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特許訂正審判

2018-390058

ラックアンドピニオン式ステアリング装置の製造方法

審判番号
2018-390058
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2010-011294
登録番号
特許第5509869号(P5509869)
請求日
2018年03月15日
審決日
2018年06月21日
公報発行日
2018年09月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】日本精工 株式会社
  • 【請求人代理人】松山 美奈子
審判長/審判官
  • 審判長 氏原 康宏
  • 審判官 島田 信一
  • 審判官 仁木 学
分類
P141 .851-Y (B62D) / P141 .853-Y (B62D) / P141 .854-Y (B62D) / P141 .855-Y (B62D) / P141 .856-Y (B62D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項3号特許法126条5項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5509869号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5509869号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 本件特許第5509869号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年1月21日に特許出願され、平成26年4月4日にその特許権の設定登録がされ、そして、平成30年3月15日付けで本件訂正審判の請求がなされたものである。 第2.請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5509869号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 第3.本件訂正内容 本件訂正の内容は、次のとおりである。 なお、下線部分が訂正箇所である。 1.訂正事項1 本件特許の特許請求の範囲【請求項1】を、 「運転者の操舵により回転するステアリング軸と、前記ステアリング軸に連結され前記ステアリング軸の回転に伴って回転するピニオンと、前記ピニオンに噛み合うとともに車輪に連結されるラックと、を備えるラックアンドピニオン式ステアリング装置を製造するに際して、以下の6つの条件を満たすようにして前記ラックを製造することを特徴とするラックアンドピニオン式ステアリング装置の製造方法。 条件A)軟化焼鈍しが施された鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形した後に、誘導加熱によって調質処理を施し、さらに高周波焼入れを施して前記ラックを製造する。 条件B)前記軟化焼鈍しにより、前記冷間鍛造前の前記素材が球状セメンタイト,針状セメンタイト,及びフェライトを含有する組織を有するようにする。 条件C)前記高周波焼入れにより、焼入れが施され硬化された表層部が表面に形成されるとともに、焼入れが施されていない非焼入れ部が芯部に形成される。 条件D)前記調質処理により、調質組織を有し且つ硬さがHV200以上300以下である調質部が、前記非焼入れ部の外層部分に形成される。 条件E)前記調質部の深さ方向の長さは2mm以上10mm以下である。 条件F)前記ラックの歯が形成されている側の面から前記芯部に向かって前記表層部、前記調質部、前記非焼入れ部がこの順に形成される。」から、 「運転者の操舵により回転するステアリング軸と、前記ステアリング軸に連結され前記ステアリング軸の回転に伴って回転するピニオンと、前記ピニオンに噛み合うとともに車輪に連結されるラックと、を備えるラックアンドピニオン式ステアリング装置を製造するに際して、以下の6つの条件を満たすようにして前記ラックを製造することを特徴とするラックアンドピニオン式ステアリング装置の製造方法。 条件A)軟化焼鈍しが施されたJIS G4051に規定されたS45C鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形した後に、誘導加熱によって調質処理を施し、さらに高周波焼入れを施して前記ラックを製造する。 条件B)前記軟化焼鈍しにより、前記冷間鍛造前の前記素材が球状セメンタイト,針状セメンタイト,及びフェライトを含有する組織を有するようにする。 条件C)前記高周波焼入れにより、焼入れが施され硬化された表層部が表面に形成されるとともに、焼入れが施されていない非焼入れ部が芯部に形成される。 条件D)前記調質処理により、調質組織を有し且つ硬さがHV250以上261以下である調質部が、前記非焼入れ部の外層部分に形成される。 条件E)前記調質部の深さ方向の長さは5.5mm以上9.5mm以下である。 条件F)前記ラックの歯が形成されている側の面から前記芯部に向かって前記表層部、前記調質部、前記非焼入れ部がこの順に形成される。」と訂正する。 2.訂正事項2 本件特許の明細書の段落【0002】の「S35~S55C」との記載を「S35C~S55C」に訂正する。 3.訂正事項3 本件特許の明細書の段落【0006】の「以下の5つの条件」との記載を「以下の6つの条件」に訂正し、同段落【0007】の「条件A)軟化焼鈍しが施された鋼製の素材を、」との記載を「条件A)軟化焼鈍しが施されたJIS G4051に規定されたS45C鋼製の素材を、」に訂正し、同段落【0008】の「条件D)前記調質処理により、調質組織を有し且つ硬さがHV200以上300以下である調質部が、」との記載を「条件D)前記調質処理により、調質組織を有し且つ硬さがHV250以上261以下である調質部が、」に訂正し、同段落の「条件E)前記調質部の深さ方向の長さは2mm以上10mm以下である。」との記載を「条件E)前記調質部の深さ方向の長さは5.5mm以上9.5mm以下である。」に訂正し、同段落の末尾に「条件F)前記ラックの歯が形成されている側の面から前記芯部に向かって前記表層部、前記調質部、前記非焼入れ部がこの順に形成される。」との記載を追加する。 4.訂正事項4 本件特許の明細書の段落【0009】の「前記鋼は、日本工業規格JIS G4051に規定されたS35C~S55C及びSAE規格に規定された1035~1055のうちの1種であることが好ましく、0.35質量%以上0.55質量%以下の炭素を含有していることが好ましい。」との記載を削除する。 5.訂正事項5 本件特許の明細書の段落【0019】の「鋼の種類は特に限定されるものではないが、日本工業規格JIS G4051に規定されたS35C~S55C及びSAE規格に規定された1035~1055のうちの1種であり、0.35質量%以上0.55質量%以下の炭素を含有する鋼を用いることが好ましい。」との記載を、「鋼の種類は、日本工業規格JIS G4051に規定されたS45C及びSAE規格(Society of Automotive Engineers )に規定された1045である。」に訂正する。 6.訂正事項6 本件特許の明細書の段落【0020】の記載を削除する。 7.訂正事項7 本件特許の明細書の段落【0037】【表1】の「実施例1~12」を「参考例1~12」に訂正し、同段落【0039】【表3】の「実施例25~36」を「参考例25~36」に訂正し、以下に示すように、同段落【0038】【表2】の「実施例13~17及び21~24」を「参考例13~17及び21~24」に訂正し、同段落【0033】の「実施例を示して」との記載を「実施例及び参考例を示して」に訂正する。 【表2】 8.訂正事項8 本件特許の明細書の段落【0043】の「表1~6からわかるように、実施例のラックは、調質部の深さ方向の長さが2mm以上10mm以下で、且つ、調質部のビッカース硬さHVが200以上300以下である」との記載を「表1~6からわかるように、実施例のラックは、調質部の深さ方向の長さが5.5mm以上9.5mm以下で、且つ、調質部のビッカース硬さHVが250以上261以下である」に訂正する。 第4.当審の判断 1.訂正の目的の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1の「軟化焼鈍しが施された鋼製の素材」を「軟化焼鈍しが施されたJIS G4051に規定されたS45C鋼製の素材」とする訂正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「鋼製の素材」の材質を限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項1の「硬さがHV200以上300以下である調質部」を「硬さがHV250以上261以下である調質部」とする訂正及び「調質部の深さ方向の長さは2mm以上10mm以下」を「調質部の深さ方向の長さは5.5mm以上9.5mm以下」とする訂正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「調質部」の「硬さ」及び「深さ方向の長さ」の数値範囲をさらに減縮するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は「S35~S55C」との記載を「S35C~S55C」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (3)訂正事項3~8について 訂正事項3~8は、訂正事項1に係る訂正に伴って訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものである。さらに、訂正事項5では、SAE規格について、「(Society of Automotive Engineers )」との用語の説明を加えて明瞭化している。 したがって、訂正事項3~8は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 2.新規事項の追加の有無について (1)訂正事項1について ア.訂正事項1の「軟化焼鈍しが施された鋼製の素材」を「軟化焼鈍しが施されたJIS G4051に規定されたS45C鋼製の素材」とする訂正は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。さらに、特許請求の範囲又は図面を併せたものを「本件明細書等」という。)の段落【0019】に「このラックアンドピニオン式ステアリング装置においては、ラック21は鋼で構成されている。鋼の種類は特に限定されるものではないが、日本工業規格JIS G4051に規定されたS35C~S55C及びSAE規格に規定された1035~1055のうちの1種であり、0.35質量%以上0.55質量%以下の炭素を含有する鋼を用いることが好ましい。」と記載され、同段落【0020】には、「例えば、日本工業規格JIS G4051に規定されたS35C,S38C,S40C,S43C,S45C,S48C,S50C,S53C,S55Cや、SAE規格(Society of Automotive Engineers )に規定された1035,1037,1038,1039,1040,1042,1043,1044,1045,1046,1049,1050,1053,1055が好ましい。」(下線は当審において付与したものである。)と記載され、鋼の素材としてJIS G4051に規定されたS45Cが例示されていること、同段落【0038】の【表2】の各実施例において「鋼の種類」として「S45C」と記載されているから、「鋼製の素材」の具体的態様として「JIS G4051に規定されたS45C」が記載されているといえる。 イ.本件明細書の段落【0043】の「表1~6からわかるように、実施例のラックは、調質部の深さ方向の長さが2mm以上10mm以下で、且つ、調質部のビッカース硬さHVが200以上300以下であるため、優れた耐衝撃性及び静的強度を有していて破断に至らなかった。」との記載によれば、「ビッカース硬さHVが200以上300以下」で「深さ方向の長さが2mm以上10mm以下で」ある調質部が形成される場合には、所定の効果が得られるから、その数値範囲に入っている「硬さがHV250以上261以下」で「深さ方向の長さは5.5mm以上9.5mm以下である」調質部が形成される場合であっても当該所定の効果が得られるものである。 また、上記【表2】の「鋼の種類」を「S45C」とする実施例13~24は、「深さ方向の長さ(mm)」及び「硬さHV」の数値が、実施例18では「5.5」及び「253」であり、実施例19では「7.4」及び「261」であり、実施例20では「9.5」及び「250」であるから、これら3つの実施例18~20の「深さ方向の長さ(mm)」及び「硬さHV」の数値に基づけば、硬さがHV250以上261以下であり、深さ方向の長さは5.5mm以上9.5mm以下という数値範囲が導かれるものといえるので、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、当該訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 本件明細書の段落【0037】の表2には「鋼の種類」として「S35C」を用いるものが実施例1~12に示されているから、「S35~S55C」との記載を「S35C~S55C」とする訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3~8について 上記(1)で検討したとおり、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項1に係る訂正に伴って本件明細書を訂正する訂正事項3~8は訂正事項1と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 3.特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。また、特許請求の範囲の減縮により新たな効果を奏するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項を導入するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3~8について 訂正事項3~8は、訂正事項1に係る訂正に伴って本件明細書を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 4.独立特許要件について 上記訂正事項1による訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないから、上記訂正事項1の訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 第5.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。

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