特許異議申立
2018-700063
信号処理装置
- 審判番号
- 2018-700063
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-551381
- 登録番号
- 特許第6167368号(P6167368)
- 請求日
- 2018年01月25日
- 審決日
- 2018年05月16日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】日向寺 雅彦
- 審判長/審判官
- 審判長 清水 稔
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1652.113-Y (G01S) / P1652.121-Y (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6167368号発明「信号処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6167368号の請求項1ないし4、8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6167368号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成26年11月27日に国際出願され、平成29年7月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年1月25日に特許異議申立人TOTO株式会社により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
特許第6167368号の請求項1~8の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証~甲第2号証(以下「甲1」~「甲2」という。)を提出して、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また請求項8に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号により取り消すべきものである旨主張している。
(1)甲第1号証:特開2006-209202号公報
(2)甲第2号証:特開2000-338234号公報
4 刊行物の記載
(1)甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
「【0018】
上記ドップラーセンサ1は、誘電体発信器2を有していて、送信用アンテナ3より周波数fsの送信波(本実施形態では24GHzのマイクロ波)を発射するとともに、該送信波が物体で反射してなる反射波を受信用アンテナ4で受信するようになっている。この反射波の周波数foは、上記物体の移動速度に応じて変化する。そして、ドップラーセンサ1は、ショットキーバリヤダイオード5により、送信波及び反射波の周波数のずれ量|fs-fo|を信号(オフセット電圧からなるアナログ信号)として出力するようになっており、この信号により移動している物体を検知できるとともに、その移動速度も分かることになる。」
「【0021】
上記FFT解析部13は、ドップラーセンサ1からの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求める。本実施形態では、移動物体として人を前提としているので、所定の周波数範囲としては0~126Hzで十分である。そして、一定周波数幅は2Hzとし、63個のバンド幅の周波数レベルをそれぞれ求めることになる。尚、一定周波数幅については、後述の如く外乱周波数の影響を確実になくす観点からは1Hz程度に小さくするのが好ましいが、本実施形態では、コントローラ11の処理能力や演算速度を考慮して2Hzとしている(こうしても外乱周波数を十分になくすことができる)。」
「【0025】
そして、上記FFT解析部13における解析結果は、上記外乱周波数除去部14で外乱周波数が除去された後に異常/正常判定部15に入力される。この異常/正常判定部15は、上記全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間(第1所定時間と、該第1所定時間よりも長い第2所定時間とがある)毎に演算するとともに、この演算された総和に基づいて基準レベル(つまりノイズレベル)を設定する。この基準レベルに所定レベルを加算して異常レベルを設定する。本実施形態では、後に詳細に説明するように、レベルが互いに異なる3つの異常レベル(第1~第3異常レベル)を設定する。そして、上記演算された総和と上記異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する。このことで、異常/正常判定部15は、上記全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間毎に演算する演算手段と、該演算手段により演算された総和に基づいて基準レベルを設定する基準レベル設定手段と、基準レベルに所定レベルを加算して、異常レベルを設定する異常レベル設定手段と、上記総和と上記異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する判定手段とを構成する。尚、上記所定時間毎に演算された総和は全てメモリに記憶される。また、上記異常/正常判定部15における判定結果も上記メモリに記憶される。」
上記記載より、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「送信用アンテナ3より周波数fsの送信波を発射するとともに、該送信波が物体で反射してなる反射波を受信用アンテナ4で受信するドップラーセンサ1(【0018】)と、ドップラーセンサ1からの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求めるFFT解析部13(【0021】)と、
上記FFT解析部13における解析結果が入力され、上記全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間毎に演算するとともに、この演算された総和に基づいて基準レベルを設定し、この基準レベルに所定レベルを加算して異常レベルを設定し、上記演算された総和と上記異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する異常/正常判定部15(【0025】)とを備える周辺監視装置。」
(2)甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、監視領域に例えばレーダビームを照射し反射信号のドップラ周波数変移から進入物の存在および該進入物が何であるかを識別する監視システムに関する。」
「【0022】すなわち受信装置203では、受信信号26を送信信号23で位相検波し、検波処理した信号をドップラ信号21として出力する。信号処理識別部102では、このドップラ信号21を図7に示すような振幅データ36とし、図8に示すようにそれぞれ通過帯域周波数を異にする狭帯域LPF(ローパスフィルタ)37aおよびBPF(バンドパスフィルタ)37bに通過させる。図9は各フィルタ,,・・・の出力を示す。すなわちどの周波数帯の信号が強いかはそれぞれの面積38の総和で求められ、これをフィルタ順に並べ変えたものが図9の下図となる(スペクトルデータと称する)。これを進入物の特徴が抽出し易いように正規化し、図10に示すように正規化スペクトルデータから進入物の速度と速度分布を求める。」
上記記載より、甲2には、以下の発明が記載されている。
「監視領域に例えばレーダビームを照射し反射信号のドップラ周波数変移から進入物の存在および該進入物が何であるかを識別する監視システム(【0001】)であって、
ドップラ信号21を振幅データ36とし、それぞれ通過帯域周波数を異にする狭帯域LPF(ローパスフィルタ)37aおよびBPF(バンドパスフィルタ)37bに通過させてフィルタ順に並べ変えたスペクトルデータを進入物の特徴が抽出し易いように正規化し、正規化スペクトルデータから進入物の速度と速度分布を求める(【0022】)、
監視システム。」
5 判断
(1)請求項1に係る発明について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下の点で実質的に相違する。
相違点1:
本件発明1においては、「前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方により前記物体を検出する認識処理を行う認識部」を備えるのに対し、甲1発明は「全バンド幅の周波数レベルの総和」と「異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する」ものである点。
相違点2:
本件発明1においては、「前記認識処理における前記物体の検出感度の高低を示す感度レベルを設定するレベル設定部」を備え、その設定した基づいてパラメータが設定されるのに対し、甲1発明は「演算された総和に基づいて基準レベルを設定し、この基準レベルに所定レベルを加算して異常レベルを設定」するものである点。
上記相違点1について検討すると、該相違点1は周知な技術事項でも、いわゆる設計事項にあたるものでもない。したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
特許異議申立人は、特許異議申立書(「4.申立ての理由」「(4)具体的理由」の「ウ 本件発明と証拠に記載された発明との対比」「(特許法第29条第1項第3号)(ア)」)において、
「甲1発明における異常/正常判定部(15)は、周波数分布から全バンド幅の周波数レベルの総和を演算し、その演算結果に基づき異常(物体)の有無を判定している。すなわち、異常/正常判定部(15)は、フィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布を用いて、認識処理を行っている。このため、甲1発明における異常/正常判定部(15)は、本件特許発明1の認識部に相当する。」
と主張している。
しかしながら、「全バンド幅の周波数レベルの総和」を用いて判定を行うことが、「複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布」による認識処理に相当するものであると認めることはできないし、「複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比」による認識処理に相当するものであると認めることもできない。
したがって、上記主張は採用できない。
(2)請求項2~4に係る発明について
本件発明2~4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同じ理由により、甲1発明と同一ではない。
(3)請求項8に係る発明について
本件発明8は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同じ理由により、甲1発明と同一ではなく、上記相違点1を有する。そして該相違点1に係る構成は甲2に記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明8は甲1及び甲2に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
以上のとおり、本件の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また本件の請求項8に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、同法第113条第2号により取り消すことはできない。
6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4,8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4,8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-700063