特許異議申立
2021-700064
ソフトチョコレート
- 審判番号
- 2021-700064
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-566848
- 登録番号
- 6726812
- 請求日
- 2021年01月21日
- 審決日
- 2021年12月03日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日清オイリオグループ株式会社
- 【権利者代理人】引地 進
- 【異議申立人】萩原 真紀
- 審判長/審判官
- 審判長 村上 騎見高
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 冨永 みどり
- 分類
- P1651.113-YAA(A23G) / P1651.121-YAA(A23G) / P1651.537-YAA(A23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6726812号発明「ソフトチョコレート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6726812号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~7]について訂正することを認める。
特許第6726812号の請求項[1~7]に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6726812号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成31年3月28日の出願であって、令和2年7月1日に特許権の設定登録がされ、令和2年7月22日にその特許公報が発行され、令和3年1月21日に、その請求項1~7に係る発明の特許に対し、萩原 真紀(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 4月 5日付け 取消理由通知
同年 6月 3日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 6月18日付け 特許法第120条の5第5項の規定に
基づく通知書
同年 8月10日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和3年6月3日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。その訂正内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「油脂A」の含有量を、「60~99質量%」に減縮して、請求項1を
「 油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、
前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有し、
前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、
0.32~0.84質量%のリン脂質を含む、
前記ソフトチョコレート
(ただし、条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、
を意味する)。」(決定注:下線は訂正部分を示す。以下同様。)に訂正する。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する、訂正後の請求項1~7は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「油脂」が含有する「油脂A」の含有量が特定されていなかったところ、「油脂Aを60~99質量%含有し」と、「油脂」が含有する「油脂A」の含有量を規定することにより、「油脂」が含有する「油脂A」の含有量を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1の「油脂Aを60~99質量%含有し」とする事項については、願書に添付した明細書に、「【0022】 本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める上記油脂Aの含有量は、好ましくは60~99質量%であり・・」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)と記載され、具体的に、実施例(【0033】~【0041】)には、「油脂Aを60~99質量%」の範囲内で含有し、本件発明1の構成を備えたソフトチョコレートを調製したことが記載されている。
そうすると、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1~7]についての訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、
前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有し、
前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、
0.32~0.84質量%のリン脂質を含む、
前記ソフトチョコレート
(ただし、条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、
を意味する)。
【請求項2】
さらに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む、請求項1に記載のソフトチョコレート。
【請求項3】
前記糖類が、乳糖を含有する、請求項1または2に記載のソフトチョコレート。
【請求項4】
前記リン脂質が、粗製大豆レシチンに由来する、請求項1~3の何れか1項に記載のソフトチョコレート。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートを含む、複合食品。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第6号証を提出して、以下の申立理由を主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2008-228641号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014-23444号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2016-2016号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:S.T.Beckett編、「INDUSTRIAL CHOCOLATE MANUFACTURE AND USE FOURTH EDITION」、(2009)、Blackwell Publising Ltd.、表紙、表題紙p.1~2、奥付、p.240~244(以下「甲4」という。)
甲第5号証:国際公開第2014/175192号(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平3-119945号公報(以下「甲6」という。)
(申立理由の概要)
申立理由ア(新規性、進歩性)
訂正前の本件発明1、3~7は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1、3~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
訂正前の本件発明2、5~7は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明2、5~7に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由イ(進歩性)
訂正前の本件発明1~5は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲2、甲4及び甲5に記載された技術的事項に基いて、また、 訂正前の本件発明6、7は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲4~甲6に記載された技術的事項に基いて、それぞれ、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1~7に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由ウ(進歩性)
訂正前の本件発明1~7は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1~7に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由エ(サポート要件)
訂正前の本件発明1~7は、特許請求の範囲の記載が以下(ア)~(ウ)の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1~7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許優先日に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(ア)訂正前の本件発明1~7には、ソフトチョコレートの用途は限定されていないが、本件発明の課題に関する本件明細書の記載(【0006】)より、訂正前の本件発明1~7は焼成用途のチョコレートの課題を解決するものであるから、訂正前の本件発明1~7は本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件明細書に記載された発明ではない。
(イ)訂正前の本件発明1~7には、「油脂A」の含量の規定はないが、本件明細書の実施例で訂正前の本件発明1~7の効果が確認されたものは、チョコレートの油脂含有量中「油脂A」の含量が86.6%~93.6%であり、油脂の殆どが「油脂A」である態様に限られるから、訂正前の本件発明1~7は本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件明細書に記載された発明ではない。
(ウ)訂正前の本件発明1~7には、「油脂A」が非ラウリン系油脂の分別処理した低融点部であることの規定はないが、本件明細書の段落【0015】の記載及び実施例で訂正前の本件発明1~7の効果が確認されたものも、油脂を分別して得られる低融点部である油脂A-1~A-3に限られるから、訂正前の本件発明1~7は本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件明細書に記載された発明ではない。
2 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の本件発明1~7に対して、令和3年4月5日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
訂正前の本件発明1~7は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
記
発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識を踏まえても、本件発明1~7のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量として、60~99質量%以外の場合には、どのように実施すれば、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを得ることができるのか不明であるから、当該部分を含む、ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量が特定されていない本件発明1~7が、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供する、という課題を解決できると当業者が認識することができるとはいえない。
したがって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
なお、当審が通知した取消理由は、申立理由エのうち(イ)に対応するものである。
第5 当審の判断
当審は、請求項1~7に係る特許は、当審の通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 当審が通知した取消理由についての判断
(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。
(2)特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
ア 背景技術に関する記載
「【0002】
チョコレートの食感は、焼成されることにより変化する。通常は、焼成により、チョコレートの表面は硬く変質する。そのため、焼成されたチョコレートは、手に取ってもべとつかないという利点がある。しかし、焼成により、チョコレートの食感も硬く変質してしまう。チョコレートを含むベーカリー生地を焼成することにより得られる、多くの焼成複合食品には、チョコレートの食感が焼成により変化しないことが求められる。特に、ベーカリー生地に包餡されたソフトチョコレートは、焼成後もソフトな食感を維持することが必要である。
【0003】
特開昭58-60944号公報には、0.1~0.7重量%のHLB10以上の蔗糖脂肪酸エステルが配合されたチョコレートが開示されている。当該チョコレートは、焼菓子のドウに混入されて、焼成されても、その型崩れも、油滲みも、硬化も生じない。また、特開平11-225674号公報には、0.05~1重量%のポリグリセリンオレイン酸モノエステル及び0.05~1重量%のHLB5以下のポリグリセリンオレイン酸エステルが添加されたチョコレート類が開示されている。当該チョコレート類は、スナック菓子生地中に入れて焼成されても、その硬化により食感が損なわれることがない。」
イ 発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
・・・・・
【0006】
本開示の課題は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供することである。」
ウ 発明の効果に関する記載
「【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供することができる。また、当該ソフトチョコレートを含む焼成複合食品生地、および、当該生地を焼成して得られる焼成複合食品、を提供することができる。」
エ ソフトチョコレートに含まれる油脂の実施の態様に関する記載
「【0014】
本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、上記SFCを満たす限り、特に限定されない。本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、通常の食用油脂を使用できる。例えば、ココアバター、パーム油、パーム分別油、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、コクム脂、マンゴー脂、マンゴー分別油、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、牛脂、豚脂および乳脂などの動植物油脂、あるいは、これらに混合、分別、エステル交換、および水素添加など処理のうちの1種以上を適用することにより得られる加工油脂、の中から1種以上を選択して使用できる。
【0015】
本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、好ましくは、非ラウリン系油脂を分別処理した低融点部としての、油脂Aを含有する。ここで、非ラウリン系油脂とは、その油脂の構成脂肪酸の全量に占める炭素数16以上の脂肪酸の含有量が90質量%以上である油脂を意味する。非ラウリン系油脂の具体例としては、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、紅花油、コーン油、パーム油や、これらの混合油、これらの油脂の加工油脂(エステル交換油、分別油、及び水素添加油など)、および、これら混合油脂の加工油脂(エステル交換油、分別油、及び水素添加油など)が挙げられる。油脂Aは、好ましくはヨウ素価が62以上である。また、油脂Aは、好ましくは以下の(a)から(d)の条件を満たす。
(a)L3含有量が5質量%未満
(b)L2X含有量が10~40質量%
(c)LX2含有量が45~75質量%
(d)X3含有量が2~22質量%
上記の(a)から(d)の条件において、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、それぞれ以下を意味する
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
なお、油脂に含まれるトリグリセリドは、例えば、ガスクロマトグラフィー法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993))に準じて測定できる。
【0016】
上記油脂Aの1種または2種以上を用いることができる。油脂Aの具体例として、以下に説明する油脂A-1、油脂A-2、油脂A-3が挙げられる。油脂A-1は、パーム油、パーム分別油、あるいはそれらの混合油を分別して得られるヨウ素価が62以上である低融点部である。・・・
・・・・・
【0022】
本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める上記油脂Aの含有量は、好ましくは60~99質量%であり、より好ましくは70~98質量%であり、さらに好ましくは80~97質量%である。また、本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める上記油脂Bの含有量は、好ましくは0.3~4質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%であり、さらに好ましくは0.7~2質量%である。本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める油脂Aおよび/または油脂Bの含有量が上記範囲内にあると、焼成によるチョコレートのベーカリー生地への浸み込みが少ない。」
オ ソフトチョコレートの用途に関する記載
「【0031】
本開示のソフトチョコレートは、そのまま喫食されてもよい。しかし、本開示のソフトチョコレートは、その他の食品にトッピング、コーティング、あるいは包餡されてもよい。このようにして、本開示のソフトチョコレートを、複合食品の製造に適用することができる。本開示のソフトチョコレートと組み合わされる食品は、特に限定されない。しかし、好ましくは、ドライフルーツおよびナッツなどの乾燥食品、菓子およびパンなどのベーカリー食品である。ベーカリー食品の具体例としては、シュー菓子(エクレア、シュークリームなど)、パイ、およびワッフルなどの洋生菓子;ショートケーキ、ロールケーキ、デコレーションケーキ、トルテ、およびシフォンケーキなどのスポンジケーキ類;パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、およびカステラなどのバターケーキ類;ビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツェル、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン、およびラスクなどの焼菓子;食パン、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、およびクロワッサンなどのパン類、が挙げられる。
【0032】
本開示のソフトチョコレートは、また、ベーカリー食品の生地(ベーカリー生地)にトッピング、コーティング、あるいは包餡された状態で焼成されてもよい。このようにして、焼成複合食品に適用されてもよい。本開示のソフトチョコレートは、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有する。本開示のソフトチョコレートは、好ましくは、ベーカリー生地に包餡されて、焼成される。本開示のソフトチョコレートが含まれる複合食品生地の焼成は、好ましくはソフトチョコレートの温度が70~100℃程度に達するように、例えば、オーブン、マイクロ波、あるいは過加熱蒸気を用いて実施できる。例えば、本開示のソフトチョコレートが包餡されたベーカリー生地を、オーブンを使用して、例えば、160~210℃、6~15分間程度の条件で、好適に焼成できる。
カ 実施例に関する記載
「【実施例】
・・・・・
【0034】
<使用油脂>
ソフトチョコレートの原料油脂として以下の油脂を使用した。
(油脂A-1)
2段分別パームオレイン(ヨウ素価:65.7、L3含有量:0.3質量%、L2X含有量:33.2質量%、LX2含有量:56.3質量%、X3含有量:7.8質量%)を油脂A-1として使用した。
(油脂A-2)
8.8質量部のハイオレイックヒマワリ油、48.4質量部のパームステアリン(ヨウ素価36)、18.8質量部の極度硬化大豆油、および24.0質量部のパーム油を混合した。得られた混合油(パルミチン酸含有量40.9質量%、ステアリン酸含有量20.0質量%、オレイン酸含有量30.6質量%、リノール酸含有量6.3質量%、リノレン酸含有量0.2質量%、およびトランス型脂肪酸含有量0質量%)を、ランダムエステル交換反応することにより、エステル交換油脂が得られた。エステル交換反応は、常法に従って行った。すなわち、十分に乾燥した原料油脂に対して、ナトリウムメトキシドを0.2質量%添加した。添加後、減圧下、120℃で0.5時間、攪拌しながら、反応を行った。得られたエステル交換油脂を、36~38℃でドライ分別した。これにより、高融点部が除去され、低融点部が得られた。得られた低融点部を0~2℃で溶剤分別(アセトン使用)した。これにより、高融点部が除去され、低融点部が得られた。得られた低融点部を脱臭処理して、油脂A-2(ヨウ素価:64.9、L3含有量:0.1質量%、L2X含有量:28.4質量%、LX2含有量:55.4質量%、X3含有量:10.9質量%)を得た。
(油脂A-3)
ハイオレイックヒマワリ油40質量部に、ステアリン酸エチルエステル60質量部を混合し、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加してエステル交換反応を行った。ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去し、得られた反応物を薄膜蒸留にかけ、反応物から脂肪酸エチルエステルを除去して蒸留残渣を得た。得られた蒸留残渣を乾式分別により高融点部を除去し、得られた低融点部からアセトン分別により2段目の高融点部を除去して低融点部を得た。得られた低融点部を常法によりアセトン除去および脱色、脱臭処理して、油脂A-3(ヨウ素価:64.0、L3含有量:0.3質量%、L2X含有量:11.3質量%、LX2含有量:68.0質量%、X3含有量:17.4質量%、SX2含有量:62.0質量%)を得た。
(油脂a-1)
パーム油(ヨウ素価:52.1、L3含有量:8.1質量%、L2X含有量:47.8質量%、LX2含有量:36.4質量%、X3含有量:4.8質量%)を油脂a-1として使用した。
(油脂a-2)
一段分別パームオレイン(ヨウ素価:56.4、L3含有量:1.4質量%、L2X含有量:49.1質量%、LX2含有量:41.5質量%、X3含有量:5.7質量%)を油脂a-2として使用した。
(油脂a-3)
一段分別パームオレインのランダムエステル交換油脂(ヨウ素価:56.3、L3含有量:10.7質量%、L2X含有量:36.5質量%、LX2含有量:37.8質量%、X3含有量:12.6質量%)を油脂a-3として使用した。
(油脂a-4)
菜種油(ヨウ素価:114、L3含有量:0.0質量%、L2X含有量:0.6質量%、LX2含有量:15.5質量%、X3含有量:82.0質量%)を油脂a-4として使用した。
(油脂B)
ハイエルシン酸菜種油の極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を油脂Bとして使用した。
【0035】
<ソフトチョコレートを包餡したクッキーの製造>
表1、2、および3の配合にしたがって、原材料を混合し、常法にしたがって、微粒化(リファイニング)、および精練(コンチング)の各工程を経ることにより、例1から例15の融液状のチョコレートを得た。例1から例15の融液状のチョコレートを冷凍庫で固化させた。次いで、30質量部の砂糖、70質量部のマーガリン、100質量部の薄力粉、および0.5質量部のベーキングパウダーを混合してクッキー生地を調製した。10gずつに分割したクッキー生地を、冷蔵庫で2時間以上保持した後、室温に戻した。10gのクッキー生地に、4gの冷凍庫で固化させたソフトチョコレートを包餡した。ソフトチョコレートを包餡したクッキー生地を天板に並べ、コンベクションオーブンで、180℃で7分間、焼成した。
【0036】
<ソフトチョコレートに含まれる油脂のSFC測定>
ソフトチョコレートの原材料としての、ココアパウダーは、ココアバターを11質量%含有する。また、同じく原料としての全脂粉乳は、乳脂肪を25質量%含有する。この原材料配合から、ソフトチョコレートに含まれる油脂の組成を計算した。その計算結果にしたがって、調製された油脂の、SFCを測定した。例えば、93.6質量部の油脂A-1と、6.4質量部のココアバターと、が混合されて、例1のソフトチョコレートに含まれる油脂が調製される。
【0037】
<ソフトチョコレート包餡クッキーの評価>
3名の職人歴5年以上の菓子職人が、焼成後23℃に静置された例1から例15のクッキーに包餡されたソフトチョコレートを、以下の基準にしたがって、総合的に評価した。評価結果を、表1、2、および3に示した。
【0038】
<クッキーに包餡焼成されたソフトチョコレートの評価基準>
焼成後ソフトチョコレートの物性評価
(23℃でのソフトソフトチョコレート包餡クッキー割断面の観察評価)
◎◎:ゆるい流動性があり、かつ、光沢があり、非常に良好
◎ :ゆるい流動性があり、良好
○ :非常にソフトで可塑性があり、良好
△ :ソフトで可塑性がある
▲ :可塑性を有するが、やや硬い
× :可塑性を有するが、硬い、または、やわらか過ぎて流れ出る
クッキーに包餡焼成されたソフトチョコレートの風味評価
◎◎:異味異臭がなく、非常に良好
◎ :異味異臭がなく、良好
○ :異味異臭がほとんど感じられない
△ :異味異臭をやや感じる
▲ :異味異臭を感じる
× :異味異臭を強く感じる
クッキーに包餡焼成されたソフトチョコレートの口どけ評価
◎◎:滑らかで融け残りがなく、非常に良好
◎ :滑らかで融け残りがなく、良好
○ :融け残りがなく、良好
△ :わずかに融け残りを感じる
▲ :やや融け残りを感じる
× :融け残りを感じる
【0039】
【表1】
[図:0001384052000001.jpg]
【0040】
【表2】
[図:0001384052000002.jpg]
【0041】
【表3】
[図:0001384052000003.jpg]
」
(4)本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の背景技術の記載(【0002】~【0005】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0006】)及び実施例の記載(【0033】~【0041】)からみて、本件発明1~4の解決しようとする課題は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供すること、本件発明5の解決しようとする課題は、そのようなソフトチョコレートを含む複合食品を提供すること、本件発明6の解決しようとする課題は、そのようなソフトチョコレートがベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある焼成複合食品を提供すること、及び、本件発明7の解決しようとする課題は、そのような焼成複合食品の製造方法を提供することであると認める。
(5)判断
ア 発明の詳細な説明の、実施例には、ソフトチョコレートの原料油脂として、
油脂A-1:(ヨウ素価:65.7、L3含有量:0.3質量%、L2X含有量:33.2質量%、LX2含有量:56.3質量%、X3含有量:7.8質量%)
油脂A-2:(ヨウ素価:64.9、L3含有量:0.1質量%、L2X含有量:28.4質量%、LX2含有量:55.4質量%、X3含有量:10.9質量%)
油脂A-3:(ヨウ素価:64.0、L3含有量:0.3質量%、L2X含有量:11.3質量%、LX2含有量:68.0質量%、X3含有量:17.4質量%、SX2含有量:62.0質量%)
を使用し、表1、2、および3の配合にしたがって、原材料を混合し、常法にしたがって、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15のソフトチョコレート[いずれも、油脂の連続相を有し、糖類(砂糖又は乳等)を含有し、油脂のSFCが、10℃で3~34%、20℃で2~24%、30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むもの]を得、クッキー生地に当該ソフトチョコレートを包餡し、焼成したこと、焼成後のソフトチョコレートの物性評価として、いずれも常温でゆるい流動性があることを客観的に確認したことが記載されている。
ここで、当該ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量を計算すると、以下のとおりであり、「油脂A」を60~99質量%の範囲内で含有すると、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できると理解され、そのことが裏付けられているといえる。
例1:93.6質量%(=100×29.2質量%/31.2質量%)
例2:92.6質量%(=100×28.9質量%/31.2質量%)
例3:92.7質量%(=100×28.75質量%/31.0質量%)
例5:92.8質量%(=100×28.85質量%/31.1質量%)
例6:92.6質量%(=100×28.81質量%/31.1質量%)
例8:92.7質量%(=100×28.75質量%/31.0質量%)
例9:90.5質量%(=100×28.05質量%/31.0質量%)
例14:86.6質量%(=100×28.15質量%/32.5質量%)
例15:94.9質量%(=100×29.51質量%/31.1質量%)
イ 本件発明1~7の「油脂A」の含有量について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0022】 本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める上記油脂Aの含有量は、好ましくは60~99質量%であり・・・。本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂に占める油脂A・・の含有量が上記範囲内にあると、焼成によるチョコレートのベーカリー生地への浸み込みが少ない。」と記載されている。
それ故、ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量が60~99質量%であると、焼成によるソフトチョコレートのベーカリー生地への浸み込みが少なく、ソフトチョコレートの各成分も損失せずそのまま包餡されていると理解されることから、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性は維持されたままのソフトチョコレートを提供できると理解される。
ウ そうすると、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15のようにソフトチョコレートを調製すれば、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できることを考慮に入れると、本件発明1~7の発明特定事項を有するソフトチョコレートにおいて、実施の態様の記載に基づいて、「油脂A」を「60~99質量%」含有するよう実施すれば、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できると、当業者は理解できるといえ、本件発明1~7の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
(6)申立人の主張について
申立人は、令和3年8月10日付意見書の(2)Aにおいて、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15の当該ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量は80~99質量%の範囲であり、60質量%付近の例や、70質量%付近の例を用意していないことから、サポート要件を満たすのは「油脂A」の含有量が80~99質量%の範囲であり、取消理由は依然解消されていない旨を主張している。
しかしながら、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15の当該ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量は80~99質量%の範囲であるとしても、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15の記載に加え、発明の詳細な説明の一般的な実施の態様の記載も考慮すれば、当該ソフトチョコレートに含まれる油脂に占める「油脂A」の含有量が60~99質量%の範囲となるよう実施すれば、本件発明1~7の範囲において当業者が前記課題を解決し得ると認識できることは、前記(5)で述べたとおりである。
(7)小括
したがって、本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断
(1)申立理由ア(新規性、進歩性)について
ア 甲1~甲6の記載
(ア)甲1の記載
甲1a「【請求項1】
下記(A)~(E)を満たす、油脂組成物。
(A)構成脂肪酸中のトランス酸含量が、5質量%未満;
(B)構成脂肪酸中のZ含量が、20質量%以上40質量%未満;
(C)トリグリセリド中のジ飽和モノ不飽和トリグリセリド(Z2X)含量が、30質量%未満;
(D)トリグリセリド中のモノ飽和ジ不飽和トリグリセリド(ZX2)含量が、40質量%以上;
(E)ZX2に対するZ2Xの比(Z2X/ZX2)が、0.25以上0.45未満。
〔Zは、炭素数16~24の飽和脂肪酸であり、Xは炭素数16~24の不飽和脂肪酸である。〕
・・・・・
【請求項7】前記油脂組成物が、フィリングまたはスプレッドに用いられる請求項1から6いずれか記載の油脂組成物。
【請求項8】前記油脂組成物が、チョコレートに用いられる請求項1から6いずれか記載の油脂組成物。
【請求項9】請求項1から6いずれか記載の油脂組成物を含有するフィリングまたはスプレッド。
【請求項10】請求項1から6いずれか記載の油脂組成物を含有するチョコレート。」
甲1b「【0001】
本発明は、特にソフトチョコレート用として、トランス酸含量が低く、カカオ脂肪分が高くてもグレイン(油脂結晶の粗大化)及びブルーム(表面の白色化)発生の抑制効果に優れ、風味及び口溶けが良い油脂組成物、及び該油脂組成物を使用したチョコレート組成物に関する。
・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特にソフトチョコレート用として、昨今の健康意識の高まりに応えるため低トランス酸という条件を満たしながら、カカオ脂肪分が高くてもブルーム・グレイン耐性を有し、良好な風味と口溶けを持った油脂組成物、及び該油脂組成物を使用したチョコレート組成物を提供することである。
・・・・・
【発明の効果】
【0022】
本発明の油脂組成物を使用することにより、特に近年需要が伸びているソフトチョコレートとして、近年健康上問題とされているトランス酸を低く抑えた上で、カカオ脂肪分が高くてもグレイン(油脂結晶の粗大化)及びブルーム(表面の白色化)発生の抑制効果に優れ、風味及び口溶けが良いチョコレート組成物を提供することができる。」
甲1c「【実施例】
・・・・・
【0044】
以下において、「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
・・・・・
【0049】
[実験例1](パームオレイン)
試験油脂として以下の油脂A~D及びRを準備した。
油脂A:PL62(パームオレイン(ヨウ素価62)、マレーシアINTERCONTINENTAL SPECIALTY FATS SDN.BHD.(以下ISF社)内製)。
油脂B:PL64(パームオレイン(ヨウ素価64)、ISF社内製)。
油脂C:PL67(パームオレイン(ヨウ素価67)、ISF社内製)。
油脂D:PL70(パームオレイン(ヨウ素価70)、ISF社内製)。
油脂R:菜種微水添分別油(商品名:日清デバイダーオイル、日清オイリオグループ株式会社製)。
【0050】
上記分析方法で測定した試験油脂A~D、Rの分析値(トランス酸量、飽和脂肪酸量、トリ飽和トリグリセリド(ZZZ)量、トリ不飽和トリグリセリド(XXX)量、ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド(Z2X)量、モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド(ZX2)量及びZ2X/ZX2比)を表1に示す。油脂Rのトリグリセリド組成は、トランス酸含量が多いことにより、トリグリセリドの同定が十分に出来なかった。
【0051】
【表1】
[図:0001384052000004.jpg]
・・・・・
【0080】
【表9】
[図:0001384052000005.jpg]
【0081】
〔ソフトチョコレートの製造方法〕
試験油脂96質量部とハイエルシン菜種極度硬化油(商品名:「ハイエルシン菜種極度硬化油」、横関油脂工業(株)製)4質量部とを混合溶解して、可塑性油脂を用意した(この可塑性油脂中のZZZ含量は、約4%である。)。
この可塑性油脂100質量部に対して、更にヘプタベヘン酸デカグリセリン(商品名:HB-750、坂本薬品工業株式会社)0.5質量部とショ糖ステアリン酸エステル(商品名:S-170、三菱化学フーズ株式会社)0.5質量部を添加した油脂組成物を調製した。この油脂組成物を使用して、以下の配合で、公知の方法によりソフトチョコレートD’、G’、K’、O’及びR’を試作した。
【0082】
〔ソフトチョコレートの配合〕
油脂組成物36質量部、レシチン0.5質量部、香料0.3質量部、粉糖34質量部、乳糖9質量部、全粉乳5質量部、ハイファットココアパウダー(油分23%)16質量部。
【0083】
〔保存性の確認〕
調製したソフトチョコレートD’、G’、K’、O’及びR’の保存性を確認するため、各ソフトチョコレートを15℃に定温静置した。定温静置後1ヵ月及び2ヵ月後の組織の状態を目視で観察し、以下の評価基準により評価した。結果を表10に示す。
【0084】
(評価基準)
◎:良好
○:概ね良好
△:組織が荒れている。
×:グレイン(0.1~1mm程度の粒)が発生
【0085】
【表10】
[図:0001384052000006.jpg]
【0086】
表10に示すとおり、ソフトチョコレートD’とO’は、ソフトチョコレートR’と比較して、保存性が優れていた。また、ソフトチョコレートG’とK’は、ソフトチョコレートR’と比較して、保存性は改善しなかった。
【0087】
これにより、油脂D及び油脂Oは、トランス酸が十分に低減されていながら、汎用的に用いられている微水添菜種分別油である油脂Rより、チョコレートに用いたとき、保存性に優れたチョコレートを製造できる油脂であることがわかった。」
(イ) 甲2の記載
甲2a「【請求項1】
油性食品に含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たす油性食品。
(a)X3含量が5質量%以下
(b)X2U含量が10~50質量%
(c)XU2含量が30~70質量%
(d)U3含量が1~25質量%
(e)XXUとUXUの合計含量が6.5~40質量%
(上記の(a)から(e)の条件において、X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU及びUXUはそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド)
・・・・・
【請求項5】
前記油性食品がチョコレートである請求項1~4のいずれか1項に記載の油性食品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の油性食品と油性食品以外の食品とを組み合わせた複合食品。
【請求項7】
前記油性食品以外の食品が高水分食品及び低水分食品を併用した複合食品であって、前記油性食品が高水分食品と低水分食品の間に存在する請求項6に記載の複合食品。
【請求項8】
前記高水分食品が冷菓であり、前記低水分食品がモナカ皮又は冷菓用コーンである請求項7に記載の複合食品。
【請求項9】
前記油性食品がチョコレートである請求項6~8のいずれか1項に記載の複合食品。
・・・・・ 」
甲2b「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高水分食品と低水分食品を組み合わせた複合食品において、低水分食品の吸湿を抑制することのできる油性食品を提供することである。
・・・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高水分食品と低水分食品を組み合わせた複合食品において、低水分食品の吸湿を抑制することのできる油性食品を提供することができる。
・・・・・
【0012】
本発明において、油性食品とは、油脂を含み、油脂が連続相である加工食品のことを言う。本発明の油性食品は、好ましくは糖類を含むものである。油性食品の具体例としては、チョコレート、ショートニング、バタークリーム等が挙げられる。
【0013】
本発明において、油性食品に含まれる油脂とは、油性食品中の全油脂分のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー等)中の油脂(ココアバター等)も含むものである。
【0014】
・・・・・また、本発明において、Pはパルミチン酸、Stはステアリン酸のことである。」
甲2c「【0084】
〔比較例1~2の油脂組成物の準備〕
比較例1~2として、下記の油脂組成物を準備した。
・比較例1の油脂組成物:パームオレイン(ヨウ素価:56、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:1.4質量%、X2U含量:46.6質量%、XU2含量:41.8質量%、U3含量:5.8質量%、XXU+UXU含量:6.0質量%、XXU含量:5.0質量%、St2U/XU2質量比:0.105、St/P質量比:0.108、トランス脂肪酸含量:0.7質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.8質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:44.9質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:53.8質量%)
・比較例2の油脂組成物:パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)
【0085】
〔チョコレートの製造〕
実施例1の油脂組成物及び比較例1~2の油脂組成物を使用し、表1の配合で実施例2のチョコレート及び比較例3~4のチョコレートを製造した。なお、チョコレートの油脂含量は全て56.0質量%であり、チョコレートの水分含量は全て1質量%以下であった。チョコレートに含まれる油脂中のトリグリセリド組成、脂肪酸組成を表2に示す(含量の単位は質量%である。)。
【0086】
【表1】
[図:0001384052000007.jpg]
【0087】
【表2】
[図:0001384052000008.jpg]
【0088】
〔アイスクリームモナカの製造及び評価〕
直径60mm×高さ8mm×厚さ1.5mmのモナカ皮の内側全面に、実施例2のチョコレート及び比較例3~4のチョコレートを被覆し、チョコレートが乾いた後に、アイスクリーム35gを充填することで、アイスクリーム充填モナカ皮を得た。同じ大きさのモナカ皮の内面全面に同じチョコレートを被覆することで、チョコレート被覆モナカ皮を得た。アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せることで、実施例3のアイスクリームモナカ及び比較例5~6のアイスクリームモナカを製造した。」
(ウ) 甲3の記載
甲3a「【請求項1】
チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレート。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20~39質量%
(c)P2U含量が5~25質量%
(d)XU2+U3含量が58~75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8~3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド」
甲3b「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、チョコレートに含まれる油脂中に特定のトリグリセリド及び特定の脂肪酸を特定量含有させると、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートを提供することができる。」
甲3c「【0048】
<チョコレートの製造及び評価>
表1、3の配合で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造した(配合の単位は質量部、含量の単位は質量%、SFCの単位は%、温度の単位は℃である。)。チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下だった。なお、表2、4のチョコレートの油脂中の含量において、C14以下SFAは炭素数14以下の飽和脂肪酸のことであり、C16~18SFAは炭素数16~18の飽和脂肪酸のことである。また、表1、3のチョコレートの性状は、ホイップ前の20℃での性状である。
得られたチョコレートを融解させることなく、常圧、チョコレートの温度(品温)が表1、3の条件下で、縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N-50)を用いて低速(139rpm)で30秒間攪拌した後、高速(591rpm)で2分30秒間攪拌することで含気泡チョコレートを製造した。
得られたチョコレート及び含気泡チョコレートを下記評価方法及び評価基準に従って、ホイップ適正(作業性の良さ)、保形性(経時的な形崩れのし難さ)、口溶けを評価した。評価結果を表2、4に示した。
・・・・・
【0052】
【表1】
[図:0001384052000009.jpg]
【0053】
【表2】
[図:0001384052000010.jpg]
【0054】
【表3】
[図:0001384052000011.jpg]
【0055】
【表4】
[図:0001384052000012.jpg]
【0056】
実施例のチョコレートは、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのできるものであった。また、実施例の含気泡チョコレートは、保形性及び口溶けが良いものであった。・・・・」
(エ) 甲4の記載(訳文で示す。)
甲4a「最も一般的な乳化剤は、1930年からチョコレートに用いられている、レシチンである。」(241頁2~3行)
甲4b「
[図:0001384052000013.jpg]
」(242頁図10.18)
甲4c「
[図:0001384052000014.jpg]
」(243頁表10.1)
甲4d「他の広く用いられている乳化剤は、時にAdmul-WOLとして知られる、ポリグリセリルポリリシノレート(PGPR)である。」(243頁11~12行)
(オ)甲5の記載
甲5a「[0005]本発明が解決しようとする課題は、表面が硬く耐熱性を有しつつ、内部はチョコレート本来の口溶けの良い状態を保つ焼成油性菓子を得ることである。」
甲5b「[0013]本発明の別の実施形態に係る焼成油性菓子は、焼成用油性菓子生地全体の質量に対して0.9質量%以上の大豆レシチンを含有する。本発明の焼成油性菓子は、大豆レシチンを油性菓子生地中0.9質量%以上含有することにより、ソルビタン脂肪酸エステルを用いた場合と同様に、得られる焼成油性菓子の表面が硬く耐熱性を有しつつ、内部が固くならず口溶けの良い状態を保つことができる。
[0014]大豆レシチンの含有量は、焼成用油性菓子生地全体の0.9質量%以上であり、1.2質量%以上であることが好ましい。大豆レシチンの含有量は、油性菓子全体の3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。大豆レシチンは、HLBが3~5であることが好ましい。焼成油性菓子が上記範囲の大豆レシチンを含有する場合、同時にソルビタン脂肪酸エステルを含有していてもよい。」
(カ)甲6の記載
甲6a「 本発明による製品のタイプのスナック食品は、英国特許第1,510,996号[シー・エイチ・ベーリンジャー・ソーン(C,H,Boeringer Sohn]に開示されている。これらは、芯に結合したパンの皮を有する長く伸びた形態のインスタント食品を含み、即ち、この結合は室温での取り扱い中にパンの皮がフィリングの芯から分離するのを防ぐのに十分な程強い。パンの皮はその端で開いていても閉じていてもよく、また製品に良好な貯蔵寿命を与えるために、パンの皮は最大15重量%までの水分含有率しか有していない。フィリングは25℃以下での密封包装中で少なくとも6ヵ月の期間で定義される良好な貯蔵寿命を有する。パンの皮は最大でも10重量%の水分しか含まないのが好ましく、最も好ましくは最大5重量%であり、そのような水分含有率を達成するために、製品は第2のベーキング(焼き処理)工程を、即ち、パンの皮の製造に使用した焼き処理工程に加えて、受けることができる。しかしながら、一般に、このようにして製造された製品は、乾燥しすぎてもろいということが経験されており、従って、パンの皮の低水分含有率のために食欲をそそるものではない。貯蔵期間中に、水分がフィリングからパンの皮に或いはその逆の方向に拡散、即ち、移行することによって別の問題が生じる可能性がある。これは、パンの皮をびしょびしょにするか、又は乾燥させ食欲をそそらないものにし、さらにパンの皮はその強度を失う。」(3頁右下欄13行~4頁左上欄末行)
イ 甲1に記載された発明
甲1は、「ソフトチョコレート用として、トランス酸含量が低く、カカオ脂肪分が高くてもグレイン(油脂結晶の粗大化)及びブルーム(表面の白色化)発生の抑制効果に優れ、風味及び口溶けが良い油脂組成物、及び該油脂組成物を使用したチョコレート組成物」(甲1b)に関し記載するものであって、その具体例として、実施例1における【表1】(1c)に記載の油脂A~油脂Dの内、実際に用いてソフトチョコレートを製造した、油脂Dに着目すると、油脂Dとして(実施例において「「%」とは・・質量%を示す」(甲1c)ことから、「%」を質量%として表すと)、PL70(パームオレイン(ヨウ素価70)、ISF社内製)であって、その分析値が、トランス酸0.8質量%、Z(Zは炭素数16~24の飽和脂肪酸)33.3質量%、ZZZ(トリ飽和トリグリセリド)0質量%、XXX(トリ不飽和トリグリセリド:Xは炭素数16~24の不飽和脂肪酸)10.2質量%、Z2X(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)19.4質量%、ZX2(モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド)67.3質量%、Z2X/ZX2=0.29である油脂が記載され、
その油脂D96質量部とハイエルシン菜種極度硬化油(商品名:「ハイエルシン菜種極度硬化油」、横関油脂工業(株)製)4質量部とを混合溶解して、可塑性油脂を用意し(この可塑性油脂中のZZZ含量は、約4質量%である。)、
この可塑性油脂100質量部に対して、更にヘプタベヘン酸デカグリセリン(商品名:HB-750、坂本薬品工業株式会社)0.5質量部とショ糖ステアリン酸エステル(商品名:S-170、三菱化学フーズ株式会社)0.5質量部を添加した油脂組成物を調製し、この油脂組成物を使用して、油脂組成物36質量部、レシチン0.5質量部、香料0.3質量部、粉糖34質量部、乳糖9質量部、全粉乳5質量部、ハイファットココアパウダー(油分23質量%)16質量部の配合で、公知の方法によりソフトチョコレートD’を得たことが記載されている(甲1c)。
そうすると、甲1の実施例には、油脂Dを使用して作成したソフトチョコレートD’として、
「油脂Dとして、PL70[(パームオレイン(ヨウ素価70)、ISF社内製)であって、その分析値が、トランス酸0.8質量%、Z(Zは炭素数16~24の飽和脂肪酸)33.3質量%、ZZZ(トリ飽和トリグリセリド)0質量%、XXX(トリ不飽和トリグリセリド:Xは炭素数16~24の不飽和脂肪酸)10.2質量%、Z2X(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)19.4質量%、ZX2(モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド)67.3質量%、Z2X/ZX2=0.29である油脂]96質量部とハイエルシン菜種極度硬化油(商品名:「ハイエルシン菜種極度硬化油」、横関油脂工業(株)製)4質量部とを混合溶解して、可塑性油脂を用意し(この可塑性油脂中のZZZ含量は、約4質量%である。)、
この可塑性油脂100質量部に対して、更にヘプタベヘン酸デカグリセリン(商品名:HB-750、坂本薬品工業株式会社)0.5質量部とショ糖ステアリン酸エステル(商品名:S-170、三菱化学フーズ株式会社)0.5質量部を添加した油脂組成物を調製し、
この油脂組成物36質量部、レシチン0.5質量部、香料0.3質量部、粉糖34質量部、乳糖9質量部、全粉乳5質量部、ハイファットココアパウダー(油分23質量%)16質量部の配合で、公知の方法により得られたソフトチョコレートD’」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
さらに、甲1の当該実施例には、油脂Dを使用したソフトチョコレートD’の製造方法として、
「油脂Dとして、PL70[(パームオレイン(ヨウ素価70)、ISF社内製)であって、その分析値が、トランス酸0.8質量%、Z(Zは炭素数16~24の飽和脂肪酸)33.3質量%、ZZZ(トリ飽和トリグリセリド)0質量%、XXX(トリ不飽和トリグリセリド:Xは炭素数16~24の不飽和脂肪酸)10.2質量%、Z2X(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)19.4質量%、ZX2(モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド)67.3質量%、Z2X/ZX2=0.29である油脂]96質量部とハイエルシン菜種極度硬化油(商品名:「ハイエルシン菜種極度硬化油」、横関油脂工業(株)製)4質量部とを混合溶解して、可塑性油脂を用意し(この可塑性油脂中のZZZ含量は、約4質量%である。)、
この可塑性油脂100質量部に対して、更にヘプタベヘン酸デカグリセリン(商品名:HB-750、坂本薬品工業株式会社)0.5質量部とショ糖ステアリン酸エステル(商品名:S-170、三菱化学フーズ株式会社)0.5質量部を添加した油脂組成物を調製し、
この油脂組成物36質量部、レシチン0.5質量部、香料0.3質量部、粉糖34質量部、乳糖9質量部、全粉乳5質量部、ハイファットココアパウダー(油分23質量%)16質量部の配合で、公知の方法により製造する、ソフトチョコレートD’の製造方法」の発明(以下、「甲1発明2」という。)も記載されているといえる。
ウ 本件発明1について
(ア)甲1発明1との対比
a 甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」は、「粉糖」及び「乳糖」を含有していることから、糖類を含有するものといえる。また、当該「ソフトチョコレートD’」は、「可塑性油脂」に「ショ糖ステアリン酸エステル」を含む「油脂組成物」を含有しており、ショ糖ステアリン酸エステルは乳化作用があるので、「ソフトチョコレートD’」中の油脂の連続相を有するといえる。
そうすると、甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」は、本件発明1の「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」に相当する。
b そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1(甲1発明1):油脂について、本件発明1は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点1-2(甲1発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明1は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲1発明1は、明らかでない点
相違点1-3(甲1発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明1は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲1発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
(イ)判断(新規性)
a 相違点1-1(甲1発明1)について、以下検討する。
(a)甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」中の油脂としては、油脂D96質量部とハイエルシン菜種極度硬化油4質量部とを混合溶解した可塑性油脂が該当する。
この可塑性油脂中の、油脂Dに注目すると、油脂Dは、パームオレイン(ヨウ素価70)であって、その分析値が、トランス酸0.8質量%、Z(Zは炭素数16~24の飽和脂肪酸)33.3質量%、ZZZ(トリ飽和トリグリセリド)0質量%、XXX(トリ不飽和トリグリセリド:Xは炭素数16~24の不飽和脂肪酸)10.2質量%、Z2X(ジ飽和モノ不飽和トリグリセリド)19.4質量%、ZX2(モノ飽和ジ不飽和トリグリセリド)67.3質量%、Z2X/ZX2=0.29 というものである。
甲1発明1の「ZZZ(トリ飽和トリグリセリド)」は、「Z」が3分子結合しているトリグリセリドであって、「Z」は「炭素数16~24の飽和脂肪酸」であり、炭素数が本件発明1の規定と異なり、直鎖かどうかも不明であるから、本件発明1の「L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸」とは異なるものといえる。
そうすると、甲1発明1の油脂Dにおいて、本件発明1の「L3」である、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量は、不明である。
甲1発明1の「XXX(トリ不飽和トリグリセリド・・)」は、「X」が3分子結合しているトリグリセリドであって、「X」は「炭素数16~24の不飽和脂肪酸」であり、炭素数が本件発明1の規定と異なり、直鎖かどうかも不明であるから、本件発明1の「X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸」とは異なるものといえる。
そうすると、甲1発明1の油脂Dにおいて、本件発明1の「X3」である、炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量も、不明である。
このように、甲1発明1の「Z」及び「X」は、本件発明1の「L」及び「X」とは異なるものであるから、甲1発明1の油脂Dにおいて、本件発明1の「L2X」及び「LX2」に該当するものの各含有量は、不明である。
(b)そして、甲1発明1の、油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」が、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものであるといえる、証拠も論理的説明も示されておらず、また、油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」はそのような特徴を有するものであることが技術常識であるとも認められないから、当該条件を満たすとはいえない。
(c)そうすると、甲1発明1の油脂が、本件発明1に特定されている前記「条件(a)から(d)」を満たしているとはいえない。
したがって、相違点1-1(甲1発明1)は、実質的な相違点といえる。
b 申立人の主張について
相違点1-1(甲1発明1)に関し、申立人は、特許異議申立書の20頁1~8行において、甲1では、Zが炭素数16~24の飽和脂肪酸、Xが炭素数16~24の不飽和脂肪酸となっており、本件発明1における、Lが炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、Xが炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸との規定とは若干異なるものであるが、甲1に記載のチョコレート及び本件発明1におけるチョコレート中の油脂の主成分であるパームスーパーオレインは、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸といった炭素数16又は18の油脂が殆どであることから、これらの規定に実質的な相違はない旨、主張している。
しかしながら、相違点1-1(甲1発明1)については、前記aで述べたとおりであるが、仮に、一般に、パームオレインは、パルミチン酸(C16直鎖飽和)、ステアリン酸(C18直鎖飽和)、リノレン酸(C18直鎖不飽和)、オレイン酸(C18直鎖不飽和)といった炭素数16又は18の油脂が殆どであると認められたとしても、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」ものとは、油脂全体における脂肪酸の割合で特定されているものではなく、「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものといった、トリグリセリドに結合している脂肪酸の種類及び数が特定されたものの各含有量が特定されているものである。
甲1発明1の油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」が、本件発明1でこのように特定された油脂を含有するものかどうかについては、何ら証拠も提出されておらず、論理的説明もなされていない。
ましてや、油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」はそのような特徴を有するものであることが技術常識であるとも認められない。
したがって、甲1発明1の、油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」が、本件発明1に特定されている前記「条件(a)から(d)」を満たしているとは認められない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、相違点1-2(甲1発明1)及び相違点1-3(甲1発明1)を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。
エ 本件発明2について
(ア)甲1発明1との対比
a 本件発明2は、本件発明1のソフトチョコレートにおいて、さらに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含むものという、技術的にさらに限定した発明であり、本件発明1と甲1発明1との相違点が、本件発明2と甲1発明1との相違点としても存在する。
b そうすると、本件発明2と甲1発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2-1(甲1発明1):油脂について、本件発明2は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点2-2(甲1発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明2は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲1発明1は、明らかでない点
相違点2-3(甲1発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明2は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲1発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点2-4(甲1発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明2は、さらに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含むのに対し、甲1発明1は、さらに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含むかは明らかでない点
(イ)判断(進歩性)
a 相違点2-1(甲1発明1)について
(a)相違点2-4(甲1発明1)は新たな相違点ではあるものの、相違点2-1(甲1発明1)~相違点2-3(甲1発明1)は、前記ウ(ア)に記載の相違点1-1(甲1発明1)~相違点1-3(甲1発明1)と同じである。
相違点2-1(甲1発明1)は、前記ウ(イ)で述べたように、実質的な相違点といえるので、甲1発明1において、油脂を相違点2-1(甲1発明1)に係る構成とすることの容易想到性について、以下検討する。
(b)前記ウ(イ)で述べたように、甲1の記載を検討しても、甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」中の油脂Dである「パームオレイン(ヨウ素価70)」が、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものであるとはいえない。
本件発明1は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供しようという課題の下、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、甲1発明1は、「ソフトチョコレート用として、昨今の健康意識の高まりに応えるため低トランス酸という条件を満たしながら、カカオ脂肪分が高くてもブルーム・グレイン耐性を有し、良好な風味と口溶けを持った油脂組成物、及び該油脂組成物を使用したチョコレート組成物を提供する」(甲1b)という課題の下、当該課題を解決するために調製された油脂組成物を使用したソフトチョコレートで、本件発明1の課題と異なるものであり、そのような課題を解決するために調製された油脂組成物を使用したソフトチョコレートにおいて、当該油脂組成物の油脂が、本件発明1の前記条件(a)から(d)を満たすようにしようという動機付けがあるとは認められない。
(c)また、甲4には、最も一般的な乳化剤はチョコレートに用いられているレシチンであること、チョコレートにおける粘度パラメータへの大豆レシチン添加の影響、乳化剤として大豆レシチンを添加したチョコレートの流動特性、及び、他の広く用いられている乳化剤はポリグリセリルポリリシノレート(PGPR)であることが記載されているにすぎず、甲1発明1のようなソフトチョコレートにおいて、使用される油脂組成物の油脂が、本件発明1の前記条件(a)から(d)を満たすようにすることを当業者に動機付ける記載や示唆を認めることができない。
(d)そうすると、甲1発明1に、甲4に記載の技術的事項を適用する動機付けはないといえる。
そして、本件発明2は、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3はr、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)とすることにより、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できるという課題を解決したものであり、そのような技術思想は、甲4には記載も示唆もなく、本件優先日当時の技術常識から動機付けられるものでもない。
したがって、甲1発明1において、油脂を本件発明2の相違点2-1(甲1発明1)に係る構成とすることは、当業者といえども、甲1及び甲4の記載から容易に想到し得たとはいえない。
b 本件発明2の効果について
本件発明2の効果は、本件明細書の段落【0009】及び実施例(【0033】~【0041】)の記載より理解されるように、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できることであり、そのような効果は、甲1及び甲4の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
(ウ)小括
したがって、相違点2-2(甲1発明1)~相違点2-4(甲1発明1)を検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
オ 本件発明3、4について(新規性)
本件発明3、4は、本件発明1、2を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明3、4は、甲1に記載された発明であるとはいえないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
カ 本件発明5について
(ア)甲1発明1との対比
a 本件発明5は、本件発明1~4のソフトチョコレートを含む、複合食品であり、本件発明1~4と甲1発明1との相違点が、本件発明5と甲1発明1との相違点としても存在する。
b 本件発明5は、「請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートを含む、複合食品」であり、甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」とは、ソフトチョコレートに関する発明である点で、共通する。
c そうすると、本件発明5と甲1発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関する発明」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点5-1(甲1発明1):油脂について、本件発明5は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点5-2(甲1発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明5は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲1発明1は、明らかでない点
相違点5-3(甲1発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明5は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲1発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点5-4(甲1発明1):ソフトチョコレートに関する発明について、本件発明5は、ソフトチョコレートを含む複合食品であるのに対し、甲1発明1は、ソフトチョコレートである点
(イ)判断(新規性、進歩性)
相違点5-4(甲1発明1)は新たな相違点ではあるものの、相違点5-1(甲1発明1)~相違点5-3(甲1発明1)は、前記ウ(ア)に記載の相違点1-1(甲1発明1)~相違点1-3(甲1発明1)と同じであり、新規性については、前記ウ(イ)で述べたことと同様であり、また、進歩性については、前記エ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、相違点5-4(甲1発明1)を検討するまでもなく、本件発明1、3、4と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2と同様の理由により、本件発明5は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
キ 本件発明6について
(ア)甲1発明1との対比
a 本件発明6は、本件発明1~4のソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であり、本件発明1~4と甲1発明1との相違点が、本件発明6と甲1発明1との相違点としても存在する。
b 本件発明6は、「請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品」であり、甲1発明1の「ソフトチョコレートD’」とは、ソフトチョコレートに関する発明である点で、共通する。
c そうすると、本件発明6と甲1発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関する発明」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点6-1(甲1発明1):油脂について、本件発明6は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点6-2(甲1発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明6は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲1発明1は、明らかでない点
相違点6-3(甲1発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明6は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲1発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点6-4(甲1発明1):ソフトチョコレートに関する発明について、本件発明6は、ソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であるのに対し、甲1発明1は、ソフトチョコレートである点
(イ)判断(新規性、進歩性)
相違点6-4(甲1発明1)は新たな相違点ではあるものの、相違点6-1(甲1発明1)~相違点6-3(甲1発明1)は、前記ウ(ア)に記載の相違点1-1(甲1発明1)~相違点1-3(甲1発明1)と同じであり、新規性については、前記ウ(イ)で述べたことと同様であり、また、進歩性については、前記エ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明6は、相違点6-4(甲1発明1)を検討するまでもなく、本件発明1、3、4と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2と同様の理由により、本件発明6は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
ク 本件発明7について
(ア)甲1発明2との対比
a 甲1発明2の「ソフトチョコレートD’」は、「粉糖」及び「乳糖」を含有していることから、糖類を含有するものといえる。また、当該「ソフトチョコレートD’」は、「可塑性油脂」に「ショ糖ステアリン酸エステル」を含む「油脂組成物」を含有しており、ショ糖ステアリン酸エステルは乳化作用があるので、「ソフトチョコレートD’」中の油脂の連続相を有するといえる。
そうすると、甲1発明2の「ソフトチョコレートD’」は、本件発明7の「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」に相当する。
b 甲1発明2の「ソフトチョコレートD’の製造方法」と、本件発明7の「請求項1~4・・ソフトチョコレートを・・包餡したのち・・焼成複合食品の製造方法」とは、ソフトチョコレートに関連するものの製造方法である点で、共通する。
c そうすると、本件発明7と甲1発明2とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関連するものの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点7-1(甲1発明2):油脂について、本件発明7は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲1発明2は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点7-2(甲1発明2):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明7は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲1発明2は、明らかでない点
相違点7-3(甲1発明2):ソフトチョコレートにおいて、本件発明7は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲1発明2は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点7-4(甲1発明2):ソフトチョコレートに関連するものの製造方法について、本件発明7は、ソフトチョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法であるのに対し、甲1発明2は、ソフトチョコレートの製造方法である点
(イ)判断(新規性、進歩性)
相違点7-4(甲1発明2)は新たな相違点ではあるものの、相違点7-1(甲1発明2)~相違点7-3(甲1発明2)は、前記ウ(ア)に記載の相違点1-1(甲1発明1)~相違点1-3(甲1発明1)と同じであり、新規性については、前記ウ(イ)で述べたことと同様であり、また、進歩性については、前記エ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明7は、相違点7-4(甲1発明2)を検討するまでもなく、本件発明1、3、4と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2と同様の理由により、本件発明7は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
ケ まとめ
以上より、本件発明1、3~7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえず、また、本件発明2、5~7に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
(2)申立理由イ(進歩性)について
ア 甲2に記載された発明
甲2は、「油性食品に含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たす油性食品。
(a)X3含量が5質量%以下
(b)X2U含量が10~50質量%
(c)XU2含量が30~70質量%
(d)U3含量が1~25質量%
(e)XXUとUXUの合計含量が6.5~40質量%
(上記の(a)から(e)の条件において、X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU及びUXUはそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド)」(甲2a 請求項1)に関し記載するものであって、実施例において、油性食品として、比較例4のチョコレートに着目すると、当該チョコレートは、「比較例2の油脂組成物:パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)」(甲2c)を使用し、当該油脂組成物を55質量部、レシチン0.2質量部、砂糖35質量部及びココアパウダー10質量部で製造されたチョコレートであり、当該油脂組成物、レシチン、砂糖及びココアパウダーを含有するチョコレートといえる。ここで、X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU及びUXUは、請求項1(甲2a)に記載されているものを意味し、Pはパルミチン酸、Stはステアリン酸を意味する(甲2b)といえる。
さらに、甲2には、「直径60mm×高さ8mm×厚さ1.5mmのモナカ皮の内側全面に、・・比較例・・4のチョコレートを被覆し、チョコレートが乾いた後に、アイスクリーム35gを充填することで、アイスクリーム充填モナカ皮を得た。同じ大きさのモナカ皮の内面全面に同じチョコレートを被覆することで、チョコレート被覆モナカ皮を得た。アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せることで、・・比較例・・6のアイスクリームモナカを製造した」(甲2c)ことが記載されている。
そうすると、甲2の比較例4には、比較例2の油脂組成物を含有するチョコレートとして、
「油脂組成物:パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)
(上記X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU、UXU、P、Stは、それぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸)、
レシチン、砂糖及びココアパウダーを含有するチョコレート」
の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているといえる。
さらに、甲2には、当該チョコレートを用いたアイスクリームモナカ及びその製造方法として、
「直径60mm×高さ8mm×厚さ1.5mmのモナカ皮の内側全面に、
油脂組成物:パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)
(上記X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU、UXU、P、Stは、それぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸)、
レシチン、砂糖及びココアパウダーを含有するチョコレートを被覆し、チョコレートが乾いた後に、アイスクリームを充填することで、アイスクリーム充填モナカ皮を得、同じ大きさのモナカ皮の内面全面に同じチョコレートを被覆することで、チョコレート被覆モナカ皮を得、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せて製造したアイスクリームモナカ」の発明(以下、「甲2発明2」という。)、及び、
「直径60mm×高さ8mm×厚さ1.5mmのモナカ皮の内側全面に、
油脂組成物:パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)
(上記X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU、UXU、P、Stは、それぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸)、
レシチン、砂糖及びココアパウダーを含有するチョコレートを被覆し、チョコレートが乾いた後に、アイスクリームを充填することで、アイスクリーム充填モナカ皮を得、同じ大きさのモナカ皮の内面全面に同じチョコレートを被覆することで、チョコレート被覆モナカ皮を得、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せることによる、アイスクリームモナカの製造方法」の発明(以下、「甲2発明3」という。)
が記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)甲2発明1との対比
a 甲2発明1の「チョコレート」は、「砂糖」を含有していることから、糖類を含有するものといえる。また、当該「チョコレート」は、油脂組成物と「レシチン」を含有しており、レシチンは乳化作用があるので、「チョコレート」中の油脂の連続相を有するといえる。
そうすると、甲2発明1の「チョコレート」と、本件発明1の「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」とは、油脂の連続相を有し、糖質を含有する、チョコレートである点で、共通する。
b そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、チョコレート」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1(甲2発明1):油脂について、本件発明1は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲2発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点1-2(甲2発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明1は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲2発明1は、明らかでない点
相違点1-3(甲2発明1):チョコレートにおいて、本件発明1は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲2発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点1-4(甲2発明1):チョコレートが、本件発明1では、ソフトチョコレートであるのに対し、甲2発明1では、ソフトチョコレートか明らかでない点
(イ)判断
a 相違点1-1(甲2発明1)について、以下検討する。
(a)甲2発明1の「チョコレート」中の油脂組成物は、「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製、X3含量:0質量%、X2U含量:23.5質量%、XU2含量:63.0質量%、U3含量:9.1質量%、XXU+UXU含量:3.9質量%、XXU含量:2.3質量%、St2U/XU2質量比:0.100、St/P質量比:0.109、トランス脂肪酸含量:0.9質量%、C16~24の脂肪酸含量:98.6質量%、C16~24の飽和脂肪酸含量:35.5質量%、C16~24の不飽和脂肪酸含量:63.0質量%)
(上記X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU、UXU、P、Stは、それぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~20の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸)」というものである。
甲2発明1の「X3」は、「Xが3分子結合しているトリグリセリド」であって、「X」は「炭素数16~20の飽和脂肪酸」であり、炭素数が本件発明1の規定と異なり、直鎖かどうかも不明であるから、本件発明1の「L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸」とは異なるものといえる。
そうすると、甲2発明1の油脂組成物ある「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」において、本件発明1の「L3」である、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量は、不明である。
甲2発明1の「U3」は、「Uが3分子結合しているトリグリセリド」であって、「U」は「炭素数18の不飽和脂肪酸」であり、直鎖かどうか不明であるから、本件発明1の「X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸」とは異なるものといえる。
そうすると、甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」において、本件発明1の「X3」である、炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量も、不明である。
このように、甲2発明1の「X」及び「U」は、本件発明1の「L」及び「X」とは異なるものであるから、甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」において、本件発明1の「L2X」及び「LX2」に該当するものの各含有量は、不明である。
(b)そして、甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」が、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものであるといえる証拠も論理的説明も示されておらず、また、「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」はそのような特徴を有するものであることが技術常識であるとも認められないから、当該条件を満たすとはいえない。
(c)そうすると、甲1発明1の油脂が、本件発明1に特定されている前記「条件(a)から(d)」を満たしているとはいえない。
したがって、相違点1-1(甲1発明1)は、実質的な相違点といえる。
(d)本件発明1は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供しようという課題の下、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、甲2発明1は、「高水分食品と低水分食品を組み合わせた複合食品において、低水分食品の吸湿を抑制することのできる油性食品を提供する」(甲2b)という課題の下、当該課題を解決するための油脂組成物の比較例として調製された油脂組成物を使用したチョコレートで、本件発明1の課題と異なるものであり、そのような比較例として調製された油脂組成物を使用したチョコレートにおいて、当該油脂組成物が、本件発明1の前記条件(a)から(d)を満たすようにしようという動機付けがあるとは認められない。
(e)また、甲4には、最も一般的な乳化剤はチョコレートに用いられているレシチンであること、チョコレートにおける粘度パラメータへの大豆レシチン添加の影響、乳化剤として大豆レシチンを添加したチョコレートの流動特性、及び、他の広く用いられている乳化剤はポリグリセリルポリリシノレート(PGPR)であることが記載されているにすぎず、甲5には、焼成油性菓子(チョコレート等)は、大豆レシチンを焼成用油性菓子生地中0.9質量%以上含有することにより、得られる焼成油性菓子の表面が硬く耐熱性を有しつつ、内部が固くならず口溶けの良い状態を保つことができることが記載されているにすぎない。
それ故、甲2発明1のようなチョコレートにおいて、油脂が、相違点1-1(甲2発明1)における本件発明1の構成をとるようにすることを当業者に動機付ける記載や示唆を認めることができない。
(f)そうすると、甲2発明1に、甲4及び甲5に記載の技術的事項を適用する動機付けはないといえる。
そして、本件発明1は、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)とすることにより、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できるという課題を解決したものであり、そのような技術思想は、甲4及び甲5には記載も示唆もなく、本件優先日当時の技術常識から動機付けられるものでもない。
したがって、甲2発明1において、油脂を本件発明1の相違点1-1(甲2発明1)に係る構成とすることは、当業者といえども、甲2、甲4及び甲5の記載から容易に想到し得たとはいえない。
b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0009】及び実施例(【0033】~【0041】)の記載より理解されるように、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できることであり、そのような効果は、甲2、甲4及び甲5の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
c 申立人の主張について
相違点1-1(甲2発明1)に関し、申立人は、特許異議申立書の30頁1~8行において、甲2では、Xが炭素数16~20の飽和脂肪酸、Uが炭素数18の不飽和脂肪酸となっており、本件発明1における、Lが炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、Xが炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸との規定とは若干異なるものであるが、甲2に記載のチョコレート及び本件発明1におけるチョコレート中の油脂の主成分であるパームスーパーオレインは、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸といった炭素数16又は18の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸が殆どであることから、これらの規定に実質的な相違はない旨、主張している。
しかしながら、相違点1-1(甲2発明1)については、前記aで述べたとおりであるが、仮に、一般に、パームオレインは、パルミチン酸(C16直鎖飽和)、ステアリン酸(C18直鎖飽和)、リノレン酸(C18直鎖不飽和)、オレイン酸(C18直鎖不飽和)といった炭素数16又は18の油脂が殆どであると認められたとしても、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」ものとは、油脂全体における脂肪酸の割合で特定されているものではなく、「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものといった、トリグリセリドに結合している脂肪酸の種類及び数が特定されたものの各含有量が特定されているものである。
甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」が、本件発明1でこのように特定された油脂であるかどうかについては、何ら証拠も提出されておらず、論理的説明もなされていない。
ましてや、甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」はそのような特徴を有するものであることが技術常識であるとも認められない。
したがって、甲2発明1の油脂組成物である「パームスーパーオレイン(ヨウ素価:67、日清オイリオグループ(株)製」が、本件発明1に特定されている前記「条件(a)から(d)」を満たしている蓋然性が高いとは認められない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、相違点1-2(甲2発明1)~相違点1-4(甲2発明1)を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲2、甲4及び甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
ウ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲2に記載された発明並びに甲2、甲4及び甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
エ 本件発明5について
(ア)甲2発明2との対比
a 本件発明5は、本件発明1~4のチョコレートを含む、複合食品であり、本件発明1~4と甲2発明1との相違点が、本件発明5と甲2発明2との相違点としても存在する。
b 甲2発明2の「アイスクリームモナカ」は、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せたものであり、チョコレートを含む複合食品といえるから、本件発明5の「複合食品」とは、チョコレートを含む、複合食品である点で、共通する。
c そうすると、本件発明5と甲2発明2とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、チョコレートを含む、複合食品」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点5-1(甲2発明2):油脂について、本件発明5は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、
甲2発明2は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点5-2(甲2発明2):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明5は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲2発明2は、明らかでない点
相違点5-3(甲2発明2):ソフトチョコレートにおいて、本件発明5は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲2発明2は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点5-4(甲2発明2):チョコレートが、本件発明5では、ソフトチョコレートであるのに対し、甲2発明2では、ソフトチョコレートか明らかでない点
(イ)判断
相違点5-1(甲2発明2)~相違点5-4(甲2発明2)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲2発明1)~相違点1-4(甲2発明1)と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、本件発明1~4と同様の理由により、本件発明5は、甲2に記載された発明並びに甲2、甲4及び甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
オ 本件発明6について
(ア)甲2発明2との対比
a 本件発明6は、本件発明1~4のチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であり、本件発明1~4の何れかに記載のチョコレートに関しては、本件発明1~4と甲2発明1との相違点が、本件発明6と甲2発明2との相違点としても存在する。
b 甲2発明2の「アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せて製造したアイスクリームモナカ」は、チョコレートが食品に包餡された状態にある複合食品といえるから、本件発明6の「チョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品」とは、チョコレートが食品に包餡された状態にある、複合食品である点で、共通する。
c そうすると、本件発明6と甲2発明2とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、チョコレートが、食品に包餡された状態にある、複合食品」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点6-1(甲2発明2):油脂について、本件発明6は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、
甲2発明2は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点6-2(甲2発明2):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明6は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲2発明2は、明らかでない点
相違点6-3(甲2発明2):チョコレートにおいて、本件発明6は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲2発明2は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点6-4(甲2発明2):チョコレートが、本件発明6では、ソフトチョコレートであるのに対し、甲2発明2では、ソフトチョコレートか明らかでない点
相違点6-5(甲2発明2):複合食品が、本件発明6では、チョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であるのに対し、甲2発明2では、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せて製造したアイスクリームモナカである点
(イ)判断
相違点6-5(甲2発明2)は新たな相違点ではあるものの、相違点6-1(甲2発明2)~相違点6-4(甲2発明2)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲2発明1)~相違点1-4(甲2発明1)と同じであり、また、甲6は、高水分食品から低水分食品への水分の移行を防ぐことは焼成複合食品においても公知の課題であることが記載されており、相違点6-5(甲2発明2)の検討の際に関連する事項にすぎないから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明6は、相違点6-5(甲2発明2)を検討するまでもなく、本件発明1~5と同様の理由により、甲2に記載された発明並びに甲2及び甲4~甲6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
カ 本件発明7について
(ア)甲2発明3との対比
a 本件発明7は、本件発明1~4の何れかに記載のチョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法であり、本件発明1~4の何れかに記載のチョコレートに関しては、本件発明1~4と甲2発明1との相違点が、本件発明7と甲2発明3との相違点としても存在する。
b 甲2発明3の「アイスクリーム充填モナカ皮を得、・・チョコレート被覆モナカ皮を得、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せることによる、アイスクリームモナカの製造方法」は、チョコレートを食品に包餡する、複合食品の製造方法といえるから、本件発明7の「ソフトチョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法」とは、チョコレートを食品に包餡する、複合食品の製造方法である点で、共通する。
c そうすると、本件発明7と甲2発明3とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、チョコレートを食品に包餡する、複合食品の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点7-1(甲2発明3):油脂について、本件発明1は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲2発明3は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点7-2(甲2発明3):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明7は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲2発明3は、明らかでない点
相違点7-3(甲2発明3):チョコレートにおいて、本件発明7は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲2発明3は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点7-4(甲2発明3):チョコレートが、本件発明7では、ソフトチョコレートであるのに対し、甲2発明3では、ソフトチョコレートか明らかでない点
相違点7-5(甲2発明3):複合食品が、本件発明7では、チョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であるのに対し、甲2発明3では、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せたアイスクリームモナカである点
相違点7-6(甲2発明3):チョコレートを食品に包餡する、複合食品の製造方法が、本件発明7では、チョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法であるのに対し、甲2発明3では、チョコレートを被覆し、チョコレートが乾いた後に、アイスクリームを充填することで、アイスクリーム充填モナカ皮を得、同じ大きさのモナカ皮の内面全面に同じチョコレートを被覆することで、チョコレート被覆モナカ皮を得、アイスクリーム充填モナカ皮に、チョコレート被覆モナカ皮を被せることによる、アイスクリームモナカの製造方法である点
(イ)判断
相違点7-6(甲2発明3)は新たな相違点ではあるものの、相違点7-1(甲2発明3)~相違点7-4(甲2発明3)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲2発明1)~相違点1-4(甲2発明1)と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明7は、相違点7-6(甲2発明3)を検討するまでもなく、本件発明1~6と同様の理由により、本件発明7は、甲2に記載された発明並びに甲2及び甲4~甲6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
キ まとめ
以上より、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
(3)申立理由ウ(進歩性)について
ア 甲3に記載された発明
甲3は、「チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレート。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20~39質量%
(c)P2U含量が5~25質量%
(d)XU2+U3含量が58~75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8~3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド」(甲3a 請求項1)に関し記載するものであって、その具体例として、実施例1~5に記載の含気泡チョコレートに着目すると、
カカオマス16質量部、ココアパウダー16質量部、砂糖25質量部、ココアバター0又は8質量部、パームオレイン0~16質量部、パーム中融点部0又は14質量部、大豆油27~35質量部、レシチン0.4質量部、香料0.03質量部の配合で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造し、
当該チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下であり、
当該チョコレート中の油脂のSFCが、10℃で20.7~30.5%、15℃で17.3~27.8%、20℃で11.1~21.1%及び25℃で0~7.0%であり、
当該チョコレートの油脂中のトリグリセリド組成は、X3含量が0.6~1.0質量%、X2U含量が27.2~37質量%、XU2含量が26.3~32.1質量%、U3含量が31.4~39.4質量%、P2U含量が9.2~19.3質量%、XU2+U3含量が60.2~70.8質量%であり、
得られたチョコレートを融解させることなく、常圧、チョコレートの温度(品温)が17.5℃又は20℃の条件下で、縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N-50)を用いて低速(139rpm)で30秒間攪拌した後、高速(591rpm)で2分30秒間攪拌することで含気泡チョコレートを製造した(3c)ことが記載されている。
ここで、X、U、P、X3、X2U、P2U、XU2、U3は、請求項1(甲3a)に記載されているものを意味するといえる。
そうすると、甲3の実施例1~5には、
「カカオマス16質量部、ココアパウダー16質量部、砂糖25質量部、ココアバター0又は8質量部、パームオレイン0~16質量部、パーム中融点部0又は14質量部、大豆油27~35質量部、レシチン0.4質量部、香料0.03質量部の配合で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造し、
当該チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下であり、
当該チョコレート中の油脂のSFCが、10℃で20.7~30.5%、15℃で17.3~27.8%、20℃で11.1~21.1%及び25℃で0~7.0%であり、
当該チョコレートの油脂中のトリグリセリド組成は、X3含量が0.6~1.0質量%、X2U含量が27.2~37質量%、XU2含量が26.3~32.1質量%、U3含量が31.4~39.4質量%、P2U含量が9.2~19.3質量%、XU2+U3含量が60.2~70.8質量%であり、
X、U、P、X3、X2U、P2U、XU2、U3は、それぞれ以下のものを示し、
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド、
得られたチョコレートを融解させることなく、常圧、チョコレートの温度(品温)が17.5℃又は20℃の条件下で、縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N-50)を用いて低速(139rpm)で30秒間攪拌した後、高速(591rpm)で2分30秒間攪拌して製造された、含気泡チョコレート」
の発明(以下、「甲3発明1」という。)、及び、
「カカオマス16質量部、ココアパウダー16質量部、砂糖25質量部、ココアバター0又は8質量部、パームオレイン0~16質量部、パーム中融点部0又は14質量部、大豆油27~35質量部、レシチン0.4質量部、香料0.03質量部の配合で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造し、
当該チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下であり、
当該チョコレート中の油脂のSFCが、10℃で20.7~30.5%、15℃で17.3~27.8%、20℃で11.1~21.1%及び25℃で0~7.0%であり、
当該チョコレートの油脂中のトリグリセリド組成は、X3含量が0.6~1.0質量%、X2U含量が27.2~37質量%、XU2含量が26.3~32.1質量%、U3含量が31.4~39.4質量%、P2U含量が9.2~19.3質量%、XU2+U3含量が60.2~70.8質量%であり、
X、U、P、X3、X2U、P2U、XU2、U3は、それぞれ以下のものを示し、
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド、
得られたチョコレートを融解させることなく、常圧、チョコレートの温度(品温)が17.5℃又は20℃の条件下で、縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N-50)を用いて低速(139rpm)で30秒間攪拌した後、高速(591rpm)で2分30秒間攪拌する、含気泡チョコレートの製造方法」
の発明(以下、「甲3発明2」という。)が記載されているといえる。
イ 本件発明1について
(ア)甲3発明1との対比
a 甲3発明1の「含気泡チョコレート」は、「実施例のチョコレートは、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのできるものであった。また、実施例の含気泡チョコレートは、保形性及び口溶けが良いものであった」(甲3c)との記載より、ソフトチョコレートといえるから、本件発明1の「ソフトチョコレート」に相当する。
b 甲3発明1の「含気泡チョコレート」は、「砂糖」を含有していることから、糖類を含有するものといえる。また、当該「含気泡チョコレート」は、「パームオレイン」や「大豆油」等の油脂と「レシチン」を含有しており、レシチンは乳化作用があるので、「含気泡チョコレート」中の油脂の連続相を有するといえる。
そうすると、甲3発明1の「含気泡チョコレート」と、本件発明1の「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」とは、前記aを踏まえると、油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートである点で、共通する。
c そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1(甲3発明1):油脂について、本件発明1は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲3発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点1-2(甲3発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明1は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲3発明1は、10℃で20.7~30.5%、15℃で17.3~27.8%、20℃で11.1~21.1%及び25℃で0~7.0%である点
相違点1-3(甲3発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明1は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲3発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
(イ)判断
a 相違点1-1(甲3発明1)について、以下検討する。
(a)甲3発明1の「含気泡チョコレート」の油脂中のトリグリセリド組成は、X3含量が0.6~1.0質量%、X2U含量が27.2~37質量%、XU2含量が26.3~32.1質量%、U3含量が31.4~39.4質量%、P2U含量が9.2~19.3質量%、XU2+U3含量が60.2~70.8質量%であり、
X、U、P、X3、X2U、P2U、XU2、U3は、それぞれ以下のものを示し、
X:炭素数16~18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド」というものである。
甲3発明1の「X3」は、「Xが3分子結合しているトリグリセリド」であって、「X」は「炭素数16~18の飽和脂肪酸」であり、直鎖かどうか不明であるから、本件発明1の「L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸」と同じものとはいえない。
そうすると、甲3発明1の油脂組成物において、本件発明1の「L3」である、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量は、不明である。
甲3発明1の「U3」は、「Uが3分子結合しているトリグリセリド」であって、「U」は「炭素数18の不飽和脂肪酸」であり、直鎖かどうか不明であるから、本件発明1の「X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸」と異なるものといえる。
そうすると、甲3発明1の油脂組成物において、本件発明1の「X3」である、炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸が3分子結合しているトリグリセリドの含有量も、不明である。
このように、甲3発明1の「X」及び「U」は、本件発明1の「L」及び「X」とは異なるものであるから、甲3発明1の油脂において、本件発明1の「L2X」及び「LX2」に該当するものの各含有量は、不明である。
(b)そして、甲3発明1の「油脂」が、本件発明1で特定される、「条件(a)から(d)を満たす」「(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)」ものであるといえる証拠も論理的説明示されておらず、また、甲3発明1の「油脂」はそのような特徴を有するものであることが技術常識であるとも認められないから、当該条件を満たすとはいえない。
(c)そうすると、甲3発明1の油脂は、本件発明1に特定されている前記「条件(a)から(d)」を満たしているものとはいえない。
したがって、甲3発明1の油脂のヨウ素価や含有量を検討するまでもなく、相違点1-1(甲1発明1)は、実質的な相違点といえる。
(d)本件発明1は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供しようという課題の下、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)という、所定の範囲内とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、甲3発明1は、「チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートを提供する」(甲3b)という課題の下、当該課題を解決するための油脂を使用したチョコレートで、本件発明1の課題と異なるものであり、そのような油脂を使用したチョコレートにおいて、当該油脂が、本件発明1の前記条件(a)から(d)を満たすようにしようという動機付けがあるとは認められない。
(e)また、甲4には、最も一般的な乳化剤はチョコレートに用いられているレシチンであること、チョコレートにおける粘度パラメータへの大豆レシチン添加の影響、乳化剤として大豆レシチンを添加したチョコレートの流動特性、及び、他の広く用いられている乳化剤はポリグリセリルポリリシノレート(PGPR)であることが記載されているにすぎず、甲5には、焼成油性菓子(チョコレート等)は、大豆レシチンを焼成用油性菓子生地中0.9質量%以上含有することにより、得られる焼成油性菓子の表面が硬く耐熱性を有しつつ、内部が固くならず口溶けの良い状態を保つことができることが記載されているにすぎない。
それ故、甲3発明1のようなチョコレートにおいて、使用される油脂が、本件発明1の前記条件(a)から(d)を満たすようにすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。
(f)そうすると、甲3発明1に、甲4及び甲5に記載の技術的事項を適用する動機付けはないといえる。
そして、本件発明1は、油脂の連続相を有し、糖類を含有する、ソフトチョコレートであって、前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、10℃で4~34%、20℃で2~24%、および30℃で0~4%であり、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むものにおいて、前記油脂が、条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量含有する(ただし、条件(a)から(d)は、(a)L3含有量が5質量%未満、(b)L2X含有量が10~40質量%、(c)LX2含有量が45~75質量%、(d)X3含有量が2~22質量%、であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する)という、所定の範囲内とすることにより、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できるという課題を解決したものであり、そのような技術思想は、甲4及び甲5には記載も示唆もなく、本件優先日当時の技術常識から動機付けられるものでもない。
したがって、甲3発明1において、油脂を本件発明1の相違点1-1(甲3発明1)に係る構成とすることは、当業者といえども、甲3~甲5の記載から容易に想到し得たとはいえない。
b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0009】及び実施例(【0033】~【0041】)の記載より理解されるように、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できることであり、そのような効果は、甲3~甲5の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
c 申立人の主張について
相違点1-1(甲3発明1)に関し、申立人は、特許異議申立書の53頁20~24行において、本件明細書にヨウ素価65.7のパームオレインからなる油脂A-1が、本件発明1の「条件(a)から(d)」を満たすことが示されており、甲3に開示されるヨウ素価が53~67のパームスーパーオレインは、当該「条件(a)から(d)」を満たすものを当然に含むといえるため、当該「条件(a)から(d)」は実質的な相違点ではない旨、主張している。
しかしながら、相違点1-1(甲3発明1)については、前記aで述べたとおりであるが、本件明細書に、ヨウ素価65.7のパームオレインからなる油脂A-1が、本件発明1の「条件(a)から(d)」を満たすことが示されていると、甲3に開示されるヨウ素価が53~67のパームスーパーオレインが当該「条件(a)から(d)」を満たすものを当然に含むといえる論理的説明はなされておらず、そのようにいえる技術常識があるとも認められない。
それ故、相違点1-1(甲3発明1)は実質的な相違点と認められる。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、相違点1-2(甲3発明1)~相違点1-4(甲3発明1)を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
ウ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲3に記載された発明及び甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
エ 本件発明5について
(ア)甲3発明1との対比
a 本件発明5は、本件発明1~4のチョコレートを含む、複合食品であり、本件発明1~4と甲3発明1との相違点が、本件発明5と甲3発明1との相違点としても存在する。
b 本件発明5は、「請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートを含む、複合食品」であり、甲3発明1の「含気泡ソフトチョコレート」とは、ソフトチョコレートに関する発明である点で、共通する。
c そうすると、本件発明5と甲3発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関する発明」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点5-1(甲3発明1):油脂について、本件発明5は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲3発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点5-2(甲3発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明5は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲3発明1は、明らかでない点
相違点5-3(甲3発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明5は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲3発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点5-4(甲3発明1):ソフトチョコレートに関する発明について、本件発明5は、ソフトチョコレートを含む複合食品であるのに対し、甲3発明1は、ソフトチョコレートである点
(イ)判断
相違点5-4(甲3発明1)は新たな相違点ではあるものの、相違点5-1(甲3発明1)~相違点5-3(甲3発明1)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲3発明1)~相違点1-3(甲3発明1)と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、相違点5-4(甲3発明1)を検討するまでもなく、本件発明1~4と同様の理由により、本件発明5は、甲3に記載された発明及び甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
オ 本件発明6について
(ア)甲3発明1との対比
a 本件発明6は、本件発明1~4のソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であり、本件発明1~4と甲3発明1との相違点が、本件発明6と甲3発明1との相違点としても存在する。
b 本件発明6は、「請求項1~4の何れか1項に記載のソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品」であり、甲3発明1の「含気泡チョコレート」とは、ソフトチョコレートに関する発明である点で、共通する。
c そうすると、本件発明6と甲3発明1とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関する発明」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点6-1(甲3発明1):油脂について、本件発明6は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲3発明1は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点6-2(甲3発明1):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明6は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲3発明1は、明らかでない点
相違点6-3(甲3発明1):ソフトチョコレートにおいて、本件発明6は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲3発明1は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点6-4(甲3発明1):ソフトチョコレートに関する発明について、本件発明6は、ソフトチョコレートが、ベーカリー食品生地に包餡されて焼成された状態にある、焼成複合食品であるのに対し、甲3発明1は、ソフトチョコレートである点
(イ)判断
相違点6-4(甲3発明1)は新たな相違点ではあるものの、相違点6-1(甲3発明1)~相違点6-3(甲3発明1)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲3発明1)~相違点1-3(甲3発明1)と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明6は、相違点6-4(甲3発明1)を検討するまでもなく、本件発明1~4と同様の理由により、本件発明6は、甲3に記載された発明及び甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
カ 本件発明7について
(ア)甲3発明2との対比
a 甲3発明2の「含気泡チョコレート」は、本件発明7の「ソフトチョコレート」に相当する。
b 甲3発明2の「含気泡チョコレート」は、「砂糖」を含有していることから、糖類を含有するものといえる。また、当該「含気泡チョコレート」は、「パームオレイン」や「大豆油」等の油脂と「レシチン」を含有しており、レシチンは乳化作用があるので、「含気泡チョコレート」中の油脂の連続相を有するといえる。
そうすると、甲3発明2の「含気泡チョコレート」と、本件発明7の「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレート」とは、前記aを踏まえると、油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートである点で、共通する。
c 甲3発明2の「含気泡チョコレートの製造方法」と、本件発明7の「請求項1~4・・ソフトチョコレートを・・包餡したのち・・焼成複合食品の製造方法」とは、ソフトチョコレートに関連するものの製造方法である点で、共通する。
d そうすると、本件発明7と甲3発明2とは、
「油脂の連続相を有し、糖質を含有する、ソフトチョコレートに関連するものの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点7-1(甲3発明2):油脂について、本件発明7は、以下の条件(a)から(d)を満たすヨウ素価が62以上の油脂Aを60~99質量%含有するものであり、該条件(a)から(d)は、
(a)L3含有量が5質量%未満、
(b)L2X含有量が10~40質量%、
(c)LX2含有量が45~75質量%、
(d)X3含有量が2~22質量%、
であり、L、X、L3、L2X、LX2およびX3は、
L:炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸、
X:炭素数16~18の直鎖不飽和脂肪酸、
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド、
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド、
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド、
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド、を意味する、ものであるのに対し、甲3発明2は、そのような油脂Aを60~99質量%含有するものか明らかでない点
相違点7-2(甲3発明2):油脂の固体脂含有量(SFC)について、本件発明7は、10℃で4~34%、20℃で2~24%及び30℃で0~4%であるのに対し、甲3発明2は、明らかでない点
相違点7-3(甲3発明2):ソフトチョコレートにおいて、本件発明7は、0.32~0.84質量%のリン脂質を含むのに対し、甲3発明2は、リン脂質の含有量は明らかでない点
相違点7-4(甲3発明2):ソフトチョコレートに関連するものの製造方法について、本件発明7は、ソフトチョコレートを、ベーカリー食品生地に包餡したのち、焼成する、焼成複合食品の製造方法であるのに対し、甲3発明2は、ソフトチョコレートの製造方法である点
(イ)判断
相違点7-4(甲3発明2)は新たな相違点ではあるものの、相違点7-1(甲3発明2)~相違点7-3(甲3発明2)は、前記イ(ア)に記載の相違点1-1(甲3発明1)~相違点1-3(甲3発明1)と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明7は、相違点7-4(甲3発明2)を検討するまでもなく、本件発明1と同様の理由により、本件発明7は、甲3に記載された発明及び甲3~甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
キ まとめ
以上より、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
(4)申立理由エ(サポート要件)について
前記第4 1 申立理由エ(サポート要件)の(ア)及び(ウ)についても申し立てているので、以下(ア)及び(ウ)を検討する。
ア 申立理由エ(サポート要件)の(ア)について
(ア)本件発明1~7の「ソフトチョコレート」の用途について、発明の詳細な説明には、本件発明の課題の記載として、「【0006】・・焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供すること」と記載されていると共に、一般的な態様の記載として、「【0031】 本開示のソフトチョコレートは、そのまま喫食されてもよい。しかし、本開示のソフトチョコレートは、その他の食品にトッピング、コーティング、あるいは包餡されてもよい。このようにして、本開示のソフトチョコレートを、複合食品の製造に適用することができる。本開示のソフトチョコレートと組み合わされる食品は、特に限定されない。」と記載されている。
本件発明の課題としては、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供することであるが、一般的な態様として、そのまま喫食されても、他の食品にトッピング、コーティング、あるいは包餡されてもよいものであるから、本件発明1~7の「ソフトチョコレート」の用途は、焼成の用途に限らず、それ以外の用途にも用いられるものであり、特に限定されるものではないといえる。
(イ)そして、前記1で述べたように、発明の詳細な説明の実施例(【0033】~【0041】)には、本件発明の具体例として、例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15のソフトチョコレートが、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温で流動性があることを客観的に確認しているし、一般的な実施の態様の記載も踏まえると、本件発明1~7の「ソフトチョコレート」は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性は維持されたままのソフトチョコレートを提供できると当業者は理解でき、本件発明1~7の課題を解決し得ると認識できるといえる。
また、本件発明1~7の常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートであるから、そのまま喫食されても、他の食品にトッピング、コーティング、あるいは包餡されても、常温での可塑性または流動性を有することには変わりないものと理解される。
(ウ)そうすると、本件発明は、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性を有するソフトチョコレートを提供できており、本件発明1~7の課題を解決し得ると認識できるものであり、焼成以外の用途にも用いられることが理解されるものであるから、本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
イ 申立理由エ(サポート要件)の(ウ)について
(ア)本件発明1~7の「油脂」について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0014】 本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、上記SFCを満たす限り、特に限定されない。本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、通常の食用油脂を使用できる。・・【0015】 本開示のソフトチョコレートに含まれる油脂は、好ましくは、非ラウリン系油脂を分別処理した低融点部としての、油脂Aを含有する。ここで、非ラウリン系油脂とは、その油脂の構成脂肪酸の全量に占める炭素数16以上の脂肪酸の含有量が90質量%以上である油脂を意味する。・・」と記載されており、本件発明1~7における、「ソフトチョコレート」に含まれる「油脂」の特定より、当該「油脂」は、本件発明1~7の「SFC」の規定を満たし、本件発明1~7で特定される「油脂A」を含有する限り、特に限定されないものであり、非ラウリン系油脂を分別処理した低融点部の油脂は、好ましい態様であると理解される。
(イ)発明の詳細な説明の実施例(【0033】~【0041】)には、本件発明の具体例である例1~例3、例5~例6、例8~例9及び例14~例15のソフトチョコレートの油脂として、非ラウリン系油脂を分別処理した低融点部の油脂(油脂A-1、油脂A-2、油脂A-3)が用いられ、当該油脂は、本件発明1~7の「SFC」の規定を満たし、本件発明1~7で特定される「油脂A」を含有するものであることが示され、当該油脂を含有するソフトチョコレートは、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温で流動性があることが客観的に確認されているが、前記一般的な実施の態様の記載を踏まえると、これは好ましい態様を実施例で実施したものと理解される。
(ウ)そうすると、本件発明1~7の「油脂」については、本件発明1~7の「SFC」の規定を満たし、本件発明1~7で特定される「油脂A」を含有するものであれば、焼成複合食品生地に含まれて焼成されても、常温での可塑性または流動性は維持されたままのソフトチョコレートを提供できると当業者は理解でき、本件発明1~7の課題を解決し得ると認識できるといえ、本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
ウ まとめ
したがって、本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700064