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特許異議申立

2017-701074

薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法

審判番号
2017-701074
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-574679
登録番号
特許第6128722号(P6128722)
請求日
2017年11月15日
審決日
2018年08月20日
公報発行日
2018年11月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社モリモト医薬
  • 【権利者代理人】佐藤 玲太郎
  • 【異議申立人】宮坂 勝之
  • 【異議申立人代理人】志波 邦男
  • 【異議申立人】藤井 ▲隆▼太
  • 【異議申立人代理人】川北 喜十郎
  • 【異議申立人代理人】中村 由樹絵
  • 【異議申立人】キユーピー 株式会社
  • 【異議申立人】株式会社 龍角散
審判長/審判官
  • 審判長 須藤 康洋
  • 審判官 大熊 幸治
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.121-YAA(A61K) / P1651.112-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.853-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6128722号発明「薬剤の服用補助用ゼリーおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6128722号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第6128722号の請求項1~6、8、9に係る特許を維持する。 特許第6128722号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6128722号は、平成29年4月21日付けでその特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、その後、請求項1~9に係る特許に対して、同年11月15日に特許異議申立人 宮坂勝之(以下、「申立人A」という。)から、同年11月15日に特許異議申立人 藤井隆太(以下、「申立人B」という。)から、同年11月16日に特許異議申立人 キユーピー株式会社(以下、「申立人C」という。)から、同年11月16日に特許異議申立人 株式会社龍角散(以下、「申立人D」という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。 平成30年 1月25日付け:取消理由の通知 同年 4月 2日  :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者) 同年 6月15日  :意見書の提出(申立人A) 同年 6月15日  :意見書の提出(申立人D) 同年 6月18日  :意見書の提出(申立人B) 同年 6月18日  :意見書の提出(申立人C) 第2 訂正の可否 1 訂正の内容 平成30年4月2日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1~9は一群の請求項である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、」を、 「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、 その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4の 「前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、…から選択される少なくとも1種の増粘多糖類である」を、 「前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、…から選択される少なくとも1種の増粘多糖類であって、前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6の 「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法」を、 「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、甘味料、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法であって、 前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる製造方法」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8の 「請求項7に記載の」を、 「請求項5に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 発明の詳細な説明の【0032】の「実施例7~15」を、「実施例7~13、参考例14~15」に、【0032】(2か所)、【0034】(2か所)の「実施例14」を、「参考例14」に、【0032】(2か所)、【0034】(2か所)、【0038】、【0039】の「実施例15」を、「参考例15」に、それぞれ訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、本件特許の請求項1に係る薬剤の服用補助用ゼリーの構成成分において、「甘味料」を追加し、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。 「甘味料」を追加することは、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5を更に引用する請求項7の「さらに甘味料を含む請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。」との記載に基づくものであり、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることの限定は、本件発明の実施例1~13の各々において、「ローカストビーンガム」が含まれることに基づくものである。 そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、本件特許の請求項4に係る薬剤の服用補助用ゼリーの構成成分において、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。 そうすると、上記(1)で示したことと同様、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、本件特許の請求項6に係る薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法における当該ゼリーの構成成分において、「甘味料」を追加し、「増粘多糖類」に少なくとも「ローカストビーンガム」が含まれることに限定するものである。 そうすると、上記(1)で示したことと同様、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (4)訂正事項4 この訂正は、請求項の記載を削除する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (5)訂正事項5 この訂正は、訂正事項4により請求項7が削除されたことに伴い、上記訂正前の請求項7が引用していた請求項5を引用する形式とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (6)訂正事項6 この訂正は、訂正事項1~3の訂正に伴い、実施例ではなくなった上記訂正前の「実施例」を「参考例」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第3 本件訂正後の請求項1~6、8、9に係る発明 本件訂正により訂正された訂正請求項1~6、8、9に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6、8、9に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、 その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ、 LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1~3重量%含まれ、 当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、 硬さが、2000~6000N/m2であり、 付着性が、200~500J/m3であり、 凝集性が、0.2~0.6であり、 当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項2】 前記LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1.2~2.2重量%含まれ、 当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、 硬さが、2500~6000N/m2であり、 付着性が、200~400J/m3であり、 凝集性が、0.2~0.6であり、 当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して1重量%以下である請求項1に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項3】 薬剤の服用補助用ゼリーに対して、寒天が0.1~0.5重量%含まれ、その他の増粘多糖類が0.1~1重量%含まれている請求項1または2に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項4】 前記その他の増粘多糖類が、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ジェランガム、タラガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アカシアガムおよびタマリンドガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類であって、前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる請求項1~3のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項5】 さらに有機酸および/または有機酸塩を含み、pHが3以上4未満である請求項1~4のいずれか1項に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項6】 LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤、ゲル化促進剤、甘味料、および必要に応じて加えられる任意成分の水溶液に、有機酸および/または有機酸塩を加えて水溶液のpHを3以上4未満に調整して、ゲル化させることによる請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリーの製造方法であって、 前記その他の増粘多糖類に少なくともローカストビーンガムが含まれる製造方法。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記甘味料は、糖質系甘味料のうちの糖アルコール、又は、非糖質系甘味料である請求項5に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 【請求項9】 前記糖アルコールが、マルチトール、キシリトールおよびソルビトールから選択される少なくとも1種の糖アルコールである請求項8に記載の薬剤の服用補助用ゼリー。 第4 取消理由通知について 1 取消理由通知の概要 当審は平成30年1月25日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。 「A 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 B 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 C 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 D 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 … 第2 理由Aについて 引用例1:特開2004-97114号公報(申立人D提出の甲第1号証) 引用例2:三晶株式会社ウェブページ「ペクチン」 http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/ (申立人D提出の甲第2号証) 引用例3:特開2004-173678号公報 (申立人D提出の甲第3号証) 引用例4:食安発第0212001号 「特別用途食品の表示許可等について」 厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、 9-11頁(申立人D提出の甲第4号証) 引用例5:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬の発表 「服薬補助ゼリーキットの開発」 http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/download/ 104_jerry_yakugakkai_201405.pdf (申立人D提出の甲第5-1号証) 引用例6:株式会社モリモト医薬ウェブページ「商品紹介 服用支援ゼリー eジュレオレンジ http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2 (申立人D提出の甲第5-2号証) 引用例7:国際公開第2010/113325号 (申立人D提出の甲第6号証) … 第3 理由Bについて …本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1-9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 第4 理由Cについて …本件発明1-9は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 第5 理由Dについて …本件発明1-9は、明確であるとはいえない。」 2 取消理由Aについて (1)引用例1に記載された事項 ア 「【請求項1】 ゼリー粒状物を凍結乾燥してなり、一定量の水を加えることで速やかに元のゼリーに復元するゼリー乾燥物。 … 【請求項5】 ゼリー粒状物が、ゲル化剤を凝固液中に注入又は滴下してゲル化してなるゼリーであること、を特徴とする請求項1又は3に記載のゼリー乾燥物。 【請求項6】 ゼリーが、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合物、キサンタンガムとタラガムの混合物、キサンタンガムとコンニャクマンナンの混合物、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン、カラギーナンとローカストビーンガムの混合物、ペクチンから選ばれる少なくとも一つをゲル化したものであること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のゼリー乾燥物。 … 【請求項8】 請求項1~7のいずれか1項に記載したゼリー乾燥物に水を加え、復元したゼリーを用いてなり、薬剤とともに服用されてその嚥下を容易にし、且つ薬効を阻害しない嚥下困難者用嚥下補助剤であること、を特徴とする嚥下補助剤。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、速やかに復元する乾燥ゼリーに関するものであって、嚥下補助剤、ゼリー状医薬品、デザートゼリー、インスタント食品用具材等に各種利用することができる。例えば嚥下補助剤に関しては、薬剤服用時や健康食品等の摂食時に通常の飲料水では薬剤の嚥下が困難な患者や小児、高齢者に対し、困難性や異物感などを与えることなく、薬剤の嚥下を容易にし又は促進することができる。しかも、凍結乾燥したことにより、長期間安定化、分割服用性の改善をはじめて達成したものである。 … 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記課題を解決すべく、薬剤の内服において薬剤を嚥下し易くする剤について種々検討した結果、特定の糊料と水とを混合し、粘度又はゼリー強度を調整することにより、上記課題を解決することとし各種のゼリーを作製して試験を行ったが、未だ充分に満足できるものを得ることはできなかった。 【0006】 そこで、ゼリーの組成や性質に着目した発想を完全に転換して、一旦固化したゼリーに着目し、これを粒状物に砕いたところ、得られたゼリー粒状物は、各種剤形の薬剤を自由に包み込んで所望する大きさ形状とすることができ、しかもこれを嚥下したところ、きわめてスムースに嚥下できるというきわめて有用な新知見を得た。」 ウ 「【0020】 本発明を実施するにおいて、その1態様としてゼリー粒状物を使用する。ゼリー粒状物は、ゼリーを成形してなるものであって、大きさ、形状は使用する薬剤、服用者の年齢や症状等によって適宜定めることができ、広範に対応できる点でもすぐれている。 … 【0025】 その大きさもゼリーの種類、使用薬剤、服用者の年齢、症状等にしたがって適宜定めることが可能であり、一般的には、目の開きが0.5~15mmの篩を通してゼリーを押し出し、これを0.5~10mmの長さに切断したものが使用可能であるが、この大きさは上記範囲に特に限定されるものではない。 【0026】 ゼリーの製造は常法にしたがって行えばよく、ゲル化剤に水を加えて、必要あれば加温し、攪拌溶解した後、ゲル化させればよい。なお所望すれば、コンニャクの場合のアルカリ、低メトキシペクチンの場合の金属多価イオン、アルギン酸の場合のカルシウム等、凝固剤の存在下でゲル化を行ってもよい。ゲル化剤としては、例えば、キサンタンガム及びローカストビーンガムの混合物、キサンタンガム及びタラガムの混合物、キサンタンガム及びコンニャクマンナンの混合物、ジェランガム、脱アシル化していないネイティブジェランガム、カラギーナン、カラギーナン及びローカストビーンガムの混合物、ペクチン等が非限定的に例示される。 … 【0028】 なお、いずれの方法においても、ゲル化促進剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウムその他)、糖類(マンニトール、エリスリトール、アスパルテーム、ステビア、グルコース等)、その他の添加剤を使用することができる。 【0029】 ゲル化剤としては、アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつが挙げられる。」 エ 「【0047】 【実施例1】 凍結前粉砕法の実施例を以下に述べる。 【0048】 (1)ゼリーの調製-その1 キサンタンガム(キサンタンガムPA、伊那食品工業株式会社製)5.85g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)585g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、637.975gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温して更に攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JIS Z8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1~3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。 … 【0053】 (6)ゼリーの調製-その6 カッパタイプのカラギーナン(WR-78、三晶株式会社製)1.95g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)1.95g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、645.775gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温してさらに攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JISZ8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1~3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。 【0054】 (7)ゼリーの調製-その7 ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)9.75gを、548.99gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温し攪拌しながら、15%クエン酸溶液17.29g、アスパルテーム0.325gを少量ずつ加え、さらに85℃まで加温し再び攪拌しながら、15%乳酸カルシウム溶液73.645gを少量ずつ加えた。再度85℃まで加温して攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液をプラスチックカップに充填し、密閉して固化するまで室温で放置した。固化したゼリーを、目の開きが2mmのステンレス製篩(JISZ8801、東京スクリーン株式会社製)の上に置き、底が平らになった棒でゼリーを押しつぶすようにして篩を通過させ、押し出されてきたゼリーを金属製スパーテルを用いて約1~3mmの長さに切断し、粒状のゼリー組成物を得た。得られた粒状ゼリー組成物は、プラスチックカップに5gずつ充填し、アルミラミネートフィルムで上部を密閉した。 … 【0056】 (8)ゼリーの凍結乾燥 ゼリーの充填されたプラスチックカップの上部のフィルムをはがし、カップを凍結乾燥用のトレーに並べた。そのトレーを-80℃の凍結機の中に4時間入れて、ゼリーを十分に凍結させた。次いで、トレーを凍結乾燥機(米国FTS SYSTEMS社製、Dura-Stop MP/Dura-Top MP Tray Dryers)に入れ、-40℃で20時間、減圧下で乾燥を実施した。この時の真空度は15~40mTorrであった。次に、真空度はそのままの状態で、乾燥機の温度を25℃に上昇させ、更にゼリーを十分に乾燥させた。凍結乾燥機からカップを取り出し、すぐにアルミラミネートフィルムで上部を密閉した。 【0057】 (9)復元性の確認 上記実験例で得られたドライゼリーの入ったプラスチックカップに、水4mLを加え、スプーンでよく攪拌したところ、20秒後には完全につぶつぶ状ゼリーの塊に復元した。 【0058】 【実施例2】 凍結後粉砕法の実施例を以下に述べる。 【0059】 (1)ゼリーの調製-その1 キサンタンガム(キサンタンガムPA、伊那食品工業株式会社製)5.85g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)5.85g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、637.975gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温して更に攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。 … 【0063】 (5)ゼリーの調製-その5 カッパタイプのカラギーナン(WR-78、三晶株式会社製)1.95g、ローカストビーンガム(RL-200-J、三晶株式会社製)1.95g、アスパルテーム0.325gを混合したものを、645.775gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温してさらに攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。 【0064】 (6)ゼリーの調製-その6 ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)9.75gを、548.99gの攪拌している水の中に少量ずつ加えた。85℃まで加温し攪拌しながら、15%クエン酸水溶液17.29g、アスパルテーム0.325gを少量ずつ加え、さらに85℃まで加温し再び攪拌しながら、15%乳酸カルシウム溶液73.645gを少量ずつ加えた。再度85℃まで加温して攪拌し、添加物を完全に溶解させた。得られた溶解液を凍結乾燥用の金属製トレーに、液の厚さが1cm以下になるように流し込んだ。 【0065】 (7)ゼリーの凍結乾燥 得られたゼリーの入ったトレーを-80℃の凍結機の中に4時間入れて、ゼリーを十分に凍結させた。次いで、トレーを凍結乾燥機(米国FTS SYSTEMS社製、Dura-Stop MP/Dura-Top MP Tray Dryers)に入れ、-40℃で20時間、減圧下で乾燥を実施した。この時の真空度は15~40mTorrであった。次に、真空度はそのままの状態で、乾燥機の温度を25℃に上昇させ、更にゼリーを十分に乾燥させた。 【0066】 (8)乾燥物の粉砕 得られたゼリーのシート状乾燥物をカッターで二方向に切断して、大きさ1mm~3mmの賽子状にした。篩を用いて微粉と大きな塊を取り除き、整粒されたドライゼリーを得た。 【0067】 (9)復元性の確認 上記実験例で得られたドライゼリー0.1gを、プラスチックカップに量りとった。このカップに水4mLを加え、スプーンでよく攪拌したところ、20秒後には完全につぶつぶ状ゼリーの塊に復元した。 【0068】 【発明の効果】 本発明に係るゼリー乾燥物は、通常のゼリーの使用や単にトロミをつけるというものではなく、ゼリー粒状物という固化したゼリーを更に加工処理して成形したものであって、従来の概念と全く相違する新規にして画期的なものである。 【0069】 したがって、これを嚥下補助剤として利用した場合、薬剤や健康食品、その原料、素材との混合、包み込みが容易であって、その大きさ、剤型のいずれにも対応することができ、しかも嚥下し易いようにその大きさ、形状を適宜自由にコントロールすることができ、しかも粒状物としたことにより、同一のゲルであっても粒状物としない場合に比して嚥下し易いし、薬剤等との混合も容易である。 【0070】 そのうえ更に、本発明においてはこのゼリーを凍結乾燥してドライタイプの嚥下補助剤等ドライゼリーとした点に格別の特徴を有するものである。 【0071】 ゼリーは長期保存安定性が劣るが、乾燥し、用時調製型にすることで安定性を向上させるのに成功した。通常の凍結乾燥では、復水性に劣り実用に向いていないが、粒粒に切断した後、凍結乾燥することにより復水性を向上させるのにも成功した。更に、ゼリー状の医薬品は分割服用が困難であるが、乾燥状態にすることにより、秤量が容易になった。 【0072】 この発明によって得られるドライゼリーは、例えば以下のような利用法が可能である。 (1)嚥下補助剤としての利用 (2)ゼリー状医薬品としての利用(=あらかじめ医薬をゼリーに溶解、もしくは分散させておく) (3)食品素材としての利用(=例えばスープ・インスタント麺類等の具材など) (4)従来からある嗜好品のゼリーとしての利用」 (2)引用例2に記載された事項 ア 「一般的にペクチンはエステル化度が50%以上のHMペクチンと50%未満のLMペクチンに分類され、それぞれゲル化の条件やゲルの物性が異なります。」(「ペクチンとは」第2パラグラフ1-2行) イ 「LMペクチンは、カルシウムイオンなどの2価のイオンの存在下でゲル化します。」(「ペクチンの特徴 1.ゲル化性」4行) ウ 「       代表的 商品名   DE値   添加量   … (%)   (%) …     …     …    … LM-84AS    30    1.0~2.0   … …     …     …    …」 (「GENU(R) LMペクチン」の表) (3)引用例3に記載された事項 ア 「【請求項1】 (a)寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセレラン、タマリンド種子ガム、ゼラチン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カードラン、ペクチン及びグルコマンナンの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を、全増粘剤の濃度が1質量%以下になるように含むと共に、ゲル化開始からゲル化終了に至る冷却速度が3℃/min以下に制御されてなる低離水性ゲル状組成物。 … 【請求項6】 離水率が1質量%以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の低離水性ゲル状組成物。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、低離水性ゲル状組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、離水性が効果的に抑制され、良好な風味や食感、外観などを保持することができ、ゼリーなどのデザート用ゲル状食品などとして好適な低離水性ゲル状組成物、及びその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 近年、冷蔵庫や冷凍庫の普及に伴い、ゼリーやプリンなどのデザート用ゲル状食品は一般的なものとなっている。このようなゲル状食品には、ゲル化剤として、寒天、カラギーナン、ゼラチン、ジェランガム、ペクチンなどが用いられている。そして、前記ゲル状食品は、缶やカップなどに充填密封され、さらに殺菌処理されて市場に供給されるが、しばしば水分が流出する、いわゆる離水現象が生じる。その結果、風味や食感、外観が損なわれ、消費者に好ましくない印象を与え嗜好意欲を減退させたり、あるいは嚥下障害者にとっては、水分補給の際、むせる原因となるなどの問題が生じていた。 したがって、これまで、離水を減少させるために種々の方法が開示されている。… 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、このような状況下で、離水性が効果的に抑制され、良好な風味や食感、外観などを保持することができ、ゼリーなどのゲル状飲食品、特に増粘剤濃度の低い、柔らかくてくずし易いゼリー状飲食品などとして好適な低離水性ゲル状組成物を提供することを目的とするものである。」 ウ 「【0010】 【発明の実施の形態】 … 本発明においては、増粘剤として、(a)寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセレラン、タマリンド種子ガム、ゼラチン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カードラン、ペクチン及びグルコマンナンの中から選ばれる少なくとも一種が用いられる。また、必要に応じて、上記(a)成分の増粘剤と共に、(b)λ-カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、プルラン及びアラビアガムの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を併用することができる。」 (4)引用例4に記載された事項 ア 「第6 えん下困難者用食品たる表示の許可基準 1 えん下困難者用食品たる表示の適用範囲 許可を受けるべきえん下困難者用食品(えん下を容易ならしめ、かつ、誤えん及び窒息を防ぐことを目的とするもの)たる表示の適用範囲については、えん下困難者の用に適する旨を医学的、栄養学的表現で記載されたものに適用されるものとする。 2 えん下困難者用食品たる表示の許可基準 えん下困難者用食品たる表示の許可基準は、次の基準に適合したものであること。 (1) 基本的許可基準 ア 医学的、栄養学的見地から見てえん下困難者が摂取するのに適した食品であること。 イ えん下困難者により摂取されている実績があること。 ウ 特別の用途を示す表示が、えん下困難者用の食品としてふさわしいものであること。 エ 使用方法が簡明であること。 オ 品質が通常の食品に劣らないものであること。 カ 適正な試験法によって成分又は特性が確認されるものであること。 (2) 規格基準 表3に示す規格を満たすものとする。 なお、簡易な調理を要するものにあっては、その指示どおりに調理した後の状態で当該規格を満たせばよいものとする。 」 (9頁下から10行-10頁下から12行) (5)引用例5に記載された事項 ア 「 」 (6)引用例6に記載された事項 ア 「ゼリー関連学会等発表実績… … ■2014年 … 5月 日本薬剤学会第29年会(主催:日本薬剤学会) (発表内容:服薬補助ゼリーキットの開発) PDF資料1:服薬補助ゼリーキットの開発…」 (末尾「ゼリー関連学会等発表実績」の項) (7)引用例7に記載された事項 ア 「[0004] 本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、取扱いやすさ又は保存性等の観点、及び嚥下のしやすさの観点の両方からみて適度な破断強度を与える技術を提供することを課題とする。また、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、高い薬物の溶出性を与える技術を提供することを課題とする。 更に、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、適度な破断強度及び高い薬物の溶出性の両者を与える技術を提供することを課題とする。 そして、本発明は、適度な破断強度を有し、かつ高い薬物の溶出性を有する、ペクチンを含むゼリー製剤を提供することを課題とする。」 イ 「[0008] 本発明のゼリー製剤は、薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含み、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3~4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5~6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む。 薬物は、特に制限されないが、好ましくは、酸性で安定な薬物である。酸性で安定な薬物としては、pH2~5程度で安定な塩酸塩などが挙げられる。… [0009] ペクチンとしては、通常ゼリー製剤に用いられるものを、特に制限なく用いることができる。本発明のゼリー製剤においては、任意のエステル化度のペクチンを、単独で又は組み合わせて用いることができる。…本発明のゼリー製剤に用いられるペクチンとしては、特に好ましくは、20~35%のエステル化度を有するペクチンを単独で用いる。 本発明のゼリー製剤におけるペクチンの含有量は、嚥下しやすい(口腔内で容易に咀嚼できる)硬さのゼリーを形成できる範囲であればよい。ペクチンの含有量は、通常は0.5~10質量%、好ましくは1~3質量%である。 [0010] 2価の金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。2価の金属イオンは、経口可能な金属塩の形態で製剤に添加することができる。…中でも、好ましくはカルシウム塩、中でも乳酸カルシウムである。…」 ウ 「[0016] 本発明のゼリー製剤のpHは、ゼリーの形成を妨げない範囲であればよい。本発明のゼリー製剤のpHは、好ましくは2~5、更に好ましくは2.5~4.5である。この範囲で、特にゼリーの安定性が良好である。 pHの調整に用いるpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、フタル酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコン酸、グリセロリン酸等の有機酸およびその塩、ならびに塩酸、リン酸などの無機酸およびその塩、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸及びその塩、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤およびその塩が挙げられる。 [0017] 本発明のゼリー製剤は、前記スクロース、マルチトール及び炭素数3~4のアルジトールから選ばれる成分の作用、及び炭素数5~6のアルジトールから選ばれる成分の作用を損なわない範囲で、更に通常医薬に用いられる添加剤を含有していてもよい。このような任意成分として、防腐剤、甘味剤、香料などが挙げられる。…」 エ 「[請求項1] 薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含むゼリー製剤であって、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3~4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5~6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む、ゼリー製剤。 … [請求項3] 炭素数5~6のアルジトールが、キシリトール及びD-ソルビトールから選ばれる、請求項1又は請求項2に記載のゼリー製剤。」 (8)引用例1に記載された発明 引用例1には、ゼリー状の「嚥下困難者用嚥下補助剤」(上記(1)ア)に関し、これを「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつ」であるゲル化剤から構成すること(上記(1)ウ)、「薬剤とともに服用されてその嚥下を容易に(する)」こと(上記(1)ア)、すなわち「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ことが記載されている。 そうすると、引用例1には以下の引用発明1が記載されていると認められる。 「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつであるゲル化剤を含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリー。」 (9)本件発明1と引用発明1との対比・判断 ア 本件発明1と引用発明1とを対比する。 本件発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。 相違点a:本件発明1は「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものであるのに対し、引用発明1は「アラビアガム、寒天、カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくともひとつであるゲル化剤」を含み、「ゲル化促進剤と甘味料」とを含むものではない点。 相違点b1:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1~3重量%含まれ(る)」ものであるのに対し、引用発明1ではこのような特定がない点。 相違点c1:薬剤の服用補助用ゼリーの物性について、本件発明1は 「細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、 硬さが、2000~6000N/m2であり、 付着性が、200~500J/m3であり、 凝集性が、0.2~0.6であり」、かつ、 「細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下」であるのに対し、引用発明1ではこれらの物性が明らかでない点。 イ まず、上記相違点aについて検討する。 本件発明1は「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものである。 これに対し、引用発明1は、「ペクチン」、「寒天」、あるいは「アラビアガム、…カラギナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ファーセレラン、…カードラン、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、アカシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa」のような増粘多糖類の少なくとも一つを用いており(上記(1)ウ)、その実施例においては、本件発明1の「LMペクチン」に相当する「ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)」と「ゲル化促進剤」に相当する「乳酸カルシウム」の使用や、本件発明1の増粘多糖類に相当する「キサンタンガム」と「ローカストビーンガム」の併用については記載されている(上記(1)エ)ものの、「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有」し、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ようなゲル化剤は、引用例1の実施例のみならず、その如何なる箇所にも記載されておらず、また示唆もない。 そして、引用発明1のゲル化剤について、「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含み」、「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」ものとすることが、想到容易であるとはいえない。 ウ してみると、相違点b1及びc1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び引用例2~7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (10)本件発明2~6、8、9についての判断 本件発明2~6、8、9は、本件発明1を引用し、さらに限定を加えたものである。そして、上述のとおり、本件発明1は引用発明1及び引用例2~7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえないことに鑑みると、本件発明2~6、8、9についても、引用発明1及び引用例2~7に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (11)まとめ よって、上記取消理由通知で示した理由Aには理由がない。 3 取消理由Bについて 当審は、上記取消理由通知において、取消理由Bに関し、以下の取消理由を通知した。 「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が必須であるかのように見受けられる。 しかし、実施例10及び11、並びに、比較例3及び4はこれら三成分が含まれるにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。 また、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が含まれている実施例14及び15以外の実施例は、本件発明の物性を満たしているが、比較例6は同じく三成分が含まれているにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。 そして、実施例14には『その他の増粘多糖類』が、実施例15には『寒天』が、それぞれ含まれていないにもかかわらず、本件発明の物性を満たし、『実施例』とされていることに鑑みると、本件発明は『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分を必須としなくとも実施しうるとも解釈でき、どのような態様が本件発明を実施したといえるのか、明らかでない。 更に、実施例14と比較例5は構成成分が共通するにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明はどのようにすれば実施できるのか、明らかでない。 したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」 しかし、上記第2で示したとおり、本件訂正は認められ、上記第3で示したとおり、本件発明は、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須となった。そして、本件発明の詳細な説明に記載された「実施例」は本件発明の物性を満たし、同「比較例」は本件発明の物性を満たさないことが明らかとなった。 したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~6、8、9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 よって、上記取消理由通知で示した理由Bには理由がない。 4 取消理由Cについて 当審は、上記取消理由通知において、取消理由Cに関し、以下の取消理由を通知した。 「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類」の三成分が必須であるかのように見受けられる。 しかし、『その他の増粘多糖類』として『ローカストビーンガム』を用いた実施例10及び11は本件発明の物性を満たすが、『その他の増粘多糖類』として『キサンタンガム』を用いた比較例3及び4は本件発明の物性を満たさない。このため、本件発明は、請求項1-9に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 また、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が含まれ、更に甘味料が含まれている実施例14及び15以外の実施例は、本件発明の物性を満たしているが、甘味料が含まれない比較例6は同じく三成分が含まれているにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていない。このため、本件発明は、請求項1~6に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 更に、実施例14と比較例5は構成成分が共通するにもかかわらず、前者は本件発明の物性を満たし、後者は満たしていない。このため、本件発明は、請求項1-9に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」 しかし、上記3で示したことと同様の理由により、本件発明1~6、8、9は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。 よって、上記取消理由通知で示した理由Cには理由がない。 5 取消理由Dについて 当審は、上記取消理由通知において、取消理由Dに関し、以下の取消理由を通知した。 「本件発明に係る服用補助用ゼリーにおける『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言からは、『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分が必須であるかのように見受けられる。 しかし、実施例14には『その他の増粘多糖類』が、実施例15には『寒天』が、それぞれ含まれていないにもかかわらず、本件発明の物性を満たしていることに鑑みると、『LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤』との文言が『LMペクチン』、『寒天』、『その他の増粘多糖類』の三成分を意味するものと解することができず、この文言をどのように解釈すればよいのか、皆目見当が付かない。 したがって、本件発明1-9は、明確であるとはいえない。」 しかし、上記第2に示したとおり本件訂正が認められることにより、訂正前の「実施例14」及び「実施例15」は、それぞれ「参考例14」及び「参考例15」となり、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須である本件発明の範囲外のものとなった。 したがって、本件発明1~6、8、9は、明確であるといえる。 よって、上記取消理由通知で示した理由Dには理由がない。 6 まとめ 以上、上記取消理由通知で示した理由A~Dからは、本件発明1~6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。 第5 異議申立ての理由についての検討 1 申立人Aの異議申立ての理由について (1)異議申立ての理由の概要 申立人Aの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 ・申立ての理由1 請求項1~9に係る発明は、下記甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 ・申立ての理由2 請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 甲第1号証:特開2003-192573号公報 (以下、「甲A1」という。) 甲第2号証:特開2004-173678号公報 (以下、「甲A2」という。) 甲第3号証:食安発第0212001号 「特別用途食品の表示許可等について」 厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、 9-11頁(以下、「甲A3」という。) (2)申立ての理由1について ア 甲A1に記載された事項 (ア)「【請求項1】 水に難溶な薬剤がゲル中に分散していることを特徴とする経口ゲル製剤。 【請求項2】 ゲルが低メトキシル化ペクチンゲルである請求項1に記載の経口ゲル製剤。 … 【請求項5】 さらに、他の天然物由来の高分子多糖類が低メトキシル化ペクチンに対し質量比で50%以下の割合で配合されている請求項2から4のいずれかに記載の経口ゲル製剤。 【請求項6】 他の天然物由来の高分子多糖類が、寒天および/またはカラギーナンである請求項5に記載の経口ゲル製剤。」 (イ)「【0008】 【発明が解決しようとする課題】上記のような問題点が提起されている現状において、幼児、高齢者、嚥下障害を有する患者、術後寝たきりの患者などへの水難溶性薬剤の経口投与に際して、容易に嚥下することができ、十分な薬剤効果を得ることができるだけの一定量を確実に服用することができ、また介護が必要な患者における薬剤の服用に際して、介護人の手間を軽減させるように改善された、服用し易い易嚥下性経口ゲル製剤を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0015】低メトキシル化ペクチンをゲル化する際に用いる2価金属イオンの供給源としては、特に水溶性カルシウム塩がよい。例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウムなど食用として問題のないカルシウム化合物が挙げられる。これらの使用量は、低メトキシル化ペクチンをゲル化することができる至適量を用いることができる。ゲル化に関する技術は従来充分に確立されているので、本発明においてもそのような公知の技術を採用することができる。」 (エ)「【0016】本発明に係る経口ゲル製剤には、易嚥下性を向上させる目的で、上記したゲル化剤のうち、低メトキシル化ペクチン以外の他の天然物由来の高分子多糖類を添加することができる。例えば、通常食品分野で汎用されている種々のゲル化剤、例えば、高メトキシル化ペクチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムなどを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。特に、海草由来の高分子多糖類である寒天および/またはカラギーナン(κ型、ι型、λ型)を用いることは安全性や易嚥下性の観点より好ましい。これらの使用割合は、適宜調整することができるが、薬剤の均一化の妨げとならないよう、低メトキシル化ペクチンに対し、重量比(乾燥)で約50%以下、好ましくは約40%以下とするのがよい。」 (オ)「【0017】本発明に係る経口ゲル製剤においては、薬剤、ゲル化剤、2価金属イオンの他に経口医薬品の添加物として許容され得る各種添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。上記添加剤としては、例えば、安定化剤、保水剤、pH調整剤、甘味剤、分散剤、防腐剤、香料などが挙げられる。…甘味剤としては、例えば、ショ糖、ソルビトール、トレハロースなどが挙げられる。…」 (カ)「【0021】本発明に係る経口ゲル製剤は、通常の経口ゲル製剤の製法に準じて製造できる。例えば、まず、精製水中にゲル化剤、薬剤原末ならびに各種の添加剤を加え、攪拌、加熱して、均一な懸濁液とする。含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の混合成分のみを先に精製水中に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。…」 (キ)「【0025】実施例1 〔製剤例〕下記各成分を精製水中に加えて全量を10リットルとし、80℃に加熱して均一に混合した。次に、乳酸カルシウム5gを加えてさらに均一に混合し、10mLずつポリエチレン製小袋(収容部長辺=約7cm)に充填、密封した後、室温まで冷却し、経口ゲル製剤を得た。 シロスタゾール                100g 低メトキシル化ペクチン(三栄源FFI(株)製)152g 寒天(三栄源FFI(株)製)          48g ブドウ糖                   500g ソルビン酸カリウム                8g オレンジエッセンス               24g 【0026】実施例2 〔製剤例〕下記各成分を精製水中に加えて全量を10リットルとし、80℃に加熱して均一に混合した。次に、乳酸カルシウム5gを加えてさらに均一に混合し、10mLずつポリエチレン製小袋(収容部長辺=約7cm)に充填、密封した後、室温まで冷却し、経口ゲル製剤を得た。 シロスタゾール                100g 低メトキシル化ペクチン(三栄源FFI(株)製)152g κ-カラギーナン(三栄源FFI(株)製)    48g キシリトール                 500g ソルビン酸カリウム                8g オレンジエッセンス               24g」 イ 甲A1に記載された発明(甲A1発明) 上記ア(ア)及び(キ)の記載から、甲A1には以下の甲A1発明が記載されているといえる。 「低メトキシル化ペクチン、寒天および/またはカラギーナンと、乳酸カルシウムと、キシリトール又はブドウ糖と、水に難溶な薬剤を含む、経口ゲル製剤。」 ウ 対比・判断 (ア)「低メトキシル化ペクチン」は、本件発明でいう「LMペクチン」である。また、上記ア(ウ)及び(キ)の記載から、係る「低メトキシル化ペクチン」は、「乳酸カルシウム」等の、本件発明でいう「ゲル化促進剤」によってゲル化されている。更に、「キシリトール又はブドウ糖」は甘味料として、「カラギーナン」は増粘多糖類として広く知られているものである。そうすると、本件発明1と甲A1発明とは、以下の点で一致する。 「LMペクチン、寒天及びその他の増粘多糖類と、ゲル化促進剤と、甘味料とを含むもの。」 そして、本件発明1と甲A1発明とは、以下の点で相違する。 相違点a1:本件発明1は「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリー」であるのに対し、甲A1発明は「水に難溶な薬剤を含む、経口ゲル製剤」である点。 相違点a2:本件発明1は「その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれ(る)」のに対し、甲A1発明ではこのような特定がない点。 相違点a3:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1~3重量%含まれ(る)」のに対し、甲A1発明ではこのような特定がない点。 相違点a4:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000~6000N/m2であり、付着性が、200~500J/m3であり、凝集性が、0.2~0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲A1発明はこれらの物性が明らかでない点。 (イ)相違点について検討する。 相違点a1に関し、甲A1発明に係る経口ゲル製剤の製造に関し、甲A1には「含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の混合成分のみを先に精製水中に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。」(上記ア(カ))との記載がある。しかし、係る経口ゲル製剤において、「水に難溶な薬剤」以外の成分、すなわち本件発明1の「薬剤の服用補助用ゼリー」に相当するものを別途ゲル製剤として調製して使用することについての記載ないし示唆は、甲A1からは見いだせない。 相違点a2に関し、甲A1発明に係る経口ゲル製剤において、「ローカストビーンガム」を必須とすることについての記載ないし示唆は、甲A1からは見いだせない。 甲A2には、「低離水性ゲル状組成物」に関し、「さらに、(b)λ-カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、プルラン及びアラビアガムの中から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を、全増粘剤の濃度が1質量%以下になるように含む請求項1又は2記載の低離水性ゲル状組成物。」(【請求項3】)との記載や、ローカストビーンガムをその成分の一つとして用いた実施例は記載されているが、殊更ローカストビーンガムに着目して、これを添加することで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものとすることについての記載ないし示唆は見いだせない。甲A3にも、ローカストビーンガムの使用についての記載ないし示唆は見いだせない。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 エ 本件発明2~6、8、9について 上記のとおり、本件発明1は、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 本件発明2~6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2~6、8、9も、本件発明1と同様、甲A1ないしA3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 オ まとめ 以上のことから、申立人Aの申立ての理由1には理由がない。 (3)申立ての理由2について 申立人Aは、「比較例3、4及び6、並びに実施例14、15の結果からすれば、課題としての発明特定事項[C]及び[D]は、それを達成するための手段である発明特定事項[A-1](決定注:「LMペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、ゲル化促進剤とを含(む)」)が満足されてなくても達成されていたり、発明特定事項[A-1]が満足されていても達成されなかったりする。従って、請求項1に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載の事項を一般化しているとはいえない。よって、…本件特許の請求項1の記載はサポート要件を満たしていない…。請求項1を引用する請求項2~9についても、…サポート要件を満たしていない。」(申立人Aの特許異議申立書28頁28行~29頁10行)と主張する。 しかし、上記第4の4に示したとおりであるから、上記主張に係る点は解消した。 したがって、申立人Aの申立ての理由2には理由がない。 2 申立人Bの異議申立ての理由について (1)異議申立ての理由の概要 申立人Bの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 ・申立ての理由1 請求項1~5、7~9に係る発明は、下記甲第1-1号証が添付された製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」(以下、「甲B1製品」という場合がある。)についての発明と同一であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、同項柱書きの規定により特許を受けることができるとはいえないものであるから、請求項1~5、7~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 ・申立ての理由2 請求項1~9に係る発明は、甲B1製品についての発明及び下記甲第5-1号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 甲第1-1号証:株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリー eジュレオレンジ」の添付文書 (以下、「甲B1-1」という。) 甲第1-2号証:甲第1-1号証が添付された製品のAmazonの注文 ページ「服薬補助ゼリーeジュレ(オレンジ)10包入」 https://www.amazon.co.jp/dp/B00QT4R8SI (以下、「甲B1-2」という。) 甲第2号証  :特開昭53-28087号公報 (以下、「甲B2」という。) 甲第3号証  :特開2004-97114号公報 (以下、「甲B3」という。) 甲第4号証  :三晶株式会社のWebページ「取扱商品」 http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/ (以下、「甲B4」という。) 甲第5-1号証:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬の 発表「服薬補助ゼリーキットの開発」 http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/ download/104_jerry_yakugakkai_201405.pdf (以下、「甲B5-1」という。) 甲第5-2号証:株式会社モリモト医薬のWebページ「商品紹介 服用支援ゼリーeジュレオレンジ」 http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2 (以下、「甲B5-2」という。) (2)申立ての理由1について ア 甲B1-1に記載された事項 甲B1-1は、株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」の添付文書であり、甲B1-1には、以下の事項が記載されている。 (ア)「●原材料名:還元麦芽糖、砂糖、寒天末、甘味料(キシリトール)、増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)、酸味料、香料、乳酸カルシウム、保存料(安息香酸ナトリウム、安息香酸)、着色料(食用黄色5号)」(原材料名欄) (イ)「(1)(決定注:甲B1-1では、○内に数字が記載されているが、このように標記する。以下同様。)薬を容器(小皿や湯のみ茶碗等)に入れます。 … (2)開封前には、よく揉んで、斜め上に切り取り、開封してください。 … (3)薬の上からゼリーを入れて、スプーンで混ぜてお飲みください。 …」(添付文書右下欄) イ 甲B1-1に係る製品 甲B1-1には、株式会社モリモト医薬製の製品「服用支援ゼリーeジュレオレンジ」に関し、「還元麦芽糖、砂糖、寒天末、甘味料(キシリトール)、増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)、酸味料、香料、乳酸カルシウム、保存料(安息香酸ナトリウム、安息香酸)、着色料(食用黄色5号)」を原材料としていること(上記ア(ア))、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用されるものであること(上記ア(イ))が記載されている。 そうすると、甲B1製品は以下の構成からなるものと認められる。 「ペクチン、寒天末および増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)と、乳酸カルシウムと、甘味料(キシリトール)とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用支援ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる薬剤の服用支援ゼリー。」 そして、甲B1-2の「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2014/12/10」(登録情報の項)との記載からみて、甲B1製品は、本件出願前(優先日前)において、不特定多数人が認識できる公然に知られうる状態にあったと認められる。 ウ 対比・判断 (ア)「寒天末」及び「増粘剤(ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム)」は、それぞれ本件発明1の「寒天」及び「その他の増粘多糖類」に相当する。「服用支援ゼリー」は、本件発明1でいう「服用補助用ゼリー」といえる。 そうすると、本件発明1と甲B1製品とは、以下の点で一致する。 「ペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる薬剤の服用補助用ゼリー。」 そして、本件発明1と甲B1製品とは、以下の点で相違する。 相違点b1:本件発明1はゲル化剤として「LMペクチン」を用い、更に「ゲル化促進剤」を含むものであるのに対し、甲B1製品の「ペクチン」は「LMペクチン」であるのか明らかでなく、「乳酸カルシウム」は「ゲル化促進剤」であるかは明らかでない点。 相違点b2:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1~3重量%含まれ(る)」のに対し、甲B1製品ではこのような特定がない点。 相違点b3:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000~6000N/m2であり、付着性が、200~500J/m3であり、凝集性が、0.2~0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲B1製品はこれらの物性が明らかでない点。 (イ)相違点について検討する。 相違点b1に関し、甲B1製品に「ペクチン」と「乳酸カルシウム」が含まれているからといって、甲B1製品の「ペクチン」が「LMペクチン」を意味すると解する技術常識はない。また、「乳酸カルシウム」についても、これが「ゲル化促進剤」を意味すると解する技術常識はない。 申立人Bは「甲1製品は乳酸カルシウムを含有している。そして、LMペクチンのゲル化にカルシウムイオンなどのゲル化促進剤が必要であることは知られていた…。なお、本件特許でもLMペクチンのゲル化促進剤として乳酸カルシウムが用いられている。したがって、甲1製品の含有する「ペクチン」は「LMペクチン」であると推認される。」と主張する。 しかし、甲B4に記載されるように「LMペクチン」のゲル化には「カルシウムイオンなどの2価のイオンの存在」(ペクチンの特徴の項)を要することを併せて勘案しても、甲B1製品に係る「ペクチン」が「LMペクチン」、「乳酸カルシウム」が「ゲル化促進剤」を意味するとは必ずしもいえない。 このため、本件発明1と甲B1製品とは、相違点b1において、明らかに相違するものといえる。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。 エ 本件発明2~5、8、9について 上記のとおり、本件発明1は、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。 本件発明2~5、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2~5、8、9も、本件発明1と同様、甲B1製品により特許法第29条第1項第2号に該当するものとはいえない。 オ まとめ 以上のことから、申立人Bの申立ての理由1には理由がない。 (3)申立ての理由2について ア 甲B1-1に記載された事項 上記(2)アのとおりである。 イ 甲B1-1に係る製品 上記(2)イのとおりである。 ウ 対比・判断 (ア)本件発明1と甲B1製品との間には、上記(2)ウ(ア)と同様の一致点及び相違点が存在する。 (イ)相違点について検討する。 相違点b1に関し、上記(2)ウ(イ)で検討したことと同様、甲B1製品に係る「ペクチン」が「LMペクチン」であり、「乳酸カルシウム」が「ゲル化促進剤」に相当するものとなっているとは必ずしもいえない。 他方、「医療用ゼリー」(甲B2の2頁右上欄4行)や「ゼリー状医薬品」(甲B3【0072】)の原料において、甲B2には「ローメトキシルペクチン」(本件発明1の「LMペクチン」に相当)と「乳酸カルシウム」を含むもの(2頁左下欄の表)や、甲B3には「ペクチン(LM-84AS、三晶株式会社製)」(甲B4から、本件発明1の「LMペクチン」に相当するものと認める。)と「乳酸カルシウム」を含むもの(【0054】)が記載されている。 しかし、甲B1製品において、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることの動機づけは存在しない。 また、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることができたとしても、そうすることで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものが得られることが予測可能であるとはいえない。 そして、甲B5-1には、係る「服薬補助ゼリーキット」の原材料につき、何ら明らかでなく、甲B5-1からは、甲B1製品において、「ペクチン」を「LMペクチン」とし、「乳酸カルシウム」を「ゲル化促進剤」とすることを想到しえない。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 エ 本件発明2~6、8、9について 上記のとおり、本件発明1は、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 本件発明2~6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2~6、8、9も、本件発明1と同様、甲B1製品及び甲B5-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 オ まとめ 以上のことから、申立人Bの申立ての理由2には理由がない。 3 申立人Cの異議申立ての理由について (1)異議申立ての理由の概要 申立人Cの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 ・申立ての理由 請求項1~9に係る発明は、下記甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 甲第1号証:特許第3257983号公報(以下、「甲C1」という。) 甲第2号証:特開2000-325041号公報 (以下、「甲C2」という。) 甲第3号証:食安発第0212001号 「特別用途食品の表示許可等について」 厚生労働省医薬食品局食品安全部長、平成21年2月12日、 9-11頁(以下、「甲C3」という。) 甲第4号証:特許第4647493号公報(以下、「甲C4」という。) (2)申立ての理由1について ア 甲C1に記載された事項 (ア)「【請求項2】 薬剤(但し、薬効成分を封入したシームレスカプセル、散剤及び細粒剤を除く)とともに服用されてその薬剤の嚥下を容易にし、且つ薬効を阻害しない嚥下困難者用のローカロリー・ノンシュガー嚥下補助飲料であって、 水分80.0~99.9重量%と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ローカーストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アゾトバクタービネランジガム、カシアガム、サイリュームシードガム、タマリンドガム、CMCNa、CMCCa、乳清蛋白、澱粉及び化工澱粉から成る群より選ばれた少なくとも1種の糊料0.1~5.0重量%とを含有し、 ゲル状をなし、20℃におけるゼリー強度が10~100g/cm2であることを特徴とする嚥下補助飲料。」 (イ)「【0019】なお、本発明の嚥下補助飲料においては、本発明の意図する嚥下改善効果を奏する限り、必須成分である水分及び糊料以外にも、ゲル化促進剤や栄養源たる糖類その他の添加剤を含有することができる。例えば、ゲル化促進剤としてのクエン酸を0.2~2.0重量%、クエン酸三ナトリウムを0.1~0.2重量%、糖類としてのマンニトール、エリスリトール及びブドウ糖などを8~10重量%を添加することができる。この際、糖類としては、糖尿病患者が飲むことのできるものが好ましい。また、デキストリンをゲル化補助剤として0.2~0.5重量%添加してもよい。 【0020】次に、本発明の嚥下補助飲料の調製法について説明する。本発明の嚥下補助飲料は、適当な糊料を適量の水に加温溶解した後、ゲル化促進剤、ゲル化増進剤、糖類及びその他の添加物を加えて加温攪拌溶解することにより、得ることができる。なお、溶解温度は、適宜変更できるが、加温溶解する場合には代表的に80~100℃である。 【0021】また、上述のようにして得られた嚥下補助飲料は、各種薬剤とともに服用に供することができる。即ち、薬剤を口内に含んだ後、嚥下補助飲料を水の代わりに口内に流し込み、薬剤と一緒に嚥下してもよいし、予め薬剤と嚥下補助飲料とを混合し、得られた混合物(液)を口に流し込み、嚥下してもよい。」 (ウ)「【0027】(実施例1)糊料として多糖類のペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及び寒天を所定量の水に加温溶解し、更にその他の添加物を加えて80℃で加温溶解・撹拌して溶解し、本実施例のゲル化した嚥下補助飲料を得た。配合処方の詳細を以下に示す。 【0028】 成分            配合量(重量部) 寒天               0.20 ローカストビーンガム       0.05 ペクチン             0.04 カラギナン            0.02 キサンタンガム          0.01 クエン酸             0.21 クエン酸三ナトリウム       0.14 エリスリトール          8.82 香料               0.10 精製水             90.41 全量  100.00(重量部) … 【0031】本実施例では、底面の直径が40mmのサンプル採取器に、嚥下補助飲料を15mmの高さに充填し、プランジャー直径は2cm、圧縮速度は10mm/sec、クリアランスは5mm、測定温度は20℃であった。図1より、最大荷重は146g、プランジャー面積は3.14cm2であるので、本実施例の嚥下補助飲料のゼリー強度は、46.6g/cm2であった。 【0032】(実施例2)以下の配合処方を用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本実施例の嚥下補助飲料を得た。実施例1と同様にゼリー強度を測定し、得られた結果を図2に示した。また、本実施例の嚥下補助飲料のゼリー強度は、51.9g/cm2であった。 【0033】 成分            配合量(重量部) 寒天               0.20 ローカストビーンガム       0.05 ペクチン             0.04 カラギナン            0.02 キサンタンガム          0.01 クエン酸             0.21 クエン酸三ナトリウム       0.14 マンニトール           8.81 香料               0.10 精製水             90.42 全量  100.00(重量部)」 イ 甲C1に記載された発明(甲C1発明) 上記ア(ア)~(ウ)の記載から、甲C1には以下の甲C1発明が記載されているといえる。 「ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガムと、エリスリトール、マンニトールとを含み、薬剤の服用時に薬剤と混合する嚥下困難者用のローカロリー・ノンシュガー嚥下補助飲料である、嚥下補助飲料。」 ウ 対比・判断 (ア)「ローカストビーンガム」、「カラギナン」、「キサンタンガム」は、本件発明でいう「(その他の)増粘多糖類」に相当する。「エリスリトール」、「マンニトール」は、本件発明でいう「甘味料」に相当する。 また、実施例1、2とも、ゼリー強度が測定できているので、甲C1発明に係る「嚥下補助飲料」は、本願発明でいう「服用補助用ゼリー」に相当するものと認められる。そうすると、本件発明1と甲C1発明とは、以下の点で一致する。 「ペクチン、寒天およびその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤と、甘味料とを含み、ゲル化し、薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される薬剤の服用補助用ゼリーであって、その他の増粘多糖類に、少なくともローカストビーンガムが含まれる、薬剤の服用補助用ゼリー。」 そして、本件発明1と甲C1発明とは、以下の点で相違する。 相違点c1:本件発明1は「LMペクチン」と「ゲル化促進剤」を用いているのに対し、甲C1発明は「ペクチン」を用いており、「ゲル化促進剤」を用いるとはされていない点。 相違点c2:本件発明1は「LMペクチンが薬剤の服用補助用ゼリーに対して1~3重量%含まれ(る)」のに対し、甲C1発明ではこのような特定がない点。 相違点c3:本件発明1は「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、硬さが、2000~6000N/m2であり、付着性が、200~500J/m3であり、凝集性が、0.2~0.6であり、当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下である」のに対し、甲C1発明はこれらの物性が明らかでない点。 (イ)相違点について検討する。 甲C2には以下の記載がある。 「【請求項1】 液状食品を嚥下するのにこれを凝固させるためのキットであって、ローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される1種又は2種以上の増粘材を含む溶液と、カルシウム溶液とを対にしてなる嚥下補助食品。 【請求項2】 ローメトキシルペクチンを含む溶液と、固形分換算でローメトキシルペクチン1gに対してカルシウム20~150mgを含むカルシウム溶液とを対にしてなる請求項1記載の嚥下補助食品。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記市販品は、液状食品に「とろみ」をつけるものであり、液状食品は粘度が上がって(粘性がついて)べたべたしたものになる。そして、このべたべたした液状食品は、上記弱者が摂食はできるものの、嚥下しにくいため喉に留まっているうちにむせて誤嚥してしまうことがある。したがって、この市販品は液状食品の嚥下補助食品としては最良のものではない。そこで、本発明は、液状食品を適度な堅さにゲル凝固させて、この凝固物を弱者が誤嚥することなくつるりと嚥下できるようにすることのできる嚥下補助食品を提供することを目的とする。」 「【0007】本発明の「嚥下補助食品」は、液状食品を嚥下するためにこれを凝固させるためのキットであって、増粘材を含む溶液とカルシウム溶液とを対にしてなるものである。この「増粘材」とはローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される1種又は2種以上からなるものである。本発明において「ローメトキシルペクチン(以下、「LMペクチン」ともいう)」とは、エステル化度が50%以下のペクチンをいう。LMペクチンはカルシウムと反応してゲル化し、液状食品を凝固させて適度な堅さにして嚥下しやすくする役割をする。…」 これらの摘示事項から、甲C2には、「LMペクチン」と本件発明でいう「ゲル化促進剤」に相当する「カルシウム」を含み、「液状食品を適度な堅さにゲル凝固させ」る、「嚥下補助食品」が記載されているといえる。 しかし、甲C2に係る「嚥下補助食品」は、「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ものではない。仮に、「薬剤の服用時に薬剤と混ぜて服用される」ことに転用しうるとしても、甲C1発明では、「ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガム(と、エリスリトール、マンニトール)」によって、既にゲル化剤が構成されており、このゲル化剤において、あえて「ペクチン」を「LMペクチン」とし、甲C2に記載の「カルシウム」を「ゲル化促進剤」として含ませることの動機づけは存在しない。甲C3、甲C4の記載事項に鑑みても、同様である。 また、「ペクチン」を「LMペクチン」として、その「ゲル化促進剤」となる「乳酸カルシウム」を添加することができたとしても、そうすることで「離水が十分に少ない」(本件明細書【0012】)ものが得られることが予測可能であるとはいえない。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 エ 本件発明2~6、8、9について 上記のとおり、本件発明1は、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 本件発明2~6、8、9は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2~6、8、9も、本件発明1と同様、甲C1ないしC4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。 オ まとめ 以上のことから、申立人Cの申立ての理由には理由がない。 4 申立人Dの異議申立ての理由について (1)異議申立ての理由の概要 申立人Dの異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 ・申立ての理由1 請求項1~4に係る発明は、下記甲第1、3、4号証に記載された発明に基づいて、請求項5~8に係る発明は、下記甲第1、3、4、6号証に記載された発明に基づいて、請求項9に係る発明は、下記甲第1、3、4、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 ・申立ての理由2 請求項1~4に係る発明は、下記甲第1、5-1号証に記載された発明に基づいて、請求項5~8に係る発明は、下記甲第1、5-1、6号証に記載された発明に基づいて、請求項9に係る発明は、下記甲第1、5-1、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 ・申立ての理由3 請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 ・申立ての理由4 請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 甲第1号証  :特開2004-97114号公報 (以下、「甲D1」という。) 甲第2号証  :三晶株式会社ウェブページ「ペクチン」 http://sansho.co.jp/find/polthknr/pectin/ (以下、「甲D2」という。) 甲第3号証  :特開2004-173678号公報 (以下、「甲D3」という。) 甲第4号証  :食安発第0212001号 「特別用途食品の表示許可等について」 厚生労働省医薬食品局食品安全部長、 平成21年2月12日、9-11頁 (以下、「甲D4」という。) 甲第5-1号証:日本薬剤学会第29年会における株式会社モリモト医薬 の発表「服薬補助ゼリーキットの開発」 http://www.morimoto-iyaku.jp/wp-content/img/ download/104_jerry_yakugakkai_201405.pdf (以下、「甲D5-1」という。) 甲第5-2号証:株式会社モリモト医薬ウェブページ 「商品紹介 服用支援ゼリー eジュレオレンジ」 http://www.morimoto-iyaku.jp/ejyure-2 (以下、「甲D5-2」という。) 甲第6号証  :国際公開第2010/113325号 (以下、「甲D6」という。) 甲第7号証  :川端晶子「ペクチンに関する調理科学的研究 -果実ペクチンの化学的性状ならびに物性-」 家政学雑誌, 36(8)1985, p561-576 (以下、「甲D7」という。) 甲第8号証  :百合草明子他「嚥下食に向くペクチン-Caゲルの動的 粘弾性」日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌, 3(2)1999, p84の抄録 http://mol.medicalonline.jp/ journal/abstract?GoodsID=cb5dvsph/1999/000302/059 &name=0084-0084j&UserID=5000246154 (以下、「甲D8」という。) 甲第9号証  :DSP五協フード&ケミカル株式会社のWebページ 「多糖類とは ペクチン」 http://www.tatourui.com/about/type/05_pectin.html (以下、「甲D9」という。) (2)申立ての理由1ないし2について 上記第4の2において検討したとおりであるから、本件発明1~6、8、9は、甲D1ないしD9に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえず、申立人Dの申立ての理由1ないし2には理由がない。 (3)申立ての理由3について ア 申立人Dは、以下のとおり主張する。 「本件特許明細書の実施例ではどのようなLMペクチンを使用したかが不明であり、幾種かの市販のLMペクチンを用いても本件特許明細書の実施例で特定された特性が得られない。少なくとも本件特許明細書の実施例ではどのようなLMペクチン(商品名やエステル化度)を用いることで特許発明1を実施できるかが不明であるために、当業者は本件特許発明1を実施できないことが明らかである。 また、上記異議申立人の行った実験より、LMペクチンとしてはどのようなLMペクチンでも本件特許発明1を実施できる訳ではないことも分かる。すなわち、本件特許明細書の実施例で使用されたLMペクチン(エステル化度などの物性値や種類が特定できないLMペクチン)でのみ本件特許発明1が実施可能に記載されていて、他のLMペクチンでは本件特許発明1を実施できないことが異議申立人の実験より明らかである。したがって、…発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさないと言える。」(申立人Dの特許異議申立書51頁9~23行) 本件発明の詳細な説明【0016】には、以下の記載がある。 「『LMペクチン』としては、カルシウムイオン等のゲル化促進剤の存在下でゲル化するものであれば、いかなるものでも使用することができる。例えば、脱エステル方法における酸処理タイプおよびアルカリ処理タイプのいずれも使用できるが、好ましくは酸処理タイプのものが挙げられる。好ましいLMペクチンとしては、例えばエステル化度が26~34%でアミド化度が15~22%のものが挙げられ、エステル化度が28~34%でアミド化度が15~20%のものがより好ましく、エステル化度が28~33%でアミド化度が15~22%のものがさらに好ましい。」 本件発明の実施例において使用されたLMペクチンは、具体的に何であるか、本件発明の詳細な説明には明示されていないが、 「当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断して生成されたゼリーの20±2℃の物性は、 硬さが、2000~6000N/m2であり、 付着性が、200~500J/m3であり、 凝集性が、0.2~0.6であり、 当該薬剤の服用補助用ゼリーを細断してから10分後のゼリーの離水が、当該薬剤の服用補助用ゼリーに対して3重量%以下」との物性を有する薬剤の服用補助用ゼリーは、実施例1~13、16~25によって、得られることが示されており、また、上記記載を基に、「LMペクチン」、更には「寒天および少なくともローカストビーンガムを含むその他の増粘多糖類を含有するゲル化剤」と、「ゲル化促進剤」と、「甘味料」を適宜選択して本件特許発明を実施してみることは、当業者において適宜可能なものと認められる。 このため、上記主張に基づく異議申立ての理由には、理由がない。 イ また、申立人Dは、以下のとおり主張する。 「本件特許明細書の発明の詳細な説明…を見ると、…。ローカストビーンガムを用いた実施例1~15では、硬さ、付着性及び凝集性並びに10分後の離水はいずれも発明特定事項C及びDを満たしている…。一方、増粘多糖類であるキサンタンガムを単独で含む比較例3及び4のゼリーでは、硬さ及び凝集性がいずれも発明特定事項Cを満たしていない。すなわち、比較例3及び4は、発明特定事項A1の「その他の増粘多糖類」の下位概念を示すキサンタンガムを単独で用いると発明を実施することができないことを示している。また、キサンタンガムを単独で使用しても発明を実施できないということは、キサンタンガム以外の増粘多糖類(ローカストビーンガムを除く)を単独で使用しても発明を実施することができない可能性が高いと言える。したがって、本件特許発明1は、…発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさない。」(申立人Dの特許異議申立書52頁11~26行) しかし、上記第2で示したとおり、本件訂正は認められ、上記第3で示したとおり、本件発明は、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須となった。そして、本件発明の詳細な説明に記載された「実施例」は本件発明の物性を満たし、同「比較例」は本件発明の物性を満たさないことが明らかとなった。 このため、上記第4の3と同旨により、上記主張に基づく異議申立ての理由には、理由がない。 ウ 以上のことから、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~6、8、9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえず、申立人Dの申立ての理由3には理由がない。 (4)申立ての理由4について 申立人Dは、以下のとおり主張する。 「比較例3、4及び6、並びに実施例14、15の結果からすれば、本件特許発明1のゼリーの特性を満たすために必要な成分が本件特許の請求項1に記載されていなかったり、本件特許発明1のゼリーの特性を満たすために必要でない成分が本件特許の請求項1に記載されていたりするので、請求項1の発明は十分に特定されていない。よって、出願時の技術常識を考慮すると、機能、特性等によって記載された発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり、…特許法36条第6項2号に違反している。」(申立人Dの特許異議申立書54頁19行~55頁2行) しかし、上記第2に示したとおり本件訂正が認められることにより、訂正前の「実施例14」及び「実施例15」は、それぞれ「参考例14」及び「参考例15」となり、「LMペクチン」、「寒天」、その他の増粘多糖類として「ローカストビーンガム」、「甘味料」の四成分が必須である本件発明の範囲外のものとなった。 このため、上記第4の5と同旨により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの理由で本件発明1~6、8、9に係る特許を取り消すことはできず、申立人Dの申立ての理由4には理由がない。 5 申立人からの意見書について 申立人A~Dは、それぞれ本件訂正後に意見書を提出したが、それらの主張を参酌しても、申立人A~Dが示したいずれの異議申立ての理由にも理由がない。 6 まとめ 以上、申立人A~Dが示したいずれの異議申立ての理由にも理由がなく、係る異議申立ての理由からは、本件発明1~6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1~6、8、9に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項7に係る発明の特許については、上述のとおり、この請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議申立ての対象となる特許が存在しないものとなったことから、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701074

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