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特許異議申立

2017-700969

油性食品

審判番号
2017-700969
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-504195外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年10月10日
審決日
2018年05月15日
公報発行日
2018年08月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(A23D) / P1651.121-YAA(A23D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6113942号発明「油性食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6113942号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6113942号の請求項1、2、4~10に係る特許を維持する。 特許第6113942号の請求項3に係る特許についての申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6113942号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2016年10月21日(優先権主張 2015年10月26日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年10月10日に特許異議申立人児島正実により特許異議の申立てがなされ、当審において平成29年12月21日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月22日に訂正の請求及び意見書の提出がされ、その後、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、特許異議申立人に当該訂正の請求に対して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは意見書が提出されなかったものである。 第2 訂正の請求についての判断 1.訂正の内容 平成30年2月22日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6113942号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「である、」とあるのを、「であり、前記油脂に占める、前記L2Mおよび前記LM2の合計含有量が0.01~5質量%である、」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか1項」とあるのを、「請求項1または2」と訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4の何れか1項」とあるのを、「請求項1、2、および、4の何れか1項」と訂正する。 (訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5の何れか1項」とあるのを、「請求項1、2、4、および、5の何れか1項」と訂正する。 (訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~5の何れか1項」とあるのを、「請求項1、2、4、および、5の何れか1項」と訂正する。 2.訂正の適否 (訂正事項1について) ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、油脂中のL2MとLM2の合計含有量について、特定していなかったものを、「0.01~5質量%」とその範囲を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、本件特許の特許請求の範囲の訂正前の【請求項3】の「前記油脂に占める、前記L2Mおよび前記LM2の合計含有量が0.01~10質量%である、」、及び本件特許明細書の【0018】の「本発明の油性食品中の油脂は、L2MおよびLM2を合計で0.01~10質量%含有することが好ましい。本発明の油性食品中の油脂は、L2MおよびLM2を合計で、・・・、さらに好ましくは0.5~5質量%含み、最も好ましくは1~4質量%含む。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (訂正事項2について) ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (訂正事項3~6について) ア 訂正の目的 上記訂正事項3~6は、上記訂正事項2の請求項3の削除に伴い、請求項4~7において請求項3を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3及び4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3~6は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (一群の請求項ごとに対する訂正であることについて) 訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~9〕についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1~10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 油脂中にL2MおよびLM2を含み、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.3~4.5であり、前記油脂に占める、前記L2Mおよび前記LM2の合計含有量が0.01~5質量%である、油性食品。 ただし、L、M、L2M、LM2は、以下を意味する。 L:炭素数16~24の飽和脂肪酸 M:炭素数6~10の脂肪酸 L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール 【請求項2】 前記L2Mおよび前記LM2を構成するMの全量に占める、カプリン酸の含有量が20質量%以上である、請求項1に記載の油性食品。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記油脂に占める、MMMの含有量が0.01質量%以上5質量%未満である、請求項1または2に記載の油性食品。 ただし、MMMは、以下を意味する。 MMM:グリセロール1分子に3分子のMが結合したトリアシルグリセロール 【請求項5】 前記油脂に占める、パーム系油脂の含有量が20質量%以上である、請求項1、2、および、4の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項6】 前記油性食品がチョコレートである、請求項1、2、4、および、5の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項7】 前記油性食品が可塑性油脂組成物である、請求項1、2、4、および、5の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項8】 請求項7に記載の可塑性油脂組成物を含む、ベーカリー食品。 【請求項9】 請求項6に記載のチョコレートおよび/または請求項8に記載のベーカリー食品を含む、複合ベーカリー食品。 【請求項10】 油脂中にL2MおよびLM2を40質量%以上含み、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.3~4.5である、油性食品のブルームおよびグレインの抑制剤。 ただし、L、M、L2M、LM2は、以下を意味する。 L:炭素数16~24の飽和脂肪酸 M:炭素数6~10の脂肪酸 L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール」 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 平成29年12月21日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 (特許法第29条第1項第3号及び第2項について) 本件発明1~10は、甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2015-82999号公報 なお、当該取消理由通知は、特許異議申立書に記載された全ての特許異議の申立ての理由を含んでいる。 2.取消理由についての判断 (1)本件発明1に係る新規性及び進歩性について ア 甲1-1発明及び甲1-2発明 甲第1号証の実施例1(【0033】~【0039】)には、以下の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されている。 「エステル交換油脂1(構成脂肪酸中の、炭素数6~10の構成脂肪酸の含有量47.4%、炭素数6の構成脂肪酸の含有量0%、炭素数10の構成脂肪酸の含有量33.2%、パルミチン酸の含有量23.2%、ステアリン酸の含有量28.3%):38.0%、ココアパウダー:18.18%、粉糖(砂糖):43.27%、レシチン:0.5%及び香料:0.05%を原材料とするチョコレート。」 また、甲第1号証の比較例2(【0033】~【0039】)には、以下の発明(以下「甲1-2発明」という。)が記載されている。 「エステル交換油脂1(構成脂肪酸中の、炭素数6~10の構成脂肪酸の含有量47.4%、炭素数6の構成脂肪酸の含有量0%、炭素数10の構成脂肪酸の含有量33.2%、パルミチン酸の含有量23.2%、ステアリン酸の含有量28.3%):4.0%、ココアバター:34.0%、ココアパウダー:18.18%、粉糖(砂糖):43.27%、レシチン:0.5%及び香料:0.05%を原材料とするチョコレート。」 イ 対比 甲第1号証の【0033】の記載によると、エステル交換油脂1は、MCT1とパーム極度硬化油とを混合した混合油にナトリウムメチラートを添加して、エステル交換反応を行ったものである。そうすると、エステル交換後の結合脂肪酸の分布は確率的な分布に変化し、そのトリグリセリド組成が計算できることから、甲1-1発明のエステル交換油脂1のLM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)は、0.76となる。 また、ココアパウダーには11質量%の油脂(ココアバター)が含まれていること(甲第1号証の【0023】)から、甲1-1発明の油脂中のL2MおよびLM2の合計含有量を算出すると、70.6%となる。 さらに、同様に甲1-2発明について算出すると、油脂中のL2MおよびLM2の合計含有量は、7.4%となる。 そうすると、本件発明1と甲1-1発明又は甲1-2発明とを対比するに、本件発明1と甲1-1発明又は甲1-2発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点1> 油脂に占める、L2MおよびLM2の合計含有量が、本件発明1では、「0.01~5質量%」であるのに対して、甲1-1発明では、70.6%であり、甲1-2発明では、7.4%である点。 ウ 当審の判断 上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1が甲1-1発明又は甲1-2発明であるとはいえない。 また、甲1-1発明又は甲1-2発明において、L2MおよびLM2の合計含有量を調整する動機付けは、存在しないから、甲1-1発明又は甲1-2発明において、油脂に占めるL2MおよびLM2の合計含有量を0.01~5質量%とすることを当業者が容易になし得たとはいえない。 したがって、本件発明1が、甲1-1発明又は甲1-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明2、4~9に係る新規性及び進歩性について 本件発明2、4~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、上記(1)ウと同じ理由で、本件発明2、4~9は、甲1-1発明又は甲1-2発明であるとはいえないし、甲1-1発明又は甲1-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件発明10に係る新規性及び進歩性について ア 甲1-3発明 甲第1号証の【0009】、【0033】~【0039】より、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1-3発明」という。)が記載されている。 「構成脂肪酸中の、炭素数6~10の構成脂肪酸の含有量47.4%、炭素数6の構成脂肪酸の含有量0%、炭素数10の構成脂肪酸の含有量33.2%、パルミチン酸の含有量23.2%、ステアリン酸の含有量28.3%である、油性食品に可塑性を付与するエステル交換油脂1。」 イ 対比 本件発明10と甲1-3発明とを対比するに、本件発明10と甲1-3発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点2> 本件発明10では、「油性食品のブルームおよびグレインの抑制剤」であるのに対して、甲1-3発明では、油性食品に可塑性を付与するエステル交換油脂1である点。 ウ 当審の判断 ブルームおよびグレインの抑制剤とは、本件特許明細書の【0002】~【0009】の記載を参酌すると、チョコレートが白い粉を吹いた状態となるブルームおよび油脂結晶が多形変化と共に次第に粗大化し、粗大結晶となるグレインの発生を防止するために油性食品に用いられる剤であるところ、甲第1号証には、エステル交換油脂1がブルームおよびグレインの発生を防止することについての記載はない。 そして、甲1-3発明のエステル交換油脂1は、チョコレートの評価として良好な結果が得られている実施例1のチョコレート中の配合量からみても、チョコレートの原材料として用いられていることは明らかである。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明10が甲1-3発明であるとはいえない。 また、油性食品において、ブルームおよびグレイン耐性があることが、当然に求められる品質であるとしても、甲1-3発明のエステル交換油脂1を油性食品に用いると、油性食品のブルームおよびグレインの発生が防止できるとの技術常識はないのであるから、甲1-3発明のエステル交換油脂1を、油性食品のブルームおよびグレインの抑制剤とすることを当業者が容易になし得たとはいえない。 したがって、本件発明10が、甲1-3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由に記載した取消理由によっては、請求項1、2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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