特許異議申立
2017-700997
紫外線発光素子
- 審判番号
- 2017-700997
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-271867外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月18日
- 審決日
- 2018年11月08日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の2第2項、特許法第126条第4項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6117541号発明「紫外線発光素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6117541号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-25〕について訂正することを認める。
特許第6117541号の請求項1ないし25に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6117541号の請求項1ないし25に係る特許についての出願は、平成24年12月13日に出願され、平成29年3月31日にその特許権の設定登録がされ、同年4月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年10月18日に特許異議申立人田島仁により特許異議の申立てがされ、同年11月16日に特許異議申立人田島仁により上申書が提出され、当審は、平成30年2月26日付け(3月1日発送)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年5月29日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、同年6月19日付け(6月22日発送)で訂正拒絶理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月3日に意見書及び手続補正書を提出した。
なお、同年8月14日付けで当審から特許異議申立人に特許法第120条の5第5項の規定に基づく書面等を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人から応答はなかった。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の趣旨及び訂正の内容
平成30年8月3日付け手続補正によって補正された、平成30年5月29日付けの本件訂正請求書における請求の趣旨は、「特許第6117541号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項1~25について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。また、平成30年8月3日付け手続補正によって補正された、平成30年5月29日付けの本件訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)の内容は以下のア~サのとおりである(下線部は訂正箇所を示す。以下、同じ。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1導電型半導体層と前記第1電極層との間に配置されるオーミック層と、を含み」と記載されているのを、「前記第1導電型半導体層と前記第1電極層との間に配置されるオーミック層と、前記第1電極層の上に配置される第1電極と、前記第2電極層の上に配置される第2電極と、を含み」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15、17~20及び22~25も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1及び第2電極層のうちの少なくとも1つは反射層を含み、前記オーミック層は、前記活性層の周りに沿って配置される閉ループ形状(closed-loop shape)であり」と記載されているのを、「前記第1及び第2電極層のうちの少なくとも1つは反射層を含み、第1領域は、第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域であり、且つ、前記第1電極と前記第2電極の間の領域であって前記オーミック層が配置されている領域を含み、前記オーミック層は、前記活性層の周りに沿って配置される閉ループ形状(closed-loop shape)であり」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15、17~20及び22~25も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置され」と記載されているのを、「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の前記メサエッチングによって露出された側面に接して配置され」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15、17~20及び22~25も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11に「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域と前記活性層が接しない周辺領域を含む」と記載されているのを、「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域を含み、前記第1領域は前記活性層と接しない」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する)とともに、特許請求の範囲の請求項12に「前記中央領域は前記周辺領域に対して下方に突出する」と記載されているのを、「前記中央領域は前記第1領域に対して下方に突出する」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14に「前記オーミック層の面積は、前記第1電極層の面積と同一または小さい」と記載されているのを、「前記オーミック層の面積は、前記第1電極層の面積と同一または前記第1電極層の面積より小さい」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項17を請求項16の従属形式請求項から請求項1の従属請求項に変更する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項21を削除する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項24に「前記第2反射層」及び「第1反射層」と記載されているのを、それぞれ「前記第2電極層」及び「前記第1電極層」に訂正する。
コ 訂正事項10
明細書の段落【0056】に「メサエッチングされて露出した第1導電型半導体層15の周辺領域を第1領域41と命名し、メサエッチングされず、そのままに残った活性層17と第2導電型半導体層19またはメサエッチングによりされていない第1導電型半導体層15だけでなく、上記露出していない第1導電型半導体層15の中央領域に対応する活性層17及び第2導電型半導体層19が形成された領域を第2領域43と命名する。」と記載されているのを、「メサエッチングされて露出した第1導電型半導体層15の周辺領域を第1領域41と命名し、メサエッチングされず、そのままに残った活性層17と第2導電型半導体層19またはメサエッチングにより露出されていない第1導電型半導体層15だけでなく、上記露出していない第1導電型半導体層15の中央領域に対応する活性層17及び第2導電型半導体層19が形成された領域を第2領域43と命名する。」に訂正する。
サ 訂正事項11
明細書の段落【0117】に「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から遠く離隔するように上記第1導電型半導体層15をより深くエッチングしてくれることができる。」と記載されているのを、「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から離隔するように上記第1導電型半導体層15をより深くエッチングしてくれることができる。」に訂正する。
(2)本件訂正請求は、一群の請求項〔1~25〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~25〕について請求されたものである。
したがって、訂正前の請求項1~25は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
よって、訂正事項1~11に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に係る特許発明では、「紫外線発光素子」が「第1電極」及び「第2電極」を含むことについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正事項1は、請求項1に、紫外線発光素子が「前記第1電極層の上に配置される第1電極と、前記第2電極層の上に配置される第2電極と、」を含むことを限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項1は、明細書の段落【0092】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る発明並びに訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2~15、17~20及び22~25に係る発明の技術的範囲を狭めるものであるにとどまり、それらのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に係る特許発明では、「前記第1導電型半導体層の第1領域」については何ら特定されていない。
これに対して、訂正事項2は、請求項1に、「前記第1領域は、前記第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域であり、且つ、前記第1電極と前記第2電極の間の領域であって前記オーミック層が配置されている領域を含み、」との記載を追加することにより、「第1領域」が、「前記第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域であり、且つ、前記第1電極と前記第2電極の間の領域であって前記オーミック層が配置されている領域を含」むことを限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項2は、明細書の段落【0053】~【0056】並びに図面の図4及び6に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項1~15、17~20及び22~25に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項1における「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置され」との記載を「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の前記メサエッチングによって露出された側面に接して配置され」との記載に訂正することにより、「オーミック層」が「接するように配置される」「第1導電型半導体層の側面」を限定しようとするものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項3は、明細書の段落【0109】及び【0117】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、請求項1~15、17~20及び22~25に係る発明の技術的範囲を明確にするものであるにとどまり、それらのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項11における「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域と前記活性層が接しない周辺領域を含む」との記載を、「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域を含み、前記第1領域は前記活性層と接しない」との記載に訂正するとともに、特許請求の範囲の請求項12における「前記中央領域は前記周辺領域に対して下方に突出する」との記載を、「前記中央領域は前記第1領域に対して下方に突出する」との記載に訂正することにより、訂正前の請求項11及び12における「周辺領域」が、訂正後の請求項1~15、17~20及び22~25に係る発明における「第1領域」と同一の構成であることを明確にするものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項4は、明細書の段落【0056】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、請求項11及び12に係る発明の技術的範囲を明確にするものであるにとどまり、それらのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項14における「前記オーミック層の面積は、前記第1電極層の面積と同一または小さい」との記載を、「前記オーミック層の面積は、前記第1電極層の面積と同一または前記第1電極層の面積より小さい」との記載に訂正することにより、「オーミック層の面積」と比較されている対象が「第1電極層の面積」であることを明確にするものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項5は、明細書の段落【0120】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、請求項14に係る発明の技術的範囲を明確にするものであるにとどまり、それらのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
カ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の請求項16の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項16の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、訂正前の請求項16の記載を削除するのみであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
キ 訂正事項7について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項7は、請求項17を訂正前の請求項16を引用する形式から請求項1を引用する形式に変更するものである。
当該訂正事項は、上記カの訂正事項6に付随するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項7は、実質的に見て、請求項17に係る特許発明の技術的範囲を変更するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、実質的に見て、請求項17に係る特許発明の技術的範囲を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ク 訂正事項8について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項21の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の2第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項8は、訂正前の請求項21の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、訂正前の請求項21の記載を削除するのみであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ケ 訂正事項9について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項9は、訂正前の請求項24における「前記第2反射層」及び「第1反射層」との記載を、それぞれ「前記第2電極層」及び「前記第1電極層」との記載に訂正するものである。
訂正前の請求項24が引用する請求項1には「第2反射層」の語句は記載されていないところ、訂正事項9は、訂正前の請求項24に存在した誤記又は誤訳を解消するとともに、訂正前の請求項24における「前記第2反射層」及び「第1反射層」がそれぞれ訂正後の請求項1~15、17~20及び22~25に係る発明における「第2電極層」及び「第1電極層」と同一の構成であることを明確にするものである。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正、及び/又は、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項9は、明細書の段落【0077】に基づいて導き出される構成であるから、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9は、請求項24に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
コ 訂正事項10について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項10は、明細書の段落【0056】における「メサエッチングによりされていない第1導電型半導体層15」との記載を「メサエッチングにより露出されていない第1導電型半導体層15」との記載に訂正することにより、段落【0056】に存在した誤記又は誤訳を訂正するものである。
よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項10は、明細書の段落【0056】及び図面の図1~7に基づいて導き出される構成であるから、当該訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項10は、請求項5~13及び25に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
サ 訂正事項11について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項11は、明細書の段落【0117】における「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から遠く離隔するように上記第1導電型半導体層15をより深くエッチングしてくれることができる」との記載を「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性隔するように上記第1導電型半導体層15はより深くエッチングされる層17の側面から離隔するように上記第1導電型半導体層15はより深くエッチングされることがある。」との記載に訂正することにより、段落【0117】に存在した誤記又は誤訳を訂正するものである。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項11は、明細書の段落【0117】及び図面の図1~7に基づいて導き出される構成であるから、当該訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項11は、請求項1~15、17~20及び22~25に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
シ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1~25に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているため、訂正事項1~11に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(4)明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明
上記(3)コ(ア)に記載したとおり、訂正事項10は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、これは請求項5及び6並びに請求項5を引用する請求項7~13、16、17、24及び25に関係する訂正である。
また、上記サ(ア)に記載したとおり、訂正事項11は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、これは請求項1及び請求項1を引用する請求項2~25に関係する訂正である。
ここで訂正事項10及び11に係る請求項の全てを含む一群の請求項である請求項1~25が訂正請求の対象とされている。
よって、訂正事項10及び11は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合し、また、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~25〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし25に係る発明(以下、順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明25」という。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置され、多数の化合物半導体層を含み、前記化合物半導体層は少なくとも第1導電型半導体層、活性層、及び第2導電型半導体層を含む発光構造物と、
前記第1導電型半導体層の第1領域の上に配置される第1電極層と、
前記第2導電型半導体層の上に配置される第2電極層と、
前記第1導電型半導体層と前記第1電極層との間に配置されるオーミック層と、
前記第1電極層の上に配置される第1電極と、
前記第2電極層の上に配置される第2電極と、を含み、
前記第1電極層は前記活性層の側面から離隔するように配置され、
前記第1電極層は前記活性層の周りに沿って配置され、
前記第1及び第2電極層のうちの少なくとも1つは反射層を含み、
前記第1領域は、前記第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域であり、且つ、前記第1電極と前記第2電極の間の領域であって前記オーミック層が配置されている領域を含み、
前記オーミック層は、前記活性層の周りに沿って配置される閉ループ形状(closed-loop shape)であり、
前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の前記メサエッチングによって露出された側面に接して配置されることを特徴とする、紫外線発光素子。
【請求項2】
前記第1電極層は、1つまたは2つ以上の層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項3】
前記第1電極層は240nm乃至360nmの波長を有する紫外線光を反射させる物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項4】
前記物質は不透明な金属物質であることを特徴とする、請求項3に記載の紫外線発光素子。
【請求項5】
前記活性層と前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体層がオーバーラップする第2領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項6】
前記第1領域に配置された前記第1電極層の上面を含む平面と、前記第2領域に配置された前記第2電極層の下面を含む平面との間の垂直距離は、少なくとも前記第2領域の前記活性層及び前記第2導電型半導体層の厚さより大きいことを特徴とする、請求項5に記載の紫外線発光素子。
【請求項7】
前記第1導電型半導体層は前記活性層の側面を基準に外方に延びることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項8】
少なくとも前記活性層と前記第2導電型半導体層の厚さに対応する深さを有するグルーブ(groove)をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項9】
前記グルーブは、前記活性層と前記第2導電型半導体層の周りに沿って前記第1導電型半導体層の背面の上に形成されることを特徴とする、請求項8に記載の紫外線発光素子。
【請求項10】
前記第1電極層の背面は前記活性層の上面より高い位置に配置されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項11】
前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域を含み、
前記第1領域は前記活性層と接しないことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項12】
前記中央領域は前記第1領域に対して下方に突出することを特徴とする、請求項11に記載の紫外線発光素子。
【請求項13】
前記活性層及び前記第2導電型半導体層の側面の1つまたは2つ以上の領域は外方に突出することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項14】
前記オーミック層の面積は、前記第1電極層の面積と同一または前記第1電極層の面積より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項15】
前記発光構造物の側面上に配置される保護層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項16】(削除)
【請求項17】
前記第1電極は前記第1電極層より高い電気伝導度を有することを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項18】
前記保護層は、前記第1領域に配置された前記第1導電型半導体層上に配置されることを特徴とする、請求項15に記載の紫外線発光素子。
【請求項19】
前記オーミック層は前記活性層の周りに沿って前記第1導電型半導体層の背面の上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項20】
前記オーミック層は前記第1電極層により囲まれることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項21】(削除)
【請求項22】
前記オーミック層の幅は前記第1電極層の幅と相異することを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項23】
前記第1電極層は前記オーミック層の側面と背面を両方ともカバーすることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項24】
前記第2電極層と前記活性層との間の距離は前記第1電極層と前記活性層との間の距離より大きいことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。
【請求項25】
フリップ型に構成されたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線発光素子。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が平成30年2月26日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<取消理由1>
本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<取消理由2>
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
1 取消理由2(特許法第36条第6項第2号:明確性要件)
請求項1、11及び請求項1、11を直接的又は間接的に引用する請求項2~10、12~25に係る発明が、明確でないから、本件特許発明1、11及び請求項1、11を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2~10、12~25の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由1(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)
(1)明細書の発明の詳細な説明の段落【0117】には、「図示してはいないが、上記活性層17との電気的なショートが発生しなければ、上記オーミック層25は上記第1導電型半導体層15の側面に接するように形成されることもできる。このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から遠く離隔するように上記第1導電型半導体層15をより深くエッチングしてくれることができる。」と記載されている。下線部の当該記載は、日本語として意味が不明である(「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から離隔するように上記第1導電型半導体層15はより深くエッチングされることがある。」の誤訳と認められる。)。
(2)明細書の発明の詳細な説明の段落【0056】には、「メサエッチングされて露出した第1導電型半導体層15の周辺領域を第1領域41と命名し、メサエッチングされず、そのままに残った活性層17と第2導電型半導体層19またはメサエッチングによりされていない第1導電型半導体層15だけでなく、上記露出していない第1導電型半導体層15の中央領域に対応する活性層17及び第2導電型半導体層19が形成された領域を第2領域43と命名する。」と記載されている。
下線部の当該記載は、日本語として意味が不明である(「メサエッチングにより露出されていない第1導電型半導体層15」の誤訳と認められる。)。
よって、本件は、明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本願の請求項1、5及び請求項1、5を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~25に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない特許出願に対してされたものである。
(2)当審の判断
ア 取消理由1(特許法第36条第4項第1号の違反)について
(ア)本件訂正により、訂正前の明細書の段落【0117】の「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から遠く離隔するように上記第1導電型半導体層15をより深くエッチングしてくれることができる。」との記載は、「このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から離隔するように上記第1導電型半導体層15はより深くエッチングされることがある。」に変更された。
また、訂正前の段落【0056】の「メサエッチングによりされていない第1導電型半導体層15」との記載は、「メサエッチングにより露出されていない第1導電型半導体層15」に変更された。
それにより、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1、5及び請求項1、5を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~25に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとなり、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
(イ)以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし25に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、取消理由1によっては、本件訂正発明1ないし25に係る特許を取り消すことができない。
イ 取消理由2(特許法第36条第6項第2号の違反)について
(ア)本件訂正の訂正事項4により、訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域と前記活性層が接しない周辺領域を含む」との記載は、「前記第1導電型半導体層は前記活性層が接する中央領域を含み、前記第1領域は前記活性層と接しない」に変更され、訂正前の特許請求の範囲の請求項12の「前記中央領域は前記周辺領域に対して下方に突出する」との記載は、「前記中央領域は前記第1領域に対して下方に突出する」と変更された。
それにより、請求項1、11及び請求項1、11を直接的又は間接的に引用する請求項2~10、12~25に係る発明は、明確となり、請求項1~25の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
(イ)以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし25に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、取消理由2によっては、本件訂正発明1ないし25に係る特許を取り消すことができない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立ての理由1(特許法第29条第2項違反)について
ア 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1の発明特定事項AからKは、甲1発明~甲3発明と一致し、したがって、本件特許発明1は、甲1発明~甲3発明から当業者にとって容易想到であり、進歩性があるとはいえない、また、本件特許発明2から25は、甲1発明から甲11発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、進歩性があるとはいえない旨(申立ての理由1)を主張している。
イ(ア)甲第1号証(特開2006-5215号公報)は、「基板と、該基板上に配置された半導体層とを有し、該半導体層は、前記基板側から順に積層された第1導電型の半導体層と、発光層と、第2導電型の半導体層と、前記第1および第2導電型の半導体層に接するようにそれぞれ配置された第1および第2の電極とを含み、前記基板は、発光層の放出光に対して透明であり、前記半導体層の端面は、前記第1導電型の半導体層の端面に設けられた、前記基板面に略平行な第1のテラスと、前記第1のテラスよりも前記基板側に設けられた、前記基板面に対して傾斜した端面領域とを含み、前記第1の電極は光反射性であり、前記傾斜した端面領域に配置され、前記発光層から放出された光を前記基板に向かって反射することを特徴とする半導体発光素子。」(請求項1参照)を開示している。
(イ)甲第1号証の図2、3、6、20は、以下のとおりである。
(ウ)また、甲第1号証の図2、3を参照すると、図20に示された発光素子において、発光層102は、p型オーミック電極105の下方(基板側に)のp型窒化物半導体層103のさらに下方にあり、n型オーミック電極104はp型オーミック電極の周りに沿って配置されていることが見てとれるから、甲第1号証には、n型オーミック電極104は発光層の周りに沿って配置されていることが開示されているといえる。
(エ)さらに、甲第1号証には、図20に示された発光素子において、n形オーミック電極104の上にn型電極パッド107が配置されていることが見てとれる。
(オ)甲第1号証の段落【0027】、【0030】、【0031】の第1の実施の形態についての記載、段落【0050】~【0055】(特に段落【0054】)、【0059】~【0061】(特に段落【0061】)及び段落【0100】の記載並びに図2、3、6、10を勘案すると、甲第1号証は、段落【0096】及び図20に示された第3の実施の形態について、以下の発明(以下「引用発明」という。)を開示していると認められる。
「基板と、該基板上に配置された半導体層とを有し、該半導体層は、前記基板側から順に積層された第1導電型の半導体層と、発光層と、第2導電型の半導体層と、前記第1および第2導電型の半導体層に接するようにそれぞれ配置された第1および第2の電極とを含み、前記基板は、発光層の放出光に対して透明であり、前記半導体層の端面は、前記第1導電型の半導体層の端面に設けられた、前記基板面に略平行な第1のテラスと、前記第1のテラスよりも前記基板側に設けられた、前記基板面に対して傾斜した端面領域とを含み、前記第1の電極は光反射性であり、前記傾斜した端面領域に配置され、前記発光層から放出された光を前記基板に向かって反射する半導体発光素子であって、
予め前記半導体層が形成されたウエハ状の基板にレジスト層を形成した後、レジスト端部を傾斜させ、この基板を、RIE装置で前記半導体層を所定の深さまでドライエッチングして、前記半導体層の端面を傾斜形状にし、最後にレジスト層を溶解除去、洗浄すると、第1のテラスまでの形状が前記予め形成された前記半導体層に加工されたものであり、
第1の電極はn型オーミック電極であり、n型オーミック電極は発光層の周りに沿って配置され、
n型オーミック電極の上にn型電極パッドが配置され、
前記第1のテラスを設けることにより、n型オーミック電極と発光層の端面と距離を基板面と略平行な方向について大きくとり、かつ、層厚方向には接近させ、
波長380nmから赤外光を発する、半導体発光素子。」
ウ 本件訂正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)甲第1号証には、「半導体層」の具体例として、窒化物半導体層11が記載されており、また、段落【0100】の記載及び技術常識を勘案すると、引用発明の「第1導電型の半導体層」、「発光層」及び、「第2導電型の半導体層」は、本件訂正発明1の「多数の化合物半導体層」に相当するとともに、引用発明の「第1導電型の半導体層」、「発光層」、「第2導電型の半導体層」及び「半導体層」は、それぞれ、本件訂正発明1の「第1導電型半導体層」、「活性層」、「第2導電型半導体層」及び「発光構造物」に相当する。
(イ)引用発明の「第1の電極」、「第2の電極」、「n型電極パッド」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1電極層」、「第2電極層」、「第1電極」に相当する。また、引用発明1の「第1の電極は光反射性であり」、「前記発光層から放出された光を前記基板に向かって反射する」から、本件訂正発明1と引用発明とは「第1電極層は反射層を含」む点で共通する。
(ウ)引用発明は、「n型オーミック電極は発光層の周りに沿って配置され」たものであるから、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記第1電極層は前記活性層の周りに沿って配置され」たものである点で一致する。
また、引用発明は、「n型オーミック電極と発光層の端面と距離を基板面と略平行な方向について大きくとり、かつ、層厚方向には接近させ」たものであるから、n型オーミック電極(第1電極層)は発光層の側面から離隔するように配置されたものであるといえる。
したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記第1電極層は前記活性層の側面から離隔するように配置され」たものである点で一致する。
(エ)引用発明は、「前記半導体層の端面は、前記第1導電型の半導体層の端面に設けられた、前記基板面に略平行な第1のテラスと、前記第1のテラスよりも前記基板側に設けられた、前記基板面に対して傾斜した端面領域とを含み」、「予め前記半導体層が形成されたウエハ状の基板にレジスト層を形成した後、レジスト端部を傾斜させ、この基板を、RIE装置で前記半導体層を所定の深さまでドライエッチングして、前記半導体層の端面を傾斜形状にし、最後にレジスト層を溶解除去、洗浄すると、第1のテラスまでの形状が前記予め形成された前記半導体層に加工されたものであり」、「この基板を、RIE装置で前記半導体層を前記所定の深さまでドライエッチングして、前記半導体層の端面を傾斜形状」にすることは、本件訂正発明1の「前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出」することに相当する。引用発明の「第1のテラス」の領域が、本件訂正発明1の「第1領域」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記第1導電型半導体層の第1領域の上に配置される第1電極層」を含み、「前記第1領域は、前記第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域であ」る点で一致する。
(オ)引用発明の半導体発光素子は、「波長380nmから赤外光を発する」から、本件訂正発明1の「紫外線発光素子」に相当する。
(カ)以上をまとめると、本件訂正発明1と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「基板と、
前記基板の上に配置され、多数の化合物半導体層を含み、前記化合物半導体層は少なくとも第1導電型半導体層、活性層、及び第2導電型半導体層を含む発光構造物と、
前記第1導電型半導体層の第1領域の上に配置される第1電極層と、
前記第2導電型半導体層の上に配置される第2電極層と、
前記第1電極層の上に配置される第1電極と、を含み、
前記第1電極層は前記活性層の側面から離隔するように配置され、
前記第1電極層は前記活性層の周りに沿って配置され、
前記第1及び第2電極層のうちの少なくとも1つは反射層を含み、
前記第1領域は、前記第2導電型半導体層及び前記活性層が順次に、前記第1導電型半導体層も部分的にメサエッチングされたことによって露出した前記第1導電型半導体層の領域である、紫外線発光素子。」
<相違点>
<相違点1>
本件訂正発明1は、「前記第2電極層の上に配置される第2電極」を含むのに対し、引用発明では、第2の電極の上に配置される「第2電極」を含むことは特定されていない点。
<相違点2>
本件訂正発明1は、「前記第1導電型半導体層と前記第1電極層との間に配置されるオーミック層」を含み、(前記第1導電型半導体層の)「前記第1領域」は、「前記第1電極と前記第2電極の間の領域であって前記オーミック層が配置されている領域を含み」、「前記オーミック層は、前記活性層の周りに沿って配置される閉ループ形状(closed-loop shape)であり」、「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の前記メサエッチングによって露出された側面に接して配置される」のに対し、引用発明では、そのようなオーミック層を含むことについて特定されていない点。
エ 次に、上記相違点について検討する。
(ア)事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
引用発明において、「第1の電極」(本件訂正発明1の「第1電極層」に相当。)は「n型オーミック電極」であるから、さらに「オーミック層」を配置する動機付けを見出すことはできない。
しかも、引用発明は、「テラスを設けることにより、n型オーミック電極と発光層の端面と距離を基板面と略平行な方向について大きくとり、かつ、層厚方向には接近させ」たものであり、さらに、甲第1号証の段落【0043】には、図6について、「n型オーミック電極104は、光強度が弱い領域129の傾斜端面上における最外側位置101aから、サファイア基板100までの傾斜端面の区間を被覆すればよい。…(略)…n型窒化物半導体層101の傾斜端面のみをn型オーミック電極104で被覆することにより、横伝搬光をサファイア基板100の裏面(出射面)1001aから効率よく取り出すことができる。」と記載されているところ、さらなる「オーミック層」を、「第1導電型の半導体層」(本件訂正発明1の「第1導電型半導体層」に相当。)とn型オーミック電極である「第1の電極」との間であって、ドライエッチングして、傾斜形状にされた「半導体層の端面」(本件訂正発明1の「前記メサエッチングされたことによって露出された側面」に相当。)に「接して配置」することを、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
(イ)よって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし25に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反していない特許出願に対してされたものであり、申立ての理由1によっては、本件特許発明1ないし25に係る特許を取り消すことができない。
(2)申立ての理由2(特許法第36条第4項第1号違反)及び申立ての理由4(特許法第36条第6項第1号違反)について
ア(ア)特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1の「第1導電型半導体層」は、n型半導体層であると認められる、一方、本件明細書段落【0110】に「オーミック層」に使用できるとして記載された素材には、例えば、ITO等、p型のオーミック層に用いられる材料が含まれており、p型のオーミック層に用いられる材料を含むオーミック層を備える本件特許発明1は、当業者が製造できるように記載されたものではなく、使用できるように記載されたものでもない、したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない旨(申立ての理由2)を主張している。
(イ)また、「オーミック層が第1導電型半導体層の側面に接する」構成を示す実施例の記載がなく、かつ当該実施例と、「オーミック層が第1導電型半導体層の側面に接しない」構成を示す比較例との効果における差異が明らかにされていないので、当業者が本件特許発明1~25を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、また、本件特許発明1~25は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない旨(申立ての理由2、4)を主張している。
イ 上記ア(ア)について、本件明細書の段落【0021】には、「前記発光構造物20は多数の化合物半導体層を含むことができる。上記化合物半導体層のうちの1つの層は光を生成する活性層17であり、他の層は上記活性層17に供給してくれるための第1キャリア、即ち電子を生成する第1導電型半導体層15であり、更に他の層は上記活性層17に供給してくれるための第2キャリア、即ち正孔を生成する第2導電型半導体層19であることがあるが、これに対して限定するものではない。上記電子と上記正孔との再結合により上記活性層で光が生成できる。」と記載されている。したがって、本件明細書には、第1導電型半導体層15の供給キャリアと第2導電型半導体層の供給キャリアとの再結合により活性層で光が生成できれば、第1導電型半導体層15の供給キャリアである第1キャリアは、電子ではなく正孔であってもよく、「第1導電型半導体層15」は、n型半導体層には限定されない構成が開示されていることと認められる。
そして、本件明細書の段落【0110】には、第1導電型半導体層15により定義された第1領域41に形成されるオーミック層25に用いられる物質として、ITO等、p型のオーミック層に用いられる材料(甲第12~15号証を参照。)が挙げられている。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
ウ 上記ア(イ)について、本件訂正後の訂正明細書の段落【0117】には、「図示してはいないが、上記活性層17との電気的なショートが発生しなければ、上記オーミック層25は上記第1導電型半導体層15の側面に接するように形成されることもできる。このような場合、上記第1導電型半導体層15の背面が上記活性層17の側面から離隔するように上記第1導電型半導体層15はより深くエッチングされることがある。」と記載されている(下線は合議体が付加した。以下、同じ。)。
したがって、第1導電型半導体層15の背面を、活性層17の側面から離隔するように、第1導電型半導体層15を十分深くエッチングしてから、オーミック層25を第1導電型半導体層15の側面に接するように形成することにより、本件訂正発明1の「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置される」との構成を当業者であれば実施することができるものと認められる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件訂正発明1の「オーミック層が第1導電型半導体層の側面に接する」構成は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
エ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし25に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、申立ての理由2、4によっては、本件訂正発明1ないし25に係る特許を取り消すことができない。
(3)申立ての理由3(特許法第36条第6項第2号違反)について
ア 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1に記載の「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置される」は、本件明細書の段落【0116】に記載の「上記オーミック層25は上記活性層17と最大限近く形成される」ことを満たす種々の構成の中からあえて「オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置される」構成を選択して特定したことの技術的な理由が不明確であり(構成の不明確性)、また、本件特許発明1において、「オーミック層」が「第1導電型半導体層の側面に接するように配置される」ように構成することの技術的意義が不明である(技術的意義の不明確性)旨を主張している。
イ しかしながら、本件訂正後の訂正明細書の段落【0117】には、「図示してはいないが、上記活性層17との電気的なショートが発生しなければ、上記オーミック層25は上記第1導電型半導体層15の側面に接するように形成されることもできる。」と記載されており、その他「側面」の語句が記載されている段落【0057】~【0062】、図1、2、8、9などを参照すれば、第1導電型半導体層15の側面には、下記の図5に示されたように、上の側面と下の側面(メサの側面)の両者があるが、請求項1の「前記第1導電型半導体層の側面」とは、例えば、下記の図4では、符号43が付された第2領域の斜線部を囲む境界に対応する図5の第1半導体層15の活性層側の下の側面であることは明確である。
したがって、本件訂正発明1の「前記オーミック層は、前記第1導電型半導体層の側面に接するように配置される」の範囲は明確であり、本件訂正発明1を明確に把握できる。
よって、本件訂正発明1ないし25は、明確である。
ウ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし25に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、申立ての理由3によっては、本件訂正発明1ないし25に係る特許を取り消すことができない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし25に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700997