特許訂正審判
2018-390152
転がり軸受用保持器及びその製造方法
- 審判番号
- 2018-390152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2003-341353外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月02日
- 審決日
- 2019年03月12日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P141 .851-Y (F16C) / P141 .853-Y (F16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第131条の2第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4487530号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4487530号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判請求に係る特許第4487530号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成15年9月30日に出願され、その請求項1及び2に係る発明について平成22年4月9日に特許権の設定登録がされたものである。
その後、平成30年10月2日に特許権者日本精工株式会社(以下、「請求人」という。)より、本件特許に対して訂正審判の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、本件訂正請求に対して、平成30年12月5日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成30年12月26日に請求人より意見書及び手続補正書の提出がされたものである。
第2 訂正拒絶理由の概要
当審が平成30年12月5日付けで請求人に通知した訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。
「本件訂正請求の訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号を目的とするものであり、かつ、同法同条第5項及び第6項の規定に適合するものであるものの、同条同法第7項の規定に適合するものではない。
したがって、本件訂正請求は拒絶すべきものである。」
第3 手続補正の適否
1.補正の内容
請求人が平成30年12月26日に提出した手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、審判請求書の「6.請求の理由」の「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」の内容を、
「特許請求の範囲の【請求項1】を削除する。」(下線が補正箇所。)
と補正するとともに、当該補正に対応して、審判請求書の「6.請求の理由」の「(3)訂正の理由」の「ア 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明」内容を補正するものである。
2.本件補正についての当審の判断
本件補正は、請求項1に関する訂正事項を当該請求項1の削除という訂正事項に変更する補正であるとともに、当該請求項1の削除という訂正事項に変更する補正に整合させるための補正であるから、審判請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、本件補正は、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。
そして、このことにより当審による上記訂正拒絶理由は解消した。
第4 請求の趣旨、訂正の内容
上記「第3」のとおり、審判請求書の補正が認められることから、本件訂正審判請求の請求の趣旨は、特許第4487530号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、その訂正の内容は、次の訂正事項1~5のとおりである(下線は訂正箇所である。)。
1.訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】を削除する。
2.訂正事項2
特許請求の範囲の【請求項2】の「鋼製の転がり軸受用保持器を製造するに際して、窒化処理を施して表面に窒化物層を形成した後に、酸素の存在下350~450℃で1~5時間時間(当審注:「時間時間」は「時間」の誤記と認める。)保持する熱処理を施すことにより、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径1μm以下の酸化物粒子で埋めて緻密化させて、前記窒化物層の外側に厚さ0.5μm以上5μm以下の緻密層をさらに形成するとともに、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散を進行させて前記窒化物層を緻密化させることを特徴とする転がり軸受用保持器の製造方法。」との記載を、
「鋼製の転がり軸受用保持器を製造するに際して、520℃、1時間の塩浴窒化処理を施して表面に窒化物層を形成した後に、酸素の存在下400℃~430℃で2時間保持する熱処理を施すことにより、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径0.5μm以上0.8μm以下の酸化物粒子で埋めて緻密化させて、前記窒化物層の外側に厚さ3μmの緻密層をさらに形成するとともに、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散を進行させて前記窒化物層を緻密化させることを特徴とする転がり軸受用保持器の製造方法。」に訂正する。
3.訂正事項3
明細書の段落【0006】の「鋼製の転がり軸受用保持器において、窒化処理による窒化物層が表面に形成され、酸素の存在下350~450℃で1~5時間保持する熱処理による緻密層が前記窒化物層の外側にさらに形成されており、前記緻密層は、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径1μm以下の酸化物粒子が埋めて緻密化することにより形成されたものであり、その厚さが0.5μm以上5μm以下であり、前記窒化物層は、前記緻密層を形成する前記熱処理により、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散が進行して緻密化していることを特徴とする。」との記載を、「鋼製の転がり軸受用保持器において、520℃、1時間の塩浴窒化処理による窒化物層が表面に形成され、酸素の存在下400℃~430℃で2時間保持する熱処理による緻密層が前記窒化物層の外側にさらに形成されており、前記緻密層は、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径0.5μm以上0.8μm以下の酸化物粒子が埋めて緻密化することにより形成されたものであり、その厚さが3μmであり、前記窒化物層は、前記緻密層を形成する前記熱処理により、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散が進行して緻密化していることを特徴とする。」に訂正する。
4.訂正事項4
明細書の段落【0007】の「また、前記酸化物粒子の平均粒径が1μm以下であり、前記緻密層の厚さが0.5μm以上5μm以下である。」との記載を削除し、同段落【0007】の「鋼製の転がり軸受用保持器を製造するに際して、窒化処理を施して表面に窒化物層を形成した後に、酸素の存在下350~450℃で1~5時間保持する熱処理を施すことにより、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径1μm以下の酸化物粒子で埋めて緻密化させて、前記窒化物層の外側に厚さ0.5μm以上5μm以下の緻密層をさらに形成するとともに、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散を進行させて前記窒化物層を緻密化させることを特徴とする。」との記載を、「鋼製の転がり軸受用保持器を製造するに際して、520℃、1時間の塩浴窒化処理を施して表面に窒化物層を形成した後に、酸素の存在下400℃~430℃で2時間保持する熱処理を施すことにより、前記窒化物層の最表面側に形成されている空孔を平均粒径0.5μm以上0.8μm以下の酸化物粒子で埋めて緻密化させて、前記窒化物層の外側に厚さ3μmの緻密層をさらに形成するとともに、前記空孔を埋めるように窒化物の拡散を進行させて前記窒化物層を緻密化させることを特徴とする。」に訂正する。
5.訂正事項5
明細書の段落【0017】【表1】中の「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例6」、「実施例7」及び「実施例8」を「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」、「参考例6」、「参考例7」及び「参考例8」にそれぞれ訂正し、明細書の段落【0021】及び【0022】の「実施例1~8」との記載を「実施例5、参考例1~4及び6~8」に訂正する。
第5 当審の判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものにすぎないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、もはや独立特許要件を判断する対象が存在しない。
2.訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の転がり軸受用保持器の製造方法において、「窒化処理」について「520℃、1時間の塩浴窒化処理」に限定し、「酸素の存在下350~450℃で1~5時間保持する熱処理」について「酸素の存在下400℃~430℃で2時間保持する熱処理」に限定し、窒化物層の最表面側に形成されている空孔を埋める「酸化物粒子」の「平均粒径」を、「1μm以下」から「0.5μm以上0.8μm以下」に限定し、「緻密層」の厚さを「0.5μm以上5μm以下」から「3μm」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
明細書の段落【0017】の【表1】には、実施例5の保持器が、窒化処理として「520℃、1時間の塩浴窒化処理」を施し、熱処理として「条件A」の処理を施すことが記載されており、明細書の段落【0016】には、表1の「条件A」が「400℃~430℃で2時間加熱」することが記載されている。そして、明細書の段落【0017】の【表1】には、実施例5の保持器が、処理後の酸化物粒子の平均粒径が「0.5~0.8μm」であり、緻密層の厚さが「3μm」であったことも記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
また、訂正事項2は、請求項2に係る発明の発明特定事項である、窒化処理と熱処理の条件及び酸化物粒子の平均粒径と緻密層の厚さをそれぞれさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件
訂正事項2は、請求項2に係る発明の発明特定事項である、窒化処理と熱処理の条件及び酸化物粒子の平均粒径と緻密層の厚さをそれぞれさらに限定するものであるところ、請求項2に係る発明の特許について平成22年4月9日に特許権の設定がされて以降、その独立特許要件について見直すべき新たな事情は存在しない。
3.訂正事項3について
(1)訂正の目的
訂正前明細書の段落【0006】には、訂正前の請求項1に対応する記載がなされていたところ、訂正事項1による請求項1の削除及び訂正事項2による訂正後の請求項2の記載内容と一致せず、不明瞭となる。
訂正事項3は、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものにすぎず、上記1.(2)及び2.(2)をも踏まえれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4.訂正事項4について
(1)訂正の目的
訂正前明細書段落【0007】には、訂正前の請求項1及び2に対応する記載がなされていたところ、訂正事項1による請求項1の削除及び訂正事項2による訂正後の請求項2の記載内容と一致せず不明瞭となる。
訂正事項4は、明細書の段落【0007】の記載を訂正後の請求項2の記載に整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものにすぎず、上記1.(2)及び2.(2)をも踏まえれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
5.訂正事項5について
(1)訂正の目的
訂正事項1及び2により、訂正前明細書に記載されている「実施例1」~「実施例4」及び「実施例6」~「実施例8」は、もはや実施例ではなくなる。
訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる「実施例1」~「実施例4」及び「実施例6」~「実施例8」を、「参考例1」~「参考例4」及び「参考例6」~「参考例8」とすることにより、訂正後の特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものにすぎず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、本件訂正審判請求の請求の趣旨は、上記「第4」のとおりであり、特許権全体に対して訂正審判を請求する場合に該当するといえる。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正請求に係る訂正事項1~5は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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