,軟弱なシルト層,緩いシルト質細砂層であることから、GL-4.8mまで埋め込まれた「免震ピット」は、軟弱地盤に設けられているといえる。そうすると、甲1発明の「GL-4.8mまで埋め込まれ」た建物地下部にある「免震ピット」は、本件発明1の「軟弱地盤に設けられた基礎部」に相当する。
また、甲1発明の「免震装置」及び「建物」は、本件発明の「免震装置」及び「構造物」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「免震ピット」が「免震層」の下にある、つまりこのような相対位置において免震ピットに対して免震層が設けられているといえるから、「免震層」は「免震ピット」に設置されているといえる。
また、甲1発明の「免震層」は、免震装置によって形成されていることは明らかであり、甲1発明の免震装置が、鉛プラグ入り積層ゴム12基と天然ゴム系積層ゴム4基に回転摩擦ダンパー,オイルダンパーを組合せて用いているものであることから、「免震層」は、建物を支持するものであることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「免震層」は、免震ピットに設置され、建物である構造物を支持しているといえるから、本件発明の「前記基礎部に設置され、構造物を支持する免震装置」に相当するといえる。
また、甲1発明のGL-7mまでは,埋土,軟弱なシルト層,緩いシルト質細砂層であり、その下,GL-44mまではN値が0~3程度の非常に軟弱な沖積粘性土層である。これらの層は、本件発明の「軟弱地盤」に相当する。
また、甲1発明の深層混合処理工法によりセメント系固化材を混合して改良を実施し、地盤に比べ剛性の高い改良地盤を作成するものとしているのであるから、軟弱地盤よりも剛性が高いことは明らかであり、また、甲1発明のGL-44m以深に出現するN値60以上の砂礫層は、本件発明の支持層に相当する。
そうすると、GL-4.8mの下にGL-16mまで施工され、GL-44m以深に出現するN値60以上の砂礫層に到達していない「格子状地盤改良」は、本件発明の「前記軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高く、前記軟弱地盤よりも下層にある該軟弱地盤よりも固い支持層に到達していない地盤改良体」に相当する。
そして、甲1発明の建物地下部にある「免震ピットと格子状地盤改良」及び「免震層」からなる構造体は、本件発明の「基礎構造」に相当する。
そうすると、両者は、
「軟弱地盤に設けられた基礎部と、
前記基礎部に設置され、構造物を支持する免震装置と、
前記軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高く、前記軟弱地盤よりも下層にある該軟弱地盤よりも固い支持層に到達していない地盤改良体と、
を備える基礎構造」の点で一致し、
少なくとも、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明は、「第一工程」を「前記免震装置の非線形性によって励起される地震動の短周期の卓越成分を計算する」と特定されているのに対して、甲1発明は、そのように特定されておらず、地盤-基礎-建物系の応答解析において「免震層に関しては、各装置の規格仕様に基づく特性をそのまま用い、バイリニア型のばね要素でモデル化」されている点。
相違点2:本件発明は、「第二工程」を「前記第一工程で求められた短周期の卓越成分による前記構造物の二次周期の応答を小さくするように、前記地盤改良体の構造を、前記地盤の地表面の加速度応答を評価して決定する」と特定されているのに対して、甲1発明は、そのように特定されておらず、地盤-基礎-建物系の応答解析において「格子状地盤改良の剛性については,既往の調査事例などを参考にせん断波速度Vs=800m/s程度とし,せん断剛性を1000MN/m2として、モデル化」されている点。
(イ)判断
上記のとおり、本件発明と甲1発明とは上記の点で相違するので、本件発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。したがって、本件発明は、新規性を有する。
次に、上記相違点1及び2について検討すると、相違点1及び2に係る本件発明の構成は、いずれも、甲第1号証の記載から自明なものではなく、また、甲第2号証に記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用しても、相違点1及び2に係る本件発明の構成に想到することはできない。
したがって、本件発明は、甲1発明、又は甲1発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明、又は甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明と甲2発明とを対比すると、
甲2発明の「基礎」は、本件発明の「基礎部」に相当する。また、地表面から深さ40mまで厚さ18mの埋立て土層と厚さ22mの沖積粘性土層からなる軟弱な地層が堆積していることからみて、甲2発明の「基礎」は、軟弱な地層が堆積した沖積粘性土層に設けられていることは明らかである。
そうすると、甲2発明の軟弱な地層が堆積した沖積粘性土層に設けられている「基礎」は、本件発明の「軟弱地盤に設けられた基礎部」に相当する。
また、甲2発明の鉄骨構造である「建物」は、本件発明の「構造物」に相当し、甲2発明の「免震装置」は、1階と基礎の間に設置しており、建物の1階より上を支えていることは明らかであるから、甲2発明の1階と基礎の間に設置された「免震装置」は、本件発明の「前記基礎部に設置され、構造物を支持する免震装置」に相当する。
また、甲2発明の「軟弱な地層に配置されるとともに、深さ44m付近の第1天満礫層に支持され、深さ66m付近の第2天満礫層に支持されていない、周囲の地盤に比較してかなり剛な構造体である格子状基礎」と、本件発明の「前記軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高く、前記軟弱地盤よりも下層にある該軟弱地盤よりも固い支持層に到達していない地盤改良体」とは、軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高い構造体である点で共通する。
そして、甲2発明の「基礎」、「免震装置」及び「格子状基礎」からなる構造体は、本件発明の「基礎構造」に相当する。
そうすると、両者は、
「軟弱地盤に設けられた基礎部と、
前記基礎部に設置され、構造物を支持する免震装置と、
前記軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高い構造体と、
を備える基礎構造」の点で一致し、
少なくとも、以下の点で相違する。
相違点1:軟弱地盤に形成され、前記軟弱地盤よりも剛性が高い構造体について、本件発明は、軟弱地盤よりも下層にある該軟弱地盤よりも固い支持層に到達していない地盤改良体であるのに対して、甲2発明は、深さ44m付近の第1天満礫層に支持され、深さ66m付近の第2天満礫層に支持されていない、周囲の地盤に比較してかなり剛な構造体である格子状基礎である点。
相違点2:本件発明は、「第一工程」を「前記免震装置の非線形性によって励起される地震動の短周期の卓越成分を計算する」と特定されているのに対して、甲2発明は、そのように特定されておらず、基礎構造として格子状基礎を用いた場合の、地震動に対する応答解析において、「免震装置はBilinear型の履歴特性を与え」ている点。
相違点3:本件発明は、「第二工程」を「前記第一工程で求められた短周期の卓越成分による前記構造物の二次周期の応答を小さくするように、前記地盤改良体の構造を、前記地盤の地表面の加速度応答を評価して決定する」と特定されているのに対して、甲2発明は、そのように特定されておらず、基礎構造として格子状基礎を用いた場合の、地震動に対する応答解析において、「基礎構造は連続地中壁による格子状基礎を曲げせん断弾性梁にモデル化」している点。
(イ)判断
上記のとおり、本件発明と甲2発明とは上記の点で相違するので、本件発明は、甲第2号証に記載された発明ではない。したがって、本件発明は、新規性を有する。
次に、上記相違点について検討する。
先に相違点2及び3について検討すると、相違点2及び3に係る本件発明の構成は、いずれも、甲第2号証の記載から自明なものではなく、また、甲第1号証に記載も示唆もされていない。
よって、甲2発明に甲第1号証に記載された事項を適用しても、相違点2及び3に係る本件発明の構成に想到することはできない。
したがって、本件発明は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2発明、又は甲第2号証及び甲第1号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲2発明、又は甲2発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ まとめ
したがって、本件発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明ないしは事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)請求項1~4に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項1~4を削除する本件訂正が認められたので、請求項1~4に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1~4に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700135