特許異議申立
2024-701127
モーターおよびこれを含む電動式操向装置
- 審判番号
- 2024-701127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-170599
- 登録番号
- 7492568
- 請求日
- 2024年11月20日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】小野 誠
- 【権利者代理人】金山 賢教
- 【権利者代理人】重森 一輝
- 【権利者代理人】市川 祐輔
- 【権利者代理人】岩瀬 吉和
- 【異議申立人】田中 貞嗣
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 打出 義尚
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1652.121-YAA(H02K) / P1652.537-YAA(H02K) / P1652.55 -YAA(H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7492568号発明「モーターおよびこれを含む電動式操向装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7492568号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7492568号の請求項1~4、9、11に係る特許を維持する。
特許第7492568号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7492568号の請求項1~13に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2016年(平成28年)11月 8日(パリ条約による優先権主張 2016年 1月 7日(KR)大韓民国)を国際出願日とする出願の一部を、令和3年 1月25日に新たな特許出願とした特願2021-9748について、その一部をさらに令和4年10月25日に新たな特許出願としたものであって、令和6年 5月21日にその特許権の設定登録がされ、令和6年 5月29日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年11月20日 : 特許異議申立人田中貞嗣(以下「異議申立
人」という。)による請求項1~4、9~
11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 2月28日付け: 取消理由通知書
令和7年 5月30日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
令和7年 6月 5日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和7年 7月 9日 : 異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年 5月30日に提出され、令和7年 6月 5日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、特許第7492568号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであって、本件訂正の内容は、以下の(1)~(3)のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1~4に係る「モーター。」を「モーターであって、前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、モーター。」に訂正する。
(請求項1~4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~9、13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項10を削除する。
(3)訂正事項3
請求項11~12に係る「請求項10に記載のモーター。」を「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。」に訂正する。
なお、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~13〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「モーター」及び「基板」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項10には、「前記基板上に配置されたブラケットを含み、前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。」と記載されている。よって、請求項1~4に係る「モーター。」を「モーターであって、前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、モーター。」とする訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載したすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。また、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項を削除する訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項11~12が請求項10の記載を引用する記載であるところ、請求項10が削除されて請求項10を引用できなくなったことに伴い、請求項11~12の記載を訂正後の請求項1~4を引用する記載とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、本件訂正後の請求項11~12に係る発明は、本件訂正前の請求項11~12に係る発明と同一であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 独立特許要件について
本件特許は、本件訂正前の請求項1~4、9~11について特許異議の申立てがされており、請求項11~12は明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正のみがされているので、本件訂正前の請求項1~4、9~12に対応する、本件訂正後の請求項1~4、9~12に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
本件訂正後の請求項5~8、13に係る発明については、下記第4及び第5と同様の理由により、進歩性の規定に違反するものではなく、サポート要件を満たし、新規事項が追加されたものではなく、他に特許を受けることができない理由も存在しないため、独立特許要件を満たす。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ローター;
前記ローターと対応して配置されるステーター;および
前記ローターの一側に配置される位置感知装置を含み、
前記位置感知装置は
基板、
前記基板上に配置される第1磁気素子部と第2磁気素子部、および
前記基板に配置される第1グラウンドパターンおよび第2グラウンドパターンを含み、
前記第1グラウンドパターンは前記第1磁気素子部と電気的に連結され、
前記第2グラウンドパターンは前記第2磁気素子部と電気的に連結され、
前記第1グラウンドパターンは第1接地端子と電気的に連結され、
前記第2グラウンドパターンは前記第1接地端子と離隔した第2接地端子と電気的に連結され、
前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず、かつ、空間的に配置場所が離れた、モーターであって、
前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、
前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、
モーター。
【請求項2】
ローター;
前記ローターと対応して配置されるステーター;
前記ローターの一側に配置される基板;
前記基板に配置される第1磁気素子部と第2磁気素子部;
前記第1磁気素子部と電気的に連結されるように前記基板に配置される第1グラウンドパターン;および
前記第2磁気素子部と電気的に連結されるように前記基板に配置される第2グラウンドパターンを含み、
前記第1磁気素子部と前記第2磁気素子部は前記基板内で電気的に分離され、
前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず、かつ、空間的に配置場所が離れた、モーターであって、
前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、
前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、
モーター。
【請求項3】
ローター;
前記ローターと対応して配置されるステーター;
前記ローターの一側に配置される基板;
前記基板に配置される第1磁気素子部と第2磁気素子部;
前記第1磁気素子部と電気的に連結される第1接地端子;
前記第2磁気素子部と電気的に連結される第2接地端子;
前記第1接地端子と電気的に連結される第1グラウンドパターン;および
前記第2接地端子と電気的に連結される第2グラウンドパターンを含み、
前記第1接地端子と前記第2接地端子は互いに離隔し、
前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず、かつ、空間的に配置場所が離れた、モーターであって、
前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、
前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、
モーター。
【請求項4】
ローター;
前記ローターと対応して配置されるステーター;
前記ローターの一側に配置される基板;
前記基板に配置される第1磁気素子部と第2磁気素子部;
前記第1磁気素子部と電気的に連結される第1接地端子;
前記第2磁気素子部と電気的に連結される第2接地端子;
前記第1接地端子と電気的に連結される第1グラウンドパターン;および
前記第2接地端子と電気的に連結される第2グラウンドパターンを含み、
前記第1磁気素子部と前記第2磁気素子部は前記基板内で電気的に分離され、
前記第1接地端子と前記第2接地端子は互いに離隔し、
前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず、かつ、空間的に配置場所が離れた、モーターであって、
前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、
前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む、
モーター。
【請求項5】
前記第1磁気素子部は、ホールシグナル磁気素子であり、
前記第2磁気素子部は、エンコーダーシグナル磁気素子である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項6】
前記第1磁気素子部は、第1半径を有する第1弧上に配置された複数の第1磁気素子を含み、
前記第2磁気素子部は、第2半径を有する第2弧上に配置された複数の第2磁気素子を含み、
前記第1半径は、前記第2半径と異なる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項7】
前記ローターの上に配置されるセンシングマグネットを含み、
前記センシングマグネットは、複数の第1磁気素子に対応するメインマグネットと、複数の第2磁気素子に対応するサブマグネットと、を含む、
請求項6に記載のモーター。
【請求項8】
前記複数の第1磁気素子は、前記メインマグネットのポール変化を検知し、
前記複数の第2磁気素子は、前記サブマグネットのポール変化を検知する、
請求項7に記載のモーター。
【請求項9】
前記第1グラウンドパターンは、前記基板の一方上に配置され、
前記第2グラウンドパターンは、前記基板の他方上に配置される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記孔は、前記第1グラウンドパターンと離隔する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項12】
前記孔は、前記基板の内側の円周接触面より前記基板の外側の円周接触面に近く配置される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項13】
前記基板は、内側の円周接触面と外側の円周接触面を含み、
前記第1グラウンドパターンは、前記外側の円周接触面より前記内側の円周接触面に近く、
前記第2グラウンドパターンは、前記内側の円周接触面より前記外側の円周接触面に近い、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモーター。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和7年 2月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、甲第1号証(以下「甲1」という。)に記載された発明及び文献1に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(サポート要件)
請求項1~4、9、11に係る発明は、下記理由2A~2Cにより、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~4、9、11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
・理由2A
本件発明1~4、9、11では、第1グラウンドパターンをブラケットに密着して配置することが特定されていないため、本件発明1~4、9、11は、「前記磁気素子は印刷回路基板に実装されてモーターのハウジングの内部に配置され得、電磁波(EMI)に脆弱な構造であるため、EMI試験時、電磁波不良の可能性が高い」との課題を解決するものとはいえない。
・理由2B
本件発明1~4、9、11の「前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず」との構成は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
・理由2C
本件発明9の「前記第1グラウンドパターンは、前記基板の一方上に配置され、前記第2グラウンドパターンは、前記基板の他方上に配置される」との構成は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(3)理由3(新規事項の追加)
令和6年 4月 1日にした手続補正は、新規事項を追加するものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1: 特開平1-213517号公報
文献1: 特開2008-151774号公報
2 甲1及び文献1の記載
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1(特開平1-213517号公報)には次の記載がある(下線部は当審による。以下同じ。)。
「(産業上の利用分野)
本発明は、回転検出装置に関し、さらに詳しくは例えばサーボモータその他各種モータの回転変位を検出するのに好適な回転検出装置に関する。
(従来の技術)
この種の回転検出装置の従来例を第9図乃至第11図を参照して説明する。第9図に示す回転検出装置50は、例えばサーボモータ等の原動軸51に連結される円形外周面に多数のN、Sの着磁帯を形成してなる磁気ドラム52と、この磁気ドラム52の円形外周面に近接配置される磁気センサ53とを具備している。
前記磁気センサ53は、第10図に示すように、基板54上に2個の磁気抵抗効果素子Ra、Rbを、前記着磁帯のN極同士の間隔(位相)λ/2に一致させて、また2個の磁気抵抗効果素子Rc、RdをS極同士の間隔λ/2に一致させて、さらに磁気抵抗効果素子Ra、Rc間は間隔λ/4となるようにそれぞれ列設配置している。そして、電源端子Bと接地端子E間に所定の直流電圧Vを印加し、磁気抵抗効果素子Ra、Rbを駆動するとともに磁気ドラム52の矢印X方向への回転に伴う各磁極の変位を、磁気抵抗効果素子Ra、Rb及び磁気抵抗効果素子Rc、Rdのそれぞれの磁気抵抗の変化に基ずく第12図に示す出力電圧ea、ebの変化として出力端子OUT1、OUT2より取出すようになっている。出力電圧ea、eb間の位相差は上述した磁気センサ53の構成からλ/4となることはいうまでもない。」(第1頁左下欄第12行~右下欄第20行)
「(実施例)
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
第1図に示す回転検出装置1は、従来装置の場合と同様な原動軸51に中心部を連結した回転体としての磁気ドラム2と、この磁気ドラム2の外周近傍に配置される磁気センサ3とを有している。前記磁気ドラム2の円形外周面には、第1図及び拡大した第2図に示すように2個のN、Sの直磁帯4a、4bが垂直配置で、かつ、N極同士、S極同士相互間の間隔(位相)がλ/4となるように形成されている。
前記磁気センサ3は、第2図及び第3図の等価回路に示すように、前記磁気ドラム2と同等の垂直方向の長さを有する基板5と、この基板5の一方の面に垂直配置に設けられた前記両直磁帯4a、4bに対応する2個のセンサ部6a、6bとを具備している。
一方のセンサ部6aは、基板5の中央部分から上側の領域に形成された磁気抵抗効果素子R1と、この磁気抵抗効果素子R1と平行となる状態で形成された磁気抵抗効果素子R2と、前記磁気抵抗効果素子R1に配線パターンを介して接続された電源端子B1と、前記磁気抵抗効果素子R2に配線パターンを介して接続された出力端子OUT1と、前記両磁気抵抗効果素子R1、R2に配線パターンを介して共通接続された接地端子E1とを具備している。
他方のセンサ部6bは、基板5の中央部分から下側の領域に形成された磁気抵抗効果素子R3、磁気抵抗効果素子R4、電源端子B1、出力端子OUT2及び接地端子E2を具備している。
この回転検出装置1によれば、電源端子B1、接地端子E1間及び電源端子B2、接地端子E2間にそれぞれ所定の直流電圧Vを印加した状態で磁気ドラム2を矢印X方向へ回転駆動することにより、センサ部6aが着磁帯4aの変位を、センサ部6aが着磁帯4bの変位をそれぞれ検出し、磁気抵抗効果素子R1、R2及び磁気抵抗効果素子R3、R4の磁気抵抗効果に基づく位相差λ/4の出力電圧e1、e2を出力端子OUT1、OUT2から取出すことができる。」(第2頁左下欄第7行~第3頁左上欄第7行)
「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明の実施例装置を示す斜視図、第2図は同装置の部分拡大斜視図、第3図は同装置における磁気センサの等価回路図、第4図は同装置における磁気センサの出力波形図、第5図は本発明の実施例装置の他例を示す斜視図、第6図は第5図に示す装置の部分拡大斜視図、第7図は同装置における磁気センサの等価回路図、第8図は同装置における磁気センサの出力波形図、第9図は従来装置の斜視図、第10図は従来装置の展開した状態を示す説明図、第11図は従来装置における磁気センサの等価回路図、第12図は同磁気センサの出力波形図である。」(第3頁右下欄第7行~第19行)
「
[図:0001429016000001.jpg]
」
「
[図:0001429016000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アによれば、以下のことがいえる。
(ア)上記アの第2図から、磁気センサ3が具備するセンサ部6aとセンサ部6bとは、同様の構成を有していることが見て取れる。
そうすると、上記アの(実施例)におけるセンサ部6aについての記載を参酌すれば、センサ部6bも、磁気抵抗効果素子R3、R4に配線パターンを介して共通接続された接地端子E2を具備するものといえる。
また、上記アの第2図から、センサ部6aとセンサ部6bとは配置位置が離れていることが見て取れる。
(イ)上記アの「第3図は同装置における磁気センサの等価回路図」との記載から、第3図中において実線で示された各構成部間の接続は電気的な接続を示すといえる。
また、センサ部6aとセンサ部6bとは、同図において実線で接続されていないから、電気的に接続されていないといえる。
(ウ)上記アの(実施例)欄における「従来装置の場合と同様な原動軸51」は、上記アの(従来の技術)欄の「第9図に示す回転検出装置50は、例えばサーボモータ等の原動軸51に連結される円形外周面に多数のN、Sの着磁帯を形成してなる磁気ドラム52と、この磁気ドラム52の円形外周面に近接配置される磁気センサ53とを具備している」における「サーボモータ」の「原動軸51」に対応するものある。
また、上記アの「本発明は、回転検出装置に関し、さらに詳しくは例えばサーボモータその他各種モータの回転変位を検出するのに好適な回転検出装置に関する」及び「回転検出装置1は、従来装置の場合と同様な原動軸51に中心部を連結した回転体としての磁気ドラム2と、この磁気ドラム2の外周近傍に配置される磁気センサ3とを有している」との記載から、原動軸51と回転検出装置1とを備えるサーボモータは、同文献において記載されているに等しいといえる。
(エ)上記アの第2図から、基板5がなす平面上に磁気ドラム2の軸がくるような向きで基板5が配置されることが見て取れる。
(オ)上記ア及び上記(ア)~(エ)によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「原動軸51と回転検出装置1とを備えるサーボモータであって、
回転検出装置1は、
サーボモータの原動軸51に中心部を連結した回転体としての磁気ドラム2と、この磁気ドラム2の外周近傍に配置される磁気センサ3とを有し、サーボモータの回転変位を検出するものであり、
前記磁気ドラム2の円形外周面には、2個のN、Sの直磁帯4a、4bが垂直配置で、かつ、N極同士、S極同士相互間の間隔(位相)がλ/4となるように形成されており、
前記磁気センサ3は、前記磁気ドラム2と同等の垂直方向の長さを有する基板5であって、基板5がなす平面上に磁気ドラム2の軸がくるような向きで配置される基板5と、この基板5の一方の面に垂直配置に設けられた前記直磁帯4a、4bに対応する2個のセンサ部6a、6bとを具備しており、
センサ部6aは、磁気抵抗効果素子R1と、磁気抵抗効果素子R2と、電源端子B1と、出力端子OUT1と、磁気抵抗効果素子R1、R2に配線パターンを介して共通接続された接地端子E1とを具備し、
センサ部6bは、磁気抵抗効果素子R3、磁気抵抗効果素子R4、電源端子B1、出力端子OUT2と、磁気抵抗効果素子R3、R4に配線パターンを介して共通接続された接地端子E2を具備し、
センサ部6aとセンサ部6bとは、配置位置が離れており、
センサ部6aとセンサ部6bとは、電気的に接続されていない、
サーボモータ。」
(2)文献1に記載された技術事項
ア 文献1(特開2008-151774号公報)には次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転角度検出装置は、N極対の磁極を有する磁石回転子(但し、Nは2以上の整数である。)と、前記磁石回転子から印加される磁束に応じて磁石回転子の回転角度を検出するための4個のホールセンサとを備え、
前記4個のホールセンサは、感磁軸を前記磁石回転子の径方向に向けて配置した第1及び第2の径方向用ホールセンサと、感磁軸を前記磁石回転子の周方向に向けて配置した第1及び第2の周方向用ホールセンサとで構成されることを特徴とする。」
「【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の回転角度検出装置における磁気センサの配置を説明する概略図であって、(a)は正面図であり、(b)は電気角(deg.)に対するセンサ出力、検出角度及び角度誤差の関係を示すグラフである。図1(a)では、磁石回転子のリング状永久磁石1aの周方向(リング状永久磁石1aの回転方向)に沿って4個のホールIC41,42,43,44を配置した。2個のホールIC41及び42は磁界検出方向をリング状永久磁石1aの中心に向け、他の2個のホールIC43及び44は磁界検出方向をリング永久磁石1aの周方向に向けた。隣り合うホールIC同士の間隔は電気角で90deg.とした。ホールIC41及び44の出力を足し合わせたa出力と、ホールIC42及び43の出力を足し合わせたb出力とを、図1(b)の電気角-センサ出力のグラフに示す。a出力を第1のオペアンプに入力し、b出力を第2のオペアンプに入力し、第1及び第2のオペアンプの出力をAD変換器に入力し、その出力を角度演算器に入力し、その出力として検出角度を得た。検出角度の誤差は電気角で最大6.4deg.を得た。」
「【0054】
図6は本発明の回転機を説明する概略図である。図6(a),(b)は同じ回転機を異なる断面で見たものである。図6(b)のホールIC82bは、図6(a)のホールIC82aの面(ホールICの感磁軸に垂直な面である。)を磁石回転子71cの周方向(θ方向)に沿った向き((a)のホールICの面(その感磁軸に垂直な面)とは直交する向き)に変更し、周方向にずらした位置に配置したものである。
【0055】
図6(a)に示すように、この回転機はモータであり、フレーム73c内には、中心軸としてシャフト71bを有する永久磁石のロータ71aと、フレーム73cの内周面に固定したステータ用コイル73b付きステータ73aを設置したものである。シャフト71bはベアリング(図示省略)を介してフレーム73cに回転自在に固定した。さらに、磁石回転子71cをシャフト71bに設け、支持部72nを介してホールIC82aをフレーム73cに設置する。なお、この回転機には、ホールIC82aと同じ径方向用ホールIC82c(図示せず)と、ホールIC82bと同じ周方向用ホールIC82d(図示せず)も備える。
【0056】
前記磁石回転子71cの回転磁界を前記ホールIC82a、ホールIC82b、ホールIC82c及びホールIC82dで検知し、それらの4つの出力を演算回路72mに入力・合成して2つの出力を得て、前記2つの出力を逆正接演算し、磁石回転子71cの回転角度を得た。前記磁化方向の磁気的な回転の軸を、図中に鎖線で示す。
【0057】
実施形態1の構成をモータに適用した場合、感磁軸が磁石回転子の径方向を向いているホールIC41,42は、図6(a)のホールIC82aのように磁石回転子と対向して配置する。実施形態1の構成で、感磁軸が磁石回転子の周方向を向いているホールIC43,44は、図6(b)のホールIC82bのように前記ホールIC41,42とは90°異なる向きとなるように配置する。」
「【図6】
[図:0001429016000003.jpg]
」
イ 文献1に記載された技術事項
(ア)上記アの【図6】から、同図の71c、82a、82bで示される磁石回転子及びホールICは、71aで示されるロータの一側に配置されることが見て取れる。
(イ)上記アの【0055】には、「回転機はモータであり」、「ロータ」と、「ステータ」「を設置した」との記載がある。
ここで、ロータとステータとを備えたモータにおいて、ステータがロータと対応して配置されることは技術常識であるから、同【0055】の「ステータ」はロータと対応して配置されるものといえる。
(ウ)上記アの【0017】の「本発明の回転角度検出装置」について、同【0010】には、「本発明の回転角度検出装置は」、「磁石回転子」と「ホールセンサ」とを「備え」る、と記載されている。
また、同【0017】には、「図1は、本発明の回転角度検出装置における磁気センサの配置を説明する概略図であって、(a)は正面図であり、(b)は電気角(deg.)に対するセンサ出力、検出角度及び角度誤差の関係を示すグラフである。図1(a)では、磁石回転子のリング状永久磁石1aの周方向(リング状永久磁石1aの回転方向)に沿って4個のホールIC41,42,43,44を配置した」との記載があるから、同【0017】に記載の「回転検出角度検出装置」は、磁石回転子とホールICとを備えるものといえる。
(エ)上記アの【0057】の「実施形態1の構成をモータに適用した場合、感磁軸が磁石回転子の径方向を向いているホールIC41,42は、図6(a)のホールIC82aのように磁石回転子と対向して配置する。実施形態1の構成で、感磁軸が磁石回転子の周方向を向いているホールIC43,44は、図6(b)のホールIC82bのように前記ホールIC41,42とは90°異なる向きとなるように配置する」との記載における「実施形態1の構成」とは、同【0017】の「(実施形態1)」「本発明の回転角度検出装置における磁気センサの配置」であるから、実施形態1の構成が適用されたモータにおける磁石回転子及びホールICは、回転角度検出装置が備えるものといえる。
(オ)上記ア及び上記(ア)~(エ)によれば、文献1には、以下の技術事項が記載されているといえる。
「モータである回転機において、シャフトを有するロータと、ロータと対応して配置されるステータと、シャフトに設けた磁石回転子及びホールICを備える回転角度検出装置とを有し、磁石回転子及びホールICを備える回転角度検出装置はロータの一側に配置され、ホールICは磁石回転子の周方向に沿って配置されており、磁石回転子の回転磁界をホールICで検知し、磁石回転子の回転角度を得ること。」
3 当審の判断
(1)本件発明1の進歩性(理由1)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1と甲1発明とは少なくとも次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「前記モーターは、前記基板上に配置されたブラケットを含み、前記基板は、前記ブラケットを固定するための孔を含む」のに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。
イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、ブラケットを含むものではなく、甲1には「基板5」にブラケットを固定するための孔を設けることに関する記載も示唆もない。
また、文献1にも、基板がブラケットを固定するための孔を含む構成とすることは、記載も示唆もされていない。そして、甲1の第2図に記載されたように、基板が、磁気ドラムと同等の垂直方向の長さを有し、基板がなす平面上に磁気ドラムの軸がくるような向きで配置される場合において、基板にブラケットを固定するための孔を設けることが周知技術であるわけでもない。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得えたものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び文献1に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~4、9、11の進歩性(理由1)について
本件発明2~4、9、11と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。
してみると、本件発明2~4、9、11は、本件発明1で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び文献1に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明1~4、9、11のサポート要件(理由2A、理由2B)について
ア 理由2Aについて
(ア)本件明細書等には、以下の記載がある。
「【0005】
前記磁気素子は印刷回路基板に実装されてモーターのハウジングの内部に配置され得、電磁波(EMI)に脆弱な構造であるため、EMI試験時、電磁波不良の可能性が高い。
【0006】
それに伴い、静電気(ESD)の試験時に前記磁気素子の不良可能性が高くなる問題がある。
【0007】
本発明が達成しようとする技術的課題は前記した問題点を解決するためのものであって、基板にホールIC(IC)に対応するグラウンドパターンを形成することによって電磁波または静電気による不良可能性を減少させる、モーターおよびこれを含む電動式操向装置を提供する。」
「【0030】
本発明の実施例に係るモーターは基板にホールIC(IC)に対応するグラウンドパターンを形成することによって電磁波または静電気による不良可能性を減少させることができる。」
(イ)上記(ア)の記載によれば、発明の詳細な説明の記載から把握される発明の課題は、「前記磁気素子は印刷回路基板に実装されてモーターのハウジングの内部に配置され得、電磁波(EMI)に脆弱な構造であるため、EMI試験時、電磁波不良の可能性が高」く「それに伴い、静電気(ESD)の試験時に前記磁気素子の不良可能性が高くなる」こと(以下「本件課題」という。)であるといえる。そして、基板にホールIC(IC)に対応するグラウンドパターンを形成することによって電磁波または静電気による不良可能性が減少されるため、本件課題が解決されるものと認められる。
(ウ)本件発明1~4、9、11には、基板に、第1磁気素子部と電気的に連結される第1グラウンドパターンと、第2磁気素子部と電気的に連結される第2グラウンドパターンとが配置されることが特定されているから、上記(イ)を踏まえれば、本件発明1~4、9、11は、本件課題を解決するものといえる。
(エ)よって、本件発明1~4、9、11は、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ 理由2Bについて
(ア)本件明細書等には、以下の記載がある。
「【0054】
基板810に配置された磁気素子820、830は、センシングマグネットアセンブリー700と離隔配置されて磁束の変化による回転角度を計算することができる。ここで、磁気素子820、830はホールIC(Hall IC)であり得、図7に図示された通り、磁気素子820、830のそれぞれは、VccおよびグラウンドGNDが分離された構造に形成され得る。」
「【0057】
第1グラウンドパターン840は弧状に形成され得、基板810の内側の縁に配置され得る。そして、第1グラウンドパターン840はホールシグナル磁気素子820のグラウンドGNDと電気的に連結され得る。」
「【図7】
[図:0001429016000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)の【0057】の記載によれば、「第1グラウンドパターン840はホールシグナル磁気素子820のグラウンドGNDと電気的に連結され得る」ものである。
一方、同図7においては、第1グラウンドパターン840とホールシグナル磁気素子820のグラウンドGNDは見て取れるものの、第1グラウンドパターン840とホールシグナル磁気素子820のグラウンドGNDとを電気的に連結する配線は見て取れない。
そうすると、同図7は、配線関係を正確に示す図ではないといえる。
(ウ)同図7においては、基板810において第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とを電気的に接続する配線は見て取れないものの、上記(イ)の検討を踏まえると、同図7は、配線関係を正確に示す図ではないといえるから、同図7を基に、基板810上において第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とが基板810内で電気的に接続されていないと見ることはできない。
(エ)一方、発明の詳細な説明においては、第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とが、基板内で電気的に接続されているか否かについての明確な記載はなく、そのどちらかでなければならない根拠も記載されていない。
(オ)以上を踏まえると、第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とを基板内で電気的に接続するか否かについては、任意の事項であるから発明の詳細な説明に明記されていないと解するのが相当であり、そうすると、発明の詳細な説明には、第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とを基板内で電気的に接続することと接続しないこととの両方が記載されているといえる。
(カ)さらに、上記(ア)の【0054】には、「磁気素子820、830のそれぞれは」、「グラウンドGNDが分離された構造に形成され得る」ことが記載されており、グラウンドGNDと同様にグラウンドパターンも分離する、すなわち、グラウンドパターンが基板内で電気的に接続されていない構造としてもよいことは明らかである。
(キ)以上のとおり、本件発明1~4、9、11が備える「前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず」との構成は、発明の詳細な説明に記載されているといえるから、本件発明1~4、9、11は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(4)本件発明9のサポート要件(理由2C)について
ア 上記(3)イ(ア)の図7から、第1グラウンドパターン840は、基板の内側の縁に配置され、第2グラウンドパターン850は、基板の外側の縁に配置されることが見て取れる。
イ そうすると、本件明細書等の図7には、「前記第1グラウンドパターンは、前記基板の一方上に配置され、前記第2グラウンドパターンは、前記基板の他方上に配置される」構成を備える特定の具体例が開示されているといえる。
ウ さらに、上記(3)アのとおり、本件発明9は、基板に、第1磁気素子部と電気的に連結される第1グラウンドパターンと、第2磁気素子部と電気的に連結される第2グラウンドパターンとが配置されることにより本件課題を解決するものであり、第1グラウンドパターンと第2グラウンドパターンとが、それぞれ、基板の内側の縁と基板の外側の縁とに配置されなければ本件課題を解決できないわけではないから、本件発明9が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
エ 以上のとおり、本件発明9は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(5)本件発明1~4の新規事項の追加(理由3)について
ア 上記(3)イ(イ)~(オ)の検討と同様の理由により、本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、第1グラウンドパターン840と第2グラウンドパターン850とを基板内で電気的に接続することと接続しないこととの両方が記載されているといえる。
イ そして、当初明細書等の【0054】(上記(3)イ(ア)参照。)の記載によれば、磁気素子820、830のそれぞれは、グラウンドGNDが分離された構造に形成され得る。ここで、グラウンドパターンが基板内で電気的に接続されていない構造とすることの技術上の意義は、グラウンドGNDが分離された構造とすることの技術上の意義を超えるものではなく、新たな技術上の意義を追加するものではないから、「前記第1グラウンドパターンと前記第2グラウンドパターンは、前記基板内で電気的に接続されておらず」との事項を追加する、令和6年 4月 1日にした手続補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ よって、本件発明1~4に関し、令和6年 4月 1日にした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
4 小括
以上、検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1~4、9、11に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1~4、10に係る発明は、甲1及び甲第2号証(以下「甲2」という。)に記載された発明から進歩性がない旨を主張し、請求項1~4、9、11に係る発明は、サポート要件を満たさない旨主張し、請求項1~4に係る発明について、令和6年 4月 1日にした手続補正は、新規事項を追加するものである旨主張している。そのうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由である、本件発明1~4の進歩性及び本件発明1~4、11のサポート要件について検討する。
1 本件発明1の進歩性について
(1) 甲1~2の記載
ア 甲1について
甲1の記載及び甲1発明は、上記第4の2(1)のとおりである。
イ 甲2について
(ア)甲2(特開2008-185560号公報)には次の記載がある。
「【0014】
また、回路基板部4の下部のリング状磁石21の上方部分には例えばホール素子等の磁気センサ22が配設され、ハブ部2の回転をリング状磁石21の磁極からの磁場の変化で検出する。」
「【0019】
回路基板部4の取り付けねじ17のねじ穴17aとカバー部材5を固定するための固定ねじ16のねじ穴16aは互いに電気的に接続されており、カバー部材5は、ねじ16、17及びねじ穴16a、17aを介して回路基板部4のシグナルグランドと接続されている。例えば、ねじ穴16a、17aを導電性部材で形成することで、回路基板部4とカバー部材5とを電気的に接続することができる。」
「【0025】
このように、本ロータリエンコーダ1は、外周部にシグナルグラウンドと接続され、かつ磁気シールド特性を有する金属部材からなるカバー部材5を有することによって、ロータリエンコーダ1の外部(例えば、ロータリエンコーダ1に接続されているモータ)で発生する静電ノイズや磁気ノイズによるロータリエンコーダ1の誤検出を防止することが可能になる。」
(イ)甲2発明
上記(ア)によると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「回路基板部4にカバー部材5が接続され、
ホール素子等の磁気センサ22が配設された回路基板部4のシグナルグランドを、ねじ16,17、ねじ穴16a,17aを介してカバー部材5に電気的に接続する、ロータリエンコーダ1。」
(2) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。
(3) 相違点1の判断
上記相違点1について検討すると、甲2発明は、(基板をブラケットに電気的に接続するものとはいえるものの)基板がブラケットを固定するための孔を含むものではない。
そうすると、上記4の3(1)イと同様の理由により、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲2発明を参酌しても、当業者が容易に想到し得えたものとはいえない。
(4)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、上記相違点1に関し、令和7年 7月 9日提出の意見書において、新たに証拠方法を追加して進歩性がない旨主張しているから、これについて検討する。
<証拠方法>
甲第3号証:国際公開第2006/109714号
甲第4号証:特開2011-087449号公報
甲第3~4号証には、基板が、磁気ドラムと同等の垂直方向の長さを有し、基板がなす平面上に磁気ドラムの軸がくるような向きで配置される場合において、基板にブラケットを固定するための孔を設けることは記載されていない。
甲1発明は、「前記磁気ドラム2の円形外周面には、2個のN、Sの直磁帯4a、4bが垂直配置で、かつ、N極同士、S極同士相互間の間隔(位相)がλ/4となるように形成されており、前記磁気センサ3は、前記磁気ドラム2と同等の垂直方向の長さを有する基板5であって、基板5がなす平面上に磁気ドラム2の軸がくるような向きで配置される基板5と、この基板5の一方の面に垂直配置に設けられた前記直磁帯4a、4bに対応する2個のセンサ部6a、6bとを具備して」いるものであるところ、甲1発明において基板の磁気ドラムに対する位置関係を変更すると甲1発明が機能しなくなる。そうすると、甲1発明の当該位置関係とは異なる位置において基板が固定される発明を甲1発明に適用することには阻害要因があるといえる。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲第3~4号証に記載された発明から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第3~4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~4の進歩性について
本件発明2~4と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。
してみると、本件発明2~4は、本件発明1で検討したのと同様の理由により、甲1発明から、当業者が容易に想到し得るものではない。
3 本件発明1~4、11のサポート要件について
(1)特許異議申立書(20ページ~21ページ)において、特許異議申立人は、図7に示すような構成において、初めて図8に示すような効果が得られると認められるから、本件発明1~4はサポート要件を満足しない旨の理由を申し立てた。
(2)また、異議申立書(21ページ~22ページ)において、特許異議申立人は、ブラケットを固定する孔の配置位置が一般化されたことにより、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているから、本件発明11はサポート要件を満足しない旨の理由を申し立てた。
(3)しかしながら、上記第4の3(3)アのとおり、本件発明1~4、11は、基板に、第1磁気素子部と電気的に連結される第1グラウンドパターンと、第2磁気素子部と電気的に連結される第2グラウンドパターンとが配置されることにより、本件課題を解決するものであるから、本件発明1~4、11が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
4 小括
以上、検討したとおり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、請求項1~4、11に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4、9、11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4、9、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項10に係る特許は、本件訂正請求により削除され、特許異議の申立てについて、請求項10に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701127