特許拒絶査定不服審判
2018-017083
フレキシブルリボン構造体及び作製方法
- 審判番号
- 2018-017083
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-011908外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年12月21日
- 審決日
- 2019年10月15日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 分類
- P18 .561-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017- 11908「フレキシブルリボン構造体及び作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-161894〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月26日(パリ条約による優先権主張2016年2月2日、2017年1月12日、米国)の出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年 3月22日:翻訳文提出書の提出
同年 5月26日:出願審査請求書の提出
平成30年 2月22日:拒絶理由通知(同年2月27日発送)
同年 5月23日:手続補正書・意見書の提出
同年 8月20日:拒絶査定(同年8月23日送達。
以下「原査定」という。)
同年12月21日:審判請求書・手続補正書の提出
第2 平成30年12月21日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成30年5月23日付け手続補正後のもの)に、
「【請求項1】
部分結合光ファイバリボンを作製する方法であって、
光ファイバの線形アレイを提供する工程と、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程とを備え、
前記結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である、方法。」とあったものを、
本件補正後の請求項1の、
「【請求項1】
部分結合光ファイバリボンを作製する方法であって、
光ファイバの線形アレイを提供する工程と、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程とを備え、
前記結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である、方法。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。
2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、結合マトリクス材料を付加する工程に関して、
本件補正前の請求項1に「少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程」とあったものを、
「少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程」に変更する補正(以下「補正事項」という。)を含むものである。
(2)新規事項の有無についての検討
ア 本件補正にあたり請求人は審判請求書(第5頁中段)において、「(4)補正後の独立請求項1及び10によると、下図に示すように、『少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料(48)をランダムに付加』しています。
」と説明している。
ここで、上記図は、本願の図2であると認められるから、結局、補正事項に関する補正の根拠は、図2となる。
イ ところで、複数の光ファイバは、「光ファイバの線形アレイを提供する工程」により、上記図2に示されているように、相互に接触するように平行に配列された状態になるものと解されるから、「2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分」とは、(長手方向に延びる)2本の光ファイバにより形成される「相互に接触する部分」であると解される。
ウ また、補正事項の「付加する」とは、本願明細書の【0017】及び【0028】等の記載からして、スプレーノズルなどにより塗布することを意味するものと解される。
そして、当該「相互に接触する部分」は、露出した領域であるとはいえないことから、「『相互に接触する部分』以外の部分」とは、周期的部分のうち、「ノズルによる塗布が可能な露出した周期的部分」を意味するものと解される。
エ そうすると、補正事項は、文言上は、単に、結合マトリックス材料の付加(塗布)領域を特定するものであると解されるところ(以下「解釈1」という。)、請求人は、結合マトリックス材料は「相互に接触する部分」に広がらない旨を主張している(平成31年3月8日作成の応対記録を参照。以下「解釈2」という。)。
オ しかしながら、図2からでは、結合マトリックス材料が「相互に接触する部分」に広がるか否かは不明であり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載を総合しても、「相互に接触する部分」に結合マトリクス材料が広がらないことは記載も示唆もされていない。
カ したがって、請求人の主張する解釈2を意図する本件補正は、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないともいえないことから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
キ よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 補正の目的要件
(1)上記「2(2)」のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、本件補正が、仮に、新規事項を追加するものではないとしたときに、補正の他の要件を満たすかについて以下に検討する。
(2)上記補正事項により、本件補正前の請求項1の「少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して結合マトリクス材料を、…ランダムに付加する工程」との記載は、
「少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を、…ランダムに付加する工程」と変更された。
(3)上記補正事項は、結合マトリックス材料の付加(塗布)領域を特定するもの(上記「解釈1」を参照。)、つまり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると解することができることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。
4 本願補正発明の独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると以下のものである。
「【請求項1】
部分結合光ファイバリボンを作製する方法であって、
光ファイバの線形アレイを提供する工程と、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程とを備え、
前記結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である、方法。」
(2)引用文献に記載の事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、特開2011-221199号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
複数心の光ファイバが平行に配列され、隣接する光ファイバが長手方向に間欠的に連結されてなる光ファイバテープ心線であって、
少なくとも2心の隣接する光ファイバに跨って連結樹脂を連続塗布することにより形成された連結帯を備え、この連結帯が長手方向に離れている2箇所以上の部位で、隣接する光ファイバを連結していることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
……
【請求項3】
前記連結帯は、幅方向に往復しながら長手方向に延びる周期形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項4】
……
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記複数心の光ファイバを平行に配列して所定の線速で走行させるとともに、前記複数の光ファイバと前記連結樹脂とを幅方向に相対的に往復移動させながら、前記複数心の光ファイバ上に前記連結樹脂を連続塗布することを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。」
(イ)「【背景技術】
【0002】
……
【0003】
……間欠連結型テープ心線は、複数本のテープ心線を束ねるときに柔軟に変形(丸めたり、折りたたんだり)できるので、光ファイバケーブルの細径化・高密度化に有効である。また、間欠連結型テープ心線には非連結部分(単心線部分)が存在するので、専用の工具なしで比較的容易に単心分離することができる。一方で、複数心の光ファイバ素線が所定の順序で配列されているので、容易に一括融着接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
……
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
……しかしながら、上述した間隔で連結部を形成するのは、製造上の問題がある。すなわち、樹脂の塗布工程において加圧のオン/オフ制御を正確に行わなければならないが、どちらの樹脂も粘性があり、応答性が悪いため、高速製造に適しているとはいえない。また、連結部の間隔が数十mm~数百mm程度と狭いと、機械的なオン/オフの繰り返し制御にも制約がかかるため、高速製造の妨げとなり、製造設備も複雑化してしまう。
このように、間欠連結型テープ心線は、複雑な製造設備を用いて低線速で製造しなければならないため、複数心の光ファイバを一括被覆した一般的なテープ心線よりも製造コストが高くなるという欠点がある。
【0006】
本発明は、比較的簡単な製造設備により、高線速で間欠連結型テープ心線を製造できる技術を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ファイバテープ心線において、前記連結帯は、幅方向に往復しながら長手方向に延びる周期形状を有することを特徴とする。
ここで、幅方向に往復しながら長手方向に延びる周期形状とは、サイン曲線の他に、矩形波やジグザグ波、台形波などを含み、さらには、これらの周期形状の一部が欠損した形状をも含む。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1実施形態] 図1は、第1実施形態に係る間欠連結型テープ心線の連結状態を示す平面図である。
図1に示すように、間欠連結型テープ心線1は、4心の光ファイバ素線(光ファイバの周囲に必要最小限の保護被覆を施したもの、以下、光ファイバ)11a~11dが平行に配列され、隣接する2心の光ファイバの組(11aと11b、11bと11c、11cと11d)がそれぞれ長手方向に間欠的に連結されて構成されている。
【0020】
……
【0029】
図3は、塗布装置103の一例を示す図である。図3では、図2における光ファイバ11a~11dの走行方向に直交する断面を示している。
図3に示す塗布装置103Aでは、並列に集線された光ファイバ11a~11d上で、連結樹脂を塗布するノズル(塗布部)が幅方向に往復移動する、すなわち光ファイバ11a~11dと連結樹脂が相対的に往復移動するようになっている。光ファイバ11a~11dは所定の線速で走行しているので、連結樹脂はサイン曲線を描くこととなる。」
(オ)「【0039】
このように、複数の連結帯を組み合わせたり、連結帯の形状を工夫したりすることにより、間欠連結型テープ心線を全体として間欠的に連結することができる。つまり、本発明において、連結帯の本数、形状は特に制限されない。
【0040】
また例えば、上記実施形態では、連結帯の形状を周期形状の一つであるサイン曲線状とした場合について示しているが、矩形波、ジグザグ波又は台形波等の一般的な周期形状、さらにはこれらの周期形状の一部が欠損した形状としてもよい。また、連結帯の形状が周期形状となっていない場合も本発明の技術的範囲に含まれる。」
(カ)第1実施形態に関する図1及び図3は、以下のものである。
図1
図3
イ 引用文献に記載された発明
(ア)上記ア(ア)の記載から、引用文献には、
「平行に配列された複数心の光ファイバと、
少なくとも2心の隣接する光ファイバに跨って連結樹脂を連続塗布することにより形成された、幅方向に往復しながら長手方向に延びる周期形状を有する連結帯(請求項3)と、を備え、
この連結帯が長手方向に離れている2箇所以上の部位で、隣接する光ファイバを連結している、光ファイバテープ心線(請求項1)。」
及び
「平行に配列された複数心の光ファイバと、
少なくとも2心の隣接する光ファイバに跨って連結樹脂を連続塗布することにより形成された、幅方向に往復しながら長手方向に延びる周期形状を有する連結帯(請求項3)と、を備え、
前記連結帯が長手方向に離れている2箇所以上の部位で、隣接する光ファイバを連結している、光ファイバテープ心線の製造方法(請求項5)であって、
前記複数心の光ファイバを平行に配列して所定の線速で走行させるとともに、前記複数の光ファイバと前記連結樹脂とを幅方向に相対的に往復移動させながら、前記複数心の光ファイバ上に前記連結樹脂を連続塗布する、光ファイバテープ心線の製造方法。」が記載されているものと認められる。
(イ)上記ア(イ)の記載から、以下のことが理解できる。
a 「光ファイバテープ心線」は、柔軟に変形(丸めたり、折りたたんだり)できる「間欠連結型テープ心線」であること。
b 「連結樹脂を連続塗布する」ことの技術的意義は、高速製造の妨げとなる、樹脂の塗布工程におけるノズル(塗布部)のオン/オフの繰り返し制御をなくすことにあること。
(ウ)上記ア(ウ)の記載から、
「周期形状」とは、「ジグザグ波形状」であってもよいものと認められる。
(エ)上記ア(エ)の記載から、
「連結帯」の形状は、周期形状でなくともよいこと、つまり、「ジグザグ波形状」のような周期的な形状に限られないことが理解できる。
(オ)また、上記ア(エ)の記載を踏まえて、図1及び図3を見ると、以下のことが理解できる。
a 「光ファイバ」は、断面が円筒形の光ファイバ(以下「円筒形光ファイバ」という。)であること。
b 「連結帯」は、複数の隣接する円筒形光ファイバが形成する「上面が複数の蒲鉾が連接したような形状の部分(以下「上面凹凸部」という。)」を被覆し、かつ長手方向に延びる周期形状を有すること。
(カ)上記(ア)ないし(オ)から、引用文献には、間欠連結型テープ心線の製造方法に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「平行に配列された複数の円筒形光ファイバと、
すくなくとも2心の隣接する円筒形光ファイバに跨って連結樹脂を連続塗布することにより形成された、幅方向に往復しながら長手方向に延びるジグザグ波形状を有する連結帯と、を備え、
前記連結帯が長手方向に離れている2箇所以上の部位で、隣接する円筒形光ファイバを連結した、柔軟に変形(丸めたり、折りたたんだり)できる間欠連結型テープ心線の製造方法であって、
前記複数心の円筒形光ファイバを平行に配列して所定の線速で走行させるとともに、前記複数の円筒形光ファイバと前記連結樹脂とを幅方向に相対的に往復移動させながら、前記複数心の円筒形光ファイバが形成する上面凹凸部上に前記連結樹脂を連続塗布する、間欠連結型テープ心線の製造方法。」
(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「円筒形光ファイバ」は、本願補正発明の「光ファイバ」に相当する。
引用発明の「平行に配列された複数の円筒形光ファイバ」は、本願補正発明の「光ファイバの線形アレイ」に相当する。
(イ)本願補正発明の「部分結合光ファイバリボン」とは、本願明細書の【0005】にある「ある既存の光ファイバケーブルの製造業者は、光ファイバリボンを形成する光ファイバがその全長にわたっては結合されていない間欠接着型リボンともいわれる部分結合光ファイバリボンを開発した。」との記載からして、複数の光ファイバが間欠的に接着されたものであるから、引用発明の「間欠連結型テープ心線」は、本願補正発明の「部分結合光ファイバリボン」に相当する。
(ウ)引用発明の「複数心の円筒形光ファイバを平行に配列して所定の線速で走行させる」は、本願補正発明の「光ファイバの線形アレイを提供する工程」に相当する。
(エ)引用発明の「連結樹脂」は、本願補正発明の「結合マトリクス材料」に相当する。
(オ)引用発明の「上面凹凸部」は、周期的形状であるといえるから、本願補正発明の「周期的部分」に相当する。
(カ)引用発明の「連結帯」は、「複数心の円筒形光ファイバが形成する上面凹凸部上に」「連結樹脂を連続塗布する」ことで形成されるものであるから、引用発明の「連結樹脂」は、(露出した)上面凹凸部上に塗布されているといえる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、「少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定の態様Aで付加する工程とを備える」点で一致する(上記「解釈1」を参照。)。
(キ)a 引用発明の「間欠連結型テープ心線」は、「柔軟に変形(丸めたり、折りたたんだり)できる」から、実質的に平らに敷設できるとともに、略円形状に丸められることができるものと解される。
b そうすると、引用発明の「複数心の円筒形光ファイバが形成する上面凹凸部上に連結樹脂を連続塗布する(工程)」は、(連続樹脂を)間欠連結型テープ心線を実質的に平らに敷設できるように十分に高密度に塗布するとともに、略円形状に丸められることができるように十分に低密度に塗布する工程であると認められる。
c よって、本願補正発明と引用発明とは、「結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bで付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bで付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bで付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である」点で一致する。
イ 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「部分結合光ファイバリボンを作製する方法であって、
光ファイバの線形アレイを提供する工程と、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分であって、前記2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分に対して結合マトリクス材料を所定の態様Aで付加する工程とを備え、
前記結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bで付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bでに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して所定の態様Bで付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である、方法。」
ウ 一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
所定の態様Aに関して、
本願補正発明は、「所定のパターンを形成しない態様で、ランダム」であるのに対して、
引用発明は、ランダムではない点。
<相違点2>
所定の態様Bに関して、
本願補正発明は、「ランダム」であるのに対して、
引用発明は、ランダムではない点。
(4)判断
ア 上記<相違点1>及び上記<相違点2>をまとめて検討する。
(ア)本願補正発明において、上記<相違点1>及び上記<相違点2>に係る構成を採用する技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。
本願明細書には、以下の記載がある。
「【0007】
また、従来の部分結合光ファイバリボンの製造における精密な結合パターンの付加には、許容できない製造ライン速度の低下がある。例えば、精密な結合パターンを用いて従来の部分結合光ファイバリボンを製造するライン速度は、完全結合した従来の光ファイバリボンを製造するライン速度のほぼ半分又は半分未満である。」
「【0017】
…すなわち、結合マトリクス材料は、不均一な形態で光ファイバの線形アレイに対して付加(塗布)される。」
「【0018】
フレキシブルな部分結合光ファイバリボン構造体を形成する光ファイバの線形アレイに対する結合マトリクス材料のランダム又は疑似ランダム的な付加によって、部分結合光ファイバリボンを製造する従来の方法で必要とされるように光ファイバに対する結合マトリクス材料の付加又は除去を精密に制御する必要がなくなる。部分結合光ファイバリボンを製造する従来の方法と比べて、フレキシブルな部分結合光ファイバリボン構造体を形成する光ファイバの線形アレイに対する結合マトリクス材料のランダム又は疑似ランダム的な付加によって、ライン速度の高速化、製造スクラップ結合マトリクス材料の減少、減衰性能の向上、及びよりフレキシブルなリボン構造体がもたらされる。」
上記記載からして、
上記技術的意義は、付加(塗布)を精密な結合パターンとすることなく、ランダムに付加(塗布)することで、ライン速度を高速化することにあるものと認められる。
(イ)一方、引用発明の「間欠連結型テープ心線の製造方法」は、引用文献の記載(【0005】等)によれば、塗布工程におけるノズル(塗布部)のオン/オフ制御をなくし、高速製造を可能とするものである。
また、引用文献の【0040】には「連結帯の形状が周期形状となっていない場合も本発明の技術的範囲に含まれる。」と記載されている。
(ウ)そうすると、引用発明において、「ジグザグ波形状を有する連結帯」の形状を「周期形状となっていないランダム形状」にすること、具体的には、「複数の円筒形光ファイバと連結樹脂とを幅方向に相対的に往復移動させながら、前記複数心の円筒形光ファイバが形成する上面凹凸部上に前記連結樹脂を連続塗布する(工程)」における「往復移動」をランダムにすることに何ら困難性は認められない。
イ 上記ア(ウ)のようにした引用発明は、結果として、上記<相違点1>及び上記<相違点2>に係る本願補正発明の構成を備えることになる。
ウ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>及び上記<相違点2>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 効果
本願補正発明の効果は、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。
エ 判断のまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、上記<相違点1>及び上記<相違点2>に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものであり、本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易になし得たことであるというほかない。
5 補正却下の決定の理由のむすび
上記「2」で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
また、上記「4」で検討したとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は、上記「第2」で検討したとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて、本件補正前の請求項1に係る発明として記載したとおりのものである。
念のため、本願発明を再掲すると、以下のとおりのものである。
「部分結合光ファイバリボンを作製する方法であって、
光ファイバの線形アレイを提供する工程と、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対して結合マトリクス材料を、前記結合マトリクス材料が所定のパターンを形成しない態様で、ランダムに付加する工程とを備え、
前記結合マトリクス材料が、前記光ファイバの線形アレイが部分結合光ファイバリボンを形成するような態様で、少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加され、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンを実質的に平らに敷設できるように十分に高密度であり、
少なくとも2本の隣接する光ファイバの周期的部分に対してランダムに付加される前記結合マトリクス材料が、結果として得られる前記部分結合光ファイバリボンが略円形状に丸められることができるように十分に低密度である、方法。」
2 引用文献
引用文献の記載事項は、上記「第2 4(2)及び(3)」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、前記「第2 3」の検討によれば、本願補正発明から「2本の隣接する光ファイバが相互に接触する部分以外の部分」との限定を実質的に省いたものと認められる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 4(4)」で検討したとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
4 平成30年6月13日提出の意見書における主張
意見書において、以下のように主張していることから、この点について検討する。
「斯かる発明特定事項により、『ライン速度の高速化、製造スクラップ結合マトリクス材料の減少、減衰性能の向上、及びよりフレキシブルなリボン構造体がもたらされる』との技術的効果を達成することが出来ます。」(第1頁後段)
しかしながら、引用発明の「間欠連結型テープ心線の製造方法」も、高速製造を実現するものであるから、同質の効果を奏するものである。
よって、請求人の主張は、上記「3」の判断を左右するものではない。
5 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-017083