審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2017-701075

組織染色方法および生体物質検出方法

審判番号
2017-701075
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-058870
登録番号
特許第6128153号(P6128153)
請求日
2017年11月15日
審決日
2018年07月23日
公報発行日
2018年10月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】コニカミノルタ株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】金山 愼一
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 渡戸 正義
  • 審判官 福島 浩司
分類
P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N) / P1651.55 -YAA(G01N) / P1651.851-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の8第1項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6128153号発明「組織染色方法および生体物質検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6128153号の明細書及び特許請求の範囲を、平成30年5月24日付けの手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、〔4、6〕について訂正することを認める。 特許第6128153号の請求項1ないし2、4ないし6に係る特許を維持する。 特許第6128153号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6128153号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)3月15日(優先権主張 平成22年8月31日2件、平成22年8月30日)を国際出願日とする特願2012-531709号の一部を平成27年3月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1ないし6に係る特許について、同年11月15日に特許異議申立人 金山 愼一 (以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、平成30年1月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、訂正請求書について同年4月20日付けで手続補正が指令され、その指定期間内である同年5月24日に手続補正書が提出され、本件訂正請求に対して申立人から同年6月27日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成30年5月24日付け手続補正書により補正された本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の具体的内容は、以下のとおりである。 (1)請求項1ないし3を一群の請求項とする訂正 ア 請求項1に係る訂正 (訂正事項1-1) 特許請求の範囲の請求項1に、「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法」とあるのを、「生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法」に訂正する(下線は訂正箇所を表す。訂正事項において以下同様。)。 (訂正事項1-2) 特許請求の範囲の請求項1に、「前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり」とあるのを、「前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm~800nmであり」に訂正する。 (訂正事項1-3) 特許請求の範囲の請求項1に、「、 前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法。」とあるのを、「、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、 目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法。」に訂正する。 なお、請求項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2も同様に訂正される。 イ 請求項2に係る訂正 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項2に、「ナノ粒子内部」とあるのを、「前記樹脂粒子内部」に訂正する。 ウ 請求項3に係る訂正 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 明細書に係る訂正 (訂正事項4) 明細書の段落【0011】の記載、 「 上記課題を解決するために、 本発明の第1の態様によれば、 蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法において、前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、 前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法が提供される。」を、 「 上記課題を解決するために、 本発明の第1の態様によれば、 生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、 前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm~800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、 目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法が提供される。」に訂正する。 (2)請求項4及び6を一群の請求項とする訂正 ア 請求項4に係る訂正 (訂正事項5-1) 特許請求の範囲の請求項4に、「前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」とあるのを、「前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」に訂正する。 (訂正事項5-2) 特許請求の範囲の請求項4に、「前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」とあるのを、「前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」に訂正する。 (訂正事項5-3) 特許請求の範囲の請求項4において、「前記第1の蛍光物質及び前記第2の蛍光物質が、有機蛍光色素である」との記載の前に、「前記第1及び第2の樹脂粒子の平均粒子径がそれぞれ30nm~800nmであり、」との記載を挿入する。 なお、請求項4の訂正に伴い、請求項4を引用する請求項6も同様に訂正される。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1に係る訂正について ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項1-1について 訂正事項1-1は、「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法」が、「組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項1-2について 本件特許についての出願の願書に添付した明細書の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕 本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」との記載によれば、訂正前の記載は、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」、すなわち、その大きさがナノオーダーであることを特定しようとしたものであると認められるところ、訂正事項1-2は、その点を明瞭にするととともに、「ナノ」を「平均粒子径が30nm~800nmであ」ると減縮したものである。 よって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項1-3について 訂正事項1-3は、「組織染色方法」が、「目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)訂正事項1-1について 訂正事項1-1は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書の「【0054】 [手順3:蛍光物質内包粒子を用いた組織染色] 手順2で作製した抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。染色切片は、コスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理した後、組織アレイスライドを浸漬する液体をキシレン、エタノール、水の順に置換して洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドは、PBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。 【0055】 ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を組織切片と3時間反応させた。抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子と反応させた後、組織アレイスライドをPBS緩衝液で洗浄し、Merck Chemicals社製Aquatexを用いて封入した。 【0056】 [手順4:蛍光物質内包粒子を用いて染色した組織の輝点計測] 手順3で染色した組織切片についてオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、ジーオングストローム社製の輝点計測ソフトウェア、G-countを用いて輝点の計測を行った。 Cy5の観察は、励起フィルター(640/30nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(660nm)、蛍光フィルター(690/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。 テトラメチルローダミンの観察は、励起フィルター(550/25nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(570nm)、蛍光フィルター(605/70nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。 FITCの観察は、励起フィルター(470/40nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(495nm)、蛍光フィルター(525/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。 組織アレイスライド中の予めDAB染色で染色濃度が異なることが予測された8スポットについて、各30細胞の輝点の数を計測し、1細胞当たりの輝点の数(平均値)を求めた。また、同様に、8スポットについて、各30細胞の発光輝度を計測し、1細胞当たりの発光輝度(平均値)を求めた。」等の記載に基づくものであるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項1-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項1-2について 訂正事項1-2は、特許明細書等の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕 本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。 ナノ粒子を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカ等を挙げることができる。」、段落【0032】の「本発明で用いられる蛍光物質を複数集積した粒子の平均粒径は特に限定されないが、30~800nm程度のものを用いることができる。平均粒径が30nm未満の場合には、集積粒子に含まれる蛍光物質が少なく、目的とする生体物質の定量評価が困難となり、800nmを超える場合には、病理組織での生体物質との結合が困難となるためである。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項1-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項1-3について 訂正事項1-3は、特許明細書等の段落【0044】の「次いで、PBSを入れた容器に、染色後の切片を浸漬させ、未反応蛍光物質集積ナノ粒子の除去を行う。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項1-3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイの検討を踏まえれば、訂正事項1-1ないし1-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)請求項2に係る訂正について 訂正事項2は、蛍光物質が内部に分散された粒子が生体物質認識部位が結合された「樹脂粒子」そのものであることを明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1-2と同様に特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 また、請求項2は、請求項1を引用していることから実質的に請求項1に係る訂正と同様に訂正されるが、当該訂正は、上記(1)で検討したとおり訂正の要件を満たすものである。 (3)請求項3に係る訂正について 訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)明細書に係る訂正について 訂正事項4は、訂正前の段落【0011】の記載が訂正前の請求項1の記載に対応したものであったのを、訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1-1ないし1-3と同様に特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)請求項4に係る訂正について ア 訂正の目的の適否 特許明細書等の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕 本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」との記載によれば、訂正前の記載は、「第1の樹脂粒子」及び「第2の樹脂粒子」がいずれも「ナノ粒子」、すなわち、その大きさがナノオーダーであることを特定しようとしたものであると認められるところ、訂正事項5-1ないし5-3は、その点を明瞭にするととともに、「ナノ」を第1及び第2の樹脂粒子について「平均粒子径がそれぞれ30nm~800nmであ」ると減縮したものである。 よって、訂正事項5-1ないし5-3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項5-1及び5-2は、特許明細書等の段落【0026】の記載に基づくものであり、訂正事項5-3は、特許明細書等の段落【0032】の記載に基づくものであるから、いずれも特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項5-1ないし5-3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイの検討を踏まえれば、訂正事項5-1ないし5-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (6)請求項6に係る訂正について 請求項6は、請求項4を引用していることから実質的に請求項4に係る訂正と同様に訂正されるが、当該訂正は、上記(5)で検討したとおり訂正の要件を満たすものである。 3 一群の請求項について (1)訂正前の請求項1ないし請求項3は、請求項2及び請求項3が上記訂正事項1-1ないし1-3の対象となる請求項1の記載をそれぞれ直接又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1-1ないし訂正事項3は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。 (2)訂正前の請求項4及び請求項6は、請求項6が上記訂正事項5-1ないし5-3の対象となる請求項4の記載を直接引用しているものであるから、一群の請求項であり、上記訂正事項5-1ないし5-3は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。 (3)訂正事項4は、願書に添付した明細書についての訂正であって、段落【0011】の記載を訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、請求項1を含む一群の請求項である、請求項1ないし請求項3からなる一群の請求項について行うものと認められる。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、6〕について訂正を認める。 訂正後の請求項3に係る訂正事項3は、請求項3を削除するものであって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項3について訂正が認められるときは、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、6〕について請求項〔1、2〕、3、〔4、6〕を訂正単位として訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件の請求項1ないし6に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)は、平成30年4月2日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、 前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm~800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、 目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法。 【請求項2】 請求項1に記載の組織染色方法において、 前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子は、前記蛍光物質を複数内包した樹脂粒子である組織染色方法。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、 染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、 染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、 前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結 合し、かつ、第1の蛍光物質を複数集積した第1の樹脂粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する第2の蛍光物質を複数集積した第2の樹脂粒子とを、用い、 前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、 前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、 前記第1及び第2の樹脂粒子の平均粒子径がそれぞれ30nm~800nmであり、前記第1の蛍光物質及び前記第2の蛍光物質が、有機蛍光色素であることを特徴とする生体物質検出方法。 【請求項5】 病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、 染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、 染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、 前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結合し、かつ、有機蛍光色素である第1の蛍光物質を複数集積した第1の粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する有機蛍光色素である第2の蛍光物質を複数集積した第2の粒子とを、用い、 前記生体物質を検出する工程では、 前記第1の粒子及び前記第2の粒子における1粒子あたりの輝度と、 輝点数の計測に基づいて求められる輝度分布のピーク値と、から、 前記第1の粒子及び前記第2の粒子の数を求めることを特徴とする生体物質検出方法。 【請求項6】 請求項4または5に記載の生体物質検出方法において、 前記第1の生体物質認識部位が抗ヒトER抗体であり、 前記第2の生体物質認識部位が抗HER2抗体であることを特徴とする生体物質検出方法。 第4 取消理由についての判断 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して平成30年1月29日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2007/097318号(以下「甲1」という。) (1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号に係る取消理由) 請求項1ないし3に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。よって、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(特許法第29条第2項に係る取消理由) 請求項1ないし3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(特許法第36条第6項第2号に係る取消理由) 請求項1ないし6の記載において、「樹脂粒子」及び「ナノ粒子」の記載があるが、両者の関係が不明瞭であり、発明を明確に把握することができない。 すなわち、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」であることを意味するのか、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」を備えている(例えば、「樹脂粒子」に「ナノ粒子」が結合している、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」を内包している、など。)ことを意味するのか、あるいは、その他の関係を意味するのかが不明瞭である。 よって、本件発明1ないし6は明確でない。 したがって、本件の請求項1ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 取消理由で採用した甲号証の記載事項 (1)本件特許に係る出願の優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。 (甲1-ア)「[0001] 本発明は、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療のための診断用マーカーに関するものである。」 (甲1-イ)「[0003] ・・・癌細胞或いは癌組織を特異的に染色する診断用マーカーが試みられており、例えば特許文献1に記載されている。 しかし、この診断用マーカーは、癌細胞や癌組織に特異的に結合する抗体を蛍光化合物と結合(あるいは蛍光性官能基を抗体に導入)したものであり、確かに癌組織あるいはその周辺の粘膜組織を染色することができるが、癌組織以外の正常組織上にもある程度結合してしまい、また抗体当たりの蛍光化合物量が少なく、従って癌組織と正常組織のコントラストが低く診断精度の高いものではなかった。」 (甲1-ウ)「[0005] 従って、本発明の目的は、癌組織と正常組織のコントラストを高くすることが可能で、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療に有益な診断用マーカー、及びその製造方法を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0006] 本発明は、粒子径1nm~100μmの粒子であって、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ上記粒子中に識別性物質を有する、当該粒子を含有することを特徴とする、診断用マーカーを提供することにより、上記目的を達成したものである。」 (甲1-エ)「[0011] まず、本発明の診断用マーカーを好ましい実施態様について説明する。 本発明に用いられる粒子は、粒子径1nm~100μmの粒子であって、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ該粒子中に識別性物質を有するものであれば特に限定されるものではなく、ベースとなる粒子としても特に限定されるものではなく、シリカ等の無機粒子でも、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の有機ポリマーでもよいが、好ましくは水中や生理食塩水中での分散安定性の観点からは有機ポリマーが適している。」 (甲1-オ)「[0012] 上記粒子は、その粒子径が1nm~100μmの粒子であることが必要であり、好ましくは10nm~100μm、より好ましくは50nm~100μm、最も好ましくは100nm~10μmの粒子であることがよい。粒子径が小さすぎても大きすぎても癌組織と正常組織のコントラストを高くすることができない。」 (甲1-カ)「[0013] 本発明の診断用マーカーに含有される粒子は、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位を有するものである。 この消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位としては、特に限定されるものではないが、好ましくは抗体及び/又はレクチンを例示することができ、好ましくはレクチンを例示することができる。 [0014] 例えば大腸癌を例にとると、大腸癌が発生した部位には、大腸粘膜細胞の癌化によって、正常な粘膜表面とは異なる糖鎖構造を呈す事が知られている。中でもガラクトシルβ1-3-N-アセチルガラクトサミン残基(以下、TF抗原という場合がある。)が良く知られている。 このTF抗原に対する特異的な結合性の高い物質としてはレクチンが知られており、例えば、Arachis hypogaea(ピーナッツレクチン。以下、PNAと略記する場合がある。)、又はAgaricus bisporus(マッシュルームレクチン。以下、ABAと略記する場合がある。)、又はBauhinia purpurea(以下、BPAと略記する場合がある。)などを例示することができ、これらの物質を粒子の表面に存在させることにより、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位とすることができる。 [0015] TF抗原は大腸癌以外の消化器癌においても発生するので、これらのレクチンは同様に消化器癌全般を対象とする診断用マーカーとする場合に利用することができるが、特に大腸癌には顕著であるので、大腸癌を対象とする診断用マーカーの場合に特にこれらのレクチンは好ましい。 [0016] そのほか、消化器癌においては、他にも細胞の癌化の結果としてN-アセチルノイラミン酸や、N-アセチルガラクトサミンがα2,6結合したもの(シアリルTn)等も存在することから、これらと特異的に結合性の高いレクチンを選択する事も可能である。 また、レクチン以外の、消化器癌細胞認識性分子として、抗体等、例えば市販されているanti-Thomsen Friedenreich Antigen, mouse monoclonal, clone A78-G/A7等を選択することも可能である。」 (甲1-キ)「[0018] また、本発明の診断用マーカーに含有される粒子において、その粒子の表面に有する消化器粘膜に対する結合性の低い部位としては、特に限定されるものではないが、ノニオン性で且つ水和力が高いものがよく、例えば、N-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖やポリエチレングリコール鎖などが、消化器粘膜に対する結合性の低い部位として好ましい。 ・・・ [0047]〔マクロモノマーAの製造〕 N-ビニルアセトアミド50g、2-メルカプトエタノール18.4g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル0.96gをトルエン250mLに加えて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。沈殿物をエタノールに溶解させて、アセトンへ再沈殿させることで生成物24gを回収した。生成物であるN-ビニルアセトアミドポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=14,000/5,000であった。前記式(4)のnに相当する数としては約60であった。 得られたN-ビニルアセトアミドポリマー20gをDMF100mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.26g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド0.34g加えて室温で3時間攪拌した後、4―ビニルベンジルクロライド2.6gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物15gを回収した。生成物であるビニルベンジル末端N-ビニルアセトアミドポリマーを 1H-NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーAとする。 ・・・ [0049]〔マクロモノマーCの製造〕 N-ビニルアセトアミド50g、2-メルカプトエタノール23.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル0.96gをエタノール250mLに加えて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。反応溶液にエタノール50mLを加えて、アセトン中へ再沈殿させることで生成物16.1gを回収した。生成物であるN-ビニルアセトアミドポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=9,500/4,000であった。前記式(4)のnに相当する数としては約50であった。 得られたN-ビニルアセトアミドポリマー20gをDMF100mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.26g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド0.34gを加えて室温で3時間攪拌した後、4―ビニルベンジルクロライド2.6gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物15gを回収した。生成物であるビニルベンジル末端N-ビニルアセトアミドポリマーを 1H-NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーCとする。」 (甲1-ク)「[0025] 本発明の診断用マーカーにおいて、粒子中に有する識別性物質は、特に限定されるものではなく、内視鏡等による観察において、裸眼で認識可能か、或いは装置、例えば分光光度計又は蛍光光度計等を用いて検出できるかの何れかによって、その存在が識別可能なものであれば良いが、好ましくは蛍光発光性物質が良い。 このような蛍光発光性物質としては、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ダンシル類、NBD型色素、フィコビリプロテイン、BODIPY誘導体等を例示することができ、またこれらの蛍光発光性物質を疎水性の高い物質(例えばコレステロールなど)と結合させた誘導体も使用することができる。 これらの中でも感度や用いる光源の観点からフルオレセイン類の蛍光発光性物質及びその誘導体(例えばコレステロールをフルオレセイン類物質と結合させた、ラベル化コレステロールなど)や、発光強度が強く水溶性の低いクマリン類(例えばクマリン6など)が最も好ましい。 [0026] 蛍光発光性物質の上記粒子への導入方法についても特に限定されず、識別に必要な感度を保ち、水性環境に溶出が起こらなければ良い。例えば、粒子の合成を行う過程で合成反応系内に導入することにより粒子を構成する分子間に挟持させても良い。このような蛍光発光性物質として好ましい具体例としては、クマリン6(Coumarin 6, Sigma-Aldrich社製)を例示することができる。 また、粒子を合成した後に蛍光発光性物質を粒子内に吸収させるなどして導入しても良い。このような蛍光発光性物質として好ましい具体例としては、fluorecein-5-carbonyl azide, diacetate(F6218,Molecular Probe社製)を、疎水性の高いコレステロールと結合させたラベル化コレステロール(フルオレセイン化コレステロールとも言う)を例示することができる。このようなラベル化コレステロールはポリマー製の粒子を合成した後に、蛍光発光性物質をその粒子の内部に容易に吸収させて、粒子内に蛍光発光性物質を含有させることができる点からも好ましいものである。」 (甲1-ケ)「[0051]〔実施例1〕 上記で得られたマクロモノマーA1.0g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。 遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は400nm(動的光散乱法にて測定)であった。 得られた微粒子100mgに対して上記で得られたフルオレセイン化コレステロールを5mg加え、これをエタノール5mLに分散させた後に、攪拌しながらイオン交換水を10倍容量加えた。これを遠心分離して微粒子を取り出し、イオン交換水へ再分散を3回繰り返し、これを凍結乾燥することでフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有する微粒子(ラベル化微粒子)を得た。 得られたラベル化微粒子10mgを、ピーナッツレクチン1mgをリン酸緩衝食塩水(商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8537、シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBSと略記する。)1mLに溶解した溶液に加えて攪拌してラベル化微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることでラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを吸着させた。その後、遠心分離とPBSへの再分散を3回繰り返す事で未吸着のピーナッツレクチンを除去した。最後にリン酸緩衝食塩水(Ca及びMg含有)(商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8662、シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBS(Ca+Mg)と略記する。)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー1を得た。 [0052]〔実施例2〕 上記で得られたマクロモノマーA0.75g、上記で得られたマクロモノマーB0.25g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は470nm(動的光散乱法にて測定)であった。 得られた微粒子100mgに対し、実施例1と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。 得られたラベル化微粒子10mgを、0.05M-KH2 PO4 水溶液800μLに分散させた。一方、0.05M-KH2 PO4 水溶液に水溶性カルボジイミド〔1-エチル-3-(3' -ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド〕を1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、これを加えて4℃で30分間震蕩した。これを遠心分離(6000rpm,10分間)で上澄みを除去し、ピーナッツレクチン1mgをPBS1mLに溶解した溶液を加えて攪拌してラベル化微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることでラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させた。その後、遠心分離とPBSへの再分散を3回繰り返す事で未反応のピーナッツレクチンを除去した。最後にPBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー2を得た。 [0053]〔実施例3〕 上記で得られたマクロモノマーA0.50g、上記で得られたマクロモノマーB0.50g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は400nm(動的光散乱法にて測定)であった。 得られた微粒子100mgに対し、実施例2と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。 得られたラベル化微粒子10mgに対し、実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー3を得た。 [0054]〔実施例4〕 マクロモノマーAを0.25g、マクロモノマーBを0.75gに変更した他は、実施例3と同様にして微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は360nm(動的光散乱法にて測定)であった。 得られた微粒子を、実施例3と同様にしてラベル化し、実施例3と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー4を得た。 [0055]〔実施例5〕 実施例4で得られたラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させる際に、ピーナッツレクチンの使用量を0.125mgに変更した他は実施例4と同様にして、ラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー5を得た。 [0056]〔実施例6〕 上記で得られたマクロモノマーB0.5g、上記で得られたマクロモノマーC0.5g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。 遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。 得られた微粒子100mgに対し、実施例2と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。 得られたラベル化微粒子10mgに対し、実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー6を得た。 [0057]〔実施例7〕 上記で得られたマクロモノマーB0.5g、上記で得られたマクロモノマーC0.5g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mg、更にクマリン6(Coumarin 6 Sigma-Aldrich社製)2mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで、クマリン6を内包したラベル微粒子を生成させた。 遠心分離によってこのラベル化微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としてのラベル化微粒子を得た。ラベル化微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。 実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー7を得た。」 (2)甲1に記載された発明 ア (甲1-ア)ないし(甲1-ウ)の記載から、診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色することが読み取れる。 イ (甲1-エ)及び(甲1-キ)の記載から、(甲1-ケ)の実施例1ないし7における微粒子は、消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成されていることが読み取れる。 ウ 上記ア及びイを踏まえると、(甲1-ア)ないし(甲1-エ)から、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり、 フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、 平均粒子径が400nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明1」という。) 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、 フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、 平均粒子径が470nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明2」という。) 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、 フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、 平均粒子径が400nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明3」という。) 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、 フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、 平均粒子径が360nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明4」という。) 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、 フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、 平均粒子径が230nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明5」という。) 「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、 前記微粒子は、 消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、 表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、 クマリン6を識別性物質として内包し、 平均粒子径が230nmである、 消化器における癌組織を染色する方法。」 (以下「甲1発明6」という。) 3 判断 本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、以下、本件訂正発明1、2、4ないし6に係る取消理由についての判断を示す。 (1)取消理由1について ア 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、次のことがいえる。 a 甲1発明1の「ピーナッツレクチン」は、「消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い」ものであるから、本件訂正発明1の「生体物質認識部位」に相当する。 b 甲1発明1の「有機ポリマーで形成され」た「微粒子」は、本件訂正発明1の「樹脂粒子」に相当する。 c 本件訂正発明1の「樹脂粒子」に対する「生体物質認識部位」の「結合」とは、特許明細書等の段落【0035】に「生体物質認識部位と蛍光物質集積ナノ粒子の結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等が挙げられる。」と記載されているものであることに鑑みれば、甲1発明1の「吸着させてあ」ることは、本件訂正発明1の「結合され」ていることに相当する。 d 甲1発明1の「フルオレセイン化コレステロール」は、本件訂正発明1の「有機蛍光色素であ」る「蛍光物質」に相当する。 e 本件訂正発明1の「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子」は、本件特許の明細書の段落【0026】に「本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」と記載されているものであることに鑑みれば、甲1発明1の「内部に識別性物質を有する」「微粒子」であって、「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子」は、本件訂正発明1の「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子」であって、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」に相当する。 f 甲1発明1の「診断用マーカー」は、本件訂正発明1の「染色試薬」に相当する。 g 甲1発明1の「消化器における癌組織」と、本件訂正発明1の「組織切片」とは、「生体組織」である点において共通する。 h 甲1発明1の「消化器における癌組織を染色する方法」は、本件訂正発明1の「組織染色方法」に相当する。 i 甲1発明1の「有機ポリマーで形成され」た「微粒子」の「平均粒子径が400nmである」ことは、本件訂正発明1の「当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm~800nmであ」る条件を満たす。 j 甲1発明1の「特定抗原」は、本件訂正発明1の「目的とする生体物質」に相当する。 k 甲1発明1は、「表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い」「ピーナッツレクチンを吸着させ」、「且つ内部に」「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法」であるから、「特定抗原」と「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子」とを反応させていることは明らかである。 よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の「目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させ」る工程に相当する工程を備えている。 (イ)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、 「 生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて生体組織を染色する組織染色方法において、 前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm~800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、 目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させる、組織染色方法。」 の発明である点において一致し、次の3点において相違する。 (相違点1) 染色する生体組織が、本件訂正発明1においては「組織切片」であるのに対し、甲1発明1においては「消化器における癌組織」である点。 (相違点2) 組織染色方法が、本件訂正発明1においては、「染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う」ものであるのに対し、甲1発明1においては、そのような特定がされていない点。 (相違点3) 目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、本件訂正発明1は、「未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する」のに対し、甲1発明1においては、そのような特定がされていない点。 上記相違点1ないし3は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は甲1発明1と同一ではない。 (ウ)本件訂正発明1と甲1発明2ないし6との対比 甲1発明2は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が470nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。 甲1発明3は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に置き換えたものに相当する。 甲1発明4は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が360nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。 甲1発明5は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が230nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。 甲1発明6は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「フルオレセイン化コレステロール」を「クマリン6」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が470nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。 ここで、「クマリン6」は、有機蛍光色素である。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明2ないし6とは、上記相違点1ないし3と実質的に同じ点において相違する。 よって、本件訂正発明1は甲1発明2ないし6と同一ではない。 (エ)以上のとおり、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1によって本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」について本件訂正発明1を更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明1ないし6と同一ではない。 よって、取消理由1によって本件訂正発明2に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2について ア 本件訂正発明1について 上記相違点1が想到容易であるかについて検討する。 甲1発明1は、消化器における癌組織を染色する方法であるところ、ここでの「消化器」は、生体内に存在している状態の「消化器」を意味するものである。 このことは、(甲1-ア)の「本発明は、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療のための診断用マーカーに関するものである。」、(甲1-ウ)の「従って、本発明の目的は、癌組織と正常組織のコントラストを高くすることが可能で、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療に有益な診断用マーカー、及びその製造方法を提供することにある。」との記載と整合するものであって、甲1発明1は、内視鏡観察時に行うことを前提とするものである。 そうすると、内視鏡観察時に行うことを前提とする甲1発明1において、染色する生体組織を組織切片とする動機付けがあるとはいえない。 したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件訂正発明1は甲1発明2ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、取消理由2によって本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」について本件訂正発明1を更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明1ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、取消理由2によって本件訂正発明2に係る特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由3について 本件訂正により、請求項1及び2における「樹脂粒子」、並びに請求項4における「第1の樹脂粒子」及び「第2の樹脂粒子」が、それぞれナノオーダーの大きさを有する粒子であることが明瞭になった。 また、請求項5は、そもそも「ナノ粒子」という表記を用いておらず、取消理由3は該当しない。 よって、取消理由3によって本件訂正発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 4 特許異議申立人の意見について 申立人は、特許異議申立書の第14頁15~19行において、甲1の実施例に赤血球を用いた診断用マーカーのTF光源への特異的結合性評価試験及び消化器粘膜への結合性評価試験が記載されていることをもって、甲1には実質的に染色試薬を用いて病理「切片」を染色する工程が記載されている旨主張しているが、上記実施例は診断用マーカーを評価するために大腸癌の粘膜表面のモデル表面として赤血球を用いているにすぎず、甲1は内視鏡による体内組織の診断技術を示したものであって、身体から取り出した組織の「切片」を染色対象とするものではないことから、この主張は前提において誤りである。 そして、本件訂正により本件訂正発明1及び2について染色する対象が組織「切片」に訂正されたものの、これについて、申立人は意見書において何ら主張していないことから、申立人は依然として、甲1には病理「切片」を染色することについても記載されていると、前提において誤った解釈をしているものである。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、以下、本件訂正発明1、2、4ないし6に係る特許異議申立理由についての判断を示す。 申立人は、証拠方法として、主たる証拠である甲1に加えて、従たる証拠として下記の甲第2ないし5号証を提出している。 甲第2号証:特表平7-508309号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開2002-228654号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2005-345764号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特表2006-519376号公報(以下「甲5」という。) 1 特許法第29条第1項第3号に係る特許異議申立理由について 申立人は、甲1には、 「 蛍光物質を含む樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法において、 前記蛍光物質を含む樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、 前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法。」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認定し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明である旨主張している。 ここで、甲2は、特許明細書等の段落【0030】でポリスチレンナノ粒子への有機蛍光色素の含有法を例示するために引用された米国特許5326692号に対応する特許出願の公表公報であり、甲1に記載されたポリスチレン粒子が、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子であることを示すために提出されたものである。 しかしながら、甲1発明は染色する組織が「組織切片」であることを特定するものではないから、本件訂正発明1及び2は、甲1発明と同一ではない。 よって、本件訂正発明1及び2は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。 2 特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について (1)請求項1及び2について 申立人は、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 しかしながら、上記「第4 3(2)ア」で甲1発明1について述べたのと同様に、甲1発明は内視鏡観察時に行うことを前提とするものであるから、甲1発明において、染色する組織を組織切片とする動機付けがあるとはいえない。 よって、本件訂正発明1及び2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。 (2)請求項4について 申立人は、本件特許の請求項4に係る発明は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 甲3は、組織マッピング方法及び組織マップ分析装置に関する文献であって、同一の組織試料に対して異なる物質と反応する試薬で染色するごとに蛍光強度測定を行い画像化することが記載されている。 しかしながら、本件訂正発明4は、病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法であって、染色試薬を用いて病理切片を染色する工程を有するものであるところ、甲1発明において、染色する組織を病理切片、すなわち組織切片とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりである。 よって、本件訂正発明4は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。 (3)請求項5について 申立人は、本件特許の請求項5に係る発明は、甲1発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 甲4は、走査型光学装置に関する文献であって、走査光学系により試料上を走査し、蛍光の輝度を検出することが記載されている。 しかしながら、本件訂正発明5は、病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法であって、染色試薬を用いて病理切片を染色する工程を有するものであるところ、甲1発明において、染色する組織を病理切片、すなわち組織切片とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりである。 よって、本件訂正発明5は、甲1発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。 (4)請求項6について 申立人は、本件特許の請求項6に係る発明は、甲1発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 甲5は、免疫組織化学、免疫細胞化学及び分子細胞遺伝学のための標準に関する文献であって、HER2を検出対象として抗HER2抗体を用いて染色すること、及びERを検出対象とすることが記載されている。 しかしながら、本件訂正発明6は、本件訂正発明4又は5を生体物質認識部位に関して減縮したものであるから、本件訂正発明4又は5と同様の理由により、甲1発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない よって、申立人の上記主張は理由がない。 3 特許法第17条の2第3項に係る特許異議申立理由について 申立人は、平成28年4月21日に提出された手続補正書による「樹脂粒子」という用語を追加する補正は、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲においてしたものではないから、本件特許の請求項1ないし4、及び6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に記載する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第1項に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 そこで検討するに、当初明細書等には以下の記載がある。 「 【0026】 〔蛍光物質を複数集積した粒子〕 本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。 ナノ粒子を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカ等を挙げることができる。」 「 【0030】 有機蛍光色素を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への有機蛍光色素の含浸法を用いて作製することができる。」 段落【0026】には、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材は特に限定されるものではないことが記載され、素材の例として樹脂であるポリスチレン及びポリ乳酸が記載されている。 この段落【0026】の記載は、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材として、ポリスチレン及びポリ乳酸以外の樹脂を使用することを想定しているものといえる。 そして、段落【0026】に「蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい」と記載されていることに鑑みれば、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材としてポリスチレン及びポリ乳酸以外の樹脂を使用することが可能であることも明らかである。 また、段落【0030】には、ポリスチレンナノ粒子の場合の製造方法の例が記載されているが、当該記載がナノ粒子を構成する素材をポリスチレンに限定するものとは解されない。 そうすると、有機蛍光色素を複数集積した粒子として樹脂粒子を使用することは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 よって、申立人の上記主張は理由がない。 第6 請求項3に対する特許異議の申立てについて 本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項3についての申立人がした特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。 よって、本件特許の請求項3についての申立人の特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1、2、4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項3に対して申立人がした特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-701075

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決332件(コニカミノルタ株式会社、金山 愼一)
  • 2025-701150異議申立 / 2026-05-19 / 維持消火体
    同じ当事者: 金山 愼一
  • 2025-700741異議申立 / 2026-03-25 / 請求成立(取消)消火シート及びこれを備えた自動消火機能を有する装置
    同じ当事者: 金山 愼一
  • 2025-700198異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容放射線撮影システム、放射線撮影方法及びプログラム
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2024-701002異議申立 / 2025-08-04 / 訂正認容非栄養甘味料の味を改善する組成物及び方法
    同じ当事者: 金山 愼一
  • 2024-700077異議申立 / 2025-07-09 / 訂正認容軟質カビ系チーズ用スターター
    同じ当事者: 金山 愼一
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,065件(113・G01N、121・G01N、537・G01N ほか)
  • 2022-700792異議申立 / 2024-02-19 / 訂正認容AIを用いた病理診断支援方法、及び支援装置
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、537・G01N、851・G01N
  • 2022-700801異議申立 / 2023-11-28 / 訂正認容金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法、および、金属試料中の介在物およ…
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、537・G01N、851・G01N
  • 2022-700199異議申立 / 2023-02-08 / 訂正認容免疫分析方法及び試薬
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、537・G01N、851・G01N
  • 2021-701186異議申立 / 2022-09-07 / 訂正認容分子キャラクタリゼーション方法およびシステム
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、537・G01N、851・G01N
  • 2021-700111異議申立 / 2021-10-27 / 訂正認容水質管理方法、イオン吸着装置、情報処理装置および情報処理システム
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、537・G01N、851・G01N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存