特許異議申立
2024-700507
中華風味油の製造方法
- 審判番号
- 2024-700507
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-229040
- 登録番号
- 7389638
- 請求日
- 2024年05月30日
- 審決日
- 2024年09月13日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日清オイリオグループ株式会社
- 【権利者】和弘食品株式会社
- 【異議申立人】奥村 一正
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1651.113-Y (A23D) / P1651.121-Y (A23D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7389638号発明「中華風味油の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7389638号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7389638号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、
令和 1年12月19日の出願であって、
令和 5年11月21日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、
令和 5年11月30日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和 6年 5月30日に特許異議申立人 奥村 一正(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程と、前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程と、前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程とを含む、中華醤の風味が付与された中華風味油の製造方法。
【請求項2】
前記一次加熱する工程において、加熱温度が100~120℃であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱温度が130~150℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一次加熱する工程において、加熱時間が30~180分であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱時間が1~60分である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記中華醤として、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤、辣醤、麻辣醤、コチュジャン、牡蠣油からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記食用油脂として、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、エゴマ油、パーム油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、米油、落花生油、オリーブ油、鶏油、アーモンド油、ココナッツ油からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記中華醤に加えて、花椒、山椒、八角、桂皮、丁香、陳皮、朝天辣椒、五香粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華香辛料が用いられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記中華醤に加えて、胡椒、唐辛子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、クローブ、クレソン、コリアンダー、セージ、タイム、ローレル、パセリ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、レモングラス、ガーリック、ショウガ、ネギ、オニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上を原料とする香辛料が用いられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
中華風味油100重量部に対して、食用油脂を45質量部以上85質量部以下、中華醤を10重量部以上50重量部以下の割合で混合した混合物を一次加熱する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合物が、中華風味油100重量部に対して、さらに中華香辛料を1重量部以上12重量部以下及び/又は香辛料を0.1重量部以上5重量部以下含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、中華風味油。
【請求項11】
請求項10に記載の中華風味油を含む、食品。
【請求項12】
前記食品が、炒め物、焼き物、煮物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることを特徴とする、請求項11に記載の食品。」
第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和 6年 5月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許発明1~3、10~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、10~12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
・甲第1号証:ヤマダイ株式会社/おいしい話/香味油の話、Wayback machineにおける2016年11月5日の記録情報、<https://web.archive.org/web/20161105175058/https://www.newtouch.co.jp/recipe/category/6/>
・甲第2号証:そばもんニッポン蕎麦行脚(18)(ビッグコミックス)コミックのAmazonにおけるサイト、検索日2024年5月27日、<https://www.amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%81%B0%E3%82%82%E3%82%93-%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%B3%E8%95%8E%E9%BA%A6%E8%Al%8C%E8%84%9A-18-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E3%81%8A%E3%81%95%E3%82%80/dp/4091871534>
・甲第3号証:特公昭59-4972号公報
・甲第4号証:特開昭61-124343号公報
・甲第5号証:特許第2834340号公報
・甲第6号証:どんな種類があるの?中華料理の調味料と香辛料一覧、Wayback machineにおける2019年11月18日の記録情報、<https://web.archive.org/web/20191118033536/https://cookway.net/spice/4195>
・甲第7号証:特開2017-6116号公報
・甲第8号証:特開2009-72163号公報
・甲第9号証:小山内耕也 中村秀行 永岡孝和、「ハーブ中華・発酵中華・スパイス中華」、初版(2019年3月1日発行)、第24ページ、株式会社柴田書店
なお、証拠の表記は、証拠説明書及び特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
当審は以下に述べるように、申立理由1(甲1に基づく新規性)または申立理由2(甲1に基づく進歩性)によっては、本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 主な証拠に記載された事項
(1)甲1に記載された事項
甲1には、香味油の製造方法に関し、おおむね次の事項が記載されている。
「
[図:0001415330000001.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載より、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「香りをつけたい材料(ねぎ、玉ねぎ、にんにく、生姜、魚介類(海老の頭、煮干)など)を用意し、材料を細かくみじん切り、もしくはぶつ切りにして、サラダ油を鍋に入れ、そこに刻んだ材料を入れ、軽くまぜて、火にかけ、水分を飛ばすようにし微沸騰状態で30分ほどかき混ぜた後、水分の蒸発がふつふつと落ち着いてきたら火を止め、粗熱を取り、布もしくは目の細かいザルなどで濾して、濾した油を鍋に戻し、100度以上で10分程加熱し、油の中の水分を飛ばして作る香味油の製造方法。」
2 検討
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「サラダ油」は、本件特許発明1における「食用油脂」に相当し、甲1発明における「サラダ油を鍋に入れ、そこに刻んだ材料を入れ、軽くまぜて、火にかけ、水分を飛ばすようにし微沸騰状態で30分ほどかき混ぜ」る工程は、本件特許発明1における、材料を含む「食用油脂を一次加熱する工程」に相当する。
また、甲1発明における「水分の蒸発がふつふつと落ち着いてきたら火を止め、粗熱を取り、布もしくは目の細かいザルなどで濾」す工程は、本件特許発明1における「前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程」に相当する。
さらに、甲1発明における「濾した油を鍋に戻し、100度以上で10分程加熱し、油の中の水分を飛ば」す工程は、本件特許発明1における「前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程」に相当する。
そして、甲1発明における「香味油」は、本件特許発明1における「風味油」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「材料を含む食用油脂を一次加熱する工程と、前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程と、前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程とを含む、風味油の製造方法。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明1は、「中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程」を含む「中華醤の風味が付与された中華風味油製造方法」であるのに対して、甲1発明には、そのような特定がない点。
以下、相違点について検討する。
甲1発明には、サラダ油に香りを付けたい材料として「ねぎ、玉ねぎ、にんにく、生姜、魚介類(海老の頭、煮干)」が例示されているものの、中華醤を選択することは記載も示唆もされていないため、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、甲1及びその他の証拠においても、甲1発明の香味油の香りをつけたい材料として、中華醤を採用する動機づけとなる記載はない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、
・「また、課題・効果の点についても、甲1発明においては、香りをつけたい材料の風味を油に移しこむことで香味油を調製するするであり、本件特許発明1では、材料である中華醤の風味を有する香味油を調製することであるので一致する。」(特許異議申立書 第20頁第8行~第11行)
・「本件特許発明1については、香味油の対象を“中華醤”としているが、甲1発明においては”香りをつけたい材料”としており対象を特定していない。ここで、香りをつけたい材料としては種々の食品を選択できるのは単なる設計事項であり周知技術である。香りをつけたい材料について “中華醤”を選択することは何らの困難性を有するものではない。」(特許異議申立書 第20頁第20行~第25行)
と主張している。
しかしながら、甲1及び他の証拠のいずれにも、中華醤を含む油を加熱する工程及び前記加熱によって生じた残渣を除去する工程を含む香味油の製造方法についての記載はなく、上述したとおり、甲1発明の香味油の香りをつけたい材料として中華醤を選択する動機がない。
また、本件特許発明1は、「中華醤の香ばしい風味を有し、透明な外観を有しているため、様々な食品に使用することができ、当該食品の風味をエンハンスさせることのできる、中華風味油の製造方法を提供すること」(【0005】)を課題とし、「一次加熱することによって、中華醤の風味を食用油脂に十分移行させることができ」(【0019】)、「残渣を除去することによって、サラサラとした透明な外観を有する中華風味油を得ることができ」(【0020】)、「二次加熱することによって、中華醤の風味に香ばしい香りを付与し、水分を除去することができる」(【0021】)という効果を奏するものであり、そのような効果は、甲1及び他の証拠のいずれにも記載されたものではない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
以上のことから、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2~3について
本件特許発明2~3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2~3は、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4~9について
本件特許発明4~9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明4~9は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明10~12について
本件特許発明10~12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1により製造された中華風味油または食品の発明であるから、本件特許発明1と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明10~12は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3 申立理由1及び申立理由2のまとめ
上記のとおり、本件特許発明1~3、10~12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1~12は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、申立理由1及び申立理由2の理由では、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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