特許異議申立
2017-701158
ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
- 審判番号
- 2017-701158
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-560011外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月07日
- 審決日
- 2018年09月21日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友金属鉱山株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人貴和特許事務所
- 【異議申立人】▲高▼橋 芳枝
- 分類
- P1651.113-YAA(C01G) / P1651.121-YAA(C01G) / P1651.536-YAA(C01G) / P1651.537-YAA(C01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6142929号発明「ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6142929号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕、及び〔9、10〕について訂正することを認める。
特許第6142929号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6142929号の請求項1~10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年 1月29日(優先権主張 平成26年 1月31日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年 5月19日に特許権の設定登録がされ、同年 6月 7日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年12月 7日付けで特許異議申立人 高橋芳枝(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年 2月15日付けで取消理由が通知され、同年 4月17日に特許権者と面接が行われ、同年 4月20日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して、申立人から同年 6月 7日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年 4月20日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)~(4)のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を
「一般式:NixMnyMt(OH)2+α(0.05≦x≦0.95、0.05≦y≦0.95、0≦t≦0.20、x+y+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Co、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表される、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなるニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法であって、
少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、アルカリ溶液とを、反応槽内に連続的に供給し、混合することにより反応水溶液を形成し、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、前記反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収する工程において、前記晶析の際に、前記反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~13.0、アンモニウムイオン濃度を5g/L~25g/Lの範囲に制御し、かつ、該反応槽内の酸素濃度を3.0容量%以下とし、該反応水溶液の温度を35℃~60℃、ニッケルイオン濃度を1000mg/L以上に制御して、
平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、
前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得ることを特徴とする、
ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
本件明細書の段落【0014】を、
「特に、本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、アルカリ溶液とを、反応槽内に連続的に供給し、混合することにより反応水溶液を形成し、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、前記反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収する工程において、前記晶析の際に、該反応槽内の酸素濃度を3.0容量%以下とし、該反応水溶液の温度を35℃~60℃、好ましくは35℃~55℃、ニッケルイオン濃度を1000mg/L以上に制御する。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
本件明細書の段落【0015】を、
「さらに、前記反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~13.0、アンモニウムイオン濃度を5g/L~25g/Lの範囲に制御する。これにより、平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得る。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
本件明細書の段落【0107】を、
「次に、反応槽内の水を撹拌しながら、原料水溶液と、25質量%のアンモニア水と、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを連続的に供給することにより、反応水溶液を形成した。この際、原料水溶液を40mL/分、アンモニア水を8mL/分で連続的に供給するとともに、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.7に、アンモニウムイオン濃度が13.0g/Lに維持されるように、水酸化ナトリウム水溶液を供給し、この反応水溶液のニッケルイオン濃度を1000mg/Lに調整した。」
に訂正する。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1に記載されたニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法において、「少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、アルカリ溶液とを、反応槽内に連続的に供給し、混合することにより反応水溶液を形成し、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、前記反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収する工程」と規定することにより、原料水溶液等を反応槽内に連続的に供給し、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収することを限定するものである。
また、訂正事項1は、上記工程により得られたニッケルマンガン複合水酸化物粒子が「平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である」点を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
上記工程についての規定は、本件明細書の段落【0043】の「・・・少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを一定速度で連続供給し、アルカリ溶液を、その添加量を調整しながら供給することができるものであれば特に制限されることはない。・・・」の記載、及び段落【0044】の「なお、生成した複合水酸化物粒子の回収方法も、特に制限されることはないが、反応槽内の反応水溶液をオーバーフローさせることにより、連続的に回収する方法が好ましい。・・・」の記載に基づくものである。
また、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子についての規定は、本件請求項7の「・・・平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、 前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子。」の記載、及び本件明細書の段落【0052】~【0059】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0014】を、「特に、本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、アルカリ溶液とを、反応槽内に連続的に供給し、混合することにより反応水溶液を形成し、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、前記反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収する工程において、前記晶析の際に、該反応槽内の酸素濃度を3.0容量%以下とし、該反応水溶液の温度を35℃~60℃、好ましくは35℃~55℃、ニッケルイオン濃度を1000mg/L以上に制御する。」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の請求項1の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2は、本件明細書の段落【0043】の「・・・少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを一定速度で連続供給し、アルカリ溶液を、その添加量を調整しながら供給することができるものであれば特に制限されることはない。・・・」の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0015】を、「さらに、前記反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~13.0、アンモニウムイオン濃度を5g/L~25g/Lの範囲に制御する。これにより、平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得る。」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の請求項1の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項3は、本件請求項7の「・・・平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、 前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子。」の記載、及び本件明細書の段落【0052】~【0059】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、本件明細書の段落【0107】の「・・・原料水溶液を40L/分、アンモニア水を8mL/分で連続的に供給する・・・」の記載を、「・・・原料水溶液を40mL/分、アンモニア水を8mL/分で連続的に供給する・・・」と訂正するものである。
本件明細書の段落【0106】に「・・・ニッケルとマンガンの濃度が、合計で2mol/Lの原料水溶液を調製した。一方、オーバーフロー口までの容量が60Lである反応槽に、上限まで水を入れ、ウォーターバスを用いて槽内温度が40℃となるまで加温した。・・・」と記載され、及び段落【0107】の「次に、反応槽内の水を撹拌しながら、原料水溶液と、25質量%のアンモニア水と、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを連続的に供給することにより、反応水溶液を形成した。この際、原料水溶液を40L/分、アンモニア水を8mL/分で連続的に供給するとともに、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.7に、アンモニウムイオン濃度が13.0g/Lに維持されるように、水酸化ナトリウム水溶液を供給し、この反応水溶液のニッケルイオン濃度を1000mg/Lに調整した。」と記載され、反応槽の容量が60Lであり、アンモニア水を8mL/分で供給するのに対し、原料水溶液を「40L/分」で供給すると、原料水溶液の供給が過剰となり、アンモニウムイオン濃度を13.0g/Lに維持できないことから、「原料水溶液を40L/分・・・で連続的に供給する」の記載は、「原料水溶液を40mL/分・・・で連続的に供給する」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
上記アのとおり、訂正事項4は、明らかな誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が直接的又は間接的に訂正事項1に係る請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1は、一群の請求項1~6について請求されたものである。
4 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項2、3は、訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、一群の請求項1~6に関係する訂正である。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
また、訂正事項4は、誤記を訂正することを目的とするものであり、特許請求の範囲の全ての請求項1~6、7~8、9~10と関係しているところ、訂正事項4は、全ての請求項1~6、7~8、9~10について訂正を請求するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕及び〔9、10〕について訂正を認める。
第3 特許異議申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1~10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。
【請求項1】
一般式:NixMnyMt(OH)2+α(0.05≦x≦0.95、0.05≦y≦0.95、0≦t≦0.20、x+y+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Co、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表される、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなるニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法であって、
少なくともニッケル塩およびマンガン塩を含む原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、アルカリ溶液とを、反応槽内に連続的に供給し、混合することにより反応水溶液を形成し、前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を晶析させて、前記反応水溶液をオーバーフローさせることにより、該ニッケルマンガン複合水酸化物を連続的に回収する工程において、前記晶析の際に、前記反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~13.0、アンモニウムイオン濃度を5g/L~25g/Lの範囲に制御し、かつ、該反応槽内の酸素濃度を3.0容量%以下とし、該反応水溶液の温度を35℃~60℃、ニッケルイオン濃度を1000mg/L以上に制御して、
平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、
前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得ることを特徴とする、
ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記反応水溶液の温度を35℃~45℃とする、請求項1に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ニッケル塩および前記マンガン塩として、硫酸塩、硝酸塩、および塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項1または2に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記アンモニウムイオン供給体として、アンモニア、硫酸アンモニウム、および塩化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項1~3のいずれかに記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いる、請求項1~4のいずれかに記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を、該反応槽内の反応水溶液をオーバーフローさせることにより回収する、請求項1~5のいずれかに記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項7】
一般式:NixMnyMt(OH)2+α(0.05≦x≦0.95、0.05≦y≦0.95、0≦t≦0.20、x+y+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Co、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなるニッケルマンガン複合水酸化物粒子であって、
平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20である、および、
前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子のうち、平均粒径の70%以上の粒径を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子。
【請求項8】
請求項7に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子またはこれを熱処理することにより得られる熱処理粒子とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る、混合工程と、
前記リチウム混合物を酸化性雰囲気下、720℃~1000℃で焼成する、焼成工程と、
を備える、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
一般式:Li1+uNixMnyMtO2(-0.05≦u≦0.50、0.05≦x≦0.95、0.05≦y≦0.95、0≦t≦0.20、x+y+t=1、Mは、Co、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)で表され、層状構造を有する六方晶系リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなり、
平均粒径が7.0μm~25.0μmであり、かつ、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.80~1.20であり、および、
平均粒径の70%以上の粒径を有する正極活物質の円形度の平均値が0.82以上であり、かつ、タップ密度が2.20g/cm3以上である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項10】
正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項9に記載の非水電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水電解質二次電池。
2 証拠方法
申立人により提出された特許異議申立ての証拠は、以下の甲第1号証~甲第4号証である。
甲第1号証:特開2011-116582号公報
甲第2号証:特開2008-174444号公報
甲第3号証:国際公開第2012/131881号
甲第4号証:特表2010-505732号公報
3 取消理由の概要
訂正前の請求項1~10に係る特許に対して平成30年 2月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(新規性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~6に係る発明の課題は、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度を向上させることであり、本件発明の製造方法により、円形度の平均値が0.82以上であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られるというものであるのに対して、甲第1号証には、本件特許の請求項1~6で特定する工程と同一の工程が記載されていると認められるが、甲第1号証では、上記円形度を充足するニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られていない。
したがって、本件特許の請求項1~6に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
理由3(実施可能要件)
特許異議申立書に記載された本件明細書の実施例に準拠した実験によると、本件特許の請求項7、8で特定したニッケルマンガン複合水酸化物粒子及び本件特許の請求項9、10で特定したリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を得ることができないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項7~10に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
4 当審の判断
(1)取消理由についての判断
ア 理由1について
甲第1号証には、甲第1号証に記載された発明に係る製造方法により得られたニッケルマンガン複合酸化物粒子の平均粒径及び〔(d90-d10)/平均粒径〕が、図5に記載されている。
図5をみると、比較例1、2が、本件発明1の平均粒径を充足するものの、〔(d90-d10)/平均粒径〕は一致しない。また、本件発明1で特定するタップ密度及び円形度は、甲第1号証には記載されていない。
そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
イ 理由2について
本件発明1は、晶析反応により得られるニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度を向上させることを目的とするところ(本件明細書 段落【0012】)、本件訂正請求により、本件発明1は、原料水溶液等を反応槽に連続的に供給し、反応水溶液をオーバーフローさせることによりニッケルマンガン複合水酸化物粒子を連続的に回収する工程であることが特定され、また、円形度の平均値が0.82以上であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得ることが特定された。
これに対して、甲第1号証の製造方法は、小粒径かつ粒径均一性の高いニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得ることを目的とするものであって(段落【0017】)、オーバーフローによって連続的に回収しないものとされている(段落【0102】)。
そして、特許権者は、平成30年 4月20日付けで提出した意見書に添付して、実験成績証明書(乙第1号証)を提出した。
上記実験成績証明書によると、本件発明1で特定され、本件明細書の実施例に記載された原料水溶液等を反応槽に連続的に供給し、反応水溶液をオーバーフローさせることによりニッケルマンガン複合水酸化物粒子を連続的に回収するという工程について、実施例の表2に記載された製造条件で実験することにより、実施例の表3に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られるものと認められる。
ここで、当該実験において、本件明細書に記載のない攪拌機等の装置の構成や撹拌速度等の実験条件が記載されているが、いずれも特殊なものではなく、また、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものとはいえない。
そうすると、本件発明1で特定した、甲第1号証の製造方法とは異なる工程により円形度の平均値が0.82以上であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られることは、発明の詳細な説明に具体的な実施例が記載されていることにより裏付けられていると認められる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また、本件発明2~6は、本件発明1を、発明の詳細な説明に記載された範囲で具体的に特定したものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
ウ 理由3について
上記実験成績証明書によると、実施例の表3に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られたことに加えて、当該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を用いて、実施例の表4に記載の正極活物質(リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子)が得られるものと認められる。
また、本件明細書の実施例には、上記表4に記載の正極活物質(リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子)を用いて、非水電解質二次電池を製造したことが記載されている。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明7~10について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
(2) 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由についての判断
ア 特許異議申立理由
申立人は、上記取消理由以外に、概ね以下の理由を申し立てた。
(ア)特許法29条1項3号及び第29条第2項
(i)本件特許の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ii)本件特許の請求項7、8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、または、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(iii)本件特許の請求項9、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、または、甲第2号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)特許法第36条第6項第1号
本件明細書には、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子及び正極活物質は、リチウムイオン二次電池用であることは記載されているが、あらゆる二次電池に適用できることまでは記載されていない。
したがって、本件特許の請求項1~10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 判断
(ア)(i)について
本件発明6は、本件発明1を引用するものであるから、製造されるニッケルマンガン複合水酸化物粒子について、本件発明1と同じ円形度等を特定するものである。
一方、甲第1号証は、上記4(1)アのとおり、本件発明1で特定するニッケルマンガン複合水酸化物粒子のタップ密度及び円形度については記載されていない。
また、甲第2号証は、本件発明1のタップ密度を充足するニッケルマンガン複合水酸化物粒子が記載されているが、その形状については、「・・・ このニッケル水酸化物は、球状または燐片状の基本粒子(一次粒子)が緻密に連接した、ほぼ球状の凝集粒子(二次粒子)である。 ・・・ 本明細書において、ほぼ球状とは、真球状および真球に類似した形状を意味する。」(段落【0019】)と記載されているにとどまり、本件発明1で特定するニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度を充足しているとまではいえない。
そして、甲第1号証及び甲第2号証の記載から、本件発明1の上記円形度を導出することができるともいえない。
したがって、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ア)(ii)について
本件発明7も、本件発明1と同様に、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度等を特定するものであり、本件発明8は、当該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を用いて非水電解二次電池用正極活物質を製造する方法である。
これに対して、甲第2号証には、上記のとおり、本件発明7で特定されるニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度については、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明7及び本件発明8は、甲第2号証に記載された発明といえず、また、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ア)(iii)について
本件発明9も、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の円形度等を特定するものであり、本件発明10は、当該リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質を用いた非水電解質二次電池である。
これに対して、甲第2号証には、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質を製造したことは記載されているが、上記のとおり、その原料であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子が、真球状及び真球に類似した形状であることが記載されているにとどまり、当該非水電解質二次電池用正極活物質が、本件発明9で特定する上記円形度を充足しているとまではいえない。
一方、甲第3号証及び甲第4号証は、本件発明9で特定する平均粒径及び〔(d90-d10)/平均粒径〕を充足するリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質が記載されている。
しかし、甲第3号証は、粒子の円形度は記載されておらず、二次粒子が略球状であることが記載されているにとどまる。
また、甲第4号証は、マンガンを含むリチウムニッケル複合酸化物粒子について、粒子の球形度を示す形状ファクターが0.8以上であることが一応記載されているが(請求項7、8)、実際に得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子の形状ファクターの具体的な値が記載されていないため、甲第4号証に記載されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子は、本件発明9で特定する円形度を充足しているとはいえず、また、どのような製造方法により当該円形度を充足することができるのかも明らかでない。
したがって、本件発明9及び本件発明10は、甲第2号証に記載された発明といえず、また、甲第2号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(イ)について
本件発明1~6及び本件発明7は、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の円形度を向上させることを目的として含むものであり、上記(1)イのとおり、 本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえ、また、本件発明7も同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
本件発明8~10は、正極活物質の充填性を向上させること、及びこれを用いた非水電解質二次電池を提供することを目的として含むものであり、発明の詳細な説明において、正極活物質は充填性に優れ、性能に優れた非水電解質二次電池が得られたことが記載されている。また、そもそも本件発明8~10は、活物質にリチウムが含まれていることが特定されているものである。
したがって、本件発明1~10は、リチウムイオン二次電池用であることを特定する必要があるとはいえない。
(3)申立人の意見について
申立人は、平成30年 6月 7日付け意見書において、訂正後の本件特許は、依然として取消理由を有すると主張しているので、以下に検討する。
(ア)特許法第36条第6項第1号
申立人は、本件訂正請求により本件発明1において、反応水溶液をオーバーフローさせる連続晶析法を用いることが特定されたが、本件明細書には、連続晶析法を所望の円形度を得るために採用したことの記載はなく、本件発明1が所望の円形度を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られるという課題を解決できるとはいえないと主張している。
しかし、本件明細書の実施例は、上記連続晶析法により所望の円形度を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られたことが具体的に記載されているといえるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、申立人は、同じく意見書において、本件発明1~6は、Co、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素Mを含んでもよいニッケルマンガン複合水酸化物粒子であることが特定されているが、本件明細書では、これらの元素を含むニッケルマンガン複合水酸化物粒子については全く用いられていないから、本件発明1~6は、依然として、当業者が本件発明の課題を解決できるとはいえないと主張している。
しかし、本件明細書の段落【0030】~【0045】には、反応水溶液のpH、アンモニウムイオンの濃度、反応槽内の酸素濃度、及びニッケルイオン濃度を制御することにより、円形度の高い複合水酸化物粒子を得ることができることが説明されており、また、同じく段落【0051】には、添加元素Mは、晶析工程において晶析させたり、晶析工程後に複合水酸化物粒子に被覆させてもよいことが記載され、添加元素Mを含むことで直ちに複合水酸化物粒子の円形度が悪化して本件発明で課題する円形度を向上させることができないともいえないから、添加元素Mを含む実施例がないとしても、本件発明1~6が発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(イ)特許法第36条第4項第1号
申立人は、特許異議申立書24ページ9行目~26ページ1行目に記載の実験について、実験の詳細を記載した実験成績書(甲第5号証)を上記意見書に添付した上で、本件明細書に準拠した実験によっては、所望の円形度を有するニッケルマンガン複合水酸化物粒子及びリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を得ることができなかったから、本件発明7~10は、依然として当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないと主張している。
しかし、特許権者から、実施例に記載された製造条件による実験成績証明書が提出され、上記(1)ウのとおり、本件発明7~10は、実施をすることができることが立証された。
一方、申立人の提出した実験成績書では、原料水溶液の濃度、原料水溶液及びアンモニア水の供給量、反応水溶液の温度並びにアンモニウムイオン濃度等は、本件明細書に記載の実施例1のとおりに設定されている。しかし、反応槽内のニッケルイオン濃度は1400mg/Lであることが記載され、実施例1とは異なっている。
そうすると、上記実験成績書による実験は、本件明細書に記載された一つの実施例に準拠して行われたとはいえないから、この実験による結果をもとに、本件発明について実施をすることができないとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、 取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701158