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特許異議申立

2021-700757

海洋構造物および海洋構造物の施工方法

審判番号
2021-700757
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-120503
登録番号
6824464
請求日
2021年08月03日
審決日
2022年09月26日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日鉄エンジニアリング株式会社
  • 【権利者代理人】棚井 澄雄
  • 【権利者代理人】寺本 光生
  • 【権利者代理人】山口 洋
  • 【異議申立人】西村 美希
審判長/審判官
  • 審判長 長井 真一
  • 審判官 有家 秀郎
  • 審判官 西田 秀彦
分類
P1651.841-YAA(E02D) / P1651.113-YAA(E02D) / P1651.121-YAA(E02D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6824464号発明「海洋構造物および海洋構造物の施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6824464号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-5、9-11〕、6、〔7-8〕、12、〔13-15〕について訂正することを認める。 特許第6824464号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6824464号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし15に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、令和2年7月14日に出願され、令和3年1月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月3日に特許掲載公報が発行された。その後、令和3年8月3日付けで、特許異議申立人 西村 美希(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし15に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和3年9月21日受付: 申立人による上申書の提出 (以下「申立人上申書1」という。) 令和3年9月30日受付: 申立人による上申書の提出 (以下「申立人上申書2」という。) 令和3年11月1日付け: 取消理由通知書(同年同月8日発送) 令和4年1月6日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年2月16日付け: 申立人による意見書の提出 令和4年3月25日付け: 取消理由通知書(決定の予告) (同年同月30日発送) 令和4年5月27日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年7月11日付け: 申立人による意見書の提出 なお、令和4年1月6日にされた訂正の請求は、同年5月27日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 第2 訂正について 1 訂正請求の趣旨と訂正の内容 令和4年5月27日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6824464号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「【請求項1】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備える、 ことを特徴とする海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項1】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されており、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部を更に備える、 ことを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。(請求項1の記載を引用する訂正後の請求項2及び3についても、同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「【請求項2】 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入する、 請求項1に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項2】 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記注入部の外に出して前記脚内部に注入するとともに海水も前記脚内部に注入する、 請求項1に記載の海洋構造物。」 と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「【請求項3】 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられている、 請求項1または2に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項3】 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられ、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記脚内部の下端に注入する、 請求項1に記載の海洋構造物。」 と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「【請求項4】 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている、 請求項3に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項4】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられており、 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている、 ことを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項10及び11も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「【請求項5】 前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられている、 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項5】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられていることを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。(請求項5の記載を引用する訂正後の請求項10及び11も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「【請求項6】 前記グラウト充填空間の下部には、仕切りプレートが設置されている、 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項6】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記グラウト充填空間の下部には、前記杭に設けられたプレート受けに、溶接されることなく、置かれる仕切りプレートが設置され、 前記杭に設けられたプレート受けに溶接されていない前記仕切りプレートの上面には、グラウトが注入されることを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に、 「【請求項7】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部を更に備える、 ことを特徴とする海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項7】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部と、 下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、 フランジプレートと、 を更に備え、 前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、 前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、 前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、 前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する、 ことを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。(請求項7の記載を引用する訂正後の請求項8も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に、 「【請求項8】 前記変更部は、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの下流に設けられた、 請求項7に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項8】 前記変更部は、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの下流に設けられ、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトが前記脚内部の下端に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する、 請求項7に記載の海洋構造物。」 と訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に、 「【請求項9】 前記脚の周囲に設けられたグラウトシールと、 前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、 を更に備え、 前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える、 請求項7または8に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項9】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径である脚であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部と、 前記脚の周囲に設けられたグラウトシールと、 前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、 を更に備え、 前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える、 ことを特徴とする海洋構造物。」 と訂正する。(請求項9の記載を引用する訂正後の請求項10及び11も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に、 「【請求項10】 前記杭の内部の海底面は、前記杭の外部の海底面よりも低く、 前記脚の下端は、前記杭の外部の海底面よりも下方に位置する、 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項10】 前記杭の内部の海底面は、前記杭の外部の海底面よりも低く、 前記脚の下端は、前記杭の外部の海底面よりも下方に位置する、 請求項4、5、9のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 と訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、 「【請求項11】 前記脚は、ジャケット脚である、 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 とあるのを、 「【請求項11】 前記脚は、ジャケット脚である、 請求項4、5、9、10のいずれか1項に記載の海洋構造物。」 と訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12に、 「【請求項12】 杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップと、 を備えることを特徴とする海洋構造物の施工方法。」 とあるのを、 「【請求項12】 杭を海底に打設するステップと、 前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップと、 を備えることを特徴とする海洋構造物の施工方法。」 と訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13に、 「【請求項13】 前記脚に取り付けられたグラウトシールで前記杭の上部を覆うステップを更に備える、 請求項12に記載の海洋構造物の施工方法。」 とあるのを、 「【請求項13】 杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップと、 前記脚に取り付けられたグラウトシールで前記杭の上部を覆うステップと、 を備えることを特徴とする海洋構造物の施工方法。」 と訂正する。(請求項13の記載を引用する請求項14及び訂正後の請求項15も同様に訂正する。) (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項15に、 「【請求項15】 前記杭を海底に打設するステップの後に、前記杭内部に仕切り部材を設置するステップを更に備える、 請求項12乃至14のいずれか1項に記載の海洋構造物の施工方法。」 とあるのを、 「【請求項15】 前記杭を海底に打設するステップの後に、前記杭内部に仕切り部材を設置するステップを更に備える、 請求項13又は14に記載の海洋構造物の施工方法。」 と訂正する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、 (ア)「脚」について、「前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されて」いることを限定し、 (イ)「注入部」により「脚内部に注入」される海水あるいはグラウトについて、「(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、」という3つの選択肢から、「(1)」及び「(2)」の2つの選択肢を削除する限定を行い、 (ウ)「注入部」による上記(イ)の注入について、脚内部の「下方」へと注入が行われること、及び「前記グラウトの海洋への排出を抑制する」ことを限定する、 という3つの点で限定を行う訂正事項であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項1は、上記アに(ア)ないし(ウ)として示した3つの点で限定を行うものである。 訂正事項1のうち、上記ア(ア)に示した限定は、願書に添付した明細書の、段落【0042】及び【0081】の記載からみて、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項1のうち、上記ア(イ)に示した限定は、訂正前の請求項1に記載された選択肢の一つを特定したものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項1のうち、上記ア(ウ)に示した限定は、願書に添付した明細書及び図面の、段落【0074】ないし【0081】の記載、【図10】及び【図11】の図示からみて、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、本件明細書等という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明において、(ア)「注入部」が「前記脚内部に注入」する「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」であること、及び、(イ)「注入部」について、上記(ア)のグラウトを「前記注入部の外に出して前記脚内部に注入」することを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項2は、上記アに(ア)及び(イ)として示した2つの点で限定を行うものである。 訂正事項2における上記ア(ア)の限定に関し、願書に添付した明細書及び図面には、グラウト充填空間50から配管58(注入部)を通して脚31内部に注入される海水またはグラウトについて、グラウト充填空間50へのグラウト51の注入に伴い、「(1)グラウト充填空間50に充填された海水」、「(2)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51であって海水に希釈されたグラウト51」、「(3)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51の一部」と変化すること(特には段落【0074】)が記載されている。また、願書に添付した明細書及び図面には、グラウトの注入量について、グラウト51の供給量や配管58(注入部)内へのグラウト51の到達状況、配管58(注入部)から得られるサンプルの密度の確認等により、グラウト充填空間50にグラウト51が十分充填されたと判断された場合に、グラウト51の更なる注入を停止すること(特には段落【0077】-【0080】)が記載されている。 願書に添付された明細書におけるこれらの記載を総合すると、グラウト51の更なる注入を停止する前の段階において、グラウト充填空間50にはグラウトが十分に充填されて内部の海水は排出された状態となっており、この段階でグラウト充填空間50から配管58(注入部)を通って脚31内部に注入されるグラウトが、「グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部」であって、かつ「グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」ものとなることは、記載されていたに等しい事項である。 そうすると、訂正事項2のうち、上記ア(ア)の限定は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項2における上記ア(イ)の限定に関し、願書に添付した図面の図11には、グラウト充填空間50から配管58(注入部)を通って脚31内部に入るグラウトについて、配管58(注入部)の外に出て脚31の内部に入る様子が示されている。 そうすると、訂正事項2のうち、上記ア(イ)の限定は、願書に添付した図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明において、(ア)「注入部」について、「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記脚内部の下端に注入する」ことを限定するとともに、(イ)「請求項1または2」を引用する選択肢のうち、請求項2を引用する選択肢を削除する限定を行う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項3は、上記アに(ア)及び(イ)として示した2つの点で限定を行うものである。 訂正事項3における上記ア(ア)の限定のうち、注入部が「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記脚内部」に「注入する」ことについては、訂正事項2について上記(2)ウで示したと同様に、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項3における上記ア(ア)の限定のうち、「注入部」から注入されたグラウトが「脚内部の下端」に至ることについては、願書に添付した明細書において、脚31の下端がボトムキャップによって閉塞されていることが記載され(段落【0038】及び【0039】)、また、脚31内部に注入されたグラウト51が脚31内部の下方に向けて移動することが記載されている(段落【0081】)ことから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項3における上記ア(イ)の限定は、訂正前の請求項3に記載された選択肢の一つを特定したものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明のうち、訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3における全ての構成を有する選択肢を特定して、他の請求項を引用しない形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明について限定を行うとともに、他の請求項の記載を引用しない記載に改めるものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項4は、訂正前の請求項4における選択肢の一つを特定するとともに、他の請求項の記載を引用しない記載へと改めたものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項4は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する選択肢を特定して、他の請求項を引用しない形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明について限定を行うとともに、他の請求項の記載を引用しない記載に改めるものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項5は、訂正前の請求項5における選択肢の一つを特定するとともに、他の請求項の記載を引用しない記載へと改めたものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項5は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項6に係る発明のうち、(ア)訂正前の請求項1を引用する選択肢を特定して、他の請求項を引用しない形式に改めるとともに、(イ)訂正前の請求項6における「仕切りプレート」について、「前記杭に設けられたプレート受けに、溶接されることなく、置かれる」こと、及び「前記杭に設けられたプレート受けに溶接されていない前記仕切りプレートの上面には、グラウトが注入されること」を特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項6は、訂正前の請求項6に係る発明について限定を行うとともに、他の請求項の記載を引用しない記載に改めるものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項6のうち、上記ア(ア)の点は、訂正前の請求項6における選択肢の一つを特定するとともに、他の請求項の記載を引用しない記載へと改めたものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項6のうち、上記ア(イ)の点は、願書に添付した明細書の段落【0035】、【0036】及び【0045】の記載からみて、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項6は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項7に係る発明において、 (ア)「変更部」について、「グラウトの海洋への排出を抑制する」ことを特定し、 (イ)さらに「下面が前記杭の上端に接触するライナープレート」と、「フランジプレート」とを備え、「前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」ことを特定した、 という2つの点で限定を行ったものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項7は、訂正前の請求項7に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項7のうち、上記ア(ア)の点は、願書に添付した明細書の段落【0017】、【0075】及び【0076】の記載からみて、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項7のうち、上記ア(イ)の点は、願書に添付した明細書の段落【0040】、【0052】-【0054】の記載、及び図面の【図3】における図示からみて、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項7は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項8に係る発明における「変更部」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトが前記脚内部の下端に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する」ことを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項8は、訂正前の請求項8に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項8のうち、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトが前記脚内部の下端に流れる」ようにする点は、上記(3)ウにおいて、訂正事項3における同様の限定について指摘したとおり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項8のうち、「当該グラウトの流れの向きを変更する」点は、「変更部」が有する当然の機能を特定したものであり、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項8は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (9)訂正事項9について ア 訂正の目的について 訂正事項9は、訂正前の請求項9に係る発明のうち、訂正前の請求項7を引用する選択肢を特定して、他の請求項を引用しない形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項9は、訂正前の請求項9に係る発明について限定を行うとともに、他の請求項の記載を引用しない記載に改めるものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項9は、訂正前の請求項9における選択肢の一つを特定するとともに、他の請求項の記載を引用しない記載へと改めたものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項9は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (10)訂正事項10及び11について ア 訂正の目的について 訂正事項10及び11は、訂正前の請求項10及び11に係る発明について、それぞれ引用する請求項の選択肢を一部削除したものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項10及び11は、訂正前の請求項10及び11に係る発明について、それぞれ引用する請求項の選択肢を一部削除するものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項10及び11は、訂正前の請求項10及び11において、引用する請求項の選択肢を一部削除するものであるから、いずれも、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項10及び11は、いずれも、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (11)訂正事項12について ア 訂正の目的について 訂正事項12は、訂正前の請求項12に係る発明において、 (ア)訂正前に記載の「杭を海底に打設するステップ」と「前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」とについて、前者の「ステップ」が実施された後に後者の「ステップ」が実施されるという順番を限定するとともに、 (イ)訂正前に記載の「通路」を通して「脚内部に注入」する「グラウトの一部」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」であること、及び、「前記通路の外に出して前記脚内部に注入」されることを限定する、 という2つの点で限定を行う訂正事項であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項12は、訂正前の請求項12に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項12のうち、上記ア(ア)に示した限定は、願書に添付した明細書の段落【0064】に、「第1ステップ」として「杭20を海底11に打設する」ことが記載され、後続する段落【0066】に、「第3ステップ」として「ジャケット30の脚31を杭20に挿入する」ことが記載されていることから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正事項12のうち、上記ア(イ)に示した限定は、訂正事項2について上記(2)アに示した限定と、実質的に同じ内容であるから、訂正事項2について上記(2)ウに示したと同様に、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項12は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (12)訂正事項13について ア 訂正の目的について 訂正事項13は、訂正前の請求項13に係る発明について、訂正前の請求項12の記載を引用していたところ、他の請求項を引用しない形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項13は、訂正前の請求項13に係る発明について、他の請求項の記載を引用しない記載に改めるものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項13は、訂正前の請求項13について、他の請求項の記載を引用しない記載へと改めたものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項13は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (13)訂正事項14について ア 訂正の目的について 訂正事項14は、訂正前の請求項15に係る発明について、引用する請求項の選択肢を一部削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項14は、訂正前の請求項15に係る発明について、引用する請求項の選択肢を一部削除するものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項14は、訂正前の請求項15において、引用する請求項の選択肢を一部削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、訂正事項14は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (14)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし15について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし12及び14において、特許請求の範囲の請求項1ないし12及び15について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし12及び15に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (15)一群の請求項について ア 訂正前の請求項1ないし6及び10ないし11について、訂正前の請求項2ないし6及び10ないし11は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、訂正前の請求項7ないし11について、訂正前の請求項8ないし11は、それぞれ請求項7を引用しているから、訂正事項7によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。 そして、訂正前の請求項1ないし6及び10ないし11と、訂正前の請求項7ないし11とは、共通する請求項10及び11を介して、一体として連関しているから、訂正前の請求項1ないし11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1ないし11による訂正は、一群の請求項1ないし11についてするものである。 イ 訂正前の請求項12ないし15について、訂正前の請求項13ないし15は、請求項12を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項12によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項12ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項12ないし14による訂正は、一群の請求項12ないし15についてするものである。 (16)別の訂正単位とする求めについて ア 特許権者による別の訂正単位とする求め 上記(15)のとおり、本件訂正は、訂正前の一群の請求項〔1-11〕、〔12-15〕について訂正を求めるものであるところ、特許権者は訂正請求書において、これら各群の請求項について、以下のように別の訂正単位とすることを求めている(訂正請求書第22頁下から12行-最終行、第28頁下から4行-最終行)。 (ア)訂正により請求項1または7との引用関係が解消される訂正後の請求項4、請求項5、請求項6、請求項9については、訂正後の請求項1または7とは別の訂正単位とする。 (イ)請求項10及び11の訂正により、請求項1及び7について、請求項10または11を介して一体として連関する関係が解消されるから、訂正後の請求項7及び8について、訂正後の請求項1とは別群の訂正単位とする。 (ウ)請求項10及び11の訂正により、請求項10または11と直接的または間接的に引用または被引用の関係を有する請求項は、請求項4、5、9、10、11の群となるから、訂正後の請求項4、5、9、10、11は、別群の訂正単位とする。 (エ)請求項13について、請求項12との引用関係を解消する訂正を行っているから、訂正後の請求項13ないし15について、訂正後の請求項12とは、別群の訂正単位とする。 イ 別の訂正単位とする求めについての判断 上記(1)ないし(15)のとおり、本件訂正における訂正事項1ないし14のそれぞれについて、訂正が認められない理由はない。 そして、特許権者は上記アのとおり、訂正前の一群の請求項〔1-11〕、〔12-15〕について、各郡内の訂正後の請求項の一部を、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 そこで、訂正後の請求項1ないし15について、特許権者の求めにより別の訂正単位とすることができる訂正の単位について、判断する。 (ア)訂正後の請求項1-3について 訂正前の一群の請求項1-11のうち、訂正後の請求項1ないし3については、特許権者により、別の訂正単位とする求めがされていない。その一方、訂正前の一群の請求項1-11のうち、訂正後の請求項4ないし11については、上記ア(ア)ないし(ウ)のとおり、特許権者は別の訂正単位または別群の訂正単位とすることを求めている。 そして、訂正がされた請求項のうち、訂正後の請求項1-3を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項1-3に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項1-3を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項1-3と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項〔1-3〕については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 (イ)訂正後の請求項4-5、9-11について 訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項4、5、9、10、11については、上記ア(ア)及びア(ウ)のとおり、特許権者により、別群の訂正単位とすることが求められている。そして、訂正後の請求項4、5、9、10、11は、訂正後の請求項4、5、9がそれぞれ訂正後の請求項10または11に引用されることにより、訂正後の請求項10または11を介して一体として連関する関係を有する。 その一方、訂正がされた請求項のうち、訂正後の請求項4、5、9、10、11を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項4、5、9、10、11に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項4、5、9、10、11を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項4、5、9、10、11と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項〔4-5、9-11〕については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 (ウ)訂正後の請求項6について 訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項6については、上記ア(ア)のとおり、特許権者により、別の訂正単位とすることが求められている。 そして、訂正後の請求項6を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項6に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項6を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項6と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項6については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 (エ)訂正後の請求項7-8について 訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項7、8については、上記ア(イ)のとおり、特許権者により、別群の訂正単位とすることが求められている。そして、訂正後の請求項7、8は、請求項8が請求項7を引用することにより、訂正後の請求項7に係る訂正に訂正後の請求項8が連動する関係を有する。 その一方、訂正後の請求項7、8を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項7、8に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項7、8を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項7、8と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔1-11〕のうち、訂正後の請求項〔7-8〕については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 (オ)訂正後の請求項12について 訂正前の一群の請求項〔12-15〕のうち、訂正後の請求項13-15については、上記ア(エ)のとおり、特許権者により、別群の訂正単位とすることが求められている。 そして、訂正後の請求項12を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項12に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項12を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項12と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔12-15〕のうち、訂正後の請求項12については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 (カ)訂正後の請求項13-15について 訂正前の一群の請求項〔12-15〕のうち、訂正後の請求項13-15については、上記ア(エ)のとおり、特許権者により、別群の訂正単位とすることが求められている。そして、訂正後の請求項13-15は、請求項14及び15が請求項13を引用することにより、訂正後の請求項13に係る訂正に訂正後の請求項14及び15が連動する関係を有する。 その一方、訂正後の請求項13-15を直接的または間接的に引用して、訂正後の請求項13-15に係る訂正と連動する訂正後の他の請求項、または、訂正後の請求項13-15を引用する請求項に引用される関係を介して、訂正後の請求項13-15と一体として連関する訂正後の他の請求項はない。 したがって、訂正前の一群の請求項〔12-15〕のうち、訂正後の請求項〔13-15〕については、特許権者の求めにより、訂正後の他の請求項とは別の訂正単位とすることを、認めることができる。 3 申立人による意見書における主張について ア 申立人の主張 申立人は令和4年7月11日付け意見書において、本件訂正のうち、訂正後の請求項1ないし3、7、8及び12に係る訂正について、概略以下の点で、訂正要件を満たしていない旨を主張している。 (ア)請求項1; 訂正事項1に係る「貫通孔」について 訂正事項1により、訂正後の請求項1に追加された「前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されており」という構成において、「貫通孔」が形成される「脚」の位置は特定されていない。 しかしながら、願書に添付された明細書及び図面において、段落【0042】に「貫通孔は、海水面13の近くに形成されている」と記載されているように、「脚」に形成される「貫通孔」の位置は「海水面の近く」に制限されている。 そうであるところ、「貫通孔」が形成される「脚」の位置を「海水面の近く」に制限していない訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内を逸脱している。 したがって、訂正後の請求項1に係る訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に規定する訂正要件に違反している(意見書第11頁第9行-第13頁第16行)。 (イ)請求項2; 訂正事項2に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」について 訂正事項2により、訂正後の請求項2において、注入部が「脚内部」に注入する「グラウト」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」と特定された。 a 訂正目的違反 この点に関し、願書に添付した明細書の段落【0074】には、配管58を通して脚31内部に注入されるグラウト等について、「(1)グラウト充填空間50に充填された海水」、「(2)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51であって海水に希釈されたグラウト51(品質が悪いグラウト51)」、「(3)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51の一部(グラウト51の上澄みを含む)」と記載されている。 しかしながら、「(3)」のグラウトの一部であっても「上澄みを含む」から、「(2)」の「海水に希釈されたグラウト」と区別できないことは明らかである。そして、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」を、それ以外のグラウトと区別することができる技術的な基準について、願書に添付された明細書等には記載されていない。 そうすると、訂正事項2に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」は、それ以外のグラウトと区別して特定することができない構成であり、訂正前後の特許請求の範囲の広狭を判断する前提として技術的に明確であるという要件を満たさない。 したがって、訂正後の請求項2に係る訂正事項2は、特許権者が主張するように特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、特許法第120条の5第2項ただし書各号のいずれを目的としたものでもないから、同条同項に規定する訂正要件に違反する(意見書第30頁第2行-33頁第11行)。 b 新規事項追加、及び実質的な特許請求の範囲の変更 訂正事項2は、願書に添付された明細書等においては上澄みを含むものであった「グラウトの一部」を、「上澄みを含む」ものであってはならない「海水に希釈されていない」ものに変更するものである。 したがって、訂正後の請求項2に係る訂正事項2は、願書に添付した明細書等の記載を逸脱し、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に規定する訂正要件に違反する。 また、訂正後の請求項2に係る訂正事項2は、上澄みを含むものであった「グラウトの一部」の意味を変更し、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に規定する訂正要件に違反する(意見書第33頁第12行-第34頁下から3行)。 (ウ)請求項3、8及び12; 訂正後事項3、8及び12に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトについて 訂正事項3、8及び12により、訂正後の請求項3、8及び12において、注入部、変更部または通路を通って「脚内部」に注入または流される「グラウト」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」と特定された。 しかしながら、訂正事項3、8及び12は、訂正事項2と同様の理由から、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、願書に添付した明細書等の記載を逸脱するものであり、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 したがって、訂正後の請求項3、8及び12に係る訂正事項3、8及び12は、特許法第120条の5第2項に規定する訂正要件に違反し、また、同法第120条の5第9項において準用する第126条第5項及び第6項に規定する訂正要件に違反する(意見書第38頁第1行-第40頁第19行、第46頁第17行-第49頁第9行、及び第49頁第11行-第52頁第4行)。 (エ)請求項7; 訂正事項7に係る「グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」及び「隙間」について 訂正事項7により、訂正後の請求項7は、「グラウトの流れの向きを変更」する「変更部」について「当該グラウトの海洋への排出を抑制する」と特定される一方で、「杭の上端」と「ラーナープレート」及び「フランジプレート」に関する構成が追加され、「フランジプレートの下面の領域のうち、・・・一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」ことが特定された。 a 新規事項追加 訂正後の請求項7において、「フランジプレートの下面・・・の一部」と「杭の上端」との「隙間」を通じて杭の外部に排出されるグラウトについて、海洋への拡散を阻害する構成(例えば、願書に添付された明細書等における「グラウトシール54」に相当する部材)は含まれていないから、訂正事項7に係る「隙間」は、杭の外部に排出されるグラウトの海洋への拡散を阻害するための手段を伴わないものと解するべきである。 しかしながら、願書に添付した明細書等において、杭の「上端」近くに存在する開口部は、いずれも杭の外部に排出されるグラウトの海洋への拡散を阻害するための手段を伴うものであるから、グラウトの海洋への拡散を阻害するための手段を伴わない訂正事項7に係る「隙間」には当たらない。また、訂正事項7に係る「隙間」は、上記のとおりグラウトの海洋への排出を抑制するものではないから、目的及び効果の面からも、願書に添付した明細書等には記載されていないものである。 したがって、訂正後の請求項7に係る訂正事項7は、願書に添付した明細書等の記載を逸脱し、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に規定する訂正要件に違反する(意見書第43頁下から6行-第45頁第18行)。 b 訂正目的違反 訂正事項7に係る「グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」と、グラウトの海洋への排出を抑制するものには当たらない「隙間」との両方を含む構成は、「グラウトの海洋への排出を抑制」するという目的を達成するか技術的に明確でないから、訂正前後の特許請求の範囲の広狭を判断する前提として技術的に明確であるという要件を満たさない。 したがって、訂正後の請求項7に係る訂正事項7は、特許権者が主張するように特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、特許法第120条の5第2項ただし書各号のいずれを目的としたものでもないから、同条同項に規定する訂正要件に違反する(意見書第45頁第19行-第46頁第15行)。 イ 申立人の主張についての判断 (ア)訂正事項1に係る「貫通孔」について 訂正事項1に係る「貫通孔」に関し、願書に添付した明細書の段落【0081】には、「なお、配管58によって脚31内部に海水等が注入されると、注入された海水等の体積に応じて、予め脚31内部に充填されていた海水が、例えば、本体部35の前記貫通孔を通して海水中に放出される。グラウト51は海水よりも比重が高いことから、脚31内部に注入されたグラウト51は、配管58から脚31内部の下方に向けて移動する。なお前記貫通孔は、配管58に対して十分に距離が離れるほど、上方に位置していて、配管58に注入されたグラウト51が貫通孔から排出することは規制されている。」と記載されている。 上記段落【0081】の前半部より、訂正事項1に係る「貫通孔」について、「前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されて」いるという構成は、願書に添付した明細書に記載されたものである。 また、上記段落【0081】の後半部の記載より、「貫通孔」の位置について、配管より上方に距離を離すほど、海水より比重が高いグラウトの排出に有利であることが理解される。 そうすると、願書に添付された明細書の段落【0043】に、「貫通孔」を「海水面13の近くに形成」したことが記載されていても、当該記載は「貫通孔」を形成する有利な位置を例示したにとどまり、当該段落【0043】の記載から「貫通孔」の形成位置が「海水面の近く」のみに限定されるような事情はない。 したがって、訂正事項1に係る「貫通孔」に関し、申立人による上記ア(ア)の主張について検討しても、訂正事項1の適否については、上記2(1)のとおり判断されるべきものである。 (イ)訂正事項2に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」について 訂正事項2に係る「グラウト」の特定は、上記2(2)ア(ア)に示したとおり、訂正前における「グラウトの一部」をさらに限定したものであり、同イに示したとおり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものでない。 また、上記2(2)ウにおいて、新規事項の有無について示したとおり、願書に添付した明細書の記載にしたがい、グラウト充填空間50から配管58(注入部)を通して脚31内部に注入される海水またはグラウトは、グラウト充填空間50にグラウトが十分に充填されて内部の海水が排出された状態となった後には、「グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部」であって、かつ「グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」ものとなることが明らかであるから、訂正事項2に係るグラウトの特定は、新規事項を追加するものではない。 なお、グラウト充填空間に注入されるグラウトに最初から上澄みが混ざっていることはあり得ることであり、その場合には、グラウト充填空間から脚31内部に注入されるグラウトの一部が、「グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」ものであって、かつ段落【0074】に括弧書きで付記されるように、「(グラウト51の上澄みを含む)」ものとなる場合もあり得ると理解される。しかしながら、グラウトが最初から上澄みを含む場合があり得るとしても、グラウト充填空間を経て脚31内部に注入されるグラウトの一部について、「グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」ものとした点は、脚31内部に注入されるグラウトについてグラウト充填空間内の海水との関係を特定しているにほかならず、発明を実質的に変更するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲外となるものでもない。 したがって、訂正事項2に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウト」に関し、申立人による上記ア(イ)a及びbの主張について検討しても、訂正事項2の適否については、上記2(2)のとおり判断されるべきものである。 (ウ)訂正後事項3、8及び12に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトについて 訂正事項3、8及び12に係る「グラウト」の特定については、上記2(3)、(8)及び(11)に示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、特許請求の範囲を実質的に変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。 そして、これに反する申立人の上記ア(ウ)の主張は、訂正事項2に関する申立人の主張について上記(イ)に示したと同様の理由で、採用することができない。 したがって、訂正事項3、8及び12に係る「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトに関し、申立人による上記ア(ウ)の主張について検討しても、訂正事項3、8及び12の適否については、上記2(2)、(8)及び(11)のとおり判断されるべきものである。 (エ)訂正事項7に係る「グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」及び「隙間」について 訂正事項7に係る「隙間」に関する、訂正後の請求項7の構成は、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」というものであり、「隙間」の箇所が海洋に対して直接に開放されていることを限定するものではない。 また、訂正後の請求項7においては、「・・・当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」を備えたうえで、上記「隙間」に関する構成を備えるのであるから、一部の箇所において訂正後の請求項7に特定される「隙間」を備えていても、当該「隙間」の近傍あるいは別の箇所において、「グラウトの海洋への放出を抑制する」一又は複数の手段を備えることは排除されておらず、「変更部」も「グラウトの海洋への放出を抑制する」手段の一部であると解され、訂正後の請求項7における「当該グラウトの海洋への放出を抑制する」という記載とは矛盾しない。 そうすると、訂正事項7に関する申立人の主張は採用することができず、訂正事項7の適否については、上記2(7)のとおり判断されるべきものである。 (オ)小括 上記(ア)ないし(エ)のとおりであるから、申立人による上記アの主張について検討しても、本件訂正の適否について、上記2の判断を変更すべき事情は見いだせない。 4 訂正の適否のまとめ 以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。そして、訂正後の請求項1ないし15について、訂正の単位は、特許権者による別の訂正単位とする求めに応じて、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-5、9-11〕、6、〔7-8〕、12、〔13-15〕とする。 よって、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-5、9-11〕、6、〔7-8〕、12、〔13-15〕について、本件訂正を全て認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、特許第6824464号の請求項1ないし15の特許に係る発明(以下、「本件訂正発明1」などといい、本件訂正発明1ないし15をまとめて「本件訂正発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されており、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部を更に備える、 ことを特徴とする海洋構造物。 【請求項2】 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記注入部の外に出して前記脚内部に注入するとともに海水も前記脚内部に注入する、 請求項1に記載の海洋構造物。 【請求項3】 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられ、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトの一部を前記脚内部の下端に注入する、 請求項1に記載の海洋構造物。 【請求項4】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられており、 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている、 ことを特徴とする海洋構造物。 【請求項5】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられていることを特徴とする海洋構造物。 【請求項6】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記グラウト充填空間の下部には、前記杭に設けられたプレート受けに、溶接されることなく、置かれる仕切りプレートが設置され、 前記杭に設けられたプレート受けに溶接されていない前記仕切りプレートの上面には、グラウトが注入されることを特徴とする海洋構造物。 【請求項7】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径である脚であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部と、 下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、 フランジプレートと、 を更に備え、 前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、 前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、 前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、 前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する、 ことを特徴とする海洋構造物。 【請求項8】 前記変更部は、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの下流に設けられ、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていないグラウトが前記脚内部の下端に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する、 請求項7に記載の海洋構造物。 【請求項9】 海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径である脚であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部と、 前記脚の周囲に設けられたグラウトシールと、 前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、 を更に備え、 前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える、 ことを特徴とする海洋構造物。 【請求項10】 前記杭の内部の海底面は、前記杭の外部の海底面よりも低く、 前記脚の下端は、前記杭の外部の海底面よりも下方に位置する、 請求項4、5、9のいずれか1項に記載の海洋構造物。 【請求項11】 前記脚は、ジャケット脚である、 請求項4、5、9、10のいずれか1項に記載の海洋構造物。 【請求項12】 杭を海底に打設するステップと、 前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップと、 を備えることを特徴とする海洋構造物の施工方法。 【請求項13】 杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップと、 前記脚に取り付けられたグラウトシールで前記杭の上部を覆うステップと、 を備えることを特徴とする海洋構造物の施工方法。 【請求項14】 前記グラウトを注入するステップは、前記グラウトシールで前記杭が覆われた後に前記グラウトを注入する、 請求項13に記載の海洋構造物の施工方法。 【請求項15】 前記杭を海底に打設するステップの後に、前記杭内部に仕切り部材を設置するステップを更に備える、 請求項13又は14に記載の海洋構造物の施工方法。」 第4 証拠一覧、特許異議申立理由及び取消理由の概要、及び証拠の記載 1 証拠一覧 申立人が申立書に添えて提出した証拠は、次のとおりである。以下では甲第1号証などを「甲1」などという。 甲1: M.S.Calero他3名、「SEGREGATION TEST OF THE OFF-SHORE WIND TURBINE JACKET FOUNDATIONS MADE BY FREE FALL POURING」(甲11のWebページよりダウンロードした印刷物、全13頁) 甲2: 特許第5422048号公報 (平成26年2月19日発行) 甲3: 特許第3423394号公報 (平成15年7月7日発行) 甲4: 特開2017-133199号公報 (平成29年8月3日公開) 甲5: 特開2006-200328号公報 (平成18年8月3日公開) 甲6: 特開2018-178429号公報 (平成30年11月15日公開) 甲7: 特開2005-68712号公報 (平成17年3月17日公開) 甲8: 中国実用新案登録第208395852号公報 (2019年1月18日公告) 甲9: 土木・建築にかかる設計の基本、国土交通省 (令和3年7月24日出力) 甲10:土木・建築にかかる設計の基本について、国土交通省 (令和3年7月24日出力、平成14年10月21日付け) 甲11:甲1の文献をダウンロードするWebページの印刷物 (令和3年7月16日出力) 甲1ないし甲11のうち、甲9は「構造物」という語の解釈に関する補足資料という位置づけであり、甲10は甲9の公知日に関する資料であり、甲11は甲1の公知日に関する資料である。そのため、新規性または進歩性に係る特許異議申立理由について、先行技術を示す文献として、申立書に添付して提出されたのは、甲1ないし甲8である。 なお、申立人は申立人上申書1に添えて補助資料1ないし3を提出しているが、補助資料1ないし3は特許異議申立期間を経過した後に提出されたものであるから、新規性または進歩性に係る異議申立理由の証拠としては採用しない。 また、申立人は令和4年7月11日付け意見書に添付して、補助資料A及びBを提出しているが、補助資料A及びBは甲1に記載される「VENT HOLE」の意味を説明するための辞書の一部である。 2 特許異議申立理由の概要 申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)甲1を主たる証拠とした新規性の欠如 本件特許の請求項1ないし3、7、8及び10ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書3(4)ウ(当審注;第52頁以降)(ア-1)、(イ-1)、(ウ-1)、(キ-1)、(ク-1)、(コ-1)、(サ-1)及び(シ-1))。 (2)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如 本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明、及び甲2ないし甲8に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書3(4)ウ(当審注;第52頁以降)(ア-1)、(イ-1)、(ウ-1)、(エ-1)、(オ-1)、(オ-2)、(カ-1)、(カ-3)、(キ-1)、(ク-1)、(ケ-1)、(コ-1)、(サ-1)、(シ-1)、(ス-1)、(セ-1)、(ソ-1)及び(ソ-3))。 (3)甲2を主たる証拠とした新規性の欠如 本件特許の請求項1、3、7、8及び12に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書3(4)ウ(当審注;第52頁以降)(ア-2)、(ウ-2)、(オ-2)、(キ-2)、(ク-2)及び(シ-2))。 (4)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如 本件特許の請求項1、3、7、8、11及び12に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明、及び甲1、甲3ないし甲8に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書3(4)ウ(当審注;第52頁以降)(ア-2)、(ウ-2)、(キ-2)、(ク-2)、(サ-2)及び(シ-2))。 (5)甲3を主たる証拠とした進歩性の欠如 本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲3に記載された発明、及び甲1、甲2、甲4ないし甲8に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書3(4)ウ(当審注;第52頁以降)(ア-3)、(イ-2)、(ウ-3)、(エ-2)、(オ-3)、(カ-2)、(カ-3)、(キ-3)、(ク-3)、(ケ-2)、(コ-2)、(サ-3)、(シ-3)、(ス-2)、(セ-2)、(ソ-2)及び(ソ-3))。 3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 令和4年3月25日付け取消理由通知(決定の予告)において記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)甲1を主たる証拠とした新規性の欠如 令和4年1月6日付け訂正請求により訂正された本件特許の本件特許の請求項1ないし3、7、8及び10ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (2)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如 令和4年1月6日付け訂正請求により訂正された本件特許の請求項1ないし3、6ないし8、10ないし12及び15に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明、及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (3)甲2を主たる証拠とした新規性の欠如 令和4年1月6日付け訂正請求により訂正された本件特許の本件特許の請求項1ないし3、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (4)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如 令和4年1月6日付け訂正請求により訂正された本件特許の請求項1ないし3、7、8、10及び11に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明、及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 4 証拠の記載 事案に鑑み、以下では証拠のうち、甲1ないし甲8及び甲11についてみる。 (1)甲1 後記(9)に示す甲11の記載より、甲1に記載される内容は、本件特許の出願がされた令和2年7月14日より前の、平成30年(2018年)3月に、頒布され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認める。 ア 記載事項 甲1には、次の記載がある(括弧で付した仮訳は、申立人提出の抄訳による。また、下線は当審で付した。以下、同様。)。 (ア)第2頁本文第2段落 「 [図:0001392002000001.jpg] 」 (現在、新規の風力発電施設の開発で設置されている洋上風力タービンの大きさでは、予め杭を打設するジャケットの設置が非常に拡張された選択肢となっており[9]、特に、長さ30m、直径2~3mの杭を、海底線から4~5mしか出なくなるまで海底に打設している。杭が海底に設置されると、いよいよジャケット脚部の設置に移行する[10]。この作業には、これらの構造物の寸法と重量のため、重量物運搬船が広く使用されており[11,12]、構造物が海面上へ案内されると、すでに設置されている杭に固定されるまで、海に降下し始める[13]。次の段階は、両方の構造物(杭とジャケット)をグラウトで固定することである。グラウトは、ジャケットの脚部の下部に予め設置されたグラウトライン、ジャケット脚部と杭の境界周りの環状空間に沿って、またスタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間(通常はmm単位の距離をいう)に注入される。) (イ)第3頁本文 「 [図:0001392002000002.jpg] 」 (2. 実験装置と方法 英国リビングストンにあるファウンドオーシャンの洋上サービス基地で行われた本実験は、ウィキンガー風力発電変電所の海上変電所プラットフォームにおいて、提案されたグラウト注入システムを、合理的に実行可能な範囲で再現するために設定された。 2.1. 提案された方法 ジャケットと杭の接合部は、グラウトが注入された環帯をなしており、MasterFlow9500グラウトが用いられている(このグラウト材は、現場での立方体圧縮強度が少なくとも80MPaという高強度のものでなければならないため)。ジャケットの設置のためのグラウト注入システムが設計された。ジャケット脚部には、次のものが装備されている: ・フレキシブルホース-グラウトライン: 装備台(平均海面水位 +7.00m)のグラウトポンプからグラウトを通過させ、固定グラウトラインに接続する地点(平均海面水位 約-32.70m)で終端する。 ・固定パイプ-グラウトライン: フレキシブルグラウトラインからグラウトコンパートメント(杭とジャケット脚部の間の環状空間とその下の空洞(掘削土))内にグラウトを流し続ける。固定パイプには、ホースを接続するための溝付き接続部が設けられている。 ・溢出管(flooding pipe): スタンビングコーンの開始位置からのジャケット脚部の内側から接続され、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端する。脚部の上部には直径120mmの二つのベントホールがあり、それが、スタンビングコーンと杭の突出部への浸水を可能としている。 個々のジャケット脚部には、グラウトライン1とグラウトライン2の二つのグラウトラインが設けられている。グラウトライン1は、スタビングコーンの十字部(stabbing cross)の底部で終わり、四分円のそれぞれに一つずつの合計四つのフレキシブルホースにより空洞内に突き出し、スタビングコーンの十字部の周囲に均一で、隙間のない分布を確保する。これらのホースは、所望の「自由落下」の高さ(図2Bの寸法Z)を達成するために切り揃えられる。グラウトライン2は、環状空間の基部の環状線で終わる。次の区画が定義される:浸水区画、グラウト環状空間、ジャケット脚部内から閉止板までの空間、および空洞(グラウト環状空間の下から杭内の掘削土レベルまでの範囲)。) (ウ)第4頁 「Fig.2: Grouting system」 「 [図:0001392002000003.jpg] 」 (第2図 グラウト注入システム(Fig.2:Grouting system) ベントホール(VENT HOLE) 溢出管(FLOODING PIPE) グラウト(GROUT) 泥(MUD) フレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)) (エ) 上記(ア)及び(イ)の記載も踏まえると、上記(ウ)の第2図より、次の事項が看取される。 ・海底に打設される杭にグラウトで固定されるジャケット脚部は、杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さい。 ・杭の内側の泥(MUD)の上面は、杭の外側の泥(MUD)の上面より低く、杭の内側におけるジャケット脚部の底部は、杭の外側の泥(MUD)の上面より低い位置まで挿入されている。 ・グラウト注入システムは、ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)を有する。 ・グラウトは、杭とジャケット脚部との間の環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近まで注入される。 ・環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚の内側から接続される溢出管(flooding pipe)は、環状空間からジャケット脚の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端する。 イ 甲1に記載された発明 上記アより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、「ジャケット」、「ジャケット脚」、「ジャケット脚部」及び「脚部」は、同じ部材を指すことが明らかであるから、「ジャケット脚部」に表記を統一した。 <甲1発明> 「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物であり、 海底に打設される杭と、打設された杭に設置されるジャケット脚部とをグラウトで固定した構成を有し、 ジャケット脚部は、杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さく、 杭の内側の泥(MUD)の上面は、杭の外側の泥(MUD)の上面より低く、杭の内側におけるジャケット脚部の底部は、杭の外側の泥(MUD)の上面より低い位置まで挿入されており、 グラウト注入システムは、ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)を有し、 グラウトは、杭とジャケット脚部との間の環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近まで注入され、 ジャケット脚部の上部にはベントホールがあり、それが、スタンビングコーンと杭の突出部への浸水を可能としており、 環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)は、環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端する、 杭とジャケット脚部とを含む構造物。」 また、上記ア(ア)に設置の順序が記載されていることを踏まえると、上記アより、甲1には、次の方法の発明(以下、「甲1方法発明」という。)も記載されている。 <甲1方法発明> 「海底に杭を打設し,杭が海底に設置されると、ジャケット脚部を降下させ、グラウト注入システムで杭とジャケット脚部の間の環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内とにグラウトを注入して、杭とジャケット脚部とをグラウトで固定する、 甲1発明の構造物の設置方法。」 (2)甲2 ア 記載事項 甲2には、次の記載がある。 (ア)「【0009】 クレームされた発明と一致した例示的な実施形態において、上部杭と下部杭との間に形成された環状空間に注入されたグラウトによって接続される管杭に関して説明する。しかし、不必要にクレームされた発明の実施形態を不明瞭にしないために、以下の説明では、概略化した又はブロック図の形で示されたよく知られている構造及び装置の詳細を省略する。説明上、例示的な実施形態の完全な理解を提供するために数々の特定の詳細を記載している。これらの特定の詳細を越えて様々な方法で実施形態を実施できることが理解されよう。さらに、図には例示的な距離、寸法、及び規模を示しているが、ここに示された装置や方法の距離、寸法、及び規模は、石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含みうるいかなる具体的な実施例に応じて変えることができることが理解されよう。 【0010】 図1は、一般的な海底テンプレートの構造形式1を表し、例示的な実施形態のグラウト杭の接合部と打ち込み杭とを含んでいる。具体的には、全長3を有する斜管杭2は、海底面5より下に根入れ長4を有しており、水面6の上方に延びている。部分的に挿入されたもう1つの管杭は、下部杭7、上部杭8、及び下部杭7と上部杭8とを接続する杭接合部(杭継手)9を有することを示し、上部杭8の頂部に結合した杭うちハンマー10による打ち込み力を用いて打ち込みを行う。打ち込み力は、例えば、ハンマー10による上部杭8に対する複数回にわたる打撃によって発生する複数の打ち込み力である。本発明の杭及び接合方法は、鉛直の杭と斜めの杭との両方において用いることができる点に留意すべきである。 【0011】 図2は、クレームされた、上部杭8を有するグラウト杭の例示的な実施形態における切欠横断面図である。上部杭8は、一体式の打ち込みヘッドすなわち打ち込み部11を有し、打ち込み部11は、杭接合部9で接触面60を形成するように、下部杭7の上に取り付けられている。打ち込みヘッド、すなわち打ち込み部11は、杭接合部9の強度が上部杭8における杭接合部9の上方及び下方にあたる部分よりも強くなるように上部杭8に一体化して形成されている。例えば、本実施形態では、打ち込み部11は、杭接合部9における接触面60の位置及び接触面60よりもすぐ上方の位置に放射状に配置された壁で形成される。また、打ち込み部11は、接触面60よりも長手方向下方に所定の長さで形成されており、その部分はスタッブガイド12(後述)の壁の厚さよりも厚く形成されていることが好ましい。また、上部杭8の上部よりも打ち込み部11の強度を強くして、ハンマー10によって生じた打ち込み力に耐え、打ち込み力を下部杭7へと効果的に加え、伝達し、分散するのに必要な強度を与えるのが好ましい。本実施形態では、スタッブガイド12及び打ち込み部11は、製造時のフライス作業によって、適切な寸法となっている一体型の管から形成されている。なお、図5a~図7のもう一つの例示的な実施形態では、打ち込み部及びスタッブガイドは別々に形成されており、例えば、現場に運ぶ前の製造段階で、打ち込み部とスタッブガイドとを溶接して接続し、一体化することにより上部杭を形成し、他の管に接続する構成とすることができる。 【0012】 本実施形態では、下部杭7は、基端部50、基端開口部52、内壁すなわち内表面54、及び内孔56を有する。上部杭8は、先端部、即ち、杭スタッブ部(スタッブガイド)12を有する長方形状の円筒体で形成されており、杭スタッブガイド12はスタッブコーン13を有し、下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成する。実施形態では、スタッブコーン13は、所定の位置に杭スタッブガイド12を導くために、下部杭7の内表面54に溶接されたセントラライザー14の下方へと延設されている。一般的な摺動式のグラウトのシール15は、グラウトの一般的なシールプロテクターのシム16の上方に設けられており、環状空間17の下端部を密封する。スタッブコーン13は、流体をスタッブガイド12内に流すための開口部を有する。打ち込み部11の外径は、杭スタッブガイド12の外径よりも大きく、打ち込み部11は、グラウト杭の長手方向軸と交差する方向に延設され、下部杭7の基端部50に環状接触又は当接するように下部杭7の基端部50と面する環状ランド62を有する。 【0013】 グラウトディストリビュータアセンブリ70は、グラウトを受け取り、環状空間17内にグラウトを導くために、上部杭8の杭スタッブガイド12の中に取り付けられている。グラウトディストリビュータアセンブリ70は、スタッブガイド12の内表面74にしっかりと連結された上部アセンブリ72と、上部アセンブリ72から延設された下部アセンブリ76とを有する。上部アセンブリ72は、杭スタッブガイド12の内壁に、上縁でしっかりと(即ち、溶接されて)固定された支持コーン付きグラウト戻りシュート26を有する。また、上部アセンブリ72は、支持コーン付きグラウト戻りシュート26にしっかりと(即ち、溶接されて)固定され、下方へと延設されているグラウトラインレセプタクル24を有する。下部アセンブリ76は、ディストリビュータ20と、グラウトラインレセプタクル24とグラウトディストリビュータ20との間に延設された下降管23とを有する。ディストリビュータ20は、閉端部78と、端部78に形成された複数の出口80と、フレキシブルホース18とを有する。フレキシブルグラウトホース18は、例えば、ねじ込み継手(threadedfittings)のような接続部21を複数有し、各接続部21は、一端を出口80に、他端を杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19に各々接続されている。下部杭7に対して上部杭8による打ち込み力を与える間、フレキシブルホース18により、下降管23及びディストリビュータ20が杭スタッブガイド12に対して、軸方向に動くことが可能なる。杭スタッブガイド12の内壁に溶接などによって固定され、その中に形成された流路を有するグラウトディストリビュータガイドプレート25により、グラウトディストリビュータ下降管23は側方から支えられている。ガイドスリーブ25aは流路に取り付けられ、プレート25に固定されているが、下降管23の軸方向への移動を妨げないように、下降管23を横方向に支える大きさに定めてられており、それによって、スリーブ25aを介してグラウトディストリビュータ下降管23を上下方向に摺動することができる。従って、下降管23の下部アセンブリ76は、例えば、溶接等により、スタッブガイド12の下部と厳格には連結されておらず、スリーブ25aによって側方に/横方向に支えられた状態で、フレキシブルホース18によって連結されている。従って、打ち込み力に起因して応力波が生じたことによるスタッブガイド12と下部アセンブリ76との間の軸方向における相対的な移動は、自由に(または、制限なく)行うことができるので、その移動によって構成要素への損傷を引き起こす原因となる応力波が発生するおそれは低くなり、溶接接続を行った場合の損傷の発生を回避することができる。また、グラウトディストリビュータ下降管23の長さは、グラウトラインアセンブリ36(後述)を杭から抜き出した後、下部杭7と杭スタッブガイド12との間の環状空間17からグラウトが逆流するのを防ぐことができる長さに決定する。 【0014】 スタッブコーン13が水面6の下方にあるとき、挿入時及び打ち込み時にスタッブガイド12内を水が流れるように、支持コーン付きグラウト戻りシュート26及びグラウトディストリビュータガイドプレート25に水抜き用の割止め孔27が設けられている。また、杭を挿入するときの抵抗による水圧の発生や水圧の上昇を防止するとの観点から、シュート26及びプレート25にある各々の割止め孔27の流路断面積の合計が、スタッブガイド12内を水が自由に流動するのに十分な大きさとなるように、割止め孔27の大きさを決定する。また、複数のグラウト戻りポート28が、杭スタッブガイド12の周りであって、環状空間17の頂部付近にある支持コーン付きグラウト戻りシュート26の上方かつランド62の下方に並べて形成されており、グラウトはスタッブガイド12内に流れ出て、外表面でグラウトを回収して後の検証に用いるための収集容器(後述)に流れ込む。溶接ビード29は、グラウトされる環状空間の長さを最短にする継目歯形(shearkey)として機能するように、下部杭7の内壁及び杭スタッブガイド12の外壁に用いられる。 【0015】 図3では、グラウトライン31の針状先端部30の切欠横断面図を示しており、グラウトライン31の針状先端部30は、上部杭8の開端へと挿入され、下部杭7の内孔56へと移動し、グラウトラインレセプタクル24と下降管23とディストリビュータ20の閉端部78と結合する。針状先端部30の底部は、隙間32を有し、隙間32により、グラウトは細長部39から流れ出て、閉端部78に流れ込み、その後、複数の出口80に流れ込む。先端部30の先端は、先端部30の挿入時や回収時/抜き出し時に、先端が上部杭8や水抜き用の割止め孔27に起因して動けなくなったり引っかかるのを防止する先端ガード33によって保護される。グラウト試料収集容器34は、針状先端部30の壁の外表面に溶接されており、これにより、戻りポート28を介して環状空間17から戻ってきたグラウトを収集する環状ギャップ、または容器の空洞が形成され、外表面でグラウトが回収される。その後、グラウト強度の後の検証を行うために、円柱供試体に、回収されたグラウト試料を移すことができる。グラウト試料収集容器34の頂部には、グラウトを環状空間内で循環させて、グラウトラインレセプタクル24とグラウト試料収集容器34との間に形成された空間を通ってグラウトが逆流するのを防ぐために、一般的なグラウトワイパブレードのシール35が設けられている。シールプロテクターシム40は、先端部30の移動時に、他の部品を撓ませるために、シール35の上下に用いられており、その結果、シールプロテクターシム40によって、不注意に起因するシール35の損傷やシール35の除去という不都合の発生を防止する。 【0016】 図4a~dでは、例示的な実施形態におけるグラウトを注入する手順について一連の図を示している。図4aに示されているように、グラウトラインアセンブリ36は、ホース39によりグラウトポンプ37に連結されており、上部杭8の上方に持ち上げられている。グラウトラインアセンブリ36は、先端部30、グラウト試料収集容器34、及び針状先端部30をグラウトラインレセプタクル24と一直線にするための、柔軟性を有するクランプ式セントラライザー38を有する。そして、このセントラライザー38により、グラウトラインアセンブリの挿入時及び回収時に、杭に対してグラウトラインアセンブリ36が詰まってしまうという不都合の発生を低減することが可能になるとともに、挿入時にグラウトレセプタクルに対する先端部30の位置合わせを容易に行うことが可能になる。また、グラウトラインアセンブリ36は、先端部30がグラウトラインレセプタクル24と結合する(図4c)まで、上部杭8に挿入される(図4b)。グラウトは、その後、グラウトポンプ37からグラウトラインアセンブリ36を通して、下部杭7の内壁と杭スタッブガイド12の外壁との間に形成された環状空間17に送りこまれる。そして、溢れ出たグラウトは、グラウト試料収集容器34内に収集される。予め測定した量のグラウトを送りこんだ後、グラウトポンプ37を停止し、グラウトラインアセンブリ36を上部杭8から抜き出す(図4d)。なお、グラウト試料収集容器34内に収集されたグラウトは、検査のために取り除かれる場合がある。」 (イ)図1 「 [図:0001392002000004.jpg] 」 (ウ)図2 「 [図:0001392002000005.jpg] 」 (エ)図4 「 [図:0001392002000006.jpg] 」 (オ)図1、図2及び図4より看取される事項 上記(ア)の記載を踏まえると、上記(イ)の図1より、下部杭7の下端は、海底面5より下まで打ち込まれることが、看取される。 上記(ア)の記載を踏まえると、上記(ウ)の図2より、杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19は、グラウトのシール15より上で環状空間17の下端近くにつながっていることが、看取される。 上記(ア)の記載を踏まえると、上記(ウ)の図2及び上記(エ)の図4(c)より、グラウト試料収集容器34が、上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置されることが、看取される。 イ 甲2に記載された発明 上記アより、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。なお、「戻りポート28」と「グラウト戻りポート28」とは同じものを指すことが明らかであるから、「グラウト戻りポート28」に表記を統一した。 <甲2発明> 「石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含む海底テンプレートの構造形式であり、 海底テンプレートの構造形式はグラウト杭を含み、 グラウト杭は、 一体式の打ち込みヘッドすなわち打ち込み部11を有し、打ち込み部11は、杭接合部9で接触面60を有するように、下部杭7の上に取り付けられる上部杭8と、 上部杭8の打ち込み力が伝達され、下端が海底面5より下まで打ち込まれる、下部杭7とを有し、 上部杭8は、先端部、即ち、杭スタッブ部(スタッブガイド)12を有する長方形状の円筒体で形成されており、杭スタッブガイド12はスタッブコーン13を有し、下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成し、 グラウトのシール15は、環状空間17の下端部を密封し、 スタッブコーン13が水面6の下方にあるとき、挿入時及び打ち込み時にスタッブガイド12内を水が自由に流動するようなっており、 環状空間17内にグラウトを導くために、上部杭8の杭スタッブガイド12の中に取り付けられている、グラウトディストリビュータアセンブリ70は、グラウトライン31の針状先端部30が結合されグラウトが流れ込む閉端部78に複数の出口80を有し、フレキシブブルホース18の一端が出口80に、他端が杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19に接続されており、 グラウト孔19は、グラウトのシール15より上で環状空間17の下端近くにつながっており、 杭スタッブガイド12の周りであって、環状空間17の頂部付近には、グラウトがスタッブガイド12内に流れ出る複数のグラウト戻りポート28が形成されており、 グラウト試料収集容器34が、上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置され、 グラウトは、下部杭7の内壁と杭スタッブガイド12の外壁との間に形成された環状空間17に送りこまれ、溢れ出たグラウトは、グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻ってきたグラウトを収集するグラウト試料収集容器34内に収集される、 海底テンプレートの構造形式。」 また、上記アより、甲2には、次の方法の発明(以下、「甲2方法発明」という。)が記載されている。 <甲2方法発明> 「上部杭8を下部杭7の上に取り付けて、下部杭7の下端を海底面より下まで打ち込み、 グラウト試料収集容器34が、上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置され、 グラウトを環状空間17に送りこみ、溢れ出たグラウトを、グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻ってきたグラウトを収集するグラウト試料収集容器34内に収集することを含む、 甲2発明の海底テンプレートの構造形式におけるグラウト杭の設置方法。」 (3)甲3 ア 記載事項 甲3には、次の記載がある。 (ア)「【0004】このジャケットは、鉛直および鉛直に近い斜方向の複数の鋼管からなるレグ4と、水平材5aおよび斜材5bのブレース5とによって構成されたものであり、陸上ヤードで製作・組立られた後、バージによって建設場所迄移送される。建設場所では、小型ジャケットの場合は、フローティングクレーン等の揚重機で吊上げられて海底1aに立設される。大型ジャケットの場合は、レグ4の上端部と下端部に蓋を設けて密閉して海中に滑落させ、横向きに浮上させた後、レグ4内に注水して浮力を減じるとともに揚重機を使用して立設する。 ・・・・ 【0019】 【実施例】以下、本発明の実施例について添付図を参照して説明する。図1~図6は水中トラスの骨組構造物に適用した本発明の第1実施例であり、図1は該骨組構造の側面図、図2はその平面図である。図3は本発明の要部である杭と骨組構造体の固定部の詳細を示す。 【0020】水底地盤1の所定位置にあらかじめ打設された複数の杭2(鋼管杭)は、上端が水底地盤1a面近傍の一定高さに揃えられており、その上部には、レグ4(鉛直材)とブレース5(水平材5a、斜材5b)を組合せた水中トラスの骨組構造体3が固定されている。 【0021】杭2と骨組構造体3の固定手段として、図3に示すように骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4aを杭2の頭部に所定長(L)挿入し、杭2の頭部とレグ接続部4aとの隙間11にモルタルまたはコンクリート等のグラウト材6を充填している。ここで、杭2の頭部とレグ接続部4aの接続長さ(L)は、骨組構造体3に作用する波力、潮力、その他の外力を杭2に伝達させるに必要な設計結合長を前記作用項で説明した算定式によって決定し、これ以上とする。 ・・・・ 【0024】図中7は、あらかじめ打設された杭2の頭部に骨組構造体3を設置するための支持材7であり、杭2の外径より大きい外径のフランジ8が補強リブ9によってレグ接続部4aの上端に溶接されている。 【0025】この支持材7のフランジ8には、前記グラウト材6を注入するための注入口15と排水口16が設けられている。また、骨組構造体3のブレース5a,5bとレグ4が交差する格点部4bのレグ4内には、過大な集中応力が作用するための補強用インナーリング13が溶接されている。 【0026】図中10は、杭2を所定位置に正確に打設するためのテンプレートであり、図5に示すようにH型鋼10a,10b,10cを縦・横に組合せて杭2の配置に対応したガイド枠10dを形成している。このテンプレート10は、杭2の打設に先立って水底地盤上1aに設置され、杭2はガイド枠10d内に挿入して打設される。 【0027】図4は本発明の水中骨組構造物の施工途中の側面図を示す。本発明の水中骨組構造物の施工は以下の手順で行う。 【0028】(1) 建設場所の水底地盤上1aに、打設される杭配置に対応したガイド枠10dを設けたテンプレート10を設置し、このガイド枠10d内に杭2を挿入してフローティングハンマーや水中ハンマーによって所定位置に杭2を打設する。なお、ガイド枠10dはテンプレート10の他、仮設杭等で設けてもよい。打設杭2は上端高さを水底面1a近傍の所定の高さに一定に揃える必要がある。この手段としては、杭打時の最終打止めにより行うか、または打設後水中切断によって行う。打設後、杭頭部に管内土砂がある場合は、打設杭の管内土砂を管上端から骨組構造体3のレグ接続部4aが挿入される長さ(L)以上に掘削排除する。 【0029】(2) 次に、陸上ヤード等で製作・組立され、パージ等で移送された骨組構造体3を揚重機で吊上げ、所定位置に打設された前記杭2の頭部にレグ接続部4aを合致させて吊下し、所定長(L)挿入する。この際、レグ接続部4aの上端に杭の外径より大きい外径のフランジ8等からなる支持材7を設けてあるので、所定長挿入された段階で杭上端に当接することによって自動的に支持されることになり、作業が容易にできる。 【0030】(3) 杭2上への骨組構造体3の設置が完了したら、レグ4と杭2の固定作業を行う。この固定手段は、杭頭部の所定長(L)において杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11に充填したモルタル又はコンクリートのグラウト材6であり、グラウト材6は前記支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され、置換水は排水口16から排除される。」 (イ)図1 「 [図:0001392002000007.jpg] 」 (ウ)図3 「 [図:0001392002000008.jpg] 」 (エ)図より看取される事項 上記(ア)の記載を踏まえると、上記(ウ)の図3より、排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出されることが、看取される。 イ 甲3に記載された発明 上記アより、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。なお、「隙間11」と「間隙11」とは同じものを指すことが明らかであるから、以下では「間隙11」に表記を統一した。 <甲3発明> 「海底1a等の水底地盤1にあらかじめ打設された複数の杭2の上部に、レグ4とブレース5を組合せた水中トラスの骨組構造体3が固定された、水中トラスの骨組構造物であり、 杭2と骨組構造体3の固定手段として、骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4aを杭2の頭部に所定長挿入し、杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11にグラウト材6を充填し、 杭2の頭部に骨組構造体3を設置するための支持材7として、杭2の外径より大きい外径のフランジ8がレグ接続部4aに溶接されており、支持材7が、杭2の上端に当接することによって支持され、 フランジ8には、グラウト材6を注入するための注入口15と排水口16が設けられており、 杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11に充填されるグラウト材6は、支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され、置換水は排水口16から排除され、 排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される、 水中トラスの骨組構造物。」 また、上記アより、甲3には、次の方法の発明(以下、「甲3方法発明」という。)が記載されている。 <甲3方法発明> 「甲3発明に係る水中トラスの骨組構造物の施工方法であり、 海底1a等の建設場所の水底地盤上1aに杭2を打設し、 次に、骨組構造体3を、杭2の頭部にレグ接続部4aを合致させて吊下し、所定長挿入し、 レグ接続部4aに設けた、杭の外径より大きい外径のフランジ8からなる支持材7が、杭2の上端に当接することによって支持され、 杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11に充填するグラウト材6は、支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され、置換水は排水口16から排除され、 排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される、 甲3発明に係る水中トラスの骨組構造物の施工方法。」 (4)甲4 ア 記載事項 甲4には、次の記載がある。 (ア)「【0010】 請求項1に記載の発明の水上構造物における脚部と鋼管杭との接合方法は、水上構造物を支持する中空断面形状の脚部を、水底地盤に支持され、前記脚部の内径より小さい外径の鋼管杭の上方寄りの区間の周囲に配置し、この脚部の下端部の内周面とこれに対向する前記鋼管杭の外周面のいずれか一方に装着されて他方に密着し、周方向に連続する、弾性を有するシール材の上にグラウト材を充填し、前記脚部を前記鋼管杭に接合する方法であり、 前記脚部の、前記鋼管杭の周囲に位置する区間に形成された注入口から前記鋼管杭の外周面と前記脚部の内周面との間に、前記シール材が埋設される高さまで1次グラウト材を注入して前記脚部の周方向に行き渡らせ、前記鋼管杭の周囲を周回した前記1次グラウト材が硬化し、前記シール材が前記脚部の周方向に前記1次グラウト材中に埋設された後、前記1次グラウト材の天端上に前記注入口から2次グラウト材を注入し、前記脚部の周方向に行き渡らせることを構成要件とする。 ・・・・ 【0036】 1次グラウト材61の硬化後、2次グラウト材62は脚部1と鋼管杭5との重複区間の全長に充填されるため、2次グラウト材62の注入は2次グラウト材62が鋼管杭5の上端から鋼管杭5の内部に流入するまで継続される(請求項3)。2次グラウト材62の注入管2を通じての注入に伴い、2次グラウト材62の上端(天端)は鋼管杭5の外周面と脚部1の内周面との間を上昇するため、上昇する程、注入圧力も上昇するが、鋼管杭5の上端にまで上昇しきったときに、注入圧力の上昇はなくなり、一定になるため、2次グラウト材62の上端が鋼管杭5の上端に到達し、鋼管杭5の上端から鋼管杭5の内部に流入し始めたことは、注入圧力の上昇がなくなることで、確認(判断)される。 ・・・・ 【0057】 鋼管杭5に対する脚部1の鉛直方向の位置は、水底地盤に支持されている鋼管杭5上から降下させられる脚部1の内周面の、鋼管杭5の天端のレベルに対応した位置に鋼管杭5側へ突設されたブラケット4が鋼管杭5の天端(上端)上に載置され、下向きに係止することにより決まる。ブラケット4は例えば図3-(c)に示すように脚部1の内周面の周方向に複数箇所、均等に突設される。ブラケット4は鋼管杭5の天端の肉厚の範囲に載置されればよいが、図面では鋼管杭5の半径方向の脚部1の設置誤差に対応するためと、ブラケット4が載置された状態での脚部1の安定性を増すために、鋼管杭5の天端に内周側へ張り出すフランジ5aを形成し、このフランジ5a上にブラケット4を載置している。 【0058】 ブラケット4は鋼管杭5の天端に、または天端とフランジ5aに載置される載置部4aを有し、この載置部4aの、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間の空間に面する箇所に、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に充填されるグラウト材6を横溢(流出)させるための流出孔4bが形成される。図3-(c)ではグラウト材6横溢時の注入圧力の上昇を抑制するために、グラウト材6の横溢箇所が鋼管杭5の周方向に多数、分散するよう、鋼管杭5の周方向に多数の流出孔4bを配列させるために、ブロック状に形成されたブラケット4を多数、周方向にほとんど間隔を置かずに配列させているが、ブラケット4は環状に閉じた形状に形成されることもある。 ・・・・ 【0067】 2次グラウト材62は図2-(a)、図3-(a)に示すように硬化した1次グラウト材61の上に充填されていく。ここで、最終的に1次グラウト材61上に留まる2次グラウト材62が鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に元々存在している水と混合することによる希釈化を回避する上では、2次グラウト材62は図2-(b)に示すように先行材62aと後行材62bとに分割される。 【0068】 先行材62aは鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に先行して充填され、1次グラウト材61上の水を押し上げ、流出孔4bから流出させる働きをする。後行材62bは先行材62aの注入(充填)後に続いて注入され、先行材62aを押し上げることで、水を流出孔4bから流出させると共に、先行材62aをも流出孔4bから流出させる働きをし、自らは鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に留まる。先行材62aには水中不分離性を有するグラウト材の使用が適する。」 (イ)図2 「 [図:0001392002000009.jpg] 」 (ウ)図2より看取される事項 上記(ア)の記載を踏まえると、上記(イ)の図2より、脚部1の内周面の、鋼管杭5側へ突設されたブラケット4が鋼管杭5の天端(上端)上に載置され、ブラケット4の、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間の空間に面する箇所に、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に充填されるグラウト材6を上端から横溢(流出)させるための流出孔4bが形成されている場合、上端の流出孔4bから流出する2次グラウト材62の先行材62aは、図2(c)における脚部1の断面より左側である、脚部1内周面の中で、鋼管杭5の内部の側である左側へと流れることが、看取される。 イ 甲4に記載される技術的事項 上記アより、甲4には、以下の技術的事項(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されている。 <甲4技術的事項> 「水上構造物における脚部と鋼管杭との接合において、 水上構造物を支持する中空断面形状の脚部を、水底地盤に支持され、前記脚部の内径より小さい外径の鋼管杭の上方寄りの区間の周囲に配置し、 この脚部の下端部の内周面とこれに対向する前記鋼管杭の外周面のいずれか一方に装着されて他方に密着し、周方向に連続する、弾性を有するシール材の上に、シール材が埋設される高さまで1次グラウト材を注入して前記脚部の周方向に行き渡らせ、1次グラウト材が硬化した後、1次グラウト材の天端上に前記注入口から2次グラウト材を注入し、 2次グラウト材62を脚部1と鋼管杭5との重複区間の全長に充填する場合、2次グラウト材62の注入は2次グラウト材62が鋼管杭5の上端から鋼管杭5の内部に流入するまで継続され、 脚部1の内周面の、鋼管杭5側へ突設されたブラケット4が鋼管杭5の天端(上端)上に載置され、ブラケット4の、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間の空間に面する箇所に、鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間に充填されるグラウト材6を上端から横溢(流出)させるための流出孔4bが形成されている場合、上端の流出孔4bから流出する2次グラウト材62の先行材62aは、脚部1内周面の中で、鋼管杭5の内部の側へ流れる点」 (5)甲5 甲5には、次の記載がある。 ア 「【0003】 この工法でグラウトを注入する際には、例えば、図5に示すように、長手方向中途に注入口10を有する鞘管12を既設の杭11に外挿して、杭11の外周面と鞘管12の内周面とのすき間からグラウトGが流出しないように、グラウトシールカバー1を装着してから、注入口10からグラウトGを注入していた。 【0004】 このグラウトシールカバー1は、予め筒状に形成されており、鞘管12と既設の杭11とに跨って外周に装着され、上端部は上部締付け体7で鞘管12の外周面に、下端部は下部締付け体8で既設の杭11の外周面に締付けられて固定されている。」 イ 図5 「 [図:0001392002000010.jpg] 」 (6)甲6 甲6には、次の記載がある。 「【0011】 前記鋼管矢板井筒を構成する各鋼管は、内側の所定の高さに仕切りが設けられ、前記工程bで、前記仕切りの上方に前記脚部を構成する各鋼管の下部を差し込むことが望ましい。 仕切りを設けることにより、脚部を構成する各鋼管の差し込み長さを定めることができる。また、鋼管矢板井筒を構成する各鋼管の内周面と、脚部を構成する各鋼管の外周面との間にグラウトを注入する際に、グラウトの落下を防止できる。」 (7)甲7 甲7には、次の記載がある。 「【0002】 従来、橋梁や防波堤、桟橋、海上空港、石油掘削ジャケット等の海上構造物の基礎として、複数の管状の支柱を垂直材とし、梁や連結部材等を水平材としてやぐら状に組み立てられた基礎構造物が用いられている。このような基礎構造物は陸上で組み立てられた後、海中に沈められて海底地盤上に設置され、海上構造物を海中で支持している。 ところで、このような基礎構造物を海底地盤上に固定するために、一般的に、海底に沈められた基礎構造物の管状の支柱に鋼管杭等の杭を挿入して海底地盤に打ち込むと共に、支柱と杭との間隙部に通称グラウト材と呼ばれる充填材を注入し固化させる方法が用いられている。なお、このとき、支柱内部の支柱と杭との隙間に注入した充填材が支柱の下端部から海中に漏洩するのを防止するために、支柱と杭との間隙部に装着されるゴム製等の環状のシールが用いられている。 ・・・・。」 (8)甲8 甲8には、次の記載がある。 ア 段落[0001] 「 [図:0001392002000011.jpg] 」 ([0001] 本実用新案は、主に海洋工学技術の分野において、カテナリーバックインサートパイル工法で構築された、特に海上の石油・ガスプラットフォーム、風力発電機、海上ブースターステーション用の傾斜杭の支柱と杭の接続構造に関するものである。) イ 段落[0016] 「 [図:0001392002000012.jpg] 」 ([0016] 本実用新案の傾斜杭用の杭・柱連結構造は、前述のように、傾斜杭と、この傾斜杭に上から下へ挿入される傾斜杭用の支柱とからなり、前記支柱は、支柱基部のガイドコーンの側面と傾斜杭の内側側壁との間に50~60mmの隙間を有し、前記支柱は、傾斜杭の外径よりも大きな外径を有する水平リングプレートと、この水平リングプレートの下部が溶接されている。前記傾斜杭には底面シール台が設けられており、前記底面シール台と前記傾斜杭の側壁は、前記傾斜杭内の前記底面シール台の下の空間を密封している。) ウ 段落[0030]-[0031] 「 [図:0001392002000013.jpg] 」 ([0030] 傾斜杭200には底部シール台が設けられており、底部シール台と傾斜杭200の側壁との間に底部シール台が形成されることで、傾斜杭200内の底部シール台より下の空間を密閉することができる。底部シール台は、傾斜杭200の内側の側壁に設けられた環状支持ブラケット211と、環状支持ブラケット211の上方に設けられたシール面212とからなり、シール面212の形状は、傾斜杭200の内側の断面と一致している。本実施形態では、封止面を円として設けているが、他の実施形態では、傾斜杭の内側側壁の断面の形状に応じて、正方形や三角形などの任意の形状の封止面として設けることも可能であり、いかなる形態の変形も本実用新案の保護範囲に入る。 [0031] 傾斜杭200の側壁には、支柱100の水平リングプレート131の近傍に、スラリー排出口221が設けられている。また、スラリーの排出口の位置は、強度やコストに応じて最適化することができ、傾斜杭の側壁だけでなく、水平リングプレートの近くに排出口を設けることもできる。) エ 図1 「 [図:0001392002000014.jpg] 」 オ 上記図1から看取される事項 上記アないしウの記載も踏まえると、上記エに示す図1より、杭・柱連結構造において、スラリーが導入される傾斜杭200内の領域の下端が、底部シール台のシール面212により密封されることが、看取される。 (9)甲11 甲11は、甲1の文献をダウンロードするWebページの印刷物であり、甲1の第1頁に記載されるホームページアドレス、タイトル及び著者名とともに、「MARCH 2018 -Volume:93」と記載されている。 第5 当審の判断 上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたので、本件訂正発明1ないし15について、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(上記第4の3)、または特許異議申立理由(上記第4の2)により、取り消されるべきか否かを、判断する。 1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1)甲1を主たる証拠とした請求項1ないし3、7、8及び10ないし12の新規性について(上記第4の3(1)) ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲1発明との対比 本件訂正発明1と、甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明1における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明1における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明1における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明1において、「グラウトが注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明1において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部の上部にはベントホールがあり、それが、スタンビングコーンと杭の突出部への浸水を可能として」いる構成と、本件訂正発明1において、「前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されて」いる構成とは、「前記脚には、貫通孔が形成されて」いる構成という点で、共通する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明1において、「注入部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部を「ジャケット脚部の内側」に導くものであるから、本件訂正発明1において、「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部」とは、「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部に注入する注入部」という点で共通する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記脚には、貫通孔が形成されており、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部を更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。 なお、以下では、甲1発明または甲1方法発明との相違点を「相違点A1」等、甲2発明または甲2方法発明との相違点を「相違点B1」等、甲3発明または甲3方法発明との相違点を「相違点C1」等と表記して、区別する。 <相違点A1> 「脚」に形成された「貫通孔」に関し、 本件訂正発明1においては、「前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、ジャケット脚部の内部に充填されていた海水を海洋に放出するとは特定されていない点。 <相違点A2> 「注入部」に関し、 本件訂正発明1においては、グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部を、脚内部の「下方」に注入することにより、「前記グラウトの海洋への排出を抑制する」ものであることが特定されているのに対し、 甲1発明においては、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」であり、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」している点。 (イ)本件訂正発明1と甲1発明との同一性 上記相違点A1及びA2のうち、上記相違点A2は実質的な相違点であるから、上記相違点A1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は甲1発明と同一ではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、いずれも、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、本件訂正発明1は、上記相違点A2において甲1発明と異なり、本件訂正発明1と甲1発明とは同一でないから、本件訂正発明1の構成を全て有する本件訂正発明2及び3は、その余の構成について検討するまでもなく、甲1発明と同一ではない。 ウ 本件訂正発明7について (ア)本件訂正発明7と甲1発明との対比 本件訂正発明7と、甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明7における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明7における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明7における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明7において、「グラウト」が「注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」により、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明7において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明7において、「変更部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部について、流れの向きを「ジャケット脚部の内側」に流れるように変更するものであるから、本件訂正発明7において、「前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」とは、「前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部」という点で共通する。 そうすると、本件訂正発明7と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径である脚であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部と、を備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明7と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A3> 「変更部」に関し、 本件訂正発明7においては、グラウトの流れの向きを変更することにより、「当該グラウトの海洋への排出を抑制する」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、「溢出管(flooding pipe)」について、グラウトの海洋への排出を抑制するものとは特定されていない点。 <相違点A4> 「杭の上端」近傍の構成として、 本件訂正発明7においては、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、「杭」の上端付近にそのような構成を有することは特定されていない点。 (イ)本件訂正発明7と甲1発明との同一性 上記相違点A3及びA4のうち、上記相違点A4は実質的な相違点であるから、上記相違点A3について判断するまでもなく、本件訂正発明7は甲1発明と同一ではない。 エ 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明7が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記ウのとおり、本件訂正発明7は、上記相違点A4において甲1発明と異なり、本件訂正発明7と甲1発明とは同一でないから、本件訂正発明7の構成を全て有する本件訂正発明8は、その余の構成について検討するまでもなく、甲1発明と同一ではない。 オ 本件訂正発明10について 本件訂正発明10は、本件訂正発明4、本件訂正発明5、または本件訂正発明9の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 後記2(1)ア(ア)、イ(ア)、及びウ(ア)に対比するとおり、本件訂正発明4、5及び9は、甲1発明とは相違点A7、A8またはA9を有し、本件訂正発明4、5及び9と甲1発明との相違点A7、A8及びA9はいずれも実質的な相違点であるから、本件訂正発明4、5または9の構成を全て有する本件訂正発明10は、本件訂正発明10における付加的構成について検討するまでもなく、甲1発明と同一ではない。 カ 本件訂正発明11について 本件訂正発明11は、本件訂正発明4、本件訂正発明5、本件訂正発明9または本件訂正発明10の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記オに指摘したとおり、本件訂正発明4、5、9及び10は、甲1発明とは相違点A7、A8またはA9を有し、本件訂正発明4、5、9または10と甲1発明との相違点A7、A8及びA9はいずれも実質的な相違点であるから、本件訂正発明4、5、9または10の構成を全て有する本件訂正発明11は、本件訂正発明11における付加的構成について検討するまでもなく、甲1発明と同一ではない。 キ 本件訂正発明12について (ア)本件訂正発明12と甲1方法発明との対比 甲1方法発明において、「海底に杭を打設」することは、本件訂正発明12において、「杭を海底に打設するステップ」に相当する。 甲1方法発明において、「杭が海底に設置されると、ジャケット脚部を降下させ」ることで、甲1発明における「杭とジャケット脚部との間の環状空間」を形成し、また「ジャケット脚部」が「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」を有することとなる構成は、本件訂正発明12において、「前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」、及び「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップ」に相当する。 甲1方法発明において、「グラウト注入システムで杭とジャケット脚部の間の環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内にグラウトを注入して、杭とジャケット脚部とをグラウトで固定する」構成は、甲1発明における「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」から「環状空間の上端付近まで」グラウトが注入され、グラウトの一部は、それ自体がジャケット脚部の内側に存在する「ジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」に流入することを踏まえると、本件訂正発明12において、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップ」とは、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップ」という点で共通する。 甲1方法発明における、「甲1発明の構造物の設置方法」は、本件訂正発明12における、「海洋構造物の施工方法」に相当する。 そうすると、本件訂正発明12と甲1方法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「杭を海底に打設するステップと、 前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップと、 を備える、海洋構造物の施工方法。」 そして、本件訂正発明12と甲1方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A5> 「通路」を通した「グラウトの一部」の「脚内部」への「注入」に関し、 本件訂正発明12においては、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトの一部を、「通路の外に出して」脚内部に注入することが特定されているのに対し、 甲1方法発明においては、甲1発明における「「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」であり、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」する「溢出管(flooding pipe)」を用いており、「海水に希釈されていない」グラウトを「溢出管(flooding pipe)」の「外に出して」ジャケット脚部の内部に注入するとは特定されていない点。 (イ)本件訂正発明12と甲1方法発明との同一性 上記相違点A5は実質的な相違点であるから、本件訂正発明12は甲1方法発明と同一ではない。 (2)甲1を主たる証拠とした請求項1ないし3、6ないし8、10ないし12及び15の進歩性について(上記第4の3(2)) ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲1発明との対比 本件訂正発明1と甲1発明とは、上記(1)ア(ア)に示した相違点A1及びA2において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 a 相違点A2について 事案に鑑み、上記相違点A2から判断する。 相違点A2は、再掲すると次のとおりである。 <相違点A2> 「注入部」に関し、 本件訂正発明1においては、グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部を、脚内部の「下方」に注入することにより、「前記グラウトの海洋への排出を抑制する」ものであることが特定されているのに対し、 甲1発明においては、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」であり、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」している点。 甲2には、上記第4の4(2)イに認定した甲2発明が記載されており、甲2発明は、「グラウト戻りポート28」により、「環状空間17に送りこまれ、溢れ出たグラウト」を「グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻」し、「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」する構成を有する。 しかしながら、甲2発明が有する「グラウト戻りポート28」は、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲2発明における「グラウト戻りポート28」は、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」とは、前提となる構造が異なっており、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」を、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲3には、上記第4の4(3)イに認定した甲3発明が記載されており、甲3発明は、「排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」という構成を有する。 しかしながら、甲3発明が有する「排水口16」は、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲3発明における「排水口16」は、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」とは、前提となる構造が異なっており、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」を、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲4には、上記第4の4(4)イに認定した甲4技術的事項が記載されており、甲4技術的事項は、「小さい外径の鋼管杭」に対して「脚部」が「鋼管杭の上方寄りの区間の周囲に配置」されている場合において、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)させるための流出孔4b」から流出する「2次グラウト材62の先行材62a」が、「周囲に配置」されている「脚部1内周面」の中で、「鋼管杭5の内部の側へ流れる」構成を有している。 しかしながら、甲4技術的事項が有する上記構成は、本件訂正発明1が有する「杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」という構成とは逆の関係を前提として、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)」する流体が「内部の側へ」流れることを示すにとどまるから、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲4技術的事項が有する上記構成は、甲1発明が有する「ジャケット脚部は、杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さく」という構成とは逆の関係を前提としているから、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」について、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲1発明において上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、たとえ甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲1発明において、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点A1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、いずれも、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、甲1発明において、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明1の構成を全て有する本件訂正発明2及び3の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明2及び3は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件訂正発明6について (ア)本件訂正発明6と甲1発明との対比 本件訂正発明6と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明6における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明6における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明6における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明6において、「グラウトが注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明6において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明6において、「注入部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部を「ジャケット脚部の内側」に導くものであり、また当該「グラウト」に先立ち、「環状空間」にあった海水、及び海水に希釈されたグラウトを「ジャケット脚部の内側」に導くことが明らかであるから、本件訂正発明6において、「(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部」に相当する。 そうすると、本件訂正発明6と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明6と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A6> 「グラウト充填空間の下部」に関し、 本件訂正発明6においては、「前記グラウト充填空間の下部には、前記杭に設けられたプレート受けに、溶接されることなく、置かれる仕切りプレートが設置され、前記杭に設けられたプレート受けに溶接されていない前記仕切りプレートの上面には、グラウトが注入される」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A6について判断する。 甲2ないし甲7には、上記第4の4(2)ないし(7)に示した事項が記載されるが、いずれも上記相違点A6に係る本件訂正発明6の構成を開示あるいは示唆するものではない。 甲8には、上記第4の4(8)に摘記した事項が記載されており、傾斜杭200用の底部シール台が環状支持ブラケット211及びシール面212とからなる構成が示されているが、傾斜杭用であること、及び、溶接の有無について特段記載がないことを考慮すると、甲1発明において上記相違点A6に係る本件訂正発明6の構成を採用することを示唆しているとはいえない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A6に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明6は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件訂正発明7について (ア)本件訂正発明7と甲1発明との対比 本件訂正発明7と甲1発明とは、上記(1)ウ(ア)に示した相違点A3及びA4において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 a 相違点A4について 事案に鑑み、上記相違点A4から判断する。 相違点A4は、再掲すると次のとおりである。 <相違点A4> 「杭の上端」近傍の構成として、 本件訂正発明7においては、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、「杭」の上端付近にそのような構成を有することは特定されていない点。 甲2ないし甲8には、上記第4の4(2)ないし(8)に示した事項が記載されているが、上記相違点A4に係る本件訂正発明7の構成は開示されていない。 また、杭の上端との高さの関係を考慮して「溢出管(flooding pipe)」を設けた甲1発明において、杭の上端付近に、上記相違点A4に係る本件訂正発明7の構成を追加することが、単なる設計事項であったことを示す証拠もない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。 b 小括 上記aのとおり、甲1発明において、上記相違点A4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点A3について判断するまでもなく、本件訂正発明7は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明7が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記エのとおり、甲1発明において、上記相違点A4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明7の構成を全て有する本件訂正発明8の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明8は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 本件訂正発明10について 本件訂正発明10は、本件訂正発明4、本件訂正発明5、または本件訂正発明9の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 後記2(1)ア、イ、及びウに示すとおり、本件訂正発明4、5及び9は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件訂正発明4、5または9の構成を全て有する、本件訂正発明10は、本件訂正発明10における付加的構成について判断するまでもなく、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ 本件訂正発明11について 本件訂正発明11は、本件訂正発明4、本件訂正発明5、本件訂正発明9または本件訂正発明10の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 後記2(1)ア、イ、及びウ、及び上記カに示すとおり、本件訂正発明4、5、9及び10は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件訂正発明4、5、9または10の構成を全て有する、本件訂正発明11は、本件訂正発明11における付加的構成について判断するまでもなく、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ク 本件訂正発明12について (ア)本件訂正発明12と甲1方法発明との対比 本件訂正発明12と甲1方法発明とは、上記(1)キ(ア)に示した相違点A5において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A5について判断する。 相違点A5は、再掲すると次のとおりである。 <相違点A5> 「通路」を通した「グラウトの一部」の「脚内部」への「注入」に関し、 本件訂正発明12においては、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトの一部を、「通路の外に出して」脚内部に注入することが特定されているのに対し、 甲1方法発明においては、甲1発明における「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」であり、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」する「溢出管(flooding pipe)」を用いており、「海水に希釈されていない」グラウトを「溢出管(flooding pipe)」の「外に出して」ジャケット脚部の内部に注入するとは特定されていない点。 甲1方法発明における「溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続」され、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」する構造であるから、「環状空間の上端より低い位置」で「溢出管(flooding pipe)」内に入った海水に希釈されていないグラウトについては、「杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」する箇所まで至らず、「溢出管(flooding pipe)」の外に出ないと解される。 そして、甲1発明において、「溢出管(flooding pipe)」を「溢出管(flooding pipe)」ではない異なる構成に変更すべき動機付けはない。 甲2ないし甲4には、上記第4の4(2)イ、(3)イ及び(4)イに認定した甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項が記載されているが、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、甲3発明における「排出口16」及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、上記ア(イ)において本件訂正発明1と甲1発明との相違点A2について述べたとおり、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」とは前提となる構造が異なるから、甲1方法発明における「溢出管(flooding pipe)」についても、上記相違点A5に係る本件訂正発明12の構成のように変更することを開示あるいは示唆するものではない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲1方法発明において、上記相違点A5に係る本件訂正発明1の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲1方法発明において、上記相違点A5に係る本件訂正発明12の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明12は、甲1方法発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ケ 本件訂正発明15について 本件訂正発明15は、本件訂正発明13または本件訂正発明14の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 後記2(1)エ及びオに示すとおり、本件訂正発明13及び14は、甲1方法発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件訂正発明13または14の構成を全て有する、本件訂正発明15は、本件訂正発明15における付加的構成について判断するまでもなく、甲1方法発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲2を主たる証拠とした請求項1ないし3、7及び8の新規性について(上記第4の3(3)) ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲2発明との対比 本件訂正発明1と、甲2発明とを対比する。 甲2発明において、「グラウト杭」を含む、「石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含む海底テンプレートの構造形式」は、本件訂正発明1における「海洋構造物」に相当する。 甲2発明において、「グラウト杭」が有する、「下端が海底面5より下まで打ち込まれる、下部杭7」は、本件訂正発明1において、「海底に打設された杭」に相当する。 甲2発明において、「下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成」する「上部杭8」の「先端部」は、「下部杭7」とは区別される部材であり、「石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含む海底テンプレートの構造形式」の支持部材の一つであることを踏まえると、本件訂正発明1において、「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲2発明において、「下部杭7の内壁と杭スタッブガイド12の外壁との間に形成された環状空間17」は、「グラウト」が「溢れ出」るまで「送り込まれ」るものであるから、本件訂正発明1において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され」る、「グラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当する。 甲2発明において、「グラウトライン31の針状先端部30が結合されグラウトが流れ込む閉端部78」が有する「複数の出口80」に「一端」が接続された「フレキシブルホース18」の「他端」が接続された、「杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19」は、本件訂正発明1において、「グラウトが注入」される「注入口」に相当する。 甲2発明において、「グラウト戻りポート28」は、上部杭8の「杭スタッブガイド12の周りであって、環状空間17の頂部付近」に形成されて「グラウトがスタッブガイド12内に流れ出る」ものであり、「環状空間17に送りこまれ、溢れ出たグラウト」が「グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻」り、「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」されるものであるから、本件訂正発明1における「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部」とは、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部に注入する注入部」という点で、共通する。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部に注入する注入部を更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。 <相違点B1> 本件訂正発明1においては、「前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されて」いることが特定されているのに対し、 甲2発明においては、「上部杭8」に、内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されているか否かは不明である点。 <相違点B2> 「注入部」による「グラウト」の「脚内部」への「注入」に関し、 本件訂正発明1においては、グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部を、前記脚内部の「下方」に注入することにより、「前記グラウトの海洋への排出を抑制する」と特定されているのに対し、 甲2発明においては、グラウト戻りポート28は、グラウト戻りポート28を介して戻ったグラウトを「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」するものであって、上部杭8内部の下方にグラウトを注入することでグラウトの海洋への排出を抑制するものではない点。 (イ)本件訂正発明1と甲2発明との同一性 上記相違点B1及びB2のうち、上記相違点B2は実質的な相違点であるから、上記相違点B1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は甲2発明と同一ではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、いずれも、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、本件訂正発明1は、上記相違点B2において甲2発明と異なり、本件訂正発明1と甲2発明とは同一でないから、本件訂正発明1の構成を全て有する本件訂正発明2及び3は、その余の構成について検討するまでもなく、甲2発明と同一ではない。 ウ 本件訂正発明7について (ア)本件訂正発明7と甲2発明との対比 本件訂正発明7と、甲2発明とを対比する。 甲2発明において、「グラウト杭」を含む、「石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含む海底テンプレートの構造形式」は、本件訂正発明7における「海洋構造物」に相当する。 甲2発明において、「グラウト杭」が有する、「下端が海底面5より下まで打ち込まれる、下部杭7」は、本件訂正発明7において、「海底に打設された杭」に相当する。 甲2発明において、「下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成」する「上部杭8」の「先端部」は、「下部杭7」とは区別される部材であり、「石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含む海底テンプレートの構造形式」の支持部材の一つであることを踏まえると、本件訂正発明7において、「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲2発明において、「下部杭7の内壁と杭スタッブガイド12の外壁との間に形成された環状空間17」は、「グラウト」が「溢れ出」るまで「送り込まれ」るものであるから、本件訂正発明7において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間」に相当する。 甲2発明において、「グラウトライン31の針状先端部30が結合されグラウトが流れ込む閉端部78」が有する「複数の出口80」に「一端」が接続された「フレキシブルホース18」の「他端」が接続された、「杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19」は、本件訂正発明7において、「グラウト」が「注入」される「注入口」に相当する。 甲2発明において、「環状空間17の下端近くにつながって」いる「グラウト孔19」から、「環状空間17内にグラウト」が「導」かれ、「環状空間17の頂部付近」で「グラウトがスタッブガイド12内に流れ出る」構成は、本件訂正発明7において、「注入口から注入されたグラウト」が「グラウト充填空間」を「流れる」構成に相当する。 甲2発明において、「グラウト戻りポート28」は、「杭スタッブガイド12の周りであって、環状空間17の頂部付近」に形成されて「グラウトがスタッブガイド12内に流れ出る」ものであり、環状空間17内を上方に流れたグラウトの流れの向きを変更して、「溢れ出たグラウト」を「グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻」し、「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」させるものであるから、本件訂正発明7における「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」とは、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部」という点で、共通する。 そうすると、本件訂正発明7と甲2発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部と、を備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明7と甲2発明とは、以下の点で相違する。 <相違点B3> 「変更部」に関し、 本件訂正発明7においては、グラウトの流れの向きを変更することにより、「当該グラウトの海洋への排出を抑制する」と特定されているのに対し、 甲2発明においては、グラウト戻りポート28は、グラウト戻りポート28を介して戻ったグラウトを、「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」するものである点。 <相違点B4> 「杭の上端」近傍の構成として、 本件訂正発明7においては、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」と特定されているのに対し、 甲2発明においては、「下部杭7」の上端付近に、そのような構成を有していない点。 (イ)本件訂正発明7と甲2発明との同一性 上記相違点B3及びB4は、いずれも実質的な相違点であるから、本件訂正発明7は甲2発明と同一ではない。 エ 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明7が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、本件訂正発明7は、上記相違点B3及びB4において甲2発明と異なり、本件訂正発明7と甲2発明とは同一でないから、本件訂正発明7の構成を全て有する本件訂正発明8は、その余の構成について検討するまでもなく、甲2発明と同一ではない。 (4)甲2を主たる証拠とした請求項1ないし3、7、8、10及び11の進歩性について(上記第4の3(4)) ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲2発明との対比 本件訂正発明1と甲2発明とは、上記(3)ア(ア)に示した相違点B1及びB2において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 a 相違点B2について 事案に鑑み、上記相違点B2から判断する。 相違点B2は、再掲すると次のとおりである。 <相違点B2> 「注入部」による「グラウト」の「脚内部」への「注入」に関し、 本件訂正発明1においては、グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部を、前記脚内部の「下方」に注入することにより、「前記グラウトの海洋への排出を抑制する」と特定されているのに対し、 甲2発明においては、グラウト戻りポート28は、グラウト戻りポート28を介して戻ったグラウトを「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」するものであって、上部杭8内部の下方にグラウトを注入することでグラウトの海洋への排出を抑制するものではない点。 甲1には、上記第4の4(1)イに認定した甲1発明が記載されており、甲1発明は、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)は、環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端する」構成を有する。 しかしながら、甲1発明が有する「溢出管(flooding pipe)」は、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」は、甲2発明における「グラウト戻りポート28」は、前提となる構造が異なっており、甲1発明における甲2発明における「グラウト戻りポート28」を、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲3には、上記第4の4(3)イに認定した甲3発明が記載されており、甲3発明は、「排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」という構成を有する。 しかしながら、甲3発明が有する「排水口16」は、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲3発明における「排水口16」は、甲2発明における「グラウト戻りポート28」とは、前提となる構造が異なっており、甲2発明における「グラウト戻りポート28」を、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲4には、上記第4の4(4)イに認定した甲4技術的事項が記載されており、甲4技術的事項は、「小さい外径の鋼管杭」に対して「脚部」が「鋼管杭の上方寄りの区間の周囲に配置」されている場合において、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)させるための流出孔4b」から流出する「2次グラウト材62の先行材62a」が、「周囲に配置」されている「脚部1内周面」の中で、「鋼管杭5の内部の側へ流れる」構成を有している。 しかしながら、甲4技術的事項が有する上記構成は、本件訂正発明1が有する「杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」という構成とは逆の関係を前提として、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)」する流体が「内部の側へ」流れることを示すにとどまるから、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲4技術的事項が有する上記構成は、甲2発明が有する「上部杭8は、・・・・下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成し」という構成とは逆の関係を前提としているから、甲2発明における「グラウト戻りポート28」について、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲2発明において上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲2発明において、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、たとえ甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲2発明において、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点B1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明、及び甲1、甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、いずれも、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、甲2発明において、上記相違点B2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明1の構成を全て有する本件訂正発明2及び3の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明2及び3は、甲2発明、及び甲1、甲3ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件訂正発明7について (ア)本件訂正発明7と甲2発明との対比 本件訂正発明7と甲2発明とは、上記(3)ウ(ア)に示した相違点B3及びB4において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 a 相違点B4について 事案に鑑み、上記相違点B4から判断する。 相違点B4は、再掲すると次のとおりである。 <相違点B4> 「杭の上端」近傍の構成として、 本件訂正発明7においては、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」と特定されているのに対し、 甲2発明においては、「下部杭7」の上端付近に、そのような構成を有していない点。 甲1及び甲3ないし甲8には、上記第4の4(1)及び(3)ないし(8)に示した事項が記載されているが、上記相違点B4に係る本件訂正発明7の構成は開示されていない。 また、「上部杭8」を「下部杭7」に取り付けて打ち込む甲2発明において、「下部杭7」の上端近傍の構成を、上記相違点B4に係る本件訂正発明7の構成とすることが、単なる設計事項であったことを示す証拠もない。 したがって、甲2発明において、上記相違点B4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。 b 小括 上記aのとおり、甲2発明において、上記相違点B4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点B3について判断するまでもなく、本件訂正発明7は、甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明7が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記ウのとおり、甲2発明において、上記相違点B4に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明7の構成を全て有する本件訂正発明8の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明8は、甲2発明、及び甲1、甲3ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件訂正発明10について 本件訂正前の請求項10は、請求項1ないし9のいずれか1項を引用していたところ、請求項10に係る特許について、令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した、甲2を主たる証拠とした進歩性欠如の取消理由は、請求項1または7を引用する請求項10に対するものであり、令和4年3月25日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した、甲2を主たる証拠とした進歩性欠如の取消理由についても、同様である。 本件訂正前の請求項4、5または9に係る発明について、甲2を主たる証拠とした進歩性欠如の取消理由は通知していないところ、上記第2の2(4)ア、(5)ア及び(9)アに示したとおり、本件訂正発明4、本件訂正発明5及び本件訂正発明9は、本件訂正前の請求項4、請求項5及び請求項9に係る発明を、他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、減縮したものであるから、本件訂正発明4、本件訂正発明5及び本件訂正発明9は、甲2を主たる証拠とした進歩性欠如の取消理由が通知されていない発明となっている。 そして、本件訂正発明10は、本件訂正発明4、本件訂正発明5または本件訂正発明9の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるから、本件訂正発明10は、本件訂正前の請求項10に係る特許について、取消理由通知(決定の予告)に記載した、甲2を主たる証拠とした進歩性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。 より具体的には、本件訂正発明4が有する「前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている」構成、本件訂正発明5が有する「前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられている」構成、及び、本件訂正発明9が有する「前記脚の周囲に設けられたグラウトシールと、前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える」構成は、少なくとも甲2発明との相違点となるところ、「上部杭8」を「下部杭7」に取り付けて打ち込み、「上部杭8」に「グラウト戻りポート28」を有する甲2発明において、本件訂正発明4、5または9が有する上記構成を備えるものとすることは、甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、開示あるいは示唆されていたものではない。 したがって、本件訂正発明4、5または9の構成を全て有する本件訂正発明10は、本件訂正発明10における付加的構成について判断するまでもなく、甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 本件訂正発明11について 本件訂正発明11は、本件訂正発明4、本件訂正発明5、本件訂正発明9または本件訂正発明10の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 そして、本件訂正発明4、5、9及び10は、上記オで示したとおり、甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件訂正発明4、5、9または10の構成を全て有する本件訂正発明11は、本件訂正発明11における付加的構成について判断するまでもなく、甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について (1)甲1を主たる証拠とした請求項4、5、9、13及び14の進歩性について(上記第4の2(2)のうち、上記1(2)で採り上げなかった請求項)) ア 本件訂正発明4について (ア)本件訂正発明4と甲1発明との対比 本件訂正発明4と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明4における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明4における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明4における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明4において、「グラウトが注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明4において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明4において、「注入部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部を「ジャケット脚部の内側」に導くものであり、また当該「グラウト」に先立ち、「環状空間」にあった海水、及び海水に希釈されたグラウトを「ジャケット脚部の内側」に導くことが明らかであるから、本件訂正発明4において、「(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部」を有し、「前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられて」いる構成に相当する。 そうすると、本件訂正発明4と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え、 前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、 前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられている、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明4と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A7> 「注入部」に関し、 本件訂正発明4においては、「前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A7について判断する。 甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続」されるものであるところ、甲1発明において当該「溢出管(flooding pipe)」の位置及び接続態様を変更する動機付けはない。 甲2ないし甲4には、上記第4の4(2)イ、(3)イ及び(4)イに認定した甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項が記載されているが、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、甲3発明における「排出口16」及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、上記ア(イ)において本件訂正発明1と甲1発明との相違点A2について述べたとおり、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」とは前提となる構造が異なるから、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」について、上記相違点A7に係る本件訂正発明4の構成のように変更することを開示あるいは示唆するものではない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲1発明において上記相違点A7に係る本件訂正発明4の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A7に係る本件訂正発明4の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明4は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明5について (ア)本件訂正発明5と甲1発明との対比 本件訂正発明5と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明5における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明5における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明5における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明5において、「グラウトが注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明5において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明5において、「注入部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部を「ジャケット脚部の内側」に導くものであり、また当該「グラウト」に先立ち、「環状空間」にあった海水、及び海水に希釈されたグラウトを「ジャケット脚部の内側」に導くことが明らかであるから、本件訂正発明5において、「(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部」に相当する。 そうすると、本件訂正発明5と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明5と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A8> 本件訂正発明5においては、「前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられている」のに対し、 甲1発明においては、そうなっていない点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A8について判断する。 甲2、甲3及び甲4には、上記第4の4(2)イ、(3)イ及び(4)イに認定した甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項が記載されているが、甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項は、上記相違点A8に係る本件訂正発明5の構成を開示あるいは示唆するものではない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲1発明において、「溢出管(flooding pipe)」を設けた「ジャケット脚部」の周囲に、「環状空間」と連通するグラウトシールを設けることを、開示あるいは示唆するものではない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A8に係る本件訂正発明5の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明5は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件訂正発明9について (ア)本件訂正発明9と甲1発明との対比 本件訂正発明9と、甲1発明とを対比する。 甲1発明における「洋上風力タービンの設置に使用可能な杭とジャケット脚部とを含む構造物」は、本件訂正発明9における「海洋構造物」に相当する。 甲1発明における「海底に打設される杭」は、本件訂正発明9における「海底に打設された杭」に相当する。 甲1発明における「ジャケット脚部」は、「打設された杭に設置される」ものであり、「杭の内側との間に環状空間を形成し、杭の内径よりも外径が小さ」いものであるから、本件訂正発明9における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲1発明において、「グラウト注入システム」が有する「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」は、本件訂正発明9において、「グラウト」が「注入」される「注入口」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット脚部」と「杭の内側との間」に形成される「環状空間」は、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」により、「環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内に、環状空間の上端付近」まで「グラウト」が「注入」されるものであるから、本件訂正発明9において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間」に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」が、「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」に対して、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の流れでみて下流側の位置で、「環状空間」と「ジャケット脚部の内側」とを接続する構成は、本件訂正発明9において、「変更部」が、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続」する構成に相当する。 甲1発明において、「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」しているから、「溢出管(flooding pipe)」自体が「ジャケット脚部の内側」にあるとともに、「環状空間の上端付近まで注入され」る「グラウト」の少なくとも一部について、流れの向きを「ジャケット脚部の内側」に流れるように変更するものであるから、本件訂正発明9において、「前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部」に相当する。 そうすると、本件訂正発明9と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物において、 前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部と、を備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明9と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A9> 本件訂正発明9においては、「前記脚の周囲に設けられたグラウトシールと、前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、を更に備え、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A9について判断する。 甲2、甲3及び甲4には、上記第4の4(2)イ、(3)イ及び(4)イに認定した甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項が記載されているが、甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項は、上記相違点A9に係る本件訂正発明9の構成を開示あるいは示唆するものではない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、上記相違点A9に係る本件訂正発明9の構成を開示あるいは示唆するものではない。 したがって、甲1発明において、上記相違点A9に係る本件訂正発明9の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明9は、甲1発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件訂正発明13について (ア)本件訂正発明13と甲1方法発明との対比 本件訂正発明13と甲1方法発明とを対比する。 甲1方法発明において、「海底に杭を打設」することは、本件訂正発明13において、「杭を海底に打設するステップ」に相当する。 甲1方法発明において、「杭が海底に設置されると、ジャケット脚部を降下させ」ることで、甲1発明における「杭とジャケット脚部との間の環状空間」を形成し、また「ジャケット脚部」が「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」を有することとなる構成は、本件訂正発明13において、「前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」、及び「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップ」に相当する。 甲1方法発明において、「グラウト注入システムで杭とジャケット脚部の間の環状空間と、スタンビングコーン(ジャケット脚部の先細った形状の端部)と地面の間の隙間の空洞内にグラウトを注入して、杭とジャケット脚部とをグラウトで固定する」構成は、甲1発明における「ジャケット脚部の底部から杭の内側の空洞部に突出するフレキシブルホース(FLEXIBLE HOSES)」から「環状空間の上端付近まで」グラウトが注入され、グラウトの一部は、それ自体がジャケット脚部の内側に存在する「ジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」に流入することを踏まえると、本件訂正発明13において、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップ」に相当する。 甲1方法発明における、「甲1発明の構造物の設置方法」は、本件訂正発明13における、「海洋構造物の施工方法」に相当する。 そうすると、本件訂正発明13と甲1方法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記脚内部に注入するステップと、 を備える、海洋構造物の施工方法。」 そして、本件訂正発明13と甲1方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点A10> 本件訂正発明13においては、「前記脚に取り付けられたグラウトシールで前記杭の上部を覆うステップ」を有するのに対し、 甲1方法発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点A10について判断する。 甲2、甲3及び甲4には、上記第4の4(2)イ、(3)イ及び(4)イに認定した甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項が記載されているが、甲2発明、甲3発明及び甲4技術的事項は、上記相違点A10に係る本件訂正発明13の構成を開示あるいは示唆するものではない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲1方法発明において、上記相違点A10に係る本件訂正発明13の構成をとることを開示あるいは示唆するものではない。 したがって、甲1方法発明において、上記相違点A10に係る本件訂正発明13の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではない。 よって、本件訂正発明13は、甲1方法発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件訂正発明14について 本件訂正発明14は、本件訂正発明13が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記エのとおり、甲1方法発明において、上記相違点A10に係る本件訂正発明13の構成に至ることは、甲2ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明13の構成を全て有する本件訂正発明14の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明14は、甲1方法発明、及び甲2ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2を主たる証拠とした請求項12の新規性について(上記第4の2(3)のうち、上記1(3)で採り上げなかった請求項) ア 本件訂正発明12と甲2方法発明との対比 本件訂正発明12と甲2方法発明とを対比する。 甲2方法発明において、「上部杭8を下部杭7の上に取り付けて、下部杭7の下端を海底面より下まで打ち込」むことは、「上部杭8を下部杭7の上に取付け」ることにより、「下部杭7」及び「上部杭8」が有する「杭スタッブガイド12」により、甲2発明における「環状空間17」が形成されるとともに、「環状空間17」、「グラウト孔19」、及び「グラウト戻りポート28」の相対的な配置も定まることを踏まえると、本件訂正発明12において、「杭を海底に打設するステップ」、「前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」、及び「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップ」に相当する。 甲2方法発明において、「グラウトを環状空間7に送りこみ、溢れ出たグラウトを、グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻ってきたグラウトを収集するグラウト試料収集容器34内に収集する」ことは、グラウトが甲2発明における「グラウト孔19」より「環状空間17」に送り込まれること、及び、「グラウト試料収集容器34」が「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置され」ており、「グラウト試料収集容器34内に収集」されるグラウトは「グラウト戻りポート28」の外に出ていることが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明12における「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップ」とは、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップ」という点で共通する。 甲2方法発明における、「甲2発明の海底テンプレートの構造形式におけるグラウト杭の設置方法」は、本件訂正発明12における、「海洋構造物の施工方法」に相当する。 そうすると、本件訂正発明12と、甲2方法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップと、 を備える、 海洋構造物の施工方法。」 そして、本件訂正発明12と甲2方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点B5> 「杭を海底に打設するステップ」と、「脚を前記杭に挿入するステップ」との順序に関し、 本件訂正発明12においては、「杭を海底に打設するステップ」で「前記杭が前記海底に打設された後」に、「脚を前記杭に挿入するステップ」が実施されることが特定されているのに対し、 甲2方法発明においては、「上部杭8を下部杭7の上に取り付けて、下部杭7の下端を海底面より下まで打ち込」むから、「下部杭7」の「海底面」への「打ち込」みより前に、「上部杭8」が「下部杭7」に取り付けられる点。 <相違点B6> 「通路」を通して「脚内部」に注入される「グラウトの一部」に関し、 本件訂正発明12においては、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」グラウトの一部と特定されているのに対し、 甲2方法発明においては、グラウト戻りポート28を介して上部杭8内のグラウト試料収集容器34に収集されるグラウトについて、環状空間17内の「海水に希釈されていない」とは特定されていない点。 イ 本件訂正発明12と甲2方法発明との同一性 上記相違点B5及びB6のうち、上記相違点B5は実質的な相違点であるから、上記相違点B6について判断するまでもなく、本件訂正発明12は甲2方法発明と同一ではない。 (3)甲2を主たる証拠とした請求項12の進歩性について(上記第4の2(4)のうち、上記1(4)で採り上げなかった請求項) ア 本件訂正発明12と甲2方法発明との対比 本件訂正発明12と甲2方法発明とは、上記(2)アに示した相違点B5及びB6において相違し、その余の点で一致する。 (イ)相違点についての判断 a 相違点B5について 事案に鑑み、上記相違点B5から判断する。 相違点B5は、再掲すると次のとおりである。 <相違点B5> 「杭を海底に打設するステップ」と、「脚を前記杭に挿入するステップ」との順序に関し、 本件訂正発明12においては、「杭を海底に打設するステップ」で「前記杭が前記海底に打設された後」に、「脚を前記杭に挿入するステップ」が実施されることが特定されているのに対し、 甲2方法発明においては、「上部杭8を下部杭7の上に取り付けて、下部杭7の下端を海底面より下まで打ち込」むから、「下部杭7」の「海底面」への「打ち込」みより前に、「上部杭8」が「下部杭7」に取り付けられる点。 甲2方法発明においては、「上部杭8を下部杭7の上に取り付けて、下部杭7の下端を海底面より下まで打ち込」んでいるところ、「下部杭8」のみを海底面より下まで打ち込み、その後に「上部杭8」を「下部杭7」に取り付けるように変更する動機付けはない。 そして、甲1及び甲3ないし甲8にも、甲2方法発明における「上部杭8」の「下部杭7」への取付けを、「下部杭7」のみを海底面に打ち込んだ後に行うように変更することが、記載あるいは示唆されているとはいえない。 したがって、甲2方法発明において、上記相違点B5に係る本件訂正発明12の構成に至ることは、たとえ甲1及び甲3ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲2方法発明において、上記相違点B5に係る本件訂正発明12の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点B6について判断するまでもなく、本件訂正発明12は、甲2方法発明、及び甲1、甲3ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)甲3を主たる証拠とした請求項1ないし15の進歩性について(上記第4の2(5)) ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲3発明との対比 本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「水中トラスの骨組構造物」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明1における「海洋構造物」に相当する。 甲3発明における「海底1a等の水底地盤1にあらかじめ打設された複数の杭2」は、本件訂正発明1における「海底に打設された杭」に相当する。 甲3発明における「レグ4とブレース5を組合せた水中トラスの骨組構造体3」が有する、「骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4a」は、「杭2の頭部に所定長挿入」されて「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明1における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲3発明における「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」は、「充填されるグラウト材6」が、「支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され」るものであるから、本件訂正発明1における「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当し、甲3発明における「注入口15」は本件訂正発明1における「注入口」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物。」 そして、本件訂正発明1と甲3発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C1> 「脚内部に充填されていた海水」に関し、 本件訂正発明1においては、「前記脚には、前記脚内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されて」いると特定されているのに対し、 甲3発明においては、「レグ接続部4a」、または「レグ接続部4a」を含む「レグ4」に、レグ4内部に充填されていた海水を海洋に放出する貫通孔が形成されているとは特定されていない点。 <相違点C2> 「グラウト充填空間」における「注入口よりも下流側」の構成に関し、 本件訂正発明1においては、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部を更に備える」のに対し、 甲3発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 (イ)相違点についての判断 a 相違点C2について 事案に鑑み、上記相違点C2から判断する。 甲1には、上記第4の4(1)イに認定した甲1発明が記載されており、甲1発明は「環状空間の上端近傍、かつ上端より低い位置でジャケット脚部の内側から接続される溢出管(flooding pipe)」を有している。 しかしながら、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」は、「環状空間からジャケット脚部の内側に向かって延びた後、上方に向かって伸び、杭の突出部の垂直上方、少なくとも500mmで終端」するから、上記上記(1)ア(ア)において本件訂正発明1と甲1発明との相違点A2を認定したとおり、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。また、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」は、甲3発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、前提となる構成が異なるから、甲3発明における「排水口16」を上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲2には、上記第4の4(2)イに認定した甲2発明が記載されており、甲2発明は、「グラウト戻りポート28」により、「環状空間17に送りこまれ、溢れ出たグラウト」を「グラウト戻りポート28を介して環状空間17から戻」し、「上部杭8内のグラウト戻りポート28近傍に配置」された「グラウト試料収集容器34内に収集」する構成を有する。 しかしながら、甲2発明における「グラウト戻りポート28」は、上記1(3)ア(ア)において本件訂正発明1と甲2発明との相違点B2を認定したとおり、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。また、甲2発明における「グラウト戻りポート28」は、甲3発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、前提となる構成が異なるから、甲3発明における「排水口16」を上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲4には、上記第4の4(4)イに認定した甲4技術的事項が記載されており、甲4技術的事項は、「小さい外径の鋼管杭」に対して「脚部」が「鋼管杭の上方寄りの区間の周囲に配置」されている場合において、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)させるための流出孔4b」から流出する「2次グラウト材62の先行材62a」が、「周囲に配置」されている「脚部1内周面」の中で、「鋼管杭5の内部の側へ流れる」構成を有している。 しかしながら、甲4技術的事項が有する上記構成は、本件訂正発明1が有する「杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」という構成とは逆の関係を前提として、「鋼管杭5外周面と脚部1内周面との間」の「上端から横溢(流出)」する流体が「内部の側へ」流れることを示すにとどまるから、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成を開示するものではない。また、甲4技術的事項が有する上記構成は、甲3発明が有する「レグ接続部4aを杭2の頭部に所定長挿入し、杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11にグラウト材6を充填し」という構成とは逆の関係を前提として、他に流れる先がない流体が「内部の側」へと流れることを示すにとどまるから、甲3発明において「排水口16は杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」構成について、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成となるように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲3発明において上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲3発明において、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲3発明において、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点C1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、いずれも、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記アのとおり、甲3発明において、上記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明1の構成を全て有する本件訂正発明2及び3の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明2及び3は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件訂正発明4について (ア)本件訂正発明4と甲3発明との対比 本件訂正発明4と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「水中トラスの骨組構造物」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明4における「海洋構造物」に相当する。 甲3発明における「海底1a等の水底地盤1にあらかじめ打設された複数の杭2」は、本件訂正発明4における「海底に打設された杭」に相当する。 甲3発明における「レグ4とブレース5を組合せた水中トラスの骨組構造体3」が有する、「骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4a」は、「杭2の頭部に所定長挿入」されて「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明4における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲3発明における「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」は、「充填されるグラウト材6」が、「支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され」るものであるから、本件訂正発明4における「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間」に相当し、甲3発明における「注入口15」は本件訂正発明4における「注入口」に相当する。 そうすると、本件訂正発明4と甲3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成され、注入口からグラウトが注入されるグラウト充填空間と、 を備えた海洋構造物。」 そして、本件訂正発明4と甲3発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C3> 「グラウト充填空間」における「注入口よりも下流側」の構成に関し、 本件訂正発明4においては、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部を更に備え」るのに対し、 甲3発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 <相違点C4> 上記相違点C3に係る「注入部」に関し、 本件訂正発明4においては、「前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられており、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている」ことが特定されているのに対し、 甲3発明においては、本件訂正発明4における「注入部」に相当する構成を有さない点。 (イ)相違点についての判断 a 相違点C3について 上記相違点C3について判断する。 甲1、甲2、甲4には、上記第4の4(1)イ、(2)イ及び(4)イに認定した甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項が記載されており、甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項は、それぞれ流体が何らかの部材の内部へと流れる「溢出管(flooding pipe)」、「グラウト戻りポート28」及び「流出孔4b」を有している。 しかしながら、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、甲3発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、いずれも前提となる構成が異なるから、甲3発明における「排水口16」を上記相違点C3に係る本件訂正発明4の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲3発明において上記相違点C3に係る本件訂正発明4の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲3発明において、上記相違点C3に係る本件訂正発明4の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲3発明において、上記相違点C3に係る本件訂正発明4の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点C4について判断するまでもなく、本件訂正発明4は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件訂正発明5及び6について 本件訂正発明5は、本件訂正発明4における「前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられており、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている」という構成に代えて、「前記脚の周囲には、前記グラウト充填空間と連通するグラウトシールが設けられている」という構成を特定したものである。 本件訂正発明6は、本件訂正発明4における「前記注入部は、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部とともに海水も前記脚内部に注入し、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上方に設けられており、前記注入部は、前記グラウト充填空間の上端に設けられたフランジプレートに設けられている」という構成に代えて、「前記グラウト充填空間の下部には、前記杭に設けられたプレート受けに、溶接されることなく、置かれる仕切りプレートが設置され、前記杭に設けられたプレート受けに溶接されていない前記仕切りプレートの上面には、グラウトが注入される」という構成を特定したものである。 上記ウ(ア)における本件訂正発明4と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明5及び本件訂正発明6と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明5及び6は、少なくとも上記ウ(ア)に示した本件訂正発明4と甲3発明との相違点C3において、相違する。 そして、上記ウ(イ)bに示したとおり、甲3発明において上記相違点C3に係る本件訂正発明4の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 そうすると、本件訂正発明5及び6が有する、本件訂正発明4から置換された構成について検討するまでもなく、本件訂正発明5及び6は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件訂正発明7について (ア)本件訂正発明7と甲3発明との対比 本件訂正発明7と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「水中トラスの骨組構造物」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明7における「海洋構造物」に相当する。 甲3発明における「海底1a等の水底地盤1にあらかじめ打設された複数の杭2」は、本件訂正発明7における「海底に打設された杭」に相当する。 甲3発明における「レグ4とブレース5を組合せた水中トラスの骨組構造体3」が有する、「骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4a」は、「杭2の頭部に所定長挿入」されて「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明7における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲3発明における「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」は、「充填されるグラウト材6」が、「支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され」て、「排水口16」から「置換水」が排除されるように流れるものであるから、本件訂正発明7における「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間」に相当し、甲3発明における「注入口15」は本件訂正発明7における「注入口」に相当する。 甲3発明において、「杭2の頭部に骨組構造体3を設置するための支持材7として、杭2の外径より大きい外径のフランジ8がレグ接続部4aに溶接されており、支持材7が、杭2の上端に当接することによって支持され」る構成と、本件訂正発明7において、「下面が前記杭の上端に接触するライナープレートと、フランジプレートと、を更に備え」る構成とは、「下面が前記杭の上端に接触する支持部材を、更に備え」る点で、共通する。 そうすると、本件訂正発明7と甲3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備え、 下面が前記杭の上端に接触する支持部材を、更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明7と甲3発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C5> 「グラウト充填空間」における「注入口よりも下流側」の構成に関し、 本件訂正発明7においては、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更することにより、当該グラウトの海洋への排出を抑制する変更部」を備えるのに対し、 甲3発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 <相違点C6> 支持部材に関し、 本件訂正発明7においては、「ライナープレート」と「フランジプレート」とであり、「前記フランジプレートの下面の領域の一部分のみには、前記ライナープレートが固定され、前記フランジプレートは、前記ライナープレートを介して前記杭に支持され、前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間の上端に設けられ、前記フランジプレートの下面の領域のうち、前記一部分のみ以外の一部は、前記杭の上端に隙間をあけて対向する」と特定されているのに対し、 甲3発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 a 相違点C5について 上記相違点C5について判断する。 甲1、甲2、甲4には、上記第4の4(1)イ、(2)イ及び(4)イに認定した甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項が記載されており、甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項は、それぞれ流体が何らかの部材の内部へと流れる「溢出管(flooding pipe)」、「グラウト戻りポート28」及び「流出孔4b」を有している。 しかしながら、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、甲3発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、いずれも前提となる構成が異なるから、甲3発明における「排水口16」を上記相違点C5に係る本件訂正発明7の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲3発明において上記相違点C5に係る本件訂正発明7の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲3発明において、上記相違点C5に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲3発明において、上記相違点C5に係る本件訂正発明7の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点C6について判断するまでもなく、本件訂正発明7は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明7が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記オのとおり、甲3発明において、上記相違点C5に係る本件訂正発明7の構成に至ることは、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明7の構成を全て有する本件訂正発明8の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明8は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ 本件訂正発明9について (ア)本件訂正発明9と甲3発明との対比 本件訂正発明9と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「水中トラスの骨組構造物」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明9における「海洋構造物」に相当する。 甲3発明における「海底1a等の水底地盤1にあらかじめ打設された複数の杭2」は、本件訂正発明9における「海底に打設された杭」に相当する。 甲3発明における「レグ4とブレース5を組合せた水中トラスの骨組構造体3」が有する、「骨組構造体3の下側の鉛直方向に突出するレグ接続部4a」は、「杭2の頭部に所定長挿入」されて「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明9における「前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚」に相当する。 甲3発明における「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」は、「充填されるグラウト材6」が、「支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され」て、「排水口16」から「置換水」が排除されるように流れるものであるから、本件訂正発明9における「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間」に相当し、甲3発明における「注入口15」は本件訂正発明9における「注入口」に相当する。 甲3発明において、「杭2の頭部に骨組構造体3を設置するための支持材7として、杭2の外径より大きい外径のフランジ8がレグ接続部4aに溶接されており、支持材7が、杭2の上端に当接することによって支持され」る構成と、本件訂正発明9において、「前記グラウト充填空間と前記変更部との間に設けられたフランジプレートと、を更に備え」る構成とは、「フランジプレートを、更に備え」る点で、共通する。 そうすると、本件訂正発明9と甲3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「海底に打設された杭と、 前記杭の内径よりも小さな外径であり前記杭内部に配置された脚と、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間であって注入口から注入されたグラウトが流れるグラウト充填空間と、 を備え、 フランジプレートを、更に備える、 海洋構造物。」 そして、本件訂正発明9と甲3発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C7> 「グラウト充填空間」における「注入口よりも下流側」の構成に関し、 本件訂正発明9においては、「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間を流れるグラウトが前記脚内部に流れるよう、当該グラウトの流れの向きを変更する変更部」を備えるのに対し、 甲3発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 <相違点C8> 「フランジプレート」に関し、 本件訂正発明9においては、「フランジプレート」とともに「前記脚の周囲に設けられたグラウトシールライナープレート」を備え、「前記フランジプレートは、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの一部が前記グラウトシールの内部に流れるよう、前記グラウト充填空間を流れるグラウトの流れの向きを変える」ことが特定されているのに対し、 甲3発明においては、そのように特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 a 相違点C7について 上記相違点C7について判断する。 甲1、甲2、甲4には、上記第4の4(1)イ、(2)イ及び(4)イに認定した甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項が記載されており、甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項は、それぞれ流体が何らかの部材の内部へと流れる「溢出管(flooding pipe)」、「グラウト戻りポート28」及び「流出孔4b」を有している。 しかしながら、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、甲3発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、いずれも前提となる構成が異なるから、甲3発明における「排水口16」を上記相違点C7に係る本件訂正発明9の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲3発明において上記相違点C7に係る本件訂正発明9の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲3発明において、上記相違点C7に係る本件訂正発明9の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲3発明において、上記相違点C7に係る本件訂正発明9の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点C8について判断するまでもなく、本件訂正発明9は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ク 本件訂正発明10及び11について 本件訂正発明10及び11は、いずれも、本件訂正発明4、本件訂正発明5または本件訂正発明9が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記ウ、エ及びカに示したとおり、本件訂正発明4、5及び9は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明4、5または9の構成を全て有する本件訂正発明10及び11は、本件訂正発明10または11における付加的構成について検討するまでもなく、甲3発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ケ 本件訂正発明12について (ア)本件訂正発明12と甲3方法発明との対比 本件訂正発明12と甲3方法発明とを対比する。 甲3方法発明における「水中トラスの骨組構造物の施工方法」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明12における「海洋構造物の施工方法」に相当する。 甲3方法発明における「海底1a等の建設場所の水底地盤上1aに杭2を打設し、」は、本件訂正発明12における「杭を海底に打設するステップ」に相当する。 甲3方法発明における「次に、骨組構造体3を、杭2の頭部にレグ接続部4aを合致させて吊下し、所定長挿入し、」は、「杭2の頭部」に「所定長挿入」された「レグ接続部4a」が「杭2の頭部」との間に「間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明12における「前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」に相当する。 甲3方法発明において「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」が設けられ、「グラウト材6」が「充填」される箇所となる構成と、本件訂正発明12において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップ」とは、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間を設けるステップ」という点で共通する。 甲3方法発明において、「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11に充填するグラウト材6は、支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され、置換水は排水口16から排除され」る構成と、本件訂正発明12において、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップ」とは、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入ステップ」という点で共通する。 そうすると、本件訂正発明12と甲3方法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「杭を海底に打設するステップと、 前記ステップで前記杭が前記海底に打設された後に、前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入するステップと、 を備える海洋構造物の施工方法。」 そして、本件訂正発明12と甲3方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C9> 「グラウト充填空間」への「グラウト」の「注入」に関し、 本件訂正発明12においては、「グラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路」を設け、グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入する際に、「前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入する」のに対し、 甲3方法発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 (イ)相違点についての判断 上記相違点C9について判断する。 甲1、甲2、甲4には、上記第4の4(1)イ、(2)イ及び(4)イに認定した甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項が記載されており、甲1発明、甲2発明及び甲4技術的事項は、それぞれグラウトの注入の際に流体が何らかの部材の内部へと流れる「溢出管(flooding pipe)」、「グラウト戻りポート28」及び「流出孔4b」を有している。 しかしながら、甲1発明における「溢出管(flooding pipe)」、甲2発明における「グラウト戻りポート28」、及び甲4技術的事項における「流出孔4b」は、甲3方法発明における「注入口15」より下流の「排水口16」とは、いずれも前提となる構成が異なるから、甲3方法発明における「排水口16」の構成を、上記相違点C9に係る本件訂正発明12の構成のように変更することを示唆するものでもない。 甲5ないし甲8には、上記第4の4(5)ないし(8)に摘記した事項が記載されているが、いずれもグラウトまたはスラリーを充填する箇所について、開放されている下端からグラウトまたはスラリーが落下することが明らかである場合に、当該下端をシールまたは仕切りで塞ぐことが示されているにとどまり、甲3方法発明において上記相違点C9に係る本件訂正発明12の構成を採用することを示唆するものではない。 したがって、甲3方法発明において、上記相違点C9に係る本件訂正発明12の構成に至ることは、たとえ甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 よって、本件訂正発明12は、甲3方法発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 コ 本件訂正発明13について (ア)本件訂正発明13と甲3方法発明との対比 本件訂正発明13と甲3方法発明とを対比する。 甲3方法発明における「水中トラスの骨組構造物の施工方法」は、設置場所が「海底1a等の水底地盤1」であることを踏まえると、本件訂正発明13における「海洋構造物の施工方法」に相当する。 甲3方法発明における「海底1a等の建設場所の水底地盤上1aに杭2を打設し、」は、本件訂正発明13における「杭を海底に打設するステップ」に相当する。 甲3方法発明における「次に、骨組構造体3を、杭2の頭部にレグ接続部4aを合致させて吊下し、所定長挿入し、」は、「杭2の頭部」に「所定長挿入」された「レグ接続部4a」が「杭2の頭部」との間に「間隙11」を生じることから、「レグ接続部4a」の外径が「杭2」の内径より小さいことが明らかであることを踏まえると、本件訂正発明13における「前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップ」に相当する。 甲3方法発明において「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11」が設けられ、「グラウト材6」が「充填」される箇所となる構成と、本件訂正発明13において、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路を設けるステップ」とは、「前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間を設けるステップ」という点で共通する。 甲3方法発明において、「杭2の頭部とレグ接続部4aとの間隙11に充填するグラウト材6は、支持材7のフランジ8に設けた注入口15から注入され、置換水は排水口16から排除され」る構成と、本件訂正発明13において、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入し、前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入するステップ」とは、「前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入ステップ」という点で共通する。 そうすると、本件訂正発明13と甲3方法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「杭を海底に打設するステップと、 前記杭の内径よりも小さな外径の脚を前記杭に挿入するステップと、 前記杭の内周面と前記脚の外周面との間に形成されたグラウト充填空間を設けるステップと、 前記グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入するステップと、 を備える海洋構造物の施工方法。」 そして、本件訂正発明13と甲3方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点C10> 「グラウト充填空間」への「グラウト」の「注入」に関し、 本件訂正発明13においては、「グラウト充填空間と、前記脚内部と、を連通する通路」を設け、グラウト充填空間にグラウトを注入口から注入する際に、「前記注入口よりも下流側に位置する前記通路を通して、前記グラウトの一部を前記通路の外に出して前記脚内部に注入する」のに対し、 甲3方法発明においては、「排水口16」が「杭2に挿入されるレグ4の外側に設けられており、排水口16から排除される置換水は水中に放出される」点。 <相違点C11> 杭の上部に関し、 本件訂正発明13においては、「前記脚に取り付けられたグラウトシールで前記杭の上部を覆うステップ」を有するのに対し、 甲3方法発明については、そのような構成を有さない点。 (イ)相違点についての判断 a 相違点C10について 上記相違点C10について判断する。 上記相違点C10は、本件訂正発明12と甲3方法発明との相違点C9から、「脚内部」に「注入」される「グラウト」について、「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない」との特定を省いたものであるところ、上記相違点C9について上記ケ(イ)において指摘したと同様の理由で、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。 b 小括 上記aのとおり、甲3方法発明において、上記相違点C10に係る本件訂正発明13の構成に至ることは想到容易でないから、その余の相違点C11について判断するまでもなく、本件訂正発明13は、甲3方法発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 サ 本件訂正発明14及び15について 本件訂正発明14及び15は、本件訂正発明13が有する構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 上記コのとおり、甲3方法発明において、上記相違点C10に係る本件訂正発明13の構成に至ることは、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件訂正発明13の構成を全て有する本件訂正発明14または15の構成に至ることは、その余の構成について検討するまでもなく、当業者にとって容易に想到できたものではない。 したがって、本件訂正発明14及び15は、甲3方法発明、甲1、甲2及び甲4ないし甲8に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立人の意見書における主張について (1)本件訂正発明の新規性または進歩性に関する主張 申立人は、令和4年7月11日付け意見書において、本件訂正発明1、及び本件訂正発明12の、甲1を主たる証拠とした新規性及び/または進歩性に関し、概略以下の主張をしている。 ア 本件訂正発明1の新規性・進歩性について 甲1発明において、「環状空間の上端付近」までグラウトが注入されると、「溢出管(flooding pipe)」の上端から、「環状空間」内にあった海水に希釈されたグラウトが外に流出し、「ジャケット脚部」の内側で下方に流れるとともに、そのグラウトの海洋への放出が抑制されることは明らかであるから、本件訂正発明1における「前記グラウト充填空間における前記注入口よりも下流側と前記脚内部とを接続し、前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部を更に備える」構成は、甲1発明との相違点ではない。 また、甲1発明が有する「ベントホール」は、本件訂正発明1における「貫通孔」に相当する。 したがって、甲1発明と本件訂正発明1との間に相違点はなく、仮に相違点があったとしても設計事項程度である(同意見書第20頁第15行-第22頁第15行)。 なお、甲1発明において、フランジ等を設けてグラウトの「海洋への放出を抑制」することは、実際に記載されているに等しいか、甲3に基づいて容易である(同意見書第28頁下から第7行-第29頁最終行)。 イ 本件訂正発明12の新規性・進歩性について 本件訂正発明12における「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部」は、多かれ少なかれグラウト充填空間内の海水に希釈されたグラウトを含む。 甲1方法発明において、「溢出管(flooding pipe)」の上端から、海水に希釈されたグラウトが外に流出し、「ジャケット脚部」の内側で下方に流れることは明らかであるから、本件訂正発明12と甲1方法発明との相違点A5は、相違点ではなく、仮に相違点であったとしても設計事項程度である(同意見書第53頁第18行-第55頁第8行)。 (2)上記申立人の主張についての判断 ア 本件訂正発明1の新規性・進歩性について 本件訂正発明1は、本件訂正前の請求項1における「(1)前記グラウト充填空間に充填された海水、又は(2)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトであって海水に希釈されたグラウト、又は(3)前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を前記脚内部に注入する注入部」という選択肢から、「(3)」にあたる「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部」という選択肢を特定事項としたものであるから、甲1発明において、「環状空間の上端付近」までグラウトが注入されると、「溢出管(flooding pipe)」の上端から、「環状空間」内にあった海水に希釈されたグラウトが外に流出し得ることをもって、本件訂正発明1における「前記グラウト充填空間に注入されたグラウトの一部、を、前記脚内部の下方に注入することにより、前記グラウトの海洋への排出を抑制する注入部」との構成を甲1発明が有する旨の申立人の主張は、採用することができない。 本件訂正発明1と甲1発明との相違点は、上記1(1)ア(ア)に認定した相違点A1及び相違点A2のとおり認定されるべきである。 そして、甲1発明を主たる引用発明とした本件訂正発明1の進歩性については、上記1(2)ア(イ)のとおり判断されるべきである。 イ 本件訂正発明12の新規性・進歩性について 本件訂正発明12における「前記グラウト充填空間内の海水に希釈されていない前記グラウトの一部」について、グラウト充填空間内の海水に希釈されたグラウトを含むとする申立人の主張は、本件訂正後の請求項12の記載を離れた解釈に依拠しており、採用することができない。 そして、甲1方法発明を主たる引用発明とした本件訂正発明12の新規性及び進歩性については、上記1(1)キ及び1(2)クのとおり、対比・判断されるべきものである。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立人の意見書における主張について検討しても、本件訂正発明の新規性及び進歩性について、上記1及び2と異なる判断をすべき事情は見いだせない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700757

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