特許異議申立
2023-700816
車両の検出器取付構造
- 審判番号
- 2023-700816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-033771
- 登録番号
- 7223341
- 請求日
- 2023年08月08日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】いすゞ自動車株式会社
- 【権利者代理人】米山 尚志
- 【異議申立人】石川 克人
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 沼生 泰伸
- 審判官 久島 弘太郎
- 分類
- P1651.113-YAA(B62D) / P1651.121-YAA(B62D) / P1651.832-YAA(B62D) / P1651.851-YAA(B62D) / P1651.857-YAA(B62D) / P1651.854-YAA(B62D) / P1651.855-YAA(B62D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7223341号発明「車両の検出器取付構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7223341号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について、訂正することを認める。
特許第7223341号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7223341号の請求項3、4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7223341号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年2月28日に出願され、令和5年2月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年2月16日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 8月 8日 :特許異議申立人 石川克人(以下「申立人」
という。)による請求項1~4に係る特許に
対する特許異議の申立て
同年10月31日付け:取消理由通知
同年12月19日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
なお、合議体は申立人に対し、令和5年12月26日付けで期間を指定して、特許法第120条の5第5項に規定される通知をしたが、令和5年12月19日付けの訂正請求に対する申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年12月19日付けの訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について、訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載の車両の検出器取付構造であって、前記マッドガードブラケットは、前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有することを特徴とする車両の検出器取付構造。」と記載されているのを、独立形式に改め、「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、前記車体フレームの上方に配置されるキャブと、前記車体フレームに固定されて前記車体フレームから上方へ延び、前記キャブの後端側を下方から支持するキャブリヤメンバと、を備え、前記マッドガードブラケットは、前記車体フレームよりも上方に配置されて前記キャブリヤメンバから車幅方向外側へ延びる上ブラケット部と、前記上ブラケット部から下方へ延びて前記マッドガードの後方に配置されて前記マッドガードに固定される縦ブラケット部とを有し、前記キャブリヤメンバを介して前記車体フレームに対して固定され、前記検出器は、前記マッドガードブラケットの前記縦ブラケット部に対して固定され、前記マッドガードブラケットは、前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有することを特徴とする車両の検出器取付構造。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1に記載の車両の検出器取付構造であって、前記マッドガードブラケットに固定される検出器ブラケットを備え、前記マッドガードブラケットは、上下方向に延びて前記車体フレームに固定されるフレーム固定部と、前記フレーム固定部の上端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される上側マッドガード固定部と、前記フレーム固定部の下端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される下側マッドガード固定部とを有する略U状に形成され、前記検出器ブラケットは、前記マッドガードブラケットの前記フレーム固定部よりも車幅方向外側、且つ前記上側マッドガード固定部と前記下側マッドガード固定部との間に配置されて上下方向に延び、上下の両端部が前記上側マッドガード固定部及び前記下側マッドガード固定部に固定され、前記検出器は、前記検出器ブラケットに対して固定されることによって、前記検出器ブラケットを介して前記マッドガードブラケットに対して固定されることを特徴とする車両の検出器取付構造。」と記載されているのを、独立形式に改め、「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、前記マッドガードブラケットに固定される検出器ブラケットと、を備え、前記マッドガードブラケットは、上下方向に延びて前記車体フレームに固定されるフレーム固定部と、前記フレーム固定部の上端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される上側マッドガード固定部と、前記フレーム固定部の下端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される下側マッドガード固定部とを有する略U状に形成され、前記検出器ブラケットは、前記マッドガードブラケットの前記フレーム固定部よりも車幅方向外側、且つ前記上側マッドガード固定部と前記下側マッドガード固定部との間に配置されて上下方向に延び、上下の両端部が前記上側マッドガード固定部及び前記下側マッドガード固定部に固定され、前記検出器は、前記検出器ブラケットに対して固定されることによって、前記検出器ブラケットを介して前記マッドガードブラケットに対して固定されることを特徴とする車両の検出器取付構造。」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項1~4についてされたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2について
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1、2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項3、4について
訂正事項3、4はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書の記載等に基づくものであって新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)小括
上記のとおり、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について、訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、
前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、
前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、
前記車体フレームの上方に配置されるキャブと、
前記車体フレームに固定されて前記車体フレームから上方へ延び、前記キャブの後端側を下方から支持するキャブリヤメンバと、を備え、
前記マッドガードブラケットは、前記車体フレームよりも上方に配置されて前記キャブリヤメンバから車幅方向外側へ延びる上ブラケット部と、前記上ブラケット部から下方へ延びて前記マッドガードの後方に配置されて前記マッドガードに固定される縦ブラケット部とを有し、前記キャブリヤメンバを介して前記車体フレームに対して固定され、
前記検出器は、前記マッドガードブラケットの前記縦ブラケット部に対して固定され、
前記マッドガードブラケットは、前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有する
ことを特徴とする車両の検出器取付構造。
【請求項4】
車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、
前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、
前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、
前記マッドガードブラケットに固定される検出器ブラケットと、を備え、
前記マッドガードブラケットは、上下方向に延びて前記車体フレームに固定されるフレーム固定部と、前記フレーム固定部の上端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される上側マッドガード固定部と、前記フレーム固定部の下端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される下側マッドガード固定部とを有する略U状に形成され、
前記検出器ブラケットは、前記マッドガードブラケットの前記フレーム固定部よりも車幅方向外側、且つ前記上側マッドガード固定部と前記下側マッドガード固定部との間に配置されて上下方向に延び、上下の両端部が前記上側マッドガード固定部及び前記下側マッドガード固定部に固定され、
前記検出器は、前記検出器ブラケットに対して固定されることによって、前記検出器ブラケットを介して前記マッドガードブラケットに対して固定される
ことを特徴とする車両の検出器取付構造。」
第4 取消理由についての判断
1 本件特許の請求項1~4に係る発明
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第3」参照)。
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要について
訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、当審が令和5年10月31日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「1.(新規性)特許第7223341号(以下「本件特許」という。)の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<甲号証一覧>
甲第1-1号証:正田拓也,“【東京モーターショー 2019】いすゞ、ハイブリッド連接バス「エルガデュオ」や新型「ギガ」などを展示”,[online],2019年10月24日,Car Watch,インターネット<URL: https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyo2019/1214290.html>
甲第2号証:特開2013-107516号公報
以下、甲号証の番号に応じて「甲1-1」、「甲2」という。
なお、甲1-1、甲2は、特許異議申立人石川克人(以下「申立人」という。)が提出したものであり、申立人が提出した甲第1号証には2つのウェブサイトが示されていたため、1つ目のウェブサイトを甲第1-1号証とした。
<理由1><理由2>
・請求項 1
・引用文献等 甲1-1
<理由2>
・請求項 2
・引用文献等 甲1-1、2」
3 取消理由について
請求項1、2に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項1、2に対しての上記取消理由については、対象となる請求項が存在しない。よって、上記取消理由については理由がない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張する特許異議申立理由の概要
(1)請求項3に係る特許について
本件特許の訂正前の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて又は甲1に記載された発明及び甲2~9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項4に係る特許について
本件特許の訂正前の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された発明に基いて又は甲1に記載された発明及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 特許異議申立理由についての判断
(1)甲号証
申立人が提出した甲第1号証~甲第9号証は以下のとおりである。なお、申立人が提出した甲第1号証には2つのウェブサイトが示されていたため、以下では、1つ目のウェブサイトを甲第1-1号証、2つ目のウェブサイトを甲第1-2号証とする。
[甲号証]
甲第1-1号証:正田拓也,“【東京モーターショー 2019】いすゞ、ハイブリッド連接バス「エルガデュオ」や新型「ギガ」などを展示”,[online],2019年10月24日,Car Watch,インターネット<URL: https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyo2019/1214290.html>
甲第1-2号証:carview!,“東京モーターショー2019”,[online],2019年10月15日,carview!,<URL: https://carview.yahoo.co.jp/motorshow/tokyo-motorshow/car/12/11801/10/>
甲第2号証:特開2013-107516号公報
甲第3号証:特開2017-039418号公報
甲第4号証:特開2018-135062号公報
甲第5号証:特開2016-164011号公報
甲第6号証:特開2018-047768号公報
甲第7号証:特開2017-065592号公報
甲第8号証:特開2015-020607号公報
甲第9号証:特開2007-261349号公報
以下では、「甲第1-1号証」、「甲第1-2号証」、「甲第2号証」~「甲第9号証」を、それぞれ、「甲1-1」、「甲1-2」、「甲2」~「甲9」という。
ア 甲1-1
(ア)甲1-1の認定事項
申立人が甲第1号証として提出したWebページの写しに図2として示されている大型トラック「ギガ」の写真について、下図(以下「図A」という。)のように、「フロントタイヤ」、「部材A」、「部材B」、「部材C」、「部材D」、「キャブ」が示されているものと認められる。
[図:0001411334000001.jpg]
また、部材A~Cについて、以下のことが認定できる。
a 「部材A」は「フロントタイヤ」の後方に配置されていることが図Aから看取され、トラックにおいて、フロントタイヤ等の後方にマッドガードが設けられていることは技術常識であるから、「部材A」は、マッドガードであると認められる。
b 「部材C」は「部材A」を支持し、縦方向に延びていることが図Aから看取されるから、上記aを踏まえると、「部材C」はマッドガードを支持し、縦方向に延びるブラケットであると認められる。また、大型トラックが車体フレームを備えることは技術常識であり、「部材C」よりもトラックの車幅方向外側に車体フレームが存在していないことが図Aから看取されるから、「部材C」は、車体フレームの車幅方向外側に配置されていると認められる。
c 「部材A」は、「フロントタイヤ」と「部材C」との間で「部材C」に支持されていることが図Aから看取される。
d 「部材B」は、上記aで示したように「部材A」はマッドガードであること及び図Aにおいて左側の写真の下に「フロントタイヤのすぐ後ろに巻き込み事故抑制用のセンサーがある」との説明が付されていることを踏まえると、巻き込み事故抑制用のセンサーであると認められる。また、「部材B」は、「フロントタイヤ」及び「部材A」の後方において、車幅方向の外端部に配置されるとともに、「部材C」により支持されていることが図Aから看取される。
また、「部材B」が「部材C」により支持されるにあたり、「部材B」が「部材D」に固定され、「部材D」が「部材C」に固定されていることが図Aから看取され、「部材D」は、「部材B」を「部材C」に固定するブラケット、つまり、センサー固定ブラケットであると認められる。
(イ)甲1-1発明
図A及び上記(ア)a~dから、甲1-1には、次の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。
「フロントタイヤの後方に配置され、前記フロントタイヤとブラケットとの間で前記ブラケットに支持されているマッドガードと、
車体フレームの車幅方向外側に配置されており、前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケットと、
前記フロントタイヤ及び前記マッドガードの後方において、車幅方向の外端部に配置されるとともに、前記ブラケットにより支持されている巻き込み事故抑制用のセンサーと、
前記ブラケットに固定される、前記巻き込み事故抑制用のセンサーを固定するセンサー固定ブラケットと、
キャブと、
を備え、
前記巻き込み事故抑制用のセンサーは、前記センサー固定ブラケットによって、当該センサー固定ブラケットを介して前記マッドガードを支持するブラケットに対して固定される
構造。」
(2)対比・判断
ア 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲1-1発明とを対比する。
a 後者の「車体フレーム」は、前者の「車体フレーム」に相当する。
また、後者の「前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」は、前者の「マッドガードブラケット」に相当する。
そして、後者の「前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」等の部材が車体フレームに対して固定されるのは当然であることを踏まえれば、後者の「車体フレームの車幅方向外側に配置されており、前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」は、前者の「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケット」に相当する。
b 上記aの相当関係も踏まえると、後者の「フロントタイヤの後方に配置され、前記フロントタイヤとブラケットとの間で前記ブラケットに支持されているマッドガード」は、「前記フロントタイヤとブラケットとの間」は「ブラケット」の前方であるから、前者の「前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガード」に相当する。
c 後者の「前記フロントタイヤ及び前記マッドガードの後方において、車幅方向の外端部に配置されるとともに、前記ブラケットにより支持されている巻き込み事故抑制用のセンサー」は、「巻き込み事故抑制用のセンサー」が車両の外部の情報を検出するものであることが技術常識であることを踏まえると、前者の「前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器」に相当する。
d 後者の「キャブ」は、キャブが車体フレームの上方に配置されることは技術常識であることを踏まえると、前者の「前記車体フレームの上方に配置されるキャブ」に相当する。
e 後者の「縦方向に延びる前記ブラケット」が「巻き込み事故抑制用のセンサー」を支持する構成は、前者の「前記検出器は、前記マッドガードブラケットの前記縦ブラケット部に対して固定され」る構成に相当する。
f 後者の「構造」は、「巻き込み事故抑制用のセンサー」を大型トラックに取り付けるための構造であるから、前者の「車両の検出器取付構造」に相当する。
g 上記a~fを踏まえると、本件発明3と甲1-1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点3]
「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、
前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、
前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、
前記車体フレームの上方に配置されるキャブと、
を備え、
前記検出器は、前記マッドガードブラケットの前記縦ブラケット部に対して固定される
車両の検出器取付構造。」
[相違点3-1]
本件発明3は、「前記車体フレームに固定されて前記車体フレームから上方へ延び、前記キャブの後端側を下方から支持するキャブリヤメンバと、を備え、前記マッドガードブラケットは、前記車体フレームよりも上方に配置されて前記キャブリヤメンバから車幅方向外側へ延びる上ブラケット部と、前記上ブラケット部から下方へ延びて前記マッドガードの後方に配置されて前記マッドガードに固定される縦ブラケット部とを有し、前記キャブリヤメンバを介して前記車体フレームに対して固定され」るのに対して、甲1-1発明は、「縦方向に延びる前記ブラケット」がどのように車体フレームに対して固定されているのか不明である点。
[相違点3-2]
本件発明3は、「前記マッドガードブラケットは、前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有する」のに対して、甲1-1発明は、そのような下ブラケット部を有するか不明である点。
(イ)判断
事案に鑑みて、相違点3-2から検討する。
車両のマッドガードブラケットにおいて、「前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有する」ものは、提出された他のいずれの証拠(甲1-2、2~9)にも記載されておらず、また、自明のものともいえない。
したがって、甲1-1発明において、相違点3-2に係る本件発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
なお、トラックにおいて、全ての部品が直接又は間接的にフレームに対して固定されるものであり、甲1-1発明における「縦方向に延びる前記ブラケット」の下部が上部を介して車体フレームに対して固定されているとしても、当該構成をもって本件発明3の「前記マッドガードブラケットは、前記縦ブラケット部の下端側から車幅方向内側へ延びて前記車体フレームに対して固定される下ブラケット部を有する」構成に相当するとすることはできない。
(ウ)小括
そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1-1発明及び甲1-2、2~9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲1-2からは、せいぜい甲1-1と同様の発明が認定できるにすぎないところ、甲1-2に記載された発明を主引用発明としたとしても、本件発明3の進歩性を否定することはできない。
イ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲1-1発明とを対比する。
a 後者の「車体フレーム」は、前者の「車体フレーム」に相当する。
また、後者の「前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」は、前者の「マッドガードブラケット」に相当する。
そして、後者の「前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」等の部材が車体フレームに対して固定されるのは当然であることを踏まえれば、後者の「車体フレームの車幅方向外側に配置されており、前記マッドガードを支持し、縦方向に延びる前記ブラケット」は、前者の「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケット」に相当する。
b 上記aの相当関係も踏まえると、上記ア(ア)bで示したのと同様に、後者の「フロントタイヤの後方に配置され、前記フロントタイヤとブラケットとの間で前記ブラケットに支持されているマッドガード」は、前者の「前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガード」に相当する。
c 上記ア(ア)cで示したのと同様に、後者の「前記フロントタイヤ及び前記マッドガードの後方において、車幅方向の外端部に配置されるとともに、前記ブラケットにより支持されている巻き込み事故抑制用のセンサー」は、前者の「前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器」に相当する。
d 上記aの相当関係も踏まえると、後者の「前記ブラケットに固定される、前記巻き込み事故抑制用のセンサーを固定するセンサー固定ブラケット」は、前者の「前記マッドガードブラケットに固定される検出器ブラケット」に相当する。
e 上記c、dの相当関係も踏まえると、後者の「前記巻き込み事故抑制用のセンサーは、前記センサー固定ブラケットによって、当該センサー固定ブラケットを介して前記マッドガードを支持するブラケットに対して固定される」構成は、前者の「前記検出器は、前記検出器ブラケットに対して固定されることによって、前記検出器ブラケットを介して前記マッドガードブラケットに対して固定される」構成に相当する。
f 上記ア(ア)fで示したのと同様に、後者の「構造」は、前者の「車両の検出器取付構造」に相当する。
g 上記a~fを踏まえると、本件発明4と甲1-1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点4]
「車体フレームの車幅方向外側に配置されて前記車体フレームに対して固定されるマッドガードブラケットと、
前記マッドガードブラケットの前方に配置されて前記マッドガードブラケットに支持されるマッドガードと、
前記マッドガードの後方の車幅方向外端部に配置されて前記マッドガードブラケットに対して固定され、車両の外部情報を検出する検出器と、
前記マッドガードブラケットに固定される検出器ブラケットと、を備え、
前記検出器は、前記検出器ブラケットに対して固定されることによって、前記検出器ブラケットを介して前記マッドガードブラケットに対して固定される
車両の検出器取付構造。」
[相違点4]
本件発明4は、「前記マッドガードブラケットは、上下方向に延びて前記車体フレームに固定されるフレーム固定部と、前記フレーム固定部の上端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される上側マッドガード固定部と、前記フレーム固定部の下端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される下側マッドガード固定部とを有する略U状に形成され、前記検出器ブラケットは、前記マッドガードブラケットの前記フレーム固定部よりも車幅方向外側、且つ前記上側マッドガード固定部と前記下側マッドガード固定部との間に配置されて上下方向に延び、上下の両端部が前記上側マッドガード固定部及び前記下側マッドガード固定部に固定され」るのに対して、甲1-1発明は、そのように構成されているか不明である点。
(イ)判断
相違点4について検討する。
車両のマッドガードブラケットとして、「上下方向に延びて前記車体フレームに固定されるフレーム固定部と、前記フレーム固定部の上端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される上側マッドガード固定部と、前記フレーム固定部の下端側から車幅方向外側へ延びて前記マッドガードに固定される下側マッドガード固定部とを有する略U状に形成され」たものは、甲4、5に開示されているものの、甲4、5におけるマッドガードブラケットには、検出器ブラケットを固定することは記載されていないから、甲1-1発明において、甲4、5に記載された発明を適用して、相違点4に係る本件発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)小括
そうすると、本件発明4は、甲1-1発明及び甲4又は甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲1-2からは、せいぜい甲1-1と同様の発明が認定できるにすぎないところ、甲1-2に記載された発明を主引用発明としたとしても、本件発明4の進歩性を否定することはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明3、4に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1、2に係る特許は、上記のとおり、訂正によって削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700816