特許異議申立
2023-700506
山留め構造体、軸力伝達装置及び山留め構造体の設置方法
- 審判番号
- 2023-700506
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-136173
- 登録番号
- 7174548
- 請求日
- 2023年05月16日
- 審決日
- 2023年10月30日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】戸田建設株式会社
- 【権利者代理人】あいわ弁理士法人
- 【権利者】ジェコス株式会社
- 【権利者代理人】あいわ弁理士法人
- 【異議申立人】飯塚 崇文
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 小林 俊久
- 審判官 澤田 真治
- 分類
- P1652.113-ZC (E02D) / P1652.121-ZC (E02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7174548号発明「山留め構造体、軸力伝達装置及び山留め構造体の設置方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7174548号の請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許を取り消す。
同請求項2、3、5、11、12、14及び17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7174548号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、平成30年7月19日に出願され、令和4年11月9日にその特許権の設定登録がされ、同月17日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の請求項1~7、10~14、16及び17に係る特許に対して、令和5年5月16日に特許異議申立人飯塚崇文(以下、単に「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。
当審において、令和5年7月20日付けで、本件特許の請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許に対して取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
第2 本件発明の認定
本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、
前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、
前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達する
ことを特徴とする山留め構造体。
【請求項2】
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする請求項1に記載の山留め構造体。
【請求項3】
山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、
前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、
前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする山留め構造体。
【請求項4】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項5】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、
前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項6】
前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項7】
前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられる
ことを特徴とする請求項6に記載の山留め構造体。
【請求項8】
前記軸力伝達装置は、前記腹起しの下側に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項9】
前記下側に設けられる軸力受け部材は、前記腹起しを載置することが可能である
ことを特徴とする請求項8に記載の山留め構造体。
【請求項10】
山留め構造体の腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、
前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達する
ことを特徴とする軸力伝達装置。
【請求項11】
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されない
ことを特徴とする請求項10に記載の軸力伝達装置。
【請求項12】
山留め構造体の腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、
前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されない
ことを特徴とする軸力伝達装置。
【請求項13】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項12のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項14】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、
前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項13のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項15】
前記軸力受け部材は、前記腹起しの下側に設けられ、前記腹起しを載置することが可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項14のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項16】
山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、
前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、
前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、
を備え、
前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記 腹起しから前記山留め壁に伝達させる
ことを特徴とする山留め構造体の設置方法。
【請求項17】
山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、
前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、
前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、
を備え、
前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させ、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする山留め構造体の設置方法。」
第3 取消理由の概要
当審において、本件発明1、4、6、7、10、13及び16に係る特許に対して、令和5年7月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件発明1、4、6、7、10、13及び16は、下記の刊行物に記載された発明であるから、請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
また、本件発明1、4、6、7、10、13及び16は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許は、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:一般社団法人日本建築学会編、「山留め設計指針(第4版)」、一般社団法人日本建築学会、2017年11月25日、p.38、p.53(以下「甲1」という。)
第4 当審合議体の判断
1 甲1について
(1) 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。)
ア 38ページ9行~12行
「山留め計画の立案にあたっては,設計および施工条件を十分に考慮し,最適な根切り山留め工法と山留め壁と山留め支保工の組合せや補助工法の採用の要否を検討する。
図3.4.1に示すように,山留め架構は、主たる部材として山留め壁とそれを支える切梁,腹起し,火打ち,切梁支柱などの山留め支保工部材で構成されている.」
イ 53ページ7行~21行
「d)腹起しが3方向に配置された山留め
傾斜地などで地表面に高低差があり,腹起しが平面3方向にしか配置できない(コの字)山留めの場合,山留め支保工として,火打ちのみとなる場合がある〔図3.4.17〕.この場合,火打ちを受ける腹起しがない面の方向に移動しないように,腹起しと山留め壁にすべり留め補強材(以下,補強材という)を取り付ける.また,補強材は溶接やボルトの計算結果より余裕のある数量を取り付け,補強材を取り付けた山留め壁に作用する加重を分散させる.親杭横矢板壁の場合は,鋼製矢板壁やソイルセメント壁などよりも,応力材の弱軸方向力に対する剛性が低く,親杭がねじれることもあるため特に注意し,細幅系のH形鋼は使用しない.親杭をプレボーリング工法で施工した場合は,杭周固定液を全充填するのが望ましい.なお,必要に応じてつなぎ材を腹起しに沿って親杭に溶接するなどの補強を行う〔図3.4.18(a)〕.ソイルセメント壁は,応力材間のソイルセメント圧縮耐力によりH形鋼がねじれないため,つなぎ材を溶接しなくてもよい〔図3.4.18(b)〕.また,どの山留め壁においても,すべる方向の腹起し材1面に作用する荷重により,山留め壁全体がすべることもあるため,山留め壁や山留め支保工の移動に関する項目を計測計画に入れる.ただし,山留め壁の抵抗力だけでは,明らかに全体のすべりが懸念される場合は,地盤アンカー工法の併用なども検討する.」
ウ 図3.4.1
「
[図:0001405828000001.jpg]
」
エ 図3.4.17
「
[図:0001405828000002.jpg]
」
オ 図3.4.18
「
[図:0001405828000003.jpg]
」
(2) 甲1の記載から認定される事項
前記(1)に摘記した記載事項に基づいて、甲1には以下の事項が記載されているものと認められる。
ア 認定事項1
甲1には、「腹起しが平面3方向にしか配置できない(コの字)山留めの場合,山留め支保工として,火打ちのみとなる場合がある〔図3.4.17〕.この場合,火打ちを受ける腹起しがない面の方向に移動しないように,腹起しと山留め壁にすべり留め補強材(以下,補強材という)を取り付ける.また,補強材は溶接やボルトの計算結果より余裕のある数量を取り付け,補強材を取り付けた山留め壁に作用する加重を分散させる.」と記載され、また、図3.4.17から、「腹起しがすべる方向である軸方向に沿って腹起し材すべり留め補強材を取り付けた」点が看取されるところ、「腹起しがすべる方向である軸方向に沿」って「腹起しと山留め壁にすべり留め補強材(以下,補強材という)を取り付ける」ことで「補強材を取り付けた山留め壁に作用する荷重」は、「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部」であることが技術的に見て明らかであるから、甲1には、「補強材」が「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する」事項が記載されていると認められる(認定事項1)。
イ 認定事項2
図3.4.18から、「すべり止め補強材」である「補強材」が、「腹起しに取り付けたチャンネルと、山留め壁に取り付けたチャンネルを備え」た点が看取される(認定事項2)。
ウ 認定事項3
前記イで述べたように、「補強材」は、「腹起しに取り付けたチャンネルと、山留め壁に取り付けたチャンネルを備え」たものであるところ、当該「補強材」が、前記アで述べたように、「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する」ためには、「腹起しに取り付けたチャンネル」が「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部」を「腹起し」から「山留め壁に取り付けたチャンネル」に「伝達」し、「山留め壁に取り付けたチャンネル」が「腹起しに取り付けたチャンネル」から「伝達」された「軸力」を受けるとともに、受けた「軸力」を「山留め壁」に「伝達」することが明らかであるから、甲1には、「腹起しに取り付けたチャンネルが腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を腹起しから山留め壁に取り付けたチャンネルに伝達し、山留め壁に取り付けたチャンネルが腹起しに取り付けたチャンネルから伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を山留め壁に伝達する」事項が記載されていると認められる(認定事項3)。
エ 認定事項4
甲1において、「補強材」は、「腹起しと山留め壁に」「溶接やボルト」で「取り付け」たものであるところ、上記イで認定した、「補強材」としての「腹起しに取り付けたチャンネル」と「山留め壁に取り付けたチャンネル」のうち「腹起しに取り付けたチャンネル」の取付けは、「ボルト」でなされていることが図3.4.18から看取される。そして、「ボルト」による取付けであれば、「溶接」とは異なり、部材同士を「着脱自在」とすることが可能であることは明らかであるから、甲1には、「腹起しに取り付けるチャンネルは、ボルトでの取付けにより、腹起しと着脱自在とすることが可能である」事項が記載されていると認められる(認定事項4)。
オ 認定事項5
図3.4.18から、「すべり止め補強材」である「補強材」が、「腹起しの上側に設けられ」た点が看取される(認定事項5)。
カ 認定事項6
図3.4.18から、「すべり止め補強材」である「補強材」の「山留め壁に設けられたチャンネル」が、「腹起しの上方に間隔を空けて設けられ」た点が看取される(認定事項6)。
キ 認定事項7
図3.4.18から、「すべり止め補強材」である「補強材」として、「腹起しと山留め壁に、互いに当接するチャンネルをそれぞれ取り付け」た点が看取される(認定事項7)。
(3) 甲1に記載された発明の認定
前記(1)に摘記した記載事項及び前記(2)で認定した認定事項から、甲1には、次の発明が開示されていると認められる(以下「甲1-1発明」等という。)。
<甲1-1発明>
「山留め壁とそれを支える切梁,腹起し,火打ち,切梁支柱などの山留め支保工部材で構成された山留め架構であって(38ページ9行~12行)、腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する補強材を備え(認定事項1)、補強材は、腹起しに取り付けたチャンネルと、山留め壁に取り付けたチャンネルを備え(認定事項2)、腹起しに取り付けたチャンネルが腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を腹起しから山留め壁に取り付けたチャンネルに伝達し、山留め壁に取り付けたチャンネルが腹起しに取り付けたチャンネルから伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を山留め壁に伝達し(認定事項3)、腹起しに取り付けるチャンネルは、ボルトでの取付けにより、腹起しと着脱自在とすることが可能であり(認定事項4)、補強材が腹起しの上側に設けられ(認定事項5)、補強材の山留め壁に設けられたチャンネルが、腹起しの上方に間隔を空けて設けられる(認定事項6)山留め架構(38ページ9行~12行)。」
<甲1-2発明>
「山留め壁とそれを支える切梁,腹起し,火打ち,切梁支柱などの山留め支保工部材で構成された山留め架構の(38ページ9行~12行)、腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する補強材であって(認定事項1)、腹起しに取り付けたチャンネルと、山留め壁に取り付けたチャンネルを備え(認定事項2)、腹起しに取り付けたチャンネルが腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を腹起しから山留め壁に取り付けたチャンネルに伝達し、山留め壁に取り付けたチャンネルが腹起しに取り付けたチャンネルから伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を山留め壁に伝達し(認定事項3)、腹起しに取り付けるチャンネルは、ボルトでの取付けにより、腹起しと着脱自在とすることが可能である(認定事項4)補強材(認定事項1)。」
<甲1-3発明>
「山留め壁とそれを支える切梁,腹起し,火打ち,切梁支柱などの山留め支保工部材で構成された山留め架構による根切り山留め工法であって(38ページ9行~12行)、補強材として、腹起しと山留め壁に、互いに当接するチャンネルをそれぞれ取り付け(認定事項7)、補強材により、腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達させる(認定事項1)根切り山留め工法(38ページ9行~12行)。」
2 本件発明1、4、6、7、10、13及び16について
本件発明1、4、6、7、10、13及び16については、前記第3に示した取消理由のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものである。以下詳述する。
(1) 本件発明1について
甲1-1発明の「山留め壁」、「腹起し」、「山留め架構」、「軸力」、「補強材」、「補強材」のうち「腹起しに取り付けたチャンネル」、「補強材」のうち「山留め壁に取り付けたチャンネル」は、それぞれ、本件発明1の「山留め壁」、「腹起し」、「山留め構造体」、「軸力」、「軸力伝達装置」、「軸力伝達部材」、「軸力受け部材」に相当する。
そして、甲1-1発明の「山留め壁に伝達」する「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部」については、当該「腹起しに作用する軸力」が過大な状態においては、本件発明1における「その断面積で許容できない軸力」を含むことが明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明は相違するところがない。
また、本件発明1は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(2) 本件発明4について
甲1-1発明において、「腹起しに取り付けるチャンネルは、ボルトでの取付けにより、腹起しと着脱自在とすることが可能」であるところ、「ボルトでの取付け」が、ボルトとボルト穴の間隔(いわゆる「遊び」)により、周方向に大なり小なり位置調整が可能であることは技術常識であるから、甲1-1発明は、上記(1)における検討も踏まえると、本件発明4の、「前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である」構成に相当する構成を備えたものであるといえる。
そうすると、本件発明4と甲1-1発明は相違するところがない。
また、本件発明4は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(3) 本件発明6について
甲1-1発明の「補強材」(軸力伝達装置)は、「腹起し」(腹起し)の「上側に設けられ」たものであるから、甲1-1発明は、本件発明6の、「前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられる」構成に相当する構成を備えたものである。
そうすると、本件発明6と甲1-1発明は相違するところがない。
また、本件発明6は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(4) 本件発明7について
甲1-1発明の「補強材」(軸力伝達装置)の「山留め壁に設けられたチャンネル」(軸力受け部材)は、「腹起し」(腹起し)の「上方に間隔を空けて設けられ」たものであるから、甲1-1発明は、本件発明7の、「前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられる」構成に相当する構成を備えたものである。
そうすると、本件発明7と甲1-1発明は相違するところがない。
また、本件発明7は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(5) 本件発明10について
甲1-2発明の「山留め壁」、「腹起し」、「山留め架構」、「軸力」、「補強材」、「補強材」のうち「腹起しに取り付けたチャンネル」、「補強材」のうち「山留め壁に取り付けたチャンネル」は、前記(1)の本件発明1についての検討で述べたように、それぞれ、本件発明10の「山留め壁」、「腹起し」、「山留め構造体」、「軸力」、「軸力伝達装置」、「軸力伝達部材」、「軸力受け部材」に相当する。
そして、甲1-2発明の「山留め壁に伝達」する「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部」について、当該「腹起しに作用する軸力」が過大な状態においては、「その断面積で許容できない軸力」を含むことが明らかであることも、前記(1)で述べたとおりである。
そうすると、本件発明10と甲1-2発明は相違するところがない。
また、本件発明10は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(6) 本件発明13について
甲1-2発明において、「腹起しに取り付けるチャンネルは、ボルトでの取付けにより、腹起しと着脱自在とすることが可能」であるところ、前記(2)で本件発明4について検討したように、「ボルトでの取付け」が、ボルトとボルト穴の間隔(いわゆる「遊び」)により、周方向に大なり小なり位置調整が可能であることは技術常識であるから、甲1-2発明は、本件発明13の、「前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である」構成に相当する構成を備えたものであるといえる。
そうすると、本件発明13と甲1-2発明は相違するところがない。
また、本件発明13は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(7) 本件発明16について
甲1-3発明の「山留め壁とそれを支える切梁,腹起し,火打ち,切梁支柱などの山留め支保工部材で構成された山留め架構」による「根切り山留め工法」が、当該「山留め架構」(山留め構造体)の「設置方法」の概念を含むことは明らかである。
そして、甲1-3発明の上記「根切り山留め工法」(設置方法)において、「腹起しと山留め壁に、互いに当接するチャンネルをそれぞれ取り付け」ることについては、前記(1)の本件発明1についての検討も踏まえると、本件発明16の、「前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程」、「前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程」及び「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程」に分解されるものであるということができる。
続いて、甲1-3発明において、「補強材」により「腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達させる」ことは、前記(1)における検討踏まえると、本件発明16における「前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させる」ことに相当するといえる。
そうすると、本件発明16と甲1-3発明は相違するところがない。
また、本件発明16は、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)において、本件発明2、3、5、11、12、14及び17が、甲1に記載された発明と同一であり、また、甲1に記載された発明と甲第2号証に例示する周知の技術常識から当業者が容易に発明できたものである旨主張しているが、以下に述べるとおり、上記申立人の主張を採用することはできない。
2 各証拠の記載
(1) 甲1
甲1の記載事項、甲1の記載から認定される事項、甲1に記載された発明(甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明)は、前記第4の1(1)~(3)のとおりである。
(2) 甲第2号証
申立書に添付された甲第2号証(特開2011-247050号公報(以下「甲2」という。))には、以下の事項が記載されている。
ア 【0038】
「ハット形鋼矢板2とH形鋼3は溶接または接合ボルト等によって予め一体に固着されていてもよく、また現地で単に隣接して設置するのみで必ずしも固着されていなくてもよい。さらに、組合せ鋼矢板と組合せ鋼矢板との間にハット形鋼矢板やU形鋼矢板が組み込まれていてもよい。」
イ 【図1】
「
[図:0001405828000004.jpg]
」
ウ 【図3】
「
[図:0001405828000005.jpg]
」
3 本件発明2について
(1) 請求項2は、請求項1の記載を引用する形式で記載されているから、本件発明2は、請求項1及び2に記載された事項により特定されるものである。したがって、本件発明2と甲1-1発明を対比するにあたっては、本件発明1の構成も考慮して論じることとする。
(2) 申立人は、甲1について、「図3.4.17.(a)山留め平面図には、開放側に腹起しがないので、上下の腹起しが、火打ちがかかっている側(右)から開放方向(左)にすべる方向に力が働くことが図示されている。右から左に一方向にすべる力が働くのであるから、腹起しに取り付けられたすべり止め補強材(軸力伝達部材)からの力を山留め壁に取り付けられたすべり止め補強材(軸力受け部材)が受けるためには、固着される必要はなく、単純に当接すれば足りることは自明である。したがって、甲第1号証刊行物には、本件特許発明1の分説G「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない」が開示されている。」(申立書24ページ11行~20行)と主張する。
上記主張について検討するに、甲1の「図3.4.17.(a)山留め平面図」における矢印は、同図における左右方向の「腹起し」が「すべる方向」(右から左)を模式的に示したものであるところ、当該「腹起し」には、本件発明2の「軸力伝達部材」に相当する「腹起しに取り付けたチャンネル」(腹起しに取り付けられたすべり止め補強材)を介して、本件発明2の「軸力受け部材」に相当する「山留め壁に取り付けたチャンネル」(山留め壁に取り付けられたすべり止め補強材)を含めた「山留め壁」側が受け手となる右から左の力以外にも、当該「山留め壁」側からの、せん断方向(同図における上下方向)の力や、せん断方向と角度のある方向(同図における斜め方向)の力等も作用すると考えるのが自然であるから、「山留め壁」側が受け手となる右から左の力にのみ着目した上記主張は、その前提において誤りを含み、これを採用することはできない。
そして、甲1には、「腹起しに取り付けたチャンネル」(軸力伝達部材)と「山留め壁に取り付けたチャンネル」(軸力受け部材)とが互いに固着されないことや、固着されなくてもよいことを説明する記載が見当たらない。
したがって、本件発明2の、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」ことは、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明2は甲1-1発明と相違する。
(3) 前記(2)で述べたように、本件発明2は、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」点で甲1-1発明と相違する。
この相違点について、申立人は、「甲第2号証刊行物には、腹起し材5に設けたガイド部材9を山留め壁である連続壁1側のH形鋼3のフランジ3aに遊嵌して・・・取り付けられている構成が図1に図示され」、「山留め壁を構成するハット形鋼矢板2とH形鋼3の関係」について、「[0038]には・・・現地で単に隣接して設置するのみで必ずしも固着されていなくてもよいことが記載され」、「H形鋼3に取り付けられているストッパー6の上に、腹起し材5側に取り付けられているストッパー6が掛止されており、固着されていない構造であることが図3に図示され・・・るように、当接だけで固着の必要のない構成について、当接だけにすることが任意であることは、技術常識に過ぎないことは明らか」であり、さらに、「甲第1号証刊行物の図3.4.18においても、腹起し側の補強材が山留壁側にボルトなどで固着されているならば、山留め壁側の補強材は必要がないともいえるので、甲第1号証刊行物の図3.4.18の図示の構成においても、固着されていない当接状態と理解される」から、「固着の必要がないものを固着させないことは山留技術に限らず、一般的に至極当然のことであるので、当業者にとって固着されない状態で当接させることは容易である」旨を主張する(申立書38ページ下から8行~39ページ13行)。
しかし、甲2は、本件発明2の如く、「腹起しに作用する軸力」を「山留め壁に伝達する」「軸力伝達装置」が備える、「軸力伝達部材」と「軸力受け部材」とが、互いに「固着されていない」ことを開示するものではない。そして、仮に、申立人が主張するように「当接だけで固着の必要のない構成について、当接だけにすることが任意である」ことが甲2の記載から導き出せるとしても、甲1-1発明における「腹起しに取り付けたチャンネル」(軸力伝達部材)と「山留め壁に取り付けたチャンネル」(軸力受け部材)について、「右から左に一方向にすべる力が働くのであるから、腹起しに取り付けられたすべり止め補強材・・・からの力を山留め壁に取り付けられたすべり止め補強材・・・が受けるためには、固着される必要はなく、単純に当接すれば足りる」とした申立人の主張が、その前提において誤りを含むことは前記(2)で述べたとおりであり、例えば、山留め壁に、せん断方向と角度のある方向の力が作用して、山留め壁のすべり方向(右から左)の歪みが、腹起しのすべり方向(右から左)の歪みを上回ったり、あるいは、山留め壁側から腹起し側に向けてせん断方向の力が作用し、腹起しに曲げが生じたりして、「山留め壁に取り付けたチャンネル」が「腹起しに取り付けたチャンネル」の力を受けないことも起こりうるのであるから、「山留め壁に取り付けたチャンネル」と「腹起しに取り付けたチャンネル」が、「当接だけで固着の必要のない構成」であるということはできず、したがって「当接だけにすることが任意である」ことを導き出すことはできない。さらに、甲1の図3.4.18の記載からも、両部材が「固着されていない当接状態」にあることを、申立人が主張するように導き出すことはできない。
よって、上記した申立人の主張は採用できない。
そして、本件発明2は、上記した相違点に係る構成を備えることにより、「作用する軸力方向の反対方向に対して腹起し5は山留め壁に拘束されないようにしているので、作用する軸力と反対方向の力などの予定しない力や曲げが腹起しに作用したとしても従来同様に安定させることができる」(本件特許の願書に添付する明細書の【0047】)という効果を奏するものである。
(4) そうすると、本件発明2は甲1-1発明と相違するから甲1-1発明であるとはいえず、また、甲1-1発明において、「腹起しに取り付けたチャンネル」(軸力伝達部材)と「山留め壁に取り付けたチャンネル」(軸力受け部材)とが「互いに固着されていない」ものとすることは、甲2に記載された事項を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえないから、本件発明2は、甲1-1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
4 本件発明3について
(1) 本件発明3は、本件発明2と同様に、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されていない」構成を備えている。
(2) 本件発明3の、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」ことは、前記3における本件発明2についての検討を踏まえて、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明3は甲1-1発明と相違するから甲1-1発明であるとはいえない。
また、前記3における本件発明2についての検討を踏まえると、同様にして、本件発明3は甲1-1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
5 本件発明5について
(1) 請求項5は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の記載を引用する形式で記載されているから、本件発明5は、少なくとも請求項1及び5に記載された事項により特定されるものである。したがって、本件発明5と甲1-1発明を対比するにあたっては、本件発明1の構成も考慮して論じることとする。
(2) 本件発明5と甲1-1発明を対比すると、本件発明5は、「軸力伝達部材」が、「前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である」のに対し、甲1-1発明の、「補強材」のうち「腹起しに取り付けたチャンネル」(軸力伝達部材)は、かかる構成を備えていない点で相違する。
(3) この相違点について、申立人は、「本件特許明細書[0026]には、「加えて、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることにより、腹起しを設置した後、軸力受け部材に軸力を伝達させるために軸力伝達部材、特に軸力伝達部材本体を取付けることが容易に行うことができる。」と記載されており、位置調整機能に関して、軸力伝達部材を取付部材と軸力伝達部材本体の2部材にした機能を確認することはできない。したがって、本件特許請求項5で特定したことは、単なる任意に過ぎないものであって、技術的に意味あることとは認められず、新たな相違点ではないので、前述した本件特許1~4において検討された事項をそのまま適用できることとなり、本件発明5は、甲1発明と同一発明であることになる。」(申立書29ページ下から4行~30ページ8行)と主張する。
しかし、本件特許の願書に添付した明細書の【0052】に、「図5(A)及び図5(B)に示すように、軸力伝達部材本体11aの下片にもボルト穴11a1が腹起し5の長手方向に沿って6つ設けられている。これと同じ間隔で、取付部材11bの上片にもボルト穴11b2が腹起し5の長手方向に沿って5つ設けられている。そして、軸力伝達部材本体11aの下片のボルト穴11a1と取付部材11bの上片のボルト穴11b2とにボルトBが通され締結される。このように構成することで、軸力伝達部材本体11aを取付部材11bから着脱自在とすることができる。また、軸力伝達部材本体11aを軸力受け部材12に当接させるために腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能とすることができ、軸力伝達部材本体を取付けることが容易となる。腹起しを設置した後、軸力受け部材に軸力を伝達させるために軸力伝達部材、特に軸力伝達部材本体を取付けることが容易に行うことができる。」と記載されていることを参酌すれば、「位置調整機能に関して、軸力伝達部材を取付部材と軸力伝達部材本体の2部材にした機能」は明らかであって、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人が提示するその他の文献をみても、上記相違点に係る本件発明5の構成は、記載も示唆もされていない。
(4) そうすると、本件発明5は甲1-1発明と相違するから甲1-1発明であるとはいえず、また、甲1-1発明において、「補強材」のうち「腹起しに取り付けたチャンネル」(軸力伝達部材)を、前記(2)で述べた相違点に係る本件発明5の構成を備えたものとすることは、甲1-1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないから、本件発明5は、甲1-1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
6 本件発明11について
(1) 請求項11は、請求項10の記載を引用する形式で記載されているから、本件発明11は、請求項10及び11に記載された事項により特定されるものである。
(2) 本件発明11は、本件発明2と同様に、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されていない」構成を備えている。
(3) 本件発明11の、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」ことは、前記3における本件発明2についての検討を踏まえて、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明11は甲1-2発明と相違するから甲1-2発明であるとはいえない。
また、前記3における本件発明2についての検討を踏まえると、同様にして、本件発明11は甲1-2発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
7 本件発明12について
(1) 本件発明12は、本件発明2と同様に、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されていない」構成を備えている。
(2) 本件発明12の、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」ことは、前記3における本件発明2についての検討を踏まえて、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明12は甲1-2発明と相違するから甲1-2発明であるとはいえない。
また、前記3における本件発明2についての検討を踏まえると、同様にして、本件発明12は甲1-2発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
8 本件発明14について
(1) 請求項14は、請求項10乃至請求項13のいずれか1項の記載を引用する形式で記載されているから、本件発明14は、少なくとも請求項10及び14に記載された事項により特定されるものである。
(2) 本件発明14は、本件発明5と同様に、「前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されていない」構成を備えている。
(3) 本件発明14の、「前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である」ことは、前記5における本件発明5についての検討を踏まえて、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明11は甲1-2発明と相違するから甲1-2発明であるとはいえない。
また、前記5における本件発明5についての検討を踏まえると、同様にして、本件発明14は甲1-2発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
9 本件発明17について
(1) 本件発明17は、本件発明2と同様に、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されていない」構成を備えている。
(2) 本件発明17の、少なくとも、「前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材と」が「固着されていない」ことは、前記3における本件発明2についての検討を踏まえて、甲1に開示されているといえず、この点で本件発明3は甲1-3発明と相違するから甲1-3発明であるとはいえない。
また、前記3における本件発明2についての検討を踏まえると、同様にして、本件発明17は甲1-3発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1、4、6、7、10、13及び16は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許は特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであり、本件特許の請求項1、4、6、7、10、13及び16に係る特許は同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明2、3、5、11、12、14及び17に係る特許は、申立人が申立てた理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明2、3、5、11、12、14及び17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700506