2021-014071
内蔵利得平坦化を有する相補型光ファイバによる増幅器
- 審判番号
- 2021-014071
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-109160外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月15日
- 審決日
- 2022年10月17日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 分類
- P18 .121-Z (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2019年(令和1年)6月12日(パリ条約による優先権主張外国受理2018年 6月12日 、2019年 6月10日、いずれも米国)の出願であって、令和2年10月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対し令和3年1月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、令和4年4月6日に上申書が提出されたものである。
第2 令和3年10月15日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月15日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件の補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「所定の帯域幅にわたって動作する多波長入力光信号で用いるためのファイバによる光増幅システムであって、30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために200mW以下の出力パワーを有するラマンポンプ源を含む分布ラマン増幅器(DRA)であって、前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを呈するように構成されたDRAと、前記DRAの出力に配設され、且つ前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈するように選択されたファイバ長、ドーパント濃度及びポンプビームのパワーのパラメータを備えて形成されたエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)であって、前記EDFAは前記所定の帯域幅内の任意の波長において10dB以上の利得を生成し、前記DRA及びEDFAの組合せで前記ファイバによる光増幅システムの前記所定の帯域幅にわたって約2dB未満の出力利得偏差を維持する、EDFAとを備えたファイバによる光増幅システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「所定の帯域幅にわたって動作する多波長入力光信号で用いるためのファイバによる光増幅システムであって、200mW以下の出力パワーを有するラマンポンプ源を含む分布ラマン増幅器(DRA)であって、前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを呈するように構成されたDRAと、前記DRAの出力に配設され、且つ前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈するように選択されたファイバ長、ドーパント濃度及びポンプビームのパワーのパラメータを備えて形成されたエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)であって、前記EDFAは前記所定の帯域幅内の任意の波長において10dB以上の利得を生成し、前記DRA及びEDFAのみからなる組合せで前記ファイバによる光増幅システムの前記所定の帯域幅にわたって約2dB未満の出力利得偏差を維持する、EDFAとを備えたファイバによる光増幅システム。」
2 補正の適否
(1)本件補正により、分布ラマン増幅器につき、「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために」との記載が追加された。
(2)さらに、本件補正前の請求項1においては、出力利得偏差を維持することにつき、「DRA及びEDFAのみからなる組み合わせ」としていたところ、本件補正により、「のみからなる」との記載を削除し、「DRA及びEDFAの組合わせ」と変更された。
(3)上記(1)の補正について検討する。
当該(1)の補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題は同一である。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項の第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
(4)上記(2)の補正について検討する。
上記(2)の補正により、本件補正前には、出力利得偏差の維持につき、「DRA及びEDFAのみからなる組合わせ」としていたところ、本件補正により、「DRA及びEDFAの組合わせ」とし、出力利得偏差の維持に、DRAとEDFA以外のものも組合せうるものとなった。
かかる補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明の何れかを目的とするものでもないので、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
3 独立特許要件について
上記2(4)では、令和3年10月15日付の手続補正が特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないと判断したが、前記手続補正が特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮定して、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)本願の最先の優先権主張の日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2001-024592号公報(原査定の引用文献1。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)。
a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光増幅器に関し、詳細には波長分割多重(WDM)通信ネットワークに用いるのに好適な光増幅器に関する。」
b「【0014】図1は、本発明による光増幅器の例のブロック図を示す。増幅器1は、直列に接続されたラマン増幅器段を提供する一定の長さの伝送ファイバ2と、EDFA3とを有する。増幅器のフィードバックループの光電検出器5は、増幅器1を通って伝播する光信号の送出レベル出力を検知し、カプラ6を介して検知されたレベルを信号処理回路4に結合する。増幅器1はまた、WDMカプラ7を介して伝送ファイバ2およびEDFA3の各々をポンプする(図示されていない)ポンプソースも含む。本例において、ポンプソースは信号処理回路4内に含まれる。ポンプ光は、信号処理回路4と伝送ファイバ2およびEDFA3との間の接続部8、9、および10を介して、ポンプソースから提供される。光アイソレータ11は、増幅器1の出力部に提供される。」
c「【0015】図2は、図1に示す光増幅器に用いるのに好適な信号処理回路4のブロック図を示す。信号処理回路4は、980nmの波長でEDFA3を同方向ポンプ(co-pump)するように構成された第1のポンプソース12と、1475nmの波長でEDFA3およびラマン増幅器段2を逆方向ポンプ(counter-pump)するように構成された第2のポンプソース13とを有する。ポンプソース12のポンプレベルは、一定の値に設定されるが、ポンプソース13のポンプレベルは、以下で説明するように検知された増幅器1の送出レベル出力に応じて変化する。信号処理回路4は、負のフィードバック制御ループ中に構成されたコンパレータ15を有するALCユニット14をも有する。増幅器1からの送出レベル出力および電圧基準信号発生器16からの電圧基準信号は、コンパレータ15への入力として用いられる。エラー信号の変化が、ポンプソース13のポンプレベルに対応する変化を生じ、コンパレータ15からの出力は、ポンプソース13のポンプレベルを制御するためのエラー信号として用いられる。電圧基準信号を所望のレベルに設定すると、コンパレータ15の出力、従って増幅器1の送出レベル出力を制御することができる。
【0016】スプリッタ17は、ポンプソース13からの出力を分割するように構成され、ポンプソース13の全出力パワーの所定の割合が、EDFA3および伝送ファイバ2の各々を逆方向ポンプするのに用いられる。以下で説明するように、分割の比率は、使用者の必要に応じて自由に設定してよい。」
d「【0017】次に、増幅器1の動作を図1および図2を参照して説明する。増幅器1への入力レベルが公称値から減少すると、通常は、増幅器1の送出レベル出力がそれに応じて減少する。この場合、送出レベル出力が減少すると、コンパレータ15からの出力が増加し、したがってポンプソース13のポンプレベルが増加する。しかし、EDFA3に供給されるポンプレベルが増加すると、EDFA3の出力に時計回りのゲインチルトが生じる(長波長より短波長の方が、ゲインがより高くなる(図2参照))。通常、12nmの波長範囲では、10dBのEDFAで、ゲインチルトは0.2dB/dB程度となる。したがって、ゲインチルトにおけるこの変化を補償するために、伝送ファイバ2もまた、ポンプソース13によって逆方向ポンプされ、一定量のラマン増幅を提供する。EDFA3によって生じる時計回りのゲインチルト変化と対照的に、1548~1560nmの範囲のWDM信号は、ラマンゲインが増加すると反時計回りのゲインチルトを生じる(図4参照)。通常、伝送ファイバ3は、440cm-1程度のラマンゲインを有することができ、これは1480nmポンプでは約100~110nmである。ゲインチルトの変化は、0.3dB/dB程度になる。したがって、伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償することが可能である。」
e「【0021】図3および図4は、それぞれ入力信号の波長に対する、EDFA増幅器およびラマン増幅器の正規化されたゲインのグラフを示す。グラフは、1544nm~1560nmの波長範囲にわたって、EDFAのゲインチルトが変化する様子を示す。ゲインの低い値ではゲインチルトは正で、ゲインの高い値ではゲインチルトは負である。これと対照的に、伝送ファイバのラマンゲインについては、低い値のゲインではゲインチルトが負となり、高い値のゲインではゲインチルトが正となる。
【0022】図5は、入力信号の波長に対する、EDFA増幅器とラマン増幅器との結合され正規化されたゲインのグラフを示す。図3および図4のグラフに示す効果の結合により、1544~1560nmの範囲にわたる一定の平坦なゲインチルトが得られる。」
f 図1,図2,図3,図4および図5は、次のとおりである。
「【図1】[図:0001394579000001.jpg]【図2】[図:0001394579000002.jpg]続きを表示(全11行)【図3】[図:0001394579000003.jpg]【図4】[図:0001394579000004.jpg]【図5】[図:0001394579000005.jpg]」
(イ)引用発明1について
上記(ア)によれば、引用例1には、光増幅器について、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(なお、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「波長分割多重(WDM)通信ネットワークに用いるのに好適な光増幅器(【0001】)であって、直列に接続されたラマン増幅器段を提供する一定の長さの伝送ファイバと、EDFAとを有し、(【0014】)、980nmの波長でEDFAを同方向ポンプ(co-pump)するように構成された第1のポンプソースと、1475nmの波長でEDFAおよびラマン増幅器段を逆方向ポンプ(counter-pump)するように構成された第2のポンプソースとを有し、(【0015】、図1)スプリッタは、前記第2のポンプソースからの出力を分割するように構成され、当該ポンプソースの全出力パワーの所定の割合が、EDFAおよび伝送ファイバの各々を逆方向ポンプするのに用いられ、分割の比率は、使用者の必要に応じて自由に設定され、(【0016】、図2)前記EDFAは、供給されるポンプレベルが増加すると、EDFAの出力に時計回りのゲインチルトが生じ、12nmの波長範囲では、10dBのEDFAで、ゲインチルトは0.2dB/dB程度であって、(【0017】、図3)前記ラマン増幅器段は、ポンプソースによって逆方向ポンプされ、一定量のラマン増幅を提供するものであって、前記EDFAによって生じる時計回りのゲインチルト変化と対照的に、1548~1560nmの範囲のWDM信号は、ラマンゲインが増加すると反時計回りのゲインチルトを生じ、(【0017】、図4)伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償し(【0017】)、1544~1560nmの範囲にわたる一定の平坦なゲインチルトが得られる(【0022】、図5)光増幅器。」
イ 引用文献2
(ア)本願の最先の優先権主張の日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2015/190522号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a「[0017] [図1]は、ラマン増幅とEDFAとを組み合せて用いた光伝送システム1の構成および1スパン内の信号光パワーダイアグラムを示す図である。
[図2]は、本実施形態に係る光ファイバのサンプルおよび比較例それぞれの諸元を纏めた表である。
[図3]は、本実施形態に係る光ファイバのサンプルおよび比較例それぞれの諸元を纏めた表である。
・・・(略)・・・」
b「[0030] 本実施形態に係る光伝送システムは、上述の図1(a)に示された構造を備え、本実施形態に係る光ファイバは、光ファイバ伝送路として、図1(a)に示された光伝送システム1の光ファイバ40に適用可能である。また、図1(b)は、光ファイバ伝送路の1スパン(光ファイバ40が敷設された中継区間)に対して、信号光の伝搬方向とは逆方向にラマン増幅用励起光を伝搬させたときの、該1スパン内の信号光パワーダイアグラムを示す。図1(a)の光伝送システム1において、信号光は各スパンに敷設された光ファイバ40中の伝搬中にGR[dB]のラマン利得を得る。さらに、信号光は、スパン出力端側に配置されたEDFA21によりGE[dB]のEDFA利得を得る。このような構成により、1スパン内に生じた信号光の伝送ロスが完全に補償される。」
c「[0054] 一般に、ラマン増幅とEDFAとを組み合わせた光伝送システムにおいては、ラマン増幅の利得に比べてEDFAの利得が大きい。さらに、EDFAの雑音特性はラマン増幅に劣る(すなわち、雑音指数NFEがNFRに比べて大きい)ことから、PASE_EDFAはPASE_Ramanに比べて大きい。したがって、OSNRを改善するには、PASE_EDFAを小さく抑えることが有効である。」
d「[0065] 図3は、本実施形態に係る光ファイバのサンプルおよび比較例それぞれにおいて、励起光パワー200mWとして、スパン長100kmの光ファイバ伝送路に信号光を伝送させたときの伝送特性を示す。サンプル1~6の光ファイバは、SMFに比べて1.5dB以上のOSNR改善が可能である。」
e 図1および図3は次のとおりである。
「【図1】[図:0001394579000006.jpg]【図3】[図:0001394579000007.jpg]」
(イ)引用文献2の記載事項
上記(ア)aないしeから、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ラマン増幅とEDFAとを組み合わせた光伝送システムにおいて、([0017])一般に、ラマン増幅の利得に比べてEDFAの利得が大きく、([0054])ラマン増幅の励起光パワー200mWとした伝送特性として、([0065])GR 4.0dB]のラマン利得とGE 11.5[dB]のEDFA利得となるサンプル5(図3)や、GR 3.5dB]のラマン利得とGE 11.5[dB]のEDFA利得となるサンプル6(図3)が、設定として用いられている技術的事項」
ウ 引用文献3
(ア)本願の最先の優先権主張の日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2002/19023号(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a「図1は、本発明の第1実施形態にかかる光増幅装置の構成を示すプロック図である。
図2は、ラマン増幅によって発生する雑音成分(ASS光)のトータルパワーとラマン励起光のパワーとの関係を示す図である。」(明細書の第5頁第2ないし5行。)
b「図1において、本光増幅装置は、例えば、第1光増幅手段としての励起光源10および光力ブラ12と、 励起光パワー検出部としての光力プラ11およぴモニタ13と、演算部14と、 励起光制御手段としての制御部 1 5と、第2光増幅手段としてのEDFA20と、 入力光パワー検出手段としての光力プラ31およびモニタ32と、を有する。励起光源10は、伝送されるWDM信号光の波長帯域に対応させて予め設定された波長を有するラマン増幅用の励起光(ラマン励起光)を発生し、該ラマン励起光が光力ブラ11、12を介して伝送路3に供給される。この伝送路3は、上述の図8に示した WDM光伝送システムにおける伝送路と同様である。光力プラ11は、励起光源10から出力されるラマン励起光の一部を分岐してモニタ13に伝えるものである。光力ブラ12は、 光力プラ11を通過したラマン励起光を 信号光入力端から伝送路3に供給するとともに、伝送路3からの WDM信号光を通過させて EDFA20側に伝えるものである。ここでは、ラマン励起光がWDM信号光とは逆方向に伝搬することになり、信号光入力端に接続される伝送路3がラマン増幅媒体となって、伝送路3を伝搬する WDM信号光がラマン増幅される分布ラマン増幅器 (DRA) が構成される。」(明細書の第5頁下から6行目から第6頁第10行。)
c 図1および図2は、次のとおりである。
「図1[図:0001394579000008.jpg]図2[図:0001394579000009.jpg]」
(イ)引用文献3の記載事項
上記(ア)a~cから、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「第1光増幅手段としての励起光源および光力ブラを有する分布ラマン増幅器 (DRA)と、第2光増幅手段としてのEDFAと、を有する光増幅装置において、前記励起光源の励起光パワーを約150mWよりも小さく設定する技術的事項」
(3) 対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 本件補正発明の「所定の帯域幅にわたって動作する多波長入力光信号で用いるためのファイバによる光増幅システム」との特定事項について
(ア)引用発明1の「波長分割多重(WDM)通信ネットワークに用いる」ことは、本件補正発明の「多波長入力光信号で用いる」に相当する。
(イ)引用発明1の「光増幅器」は、本件補正発明の「光増幅システム」に相当する。
(ウ)引用発明1の「光増幅器」は「波長分割多重(WDM)通信ネットワークに用いる」ものであるから、本願補正発明の「所定の帯域幅にわたって動作する」ものであることは明らかである。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
イ 本件補正発明の「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために200mW以下の出力パワーを有するラマンポンプ源」との特定事項について
(ア)引用発明1の「第2のポンプソース」は、本件補正発明の「ラマンポンプ源」に相当する。
(イ)引用発明1は「利得」に「寄与」する割合、「利得」の値および「ラマンポンプ源」の「出力パワー」、が不明な点で、本件補正発明と相違する。
ウ 本件補正発明の「分布ラマン増幅器(DRA)」との特定事項について
引用発明1の「一定の長さの伝送ファイバ」により提供される「ラマン増幅器段」は、引用発明1の「分布ラマン増幅器(DRA)」に相当する。
したがって、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
エ 本件補正発明の「第1の利得プロファイルを呈するように構成されたDRA」との特定事項について
引用発明1の「ラマン増幅器段」は、当然、波長に依存した利得を有しており、上記「第1の利得プロファイル」を呈することは明らかである。
したがって、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
オ 本件補正発明の「前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈するように選択されたファイバ長、ドーパント濃度及びポンプビームのパワーのパラメータを備えて形成されたエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)」との特定事項について
(ア)引用発明1の「EDFA」は、本件補正発明の「エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)」に相当する。
(イ)引用発明1の「EDFA」は、当然、波長に依存した利得を有しており、上記「第2の利得プロファイル」を呈することは明らかである。
したがって、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(ウ)引用発明1は、伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償することにより「一定の平坦なゲインチルトが得られる」ものであることから、本件補正発明の「第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈する」構成を備える。
さらに、引用発明1は、上記構成を備えることから、引用発明1の「EDFA」は本件補正発明の「第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈するように選択されたファイバ長、ドーパント濃度及びポンプビームのパワーのパラメータ」を備えていることは明らかである。
(エ) 上記(ア)ないし(ウ)から、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
カ 本件補正発明の「EDFA」が「前記DRAの出力に配設され」との特定事項について
引用発明1は「直列に接続されたラマン増幅器段を提供する一定の長さの伝送ファイバと、EDFAとを有する」ものであって、前記EDFAが前記ラマン増幅段よりもWDM信号出力側である(図1)ことから、当該引用発明1は本件補正発明の「前記DRAの出力に配設され」る構成を有している。
したがって、引用発明1は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
キ 本件補正発明の「前記EDFAは前記所定の帯域幅内の任意の波長において10dB以上の利得を生成」との特定事項について
引用発明1の「EDFA」は、「12nmの波長範囲」で「10dB」のゲインをなすものであるが、前記「10dB」のゲインが前記「波長範囲」の任意の波長で達せられるか否かは不明である点で、本件補正発明と相違する。
ク 本件補正発明の「前記DRA及びEDFAの組合せで前記ファイバによる光増幅システムの前記所定の帯域幅にわたって約2dB未満の出力利得偏差を維持する」との特定事項について
(ア) 引用発明1は「伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償し」「一定の平坦なゲインチルトが得られる」のであるから、「DRA及びEDFAの組合せでファイバによる光増幅システムの出力利得偏差を小さくしている(所定の値未満としている)」点で、本件補正発明と共通する。
(イ) 前記「出力利得偏差」において、引用発明1は値が特定されておらず、本件補正発明の「約2dB未満」を満たすか否かが明らかではない点で相違する。
ケ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点および相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「所定の帯域幅にわたって動作する多波長入力光信号で用いるためのファイバによる光増幅システムであって、ラマンポンプ源を含む分布ラマン増幅器(DRA)であって、前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを呈するように構成されたDRAと、前記DRAの出力に配設され、且つ前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを補完する第2の利得プロファイルを呈するように選択されたファイバ長、ドーパント濃度及びポンプビームのパワーのパラメータを備えて形成されたエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)であって、前記EDFAは前記所定の帯域幅内の任意の波長において10dB以上の利得を生成し、前記DRA及びEDFAの組合せで前記ファイバによる光増幅システムの前記所定の帯域幅にわたって所定の値未満の出力利得偏差を維持する、EDFAと、を備えたファイバによる光増幅システム。」
である点で一致し、次の相違点1~3で相違する。
【相違点1】
本件補正発明は、「分布ラマン増幅器(DRA)」に「ラマンポンプ源」が「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために200mW以下の出力パワーを有する」のに対して、引用発明1では対応するパラメータが不明である点。
【相違点2】
本件補正発明は、「前記EDFAは前記所定の帯域幅内の任意の波長において10dB以上の利得を生成」であるのに対して、引用発明1では対応するパラメータが不明である点。
【相違点3】
光増幅システムの所定の帯域幅にわたる所定の値未満の出力利得偏差の維持につき、本件補正発明が、所定の値を「約2dB」としたのに対して、引用発明1では、その値が不明である点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献2、3に記載された技術的事項によれば、ラマン増幅器とEDFAとを用いた光増幅器において、ラマン増幅器の励起光パワーを200mW以下に設定することや、ラマン利得を4.0dB以下とすること、はそれぞれ周知技術であると認められる。
さらに、引用文献2に記載された技術的事項において、サンプル5では、ラマン増幅器とEDFAとの合計した利得(=GR+GE)が15.0dBであることから、ラマン増幅の利得の寄与は約26%(4.0[dB]÷15.0[dB]×100)であることが導かれる。サンプル6においても同様にしてラマン増幅の利得の寄与は約23%であることが導かれる。
上記引用文献2に記載された技術的事項から、ラマン増幅の利得の寄与を30%以下とする点も周知技術であると認められる。
引用発明1は「伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償し、1544~1560nmの範囲にわたる一定の平坦なゲインチルトが得られる」ものであって、前記ゲインチルトの変化に影響する「ポンプソースからの出力」をEDFAとラマン増幅段とに分割する際に、当該分割の比率を設定することは当業者が適宜なしうる事項である。そして、相違点1に係る本件補正発明の各パラメータ自体は、上述のとおり周知のものであり、引用発明1において、このような周知の値を採用することに困難性は認められない。
イ 相違点2について
まず、引用発明1におけるEDFAの利得は「10dB」であり、ゲインチルトが「0.2dB/dB」なのであるから、本件補正発明とほとんど差異はない。
加えて、引用文献2に記載された技術的事項から、EDFAで所定の帯域幅内において10dB以上の利得を生成することは周知技術でもある。
引用発明1において、EDFAで所定の帯域幅内において10dB以上の利得を生成する際に、前記利得が所定の帯域内の任意の波長で生成されるようにすることは当業者が適宜なしうる設計的事項である。
よって、当該相違点2は、引用発明1が実質的に充足する構成、または、引用発明1において周知技術に基づき当業者が容易に想到しうるものである。
ウ 相違点3について
引用発明1は、「伝送ファイバのラマンゲインのゲインチルトにおける逆の変化を用いて、EDFAにおけるゲインチルトの変化を補償し、1544~1560nmの範囲にわたる一定の平坦なゲインチルトが得られる」ものであるから、「出力利得偏差」を無くすことを意図するものであり、そうすると、当該相違点3は実質的な相違ではない。
また、仮に、そこまではいえないとしても、引用発明1において、「出力利得偏差」を2dB未満とすることは、当業者が容易になしえたことである。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ
(ア) 令和4年4月6日付の上申書において出願人は、本件補正発明は「リアルタイムで当該DRAの動作を能動的に修正するための如何なるフィードバック制御も行わずに、「30%以下の利得に寄与しながら」、「4dB以下の利得を維持するために」比較的低い(即ち、「200mW以下の」)出力パワーを有するラマンポンプ源を含む分布ラマン増幅器(DRA)を規定」するものであり、フィードバック制御をしている引用発明1と異なる旨を主張している。
上記主張について検討する。
本件補正発明にはDRAについて「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために200mW以下の出力パワーを有するラマンポンプ源を含む分布ラマン増幅器(DRA)であって、前記所定の帯域幅にわたって第1の利得プロファイルを呈するように構成」と記載されている。当該記載は上記「フィードバック制御」に関して規定されていないことから、前記本件補正発明が上記主張された「リアルタイムで当該DRAの動作を能動的に修正するための如何なるフィードバック制御も行わ」ない点が限定されていると解することはできない。さらに、発明の詳細な説明を参酌しても前記本件補正発明が前記フィードバック制御を含まないと認定するに足る記載は認められない。
したがって、上記主張は特許請求の範囲や発明の詳細な説明等の記載に基づいたものではなく、かつ、自明なものと認められる特段の事情も見いだせない。
よって、上記主張は、当を得たものではないため進歩性の判断を覆すに足る根拠とはならず、採用できない。
カ 小括
本件補正発明は、以上のとおり、引用発明1および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
本件補正は、上記第2の[理由]2で説示したとおり特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正が特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、上記第2の[理由]3で説示したとおり本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年10月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項14に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項14に係る発明は、本願の最先の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明について
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために」に係る限定事項を削除し、上記本件補正発明に「1つのフィルタレスファイバ」および「利得平坦化フィルタを用いることなく」との限定事項を追加した「ハイブリッド光増幅器」を備えた「光通信システム」に係る発明である。
(2)対比
本願発明の「光通信システム」は、引用発明1の「波長分割多重(WDM)通信ネットワーク」に相当する。
また、本願発明の「フィルタレス」および「利得平坦化フィルタを用いることなく」は、引用発明1との一致点である。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、上記第2の[理由]3(3)ケの【相違点1】から「30%以下の利得に寄与しながら任意の波長において4dB以下の利得を維持するために」に係る限定事項をのぞいた点、および、【相違点2】、【相違点3】で相違し、その他の点で一致する。
(3)相違点の判断
上記(2)の相違点の判断は、上記第2の[理由]3(4)で説示したとおりである。
そうすると、本件補正発明が、前記第2の[理由]3(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014071