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特許異議申立

2025-700067

セラミック板、半導体装置および半導体モジュール

審判番号
2025-700067
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-065282
登録番号
7519497
請求日
2025年01月15日
審決日
2025年09月10日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】京セラ株式会社
  • 【権利者代理人】荒船 博司
  • 【権利者代理人】荒船 良男
  • 【異議申立人】小松 茂夫
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 中野 浩昌
  • 審判官 綿引 隆
分類
P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7519497号発明「セラミック板、半導体装置および半導体モジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7519497号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~11〕、2について訂正することを認める。 特許第7519497号の請求項1、3~11に係る特許を維持する。 特許第7519497号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7519497号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和5年4月13日(遡及出願日平成30年11月29日、優先権主張平成29年12月21日)の出願であって、令和6年7月10日にその特許権の設定登録がされ、同年7月19日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 1月15日 :特許異議申立人 小松 茂夫(以下「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 3月28日付け:取消理由通知 同年 6月 2日 :特許権者よる意見書、訂正請求書の提出 なお、令和7年6月23日付けで申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和7年6月2日にされた訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示すため合議体が付与した。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えており、前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい、セラミック板。」と記載されているのを、「窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えており、前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり、前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい、セラミック板。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~11も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1に記載のセラミック板。」に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載のセラミック板。」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれかに記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1、3、4のいずれかに記載のセラミック板。」に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれかに記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、5のいずれかにセラミック板。」に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、5、6のいずれかに記載のセラミック板。」に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載のセラミック板。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、5、6、7のいずれかに記載のセラミック板。」に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれかに記載のセラミック板」と記載されているのを、「請求項1、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載のセラミック板」に訂正する。 (10) 訂正事項10 願書に添付した明細書の段落【0006】に「窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えており、前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい」と記載されているのを、「窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えており、前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり、前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい」に訂正する。 (11) 一群の請求項について 訂正前の請求項1~11について、請求項2~11は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 なお、特許権者は、請求項2についての訂正が認められる場合には、前記一群の請求項のうちの訂正後の請求項2が別の請求単位として扱われるように求めている。 2 訂正の適否についての判断 以下、訂正事項1~10の適否について検討する。 なお、特許異議の申立ては、上記第1のとおり、訂正前の請求項1~11に対してされているから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「第1結晶」及び「第2結晶」について、「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり」との限定を付加し、それにより「第1結晶」及び「第2結晶」の区別を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1により付加される記載は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmである、請求項1に記載のセラミック板。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項1は、「第1結晶」及び「第2結晶」について、「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり」との限定を付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項2は、上記アのとおり、請求項2を削除するものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項2は、上記アのとおり、請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (3) 訂正事項3~9について ア 訂正の目的 訂正事項3~9は、それぞれ訂正前に引用請求項として請求項2を含んでいた請求項3~9を対象とする訂正であって、訂正事項2による請求項2の削除と整合するために、請求項3~9の引用請求項から請求項2を削除して引用請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項3~9は、上記アのとおり、訂正事項2による請求項2の削除と整合するためのものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項3~9は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項3~9は、上記アのとおり、訂正事項2による請求項2の削除と整合するためのものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (4) 訂正事項10について ア 訂正の目的 訂正事項10は、訂正事項1により請求項1に付加される記載と同じ記載を明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】に付加することで、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項10は、上記アのとおり、訂正事項1により請求項1に付加される記載と同じ記載を明細書の段落【0006】に付加するものであって、訂正事項1についての上記(1)イの検討と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項10は、上記アのとおり、訂正事項1により請求項1に付加される記載と同じ記載を明細書の段落【0006】に付加するものであって、上記(1)ウの検討と同様に、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 訂正事項10と関係する請求項について 訂正事項10は、訂正事項1により請求項1に付加される記載と同じ記載を明細書の段落【0006】に付加するものであるから、一群の請求項1~11の全てについてするものである。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。 (5) 小括 以上のとおり、本件訂正の請求は、適法にされたものであるから、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~11〕、2について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、 前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えており、 前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり、 前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、 前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい、セラミック板。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記第2結晶は、単結晶である、請求項1に記載のセラミック板。 【請求項4】 前記第1相は、多結晶である、請求項1又は3に記載のセラミック板。 【請求項5】 前記第2結晶の平均粒径は、前記第1結晶の平均粒径の3~50倍である、請求項1、3、4のいずれかに記載のセラミック板。 【請求項6】 断面視における前記第1相の面積の割合が40~80%である、請求項1、3、4、5のいずれかに記載のセラミック板。 【請求項7】 前記第1相および前記第2相の間に存在している粒界相をさらに備える、請求項1、3、4、5、6のいずれかに記載のセラミック板。 【請求項8】 前記複数の第2結晶は柱状であり、前記第2結晶同士が互いに接している、請求項1、3、4、5、6、7のいずれかに記載のセラミック板。 【請求項9】 請求項1、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載のセラミック板と、 前記セラミック板の表面に配置された半導体素子と、を備える半導体装置。 【請求項10】 請求項9に記載の半導体装置と、 前記半導体素子と接している放熱体と、を備える半導体モジュール。 【請求項11】 前記半導体素子と電気的に接続された外部接続導体、をさらに備える請求項10に記載の半導体モジュール。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の特許請求の範囲に対して、令和7年3月28日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性要件) 本件特許の請求項1、3~11に係る発明は、第1結晶と第2結晶とを区別するための基準となる大きさが明確でないから、請求項1、3~11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定に違反する特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1、3~11に係る発明は、第1結晶と第2結晶の大きさが不明であって、発明の詳細な説明に記載した課題を解決できないものを含んでいるから、請求項1、3~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定に違反する特許出願に対してされたものである。 2 取消理由についての判断 本件発明1は、訂正により「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μm」であることが特定され、第1結晶と第2結晶とを区別することができるから、本件発明1は明確である。また、当該特定により、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した課題を解決できるものに限定された。 さらに、本件発明3~11は本件発明1の訂正に連動して、「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μm」であることが特定され、第1結晶と第2結晶とを区別することができるから、本件発明3~11は明確である。また、当該特定により、本件発明3~11は発明の詳細な説明に記載した課題を解決できるものに限定された。 よって、取消理由1及び取消理由2は解消した。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人は、特許異議申立書及び甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出したところ、特許異議申立書に記載した申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1) 申立理由1(進歩性欠如) 訂正前の本件特許の請求項1~11に係る発明は、甲1発明、甲2技術、甲3技術、甲4発明、甲5技術、及び甲6発明に基づいて、その発明の技術分野に属する通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(実施可能要件) 訂正前の本件特許の請求項3、4に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [証拠方法] 甲1:特開2014-58445号公報 甲2:三友護,「窒化ケイ素セラミックスの微構造と粉体特性の関係」,粉体工学会誌,2004年,Vol.41 No.2(2004),p.24-31 甲3:CHANNING C.AHN 他1名,“Microstructure and Grain-Boundary Composition of Hot-Pressed Silicon Nitride With Yttria and Alumina”,Journal of the American Ceramic Society,1983年1月,Vol,66,No.1,p.14-17 甲4:特開平9-328365号公報 甲5:You Zhou 他5名,“Development of high-thermal-conductivity silicon nitride ceramics”,Journal of Asian Ceramic Societies,Vol.3,2015年,p.221-229 甲6:特開平5-105522号公報 2 申立理由1(進歩性)についての判断 (1) 甲号証の記載及び甲1発明等 ア 甲1の記載と甲1発明 (ア) 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。(引用箇所を示すため、当審において下線を付した。) 「【0004】 そこで、下記特許文献1には、窒化珪素基板の例が開示されており、粒界相の20%以上を結晶化させることにより、熱伝導率の低いガラス相の比率を低減し窒化珪素基板の熱伝導率を高めている。・・・」 「【0018】 一般に、窒化珪素焼結体は、β型窒化珪素の結晶粒子と焼結助剤成分を含有する粒界相とからなり、また粒界相は非晶質相あるいは結晶相で構成される。・・・ 【0019】 上述のように窒化珪素基板は窒化珪素粒子と焼結助剤として添加した成分を主とする粒界相から構成されている。添加した焼結助剤を主成分として生成される粒界相は窒化珪素粒子間の結合を保ち、また、粒子間の欠陥を抑制する役割を担っている。特に、窒化珪素基板の粒界相の結合力が不十分で表面に粗大な欠陥がある場合、窒化珪素基板に応力が加わったとき、その欠陥が破壊の起点となり容易に破壊が起こるため、粒界相が均一に分散されて存在して粒子間を結合し粗大な欠陥の生成が抑制される必要がある。 【0020】 窒化珪素基板において焼結助剤として添加したMgOおよびRE2O3はSi3N4やSi3N4中に含まれるSiO2と反応して焼結工程で液相を形成する。これらの液相は焼結後には粒界相として、非晶質相もしくは結晶相として存在する。本発明の窒化珪素質焼結体の窒化珪素粒子及び粒界相の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図1に、その模式図を図2にそれぞれ示す(後出に実施例4)。また、図6はTEM-EDX((Transmission Electron Mocroscop-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によるSi,Mg,Y,O成分に対する面分析結果を示す。ここで、O成分の濃度が高いことは粒界相の場合は非晶質相であることを示唆している。・・・(中略)・・・一方、結晶相13以外の粒界相部12については、Si成分の濃度が低く、Mg,YおよびO成分からなる。また、X線回折からはMgSiN2以外の回折ピークは検出されなかった。したがって、Y,MgおよびOを主成分とした非晶質相である。非晶質相12と粒界結晶相13とからなる粒界相は窒化珪素粒子11間を結合し、両者の存在比率は窒化珪素質焼結体の機械的強度と熱伝導率に影響を与える。・・・」 「【0029】 本発明で用いる原料粉末として窒化珪素粉末は、平均粒子径を1.0μm以下、比表面積を15m2/g以下の範囲とする。また、窒化珪素焼結体の高熱伝導化には、含有酸素量を1.5wt.%以下、特にFe成分およびAl成分はそれぞれ1000ppm以下とする。 また、焼結助剤として添加するMgO粉末およびY2O3粉末は、それぞれ、平均粒子径を1.0μm以下、比表面積を30m2/g以下の範囲とする。また、不純物量は窒化珪素粉末と同様にFe成分およびAl成分は、それぞれ1000ppm以下とする。・・・」 「【0036】 また、比較例として、上記製造条件を変更して製造した窒化珪素基板についても同様に物性を測定し、判定を行った。その結果が表3、4に示される(比較例1~15)。」 「【0048】 【表3】 [図:0001430011000001.jpg] 」 「【0054】 また、比較例3として、MgO添加量を9.8mol%、Y2O3添加量を1.2mol%とし、焼結工程における焼結温度を1850℃、昇温速度を400℃/h、冷却速度を600℃/h、焼結時間を3h、基板の総厚みを8mmとした条件で製造した窒化珪素基板ではMgSiN2結晶相が検出されず、熱伝導率が77W/m・Kと低くなった。これは、焼結工程における昇温速度が速いため、MgSiN2結晶相の生成が抑制され、窒化珪素基板の熱伝導率が低下している。なお、比較例3との相違点として、Y2O3添加量を1.8mol%とし、昇温速度を600℃/h、焼結時間を5h、基板の総厚みを4mmとしたとした比較例4も、昇温速度が速いため、MgSiN2結晶相の生成が抑制され、熱伝導率が73W/m・Kと低くなった。」 「【図1】 [図:0001430011000002.jpg] 【図2】 [図:0001430011000003.jpg] 」 「【図5】 [図:0001430011000004.jpg] 」 (イ) 甲1発明 上記(ア)の記載によれば、甲1には以下の事項が記載されている。 a 段落0019の記載から、甲1には、窒化珪素粒子と焼結助剤として添加した成分を主とする粒界相から構成されている窒化珪素基板が記載されている。 段落0018の記載から、窒化珪素粒子は、β型窒化珪素の結晶粒子である。 そして、図1、図2及び図5から、窒化珪素基板は、大きさが相対的に小さい複数の窒化珪素粒子と、大きさが相対的に大きい複数の窒化珪素粒子とを備えること、大きさが相対的に大きい窒化珪素粒子同士が接していることが見て取れる。 b 粒界相は、段落0019の記載から、窒化珪素粒子間の結合を保ち、段落0020の記載から、非晶質相もしくは結晶相として存在するものである。 また、段落0004の「粒界相の20%以上を結晶化させることにより、熱伝導率の低いガラス相の比率を低減し窒化珪素基板の熱伝導率を高めている。」との記載によれば、非晶質相はガラス相といえる。 c 段落0029、段落0054及び段落0048の表3の記載によれば、比較例4の窒化珪素基板は、原料粉末として窒化珪素粉末、焼結助剤として添加するMgO粉末とY2O3を含み、MgO添加量を9.8mol%、Y2O3添加量を1.8mol%とし、焼結工程における焼結温度を1850℃、昇温速度を600℃/h、冷却速度を600℃/h、焼結時間を5h、基板の総厚みを4mmとして製造したものであって、曲げ強度が842Mpa、熱伝導率が73W/m・Kである。 d 以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] β型窒化珪素の結晶粒子である窒化珪素粒子と焼結助剤として添加した成分を主とする粒界相から構成されている窒化珪素基板であって、 窒化珪素粒子は、大きさが相対的に小さい複数の窒化珪素粒子と、大きさが相対的に大きい複数の窒化珪素粒子を備え、大きさが相対的に大きい窒化珪素粒子同士が接しており、 粒界相は、窒化珪素粒子間の結合を保ち、ガラス相である非晶質相もしくは結晶相として存在するものであって、 原料粉末として窒化珪素粉末、焼結助剤として添加するMgO粉末とY2O3を含み、MgO添加量を9.8mol%、Y2O3添加量を1.8mol%とし、焼結工程における焼結温度を1850℃、昇温速度を600℃/h、冷却速度を600℃/h、焼結時間を5h、基板の総厚みを4mmとして製造したものは、曲げ強度が842Mpa、熱伝導率が73W/m・Kである、 窒化珪素基板。 イ 甲2の記載 甲2は、「窒化ケイ素セラミックスの微構造と粉体特性の関係」と題する論文であり、以下の記載がある。 「焼結原料として用いられる窒化珪素は,高純度でα型である。粒径は0.1-1μmに分布し,平均粒径は0.5-0.6μmであり,サブミクロン粉末と言われる。粒子は細かい方が焼結には有利であるが,粒子充填性や酸素に対する反応性の点で,この範囲の方が実際の部品の製造には適当である。焼結にはイットリアやアルミナ等の酸化物を少量焼結助剤として添加する。 助剤は高温で液相を生成し,界面拡散を促進することにより焼結が進行するので,液相焼結と呼ばれる。焼結とともにα-βの相転移が起こり,図2のような微構造が得られる。この図はセラミックを切断・研磨後,CF4プラズマで粒子を薄くエッチングしてSEMで観察し,画像処理によって大きな粒子(異常成長粒子)を灰色に,小さなもの(マトリックス粒子)を黒色に分けて表示したものである。液相が固化した粒界のガラス相は白く写っている。」(24頁右欄最終行~25頁左欄16行) 「 [図:0001430011000005.jpg] 」(25頁左欄) ウ 甲3の記載 甲3は「Microstructure and Grain-Boundary Composition of Hot-Pressed Silicon Nitride With Yttria and Alumina」(当審訳:イットリア及びアルミナを添加したホットプレス窒化ケイ素の微細構造と粒界組成)と題する論文であって、15頁右欄の記載を以下の訳文で示す。 「(2)アモルファス相 (A)サンプルA:5wt%Y2O3+2wt%Al2O3材料は粒界相が結晶化していると報告されていたが、高分解能暗視野イメージングにより、事実上すべてのβ’-β’ β’-メリライト境界で非晶質の存在が明らかになった(図2)。 暗視野イメージングの結果は図4に示すように、格子イメージングによってチェックされた。このように多くの手順から得られたデータは、アモルファス相が2nmと薄いことを示していた。Al2O3を用いないY2O3添加窒化珪素の以前の研究でも、窒化ケイ素と酸窒化ケイ素の結晶粒にアモルファス相が存在することが示された。以下のサンプルBで見られるようにY2O3またはY2O3/Al2O3の添加では、完全な結晶性の窒化ケイ素が得られないことは明らかである。」 エ 甲4の記載 甲4には以下の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、自動車、機械装置、回路基板等の幅広い分野で使用できる高強度、高靱性の窒化珪素焼結体と前記窒化珪素焼結体を容易に得ることができる窒化珪素粉末、更に前記窒化珪素焼結体を用いた回路基板に関する。」 「【0011】又、本発明は、焼結体の切断面の観察において中心部と周辺部が識別できる窒化珪素粒子を含有する窒化珪素焼結体であって、前記中心部の短軸径が0.5μm以下の窒化珪素粒子を前記中心部と周辺部が識別できる窒化珪素粒子全体の80個数%以上含有することを特徴とする窒化珪素焼結体であり、焼結体の切断面の観察において中心部と周辺部が識別できる窒化珪素粒子を含有する窒化珪素焼結体であって、前記中心部の短軸径が0.5μm以下の窒化珪素粒子を前記中心部と周辺部が識別できる窒化珪素粒子全体の70~95個数%含有し、しかも短軸径が1.0μm以上の窒化珪素粒子を前記中心部と周辺部が識別できる窒化珪素粒子全体の5~30個数%含有することを特徴とする窒化珪素焼結体である。」 「【図1】 [図:0001430011000006.jpg] 」 オ 甲5の記載 甲5には以下の記載がある。 「 [図:0001430011000007.jpg] 」(当審訳:図2 様々な時間で焼結したSRBSNの破面のSEM画像 (a)3時間、(b)6時間、(c)12時間、及び(d)24時間) 「 [図:0001430011000008.jpg] 」(当審訳:図7 1900℃で24時間焼結したSRBSN材料内の亀裂経路(左から右に伝播)の走査型電子顕微鏡写真」) 「 [図:0001430011000009.jpg] 」(当審訳:図8 さまざまな量のFeを添加したSRBSN材料の研磨およびプラズマエッチングされた表面のSEM画像:(a)F0、(b)F0.1、(c)F1、(d)F5) 「 [図:0001430011000010.jpg] 」(当審訳:図9 様々な量のAlを添加したSRBSN材料の研磨およびプラズマエッチングされた表面のSEM画像:(a)Al-0、(b)Al-1、(c)Al-2、(d)Al-3) カ 甲6の記載 甲6には以下の記載がある。 「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、X線回折により実質的に固定される窒化ケイ素系結晶相として、β-窒化ケイ素(β’-サイアロンを含む)からなる窒化ケイ素焼結体であって、焼結体中の任意の2次元断面に観察される平均長軸粒径が2.0~5.0μmの柱状型の窒化ケイ素結晶粒の占める割合が面積率で5%以上30%以下であり、残部が平均粒径1.0μm以下の六角状もしくは粒状の窒化ケイ素結晶粒および粒界相よりなる窒化ケイ素結晶粒および粒界相よりなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体である。・・・」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア) 甲1発明の「β型窒化珪素の結晶粒子である」「大きさが相対的に小さい」「窒化珪素粒子」及び「β型窒化珪素の結晶粒子である」「大きさが相対的に大きい」「窒化珪素粒子」は、大きさの関係を含めて、それぞれ本件発明1の「窒化ケイ素の第1結晶」及び「前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶」に相当する。 甲1発明は、粒界相が窒化珪素粒子間の結合を保つものであるところ、「大きさが相対的に小さい複数の窒化珪素粒子」が粒界相を介して結合した構造は、本件発明1の「窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相」に相当する。 甲1発明の「大きさが相対的に大きい窒化珪素粒子同士が接して」いる構造は、本件発明1の「前記複数の第2結晶同士が接している第2相」に相当する。 甲1発明の「窒化珪素基板」は、セラミック基板であり、上記第1相及び第2相を備える点で本件発明1の「セラミック板」に相当する。 (イ) 上記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 [一致点] 窒化ケイ素の第1結晶を複数含む第1相と、 前記第1結晶よりも大きい窒化ケイ素の第2結晶を複数含み、前記複数の第2結晶同士が接している第2相と、を備えている、 セラミック板。 [相違点] 本件発明1は、 「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり、 前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し、 前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい」 という構成を備えるのに対し、甲1発明は、このような構成を備えることが特定されていない点。 イ 判断 本件発明1は、相違点に係る構成について、「前記第1結晶は長軸長さが0.1~1.0μmであり、前記第2結晶は長軸長さが2~6μmであり」との構成(以下「構成A」という。)によりそれぞれ長軸の長さが特定された第1結晶及び第2結晶を前提として、「前記第2結晶同士の接触部位にはガラス層が介在しており、前記第2結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に、厚みが5nm以下の前記ガラス層が存在し」との構成(以下「構成B」という。)及び「前記第2結晶同士の接触部位に介在している前記ガラス層は、前記第1結晶同士が互いに接している部分の両端からの距離が同じ中央部に存在しているガラス層よりも厚みが小さい」との構成(以下「構成C」という。)を備えるものであるから、構成A~Cは不可分の構成といえる。 そうすると、甲2~甲6のいずれにも、構成A~Cをともに備える構成は記載されていないから、甲1発明に甲2~甲6に記載された事項を適用しても、構成A~Cをともに備える構成を得ることはできない。 そして、本件発明1は、構成A~Cを備えることで、本件特許に係る明細書(段落0009)に記載された「本発明の実施形態に係るセラミック板によれば、」「優れた熱伝導性および優れた機械的強度を兼ね備えることが可能となる」という効果を奏するものである。 したがって、甲2~甲6を参照しても、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張について (ア) 申立人は、特許異議申立書(14頁17行~15頁5行)において、本件訂正前の本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 前記主張について検討すると、甲1発明の窒化珪素基板は、焼結工程における焼結温度を1850℃とし、曲げ強度が842Mpa、熱伝導率が73W/m・Kである点は本件特許に係る図5(b)に記載された実施例1~5と類似するものの、焼結時間が5時間であることは、ガラス相の厚みが7nmである比較例7と類似するから、構成Bにおけるガラス相の厚みが5nmであるとはいえず、構成Bは実質的な相違点である。 また、甲1発明は、窒化珪素粒子間に非晶質相が存在するとしても、甲1には、甲1発明が構成Cを備えることの記載はない。 よって、申立人の前記主張は採用できない。 (イ) 申立人は、特許異議申立書(15頁6行~25行)において、本件訂正前の本件発明1は、甲1発明及び甲2技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 前記主張について検討すると、甲2には上記(1)イの記載があるところ、申立人が構成B及び構成Cの根拠とする甲2の図2には「5μm」の寸法を表す表示があるから、図2から窒化ケイ素粒子が互いに接している部分に上記寸法よりも3桁小さい5nm以下のガラス相を確認することはできない。 よって、甲2に、構成B及び構成Cが記載されているとはいえないから、上記主張は採用できない。 (ウ) 申立人は、特許異議申立書(15頁26行~16頁10行)において、本件訂正前の本件発明1は、甲1発明、甲2技術及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 前記主張について検討すると、上記(1)ウの甲3の記載によれば、窒化ケイ素粒子同士の粒界に2nmのアモルファス相が存在するといえるところ、甲1発明の窒化珪素基板は、材料粉末を含む製造条件が特定されており、甲1発明と製造条件が同じであるとはいえない甲3に記載のアモルファス相の厚さのみを甲1発明に適用する動機付けはないから、上記主張は採用できない。 (3) 本件発明3~11について 訂正後の請求項3~11は、直接又は間接的に請求項1を引用するものでのある。そうすると、本件発明3~11は、上記(2)アの相違点に係る構成を備えているから、同イで判断した理由と同じ理由により、甲2~甲6を参照しても、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) 小括 以上のとおり、本件発明1、3~11は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項1、3~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 3 申立理由2(実施可能要件)についての判断 (1) 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(9頁14行~26行)において、請求項3は、「前記第2結晶は、単結晶である」ものであり、請求項4は「前記第1相は、多結晶である」ものであるところ、どのようにして単結晶と多結晶を識別するのか、どのようにして単結晶および/または多結晶を含む構成を実現することができるのかが、発明の詳細な説明からは不明であり、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明3、4の実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものでない旨主張する。 (2) 判断 申立人の主張について検討する。 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の段落0016に「本実施形態に係るセラミック板10は、主として大きさの異なる第1結晶1と第2結晶2とによって構成されるものであって、第1結晶1の大きさは、例えば0.1~1.0μm程度であり、第2結晶2の大きさは、例えば2~6μm程度である。第1結晶1および第2結晶2は、例えば、六角柱等の柱状または長球状(長軸を回転軸とした回転楕円体状)等の形状である。このような第1結晶1および第2結晶2の大きさは、例えば、柱状のものの長さまたは長球状のものの長軸の長さ(本明細書において両者を区別せずに長軸長さともいう。)によって特定する。これらの長軸長さは、例えば図1に示すような、セラミック板10の断面をSEMなどの電子顕微鏡を用いた観察によって測定することができる。」と記載されており、セラミック板の断面をSEMなどの電子顕微鏡を用いた観察により、大きさと形状から単結晶である第1結晶及び第2結晶を識別することができ、また、複数の第1結晶を含む、すなわち多結晶の第1相を識別することができる。 また、発明の詳細な説明の段落0040~0044には、第1結晶及び第2結晶を有するセラミック板の製造方法が記載されているから、当業者は、当該記載に基づいて多結晶である第1相と、単結晶である第2結晶を含むセラミック板を製造することができる。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明3及び4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、申立人の主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、3~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項2は、本件訂正により削除されたため、請求項2に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700067

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