特許拒絶査定不服審判
2018-009498
美容器
- 審判番号
- 2018-009498
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-137363外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月10日
- 審決日
- 2019年06月24日
- 公報発行日
- 2019年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A61H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-137363号「美容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-179272号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月16日(以下、「遡及出願日」という。)に出願した特願2011-250916号の一部を平成28年7月12日に新たな特許出願としたものであって、同年10月12日に手続補正がなされ、平成29年6月29日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成30年4月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月10日に審判請求がなされたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年11月1日提出の手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハンドルの先端側に一対のボールを、相互間隔をおいてそれぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器において、
該美容器を水平台に載置した状態の側面視で、前記支持軸の軸線は、前記ハンドルの先端側かつ下方を向き、
前記美容器を水平台に載置した状態の側面視で、ハンドルの高さは美容器の前後方向における中央より先端側が高く、
前記ハンドルの厚みは美容器の前後方向における中央よりも基端側が厚く、
前記ハンドルの最も幅広な部分は、ボールの外周面間の間隔より広く、
前記ボールは、前記支持軸の先端を覆う非貫通形状であることを特徴とする美容器。」
第3 引用例の記載
1.引用例1
(1)引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、遡及出願日よりも前に頒布された刊行物である、特開2011-15874号公報(平成23年1月27日公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
ア.「ハンドルと、そのハンドルに回転可能に支持されたローラとを備え、そのローラにより人体に刺激を与えるにようにした美容器において、
前記ハンドルの外周面及びローラの外周面に導電部を形成するとともに、それらの導電部の間を電気絶縁し、ローラの内部にローラの回転にともなって発電を行う発電部と、発電された電力を前記ローラの導電部に供給する供給部とを設けたことを特徴とする美容器。」(【請求項1】)
イ.「【背景技術】
従来、この種の美容器としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。
この従来構成においては、支持杆の一端部にグリップが接続されるとともに、支持杆の他端部にローラが回転可能に支持されている。支持杆の外周とローラの内周との間には、ローラの回転にともなって電力を発生する電力発生手段としてのコイル及び永久磁石が設けられている。ローラ内には、電力発生手段で発生した電力を蓄えるための蓄電池が設けられている。ローラの外周には、蓄電池の電力に基づいて皮膚を刺激する皮膚刺激手段としての複数のLED(発光ダイオード)が配列されている。
そして、使用者がグリップを把持した状態で、ローラを肌に押し付けて回転させると、肌に適度な刺激が与えられて、美肌効果が得られる。このとき、ローラの回転にともなって、コイル及び永久磁石よりなる電力発生手段で電力が発生し、その電力が蓄電池に蓄えられる。そして、この蓄電池の電力により、ローラ上のLEDが発光されて、その光により美肌効果が高められるとしている。」(【0002】~【0003】)
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の美容器においては、発電された電力が複数のLEDに供給される。このため、複数のLEDを発光させるために大パワーの電力を必要とする。従って、その電力をローラの回転により得ようとすると、前記のようにコイル及び永久磁石よりなる大掛かりな電力発生手段を装備する必要がある。よって、美容器の構造が複雑で製作コストが高くなるという問題があった。しかも、大パワーの電力を生じさせるためには、ローラに回転に対して大きな発電負荷,つまりローラの回転に抗する磁気反発力を与える必要がある。言い換えれば、ローラを回転させるために強い力が必要となり、このため操作感が悪くなり、高級感が損なわれることになる。
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、小電力でも高い美容効果を得ることができるとともに、構造が簡単で製作コストを低減することができ、しかも高級な操作感を得ることができる美容器を提供することにある。」(【0005】~【0006】)
エ.「【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明は、ハンドルと、そのハンドルに回転可能に支持されたローラとを備え、そのローラにより人体に刺激を与えるにようにした美容器において、前記ハンドルの外周面及びローラの外周面に導電部を形成するとともに、それらの導電部の間を電気絶縁し、ローラの内部にローラの回転にともなって発電を行う発電部と、発電された電力を前記ローラの導電部に供給する供給部とを設けたことを特徴としている。
従って、使用者がハンドルを把持した状態で、ローラを肌に押し付けて回転させると、肌や人体の表面側の組織に適度な刺激を与えられて、美肌効果等の美容効果が得られる。このとき、ローラの回転にともなって発電部で微電力が発生し、その微電力が供給部を介してローラの導電部間に供給される。そして、この微電力がローラから肌に流れることにより、美容効果が高められる。よって、美容効果を高めるために大パワーの電力を必要とせず、発電部の構造が簡単で製作コストを低減することができるとともに、ローラの回転が重くなることを防止できて、高級な操作感を得ることができる。」(【0007】~【0008】)
オ.「図1~図3に示すように、この実施形態の美容器11は、先端に二叉部12aを有する平面形ほぼY字状のハンドル12を備えている。このハンドル12は、合成樹脂よりなる電気絶縁材性の芯材13と、その芯材13の外周に被覆されて複数のネジ16により固定された一対の外装カバー14,15とから構成されている。この外装カバー14,15は、合成樹脂材料よりなり、その外表面に導電金属メッキが施されている。従って、外装カバー14,15の外表面は、ハンドル12の導電部を構成している。
前記ハンドル12の芯材13の先端部には、ローラ支持軸17が前記二叉部12aの先端から突出させた状態で、かつ外装カバー14,15と接触しない離間状態で支持されている。このローラ支持軸17は金属材料により形成され、そのローラ支持軸17の両端部にはネジ部17aが形成されている。なお、図3に示すように、ローラ支持軸17はネジ16を介して前記芯材13及び外装カバー14,15に固定されている。そして、前記ハンドル12の外表面の導電金属メッキとローラ支持軸17とは電気的に絶縁されている。
図1及び図4に示すように、前記両ローラ支持軸17には、円筒状をなすローラ18がそれぞれ各一対の軸受19を介して回転可能に支持されている。ローラ支持軸17の先端のネジ部17aには、ローラ18の抜け止めのための雌ネジ部材20が螺合されている。各ローラ18は、合成樹脂よりなり、その表裏両面に導電金属材料よりなる導電メッキが施されている。従って、両ローラ18の表裏両面は導電部を構成している。各ローラ18の外周面には、使用者の肌を含む人体の表面側の組織に刺激を与える複数の正八角形状の接触部18aが隣接する他の接触部18aに対して中心角度をずらした状態で形成されている。各ローラ18の内周面には、両軸受19の外レース19aの外周面及び対向側面に接合する複数の突部としての突条18bが所定の等角度間隔おきに形成されている。
図4及び図5に示すように、前記ハンドル12の二叉部12aの先端外周には、合成樹脂等の電気絶縁材よりなる円筒状の絶縁体21が嵌着されている。そして、この絶縁体21がハンドル12の二叉部12aの外周面とローラ18の内周面との間、及びハンドル12の二叉部12aの先端面と軸受19との間に介在されることにより、ハンドル12とローラ18との導電部間の絶縁を確保している。
図1、図4及び図6に示すように、前記各ローラ18の内部には、ローラ18の回転にともなって発電を行う発電部としての永久磁石22が設けられている。この永久磁石22は磁石鋼により円筒状に形成され、両軸受19の外レース19a間に配置されるように、ローラ18内の突条18bの小径中間部18c内にローラ18と一体回転可能に嵌着されている。なお、前記突条18bと永久磁石22との間に誤差により隙間が生じたとしても、永久磁石22は自身の磁力によりいずれか一方の軸受19に吸着される。従って、永久磁石22のがたつきが防止される。
そして、ローラ18の回転にともない、永久磁石22がローラ支持軸17に対してわずかな間隔を隔てて相対回転されることにより、ローラ支持軸17の表面の微細な凹凸や真円度のわずかな偏り等に起因して微電力が発生し、その微電力がローラ18の外周側の表面の導電部に伝えられる。従って、ローラ18の内周側及び外周側の導電部によって、発電された電力をローラ18の外周側に供給するための供給部が構成されている。
ハンドル12の先端部,つまりY字部の付け根部には透明板23が設けられ、その内側には太陽電池パネル24が設置され、この太陽電池パネル24の出力端子がハンドル12及びローラ18に導電部に接続されている。従って、発電された電力がハンドル12及びローラ18の導電部に供給される。」(【0014】~【0020】)
カ.上記記載事項アないしエによれば、引用例1には、「ハンドルと、前記ハンドルに回転可能に支持されたローラとを備え、前記ローラが人体上を転動することにより人体に刺激を与える美容器」を基本構成としつつ、「小電力で高い美容効果を得ることができるとともに、構造を簡潔化して製作コストを低減することができ、しかも好適な操作感を得る」という課題を解決するために、肌刺激手段として、従来の複数のLEDに代えて、ローラの導電部、人体、及びハンドルの導電部に微電流が流れる手段を設けた発明が記載されていると認められる。
キ.上記認定事項カの基本構成とは、上記記載事項オを踏まえて敷えんすれば、円筒状をなすローラ18は、ハンドル12の二叉部12aに、それぞれ各一対の軸受を介してローラ支持軸17の軸線を中心として回転可能に支持されているといえるから、「ハンドルの先端に有する二又部に一対の円筒状をなすローラを、相互間隔をおいてそれぞれローラ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器」ということができる。
ク.審判請求書6頁の下記図面を参考として、図1及び2の記載によれば、美容器を水平台に載置した状態の側面視で、ハンドル12のローラ支持軸17の軸線は、前記ハンドル12の先端側かつ下方を向いていることが看取できる。
なお、上記のとおり看取できる点については、審判請求人も審判請求書(6頁下から5~3行参照。)で認めている。
ケ.図2及び3より、ハンドル12の厚みは美容器の前後方向における中央よりも基端側が厚いことが看取できる。
コ.上記記載事項オ並びに図1、2及び4より、ローラ18における、ローラ支持軸17の先端は雌ネジ部材20で覆われていることが看取できる。
(2)引用例1に記載された発明
上記記載事項ア~オ、及び認定事項カ~コを、技術常識を踏まえて、本願発明に照らして整理すると、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。
「ハンドルの先端に有する二又部に一対の円筒状をなすローラを、相互間隔をおいてそれぞれローラ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器において、
該美容器を水平台に載置した状態の側面視で、前記支持軸の軸線は、前記ハンドルの先端側かつ下方を向き、
前記ハンドルの厚みは美容器の前後方向における中央よりも基端側が厚く、
ローラにおける前記支持軸の先端は雌ネジ部材で覆われている美容器。」
2.引用例2
(1)引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、遡及出願日よりも前に頒布された刊行物である、特開2000-24065号公報(平成12年1月25日公開。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
ア.「【従来の技術】従来の顔マッサージ器として、ローラーとそれを支持する取手を備えるもの(特開平3-182251号公報)は、単一のローラで顔面をマッサージするもので顔面の特定の部位に対するマッサージ器でなく、顎の引き締め効果が期待できるマッサージ器とは言えなかった。
他方3つの球体とそれを支持する把持部を備えるもの(実開昭62-73818号公報)は、3つの球体は動きを制限する回転軸が存在しないため、それぞれ独立した自由回転をする。顎の皮膚表面の凹凸は変化するため、皮膚表面から受ける様々な方向からの力によって、各球体はそれぞれ違う回転をする。そのため、球体は顎の皮膚表面を単に転がっているに過ぎず、顎の輪郭を引き締めるためのマッサージが十分ではなかった。」 (【0002】~【0003】)
イ.「【発明の実施の形態】図1のマッサージ具1は、回転軸体8と、その回転軸体8の両端に嵌着した弾性体であるマッサージ部2とその回転軸体8を支持する把持部4とから成る。上記の弾性体であるマッサージ部2は、左右2つの円柱体3、3から成るが、球体、或いは回転楕円体等を用いてもよい。2つの内側側面部3aが顎の輪郭を中心にして両側から顎の皮膚表面に当接するため、マッサージ効果のある部位、即ち顎の表情筋にマッサージを行える道具となる。」(【0006】)
ウ.上記記載事項イの「マッサージ部2」は、回転軸体8に嵌着したものであり、「ローラ部」と言い換えることができる。また、上記記載事項イの「マッサージ具1」は、図1を踏まえると、「把持部4の一端に設けられたローラ部によってマッサージする構成」を備えるものと認められる。
エ.図1及び2を総合すると、マッサージ部2の円柱体3、3は、非貫通状態で回転軸体8に支持されていることが看取できる。
(2)引用例2に記載された事項
上記記載事項ア~イ及び認定事項ウ~エを、技術常識を踏まえて整理すると、引用例2には、以下の事項が記載されているものと認める。(以下「引用例2事項」という。)
「把持部の一端に回転軸上を回転するローラ部を設け、該ローラ部によってマッサージするマッサージ具において、該ローラ部として、球体、円柱体、回転楕円体など種々の形状のものが使用できること、また、非貫通状態で回転軸体8に支持されること。」
第4 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比する。引用発明の「先端に有する二又部」は、本願発明の「先端側」に相当し、以下同様に、「ローラ支持軸」は「支持軸」に、「水平基準線」は「美容器を水平台に載置した状態の側面視」における水平台たる基準線にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「円筒状のローラ」と、本願発明の「ボール」とは、「回転体」である限りにおいて共通し、さらに、引用発明の「ローラにおける支持軸の先端は雌ネジ部材で覆われている」構成と、本願発明の「ボールは、支持軸の先端を覆う非貫通形状である」構成とは、「回転体は、支持軸の先端が覆われている」構成の限りで共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「ハンドルの先端側に一対の回転体を、相互間隔をおいてそれぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器において、
該美容器を水平台に載置した状態の側面視で、前記支持軸の軸線は、前記ハンドルの先端側かつ下方を向き、
前記ハンドルの厚みは美容器の前後方向における中央よりも基端側が厚く、
前記ハンドルの最も幅広な部分は、回転体の外周面間の間隔より広く、
前記回転体は、前記支持軸の先端が覆われている美容器。」
<相違点1>
一対の回転体について、本願発明では一対のボールを用いており、ボールは、支持軸の先端を覆う非貫通形状であるのに対して、引用発明では一対の円筒状のローラを用いており、ローラにおける支持軸の先端は雌ネジ部材で覆われている点。
<相違点2>
本願発明では、美容器を水平台に載置した状態の側面視で、ハンドルの高さは美容器の前後方向における中央より先端側が高いのに対して、引用発明では、そのようになっているか明確でない点。
<相違点3>
本願発明では、ハンドルの最も幅広な部分は、ボールの外周面間の間隔より広いのに対し、引用発明では、ハンドルの最も幅広な部分とローラの外周面間の間隔との大小関係が明確でない点
2.相違点についての判断
(1)相違点1について
引用発明は、「ハンドルの先端に形成された二又部に一対の円筒状のローラを、相互間隔をおいてそれぞれローラ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器」であるのに対して、引用例2事項は、「把持部の一端に回転軸上を回転するローラ部を設け、該ローラ部によってマッサージするマッサージ具において、該ローラ部として、球体、円柱体、回転楕円体など種々の形状のものが使用できること」である。そうすると、両者はともに、「把持部の一端に回転軸上を回転するローラ部を設け、該ローラ部によってマッサージする構成」(以下「回転軸ローラ構成」という。)で共通しているといえる。
また、引用例2事項のとおり、回転軸ローラ構成におけるローラ部の形状には、球体、円柱体など種々のものが使用できる。
さらに、引用発明の美容器にあっては、ローラの形状は「円筒状」に限定される必要はなく、球体を含む他の形状を排除しない。
すなわち、引用発明は、上記記載事項オによれば、「ハンドルは、使用者によって保持される把持部と該把持部の先端部に形成された二又部とを備え、平面形状がY字状をなすように形成されており、前記二又部に、一対の前記のローラがそれぞれ支持される」美容器である(以下「Y字型美容ローラ」という。)である。
そして、Y字型美容ローラが肌を摘み上げる効果を奏することは、引用発明のY字型美容ローラを使用すれば自ずと明らかであり、また、当該効果が、円筒状以外のローラ部の形状でも得られることも含めて技術常識である(例えば、長球状につき、特開2009-142509号公報(以下、「周知例1」という。)の段落【0015】~【0017】及び図3、球状につき、意匠登録第1374522号公報(以下、「周知例2」という。)の【意匠に係る物品の説明】及び使用状態を示す参考図(1)(2)、円筒状につき、登録実用新案第3154738号公報(以下、「周知例3」という。)の段落【0007】、【0012】及び図2,3を参照。)。そうすると、当業者は、Y字型美容ローラが、ローラ部の形状が円筒状に限定されることなく、肌を摘み上げる効果を奏させることを理解する。
なお、Y字型美容ローラでは、肌の摘み上げ力を把持部の肌面に対する角度により調整するものであるから、たとえ円筒状のローラ部であっても、該ローラ部の側面を常に全体(又は広い範囲)にわたるように皮膚に接触させる必要性は想定しがたい。このことは、引用発明のほか、周知例1~3記載のY字型美容ローラを使用すれば自ずと明らかであり、また、周知例3の段落【0010】の「該手持ち部と2つのローラー支持部は、それぞれの中心線が同一平面を形成しないように傾きをつけられている・・・。この傾きは使用感のよい角度を適宜選択することができる・・・」との記載が当然の前提とするところである。
してみれば、上記のとおり、(i)引用発明と引用例2事項はともに、回転軸ローラ構成で共通していること、(ii)回転軸ローラ構成におけるローラ部の形状には、球体など種々のものが使用できること、(iii)引用発明の「ローラ」の形状は、Y字型美容ローラの効果との関係で円筒状である必要はなく、球体を含む他の形状を排除しないこと、などを踏まえると、引用発明と引用例2事項にともに接した当業者であれば、引用発明の回転軸ローラ構成の「ローラ部」の形状として、引用例2に記載された「種々のもの」の中から、球体(すなわち、ボール)の形状を選択する程度のことは、適宜なし得たことである。
また、引用発明のローラも支持軸の先端が雌ネジ部材で覆われている以上、支持軸がローラを貫通しているとはいえず、ローラは、非貫通状態で支持軸に支持されているといえる。
ここで、仮に支持軸の先端が雌ネジ部材で覆われているということでは、ローラが非貫通状態で支持軸に支持されているとはいえないとしても、引用例2には、引用例2事項のとおり、ローラ部が非貫通状態で回転軸体8に支持されることが記載されており、引用発明の回転軸ローラ構成の「ローラ部」の具体的形状につき、当該引用例2記載のローラ部の構成を採用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。
よって、引用発明に引用例2事項及び該周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。
(2)相違点2について
本願の願書には、美容器を水平台に載置した状態の側面視を示す図面の添付はなく、また、本願当初明細書及び図面には、ハンドルの中央がどこを指すのかについての記載もない。
そして、明細書及び図面の記載を総合的に検討しても、相違点2に係る本願発明に係る構成を備えることが遡及出願日当時に技術常識であったとする根拠はないから、本願発明が出願当初から当該構成を意図していたことを見出すことはできない。
一方、引用発明においても、図2の記載からすれば、美容器を水平台に載置した状態の側面視での、ハンドルの中央の高さは、美容器の前後方向における中央より先端側と同程度であり、相違点2に係る本願発明の構成を備えるものとの有意な差異を見出すことはできない。
よって、相違点2に係る構成の有無は構成上の微差にすぎず、設計的事項の域を出るものとは認められない。
また、遡及出願日よりも前に頒布された登録実用新案第3164829号公報の図2や登録実用新案第3159255号公報の図3の記載からみて、ハンドルの屈曲部をハンドルの中央より先端側に設けることが周知技術であることから、引用発明における屈曲部をハンドルの中央よりも先端側に設けることで相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が必要により設定することができることにすぎないといえる。
よって、この点からも、相違点2に係る構成の有無は設計的事項の域を出るものとは認められない。
ここで、審判請求人は審判請求書において、「かかる構成(審決注:相違点2に係る本願発明の構成)を採用することにより、本願発明は、美容器の使用時に、ハンドルを把持してボールを肌に当てるときに手首を曲げる必要がなくなるという効果(段落0008)に関して、ハンドルを把持する位置の自由度が高くなるという効果を奏することとなる。
つまり、ボールを肌に当てるときに手首を曲げる必要がなくなるハンドルの位置を長く採ることができるという効果を有する。
なお、美容器を操作する場合に手首を曲げることが操作性の悪さにつながることは、本願の課題の一つであり、上記構成はまさに本願の課題を解決する手段の一つである(段落0004)。」(審判請求書7頁9~17行)と、相違点2に係る本願発明の構成を採用することにより特有の作用効果が生じることを主張している。
しかし、上述のとおり本願当初明細書等には相違点2に係る本願発明の構成について文言自体がなく、美容器を水平台に載置した状態の側面視で、ハンドルの高さは美容器の前後方向における中央より先端側が高いことと、ボールを肌に当てるときに手首を曲げる必要がなくなるハンドルの位置を長く採ることができるという作用効果との間に技術的な因果関係は認められない。
また、そのような因果関係を技術常識とする証拠は何ら示されていないところ、審判請求人がするような特有の作用効果を主張できるなら、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ず、本件補正は認められないはずである。
よって、審判請求人の主張は理由がない。
(3)相違点3について
引用発明では、ハンドルの最も幅広な部分とローラの外周面間の間隔の位置関係は明確でないが、図1を参照すれば、ハンドル12の最も幅広な部分の幅(以下、「前者」という。)とローラ18の外周面間の間隔(以下、「後者」という。)は、前者が後者より僅かに広いか、ほぼ同じであることが看取できる。
そして、当該前者が後者より広いことにより臨界的に格別の作用効果が生じるものとは認められないから、相違点3に係る本願発明の構成は実質的な相違とは認められないか、仮に相違であるとしても設計的事項の域を出るものではない。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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