特許異議申立
2021-700347
非常時における設備機器の運転制御システム
- 審判番号
- 2021-700347
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-078388
- 登録番号
- 6772939
- 請求日
- 2021年04月16日
- 審決日
- 2022年07月13日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友金属鉱山株式会社
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】特許業務法人 藤央特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 見目 省二
- 審判官 刈間 宏信
- 審判官 中里 翔平
- 分類
- P1651.121-YAA(G05B) / P1651.537-YAA(G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6772939号発明「非常時における設備機器の運転制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6772939号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6772939号の請求項1、3~5に係る特許を維持する。
特許第6772939号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6772939号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年4月11日に出願され、令和2年10月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。
そして、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 4月16日 :特許異議申立人 特許業務法人藤央特許
事務所(以下「申立人」という。)による
請求項1~5に係る特許に対する
特許異議の申立て
同 年 6月30日付け:取消理由通知書
同 年 8月19日 :特許権者 住友金属鉱山株式会社(以下
「特許権者」という。)による意見書及び
訂正請求書の提出
同 年 9月30日 :申立人による意見書の提出
同 年10月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年12月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 2月24日 :申立人による意見書の提出
同 年 3月10日付け:審尋
同 年 3月30日 :特許権者による回答書の提出
なお、令和3年8月19日にされた訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年12月17日付け訂正請求書によってされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。なお、下線は特許権者が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システムであって、
設備内の電力系統の停電を検知する停電検知部と、
非常用電力系統の電源であるディーゼルエンジン発電機(DEG)と、
緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群と、
前記負荷設備機器群の機器を起動させる制御装置で構成される制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行し、
所定の時間が経過しても所定の機器が起動しない場合に、該機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する
運転制御システム。」
と記載されているのを、
「設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システムであって、
設備内の電力系統の停電を検知する停電検知部と、
非常用電力系統の電源であるディーゼルエンジン発電機(DEG)と、
緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群と、
前記負荷設備機器群の機器を起動させる制御装置で構成される制御部と、
前記負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部と、
を備え、
前記負荷設備機器群を構成する各機器は、前記制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信し、
前記制御部は、
前記負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行し、
所定の時間が経過しても所定の機器からの前記起動完了信号を受信しない場合に、該機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する
運転制御システム。」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記DEGは複数台設けられ、複数系列の非常用電力系統を有する
請求項請求項1又は2に記載の運転制御システム。」
と記載されているのを
「前記DEGは複数台設けられ、複数系列の非常用電力系統を有する
請求項1に記載の運転制御システム。」
に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する。)
本件訂正請求は、訂正事項1~3が一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1は、訂正前の「運転制御システム」に、「前記負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」を付加するとともに、「前記負荷設備機器群を構成する各機器は、前記制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信」することを付加し、訂正前の起動操作を停止する条件である「所定の機器が起動しない場合」を、「所定の機器からの前記起動完了信号を受信しない場合」に具体的に限定したものであるから、訂正事項1の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)に該当する。
イ 起動時間計測部については、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に「前記負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」と記載され、また、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0030】に「起動時間計測部15は、負荷設備機器群13を構成する所定の設備機器に対して制御部14よる運転起動操作が開始されてからその設備機器が起動するまでの時間を計測する。・・・」と記載されている。
ウ また、各機器が起動したときに起動完了信号を制御部に送信することは、本件明細書の【0027】に「・・・各設備機器は、運転起動を開始すると、起動完了信号を制御部14に送信し、運転起動が完了したことを報告する。」と記載されている。
エ さらに、起動操作を停止する条件である、起動完了信号を受信しない場合については、本件明細書の【0030】に「・・・なお、制御部14は、起動時間計測部15による計測時間と、運転起動指令を受信した所定の設備機器(例えば図1中の機器1)からの起動完了信号とに基づいて、その所定の設備機器の起動の有無を確認し、負荷設備機器群13を構成する設備機器の順次の起動を制御する。・・・」と記載され、【0044】及び【0045】に「次に、ステップSP13において、制御部14は、運転指令を出力した設備機器の負荷起動を確認する。そして、制御部14は、任意に設定した時間が経過しても負荷起動が確認されないと(NO)、ステップSP14に移行し、・・・ステップSP14では、任意に設定した時間が経過しても設備機器の負荷起動が確認されなかったことに伴い、自動起動失敗フラグをON状態にするとともに起動失敗メッセージをON状態にし、次の起動順序の設備機器(機器2)の自動起動シーケンスに移行する。」と記載されていることから、「所定の時間が経過しても所定の機器からの起動完了信号を受信しない場合に、機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する」ことが理解できる。
オ 以上から、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
カ 訂正事項1は、上記アに示すとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、その目的は特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)に該当する。
また、訂正事項2に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5及び6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3に「請求項請求項1」と誤記されていたのを「請求項1」に正しく記載し、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたのを、請求項2が削除されたことに合わせて、請求項1のみを引用するように改めるものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書2号(誤記又は誤訳の訂正)及び3号(明瞭でない記載の釈明)に該当する。
また、訂正事項3に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号~3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
1 本件発明1~7
本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1~5をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システムであって、
設備内の電力系統の停電を検知する停電検知部と、
非常用電力系統の電源であるディーゼルエンジン発電機(DEG)と、
緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群と、
前記負荷設備機器群の機器を起動させる制御装置で構成される制御部と、
前記負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部と、
を備え、
前記負荷設備機器群を構成する各機器は、前記制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信し、
前記制御部は、
前記負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行し、
所定の時間が経過しても所定の機器からの前記起動完了信号を受信しない場合に、該機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する
運転制御システム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記DEGは複数台設けられ、複数系列の非常用電力系統を有する
請求項1に記載の運転制御システム。
【請求項4】
前記複数系列の非常用電源系統の上位側で、それぞれを連結可能な送電系統を有する
請求項3に記載の運転制御システム。
【請求項5】
前記複数系列の非常用電源系統の下位側で、それぞれを連結可能な送電系統を有する
請求項3に記載の運転制御システム。」
2 本件発明の課題及び技術的意義
本件明細書を参照すると、本件発明の課題及び技術的意義について、以下の事項を理解できる。
ア 従来の設備機器の運転制御システムは、電力系統が全停電して、緊急的な対応としてディーゼルエンジン発電機(以下「DEG」という。)等の非常発電装置により設備機器を起動させる場合(【0005】)に、設備機器が起動する際の負荷が重複してDEGがトリップ(保護装置により遮断)することを回避するため、設備機器を順次起動させるように、起動順番が決められていた(【0006】)。
イ しかし、手動で起動させる設備機器が多くなると、起動負荷の重複が生じるおそれがあり、震災等の場合には、作業員の混乱により手動での起動操作が遅れるおそれがあった(【0007】)。
ウ 本件発明が解決しようとする課題は、非常用電力系統の起動負荷の重複を防止し、起動させるべき設備機器を遅滞なく効率的に起動させること(【0010】)であり、特に、本件発明1の構成を採用することにより、設備機器を段階的に起動させることで起動負荷の重複を防止できる。また、任意に設定した時間が経過しても所定の設備機器が起動しない場合に、その設備機器の自動起動シーケンスを中断して、次の起動順序の設備機器の起動シーケンスに移行することで、遅滞なく設備機器を起動させることができる(【0049】)。
3 本件発明1の「起動時間計測部」と「所定の時間」の技術的な関係
本件明細書及び図面並びに令和4年3月30日に提出された回答書を参照すると、本件発明1の「起動時間計測部」と「所定の時間」の技術的な関係について、以下の事項を理解できる。
ア 「起動時間計測部」は、所定の設備機器に対して制御部による運転起動操作が開始されてから、その設備機器が起動するまでの時間を計測するためのもの(【0030】)であるが、設備機器が起動するまでの時間は、それぞれの設備機器に応じて異なると解されるから、起動時間計測部は、不定長(あらかじめ定められていない長さ)の時間を計測するものと理解できる。
イ 本件発明1は、任意に設定した時間が経過しても所定の設備機器が起動しない場合に、次の起動順序の設備機器を起動させるもの(上記2のウ)であるが、本件発明1の「所定の時間」は、この「任意に設定した時間」を意味するから、固定長(あらかじめ定められた長さ)の時間であると理解できる。
ウ そして、図2のフローチャート及び図2に関する明細書の記載からみて、本件発明1の「起動時間計測部」によって「所定の時間」が経過したか否かを判断できると理解できる。
すなわち、起動時間計測部は、図2のSP4においてタイマをスタートさせ(【0036】)、SP5でカウントアップを開始し(【0037】)、SP6ないしSP10を経て、SP12において、制御部が設備機器に運転起動指令を出力し(【0043】)、SP13において、制御部が設備機器の起動の成否を確認する(【0044】)。
そして、SP4からSP13まで、起動時間計測部のタイマのカウントアップは継続されるから、SP13において、設備機器の起動完了信号を受信するよりも前に、所定の時間が経過すれば、起動時間計測部は、所定の時間が経過したことを判断できると理解できる。また、SP13において、所定の時間が経過するよりも前に、設備機器の起動完了信号を受信すれば、起動時間計測部は、その設備機器が起動するまでの時間を計測できることを理解できる。
エ 以上から、図2のSP13において、設備機器の起動完了信号を受信するよりも前に、所定の時間が経過することを前提として、不定長の時間を計測する「起動時間計測部」によって、固定長の「所定の時間」が経過したか否かを判断できる、という技術的な関係を理解できる。
第4 取消理由についての当審の判断
1 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和3年10月20日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
理由A(特許法29条2項(進歩性))について
(1)本件訂正請求に係る訂正前の請求項1に係る発明は、引用発明(甲第2号証記載の発明)、周知技術1(甲第3号証及び甲第4号証)及び周知技術2(甲第11号証及び甲第13号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正請求に係る訂正前の請求項2に係る発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3(甲第13号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正請求に係る訂正前の請求項3~5に係る発明は、引用発明、甲第5号証記載の技術的事項、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 取消理由(決定の予告)についての判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、上記第3の1に示したとおりのものである。
ア 取消理由(決定の予告)で引用した文献
甲第 2号証:特開平2-193540号公報
甲第 3号証:特開2004-187424号公報
甲第 4号証:国際公開第2004/023625号
甲第 5号証:特開2001-28848号公報
甲第11号証:特開2007-318819号公報
甲第13号証:特許第4927975号公報
(以下、各甲号証を「甲2」などという。)
イ 甲2の記載及び甲2発明
(ア)甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている(なお、下線は理解を容易にするために当審で付したものである。)。
a 特許請求の範囲
「停電時における非常電源設備からの負荷への電源供給の容量等の値を、非常電源設備から順次起動回路へ送るよう構成し、使用量により、負荷の正常、異常を判断し、再起動時間のタイミングを決定するよう構成した順次駆動装置。」
b 1ページ左欄15行~右欄6行
「従来、防災動力の順次駆動回路は、停電が発生すると、一度運転していた防災動力も停止してしまう。非常電源が起動すると、防災動力に対して、突入電流による非常電源の過負荷運転によるトラブルを防止するため、防災動力に対して順次起動をおこなっていたが、この順次起動は、ある特定の時間差を設けて、1台(程度)づつ起動させているだけであったため、再起動時において特定機器にトラブルが発生すると、いくら時間差を設けていても、非常電源が過負荷運転となってしまい、全ての防災動力が動作できなくなる可能性があった。」
c 1ページ右欄最下行~2ページ左欄5行
「以下実施例の図面に従い説明する。1は順次起動回路、2は非常電源設備、A1~Anはそれぞれ防災動力、l、lは非常電源設備2から防塞動力(当審注:「防災動力」の誤記と認める。)A1~Anへの電源線である。
今、停電時においては、停電信号が順次起動回路1と非常電源設備2に送らる(当審注:「送られる」の誤記と認める。)。」
d 2ページ左欄5~7行
「この後、順次起動回路1から例えば防災動力A1に起動信号が送られ、防災動力A1は起動する。」
e 2ページ左欄7~14行
「その際の電源は、非常電源設備2から送られる。この時、非常電源設備2は、現在の負荷における電流消費状態、または電圧変動状態等の負荷容量を検出モニターしている。そしてこのデータは順次起動回路1へ送られる。順次起動回路1はこのデータを監視しながら、起動信号のタイミングを変更するのである。」
f 2ページ左欄15~19行
「例えば、防災動力Aを一台づつ起動している場合、防災動力Anが故障したら、必要時間以上、電源は供給され続けるので、この防災動力Anへの停止信号を出し、次の防災動力Aへ起動信号を出すことになる。」
g 図面
[図:0001389371000001.jpg]
(イ)甲2記載の技術的事項
上記(ア)の記載事項から、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 順次駆動装置(上記(ア)のa)は、防災動力の電力系統が停電した場合(上記(ア)のc)に、非常電源設備2の電源により(上記(ア)のe)防災動力Anを順次起動させる(上記(ア)のd)こと。
b 順次駆動装置は、順次起動回路1と非常電源設備2に停電信号の送信をしている(上記(ア)のc及びg)ことから、防災動力には通常時の電力系統が存在し、当該通常時の電力系統の停電信号の送信の要否を判断するために、防災動力の通常時の電力系統の停電を検知する停電検知部を備えているといえること。
c 防災動力A1~Anを停電時の対応に起動させる(上記(ア)のb及びc)こと。
d 順次起動回路1が防災動力A1~Anを1台づつ起動させる(上記(ア)のd~f)こと。
e 順次起動とは、防災動力を1台づつ起動させることを意味する(上記(ア)のb)から、順次起動回路1は、防災動力A1~Anにおいて起動させる順番を予め決めているということができ、その順番に従ってそれぞれの防災動力に対して起動信号を送る(上記(ア)のe及びf)こと。
(ウ)甲2発明
したがって、上記(ア)の記載事項及び(イ)の技術的事項からみて、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「防災動力の通常時の電力系統が停電した場合に、非常電源設備2の電源により防災動力Anを順次起動させる順次駆動装置であって、
防災動力の通常時の電力系統の停電を検知する停電検知部と、
非常電源設備2と、
停電時の対応に起動させる防災動力A1~Anと、
前記防災動力A1~Anを1台づつ起動させる順次起動回路1と、
を備え、
前記順次起動回路1は、
前記防災動力A1~Anにおいて起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの防災動力に対する起動信号を出し、
防災動力Anが故障した場合、該防災動力Anへの停止信号を出し、次の順番の防災動力Aに対する起動信号を出す順次駆動装置。」
(以下、「甲2発明」という。)
ウ 本件発明1と甲2発明との対比
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比すると、以下のとおりである。
a 甲2発明の「防災動力の通常時の電力系統」は、本件発明1の「設備内の電力系統」に相当し、以下同様に、「停電」は、「全停電」に、「非常電源設備2の電源」は、「非常用電力系統」に、「防災動力An」は、「所定の設備機器」に、「順次起動させる」は、「自動起動させる」に、「順次駆動装置」は、「運転制御システム」に相当する。
b 甲2発明の「非常電源設備2」と、本件発明1の「非常用電力系統の電源であるディーゼルエンジン発電機」は、いずれも「非常用電力系統の電源」である点で共通する。
c 甲2発明の「停電時」は、本件発明1の「緊急時」に相当し、同様に、「停電時の対応に起動させる防災動力A1~An」は、「緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群」に相当する。
d 甲2発明の「防災動力A1~Anを1台づつ起動させる」ことは、本件発明1の「負荷設備機器群の機器を起動させる」ことに相当し、同様に、「順次起動回路1」は、「制御装置で構成される制御部」に相当する。
e 甲2発明の「防災動力A1~Anにおいて起動させる順番を予め決めて」おくことは、本件発明1の「負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めて」おくことに相当し、同様に、「その順番に従ってそれぞれの防災動力に対する起動信号を出」すことは、「その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行」することに相当する。
f 本件発明1において、所定の時間が経過しても所定の機器から起動完了信号を受信しない場合には、当該機器は起動していないことが明らかであり、また、甲2発明において、防災動力Anが故障すると、防災動力Anは起動しないことが明らかであるから、甲2発明の「防災動力Anが故障した場合」と、本件発明1の「所定の時間が経過しても所定の機器からの起動完了信号を受信しない場合」は、いずれも「所定の機器が起動しない場合」である点で共通する。
また、甲2発明において「該防災動力Anへの停止信号を出」すことは、本件発明1において「該機器への起動操作を停止」することに相当し、同様に、「次の順番の防災動力Aに対する起動信号を出す」ことは、「次の順番の機器に対する起動操作を実行する」ことに相当する。
(イ)以上のことから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システムであって、
設備内の電力系統の停電を検知する停電検知部と、
非常用電力系統の電源と、
緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群と、
前記負荷設備機器群の機器を起動させる制御装置で構成される制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行し、
所定の機器が起動しない場合に、該機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する
運転制御システム。」
【相違点1】
本件発明1では、非常用電力系統の電源が「ディーゼルエンジン発電機」であるのに対し、甲2発明では、非常用電力系統の電源が具体的にどのようなものであるか明らかでない点。
【相違点2】
本件発明1は、「負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」を備え、「負荷設備機器群を構成する各機器」が「制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信」し、「所定の時間が経過しても所定の機器から起動完了信号を受信しない場合」に、当該機器が起動していないと判断するのに対して、甲2発明では、そのような構成を有していない点。
エ 相違点2の判断
(ア)事案に鑑みて、まず相違点2について検討すると、本件発明1の負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する「起動時間計測部」に相当する構成は、以下に説示するように、取消理由(決定の予告)で引用した甲3~甲5、甲11及び甲13のいずれにも示されていないし、甲2発明に本件発明1のような「起動時間計測部」を適用する動機があるとはいえない。
(イ)すなわち、取消理由(決定の予告)では、本件訂正請求に係る訂正前の請求項1に係る発明と甲2発明との相違点2について、当審は、「機器が制御部によって起動したとき、起動完了信号を制御部に送信し、所定の時間が経過しても所定の機器から起動信号を受信しない場合に、当該機器が起動していないとするものは周知技術」であると説示し、周知技術の例として甲11及び甲13を提示したが、甲11には「所定の時間」が経過したかどうかを判断するための具体的手段は示されていない。また、甲13の【0015】の「起動完了信号をあらかじめ設定した時間内に受信しない場合」という記載からみて、甲13において「所定の時間」が経過したかどうかを判断するための具体的手段は、「あらかじめ設定した時間」、すなわち固定長の時間を専ら計測する手段であると解するのが相当である。
これに対して、本件発明1の起動時間計測部は、不定長の時間を計測するものであると解される(上記第3の3)から、甲13に本件発明1の起動時間計測部に相当する構成が示されているとはいえない。
(ウ)また、甲2には「防災動力Anが故障したら、必要時間以上、電源は供給され続けるので、この防災動力Anへの停止信号を出」すことが記載されている(上記2(1)イ(ア)f)ところ、当該記載の「必要時間」は、甲13の「あらかじめ設定した時間」と同様に、固定長の時間と解するのが相当である。そして、固定長の時間が経過したかどうかを判断する手段として、固定長の時間を専ら計測する手段を採用することが自然であり、あえて不定長の時間を計測する手段を採用するとはいえない。また、甲2において防災動力が起動するまでの時間を計測する必要性があるとはいえないから、甲2発明に本件発明1のような起動時間計測部を適用する動機があるとはいえない。
(エ)申立人は、令和4年2月24日に提出した意見書において、起動時間計測部に相当する構成が容易想到であることについて、概略、以下の点を主張している。
(主張1)甲2において、負荷容量をモニターして起動を確認する構成に換えて、或いは、これに加えて、起動時間計測部を採用することは容易想到である。(上記意見書の2ページ3~9行)
(主張2)起動時間計測部に係る構成は甲6~甲9に示すように周知技術である。(上記意見書の5ページ下から13~10行)
(主張3)甲2の記載から、防災動力の故障の有無を判定するにあたって、一定時間様子を見る必要があることを理解でき、そのような時間を計測する仕組みが必要になる。そして、そのような仕組みは、起動時間を送信してからの時間を計測する必要性だけでなく、順次起動タイミングより早く防災動力Anが動作完了したことを知るために、起動が完了したタイミングまでの時間を計測する必要性があることを理解でき、それらの必要性を満たす仕組みは、本件発明1の起動時間計測部に該当するものである。(上記意見書の5ページ下から9行~6ページ7行)
(オ)しかし、申立人の上記(エ)の主張は、以下に説示するとおり、いずれも採用できない。
(主張2)について検討すると、甲6~甲9には、いずれも固定長の時間を計測する手段が示されているにすぎないから、甲6~甲9により、起動時間計測部が周知技術である旨の主張は採用できない。
(主張1)及び(主張3)を検討すると、甲2には、順次起動タイミングより早く防災動力Anが動作完了したことを知ることにより、予め定めたタイミングより早く、次の防災動力への起動信号を送出できることが開示されてはいるが、そのために必要なのは、「動作完了したこと」であり、「動作完了するまでの時間」を必要とするとまではいえない。
したがって、甲2の記載を根拠として、甲2発明に起動時間計測部を適用する動機があるとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(カ)したがって、相違点2は、甲2発明、甲3~甲5、甲11及び甲13に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
オ 本件発明1についてのむすび
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲3~甲5、甲11及び甲13に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明3~5について
本件発明3~5は、上記第3の1に示したとおりのものであるところ、いずれも本件発明1を直接、又は間接に引用することにより、本件発明1の発明特定事項を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明、甲3~甲5、甲11及び甲13に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)取消理由(決定の予告)についての判断のむすび
本件発明1及び3~5は、甲2発明、甲3~甲5、甲11及び甲13に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、取消理由(決定の予告)で通知した理由により、本件発明1及び3~5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 特許異議申立理由の概要及び申立人が提出した証拠
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要、及び申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
(1)甲1に基づく特許法29条2項(進歩性)の理由
本件訂正請求に係る訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3~甲5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるから、その特許は取り消されるべきである。
(2)特許法36条6項2号(明確性)の理由
本件訂正請求に係る訂正前の請求項1~5の「所定時間が経過しても所定の機器が起動しない場合」という記載について、どのように判断するのか当業者が明確に理解できないから、本件訂正請求に係る訂正前の請求項1~5の記載は明確であるとはいえず、その特許は取り消されるべきである。
(3)取消理由通知(決定の予告)において引用しなかった証拠
甲 1:特開昭57-27880号公報
甲 6:実願昭55-6986号(実開昭56-109226号)の
マイクロフィルム
甲 7:特開2001-16803号公報
甲 8:特開2009-159731号公報
甲 9:特開2015-231290号公報
甲10:特開2002-304237号公報
甲12:特開昭61-213903号公報
2 甲1に基づく特許法29条2項(進歩性)の理由の検討
(1)甲1発明
ア 甲1には、エレベーターの自動救出帰着運転装置を改良することが示されており、従来の装置は、停電時に自家用発電で1台程度のエレベーターを順次起動し、待避階へ帰着させていたが、起動したエレベーターが待避階へ帰着完了すると、次のエレベーターの起動指令リレーがオンしてエレベーターが起動するように構成されていたため、エレベーターが故障して帰着完了しないと、それ以降のエレベーターに運転指令が与えられないという問題があった。(1ページ左欄下から3行~2ページ左上欄下から4行)
イ 甲1には、上記の問題に対して、自家用発電が確立した時点より各エレベーターごとに他のエレベーターの帰着完了に無関係に時系列的に救出帰着運転指令を与える構成とすること(2ページ右上欄4~7行)が示されている。
ウ 上記ア、イ及び特に第3図の実施例に係る記載からみて、甲1には以下の発明が記載されているということができる。
「停電時に自家用発電でエレベーターを自動救出帰着運転させる装置であって、
自家用電源により起動する複数のエレベーターと、
自家用電源確立時に同時に閉路する接点(M1~M3)と、
接点(M1~M3)が閉路するとそれぞれカウントを開始し、所定時間後に常開接点(TA1a~TA3a)を閉路するタイマー(TA1~TA3)と、
常開接点(TA1a~TA3a)が閉路するとそれぞれカウントを開始し、所定時間後に常閉接点(TB1b~TB3b)を開路するタイマー(TB1~TB3)とを備え、
タイマー(TA1~TA3)により常開接点(TA1a~TA3a)が閉路すると常閉接点(TB1b~TB3b)を介してリレー(R1~R3)がオンしてエレベーターに起動指令を与え、タイマー(TB1~TB3)により常閉接点(TB1b~TB3b)が開路するとリレー(R1~R3)がオフしてエレベーターを停止させるエレベーターの自動救出帰着運転装置。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
甲1発明の「停電時に自家用発電でエレベーターを自動救出帰着運転させる装置」は、本件発明1の「設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システム」に相当し、同様に、「自家用電源により起動する複数のエレベーター」が「緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「設備内の電力系統が全停電した場合に、非常用電力系統により所定の設備機器を自動起動させる運転制御システムであって、
緊急時の対応に起動させる複数の機器からなる負荷設備機器群
を備えた
運転制御システム。」
【相違点3】
本件発明1は、「設備内の電力系統の停電を検知する停電検知部」を備えているのに対して、甲1発明は、そのような検知部を備えているか不明な点。
【相違点4】
本件発明1は、「非常用電力系統の電源であるディーゼルエンジン発電機(DEG)」を備えているのに対して、甲1発明は、そのような発電機を備えているか不明な点。
【相違点5】
本件発明1は、「前記負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」を備えているのに対して、甲1発明はそのような起動時間計測部を備えていない点。
【相違点6】
本件発明1は、「前記負荷設備機器群を構成する各機器は、前記制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信」するのに対して、甲1発明のエレベーターは、起動完了信号を送信しない点。
【相違点7】
本件発明1は、「前記負荷設備機器群の機器を起動させる制御装置で構成される制御部」を備え、「前記制御部は、前記負荷設備機器群を構成する前記機器において起動させる順番を予め決めておき、その順番に従ってそれぞれの機器に対する起動操作を実行し、所定の時間が経過しても所定の機器からの前記起動完了信号を受信しない場合に、該機器への起動操作を停止し、次の順番の機器に対する起動操作を実行する」ものであるのに対して、甲1発明は、「自家用電源確立時に同時に閉路する接点(M1~M3)と、接点(M1~M3)が閉路するとそれぞれカウントを開始し、所定時間後に常開接点(TA1a~TA3a)を閉路するタイマー(TA1~TA3)と、常開接点(TA1a~TA3a)が閉路するとそれぞれカウントを開始し、所定時間後に常閉接点(TB1b~TB3b)を開路するタイマー(TB1~TB3)」を備え、「タイマー(TA1~TA3)により常開接点(TA1a~TA3a)が閉路すると常閉接点(TB1b~TB3b)を介してリレー(R1~R3)がオンしてエレベーターに起動指令を与え、タイマー(TB1~TB3)により常閉接点(TB1b~TB3b)が開路するとリレー(R1~R3)がオフしてエレベーターを停止させる」ものである点。
イ 相違点の判断
(ア)相違点5について
事案に鑑みて、まず相違点5について検討すると、本件発明1の「負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」に相当する構成は、甲2~甲13のいずれにも示されていない。
また、本件発明1の「負荷設備機器群を構成する所定の機器が起動するまでの時間を計測する起動時間計測部」は、所定の設備機器に対して制御部による運転起動操作が開始されてから、その設備機器が起動するまでの時間を計測するためのものであるが、甲1発明において、エレベーターが起動するまでの時間を計測する必要性が全くないから、甲1発明に起動時間計測部を適用する動機があるとはいえない。
したがって、相違点5は、甲1発明、甲2~甲13に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
(イ)相違点6について
甲1発明は、従来のエレベーターの自動救出帰着運転装置は、エレベーターを順次起動させるにあたり、起動したエレベーターが待避階へ帰着完了すると、次のエレベーターの起動指令リレーがオンしてエレベーターが起動するように構成されていたため、エレベーターが故障して帰着完了しないと、それ以降のエレベーターに運転指令が与えられないという問題に対して、他のエレベーターの帰着完了に無関係に時系列的に救出帰着運転指令を与える構成とすることで、上記の問題を解決しようとするものである(上記(1)ア及びイ)。
甲1発明は、他のエレベーターの帰着完了に無関係に時系列的に救出帰着運転指令を与える点に特徴があるというほかないから、甲1発明のエレベーターが起動完了信号を送信するように改変を試みることは、甲1発明の特徴を毀損することになり、阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、相違点6は、甲1発明、甲2~甲13に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、相違点3、4及び7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲13に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3~5について
本件発明3~5は、いずれも本件発明1を直接、又は間接に引用することにより、本件発明1の発明特定事項を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲13に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)甲1に基づく特許法29条2項(進歩性)の理由のむすび
以上のとおりであるから、甲1に基づく特許法29条2項(進歩性)の理由によって、本件発明1及び3~5に係る特許を取り消すことはできない。
3 特許法36条6項2号(明確性)の理由の検討
本件発明1は、「前記負荷設備機器群を構成する各機器は、前記制御部によって起動したとき、起動完了信号を該制御部に送信し、」という事項を特定することで、制御部が、所定の機器からの起動完了信号を受信しない場合に、当該機器が起動しないと判断することを明確に理解できる。
したがって、本件発明1の記載は明確であり、本件発明1を直接、又は間接に引用する本件発明3~5の記載も明確であるから、特許法36条6項2号(明確性)の理由によって、本件発明1及び3~5に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1及び3~5に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1及び3~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。 これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700347