特許異議申立
2022-700615
ケーソンの状態予測システム及びプログラム
- 審判番号
- 2022-700615
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-194076
- 登録番号
- 6995555
- 請求日
- 2022年07月11日
- 審決日
- 2025年02月10日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オリエンタル白石株式会社
- 【権利者代理人】安彦 元
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.537-YAA(E02D) / P1651.121-YAA(E02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6995555号発明「ケーソンの状態予測システム及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6995555号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕について訂正することを認める。
特許第6995555号の請求項1、3~4、6に係る特許を維持する。
特許第6995555号の請求項2、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6995555号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年10月4日に出願され、令和3年12月17日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月14日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月11日 :特許異議申立人合同会社SAS(以下申
立人」という。)による請求項1~6に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和4年 9月29日付け:取消理由通知書
同年11月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 3月 1日 :申立人による意見書の提出
同年 5月25日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 6月19日 :特許権者による意見書の提出
同年 7月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下、
「決定の予告1」という。)
同年 9月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月13日 :申立人による意見書の提出
令和6年 3月28日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 5月 2日 :特許権者による意見書の提出
同月14日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
同年 7月19日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下、
「決定の予告2」という。)
同年 9月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月27日差出:申立人による意見書の提出
なお、令和4年11月21日及び令和5年9月8日にされた訂正の請求は、令和6年9月20日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年9月20日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6995555号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」と記載されているのを、
「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること」に訂正する。
なお、訂正事項1については、訂正請求書の「7 訂正の理由」「(3)訂正の理由」の「ア」の記載などからみて、請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正するものと認められる。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2記載の」と記載されているのを「請求項1記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」と記載されているのを、
「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること」に訂正する。
なお、訂正事項4については、訂正請求書の「7 訂正の理由」「(3)訂正の理由」の「ア」の記載などからみて、請求項4の記載を引用する請求項6も同様に訂正するものと認められる。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4又は5記載の」と記載されているのを「請求項4記載の」に訂正する。
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落[0011]に記載された「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」を「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること」に訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落[0012]を削除する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落[0013]に記載された「第1又は第2発明において」を「第1発明において」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落[0014]に記載された「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」を「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること」に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落[0015]を削除する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落[0016]に記載された「第4発明又は第5発明において」を「第4発明において」に訂正する。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正について、本件訂正前の「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成される」という記載に着目すれば、「連関度」が「ノードで構成される」、すなわち、連関度がノードであると理解できる余地があった。
一方、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載の全体に着目すれば、訂正事項1に係る訂正箇所に先立ち、「3段階以上の重み付けとしての連関度」と記載されていることから、訂正事項1に係る本件訂正前の「上記連関度」とは、当該記載以前の「3段階以上の重み付け」のことを指していると理解できる。また、本件訂正前の「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」とは、「ノードで」の「で」が、「動作が行われる所」等を意味することもあることに留意すれば、「上記連関度」、すなわち、「3段階以上の重み付け」が、「人工知能におけるニューラルネットワークのノード」という場所で設定されていると理解することができる。
また、このように理解することは、ニューラルネットワークの技術分野における技術常識(令和5年9月8日に提出された意見書とともに提出された乙第2号証や、令和6年5月2日に提出された意見書とともに提出された乙第5号証を参照。)とも整合している。
よって、訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の記載について、「連関度」が「重み付け」の意味であることを明確にしようとするものといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0050】には、「各ノード61a~61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。」との記載があり、「重み付け」が設定されるのが「ノード」であることが示されている。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項1についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2のいずれか1つを引用する記載であったのを、請求項1を引用する記載に訂正するものであって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
ウ 新規事項の有無
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と同様であるから、訂正要件を満たしている。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項6が請求項4又は5のいずれか1つを引用する記載であったのを、請求項4を引用する記載に訂正するものであって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
ウ 新規事項の有無
上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(7)訂正事項7~12について
訂正事項7~12は、訂正事項1~6により訂正された特許請求の範囲の請求項1~6の記載に、明細書の記載を整合させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。
また、訂正事項7~12は、明細書の記載を特許請求の範囲における請求項1~6の記載に整合させるものであるところ、訂正事項1~6については、上記(1)~(6)で説明したとおり、願書に添付した明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではない。よって、訂正事項7~12に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、上記のとおり、訂正事項7~12は、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させる、明瞭でない記載の釈明を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項7~12に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
4 申立人の主張
申立人は、訂正事項1及び4に関し、令和6年11月27日(差出日)の意見書3頁3~9、19~21行において、訂正前の「上記関連度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること」という記載は、それ自体きわめて明瞭で、明細書の記載を参酌しなければ理解し得ない性質のものではなく、「ノードで構成される」と「ノードに設定される重み付けである」の差異は顕著であるが、明細書の全文を参照しても「連関度」について「ノード」であるか「重み付けで」あるか一義的に明確に記載(定義)されているとはいえない旨を主張している。そして、出願人が自ら明細書において2通りの意味を持つように記載しているところ、この事情を全く参酌せずに一方の意味をとるように恣意的に解釈することは許されない旨を主張している。
しかしながら、上記3に示したとおり、本件訂正前の「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成される」という記載は、「ノードで」の助詞「で」が、「動作が行われる所」等を意味することもあることに留意すれば、「上記連関度」、すなわち、「3段階以上の重み付け」が、「人工知能におけるニューラルネットワークのノード」という場所で設定されているとも理解でき、このような理解が技術常識とも整合することからみて、上記記載は、それ自体が明瞭であるとはいえない。そのため、上記訂正事項1及び4は、明瞭でない記載である上記記載について、「連関度」が「重み付け」の意味であることを明確にしようとするものといえる。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
5 小括
以上のとおり、訂正事項1~12に係る本件訂正は、訂正要件を満たしている。
よって、本件訂正を認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり本件訂正は認めることができるので、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等といい、全体を「本件訂正発明」という。)は、令和6年9月20日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ニューマチックケーソン工法に使用されるケーソン躯体の次時点における各種状態を予測するケーソンの状態予測システムにおいて、
実際に計測する、ある時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体現在情報と、上記ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報と、予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度が予め記憶されているデータベースと、
新たに地盤を掘削するケーソン躯体から現時点における上記躯体現在情報と上記函内地形情報を取得する情報取得手段と、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、上記情報取得手段を介して取得された躯体現在情報及び函内地形情報が入力された場合に、当該躯体現在情報及び当該函内地形情報に対応する、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報を出力解として探索する探索手段とを備え、
上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること
を特徴とするケーソンの状態予測システム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
上記データベースには、次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報及び次時点における予測地盤情報との3段階以上の上記連関度が予め記憶され、
上記探索手段は、上記データベースに記憶されている連関度を参照し、上記情報取得手段を介して取得された情報に基づき、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報及び次時点における予測地盤情報を探索すること
を特徴とする請求項1記載のケーソンの状態予測システム。
【請求項4】
ニューマチックケーソン工法に使用されるケーソン躯体の次時点における各種状態を予測するケーソンの状態予測プログラムにおいて、
実際に計測する、ある時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体現在情報と、上記ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報と、予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度を予め取得する連関度取得ステップと、
新たに地盤を掘削するケーソン躯体から現時点における上記躯体現在情報と上記函内地形情報を取得する情報取得ステップと、
上記連関度取得ステップにおいて取得した連関度を参照し、上記情報取得ステップにより取得した躯体現在情報及び函内地形情報が入力された場合に、当該躯体現在情報及び当該函内地形情報に対応する、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報を出力解として探索する探索ステップとをコンピュータに実行させ、
上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けであること
を特徴とするケーソンの状態予測プログラム。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
上記連関度取得ステップでは、次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報及び次時点における相対的地盤情報との3段階以上の上記連関度を予め取得し、
上記情報取得ステップでは、上記データベースに記憶されている連関度を参照し、上記情報取得手段を介して取得された情報に基づき、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報及び次時点における相対的地盤情報を探索すること
を特徴とする請求項4記載のケーソンの状態予測プログラム。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び決定の予告2に記載した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立書の「申立ての理由」をふまえると、申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)進歩性欠如
ア 甲第1号証を主たる証拠として
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項、及び周知技術(甲第4号証~甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 甲第2号証を主たる証拠として
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第3号証に記載された事項、及び周知技術(甲第4号証~甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)明確性要件違反
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 決定の予告2の概要
(1)明確性要件違反
本件特許の請求項2及び5に係る発明、並びに、請求項2を引用する請求項3に係る発明及び請求項5を引用する請求項6に係る発明は、明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲第2号証を主たる証拠として
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証~甲第3号証に記載された事項、及び周知技術(甲第4号証~甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開昭55-145216号公報
甲第2号証:特開平1-187228号公報
甲第3号証:特開2015-229826号公報
甲第4号証:吉冨康成、「ニューラルネットワーク」、株式会社朝倉
書店、2002年7月10日、p.14-15
甲第5号証:岡谷貴之、「深層学習」、株式会社講談社、2015年
4月7日、p12-13
甲第6号証:井上裕介 外3名、「ニューラルネットワークを用いた北
陸地域における鋼橋RC床版の劣化予測」、第八回道路橋
床版シンポジウム論文報告集、土木学会、p301-30
4、平成26年10月29日
なお、以下では、甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ、甲1、甲2等という。
第5 証拠について
1 甲1
(1)甲1の記載
ア 「この発明は大型ニユーマチツクケーソンの沈下方法に関するものでる。
・・・
この発明の概要はケーソン沈設時において従来実施されている土木計測に加え、沈設量,沈設速度の制御をなすためコンピユーター等の処理により掘削パターンを定め、また調圧自動沈下させるためのエアコントロールをなす方法である。そしてこの発明の沈下方法のフローシートが第1図、第2図に示されている。
先ず変位計,辺口荷重計,沈下計等の各センサー1からの検出値および土の挙動,土の変化等を示す土性値,土層分布よりケーソンの抵抗と荷重がバランスした状態、すなわちケーソンの静止時における掘削パターンを算出する。この掘削パターンとは掘削順序とか沈設時の地盤の掘削形状で、例えば辺口回りの土砂の残す量等を決定する。また以上の算定には理論計算、統計的処理、経験等を綜合してなされる。」(1頁左欄下から4行-2頁左上欄8行)
イ 「以上の掘削パターンに従つてケーソンAの作業室B内の地盤を掘削し、次いで予測計算の設定値に基いて調圧沈下用のエアコントロールにより自動的にケーソンを沈下させる。すなわちこの自動調圧沈下はケーソンA内、特に作業室B内作業員を退去させ、エアコントロールにより過大な沈下量,沈下速度にならないようにケーソンAを沈下させるもので、第3図はその調圧自動沈下のフローシートであり第4図はエアコントロールのフローシートである。そしてケーソンAには複数のコンプレツサ2より、除湿装置3,空気清浄機4,ケーソン内圧調整バルブ5を通り送気管6を経て作業室BおよびマンロツクC内に圧気を送るようになつている。そしてその圧気は圧力調整器7によつて調整されるようになつている。8はマンロツク用自動減圧装置である。」(2頁左上欄9行-2頁右上欄5行)
ウ 「また作業室Bには換気用バルブ9が設けられこの排気用バルブ9に続いて排気管10,圧力制御弁11,流量制御弁12,調圧停止用ボールバルブ16等が連らなつている。
ケーソンAを自動的に沈下させるに際しては送気を停止し、排気用バルブ9を開いて作業室B内を減圧し、計画通りに所定深さまでケーソンAを沈下させその後排気用バルブ9を閉じ、再び送気をする。
ところでケーソンAは作業室内の掘削時においても僅かながら自然沈下する。そこで掘削中および自動調圧沈下中の前記各センサー1からえられる諸情報はコンピユーター処理よりリアルタイムでフイードバックして沈下管理をなしつつ前記掘削と自動沈下を繰返し、所定深さにケーソンAを沈設させる。
この発明は以上の構成からなり、各種センサーによる計測に加えて、沈下量,沈下速度の制御を行うために掘削パターン,自動調圧沈下を行う際のエアコントロールを決定し、さらにこれらとコンピユータ処理によりフイードバツクする科学的施工管理と施工手段によつて施工の信頼性,姿勢制御等の信頼性をもたらすことができる。」
(2頁右上欄6行-左下欄9行)
(2)甲1に記載された発明
上記(1)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」及び「甲1プログラム発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「土木計測に加え、沈設量,沈設速度の制御をなすためコンピユーター等の処理により掘削パターンを定め、また調圧自動沈下させるためのエアコントロールをなすものであって、(上記ア)
変位計,辺口荷重計,沈下計等の各センサー1からの検出値および土の挙動,土の変化等を示す土性値,土層分布よりケーソンの抵抗と荷重がバランスした状態、すなわちケーソンの静止時における掘削パターンを算出し、(上記ア)
掘削中および自動調圧沈下中の前記各センサー1からえられる諸情報はコンピユーター処理よりリアルタイムでフイードバックして沈下管理をし、(上記ウ)
掘削パターンに従つてケーソンAの作業室B内の地盤を掘削し、次いで予測計算の設定値に基いて調圧沈下用のエアコントロールにより自動的にケーソンを沈下させる、すなわちこの自動調圧沈下はケーソンA内、特に作業室B内作業員を退去させ、エアコントロールにより過大な沈下量,沈下速度にならないようにケーソンAを沈下させるシステムであって、(上記イ)
ケーソンAには複数のコンプレツサ2より、除湿装置3,空気清浄機4,ケーソン内圧調整バルブ5を通り送気管6を経て作業室BおよびマンロツクC内に圧気を送るようになつていて、その圧気は圧力調整器7によつて調整されるようになつている、(上記イ)
大型ニユーマチツクケーソンを沈下させるシステム。(上記ア、イ)」
また、甲1において、「大型ニユーマチツクケーソンを沈下させるシステム」が、「コンピユーター処理よりリアルタイムでフイードバックして沈下管理」をしていることをふまえると、甲1には、甲1発明の「大型ニユーマチツクケーソンを沈設させるシステム」を実施するための「プログラム」の発明が記載されているといえる。
したがって、甲1には、次のプログラムの発明(以下「甲1プログラム発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1プログラム発明)
「甲1発明を実施するためのプログラム」
2 甲2
(1)甲2の記載
ア 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、圧気下で地下を掘削して地下構造物を構築するニューマチックケーソンの沈設管理システムに関するものである。」(1頁右欄2-5行)
イ 「〔従来の技術とその課題〕
従来ケーソンの施工に際しては沈下機構が理論的に解明されていないため、沈設手順は施工時のオーダーを概略的に把握するものであった。
また、各種測定計によって沈下沈態を計測するにしてもケーソン沈下前後の静的データを結果論的に確認するに過ぎず、工程及び安全管理は経験的に積重ねによる要素に頼っていた。」(1頁右欄6-13行)
ウ 「〔課題を解決するための手段〕
本発明は前記目的を達成するため、ケーソン本体の圧気作業室に掘削機構を移動自在に設け、該掘削機構と圧気作業室内にテレビカメラを取付け、地上の中央管理制御室には掘削監視モニター画面、作業室監視モニター画面、コンピュータ、プリンター及び掘削操作盤を設置し、各種センサーからの検出値をコンピュータに導入してケーソンの抵抗と荷重がバランスした状態の掘削パターンを算出し、その掘削パターンに従って掘削監視モニター画面及び作業室監視モニター画面を見ながら掘削操作盤で掘削機構を遠隔操作し、次に掘削操作盤で送気流量弁を制御して自動的にケーソンを沈下させ、かつ前記掘削中の自然沈下および自動沈下中の諸情報をコンピュータ処理し、フイードバックして沈下管理をなしつつ前記掘削と自動沈下を繰返すことを要旨とするものである。
〔作用〕
本発明によれば、たえずニューマチックケーソンの位置(深度、傾斜、移動)から沈下掘削を管理するので、精度の良い沈設ができ、また異常発生時、計測結果が即時フイードバックされるので、トラブルは大きくなる前に回避されたり、未然に防げる。さらに、ケーソンの沈下掘削状況と共に周辺地盤の状況が正確に把握でき、そのデータはコンピュータで迅速に処理され、沈設に伴う周辺地盤の沈下も防止でき、常時、ケーソン躯体の位置が正確に計測されるので、繁雑な測量作業が減らせ、また、熟練者の勘によることなく、コンピュータで最適な沈下掘削管理ができるので、ケーソン沈設管理の標準化が図れる。
しかも、オペレータは地上の中央管理制御室内で掘削操作やエアーコントロールを含めたすべての作業を行える。」(2頁右上欄16行-右下欄9行)
エ 「〔実施例〕
以下、図面について本発明の実施例を詳細に説明する。
第1図は本発明のニューマチックケーソンの沈設管理システムの1実施例を示す説明図で、図中1はケーソン躯体、1aはその底盤、1bは刃先、2は該刃先1bで形成される圧気作業室である。
底盤1aに、マテリアルロック3が接続する穴4と、マンロック5が接続する穴6とを設け、さらにコンプレッサ7の送気管8端も底盤1a下の圧気作業室2内に開口する。図中9は、マテリアルロック3を介して穴4から圧気作業室2内へ降ろされる排土用バケットである。
以上は従来のニューマチックケーソンと同じであるが、底盤1aの下面にレール10を設け、このレール10に沿つて掘削機構11を移動自在に設けた。該掘削機構11は一例としてターンテーブル11aによりブーム11bが支承されるシャベルタイプのものであり、圧気作業室2内の隅々にまで作業範囲が及ぶものである。
なお、掘削機構11としては他に、サイドカッタを有するスクレーパータイプのものや無線又は有線により運転されるトラクタショベルのごときものを用いてもよい。
この掘削機構11にテレビカメラによる掘削機カメラ12を取付け、また圧気作業室2内で底盤1aの下面にテレビカメラによる函内カメラ13を取付ける。
第2図は本発明のブロック回路図であるが、先に本発明で用いるセンサー類を述べると、沈下及び掘削中でのリアルタイムに情報を得るものとして、(間隙)水圧計14、鉄筋計15、コンクリート応力計16がケーソン躯体1に埋設され、さらに、第3図に示すように固定式傾斜計17、気圧計18、可燃性ガス検知器19や酸素濃度検出器20、送気温度検出器21、送気流量検出器22、送気流量発信器23なども設けられる。
一方、周辺地盤などの状況を把握するものとして、傾斜計17′や各種沈下計24,24′、変位計25などが適宜個所に設けられる。
図中26は地上に設けられる中央管理制御室で、その内部にはパーソナルコンピュータ27と、これらに接続するプリンタ28、及び前記掘削機カメラ12と同軸ケーブル29で接続するCRTの掘削監視モニター画面30、函内カメラ13と同じく同軸ケーブル29で接続するCRTの作業室監視モニター画面31を設置し、さらにこれらに掘削機構11を遠隔操作し、また送気管8の途中に設けた送気流量弁32を開度調整する掘削操作盤33を隣接した。
なお、前記パーソナルコンピュータ27は周辺機器としてCRT34やフロッピーディスク入出力装置35を有する。
前記各種センサー類は入力モジュール36を介してコンピュータ27と接続され、各情報をコンピュータ27に入力するが、計測情報の他に掘削機構11の位置、アーム角度、バケット角度、旋回角などや送気流量弁32の開度などの情報も同様に入力される。
第4図は実施の概要を示すフローチャートで、躯体形状寸法、土質条件、スペック(許容誤差等)および安全関係法規に基づく作業時函内圧等がコンピュータ27に予め設定される(ステップイ)。
これらの条件に合わせて沈下及び掘削中時点での各種センサーでの検出値と土の挙動等の沈下に係わる主なデータがコンピュータ27に入力される(ステップロ)。
該コンピュータ27は、これらの各種センサーによる計測値を物理量に換算し制御値を計算することになる。
具体的には、土性値と形状をパラメータとした静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算、及び当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する統計的処理、さらに多数の実績を基に静的な最大地盤抵抗力を土質のタイプ別等に層別して見積もる経験方式に基づく計算が行われる(ステップハ)。
これらの計算の結果、掘削パターンと沈下指示のデータがCRT34等に出力される(ステップニ)。
沈下調圧指示は、センサー出力により傾斜、沈設速度及び沈下量等の判定項目が参配され、沈下が過大になりそうな場合には減圧停止又は増圧の指示が行われる。
また、前記沈下に係わる主なデータは各沈下サイクル毎に土の移動状況、力学的特性を測定し、次のステップのため最も信頼度の高いデータを得るよう構成される。
以上のコンピュータ27よりCRT34に出力される掘削パターンにもとづいて、中央管理制御室26内のオペレータは、掘削監視モニター画面30及び作業室監視モニター画面31を見ながら、掘削操作盤33で掘削機構11を操作し、圧気作業室2内の地盤を掘削する。
次いで、予測計算の設定値に基づいて掘削操作盤33で送気流量弁32の開度を調整し、調圧沈下用のエアーコントロールにより自動的にケーソン躯体1を沈下させる。
この作業は、過大な沈下量、沈下速度にならないように、ケーソン躯体1を沈下させるものである(以上ステップホ)。
ところで、ケーソン躯体1は作業室2内の掘削時においても僅かながら地盤沈下する。そこで掘削中および自動調圧沈下中の前記各種センサーからえられる諸情報はコンピュータ27の処理よりリアルタイムでフィードバックして沈下管理をなしつつ前記掘削と自動沈下を繰返し、所定深さにケーソン躯体1を沈設させる。
また、このようにケーソン躯体1の沈下掘削状況の他に沈下計24,24′や変位計25等から周辺地盤の状況もコンピュータ27へ入力され、そのデータはコンピュータ27で処理されるので沈設に伴う周辺地盤の沈下も防止できる。」
(2頁右下欄10行-4頁右上欄1行)
(2)甲2に記載された発明
上記(1)より、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」及び「甲2プログラム発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「ニューマチックケーソンの沈設管理システムであって、(上記ア)
センサー類は、沈下及び掘削中でのリアルタイムに情報を得るものとして、(間隙)水圧計14、鉄筋計15、コンクリート応力計16がケーソン躯体1に埋設され、固定式傾斜計17等も設けられ、周辺地盤などの状況を把握するものとして、傾斜計17′や各種沈下計24,24′、変位計25などが適宜個所に設けられ、(上記エ)
前記各種センサー類は入力モジュール36を介してコンピュータ27と接続され、各情報をコンピュータ27に入力し、(上記エ)
躯体形状寸法、土質条件、スペック(許容誤差等)および安全関係法規に基づく作業時函内圧等がコンピュータ27に予め設定され、(上記エ)
これらの条件に合わせて沈下及び掘削中時点での各種センサーでの検出値と土の挙動等の沈下に係わる主なデータがコンピュータ27に入力され、(上記エ)
該コンピュータ27は、これらの各種センサーによる計測値を物理量に換算し制御値を計算することになり、具体的には、土性値と形状をパラメータとした静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算、及び当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する統計的処理、さらに多数の実績を基に静的な最大地盤抵抗力を土質のタイプ別等に層別して見積もる経験方式に基づく計算が行われ、これらの計算の結果、掘削パターンと沈下指示のデータがCRT34等に出力されるものであり、(上記エ)
ケーソン躯体1の沈下掘削状況の他に沈下計24,24′や変位計25等から周辺地盤の状況もコンピュータ27へ入力され、そのデータはコンピュータ27で処理されるので沈設に伴う周辺地盤の沈下も防止できる、(上記エ)
ニューマチックケーソンの沈設管理システム。(上記ア)」
また、甲2において、「ニューマチックケーソンの沈設管理システム」が、「コンピュータ27」を用いた点が記載されていることをふまえると、甲2には、甲2発明の「ニューマチックケーソンの沈設管理システム」を実施するための「プログラム」の発明が記載されているといえる。
したがって、甲2には、次のプログラムの発明(以下「甲2プログラム発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2プログラム発明)
「甲2発明を実施するためのプログラム」
3 甲3
(1)甲3の記載
ア 「【0016】
レーダ11は、ケーソン底版の下面側に設けられる。ケーソン底版の下面側は、ケーソンを沈設するための作業室の天井となる。作業室の天井には土砂掘削用の掘削機が設けられ、作業室下部の土砂を掘削することによりケーソンを沈降させる。
レーダ11は、掘削機で掘削した土砂の掘削形状を測定する。具体的には、レーダ11から放射されるレーザ等により、レーダ11から土砂までの距離を、放射方向毎に測距する。レーダ11は、放射方向と距離とを3次元で記録することにより、土砂の形状を測定することができる。
レーダ11は、例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、超音波レーダを用いることができる。また、ステレオカメラを用いたレーダ代替装置を利用してもよい。
【0017】
ケーソン底版の下面側には、レールとレールに沿って走行できる走行部が設けられる。レーダ11は、走行部に取り付けられて、レールが設けられた作業室の広い範囲で土砂の形状を測定することができる。本実施形態では、ケーソン刃口が設けられるケーソン外周部近傍に沿って底版の下面側にレールを設け、ケーソン刃口近傍の堀残し部の形状を測定することができる。
【0018】
ここで、堀残し部とは、刃口に掛かる地盤反力を弱めてケーソンの沈降を制限する目的で刃口近傍に設ける土砂の堀残しである。堀残し部が底版下面に達しているときには底版下面が地盤反力を受けるため、ケーソンの沈降を抑えることができる。特に軟弱地盤においては、堀残し部を大きくすることにより刃口が受ける地盤反力を低減させることにより、ケーソンの沈降を抑えることができる。レーダ11を用いて堀残し部の法面の形状を測定することにより、堀残し部の掘削量を正確に把握することができるため、ケーソンの沈設管理が容易になる。
【0019】
レーダ11は、底版の下面側の基準点から堀残し部の法面までの距離を測定する。基準点とは、レーダ11の計測位置である。レーダ11はレールに沿って走行部とともに移動をするため、基準点もレーダ11の移動に伴って移動する。レーダ11は、法面までの距離を、基準点となるレーダ11の測定位置と対応させて測定して制御装置10に送信する。制御装置10は、基準点と対応した法面形状とにより、ケーソン内部のそれぞれの場所における法面の形状を正しく測定することが可能となる。基準点は、例えば走行部に設けられる位置検出装置により測定することができる。
【0020】
底版反力計12は、底版が堀残し部から受ける地盤反力を測定する荷重測定器である。
底版反力計12は、底版の下面側の面位置にケーソン外周部に沿って複数個が設けられる。底版反力計12は、測定した堀残し部からの地盤反力(圧力)を制御装置10に入力する。設置される複数の底版反力計は、地盤反力の測定値を各々制御装置10に送信する。制御装置10は、入力された底版反力計12の配置位置から、隣接する底版反力計の間の地盤反力を推定して、地盤反力の分布を表示装置16に表示する。表示装置16に表示される内容については図4を用いて後述する。
なお、底版が受ける地盤反力は、ケーソンの四隅などで力が集中しやすい。したがって、大きな地盤応力が想定される部分では、耐荷重量の大きな底版反力計を用いることができる。また、底版反力計の設置個数を増やして設置間隔を狭くすることにより、堀残し部の地盤反力の分布の測定精度が向上するとともに、故障等に対するロバストネスを向上させることができる。底版反力計12は、刃口反力計13と同じ荷重測定器を用いてもよい。
・・・
【0023】
次に、図3を用いて、堀残し部の掘削における機器の配置について説明する。図3は、ケーソン沈設管理システム1における機器配置の一例を説明する図である。
図3において、ケーソン5は、底版51、刃口52、及び側板53を備える。底版51の下部に設けられる空間は掘削作業を行う作業室となっている。ケーソン5は、土砂6に沈設される。底版51の下部であって刃口52近傍の側板53の作業室側には、堀残し部61がある。堀残し部61は、底版51の下面に接することにより底版51に対して、地盤反力を与えることができる。
底版51下面の刃口52の近傍には底版反力計12が、刃口52の水平方向に沿って複数設けられる。底版反力計12は、底版51の下面の面位置に設置することにより、底版51下面が受ける堀残し部61からの単位面積当たりの地盤反力(圧力)を均等に受けることができる。また、刃口52の底面には、刃口反力計13が、刃口52の水平方向に沿って複数設けられる。」
イ 「【0033】
表示装置16は、ケーソン5の平面図形を、x方向とy方向の目盛とともに表示してもよい。図4では、表示装置16はx軸及びy軸に距離(m)の目盛を表示している。表示された目盛により、作業者は堀残し部61の形状、重心位置のずれ等を実際の距離で把握することができる。
また、主表示領域161には、現在の時刻168が表示される。表示装置16の表示を記録するときには時刻168を記録同時に記録してもよい。
・・・
【0035】
副表示領域163及び副表示領域164は、底版反力計12及び刃口反力計13の計測値を表示する。主表示領域161では地盤反力をコンター図表示する場合であっても、副表示領域163及び副表示領域164に測定値を表示することにより、作業者は具体的な数値を把握することができる。なお、それぞれの測定値の右側には、表示しきれない数値をスクロールするためのスクロールバーが設けられている。
副表示領域165は、堀残し部61が底版51に接する面積から計算される開口率が表示される。作業者は、開口率を監視しながら掘削作業を計画することができる。
副表示領域166にはケーソン傾斜量が表示され、副表示領域167には、上述した重心のずれが表示される。」
4 周知技術
甲4の14~15頁、甲5の12~13頁、甲6の各記載からみて、以下の技術が周知技術であると認められる。
(周知技術)
「ニューラルネットワークを用いて、複数の入力データから、将来の一つ乃至は複数の出力データを推定することであって、ニューラルネットワークのノードには重みが設定されていること。」
第6 決定の予告2に記載した取消理由についての当審の判断
1 明確性要件(特許法36条6項2号)について
(1)請求項2及び5について
本件訂正により、訂正前の請求項2ないし5は削除された。
また、本件訂正により、訂正前の請求項2及び5が削除されたことにより、本件訂正により訂正された請求項3は、請求項1のみを引用する形式に訂正され、本件訂正により訂正された請求項6は、請求項4のみを引用する形式に訂正されたものである。
そのため、本件訂正により、当審が上記決定の予告2で通知した請求項2及び5に係る特許に対する取消理由、並びに、請求項2を引用する請求項3及び請求項5を引用する請求項6に係る特許に対する取消理由は、存在しないものとなった。
2 甲2を主引用例とする進歩性欠如(特許法29条2項)について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明において、「沈下及び掘削中でのリアルタイムに情報を得るものとして、(間隙)水圧計14、鉄筋計15、コンクリート応力計16」の「センサー類」が「ケーソン躯体1」に埋設されており、また、甲2発明は、「躯体形状寸法、土質条件、スペック(許容誤差等)および安全関係法規に基づく作業時函内圧等がコンピュータ27に予め設定」されている。
そして、甲2発明は、「これらの条件」(上記「土質条件」等)に合わせて「沈下及び掘削中時点での各種センサーでの検出値」、すなわち、「ケーソン躯体1」に埋設された上記「センサー類」によって検出された情報と、「土の挙動等の沈下に係わる主なデータ」が「コンピュータ27に入力」されると理解できる。
甲2発明の「コンピュータ27」は、複数種の「データ」を扱うものであって、「各種センサーによる計測値を物理量に換算し制御値を計算」する、「具体的には、土性値と形状をパラメータとした静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算、及び当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する統計的処理、さらに多数の実績を基に静的な最大地盤抵抗力を土質のタイプ別等に層別して見積もる経験方式に基づく計算」等の処理を行うから、各種の「データ」を記憶するデータベースを有していることは明らかである。
(イ)甲2発明は「当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する」ものであるところ、「前の数ステップで得られたデータ」を基に推定する「諸量」には、「ケーソン躯体」の状態に係るパラメータが含まれていることは明らかである。また、前記「次のステップ」及び「推定する」は、本件訂正発明1の「次時点」及び「予測する」に相当する。
そうすると、甲2発明の「次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する」「ニューマチックケーソンの沈設管理システム」は、本件訂正発明1の「ニューマチックケーソン工法に使用されるケーソン躯体の次時点における各種状態を予測するケーソンの状態予測システム」に相当する。
(ウ)甲2発明において、「ケーソン躯体1」に埋設された「(間隙)水圧計14、鉄筋計15、コンクリート応力計16」、「固定式傾斜計17」は、「沈下及び掘削中でのリアルタイムに情報を得る」ための「センサー類」であることは明らかである。
そうすると、甲2発明の「ケーソン躯体1」に埋設された上記「センサー類」によって「リアルタイム」に得た「ケーソン躯体1」の情報は、本件訂正発明1の「実際に計測する、ある時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体現在情報」に相当する。
甲2発明は、上記(ア)のとおり、「コンピュータ27」がデータベースを有していることは自明であるから、本件訂正発明1が「実際に計測する、ある時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体現在情報と、上記ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報と、予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度が予め記憶されているデータベース」を備えることと、甲2発明とは、「データベース」を備える点で共通する。
(エ)甲2発明の「沈下及び掘削中でのリアルタイムに情報を得るもの」として「ケーソン躯体1に埋設」されている「(間隙)水圧計14、鉄筋計15、コンクリート応力計16」の「センサー類」は、本件訂正発明1の「新たに地盤を掘削するケーソン躯体から現時点における上記躯体現在情報」を「取得する情報取得手段」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明との、一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「ニューマチックケーソン工法に使用されるケーソン躯体の次時点における各種状態を予測するケーソンの状態予測システムにおいて、
データベースと、
新たに地盤を掘削するケーソン躯体から現時点における上記躯体現在情報を取得する情報取得手段と、
を備える
ケーソンの状態予測システム。」
<相違点1>
本件訂正発明1が、「実際に計測する、ある時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体現在情報と、上記ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報と、予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度が予め記憶されているデータベースと、
上記函内地形情報を取得する情報取得手段と、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、上記情報取得手段を介して取得された躯体現在情報及び函内地形情報が入力された場合に、当該躯体現在情報及び当該函内地形情報に対応する、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報を出力解として探索する探索手段とを備え、
上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けである」のに対して、
甲2発明では、データベース、情報取得手段について、そのような特定がされておらず、探索手段を備えていない点。
イ 検討・判断
上記相違点1について検討する。
甲3に記載された「堀残し部61」が「ケーソン5」の「底版51に接する面積」(上記第5の3(1)の段落【0023】、【0035】)や、「作業者」が「表示装置16」において把握することができる「堀残し部61の形状」(同上、段落【0033】)は、ケーソンの函内の土の地形の情報であるから、本件訂正発明1の「ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報」に相当する。
また、上記第5の4に示すとおり、ニューラルネットワークを用いて、複数の入力データから、将来の一つ乃至は複数の出力データを推定することであって、ニューラルネットワークのノードには重みが設定されていることは、周知技術である。
しかしながら、本件訂正発明1に係る相違点1のうち、「上記情報取得手段を介して取得された躯体現在情報及び函内地形情報が入力された場合に、当該躯体現在情報及び当該函内地形情報に対応する、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報を出力解として」について検討するに、甲2発明は、「該コンピュータ27は、これらの各種センサーによる計測値を物理量に換算し制御値を計算することになり、具体的には、土性値と形状をパラメータとした静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算、及び当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する統計的処理、さらに多数の実績を基に静的な最大地盤抵抗力を土質のタイプ別等に層別して見積もる経験方式に基づく計算が行われ」るものであるが、「静的な最大地盤抵抗力を算定する」ために用いる「形状」について、「躯体形状寸法」であるのか、それとも他の何らかの「形状」であるのか明らかでない。また、「土性値と形状をパラメータとした静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算」、「当該現場における前の数ステップで得られたデータを基に、次のステップの諸量を回帰式に基づき外挿的に推定する統計的処理」、「多数の実績を基に静的な最大地盤抵抗力を土質のタイプ別等に層別して見積もる経験方式に基づく計算」の相互関係が記載されておらず、自明ともいえない。
そうすると、仮に「形状」が、本件訂正発明1の「函内地形情報」であったとしても、当該形状が、「理論計算」に用いられることまでは、理解することはできるが、現時点の当該「形状」を「各種センサーによる計測値」とともに用いて、将来の「各種センサーによる計測値」を推定することが記載されているとも、示唆されているともいえない。そして、甲1~甲3のいずれにも、「将来躯体情報」を推定する場合に、「現時点における」「躯体現在情報」及び「函内地形情報」を用いることは、記載も示唆もされていない。
また、「将来躯体情報」を推定する場合に、「現時点における」「躯体現在情報」及び「函内地形情報」を用いることが、本件特許出願時において、技術常識であるともいえない。
よって、甲2発明に、甲1~甲3に記載された技術事項、及び、周知技術を適用して、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 申立人の主張
(ア)申立人は、甲第2号証において、「コンピュータ27」が「理論計算」の「算出」に利用する「土性値と形状」には、「沈下及び掘削」によって生じた地形情報を含む旨を主張している。(令和6年11月27日差出の意見書の4頁下から8行-5頁7行)
しかしながら、甲2において、上記「土性値」及び「形状」は、「静的な最大地盤抵抗力を算定する理論計算」に用いられるものであり、函内において掘り残された土の地形情報であるか不明であるか、仮にそのようなものであったとしても上記イに示したとおりである。
(イ)申立人は、甲第2号証に記載された掘削機カメラ12や函内カメラ13を用いれば、函内地形情報を得られることは明らかである旨を主張している。(同意見書の5頁8-12行)
しかしながら、甲2において、掘削機カメラ12や函内カメラ13が記載されているとしても、それを用いて「現時点における」「躯体現在情報及び函内地形情報」から将来の「各種センサーによる計測値」等を推定することが記載も示唆もされているとはいえない。
(ウ)申立人は、甲第2号証において、「・・・、沈下量、沈下速度の制御を行うために掘削パターン、・・を決定し、・・・フィードバックする・・」と記載されているように、掘削パターンを決定する際に沈下量や沈下速度を推定していることは明らかであり、他にも、甲第2号証には、「たえずニューマチックケーソンの位置・・・から沈下掘削を管理する・・・」という記載もあり、ケーソンの状態を推定していることが読み取れる旨を主張している。(同意見書の5頁13-26行)
しかしながら、甲2において、「沈下量、沈下速度の制御を行う」にあたって「掘削パターン」を決定する場合に、「沈下量」や「沈下速度」を推定していることは記載も示唆もされていない。仮に、ケーソン躯体の「沈下量」や「沈下速度」を予測するものであったとしても、上記の函内地形情報が何ら示されていないことから、「現時点における」「躯体現在情報」及び「函内地形情報」を用いて「躯体将来情報」を予測しているとはいえない。
(エ)まとめ
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲2発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の「ケーソンの状態予測システム」を、「ステップ」との記載を用い、コンピュータに実行させるプログラムの表現に変えたものである。
そうすると、本件訂正発明4と甲2プログラム発明との対比、及び検討・判断は、上記(1)ア及びイと同様である。
したがって、本件訂正発明4は、甲2プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明4を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明4と同様の理由により、甲2プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び3は、甲2発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件訂正発明4及び6は、甲2プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 決定の予告2に採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 甲1を主引用例とする進歩性について
(1)本件訂正発明1について
甲1発明は、上記第5の1の(2)のとおりであり、本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明1と甲1発明とは、少なくとも、甲2発明との上記相違点1と同様の、下記の相違点1’を有している。
相違点1’
本件訂正発明1が、「上記ケーソン躯体による堀り残し土に基づく函内地形情報と、予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度が予め記憶されているデータベースと、
上記函内地形情報を取得する情報取得手段と、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、上記情報取得手段を介して取得された躯体現在情報及び函内地形情報が入力された場合に、当該躯体現在情報及び当該函内地形情報に対応する、上記ケーソン躯体における次時点における躯体将来情報を出力解として探索する探索手段とを備え、
上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けである」のに対して、
甲1発明では、データベース、情報取得手段について、そのような特定がされておらず、探索手段を備えていない点。
上記相違点1’について検討する。
上記第6の2(1)イで示したのと同様に、甲1~甲3のいずれにも、「将来躯体情報」を推定する場合に、「躯体現在情報」及び「函内地形情報」を用いることは、記載も示唆もされていない。
また、「将来躯体情報」を推定する場合に、「現時点における」「躯体現在情報」及び「函内地形情報」を用いることが、本件特許出願時において、技術常識であるともいえない。
よって、甲1発明に、甲1~甲3に記載された技術事項、及び、周知技術を適用して、相違点1’に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の「ケーソンの状態予測システム」を、「ステップ」との記載を用い、コンピュータに実行させるプログラムの表現に変えたものである。
そうすると、本件訂正発明4と甲1プログラム発明との対比、及び、検討・判断は、上記(1)と同様である。
したがって、本件訂正発明4は、甲1プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明4を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明4と同様の理由により、甲1プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1及び3は、甲1発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件訂正発明4及び6は、甲1プログラム発明、甲1~甲3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 明確性要件違反について
申立人は、本件の請求項1の第2段落に、「予測される前記躯体現在情報と前記函内地形情報とに対する次時点におけるケーソン躯体の各種状態を示す躯体将来情報との3段階以上の重み付けとしての連関度が予め記憶されているデータベースと、」という記載がある一方で、第5段落に、「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成される・・・」という記載があるところ、共通する「連関度」という文言で表現されている「重み付け」と「ノード」は、まったく異なる概念であるから、これらの記載は、互いに矛盾する記載である。本件の請求項4においても、「連関度」について同様の記載がある。
このように、請求項1及び4の記載は、それ自体が互いに矛盾する記載を含むものであるから、請求項1及び4に係る発明は明確ではなく、また、請求項1及び4を引用して記載する請求項2、3、5、6に係る発明も同様に明確でない旨を主張している。
しかしながら、請求項1の「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成される・・・」という記載は、本件訂正の訂正事項1に係る訂正により「上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードに設定される重み付けである・・・」という記載に訂正されており、申立人が指摘する矛盾が存在しない記載となった。請求項4の記載も、訂正事項4に係る訂正により請求項1と同様に訂正され、矛盾が存在しない記載となった。
よって、本件の請求項1及び4に係る発明は明確である。また、請求項1及び4を引用して記載する請求項3及び6に係る発明も同様に明確である。
なお、本件の請求項2及び5に係る発明は、本件訂正の訂正事項2及び5係る訂正により削除されたので、申立ての対象となるものは存在しない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3、4及び6に係る発明の特許は、決定の予告2に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
さらに他に請求項1、3、4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により、請求項2及び5は削除された。これにより、請求項2及び5に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700615