特許異議申立
2024-700648
銅張積層板および銅張積層板の製造方法
- 審判番号
- 2024-700648
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-104193
- 登録番号
- 7415813
- 請求日
- 2024年07月10日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友金属鉱山株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人山内特許事務所
- 【異議申立人】小宮 邦彦
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 相澤 啓祐
- 審判官 土屋 知久
- 分類
- P1651.121-Y (C25D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7415813号発明「銅張積層板および銅張積層板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7415813号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7415813号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2020-104193号。以下、「本願」という。)は、令和 2年 6月17日の出願であって、令和 6年 1月 9日にその特許権の設定登録がされ、同年 1月17日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 6年 7月10日に、その請求項1~6(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である小宮 邦彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」等といい、総称して「本件特許発明」ということがある。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層と、
前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備え、
前記銅めっき被膜は、電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度が、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定された電解めっきにより成膜されたものである
ことを特徴とする銅張積層板。
Jmin(d)=-3d2+7d-0.2 ・・・(1)
ここで、dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である。
【請求項2】
前記最低電流密度は、式(2)で求められる
ことを特徴とする請求項1記載の銅張積層板。
Jmin(d)=-3.5d2+8d-0.2 ・・・(2)
【請求項3】
前記銅めっき被膜は、前記電流密度上昇期間における電流密度が、式(3)で求められる最高電流密度以下に設定された電解めっきにより成膜されたものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板。
Jmax(d)=-5.5d2+11d ・・・(3)
ここで、Jmax(d)は厚さdのときの最高電流密度[A/dm2]である。
【請求項4】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層とを有する基材を用い、前記銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得るにあたり、
電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
Jmin(d)=-3d2+7d-0.2 ・・・(1)
ここで、dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である。
【請求項5】
前記最低電流密度は、式(2)で求められる
ことを特徴とする請求項4記載の銅張積層板の製造方法。
Jmin(d)=-3.5d2+8d-0.2 ・・・(2)
【請求項6】
前記電流密度上昇期間における電流密度を、式(3)で求められる最高電流密度以下に設定する
ことを特徴とする請求項4または5記載の銅張積層板の製造方法。
Jmax(d)=-5.5d2+11d ・・・(3)
ここで、Jmax(d)は厚さdのときの最高電流密度[A/dm2]である。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、以下の2の甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
(1)申立理由1-1(取消理由として不採用)
本件特許発明1~6は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(取消理由として不採用)
本件特許発明1~6は、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3(取消理由として不採用)
本件特許発明1~6は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:韓国公開特許第10-2017-0028047号公報
甲第2号証:韓国公開特許第10-2013-0023519号公報
甲第3号証:韓国公開特許第10-2014-0072409号公報
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、上記第3の申立理由1によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(進歩性)
(1)申立理由1-1について
ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(ア)甲1の記載事項
本願の出願前に公知となった甲1には、「
[図:0001417661000001.jpg]
」(翻訳:軟性銅箔積層フィルム、その製造方法、及びそれを用いた軟性印刷回路基板の製造方法)(発明の名称)に関して、以下の記載がある。なお、翻訳文は、申立人によるものを必要に応じて当審で一部修正したものであり、以下同様である。
a 「
[図:0001417661000002.jpg]
」
(翻訳:
【請求項1】
非伝導性高分子基材(nonconductive polymer substrate)と、
前記非伝導性高分子基材上のタイコート層(tiecoat layer)と、
前記タイコート層上の銅層(copper layer)と、を含むが、
前記銅層は、0.02個/cm2以下のピンホール(pinhole)を有し、
前記銅層の厚さが0.8μmになるまで化学研磨剤溶液で前記銅層を研磨する場合、前記研磨された銅層は、0.2個/cm2以下のピンホールを有する、軟性銅箔積層フィルム。
【請求項2】
前記非伝導性高分子基材は、ポリイミドを含み、
前記タイコート層は、ニッケル、クロム、モリブデン、またはそれらのうち、2以上の混合物を含む、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項3】
前記タイコート層は、ニッケル及びクロムを含み、
前記タイコート層内の前記クロムの含量は、5~25重量%である、請求項2に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項4】
前記非伝導性高分子基材は、10~40μmの厚さを有し、
前記タイコート層は、150~300Åの厚さを有する、請求項1に記載の軟性銅箔積層フィルム。
【請求項5】
前記銅層は、
前記タイコート層上の銅シード層と、
前記銅シード層上の銅メッキ層と、を含み、
前記銅シード層は、500~1,500Åの厚さを有し、
前記銅メッキ層は、1~3μmの厚さを有する、請求項4に記載の軟性銅箔積層フィルム。)
b 「
[図:0001417661000003.jpg]
[図:0001417661000004.jpg]
」
(翻訳:
【請求項9】
非伝導性高分子基材を準備する段階と、
前記非伝導性高分子基材上にタイコート層を形成する段階と、
前記タイコート層上に銅層を形成する段階と、を含むが、
前記銅層形成段階は、
スパッタリング工程を通じて前記タイコート層上に銅シード層を形成する段階と、
メッキ工程を通じて前記銅シード層上に銅メッキ層を形成する段階と、を含み、
前記タイコート層及び前記銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材を、11~15個のメッキ槽に順次に通過させることで、前記メッキ工程が行われ、
前記メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、
2番目メッキ槽ないしn番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、n+1番目メッキ槽ないし最後のメッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以下であり(ここで、前記nは、7、8、9、10、11または12)、
前記第1電流密度は、0.3A/dm2であり、
前記n番目メッキ槽において加えられる電流密度は、3A/dm2であり、
前記最後のメッキ槽において加えられる電流密度は、前記第1電流密度より高い、軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記タイコート層を形成する前に、前記非伝導性高分子基材をプラズマで処理する段階をさらに含む、請求項9に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記タイコート層は、スパッタリング工程を通じて150~300Åの厚さを有するように形成される、請求項9に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記銅シード層は、500~1,500Åの厚さを有するように形成され、
前記銅メッキ層は、1~3μmの厚さを有するように形成される、請求項9に記載の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。)
c 「
[図:0001417661000005.jpg]
」
(翻訳:
【0003】
携帯性が強調されながら、電子機器が小型化及び軽量化される傾向にある。電子機器が集積化、小型化及び軽量化されることにより、軟性印刷回路基板及びそのための原資材である軟性銅箔積層フィルム(FCCL)に対する需要が増加している。)
d 「
[図:0001417661000006.jpg]
[図:0001417661000007.jpg]
[図:0001417661000008.jpg]
」
(翻訳:
【0075】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解のためのものであって、本発明の権利範囲がそれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
*軟性銅箔積層フィルムの製造
【0078】
実施例1~3及び比較例1~3
【0079】
ポリイミドフィルムを赤外線(IR)ヒータで乾燥させた後、プラズマ表面処理を遂行した。次いで、スパッタリング工程を通じて200Å厚さのNiCrタイコート層を形成した。次いで、スパッタリング工程を通じて700Å厚さの銅シード層を形成した。次いで、下記表1の互いに異なる条件下で電気メッキを実施して2μm厚さの銅メッキ層を形成することで、実施例1~3及び比較例1~3の軟性銅箔積層フィルムを完成した。
【0081】
[図:0001417661000009.jpg]
【0083】
上記実施例及び比較例によって製造された軟性銅箔積層フィルムの銅層の初期ピンホール数、及び化学的研磨後の銅層のピンホール数を下記方法によってそれぞれ測定し、その結果を表2に示した。
【0085】
*初期ピンホール数
【0086】
各軟性銅箔積層フィルムごとに156mm幅×300mm長さのサンプル3個を確保した。次いで、暗室雰囲気で観察者とLED光源との間に前記サンプルを置き、前記観察者が肉眼で観察可能なピンホールの個数を数えた。
【0088】
*化学的研磨後ピンホール数
【0089】
各軟性銅箔積層フィルムごとに156mm幅×300mm長さのサンプル3個を確保した。次いで、銅層の厚さが約0.8μmになるまで化学的研磨を遂行するために、常温(room temperature)で各サンプルを化学研磨剤溶液(プンウォン化学社のMFE-5000原液を20%希釈)に約95秒間浸漬させた。次いで、暗室雰囲気で観察者とLED光源との間に前記サンプルを置き、前記観察者が肉眼で観察することができるピンホールの個数を数えた。
【0091】
[図:0001417661000010.jpg]
【0093】
前記比較例1(電流密度範囲:0.5~2.0A/dm2)及び比較例3(電流密度範囲:1.0~3.5A/dm2)の場合、初期ピンホール数が10個未満(0.02個/cm2未満)であったにもかかわらず、化学的研磨を遂行したとき、ピンホール数が100個を超過(0.2個/cm2超過)したことが分かる。
【0094】
また、比較例2(電流密度範囲:0.5~2.5A/dm2)の場合、化学的研磨後のピンホール数が100個を超過(0.2個/cm2超過)しており、かつ、初期ピンホール数までも10個を超過(0.02個/cm2超過)した。
【0095】
一方、前記実施例及び比較例の軟性銅箔積層フィルムに通常の工程(化学的研磨、感光線パターン形成、電解メッキ、アッシング、エッチング)を同一に適用し、同じ回路パターンを形成した後、AEI(Automated Electrical Inspection)検査を通じて回路断線有無を確認する実験を実施した結果、実施例1~3の軟性銅箔積層フィルムを用いて形成された回路では断線が見出されておらず、一方、比較例1~3の全ての軟性銅箔積層フィルムで回路の断線が見出された。)
(イ)甲1に記載された発明
特に上記(ア)dに摘記した実施例1の「軟性銅箔積層フィルム」に着目し、上記(ア)a、bに摘記した請求項1、9の記載に倣って整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。なお、実施例1の「銅層」及び「研磨された銅層」のピンホール数は、上記(ア)dの【0091】に記載の初期ピンホール数(平均6個)及び化学的研磨後のピンホール数(平均75個)をそれぞれ同【0086】及び【0089】に記載のサンプル面積(156mm×300mm(=15.6cm×30.0cm))で除すると、「0.013個/cm2」及び「0.160個/cm2」(いずれも小数点以下第4位を四捨五入)と計算される。
「非伝導性高分子基材であるポリイミドフィルムを準備する段階と、
前記非伝導性高分子基材上にNiCrタイコート層を形成する段階と、
前記タイコート層上に銅層を形成する段階と、を含むが、
前記銅層形成段階は、
スパッタリング工程を通じて前記タイコート層上に700Å厚さの銅シード層を形成する段階と、
メッキ工程を通じて前記銅シード層上に2μm厚さの銅メッキ層を形成する段階と、を含み、
前記タイコート層及び前記銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材を、11個のメッキ槽に順次に通過させることで、前記メッキ工程が行われ、
前記メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、
2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、9番目メッキ槽ないし最後のメッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以下であり、
前記第1電流密度は、0.3A/dm2であり、
前記8番目メッキ槽において加えられる電流密度は、3.0A/dm2であり、
前記最後のメッキ槽において加えられる電流密度は、前記第1電流密度より高い、軟性銅箔積層フィルムの製造方法によって製造された、
非伝導性高分子基材と、
前記非伝導性高分子基材上のタイコート層と、
前記タイコート層上の銅層と、を含むが、
前記銅層は、0.013個/cm2のピンホールを有し、
前記銅層の厚さが0.8μmになるまで化学研磨剤溶液で前記銅層を研磨する場合、前記研磨された銅層は、0.160個/cm2のピンホールを有する、軟性銅箔積層フィルム。」(以下、「甲1発明」という。)
「非伝導性高分子基材であるポリイミドフィルムを準備する段階と、
前記非伝導性高分子基材上にNiCrタイコート層を形成する段階と、
前記タイコート層上に銅層を形成する段階と、を含むが、
前記銅層形成段階は、
スパッタリング工程を通じて前記タイコート層上に700Å厚さの銅シード層を形成する段階と、
メッキ工程を通じて前記銅シード層上に2μm厚さの銅メッキ層を形成する段階と、を含み、
前記タイコート層及び前記銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材を、11個のメッキ槽に順次に通過させることで、前記メッキ工程が行われ、
前記メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、
2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、9番目メッキ槽ないし最後のメッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以下であり、
前記第1電流密度は、0.3A/dm2であり、
前記8番目メッキ槽において加えられる電流密度は、3.0A/dm2であり、
前記最後のメッキ槽において加えられる電流密度は、前記第1電流密度より高い、軟性銅箔積層フィルムの製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
イ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と甲1製法発明とを対比する。
a 甲1製法発明における「非伝導性高分子基材であるポリイミドフィルム」は、本件特許発明4における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲1製法発明における「NiCrタイコート層」は、本件特許発明4における「下地金属層」に相当する。
c 甲1製法発明における、「非伝導性高分子基材上に」「形成」される「タイコート層上に」「スパッタリング工程を通じて」「形成」される「700Å厚さの銅シード層」は、本件特許発明4における、「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
d 甲1製法発明における、「銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材」は、本件特許発明4における、「ベースフィルムと、」「銅薄膜層とを有する基材」に相当する。
e 甲1製法発明における、「メッキ工程を通じて前記銅シード層上に2μm厚さの銅メッキ層を形成する」ことは、本件特許発明4における、「銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜」することに相当する。
f 甲1製法発明における「軟性銅箔積層フィルム」について、上記ア(ア)cの摘記事項には「軟性銅箔積層フィルム(FCCL)」と記載されており、「FCCL」とは「Flexible Copper Clad Laminate」の略称であって、「FCCL」が「銅張積層板」に包含されるものであることは技術常識であるから、甲1製法発明における「軟性銅箔積層フィルム」及び「軟性銅箔積層フィルムの製造方法」は、本件特許発明4における「銅張積層板」及び「銅張積層板の製造方法」に相当する。
g 甲1製法発明では、「11個のメッキ槽」「のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、」「2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、9番目メッキ槽ないし最後のメッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以下であ」るから、甲1製法発明における、「前記タイコート層及び前記銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材を、」1番目メッキ槽から8番目メッキ槽までの「メッキ槽に順次に通過させる」期間は、本件特許発明4における「電解めっき初期の電流密度上昇期間」に相当する。
h そうすると、本件特許発明4と甲1製法発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層とを有する基材を用い、前記銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得るにあたり、電解めっき初期の電流密度上昇期間を備える銅張積層板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度」について、本件特許発明4では、「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」のに対し、甲1製法発明では、「メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、」「前記第1電流密度は、0.3A/dm2であり、前記8番目メッキ槽において加えられる電流密度は、3.0A/dm2であり」、最初のメッキ槽における第1電流密度(0.3A/dm2)は上記「式(1)」の条件を満たす(dは銅シード層の厚さの0.07[μm](=700[Å])であり、Jmin(0.07)=-3×(0.07)2+7×0.07-0.2≒0.275[A/dm2])ものの、「2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれ」が上記「式(1)」の条件を満たすのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
a 上記相違点1-1について検討する上で、本件特許発明4の「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」とは、本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0037】、【0048】、【0052】の記載からすると、上記電流密度上昇期間における電流密度を、「常に」、式(1)で求められる最低電流密度Jmin(d)以上になるよう設定することであると解するのが相当である。なお、この点は、以下の(2)イ(イ)a、(3)イ(イ)aでも同様である。
そして、この点を踏まえて検討すると、上記ア(ア)dの摘記事項(特に【0081】の表1)には、甲1製法発明の認定の基礎となった実施例1について、各メッキ槽における電流密度は記載されているが、各メッキ槽におけるメッキ後の銅メッキ層の厚さは記載されていない。
また、本件明細書の【0042】には、
「銅めっき被膜20の厚さは電解めっきの進行にともない増加する。電解めっき中の銅めっき被膜20の厚さDは電流密度とめっき時間とから求められる。具体的には、式(4)に示すように、電流密度J[A/dm2]、めっき時間T[分]、および係数kを乗じて厚さD[μm]が求められる。ここで、係数kは銅めっき液などの条件に依存する値であり、試験により定められる。
D=k×J×T ・・・(4)」
と記載されているが、甲1に記載の実施例1において、各メッキ槽におけるメッキ時間は不明であるから、計算によって上記「各メッキ槽におけるメッキ後の銅メッキ層の厚さ」を求めることもできない。
なお、甲1に記載の実施例1は700Å(=0.07μm)厚さの銅シード層上に2μm厚さの銅メッキ層を形成するものであるが、仮に8番目メッキ槽におけるメッキが終わる(11個のメッキ槽で計18A/dm2の電流密度が加えられる中、8番目メッキ槽までに計11.6A/dm2の電流密度が加えられる)までに、銅シード層と銅メッキ層の合計厚さが0.7μmまで達したとすると、d=0.7[μm]、Jmin(0.7)=-3×(0.7)2+7×0.7-0.2=3.23[A/dm2]となり、8番目メッキ槽において3.0A/dm2の電流密度が加えられても、上記(ア)hの相違点1-1に係る上記「式(1)」の条件を満たすことはできないから、甲1製法発明が上記相違点1-1に係る発明特定事項を備えるものである蓋然性は低いといえる。
したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点であるといえる。
b 次に、上記相違点1-1の容易想到性について検討すると、甲1製法発明では、「メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であ」るものの、銅シード層と銅メッキ層の合計厚さに応じて電流密度を制御することは、甲1に記載も示唆もされておらず、動機付けられるとはいえないため、甲1製法発明において、上記相違点1-1に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明4は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5、6について
本件特許発明5、6は、本件特許発明4の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「非伝導性高分子基材であるポリイミドフィルム」は、本件特許発明1における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲1発明における「NiCrタイコート層」は、本件特許発明1における「下地金属層」に相当する。
c 甲1発明における、「非伝導性高分子基材上に」「形成」される「タイコート層上に」「スパッタリング工程を通じて」「形成」される「700Å厚さの銅シード層」は、本件特許発明1における、「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
d 甲1発明における、「前記銅シード層上に」「形成」される「2μm厚さの銅メッキ層」は、本件特許発明1における、「銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜」相当する。
e 甲1発明における「軟性銅箔積層フィルム」は、本件特許発明1における「銅張積層板」に相当する。
f 甲1発明では、「11個のメッキ槽」「のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、」「2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、9番目メッキ槽ないし最後のメッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以下であ」るから、甲1発明における「メッキ」が電解メッキであることは技術常識に照らして明らかであるし、甲1発明における、「前記タイコート層及び前記銅シード層が形成されている前記非伝導性高分子基材を、」1番目メッキ槽から8番目メッキ槽までの「メッキ槽に順次に通過させる」期間は、本件特許発明1における「電解めっき初期の電流密度上昇期間」に相当する。
g 甲1発明は、各メッキ槽において電流密度を加えているから、甲1発明の「銅層形成段階は、スパッタリング工程を通じて前記タイコート層上に700Å厚さの銅シード層を形成する段階と、メッキ工程を通じて前記銅シード層上に2μm厚さの銅メッキ層を形成する段階と、を含」むことは、本件特許発明1の「前記銅めっき被膜は、」「電解めっきにより成膜されたものである」ことに相当する。
h そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層と、前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっきにより成膜されたものである銅張積層板。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-2>
「銅めっき被膜」を「電解めっきにより成膜」する際の「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度」について、本件特許発明1では、「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定」するのに対し、甲1発明では、「メッキ槽のうち、最初のメッキ槽において第1電流密度が加えられ、2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれは、直前メッキ槽において加えられる電流密度以上であり、」「前記第1電流密度は、0.3A/dm2であり、前記8番目メッキ槽において加えられる電流密度は、3.0A/dm2であり」、最初のメッキ槽における第1電流密度(0.3A/dm2)は上記「式(1)」の条件を満たす(dは銅シード層の厚さの0.07[μm](=700[Å])であり、Jmin(0.07)=-3×(0.07)2+7×0.07-0.2≒0.275[A/dm2])ものの、「2番目メッキ槽ないし8番目メッキ槽においてそれぞれ加えられる電流密度それぞれ」が上記「式(1)」の条件を満たすのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点1-2について検討すると、上記相違点1-2は、上記イ(ア)hに示した相違点1-1と実質的に同じであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲1発明において、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記エ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 申立理由1-1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-1によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由1-2について
ア 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載事項
本願の出願前に公知となった甲2には、「
[図:0001417661000011.jpg]
」(翻訳:メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルム及びその製造方法)(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
a 「
[図:0001417661000012.jpg]
」
(翻訳:
【請求項1】
ポリイミド(PI)フィルムをプラズマ処理して表面洗浄及び表面粗さを向上させる段階と、
プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて導電層役のタイ(Tie)層Ni-Crと電極(Seed)層の銅(Cu)を蒸着する段階と、
硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階と、を含み、前記電解メッキ時にメッキ液の濃度及び添加剤の濃度を保持させた後、メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキすることを特徴とするメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASDとして、低くメッキすることを特徴とする請求項1に記載のメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記電解銅メッキのメッキ液は、硫酸ベース(base)メッキ液であり、塩素とレベラ(leveller)と光沢剤(brightener)、補正剤(carrier)、緩和剤(stressreducer)のうち1種以上を含み、銅の濃度は、15~40g/Lであることを特徴とする請求項1に記載のメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記光沢剤(brightener)は、5~35ml/L、レベラ(leveller)は、0.8~3.0ml/L、補正剤と緩和剤は、2~5ml/L濃度を含むことを特徴とする請求項1に記載のメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記メッキ液の温度は、22~35℃としてメッキすることを特徴とする請求項1に記載のメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記方法は、総銅メッキの厚さを0.5~3.0μmにすることを特徴とする請求項1に記載のメッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項によって製造されたものであることを特徴とするセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルム。)
b 「
[図:0001417661000013.jpg]
」
(翻訳:
【0025】
前記のようなセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムを製造する方法において定電流方式を用いた銅の電解メッキ工程でメッキの最後部分の電流密度を徐々に上昇させつつ、メッキを終えれば、粒子が微細になり、電流密度を徐々に上昇させつつ、メッキの最中に最後部分に電流密度を0.3~0.8ASDに減少させれば、エッチング速度が中間程度とエッチング性に優れたメッキ粒子サイズが得られる。)
(イ)甲2に記載された発明
上記(ア)aに摘記した請求項1、2、7の記載に基づくと、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「ポリイミド(PI)フィルムをプラズマ処理して表面洗浄及び表面粗さを向上させる段階と、
プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて導電層役のタイ(Tie)層Ni-Crと電極(Seed)層の銅(Cu)を蒸着する段階と、
硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階と、を含み、前記電解メッキ時にメッキ液の濃度及び添加剤の濃度を保持させた後、メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキし、前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASDとして、低くメッキする、メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法によって製造されたものであるセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルム。」(以下、「甲2発明」という。)
「ポリイミド(PI)フィルムをプラズマ処理して表面洗浄及び表面粗さを向上させる段階と、
プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて導電層役のタイ(Tie)層Ni-Crと電極(Seed)層の銅(Cu)を蒸着する段階と、
硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階と、を含み、前記電解メッキ時にメッキ液の濃度及び添加剤の濃度を保持させた後、メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキし、前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASDとして、低くメッキする、メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。)
イ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と甲2製法発明とを対比する。
a 甲2製法発明における「ポリイミド(PI)フィルム」は、本件特許発明4における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲2製法発明における、「ポリイミド(PI)フィルムを」「プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて」「蒸着」される「導電層役の」「タイ(Tie)層Ni-Cr」及び「電極(Seed)層の銅(Cu)」は、それぞれ本件特許発明4における、「下地金属層」及び「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
c 甲2製法発明における、「ポリイミド(PI)フィルムを」「プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて」「電極(Seed)層の銅(Cu)」が「蒸着」されたものは、本件特許発明4における、「ベースフィルムと、」「銅薄膜層とを有する基材」に相当する。
d 甲2製法発明における、「プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて導電層役のタイ(Tie)層Ni-Crと電極(Seed)層の銅(Cu)を蒸着する段階」の後に「硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする」ことと、本件特許発明4における、「銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜」するにあたり、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」こととは、「銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜」するにあたり、「電解めっき」を行うことで共通する。
e 甲2製法発明における「メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルム」及び「メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムの製造方法」は、本件特許発明4における「銅張積層板」及び「銅張積層板の製造方法」に相当する。
f そうすると、本件特許発明4と甲2製法発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層とを有する基材を用い、前記銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得るにあたり、電解めっきを行う銅張積層板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明4は、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、」「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」のに対し、甲2製法発明は、「硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階」において、「メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキし、前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASD」とするものの、上記の発明特定事項を備えるものであるのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
a 甲2製法発明は、「硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階」において、「メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキし、前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASDとして、低くメッキする」ものである。
ここで、上記ア(ア)bの摘記事項には、「前記のようなセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルムを製造する方法において」「電流密度を徐々に上昇させつつ、メッキの最中に最後部分に電流密度を0.3~0.8ASDに減少させれば、エッチング速度が中間程度とエッチング性に優れたメッキ粒子サイズが得られる。」と記載されており、甲2製法発明における上記「複数段階」のうち、「仕上げ部分(最後部分)」より前の部分では「電流密度」が「徐々に上昇」していると解されるから、当該「仕上げ部分」より前の部分は上記相違点2-1に係る「電解めっき初期の電流密度上昇期間」に相当すると解することができる。
しかしながら、甲2製法発明は、「メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキ」するものであるものの、上記「仕上げ部分」より前の部分を通してのメッキ電流密度(ASD)並びに電極(Seed)層及び銅メッキ層の合計厚さの履歴は不明であるから、甲2製法発明が上記相違点2-1に係る上記「式(1)」の条件を満たすものであるかは不明というほかない。
したがって、上記相違点2-1は、実質的な相違点であるといえる。
b 次に、上記相違点2-1の容易想到性について検討すると、電極(Seed)層及び銅メッキ層の合計厚さに応じて電流密度を制御することは、甲2に記載も示唆もされておらず、動機付けられるとはいえないため、仮に申立人が特許異議申立書の17ページの第8~12行で主張するような、上記「電極(Seed)層」、すなわち銅薄膜層の一般的な厚さは50~400nmであるとの技術常識が存在し、かつ、上記「銅メッキ層」の厚さが、上記ア(ア)aに摘記した請求項6に記載される「0.5~3.0μm」であったとしても、甲2製法発明において、上記相違点2-1に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明4は、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5、6について
本件特許発明5、6は、本件特許発明4の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明における「ポリイミド(PI)フィルム」は、本件特許発明1における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲2発明における、「ポリイミド(PI)フィルムを」「プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて」「蒸着」される「導電層役の」「タイ(Tie)層Ni-Cr」及び「電極(Seed)層の銅(Cu)」は、それぞれ本件特許発明1における、「下地金属層」及び「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
c 甲2発明における、「プラズマ処理後、物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)法を用いて導電層役のタイ(Tie)層Ni-Crと電極(Seed)層の銅(Cu)を蒸着する段階」の後に「硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階」「を含」むことと、本件特許発明1における、「銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜」「を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度が、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定された電解めっきにより成膜されたものである」こととは、「銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜」「を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっき」により成膜されたものであることで共通する。
d 甲2発明における「メッキ粒子サイズ及びエッチング性を用いたセミアディティブ用の軟性銅箔積層フィルム」は、本件特許発明1における「銅張積層板」に相当する。
e そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層と、前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっきにより成膜されたものである銅張積層板。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-2>
本件特許発明1における「銅めっき被膜」は、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度が、」「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定された電解めっきにより成膜されたものである」のに対し、甲2発明は、「硫酸銅水溶液に電解メッキ法を用いて銅(Cu)層をメッキする段階」において、「メッキ電流密度(ASD)を0.2~4ASDに変更して銅を電流密度によって複数段階にわたって電気メッキし、前記メッキの仕上げ部分の印加電流密度を0.3~0.8ASD」とするものの、上記の発明特定事項を備えるものであるのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点2-2について検討すると、上記相違点2-2は、上記イ(ア)fに示した相違点2-1と実質的に同じであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲2発明において、上記相違点2-2に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記エ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 申立理由1-2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-2によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由1-3について
ア 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
(ア)甲3の記載事項
本願の出願前に公知となった甲3には、「
[図:0001417661000014.jpg]
」(翻訳:セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム及びその製造方法)(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
「
[図:0001417661000015.jpg]
」
(翻訳:
【請求項1】
ポリイミドフィルムと金属及びポリイミドフィルムとの接着力を確保するためにポリイミドフィルムを真空状態でプラズマ処理して表面化学的活性、表面クリーニング(Cleaning)、粗さを向上させる段階と、
前記プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を蒸着する段階で構成され、
前記導電層が蒸着されたポリイミドフィルムに添加剤及び補正剤の濃度を一定量に保持したメッキ液を用いてメッキする段階を含み、
前記スパッタリング法で蒸着されるシード層は、その厚さが500Å~1500Åになるようにすることを特徴とするセミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムは、厚さが24μm~39μmであることを特徴とする請求項1に記載のセミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記タイ層の組成比は、Niの含量が80~95%であり、その厚さは、200Å~450Åにして製造することを特徴とする請求項1に記載のセミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行することを特徴とする請求項1に記載のセミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
ポリイミドフィルムと金属及びポリイミドフィルムとの接着力を確保するためにポリイミドフィルムを真空状態でプラズマ処理して表面化学的活性、表面クリーニング(Cleaning)、粗さを向上させる段階;及び前記プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を500Å~1500Åの厚さに蒸着する段階によって製造されたものであることを特徴とするピンホール発生最小化が可能なセミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム。)
(イ)甲3に記載された発明
上記(ア)に摘記した請求項1、4の記載に基づくと、甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「ポリイミドフィルムと金属及びポリイミドフィルムとの接着力を確保するためにポリイミドフィルムを真空状態でプラズマ処理して表面化学的活性、表面クリーニング(Cleaning)、粗さを向上させる段階と、
前記プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を蒸着する段階で構成され、
前記導電層が蒸着されたポリイミドフィルムに添加剤及び補正剤の濃度を一定量に保持したメッキ液を用いてメッキする段階を含み、
前記スパッタリング法で蒸着されるシード層は、その厚さが500Å~1500Åになるようにし、
前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行する、セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法によって製造されたものである、セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム。」(以下、「甲3発明」という。)
「ポリイミドフィルムと金属及びポリイミドフィルムとの接着力を確保するためにポリイミドフィルムを真空状態でプラズマ処理して表面化学的活性、表面クリーニング(Cleaning)、粗さを向上させる段階と、
前記プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を蒸着する段階で構成され、
前記導電層が蒸着されたポリイミドフィルムに添加剤及び補正剤の濃度を一定量に保持したメッキ液を用いてメッキする段階を含み、
前記スパッタリング法で蒸着されるシード層は、その厚さが500Å~1500Åになるようにし、
前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行する、セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法。」(以下、「甲3製法発明」という。)
イ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と甲3製法発明とを対比する。
a 甲3製法発明における「ポリイミドフィルム」は、本件特許発明4における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲3製法発明における、「プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に」「蒸着」される「導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)」及び「その上に」「蒸着」される「厚さが500Å~1500Å」の「シード(Seed)層(Cu)」は、それぞれ本件特許発明4における、「下地金属層」及び「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
c 甲3製法発明における、「プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上に」「厚さが500Å~1500Å」の「シード(Seed)層(Cu)を蒸着」したものは、本件特許発明4における、「ベースフィルムと、」「銅薄膜層とを有する基材」に相当する。
d 甲3製法発明における、「プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を蒸着する段階」の後に「導電層が蒸着されたポリイミドフィルムに添加剤及び補正剤の濃度を一定量に保持したメッキ液を用いてメッキ」し、「前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行する」ことと、本件特許発明4における、「銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜」するにあたり、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」することとは、「銅薄膜層の表面に金属めっき被膜を成膜」するにあたり、「電解めっき」を行うことで共通する。
ここで、甲3製法発明が「セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法」であることを踏まえると、甲3製法発明における「メッキ」が「銅メッキ」であることは、技術常識に照らして明らかである。
e 甲3製法発明における「セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム」及び「セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルムの製造方法」は、本件特許発明4における「銅張積層板」及び「銅張積層板の製造方法」に相当する。
f そうすると、本件特許発明4と甲3製法発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層とを有する基材を用い、前記銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得るにあたり、電解めっきを行う銅張積層板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明4は、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度を、」「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定する」のに対し、甲3製法発明は、「最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを」「遂行する」ものの、上記の発明特定事項を備えるものであるのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
a 甲3製法発明において、「前記スパッタリング法で蒸着されるシード層は、その厚さが500Å~1500Åになるようにし、前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行」しているが、上記相違点3-1に係る「電解めっき初期の電流密度上昇期間」が甲3製法発明に存在するのか不明であるし、仮に存在するとしても、当該「電解めっき初期の電流密度上昇期間」を通しての電流密度並びにシード層及び電解メッキの合計厚さの履歴は不明であるから、甲3製法発明が上記相違点3-1に係る上記「式(1)」の条件を満たすものであるかは不明というほかない。
したがって、上記相違点3-1は、実質的な相違点であるといえる。
b 次に、上記相違点3-1の容易想到性について検討すると、シード層及び電解メッキの合計厚さに応じて電流密度を制御することは、甲3に記載も示唆もされておらず、動機付けられるとはいえないため、甲3製法発明において、上記相違点3-1に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
c また、上記(2)イ(イ)bで検討したとおり、甲2製法発明において、電極(Seed)層及び銅メッキの合計厚さに応じて電流密度を制御することは、甲2に記載も示唆もされていないから、甲2に記載された事項を参酌しても、上記bの判断に変わりはない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明4は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5、6について
本件特許発明5、6は、本件特許発明4の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
a 甲3発明における「ポリイミドフィルム」は、本件特許発明1における「ベースフィルム」に相当する。
b 甲3発明における、「プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に」「蒸着」される「導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)」及び「その上に」「蒸着」される「厚さが500Å~1500Å」の「シード(Seed)層(Cu)」は、それぞれ本件特許発明1における、「下地金属層」及び「ベースフィルムの表面に」「下地金属層を介して成膜された銅薄膜層」に相当する。
c 甲3発明における、「プラズマ処理されたポリイミドフィルム上に物理気相蒸着法(PVD)であるスパッタリング(sputtering)方式を用いて非導電性ポリイミドフィルム表面に導電層の役割をするタイ(Tie)層(Ni-Cr合金)を蒸着し、その上にシード(Seed)層(Cu)を蒸着する段階」の後の「導電層が蒸着されたポリイミドフィルムに添加剤及び補正剤の濃度を一定量に保持したメッキ液を用いてメッキする段階を含み、」「前記メッキは、電流密度を最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを厚さ0.15μm~4.9μmに遂行する」ことと、本件特許発明1における、「銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜」「を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度が、式(1)で求められる最低電流密度以上に設定された電解めっきにより成膜されたものである」こととは、「銅薄膜層の表面に成膜された金属めっき被膜」「を備え、前記銅めっき被膜は、」「電解めっきにより成膜されたものである」ことで共通する。
ここで、甲3発明が「セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム」であることを踏まえると、甲3発明における「電解メッキ」が「電解銅メッキ」であることは、技術常識に照らして明らかである。
d 甲3発明における「セミアディティブ用の軟性銅薄膜積層フィルム」は、本件特許発明1における「銅張積層板」に相当する。
e そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは、
「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に直接または下地金属層を介して成膜された銅薄膜層と、前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備え、前記銅めっき被膜は、電解めっきにより成膜されたものである銅張積層板。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点3-2>
本件特許発明1における「銅めっき被膜」は、「電解めっき初期の電流密度上昇期間における電流密度が、」「dは電解めっき中における前記銅薄膜層と前記銅めっき被膜とを合わせた厚さ[μm]、Jmin(d)は厚さdのときの最低電流密度[A/dm2]である」場合に、「Jmin(d)=-3d2+7d-0.2」で表される「式(1)で求められる最低電流密度以上に設定された電解めっきにより成膜されたものである」のに対し、甲3発明は、「最小0.1A/m2から最大5.1A/m2の間の電流密度を使用して電解メッキを」「遂行する」ものの、上記の発明特定事項を備えるものであるのか不明である点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点3-2について検討すると、上記相違点3-2は、上記イ(ア)fに示した相違点3-1と実質的に同じであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲2に記載された事項を参酌しても、甲3発明において、上記相違点3-2に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記エ(イ)で検討したのと同様の理由により、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 申立理由1-3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-3によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
(4)小括
上記(1)カ、(2)カ、(3)カのとおりであるから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700648