特許拒絶査定不服審判
2018-013285
半導体装置の製造方法
- 審判番号
- 2018-013285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-524179外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月04日
- 審決日
- 2019年07月29日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-524179「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日国際公開、WO2016/203545〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27)年6月16日を国際出願日とする出願であって,平成30年4月27日付け拒絶理由通知に応答して同年6月7日に意見書が提出されたが,同年8月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対して,同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1導電型の基板の上面側に第2導電型の層を形成する工程と,
前記基板の下面に対するイオン注入角度を固定して前記基板の下面側に第1導電型の不純物をイオン注入するイオン注入工程を,先のイオン注入工程よりも後のイオン注入工程のイオン注入角度が小さくなるようにして,複数回行うバッファ層形成工程と,を備え,
前記バッファ層形成工程では,複数回の前記イオン注入工程を一定の加速エネルギで行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
第3 原査定の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし5,7に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献等一覧
1.国際公開第2013/089256号
2.特開平5-129217号公報
3.特開平5-166745号公報
4.特開2009-70886号公報
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2013/089256号(2013年(平成25年)6月20日国際公開。以下「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「技術分野
[0001] 本発明は,半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。」
「発明が解決しようとする課題
[0009] しかしながら,上記のようにプロトン照射によって半導体基板(FZウエハ)の不純物濃度よりも高濃度の水素関連ドナーを形成する場合,プロトン照射により半導体基板内にディスオーダー(格子欠陥密度が多く,かつ結晶位置からの原子の移動幅も大きい状態であり,アモルファスに近い状態)が多く導入され,その結果,キャリアの移動度も結晶における理想値から大きく低下してしまう。このような状態でデバイスを作製した場合,デバイスに電圧を印加したときに広がる空乏層がディスオーダーの残る領域に達したときに,欠陥中心から大量のキャリアが発生し,許容範囲を超える大きさの漏れ電流が発生する。また,キャリアの移動度が低下しているため,IGBTのオン電圧も増加し,導通損失が増大する。さらに,半導体基板内のディスオーダーは再結合中心となるため,キャリア濃度が低下してターンオフ時にキャリアが枯渇しやすくなり,ターンオフ発振の原因にもなる。
[0010] このような問題を解消するためにアニールにより半導体基板内の結晶欠陥を回復させてディスオーダーを除去した場合,水素関連ドナーはそれ自体が複合欠陥であるため,ディスオーダーを除去するためのアニールにより水素関連ドナー自体も消滅してしまう。このように,所望の水素関連ドナー濃度の確保と,半導体基板内に残留するディスオーダーの除去との間にはトレードオフの関係がある。このトレードオフの関係を改善するためには,半導体基板内に水素関連ドナーを残しつつ,ディスオーダーを十分に除去する必要があるが,そのような状態を実現する方法はまだ確立されていない。したがって,ディスオーダーを十分に除去しても所望の水素関連ドナー濃度を確保可能な新しい手段を開発することが急務である。
<<途中省略>>
[0013] 本発明は,上述した従来技術による問題点を解消するため,ディスオーダーの度合いが小さく,かつ水素関連ドナー濃度の高い領域を備えた半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。」
「発明の効果
[0023] 本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば,プロトン照射および熱処理後に半導体基板内にあらわれたディスオーダーの度合いを小さくすることができるという効果を奏する。また,本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば,漏れ電流の増加等の特性不良の発生を抑制し,かつ水素関連ドナー濃度の高い領域を形成することができるという効果を奏する。」
「[0026](実施の形態1)
図2は,一般的なIGBTの構造を模式的に示す断面図である。図2(a)には,一般的な従来のプロトン照射法により形成したn型FS(フィールドストップ)層3を有するIGBTの概略断面図を示す。図2(b)には,周知の広がり抵抗測定(SR)法で測定したn型FS層3の不純物濃度プロファイルを示す。ただし,IGBTを例に説明する本発明にかかる半導体装置の概略断面図についても,図2(a)と同様の層構造となる。このため,本発明にかかる半導体装置の説明においても図2(a)を断面図として用いる。本発明にかかる半導体装置の製造方法によって製造されるIGBTが従来方法によって製造されるIGBTと異なる点は,図2(b)に示すn型FS層3の不純物濃度プロファイルである。本発明にかかるIGBTのn型FS層3の不純物濃度プロファイルについては後述する。
[0027] 図10は,一般的なIGBTの構成およびネットドーピング濃度を示す説明図である。図10に示す一般的なIGBTでは,n型半導体基板からなるn-ドリフト層1(高抵抗半導体層)の一方の主面側に,pベース層33,n+エミッタ層2,ゲート絶縁膜43およびゲート電極42からなるMOSゲート構造が形成されている。なお,図2(a)では,簡略化のためMOSゲート構造のn+エミッタ層2以外の構成部を図示省略する。n-ドリフト層1の他方の主面側には,n-ドリフト層1よりも不純物濃度が高く,プロトン照射により形成されたn型FS層3と,n型FS層3の表面(他方の主面)側に接するpコレクタ層4とが形成されている。n型FS層3は,基板深さ方向の異なる位置に複数の不純物濃度ピーク(プロトンピーク)の1段目6a,2段目6b,3段目6cを備える。それぞれのプロトンピークのエミッタ電極31からの距離は,例えば順に60,90,115μmである。基板おもて面側には,pベース層33,n+エミッタ層2に接触するエミッタ電極31が形成されている。基板裏面には,pコレクタ層4に接触するコレクタ電極32が形成されている。なお,pコレクタ層4に接するようにn型リークストップ層38が形成されているが,無くても構わない。
[0028] このようにプロトン照射によりn型FS層3を形成すること自体は周知の技術である。しかし,前述の特許文献1,2にも記載があるように,プロトン照射によりドナー化された層(以下,水素関連ドナー層とする)を形成するには,プロトン照射に伴って発生する結晶欠陥を,プロトン照射後のアニール処理によって回復させずに残す必要がある。上述した従来方法では,n型FS層3内に結晶欠陥を残すことによりn型FS層3の不純物濃度ピーク(以下,プロトンピークとする)6aが大きくなるが,ディスオーダー7も残留するため,ディスオーダー7に起因して漏れ電流の増大等の問題が発生することがある。
[0029] 本発明の特徴は,このn型FS層3をプロトン照射により形成した場合にn型FS層3内に生じるディスオーダー7の発生を抑えるためのプロトン照射方法の改善にかかる。IGBT10のその他の部分(基板おもて面のMOSゲート構造,酸化膜,pn接合,電極,保護膜など)については,公知の製造方法と同様の製造方法により形成することができる。したがって,以下の説明では,公知のIGBTの製造方法の部分については詳細な説明を省略する。
[0030] まず,実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について,IGBTを製造する場合を例に図3を参照して説明する。図3は,実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。まず,一般的な方法により,n型半導体基板(ウエハ)のおもて面にpベース層(不図示),n+エミッタ層2,ゲート絶縁膜(不図示),ゲート電極(不図示)などからなるMOSゲート構造などを形成するおもて面形成工程を行う(図3(a))。
[0031] 次に,pベース層とn+エミッタ層2との両表面に共通に導電接触する例えばアルミニウム(Al)電極からなるエミッタ電極(不図示)を形成するおもて面Al電極工程を行う(図3(b))。次に,n型半導体基板のおもて面側に表面保護膜となるポリイミド膜を形成する表面保護膜形成工程を行う(図3(c))。次に,n型半導体基板を,耐圧との関係で決まる所要の厚さに減ずるために,n型半導体基板の裏面を研削する薄ウエハ化工程を行う(図3(d))。
[0032] 次に,n型半導体基板の研削された裏面側に複数回のプロトン照射およびボロン(B)のイオン注入を行った後,アニール処理によりn型FS層3およびpコレクタ層4を形成する裏面拡散層工程を行う(図3(e))。そして,真空スパッタ法などにより,pコレクタ層4の表面に導電接触するコレクタ電極となる金属膜を形成する裏面電極工程を行うことで(図3(f)),実施の形態1にかかるFS構造のIGBTが完成する。
[0033] 上述した裏面拡散層工程における複数回のプロトン照射により,n型FS層3は,基板深さ方向の異なる位置に複数の不純物濃度ピーク(プロトンピーク)を有する不純物濃度プロファイルとなる。以下,m回目のプロトン照射により形成されたプロトンピークをm段目6nのプロトンピークとする(m=1,2,・・・,n=a,b,・・・)。裏面拡散層工程における複数回のプロトン照射方法については後述する。
<<途中省略>>
[0037] 以下,前述の図1(a),1(b)に示されるn型FS層3内の不純物濃度の低下(移動度の低下)を抑えることのできる実施の形態1にかかるプロトン照射方法について詳細に説明する。図1(c)は,照射位置を調整して2回目のプロトン照射およびアニール処理を行った後,3回目のプロトン照射およびアニール処理を行ったときのn型FS層3の不純物濃度プロファイルである。実施の形態1においては,IGBT10の裏面側にn型FS層3を形成するための1回目のプロトン照射後に,基板裏面側からプロトンの加速エネルギー等の照射条件を変えて,かつ1段目6aのプロトンピーク位置よりも基板裏面から浅い位置に複数回のプロトン照射を順次行い,アニール処理を行う。すなわち,図1(a)に示す1回目のプロトン照射後に,複数回のプロトン照射によりn型FS層3内に水素関連ドナー層を形成し,n型FS層3の水素関連ドナー濃度を補償する。これにより,図1(c)に示すように,1回目のプロトン照射で形成されたディスオーダー7の度合い(ディスオーダー7による不純物濃度の低下度合い)を小さくする,またはディスオーダー7を無くすことができる。ディスオーダー7の度合いが小さくなる理由は,注入されたプロトン(すなわち水素原子)がディスオーダー7の度合いが最も大きい部分に存在するダングリングボンドを終端するからであると推測される。
[0038] 具体的には,まず,1回目のプロトン照射後に,1回目のプロトン照射により形成されたディスオーダー7の分布をSR法により測定する。そして,ディスオーダー7の基板裏面からの深さに基づいてディスオーダー7の度合いを小さくするまたはディスオーダー7を無くすように,図1(a)のn型FS層3の不純物濃度プロファイルに対して,図1(a)の1段目6aのプロトンピーク位置よりも基板裏面から浅い位置,例えば図1(a)に矢印で示す2,3段目照射位置にそれぞれ2,3回目のプロトン照射を行う。1~3回目のプロトン照射は,それぞれ異なる加速エネルギーで行う。上述のように,2段目6bのプロトンピークを,基板裏面と1段目6aのプロトンピークとの中間位置よりも基板裏面から浅い位置に形成した場合,1段目6aのプロトンピークと2段目6bのプロトンピークとの中間位置にディスオーダー7が残る(図1(b))。この理由は,2段目6bのプロトン照射位置が適切でないからである。具体的には,1段目6aのプロトンピーク位置と2段目6bのプロトンピーク位置との間の距離bが,2段目6bのプロトンピーク位置と照射面(基板裏面)との距離aよりも大きく,その結果,2段目6bのプロトンピーク(水素関連ドナー層)によるドーピングの補償効果が小さくなったからである。
[0039] そこで,図1(c)に示すように,2回目のプロトン照射位置を1回目のプロトン照射により生じたディスオーダー7の位置またはその近傍にすれば,ディスオーダー7をほぼ無くすことができることがわかる。このため,図1(c)に示すように,2回目のプロトン照射位置を調整して,2段目6bのプロトンピーク(水素関連ドナー層)によるドーピングの補償効果を大きくする。」
「[0051](実施の形態2)
図5は,実施の形態2にかかる半導体装置のn型FS層の不純物濃度プロファイルを示す特性図である。実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法が実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法と異なる点は,ディスオーダー17を無くすまたはディスオーダー17の度合いを小さくするための複数回のプロトン照射を,ディスオーダー17の領域中の基板裏面から深い位置側から浅い位置側へ向かって順に行う点である。
[0052] 実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法により作製される半導体装置の構成は,実施の形態1と同様に例えば図2(a)に示すIGBTである。実施の形態2にかかる半導体装置のn型FS層3を形成するためのプロトン照射方法以外の製造方法は,実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法と同様である。このため,n型FS層3を形成するためのプロトン照射方法についてのみ説明する(実施の形態3においても同様)。
[0053] 実施の形態2にかかるプロトン照射方法について具体的に説明する。図5(a)~5(c)には,1~3回目のプロトン照射およびアニール処理後のn型FS層3の不純物濃度プロファイルを示す。図5(a)に示すように,1回目のプロトン照射により基板裏面から所定の深さに1段目16aのプロトンピークを形成することにより,実施の形態1と同様に,基板裏面と1段目16aのプロトンピーク位置との間にディスオーダー17の領域(点線で囲む部分)が形成される。
[0054] そこで,1回目のプロトン照射により形成されたディスオーダー17の分布をSR法により測定する。そして,1回目のプロトン照射により形成されたディスオーダー17の領域中の基板裏面から深めの位置(例えば図5(a)に矢印で示す2段目照射位置)に2回目のプロトン照射を行う。これにより,図5(b)に示すように,ディスオーダー17の領域中の基板裏面から深めの位置に2段目16bのプロトンピークが形成され,基板裏面から深めの位置におけるディスオーダー17を無くすまたはディスオーダー17の度合いを小さくすることができる。
<<途中省略>>
[0057] このように,基板裏面とm段目16nのプロトンピーク位置との間にディスオーダー17の領域が残った場合,この残ったディスオーダー17の領域中の基板裏面から深めの位置にm+1回目のプロトン照射を行うことを繰り返す(m=1,2,・・・,n=a,b,・・・)。これにより,基板裏面から浅い位置側に残るディスオーダー17の領域を徐々に小さくする。特に限定しないが,ディスオーダー17の無いn型FS層3の不純物濃度プロファイルを得た場合の,3回のプロトン照射の具体的なイオン注入条件の一例を以下に示す。
[0058] 1回目のプロトン照射の加速エネルギーおよびドーズ量は,それぞれ2.0MeV(平均飛程47.7μm)および3×1013/cm2である。2回目のプロトン照射の加速エネルギーおよびドーズ量は,それぞれ1.5MeV(平均飛程30.3μm)および3×1013/cm2である。3回目のプロトン照射の加速エネルギーおよびドーズ量は,それぞれ0.5MeV(平均飛程6.0μm)および2×1014/cm2である。プロトン照射後のアニール処理は,還元雰囲気中(例えば水素濃度3%の水素雰囲気,もしくは水素を含む窒素雰囲気)において,380℃程度の温度で5時間程度とするのが好ましい。プロトン照射後のアニール処理条件は,要求されるn型FS層3の仕様により,例えば300℃~450℃程度の温度で1~10時間程度としてもよい。
[0059] 以上,説明したように,実施の形態2によれば,実施の形態1と同様の効果を得ることができる。」
(2)引用発明
上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置の製造方法であって,
IGBTを製造する場合,まず,一般的な方法により,n型半導体基板(ウエハ)のおもて面にpベース層,n+エミッタ層2,ゲート絶縁膜,ゲート電極などからなるMOSゲート構造などを形成するおもて面形成工程を行い,
次に,pベース層とn+エミッタ層2との両表面に共通に導電接触する例えばアルミニウム(Al)電極からなるエミッタ電極を形成するおもて面Al電極工程を行い,
次に,n型半導体基板のおもて面側に表面保護膜となるポリイミド膜を形成する表面保護膜形成工程を行い,
次に,n型半導体基板を,耐圧との関係で決まる所要の厚さに減ずるために,n型半導体基板の裏面を研削する薄ウエハ化工程を行い,
次に,n型半導体基板の研削された裏面側に複数回のプロトン照射およびボロン(B)のイオン注入を行った後,アニール処理によりn型FS層3およびpコレクタ層4を形成する裏面拡散層工程を行い,
そして,真空スパッタ法などにより,pコレクタ層4の表面に導電接触するコレクタ電極となる金属膜を形成する裏面電極工程を行う半導体装置の製造方法であって,
ここで,裏面拡散層工程における複数回のプロトン照射により,n型FS層3は,基板深さ方向の異なる位置に複数の不純物濃度ピーク(プロトンピーク)を有する不純物濃度プロファイルとなるが,n型FS層3内の不純物濃度の低下(移動度の低下)を抑えることのできるプロトン照射方法として,
IGBT10の裏面側にn型FS層3を形成するための1回目のプロトン照射後に,基板裏面側からプロトンの加速エネルギー等の照射条件を変えて,かつ1段目6aのプロトンピーク位置よりも基板裏面から浅い位置に2,3回目のプロトン照射を順次行い,アニール処理を行うこと。」
2 技術的事項
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開平5-166745号公報(平成5年7月2日出願公開。以下「引用文献3」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はイオン注入方法に関し,詳しくは,半導体装置の製造において,半導体ウェーハに不純物をイオン化して打ち込んでドーピングするイオン注入方法に関する。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
<<途中省略>>
【0005】また,近年では,半導体装置の電気的特性を向上させるために処理面(3)での不純物層(9)を浅く形成する傾向にある。このように浅い不純物層(9)を形成しようとする場合,半導体ウェーハ(2)の処理面(3)に打ち込まれるイオンビーム(8)のエネルギーを小さくするために,そのイオンビーム(8)の加速電圧を低くすることである程度対応することができる。しかしながら,上記イオンビーム(8)の加速電圧を低下させるにしても,装置的な安定性の面で限度があり,それ以上,イオンビーム(8)のエネルギーを低下させて不純物層(9)を浅く形成することが不可能である。そこで,図8に示すように半導体ウェーハ(2)を図中角度θが大きくなるように傾倒させて配置することにより,その処理面(3)においてイオンビーム(8)の入射角度ψを小さくしてその法線方向Lに沿って作用するエネルギーを減少させることによって不純物層(9)を浅く形成することも考えられる。ところが,上記イオンビーム(8)のスキャンでは,その角速度を一定としているため,上述のように半導体ウェーハ(2)を大きく傾倒させてしまうと,処理面内でイオンビーム(8)の経路長が大きく異なり,処理面(3)での単位面積当りの注入量が異なってくるので,前述した問題点と同様,処理面内で不純物イオンの注入量がばらつくため,従来のイオンビーム(8)のスキャン方式では,半導体ウェーハ(2)を大きく傾倒させて不純物層(9)を浅く形成することは不可能であった。
【0006】そこで,本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので,本出願人は近年賞用されているパラレルスキャン方式を採用して,浅い不純物層を容易に形成し得るイオン注入方法を提供することにある。」
「【0009】
【作用】本発明に係るイオン注入方法では,パラレルスキャンにより半導体ウェーハの処理面に打ち込まれるイオンビームの入射角度が処理面内でほぼ一定となるため,その処理面内で不純物イオンの注入量が均一となる。このようにパラレルスキャンを実行する条件の下では,半導体ウェーハをその処理面の法線方向が,イオンビーム照射方向に対して約 10°~ 70°の角度となるように傾倒させて配置することにより,処理面内で不純物イオンの注入量を均一にした状態を維持したままで,イオンビームの加速電圧を低くすることなく,処理面に打ち込まれるイオンビームのエネルギーを減少させて不純物層を浅く形成することが可能となる。」
「【0012】本発明の特徴は,図2に示すように上述したパラレルスキャンに基づいて,半導体ウェーハ(12)をその処理面(13)の法線方向Lがイオンビーム照射方向Sに対して約 10°~ 70°の角度θで傾倒させるようにホルダ(14)を傾斜させて配置することにある。
【0013】即ち,半導体装置の電気的特性を向上させるために処理面(13)での不純物層(19)を浅く形成しようとする場合,半導体ウェーハ(12)の処理面(13)に打ち込まれるイオンビーム(18)のエネルギーを小さくするためにイオンビーム(18)の加速電圧を低くすることなく,イオンビーム(18)のエネルギーを低下させてより一層浅い不純物層(19)を形成するに際しては,上述したように半導体ウェーハ(12)を配置すれば〔図2参照〕,図4に示すように処理面(13)においてイオンビーム(18)の入射角度ψが小さくなってその法線方向Lに沿って作用するエネルギーが減少することによって不純物層(19)が浅く形成される。即ち,図3に示す不純物層(19)の深さ(a)よりも図4に示す不純物層(19)の深さ(b)が小さくなる〔a>b〕。この時,上記イオンビーム(18)をパラレルスキャンしながら処理面(13)に打ち込んで不純物をドーピングするので,処理面内で不純物イオンの注入量がばらつくことなく均一にした状態を維持することが可能となる。」
(2)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開2009-70886号公報(平成21年4月2日出願公開。以下「引用文献4」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,真空中でシリコンウエハやガラスなどの基板に対しイオンビームを照射してイオン注入を行うイオン注入方法及びイオン注入装置に関する。」
「【0003】
ここで,基板表面へのイオンの浸透深さは,注入エネルギーに依存する。このことから,イオン源から引き出したイオンを,加速管において最終的な加速エネルギー,つまり,注入エネルギーが得られるように加速するイオン注入装置において,例えば加速管での加速電圧を変調することで,イオンビームの径をブロード化し,注入エネルギーに幅を持たせてイオン注入の深さを任意に制御できるイオン注入方法が特許文献2で知られている。
<<途中省略>>
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,上記特許文献2記載の方法では,イオンビームをブロード化しているため,加速管を通過して基板に到達する前に,加速されたイオンが,基板が収納されたチャンバ内の残留ガスと衝突して反応する量が増えることで,イオンの状態のまま基板に到達せず,基板に注入されるイオンの量が少なくなるという問題がある。このため,特許文献2記載の方法を,上述のSiOG技術においてシリコンドナー部分を与えるドナー基板に水素やヘリウム等の不活性イオンを注入することに適用すると,基板表面から任意の浅い位置に不活性イオンを注入できるが,イオン量が足りずに,場合によってはドナー基板が剥離できない。
【0005】
そこで,本発明の課題は,上記点に鑑み,単位面積当たりのイオン量が減少することなく,任意の浸透深さでイオンを注入できるようにした制御が簡単なイオン注入方法及びイオン注入装置を提供することにある。」
「【0007】
本発明によれば,イオンビームに対して基板が直角となる位置から基板を傾けると,この傾きに応じて,イオンが基板中を斜入射して注入される。その結果,注入エネルギーが同一であれば,イオンビームに対して基板が直角となる位置でイオン注入する場合と比較して,単位面積当たりのイオン量が殆ど減少することなく,基板表面からのイオンの浸透深さを浅くできる。また,イオンビームに対する基板の傾きを変化させるだけで,浸透深さが変えられるので,その制御も簡単である。」
「【0017】
次に,上記イオン注入装置1を用いた本発明のイオン注入方法を説明する。基板Sが下降位置にある状態で基板保持手段4の基板保持部42に基板Sを位置決めして載置し,電極に通電して基板Sを吸着保持する。そして,駆動モータ8を作動させて送りねじ7を回転させて基板保持手段4を上昇位置まで移動させる。このとき,筐体6に収納した他の駆動モータを作動させて回転軸5を所定の回転角だけ回転し,基板保持部42で保持された基板Sをイオンビームに対し直角に位置させる。その後,各真空排気手段P1及びP2を作動させてX-Y走査チャンバ2及びイオン注入チャンバ3を所定の真空圧まで真空排気する。
【0018】
次いで,真空状態のイオン源13に,図示しないガス源からイオン注入処理に応じて適宜選択されるプロセスガスと,図示しない電源から所定の電力とを供給し,イオン源13中でプラズマを生成し,イオン源13から高電圧ターミナル11の電位までイオンを加速する。次いで,イオン源13からのイオンを,真空配管14aを介して質量分離マグネット15に入射し,この内部で発生している磁場とイオンの持つ速度によるローレンツ力によってイオンの軌道を曲げる。この場合,質量分離マグネット15への入力電流を適宜調節すれば,所望のイオンが導き出すことができ,下流側の加速管16へと導入できる。
【0019】
次いで,加速管16内に導入されたイオンを,高電圧ターミナル11に印加される電圧によって高電圧とイオンの値数との積のエネルギーを持ってグランド電位まで加速し,X-Y走査チャンバ2に導入する。X-Y走査チャンバ2に導入されたイオンは,四極子レンズ21によってイオンビームに整形されて所定の軌跡にのせられ,一対の偏向電極22に所定の周波数の電圧を印加することで,イオン注入チャンバ3の第1部分3aの一端に位置する基板S表面にイオンビームが一様に照射されてイオンが注入される。
【0020】
ここで,基板Sへのイオンの浸透深さを浅くする場合には,上記加速管16での最終的な加速エネルギー(イオン電流値を)一定に保持したまま,筐体6内の駆動モータを作動させて回転軸5を回転させ,当該回転軸5を支点として基板Sを傾ける(図3(b)参照)。これにより,イオンが基板S中を斜入射する。その結果,イオンビームに対して基板Sが直角となる位置でイオン注入する場合の注入深さD1と比較して(図3(a)参照),単位面積当たりのイオン量が殆ど減少することなく,基板S表面からのイオンの浸透深さD2が,基板Sの傾きに応じて距離D3だけ浅くできる(図3(b)参照)。この場合,本実施の形態においては,基板保持手段4と回転軸5とが基板Sを傾ける基板傾斜機構を構成する。
【0021】
次いで,基板Sに対するイオンビームの入射角が一定となるように,送りねじ7の駆動モータ8を作動させて基板保持手段4を昇降させると共に,回転軸5の回転角を調節しつつ,イオンビームをX,Y方向にそれぞれ走査することで,基板S表面全体に亘ってイオン注入が行われる。このように本実施の形態では,加速管16での注入エネルギーを一定に保持しつつ,基板保持手段4の回動する回転軸5の回転角を制御してイオンビームに対する基板Sの傾きを調節するだけで,浸透深さが変えられるので,その制御も簡単である。」
(3)技術的事項
上記(1),(2)の記載から,本願の公開基準日前に,以下の技術的事項は,半導体装置の製造方法の技術分野において,周知のものであったと認められる。
「基板へのイオン注入方法として,基板の浅い面にイオンを注入するために,イオンビームの加速電圧(加速エネルギー)を低くすることなく,入射角度を調節すること。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と,引用発明とを対比すると,以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「半導体装置の製造方法」は,本願発明の「半導体装置の製造方法」に相当する。
(2)引用発明の「n型半導体基板(ウエハ)」は本願発明の「第1導電型の基板」に,引用発明の「n型半導体基板(ウエハ)のおもて面」は,本願発明の「第1導電型の基板の上面側」に,引用発明の「pベース層」は,本願発明の「第2導電型の層」に相当するので,引用発明の「n型半導体基板(ウエハ)のおもて面にpベース層,n+エミッタ層2,ゲート絶縁膜,ゲート電極などからなるMOSゲート構造などを形成するおもて面形成工程」は,本願発明の「第1導電型の基板の上面側に第2導電型の層を形成する工程」に相当する。
(3)バッファ層形成工程について
ア 引用発明の「基板裏面」,「プロトン」,「プロトン照射」,「n型FS層3」はそれぞれ,本願発明の「基板の下面」,「第1導電型の不純物」,「イオン注入」,「バッファ層」に相当する。
イ また,本願発明の「前記基板の下面に対するイオン注入角度を固定して前記基板の下面側に第1導電型の不純物をイオン注入するイオン注入工程を,先のイオン注入工程よりも後のイオン注入工程のイオン注入角度が小さくなるようにして,複数回行うバッファ層形成工程と,を備え,前記バッファ層形成工程では,複数回の前記イオン注入工程を一定の加速エネルギで行うこと」は,発明の詳細な説明の記載(段落【0021】ないし【0027】)を参酌すれば,「前記基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」「一定の加速エネルギで」「前記基板の下面側に第1導電型の不純物をイオン注入する」第1イオン注入工程と,「先のイオン注入工程」である第1イオン注入工程「よりも」「イオン注入角度が小さくなるようにして」「前記基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」「一定の加速エネルギで」「前記基板の下面側に第1導電型の不純物を」下面のより浅い位置に「イオン注入する」第2イオン注入工程と,「先のイオン注入工程」である第2イオン注入工程「よりも」「イオン注入角度が小さくなるようにして」「前記基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」「一定の加速エネルギで」「前記基板の下面側に第1導電型の不純物を」下面のより浅い位置に「イオン注入する」第3イオン注入工程とにより「複数回」イオン注入工程を「行うバッファ層形成工程」であると認められる。
ウ そして,上記イの理解を前提とすれば,引用発明の「IGBT10の裏面側にn型FS層3を形成するための1回目のプロトン照射後に,基板裏面側からプロトンの加速エネルギー等の照射条件を変えて,かつ1段目6aのプロトンピーク位置よりも基板裏面から浅い位置に2,3回目のプロトン照射を順次行うこと」は,本願発明の「バッファ層形成工程」との間において,「前記基板の下面側に第1導電型の不純物をイオン注入する第1イオン注入工程と」,「前記基板の下面側に第1導電型の不純物を下面のより浅い位置にイオン注入する第2イオン注入工程と」,「前記基板の下面側に第1導電型の不純物を下面のより浅い位置にイオン注入する第3イオン注入工程とにより複数回イオン注入工程を行う」点で共通する。
(4)したがって,本願発明と,引用発明とは,以下の(5)の点で一致し,(6)の点で相違する。
(5)一致点
「第1導電型の基板の上面側に第2導電型の層を形成する工程と,
前記基板の下面側に第1導電型の不純物をイオン注入する第1イオン注入工程と,前記基板の下面側に第1導電型の不純物を下面のより浅い位置にイオン注入する第2イオン注入工程と,前記基板の下面側に第1導電型の不純物を下面のより浅い位置にイオン注入する第3イオン注入工程とにより複数回イオン注入工程を行うバッファ層形成工程と,
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。」
(6)相違点
ア 相違点1
本願発明においては,第1ないし第3イオン注入工程において「基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」「一定の加速エネルギで」イオンを注入し,さらに,「先のイオン注入工程よりも後のイオン注入工程のイオン注入角度が小さくなるようにして」イオン注入しているのに対して,引用発明においては1から3回目の各プロトン照射において,基板裏面側からのプロトンの加速エネルギー等の照射条件を変えて照射している点。
2 判断
上記相違点について,判断する。
(1)相違点1について
ア 上記第4の2(3)にあるように,「基板へのイオン注入方法として,基板の浅い面にイオンを注入するために,イオンビームの加速電圧(加速エネルギー)を低くすることなく,入射角度を調節すること。」という技術的事項は半導体装置の製造方法の技術分野において周知の技術的事項である。
イ そして,引用発明において,1回目のプロトン照射後に,基板裏面から低い位置に2,3回目のプロトン照射を順次行う際,「浅い不純物層を容易に形成し得」,「イオンビームの加速電圧を低くすることなく,処理面に打ち込まれるイオンビームのエネルギーを減少させて不純物層を浅く形成することが可能と」するため(引用文献3の段落【0006】,【0009】,上記第4の2(1))や,また,「基板Sへのイオンの浸透深さを浅くする場合に」「単位面積当たりのイオン量が殆ど減少することなく,基板S表面からのイオンの浸透深さD2が,基板Sの傾きに応じて距離D3だけ浅くできる」,「注入エネルギーを一定に保持しつつ,基板保持手段4の回動する回転軸5の回転角を制御してイオンビームに対する基板Sの傾きを調節するだけで,浸透深さが変えられるので,その制御も簡単である」(引用文献4の段落【0020】,【0021】,上記第4の2(2))ことから,上記アの周知の技術的事項を参酌し,「基板へのイオン注入方法として,基板の浅い面にイオンを注入するために,イオンビームの加速電圧(加速エネルギー)を低くすることなく,入射角度を調節すること。」を採用し,基板の裏面側からより浅い位置へのイオン注入を入射角度を調節することで実現することは,当業者が容易になし得ることである。
ウ また,引用発明において,各プロトン照射において,基板裏面側からのプロトンの加速エネルギー等の照射条件を変えて照射する構成に換えて,イオン注入の入射角度を調節することでより浅い位置へとプロトンを注入する場合に,その注入時には角度を変更しない,すなわち「基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」プロトン照射を行うことは,イオン注入面でのイオン注入量を変化させないためには当然想起すべきものである。
エ してみれば,引用発明において,1から3回目の各プロトン照射において「基板の下面に対するイオン注入角度を固定して」「一定の加速エネルギで」イオンを注入し,さらに,「先のイオン注入工程よりも後のイオン注入工程のイオン注入角度が小さくなるようにして」イオン注入することは当業者が容易に導くことができるものである。
(2)請求人の主張について
ア 主張
(ア)主張1
審判請求人は,平成30年6月7日付け意見書において,
「加速エネルギの変更による基板に対する物理的ダメージの変化と,イオン注入角度の変更による基板に対する物理的ダメージの変化は異なります。」旨主張している(以下「主張1」という。)。
(イ)主張2
また,平成30年10月4日提出の審判請求書において,
「引用文献2の段落0006における「不純物イオンの入射方向に対し,基板面の角度を変化させることは,不純物イオンのエネルギをかえるのと等価であると考えられる」という記載は技術的に誤りであ」る旨主張している(以下「主張2」という。)。
イ 主張についての検討
(ア)主張1について
a 上記主張について検討をするに,「加速エネルギの変更による基板に対する物理的ダメージの変化と,イオン注入角度の変更による基板に対する物理的ダメージの変化は異な」るという主張は,引用文献1における,「1回目のプロトン照射により基板裏面から所定の深さに1段目16aのプロトンピークを形成することにより,実施の形態1と同様に,基板裏面と1段目16aのプロトンピーク位置との間にディスオーダー17の領域(点線で囲む部分)が形成される」(段落[0053])ときの,その「ディスオーダー17の領域」が,加速エネルギの変更と,イオン注入角度の変更とによってそれぞれ形状が異なり,また,当該ディスオーダー17を補償する場合のプロファイルも異なるので,単純に加速エネルギの変更をイオン注入角度の変更に換えた場合に,ディスオーダー7の度合いが小さくならないという主張であると解される。
b しかしながら,引用文献1においては,その段落[0037]に記載されているように,「ディスオーダー7の度合いが小さくなる理由は,注入されたプロトン(すなわち水素原子)がディスオーダー7の度合いが最も大きい部分に存在するダングリングボンドを終端するからであると推測される」とその作用機序が説明されている。
c してみれば,「加速エネルギの変更による基板に対する物理的ダメージの変化と,イオン注入角度の変更による基板に対する物理的ダメージの変化は異な」るとしても,引用発明におけるディスオーダー7の度合いを小さくできるという作用機序には影響はなく,引用発明の目的は問題なく達成できるから上記主張は採用できない。
(イ)主張2について
a 「「不純物イオンの入射方向に対し,基板面の角度を変化させることは,不純物イオンのエネルギをかえるのと等価であると考えられる」という記載は技術的に誤りであ」るとの主張につき,当審においても,「等価」とはいえないと判断するので上記主張2には理由がある。よって,引用文献2の「不純物イオンの入射方向に対し,基板面の角度を変化させることは,不純物イオンのエネルギをかえるのと等価であると考えられる」という記載を根拠とする理由は採用しない。
b しかしながら,引用発明において上記第4の2(3)の半導体装置の製造方法の技術分野における周知の技術的事項の採用の可否については,上記(1)の判断のとおりであり,上記aの判断は審決の結論に影響をしない。
(3)したがって,本願発明は,引用発明および引用文献3,4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび(結論)
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-013285