特許異議申立
2018-700079
重合性組成物及びそれを用いた光学異方体
- 審判番号
- 2018-700079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-567048外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月31日
- 審決日
- 2019年02月27日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6172556号発明「重合性組成物及びそれを用いた光学異方体」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6172556号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
特許第6172556号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続等の経緯
特許第6172556号の請求項1~請求項16に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願(特願2016-567048号)は,2016年(平成28年)1月14日(優先権主張 平成27年1月16日)を国際出願日とする特許出願であって,平成29年7月14日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について,平成29年8月2日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成30年1月31日に,特許異議申立人 柴田留理子(以下「特許異議申立人」という。)から,特許異議の申立がされた(異議2018-700079号)。
その後の手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成30年 4月 6日付け:取消理由通知書
平成30年 6月11日付け:訂正請求書
平成30年 6月11日付け:意見書(特許権者)
平成30年 8月23日付け:取消理由通知書
平成30年10月29日付け:訂正請求書
(この訂正請求書による訂正の請求を,以下「本件訂正請求」という。また,本件訂正請求による訂正を,以下「本件訂正」という。)
平成30年10月29日付け:意見書(特許権者)
なお,特許法120条の5第7項の規定により,平成30年6月11日付けでした訂正の請求は,取り下げられたものとみなす。また,特許法120条の5第5項の規定により,特許異議申立人に対して意見書を提出する機会を与えたが,意見書は提出されなかった。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正の内容を整理して記載すると,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。また,請求項1の記載が長いことに鑑みて,訂正箇所に対応する特許掲載公報の記載箇所を括弧書きで併記する。
(1) 訂正事項1(特許掲載公報の1頁の【請求項1】の次の2行)
特許請求の範囲の請求項1に「式(I)を満たす重合性化合物を少なくとも1つ以上」と記載されているのを,「式(I)を満たす重合性液晶化合物を少なくとも2つ以上」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16についても,同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
ア 訂正事項2A(特許掲載公報の1頁の【請求項1】の次の行)
特許請求の範囲の請求項1に「下記一般式(1)~(7)」と記載されているのを,「下記一般式(2)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16についても,同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2B(特許掲載公報の2頁先頭の【化1】)
特許請求の範囲の請求項1に「【化1】
」と記載されているのを,「【化1】
」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項2C(特許掲載公報の2頁27,28,30及び37行)
特許請求の範囲の請求項1に「P11~P74」,「S11~S72」(2箇所)及び「X11~X72」(2箇所)と記載されているのを,それぞれ「P21~P22」,「S21~S22」及び「X21~X22」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項2D(特許掲載公報の2頁40行)
特許請求の範囲の請求項1に「MG11~MG72は各々独立して式(a)を表し」と記載されているのを,「MG21は式(a)を表し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項2E(特許掲載公報の3頁11~13行)
特許請求の範囲の請求項1に「上記一般式(4)においては,X43は,A11及び/又はA12に結合しており,上記一般式(6)においては,X63はA11に,X64はA12に結合しており,」と記載されているのを,削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
カ 訂正事項2F(特許掲載公報の4頁11~12行)
特許請求の範囲の請求項1に「PW82は,上記P11として列挙したものであり,SW82は,上記S11として列挙したものであり,XW82はX11として列挙したものであり」と記載されているのを,「PW82は,上記P21として列挙したものであり,SW82は,上記S21として列挙したものであり,XW82はX21として列挙したものであり」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
キ 訂正事項2G(特許掲載公報の4頁39~47行)
特許請求の範囲の請求項1に「R11及びR31は水素原子,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,ペンタフルオロスルフラニル基,シアノ基,ニトロ基,イソシアノ基,チオイソシアノ基,又は,炭素原子数1から20のアルキル基を表すが,当該アルキル基は直鎖状であっても分岐状であっても良く,R11及びR31におけるアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く,当該アルキル基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は各々独立して-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-又は-C≡C-によって置換されても良く,m11は0~8の整数を表し,m2~m7,n2~n7,l4~l6,k6は」と記載されているのを,「m2,n2は」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3(特許掲載公報の3頁18,19及び32行)
特許請求の範囲の請求項1に「上記一般式(1)~(7)」(3箇所)と記載されているのを,「上記式(a)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
ア 訂正事項4A(特許掲載公報の4頁38~39行)
特許請求の範囲の請求項1に「j11は1から4の整数,j12は1~4の整数を表すが,j11+j12は2から5の整数を表す」と記載されているのを,「j11は1から3の整数,j12は1~3の整数を表すが,j11+j12は4の整数を表す」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項4B(特許掲載公報の3頁18行)
特許請求の範囲の請求項1に「Z11及び/又はZ12が複数現れる場合は」と記載されているのを,「Z11及び/又はZ12は」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
ア 訂正事項5A(特許掲載公報の3頁19~20行)
特許請求の範囲の請求項1に「Mは下記の式(M-1)から式(M-11)」と記載されているのを,「Mは下記の式(M-1)から式(M-2)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項5B(特許掲載公報の3頁21行の【化1】)
特許請求の範囲の請求項1に「【化1】
」と記載されているのを,「【化1】
」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
ア 訂正事項6A(特許掲載公報の3頁32行)
特許請求の範囲の請求項1に「Gは下記の式(G-1)から式(G-6)」と記載されているのを,「Gは下記の式(G-1)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項6B(特許掲載公報の3頁33行の【化1】)
特許請求の範囲の請求項1に「【化1】
」と記載されているのを,「【化1】
」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項6C(特許掲載公報の4頁13~26行)
特許請求の範囲の請求項1に「W83及びW84はそれぞれ独立してハロゲン原子,シアノ基,ヒドロキシ基,ニトロ基,カルボキシル基,カルバモイルオキシ基,アミノ基,スルファモイル基,少なくとも1つの芳香族基を有する炭素原子数5から30の基,炭素原子数1から20のアルキル基,炭素原子数3から20のシクロアルキル基,炭素原子数2から20のアルケニル基,炭素原子数3から20のシクロアルケニル基,炭素原子数1から20のアルコキシ基,炭素原子数2から20のアシルオキシ基,炭素原子数2から20の又は,アルキルカルボニルオキシ基を表すが,前記アルキル基,シクロアルキル基,アルケニル基,シクロアルケニル基,アルコキシ基,アシルオキシ基,アルキルカルボニルオキシ基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は各々独立して-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-又は-C≡C-によって置換されても良く,但し,上記Mが式(M-1)~式(M-10)から選択される場合Gは式(G-1)~式(G-5)から選択され,Mが式(M-11)である場合,Gは式(G-6)を表し(ここで,式(M-11)と式(G-6)とは*の位置にて結合している),」と記載されているのを,削除する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(7) 訂正事項7(特許掲載公報の3頁47行)
特許請求の範囲の請求項1に「W82は水素原子又は炭素原子数1から20のアルキル基」と記載されているのを,「W82は炭素原子数1から20のアルキル基」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(8) 訂正事項8(特許掲載公報の4頁4~5行)
特許請求の範囲の請求項1に「W82はW81として挙げた構造であっても良く,W81及びW82は互いに連結し同一の環構造を形成しても良く,」と記載されているのを,「W82はW81として挙げた構造であっても良く,」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~請求項16も同様に訂正する。)。
(9) 訂正事項9(特許掲載公報の5頁18行)
特許請求の範囲の請求項4に「P11~P74」と記載されているのを,「P21~P22」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~請求項16も同様に訂正する。)。
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は,「少なくとも1つ以上」を「少なくとも2つ以上」とする訂正と,「重合性化合物」を「重合性液晶化合物」とする訂正の2つに分けて考えることができる。
そして,前者の訂正は,本件特許の明細書の【0002】及び【0112】の記載に基づいて,請求項1に記載された「重合性組成物」が含む「重合性化合物」の種類を,「少なくとも1つ以上」から,「少なくとも2つ以上」に限定する訂正である。また,後者の訂正は,本件特許の明細書の【0012】の記載に基づいて,請求項1に記載された「重合性組成物」が含む化合物を,「重合性化合物」から,「重合性液晶化合物」に限定する訂正である。
そうしてみると,訂正事項1による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正のうち,訂正事項2A及び訂正事項2Bによる訂正は,請求項1に記載された「重合性化合物」の選択肢を,「一般式(1)~(7)で表される」ものから,「一般式(2)で表される」ものに減らす訂正である。
また,訂正事項2による訂正のうち,訂正事項2C~訂正事項2Gによる訂正は,重合性化合物の選択肢が一般式(2)で表されるものに減らされたことに伴い,これと整合するように請求項1の記載を書き改める(一般式(1)~(7)について説明する記載を,一般式(2)について説明する記載に書き改める)訂正である。
そうしてみると,訂正事項2による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は,訂正前の請求項1における,読み替えて理解する必要があった不明瞭な記載を,その必要のない明確なものとする訂正である。
したがって,訂正事項3による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項3による訂正は願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
訂正前発明2~訂正前発明16についても,同様のことがいえる。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4による訂正のうち,訂正事項4Aによる訂正は,請求項1に記載された「j11」及び「j12」が取り得る値を,「j11は1から4の整数,j12は1~4の整数を表すが,j11+j12は2から5の整数を表す」から,「j11は1から3の整数,j12は1~3の整数を表すが,j11+j12は4の整数を表す」に減らす訂正である。
また,訂正事項4による訂正のうち,訂正事項4Bによる訂正は,j11+j12が4となった(Z11及びZ12の少なくとも一方は,必ず複数現れることとなった)ことに伴い,これと整合するように請求項1の記載を書き改める(「複数現れる場合は」という仮定の記載を削除する)訂正である。
そうしてみると,訂正事項4による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項4による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5による訂正は,請求項1に記載された「M」の選択肢を,「式(M-1)から式(M-11)」から,「式(M-1)から式(M-2)」に減らす訂正である。
そうしてみると,訂正事項5による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項5による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6による訂正のうち,訂正事項6A及び訂正事項6Bによる訂正は,請求項1に記載された「G」の選択肢を,「式(G-1)から式(G-6)」から,「式(G-1)」に減らす訂正である。
また,訂正事項6による訂正のうち,訂正事項6Cによる訂正は,Gの選択肢が式(G-1)で表されるものに減らされたことに伴い,これと整合するように請求項1の記載を書き改める(式(G-1)から式(G-6)について説明する記載を,式(G-1)について説明する記載に書き改める)訂正である。
そうしてみると,訂正事項6による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項6による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は,請求項1に記載された「W82」が取り得る選択肢を,「W82は水素原子又は炭素原子数1から20のアルキル基」から,「W82は炭素原子数1から20のアルキル基」に減らす(水素原子の選択肢を除く)ものである。
そうしてみると,訂正事項7による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項7による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(8) 訂正事項8について
訂正事項8による訂正は,請求項1に記載された「W82」が取り得る態様から,「W81及びW82は互いに連結し同一の環構造を形成しても良く,」という態様を除く訂正である。
そうしてみると,訂正事項8による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項8による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項2~請求項16についても,同様のことがいえる。
(9) 訂正事項9について
訂正事項9による訂正は,訂正事項2A及び訂正事項2Bによる訂正により,重合性化合物の選択肢が一般式(2)で表されるものに減らされたことに伴い,これと整合するように請求項4の記載を書き改める訂正である。
そうしてみると,訂正事項9による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項9による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
請求項5~請求項16についても,同様のことがいえる。
(10) 一群の請求項について
本件訂正請求は,一群の請求項〔1~16〕に対して請求されたものである。
3 本件訂正請求についてのまとめ
本件訂正は,特許法120条5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものである。また,本件訂正は,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定にも適合する。
よって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり,本件訂正は認められることとなったので,本件特許の請求項1~請求項16に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項16に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
a)1つまたは2つ以上の重合性基を有し,かつ,下記一般式(2)で表される式(I)を満たす重合性液晶化合物を少なくとも2つ以上,
【化1】
(式中,P21~P22は重合性基を表し,
S21~S22はスペーサー基を又は単結合を表すが,S21~S22が複数存在する場合それらは各々同一であっても異なっていても良く,
X21~X22は-O-,-S-,-OCH2-,-CH2O-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-,-SCH2-,-CH2S-,-CF2O-,-OCF2-,-CF2S-,-SCF2-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,-CH2CH2-OCO-,-COO-CH2-,-OCO-CH2-,-CH2-COO-,-CH2-OCO-,-CH=CH-,-N=N-,-CH=N-N=CH-,-CF=CF-,-C≡C-又は単結合を表すが,X21~X22が複数存在する場合それらは各々同一であっても異なっていても良く(ただし,各P-(S-X)-結合には-O-O-を含まない。),
MG21は式(a)を表し,
【化1】
(式中,A11,A12は各々独立して1,4-フェニレン基,1,4-シクロヘキシレン基,ピリジン-2,5-ジイル基,ピリミジン-2,5-ジイル基,ナフタレン-2,6-ジイル基,ナフタレン-1,4-ジイル基,テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基,デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが,これらの基は無置換又は1つ以上のL1によって置換されても良いが,A11及び/又はA12が複数現れる場合は各々同一であっても異なっていても良く,
Z11及びZ12は各々独立して-O-,-S-,-OCH2-,-CH2O-,-CH2CH2-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-,-SCH2-,-CH2S-,-CF2O-,-OCF2-,-CF2S-,-SCF2-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,-CH2CH2-OCO-,-COO-CH2-,-OCO-CH2-,-CH2-COO-,-CH2-OCO-,-CH=CH-,-N=N-,-CH=N-,-N=CH-,-CH=N-N=CH-,-CF=CF-,-C≡C-又は単結合を表すが,上記一般式(2)においては,下記Mに直接結合するZ11及びZ12の少なくとも何れか一方は,-OCH2-,-CH2O-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,又は,-CH2CH2-OCO-を表し,上記式(a)においてZ11及び/又はZ12は各々同一であっても異なっていても良く,上記式(a)においてMは下記の式(M-1)から式(M-2)
【化1】
から選ばれる基を表すが,これらの基は無置換又は1つ以上のL1によって置換されても良く,上記式(a)においてGは下記の式(G-1)
【化1】
(式中,R3は水素原子,又は,炭素原子数1から20のアルキル基を表すが,当該アルキル基は直鎖状であっても分岐状であっても良く,R3におけるアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く,当該アルキル基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は各々独立して-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-又は-C≡C-によって置換されても良く,W81は少なくとも1つの芳香族基を有する,炭素原子数5から30の基を表すが,当該基は無置換又は1つ以上のL1によって置換されても良く,W82は炭素原子数1から20のアルキル基を表すが,当該アルキル基は直鎖状であっても分岐状であっても良く,W82におけるアルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く,当該アルキル基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は各々独立して-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-CH=CH-,-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良く,或いはW82はW81として挙げた構造であっても良く,或いはW82は下記の基
【化1】
(式中,PW82は,上記P21として列挙したものであり,SW82は,上記S21として列挙したものであり,XW82はX21として列挙したものであり,nW82は0~8の整数を表す。)を表し,L1はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,ペンタフルオロスルフラニル基,ニトロ基,イソシアノ基,アミノ基,ヒドロキシル基,メルカプト基,メチルアミノ基,ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基,ジイソプロピルアミノ基,トリメチルシリル基,ジメチルシリル基,チオイソシアノ基,又は,炭素原子数1から20のアルキル基を表すが,当該アルキル基は直鎖状であっても分岐状であっても良く,L1における任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く,当該アルキル基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は各々独立して-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CO-S-,-S-CO-,-O-CO-O-,-CO-NH-,-NH-CO-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-CH=CH-,-CF=CF-又は-C≡C-から選択される基によって置換されても良いが,化合物内にL1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く,j11は1から3の整数,j12は1~3の整数を表すが,j11+j12は4の整数を表す。),m2,n2は各々独立して0から5の整数を表す。)
Re(450nm)/Re(550nm)<1.0 (I)
(式中,Re(450nm)は,前記1つまたは2つ以上の重合性基を有する重合性化合物を基板上に分子の長軸方向が実質的に基板に対して水平に配向させたときの450nmの波長における面内位相差,Re(550nm)は,前記1つまたは2つ以上の重合性基を有する重合性化合物を基板上に分子の長軸方向が実質的に基板に対して水平に配向させたときの550nmの波長における面内位相差を表す。)
b)溶解度パラメータ(SP値)が8.50~11.00(cal/cm3)0.5であり,沸点が75~180℃であり,蒸発速度指数が20~700である有機溶剤,
を含有する重合性組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤が,ケトン系,酢酸エステル系,芳香族炭化水素系,及びグリコールエーテル系からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤が,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,シクロペンタノン,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,キシレン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記重合性基P21~P22が一般式(P-1)から(P-20)のいずれかで表される,請求項3に記載の重合性組成物。
【化1】
【請求項5】
前記有機溶剤が,その沸点が75~105℃である群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶剤と,その沸点が106~180℃である群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶剤とを含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
2色性色素を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
シンナメート誘導体を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の重合性組成物の重合体。
【請求項9】
請求項8に記載の重合体を用いた光学異方体。
【請求項10】
請求項8に記載の重合体を用いた位相差フィルム。
【請求項11】
請求項8に記載の重合体を用いた偏光フィルム。
【請求項12】
請求項8に記載の重合体を含有するレンズシート。
【請求項13】
請求項8に記載の重合体を含有する発光ダイオード照明装置。
【請求項14】
請求項9に記載の光学異方体又は請求項10に記載の位相差フィルムを含有する表示素子。
【請求項15】
請求項9に記載の光学異方体又は請求項10に記載の位相差フィルムを含有する発光素子。
【請求項16】
請求項10に記載の位相差フィルムを含有する反射フィルム。」
第4 取消理由通知書により通知した取消の理由について
1 取消の理由の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1~請求項16に係る特許に対して,当合議体が平成30年8月23日付け取消理由通知書により通知した取消の理由は,概略,本件特許の(訂正前の)請求項1~請求項16に係る発明は,本件特許の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,これら請求項に係る発明についての特許は,同法113条1項2号に該当し,取り消されるべきものである,というものである。
なお,取消の理由においては以下の甲1~甲6が挙げられており,このうち,甲1が主引用例であり,他は周知技術を示す文献等である。
甲1:国際公開第2014/065243号
甲2:特開2011-158671号公報
甲3:特開2008-37768号公報
甲4:特開平6-289374号公報
甲5:特表2010-522892号公報
甲6:特開2012-87179号公報
2 甲1の記載及び甲1に記載された発明について
(1) 甲1の記載
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された甲1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,位相差板,円偏光板,及び画像表示装置に関し,特に,逆波長分散特性の制御が容易な位相差板,円偏光板,及び画像表示装置に関する。
…(省略)…
発明が解決しようとする課題
[0004] 表示装置に用いる位相差板は,表示装置の性能をより高めるため,表示装置の設計に応じて,逆波長分散を,僅かに高める,または僅かに低めるといった調整が必要となる。しかしながら,従来技術においては,位相差板を,光学性能及び機械的性能を損ねることなく,要求通りの逆波長分散特性に調整することは,困難であった。
[0005] 従って,本発明の目的は,逆波長分散特性を有し,かつその精密な制御が容易に行いうる位相差板を提供することにある。
…(省略)…
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者は前記の課題を解決するべく検討した結果,逆波長分散重合性液晶化合物として,分子中に所定の複数のメソゲンを有するものを用い,これと,重合性モノマーとを組み合わせて配向させ,所定の光学特性を有する光学異方性層を形成することにより,上記課題を解決しうることを見出し,本発明を完成した。
…(省略)…
発明の効果
[0008] 本発明の位相差板は,逆波長分散特性を有し,かつその精密な制御が容易に行いうる。したがって,本発明の位相差板を含む,本発明の円偏光板及び本発明の画像表示装置は,低コストで且つ良好な表示性能を有する表示装置及びその構成要素を提供しうる。」
イ 「発明を実施するための形態
[0010] 以下,例示物及び実施形態を挙げて本発明について詳細に説明するが,本発明は以下に挙げる例示物及び実施形態に限定されるものではなく,本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
…(省略)…
[0015] 〔1.2.化合物(I)〕
逆波長分散重合性液晶化合物の例としては,下記式(I)で示される化合物(以下において「化合物(I)」という場合がある。)を挙げることができる。
[0016][化4]
…(省略)…
[0018] 式中,Y1~Y6はそれぞれ独立して,化学的な単結合,-O-,-S-,-O-C(=O)-,-C(=O)-O-,-O-C(=O)-O-,-NR1-C(=O)-,-C(=O)-NR1-,-O-C(=O)-NR1-,-NR1-C(=O)-O-,-NR1-C(=O)-NR1-,-O-NR1-,又は,-NR1-O-を表す。
[0019] ここで,R1は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
…(省略)…
[0021] G1,G2はそれぞれ独立して,置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の脂肪族基を表す。
…(省略)…
[0027] Z1,Z2はそれぞれ独立して,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~10のアルケニル基を表す。
…(省略)…
[0030] Axは,芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する,炭素数2~30の有機基を表す。
…(省略)…
[0036] Ayは水素原子,置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基,置換基を有していてもよい炭素数2~12のアルケニル基,置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基,…(省略)…,又は,芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する,炭素数2~30の有機基を表す。
…(省略)…
[0073] A1は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
…(省略)…
[0078] A2,A3はそれぞれ独立して,置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の芳香族基を表す。
…(省略)…
[0083] Q1は,水素原子,又は,置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。
…(省略)…
[0084] 化合物(I)のより具体的な例としては,下記式(I)-1~(I)-3で表される化合物を挙げることができる。
[0085][化24]
…(省略)…
[0117] 目的とする化合物の構造は,NMRスペクトル,IRスペクトル,マススペクトル等の測定,元素分析等により,同定することができる。
〔1.4.化合物(V)〕
逆波長分散重合性液晶化合物の別の例としては,下記式(V)で示される化合物(以下において「化合物(V)」という場合がある。)を挙げることができる。
[0118][化29]
…(省略)…
[0120] 式中,Y1w~Y8wはそれぞれ独立して,化学的な単結合,-O-,-S-,-O-C(=O)-,-C(=O)-O-,-O-C(=O)-O-,-NR1-C(=O)-,-C(=O)-NR1-,-O-C(=O)-NR1-,-NR1-C(=O)-O-,-NR1-C(=O)-NR1-,-O-NR1-,又は,-NR1-O-を表す。
[0121] ここで,R1の定義,及びY1w~Y8wの好ましい例は,式(I)中のY1~Y6について述べたものと同様である。
[0122] G1w,G2wはそれぞれ独立して,置換基を有していてもよい,炭素数1~20の二価の脂肪族基を表す。
…(省略)…
[0127] Z1w,Z2wはそれぞれ独立して,無置換又はハロゲン原子で置換された炭素数2~10のアルケニル基を表す。
…(省略)…
[0128] Axwは,芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する,炭素数2~30の有機基を表す。
…(省略)…
[0157] Aywは,水素原子,置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基,置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基,置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基,置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基,…(省略)…又は,芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する,炭素数2~30の有機基を表す。
…(省略)…
[0185] A1wは置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
…(省略)…
[0190] A2w,A3wはそれぞれ独立して,置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
…(省略)…
[0199] A4w,A5wはそれぞれ独立して,置換基を有していてもよい,炭素数6~30の二価の芳香族基を表す。
…(省略)…
[0204] Q1wは,水素原子,置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。
…(省略)…
[0249] 〔1.5.重合性モノマー〕
組成物(A)は,重合性モノマーを含有する。本願において,「重合性モノマー」とは,重合能を有しモノマーとして働きうる化合物のうち,特に,逆波長分散重合性液晶化合物以外の化合物をいう。
…(省略)…
[0252] 重合性モノマーの例としては,下記式(II)で示される化合物及び下記式(III)で表される化合物(それぞれ,以下において「化合物(II)」及び「化合物(III)」という場合がある。)を挙げることができる。
[0253][化62]
…(省略)…
[0255] 一方,式(III)中,Y1x~Y6x,G1x,G2x,Z1x,Z2x,Axx,Ayx,A1x~A3x,及びQ1xは,それぞれ,式(I)のY1~Y6,G1,G2,Z1,Z2,Ax,Ay,A1~A3,及びQ1と同じ意味を表す。但し,これらのうちの少なくとも1つ以上が,共に用いる化合物(I)中の対応する基と異なるものである。
…(省略)…
[0265] 重合性モノマーは,それ自体が液晶性のものであってもよく,非液晶性のものであってもよい。重合性モノマーは,非液晶性であることが好ましく,特に化合物(III)であって且つ非液晶性であるものが好ましい。
ここで,それ自体が「非液晶性」であるとは,当該重合性モノマーそのものを,室温から200℃のいずれの温度に置いた場合にも,配向処理をした基材上で配向を示さないものをいう。配向を示すかどうかは,偏光顕微鏡のクロスニコル透過観察にてラビング方向を面相で回転させた場合に,明暗のコントラストがあるかどうかで判断する。
…(省略)…
[0267] 〔1.6.組成物(A)のその他の成分〕
組成物(A)は,逆波長分散重合性液晶化合物及び重合性モノマーに加えて,必要に応じて,以下に例示するもの等の任意の成分を含みうる。
[0268] 組成物(A)は,逆波長分散重合性液晶化合物と共重合しうる任意の単量体を含みうる。
…(省略)…
[0271] 組成物(A)は,重合開始剤を含みうる。
…(省略)…
[0283] 組成物(A)は,表面張力を調整するための,界面活性剤を含みうる。
…(省略)…
[0284] 組成物(A)は,有機溶媒等の溶媒を含みうる。かかる有機溶媒の例としては,シクロペンタノン,シクロヘキサノン,メチルエチルケトン,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル,酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4-ジオキサン,シクロペンチルメチルエーテル,テトラヒドロフラン,テトラヒドロピラン,1,3-ジオキソラン,1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類;及びトルエン,キシレン,メシチレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒の沸点は,取り扱い性に優れる観点から,60~250℃であることが好ましく,60~150℃であることがより好ましい。溶媒の使用量は,重合性化合物100重量部に対し,通常,100~1000重量部である。
[0285] 組成物(A)は,さらに,金属,金属錯体,染料,顔料,蛍光材料,燐光材料,レベリング剤,チキソ剤,ゲル化剤,多糖類,紫外線吸収剤,赤外線吸収剤,抗酸化剤,イオン交換樹脂,酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。
…(省略)…
[0287] 〔1.7.光学異方性層の製造方法〕
光学異方性層は,組成物(A)を硬化させてなる層である。
…(省略)…
[0305] 〔1.9.位相差板:その他の構成要素〕
本発明の位相差板は,上に述べた光学異方性層のみからなってもよく,又は必要に応じてその他の層を有していてもよい。
…(省略)…
[0306] 〔2.円偏光板〕
本発明の円偏光板は,前記本発明の位相差板と,直線偏光子とを備える。
…(省略)…
[0311] 〔3.画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は,前記本発明の位相差板を備える。本発明の画像装置において,位相差板は,直線偏光子と組み合わされ,円偏光板として設けられていてもよい。
本発明の画像表示装置の例としては,液晶表示装置,有機エレクトロルミネッセンス表示装置,プラズマ表示装置,FED(電界放出)表示装置,及びSED(表面電界)表示装置を挙げることができるが,液晶表示装置が特に好ましい。
…(省略)…
[0313] 本発明の画像表示装置は,前記本発明の位相差板を1枚のみ備えてもよく2枚以上を備えてもよい。本発明の画像表示装置において,前記本発明の位相差板は,液晶セル等の,他の構成要素に,接着剤を介して貼付することにより設けうる。」
ウ 「実施例
[0314] 以下,実施例を示して本発明について具体的に説明するが,本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく,本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において,量を表す「%」及び「部」は,別に断らない限り重量基準である。また,以下に説明する操作は,別に断らない限り,常温及び常圧の条件において行った。
[0315] (製造例1) 化合物(I)-1の合成
[0316][化67]
…(省略)…
[0324] 〔比較例1〕
(C1-1.組成物(A0)の調製)
下記表1に示す組成の混合物を均一になるように攪拌し,0.6μmのフィルタで濾過して,組成物(A0)を得た。
[0325][表1](当合議体注:「逆分散波長」は,「逆波長分散」の誤記である。)
[0326] (C1-2.位相差板の製造)
支持体(ゼオノアフィルム,商品名「ZF16」,日本ゼオン株式会社製)の一方の面を,ラビングすることにより配向処理を行った。かかる面上に,工程(C1-1)で得た組成物(A0)を,スピンコーターで乾燥膜厚が1.4μmになるように塗布した。オーブンにて130℃で2分間加熱することにより,組成物(A0)の層を乾燥させた。これにより,支持体,及びその上に形成された乾燥した組成物(A0)の層からなる複層物を得た。
[0327] 次に当該複層物にメタルハライドランプを用いて紫外線を照射し,重合性液晶化合物を重合させた。紫外線の照射量は,照度16mW/cm2で露光量を100mJ/cm2とした。これにより,支持体,及びその上に設けられた膜厚1.4μmの光学異方性層からなる位相差板を得た。
[0328] (C1-3.波長分散測定)
工程(C1-2)で作製した位相差板について,AXOMETRICS社製の位相差解析装置(製品名:AxoScan)を用いて,様々な波長λにおいて複屈折Δnを測定し,Δnの波長分散特性を求めた。測定した波長分散特性を,図1に示す。
測定結果より,Re0(450nm)/Re0(550nm)=0.918,Re0(650nm)/Re0(550nm)=0.982であった。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)
エ 「[0346] 〔実施例4〕
(4-1.組成物(A-4)の調製)
下記表3(当合議体注:「表3」は「表5」の誤記である。また,「逆分散波長」は,「逆波長分散」の誤記である。)に示す組成の混合物を均一になるように攪拌し,0.6μmのフィルタで濾過して,組成物(A-4)を得た。
[0347][表5]
[0348][化72]
[0349] 組成物(A-4)とは別に,重合性モノマー(III)-1をシクロペンタノンに20.0重量%添加した組成物を調製し,配向処理をした基材上に塗布し,さらに一度溶剤を乾燥させた後,温度を室温~200℃の範囲で変化させ,液晶性の有無を偏光顕微鏡にて観察したところ,非液晶性であった。
[0350] (4-2.位相差板の製造及び評価)
工程(C1-1)で得た組成物(A0)の代わりに,工程(4-1)で得た組成物(A-4)を用いた他は,比較例1の工程(C1-2)と同様にして,位相差板を製造した。得られた位相差板の光学異方性層の膜厚は1.7μmであった。
得られた位相差板について,比較例1の工程(C1-3)と同様にして,様々な波長λにおいて複屈折Δnを測定し,Δnの波長分散特性を求めた。測定した波長分散特性を,図10に,比較例1の結果と対比させて示す。
測定結果より,Re(450nm)/Re(550nm)=0.761,Re(650nm)/Re(550nm)=1.019となり,比較例1と比べ逆分散性が大きくなった。
また,得られた位相差板について,比較例1の工程(C1-4)と同様にして,屈折率を測定した。測定された3波長の測定値からコーシーフィッティングを行った結果を,図11に,比較例1の結果と対比させて示す。遅相軸方向の屈折率の波長分散は比較例1と大きな差はないが,進相軸方向の屈折率の波長分散は比較例1と比べて大きくなった。この結果,位相差板のΔnの逆波長分散特性が大きくなった。」
(当合議体注:図10及び図11は以下の図である。)
図10:
図11:
オ 「[0356] (製造例2)化合物25の合成
[0357][化74]
…(省略)…
[0380] 〔比較例2〕
(C2-1.組成物(A0-1)の調製)
下記表7に示す組成の混合物を均一になるように攪拌し,0.6μmのフィルタで濾過して,組成物(A0-1)を得た。
[0381][表7](当合議体注:「逆分散波長」は,「逆波長分散」の誤記である。)
[0382] (C2-2.位相差板の製造)
組成物(A0)に代えて組成物(A0-1)を使用した以外は,比較例1の(C1-2)と同様に行い,組成物(A0-1)の層からなる複層物を得て,さらに,支持体,及びその上に設けられた膜厚1.5μmの光学異方性層からなる位相差板を得た。
[0383] (C2-3.波長分散測定)
工程(C2-2)で作製した位相差板について,比較例1(C1-3)と同様に,様々な波長λにおいて複屈折Δnを測定し,Δnの波長分散特性を求めた。測定した波長分散特性を,図14に示す。
測定結果より,Re0(450nm)/Re0(550nm)=0.824,Re0(650nm)/Re0(550nm)=1.031であった。
[0384] (C2-4.屈折率波長分散測定)
工程(C2-2)で作製した位相差板について,比較例1(C1-4)と同様に屈折率測定を行った。波長λが407nm,532nm,及び633nmである場合における屈折率を測定し,3波長の測定値からコーシーフィッティングを行った結果を図15に示す。図15中,破線は進相軸方向の屈折率,実線は遅相軸方向の屈折率を示す。進相軸方向の屈折率は遅相軸方向の屈折率と比較して,値が小さく波長分散が大きいことから,本位相差板が逆波長分散特性を示すことがわかる。」
(当合議体注:図14及び図15は以下の図である。)
図14:
図15:
カ 「[請求項1] 逆波長分散重合性液晶化合物と重合性モノマーとを含有する組成物(A)を硬化させてなる光学異方性層を有する位相差板であって,
前記逆波長分散重合性液晶化合物は,分子中に主鎖メソゲンと前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを有し,
前記光学異方性層において,前記逆波長分散重合性液晶化合物の前記主鎖メソゲン及び前記側鎖メソゲンは,異なる方向に配向し,それにより,前記光学異方性層の複屈折Δnが逆波長分散特性を有し,
前記組成物(A)における前記重合性モノマーを前記逆分散重合性液晶化合物に置換した組成物(A0)を硬化させてなる層の波長450nm,550nm及び650nmにおけるリタデーションRe0(450nm),Re0(550nm)およびRe0(650nm)と,前記光学異方性層の波長450nm,550nm及び650nmにおけるリタデーションRe(450nm),Re(550nm)およびRe(650nm)とが,以下の式(i)及び(ii)の関係を満たす位相差板:
Re0(450nm)/Re0(550nm)>Re(450nm)/Re(550nm) 式(i)
Re0(650nm)/Re0(550nm)<Re(650nm)/Re(550nm) 式(ii)。
[請求項2] 逆波長分散重合性液晶化合物と重合性モノマーとを含有する組成物(A)を硬化させてなる光学異方性層を有する位相差板であって,
前記逆波長分散重合性液晶化合物は,分子中に主鎖メソゲンと前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを有し,
前記光学異方性層において,前記逆波長分散重合性液晶化合物の前記主鎖メソゲン及び前記側鎖メソゲンは,異なる方向に配向し,それにより,前記光学異方性層の複屈折Δnが逆波長分散特性を有し,
前記組成物(A)における前記重合性モノマーを前記逆分散重合性液晶化合物に置換した組成物(A0)を硬化させてなる層の波長450nm,550nm及び650nmにおけるリタデーションRe0(450nm),Re0(550nm)およびRe0(650nm)と,前記光学異方性層の波長450nm,550nm及び650nmにおけるリタデーションRe(450nm),Re(550nm)およびRe(650nm)とが,以下の式(iii)及び(iv)の関係を満たす位相差板:
Re0(450nm)/Re0(550nm)<Re(450nm)/Re(550nm) 式(iii)
Re0(650nm)/Re0(550nm)>Re(650nm)/Re(550nm) 式(iv)。」
(2) 甲1発明
ア 甲1組成物発明A
甲1には,[0316]に記載の[化67]で表される逆波長分散重合性液晶化合物を含んでなる比較例1の組成物(A0)として,次の発明が記載されている(以下「甲1組成物発明A」という。)。
「 逆波長分散重合性液晶化合物が19.3重量部,
光重合開始剤(BASFジャパン株式会社 イルガキュア-379)が0.6重量部,
界面活性剤(ネオス株式会社 フタージェント209F 1%溶液)が5.8重量部,
シクロペンタノンが74.2重量部からなり,
逆波長分散重合性液晶化合物が次の式(I)-1で表される,
組成物(A0)。
式(I)-1:
」
イ 甲1位相差板発明A
甲1には,同様に,比較例1の位相差板として,次の発明が記載されている(以下「甲1位相差板発明A」という。)。
「 支持体の一方の面を,ラビングすることにより配向処理を行い,
かかる面上に,甲1組成物発明Aの組成物(A0)を,スピンコーターで乾燥膜厚が1.4μmになるように塗布し,
オーブンにて130℃で2分間加熱することにより,組成物(A0)の層を乾燥させ,
メタルハライドランプを用いて紫外線を照射し,重合性液晶化合物を重合させてなる,
支持体,及びその上に設けられた膜厚1.4μmの光学異方性層からなる,
Re0(450nm)/Re0(550nm)=0.918である,
位相差板。」
ウ 甲1組成物発明B
甲1には,[0357]に記載の[化74]で表される逆波長分散重合性液晶化合物を含んでなる比較例2の組成物(A0-1)として,次の発明が記載されている(以下「甲1組成物発明B」という。)。
「 逆波長分散重合性液晶化合物が19.4重量部,
光重合開始剤(BASFジャパン株式会社 イルガキュア-379)が0.6重量部,
界面活性剤(ネオス株式会社 フタージェント209F 1%溶液)が5.8重量部,
シクロペンタノンが74.2重量部からなり,
逆波長分散重合性液晶化合物が次の式25で表される,
組成物(A0-1)。
式25:
」
エ 甲1位相差板発明B
甲1には,同様に,比較例2の位相差板として,次の発明が記載されている(以下「甲1位相差板発明B」という。)。
「 甲1組成物発明Aの組成物(A0)に替えて甲1組成物発明Bの組成物(A0-1)を使用した以外は甲1位相差板発明Aと同様に製造した,
支持体,及びその上に設けられた膜厚1.5μmの光学異方性層からなる,
Re0(450nm)/Re0(550nm)=0.824である,
位相差板。」
3 対比及び判断
(1) 対比
事案に鑑みて,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」を,次のとおり「部分1」~「部分6」に分けて考える。
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)と甲1組成物発明Aを対比すると,以下のとおりである。
ア 重合性液晶化合物
甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」の「部分1」及び「部分5」は,「アクリロイルオキシ基」であるから,重合性基である。また,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」の「部分3」は,技術的にみて,メソゲンの主鎖をなす剛直部である。ここで,本件特許の明細書の【0010】には,「本発明において,「液晶性化合物」とは,メソゲン性骨格を有する化合物を示すことを意図するものであり,化合物単独では,液晶性を示さなくてもよい。」と記載されている。
そうしてみると,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の「重合性液晶化合物」に相当する。また,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の「重合性液晶化合物」における,「1つまたは2つ以上の重合性基を有し」という要件を満たす。
イ 式(I)
甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」から製造された甲1位相差板発明Aの「位相差板」は,「Re0(450nm)/Re0(550nm)=0.918」という特性を示す。そうしてみると,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の式(I)を満たすものといえる。
(当合議体注:式(I)は,「Re(450nm)/Re(550nm)<1.0」である。)
ウ 有機溶剤
本件特許の特許請求の範囲の請求項3には,「シクロペンタノン」が「有機溶剤」の選択肢として記載されている。
したがって,甲1組成物発明Aの「シクロペンタノン」は,本件特許発明1でいう「b)溶解度パラメータ(SP値)が8.50~11.00(cal/cm3)0.5であり,沸点が75~180℃であり,蒸発速度指数が20~700である有機溶剤」に該当する。
エ 重合性組成物
甲1組成物発明Aの「組成物(A0)」は,「逆波長分散重合性液晶化合物」及び「シクロペンタノン」を含有する組成物であり,また,重合性のものである。
したがって,甲1組成物発明Aの「組成物(A0)」は,本件特許発明1の「重合性組成物」に相当する。また,甲1組成物発明Aの「組成物(A0)」と本件特許発明1の「重合性組成物」は,「a)1つまたは2つ以上の重合性基を有し,かつ,」「式(I)を満たす重合性液晶化合物」,「b)溶解度パラメータ(SP値)が8.50~11.00(cal/cm3)0.5であり,沸点が75~180℃であり,蒸発速度指数が20~700である有機溶剤」,「を含有する」点で共通する。
(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1組成物発明Aは,次の構成で一致する。
「 a)1つまたは2つ以上の重合性基を有し,かつ,式(I)を満たす重合性液晶化合物,
Re(450nm)/Re(550nm)<1.0 (I)
b)溶解度パラメータ(SP値)が8.50~11.00(cal/cm3)0.5であり,沸点が75~180℃であり,蒸発速度指数が20~700である有機溶剤,
を含有する重合性組成物。」
イ 相違点
本件特許発明1と甲1組成物発明Aは,以下の点で相違する。
(相違点1)
「重合性液晶化合物」が,本件特許発明1は,「一般式(2)で表される」ものであるのに対して,甲1組成物発明Aは,「一般式(2)で表される」ものではない点。
(当合議体注:事案に鑑みて,一般式(2)に関する説明の記載は,省略する。)
(相違点2)
「重合性液組成物」に関して,本件特許発明1は,式(I)を満たす重合性液晶化合物を「少なくとも2つ以上」を含有するのに対して,甲1組成物発明Aは,式(I)を満たす重合性液晶化合物を1つ(1種類)含有する点。
(3) 判断
事案に鑑みて,相違点1について判断する。
甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の「一般式(2)」における,「j11+j12は4の整数を表す」という要件を満たさない。すなわち,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」の「j11+j12」は,2である。また,「j11+j12」の値は,メソゲンの主鎖をなす剛直部の長さに対応するものであるから,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」の逆波長分散特性に大きな影響を及ぼすものである。そうしてみると,たとえ当業者といえども,甲1組成物発明Aを出発点としては,「j11+j12は4の整数を表す」ものに変更するとはいいがたい。
さらに,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の「一般式(2)」における,「Mに直接結合するZ11及びZ12の少なくとも何れか一方は,-OCH2-,-CH2O-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,又は,-CH2CH2-OCO-を表し」という要件も,満たさない。すなわち,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」における,「Z11及びZ12」に対応する部分は,次の図の「部分A」及び「部分B」と理解されるところ,これは「-OCO-」である。
加えて,甲1の[0016]に記載された式(I),及び[0018]に記載された「Y1」及び「Y2」の選択肢においても,上記の選択肢は開示されていない。
したがって,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」において,上記「部分A」又は「部分B」を,「-OCH2-,-CH2O-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,又は,-CH2CH2-OCO-」に替えることは,予定されていないといえる。また,特許異議申立人が提出した甲2~甲6にも,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」を上記のように替えることは記載も示唆もされておらず,さらに,これが本件優先日前の当業者における技術常識又は周知技術であったということもできない。
以上のとおりであるから,本件特許発明1は,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Aに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4) 請求項2~請求項7に係る発明ついて
請求項2~請求項7に係る発明は,本件特許発明1に対して,さらに他の発明特定事項を付加してなる,重合性組成物の発明である。
そうしてみると,これら発明は,相違点1に係る本件特許発明1の構成と同一の構成を具備するといえるから,本件特許発明1と同じ理由により,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Aに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(5) 請求項8に係る発明ついて
請求項8に係る発明は,「請求項1~7のいずれかに記載の重合性組成物の重合体」である。
ここで,相違点1に係る本件特許発明1の構成のうち,上記(3)において言及した構成は,いずれも,重合性組成物に含有される重合性液晶化合物のメソゲンの主鎖をなす剛直部の構造に関するものである。また,この構造は,技術的にみて,重合に際しても変化しない構造であるから,この構造(以下「相違点1に係るメソゲンの剛直部の構造」という。)は,請求項8に係る発明の重合体の構造に反映されるものである。
したがって,請求項8に係る発明も,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Aに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(6) 請求項9~請求項16に係る発明について
請求項9に係る発明は,「請求項8に記載の重合体を用いた光学異方体」であるから,相違点1に係るメソゲンの剛直部の構造が反映されたものである。
同様に,請求項10に係る発明~請求項16に係る発明も,それぞれ,相違点1に係るメソゲンの剛直部の構造が反映されてなる,「位相差フィルム」,「偏光フィルム」,「レンズシート」,「発光ダイオード照明装置」,「表示素子」,「発光素子」及び「反射フィルム」である。
したがって,請求項9~請求項16に係る発明も,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Aに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 甲1組成物発明Bについて
(1) 相違点
本件特許発明1と甲1組成物発明Bを対比すると,両者は,以下の点で相違する。
(相違点1’)
「重合性液晶化合物」が,本件特許発明1は,「一般式(2)で表される」ものであるのに対して,甲1組成物発明Bは,「一般式(2)で表される」ものではない点。
(当合議体注:事案に鑑みて,一般式(2)に関する説明の記載は,省略する。)
(相違点2’)
「重合性液組成物」に関して,本件特許発明1は,式(I)を満たす重合性液晶化合物を「少なくとも2つ以上」を含有するのに対して,甲1組成物発明Bは,式(I)を満たす重合性液晶化合物を1つ(1種類)含有する点。
(2) 判断
甲1組成物発明Bの「逆波長分散重合性液晶化合物」は,本件特許発明1の「一般式(2)」における,「Mに直接結合するZ11及びZ12の少なくとも何れか一方は,-OCH2-,-CH2O-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,又は,-CH2CH2-OCO-を表し」という要件を,満たさない。すなわち,甲1組成物発明Aの「逆波長分散重合性液晶化合物」における,「Z11及びZ12」に対応する部分は,次の図の「部分C」及び「部分D」と理解されるところ,これは「-OCO-」である。
加えて,甲1の[0118]に記載された式(V),及び[0120]に記載された「Y1w」及び「Y2w」の選択肢においても,上記の選択肢は開示されていない。
したがって,甲1組成物発明Bの「逆波長分散重合性液晶化合物」において,上記「部分C」又は「部分D」を,「-OCH2-,-CH2O-,-CH=CH-COO-,-CH=CH-OCO-,-COO-CH=CH-,-OCO-CH=CH-,-COO-CH2CH2-,-OCO-CH2CH2-,-CH2CH2-COO-,又は,-CH2CH2-OCO-」に替えることは,予定されていないといえる。また,特許異議申立人が提出した甲2~甲6にも,甲1組成物発明Bの「逆波長分散重合性液晶化合物」を上記のように替えることは記載も示唆もされておらず,さらに,これが本件優先日前の当業者における技術常識又は周知技術であったということもできない。
以上のとおりであるから,本件特許発明1は,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Bに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
前記3(4)~(6)で述べたのと同様の理由により,請求項2~請求項16も,本件優先日前の当業者が,甲1組成物発明Bに基づいて,容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5 取消の理由において採用しなかった特許異議の申立の理由について
1 特許法29条1項3号について
特許異議申立人は,本件特許の(訂正前の)請求項1~請求項4,請求項8~請求項10,請求項14及び請求項15に係る発明は,甲1に記載された発明と同一であると主張する。
しかしながら,前記「第2」のとおり,本件訂正は認められることとなった。そして,甲1には,「一般式(2)」の要件を満たす逆波長分散重合性液晶化合物は,記載されていない。また,甲1の[0016],[0018],[0118]及び[0120]等の一般式に関する記載を考慮しても,甲1に,「一般式(2)」の要件を満たす逆波長分散重合性液晶化合物が,記載されているに等しいということもできない。
したがって,特許異議申立人の主張は,採用できない。
2 特許法36条6項1号について
特許異議申立人は,本件特許の請求項1~請求項16に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができないと主張する。
しかしながら,以下のとおりである。
本件特許発明1の,発明が解決しようとする課題は,本件特許の明細書の【0006】に記載されたとおりの,「溶解性に優れ,結晶の析出等が起こらない高い保存安定性を有する重合性組成物を提供し,当該組成物を重合して得られるフィルム状の重合物を作製した際に塗布ムラが生じにくい重合性組成物を提供すること」にある。
ここで,本件特許の発明の詳細な説明の記載からは,本件特許発明1の重合性組成物として,例えば,【0336】の【表18】に記載の重合性組成物(64)等を読み取ることができる。そして,【0348】の【表23】及び【0351】の【表24】の記載からみて,この重合性組成物(64)の「溶解性」,「保存安定性」及び「塗布ムラ」は,それぞれ,「調整後,透明で均一な状態が目視で確認できる。」,「室温で3日放置後も透明で均一な状態が保持される。」及び「塗膜にムラが全く観察されない。」と評価されている(当合議体注:評価基準は,【0315】及び【0319】に記載のとおりである。)。
そうしてみると,本件特許の発明の詳細な説明には,本件特許発明1の範囲に含まれ,かつ,本件特許発明1の,発明が解決しようとする課題を解決することができる発明が記載されているといえる。
ところで,本件特許発明1の重合性液晶化合物に該当する化合物は,一般式(2)の選択肢からみて,極めて膨大な数のものである。
しかしながら,本件特許の出願時の当業者ならば,棒状液晶性化合物に関する知識を幅広く具備している。そして,このような当業者からしてみれば,本件特許発明1の一般式(2)で表される重合性液晶化合物の各選択肢は,一般的な範囲内にあると考えられる。また,本件特許の明細書の【0068】,【0070】及び【0152】~【0156】には,本件特許発明の重合性液晶化合物の構成及び有機溶媒の構成と,溶解性,保存安定性及び塗布ムラとの関係が,定性的な理由とともに,説明されている。
そうしてみると,本件特許の出願時の技術常識をわきまえた当業者ならば,本件特許の発明の詳細な説明の記載により,本件特許発明1の重合性組成物を,本件特許発明1の発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものとして,理解することができる。
したがって,本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載したものである。
また,請求項2~請求項16に係る発明についても,同様である。
3 36条6項2号について
特許異議申立人は,[A]請求項1の「炭素原子数2から20の又は,アルキルカルボニルオキシ基」という記載は,一義的に解釈できないこと,[B]請求項1には,式(I)を説明する記載中に「実質的に基板に対して水平に配向させたとき」という,範囲を不確定とさせる表現が存在すること,[C]請求項1の「上記一般式(1)~(7)においてMは」という記載は,一義的に解釈できないこと,を理由として,本件特許の請求項1~請求項16に係る発明は明確であるということができないと主張する。
しかしながら,前記「第2」のとおり,本件訂正は認められることとなった。そして,本件訂正請求により,上記[A]についての記載は削除され(訂正事項6C),上記[C]についての記載は改められた(訂正事項3)。
また,上記[B]について検討すると,式(I)は,「Re(450nm)/Re(550nm)<1.0」という,極めて緩く,精度も低い条件にすぎない(定性的に逆波長分散特性を示せば足りる程度のものである。)。これに対して,本件特許発明1の一般式(2)の要件を満たす化合物は,例えば,【0346】に記載のとおり,軽々と式(I)の要件を満たすものである。そうしてみると,仮に,当業者において「実質的に基板に対して水平に配向させたとき」という記載の解釈に幅があったとしても,これが式(I)の要件を満たすか否かの判断に影響するとまではいえない。
したがって,式(I)を説明する記載中に「実質的に基板に対して水平に配向させたとき」という記載があったとしても,本件特許発明1は明確である。
第6 まとめ
以上のとおりであるから,取消理由通知書により通知した取消の理由,及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては,本件特許(請求項1~請求項16に係る特許)を取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700079