特許異議申立
2017-700967
車両用複合ハーネス
- 審判番号
- 2017-700967
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-060997外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月11日
- 審決日
- 2017年12月14日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (H01B) / P1651.537-Y (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6112435号発明「車両用複合ハーネス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6112435号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6112435号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成24年9月28日(優先権主張 平成24年4月20日)に出願された特願2012-215636号の一部を平成26年4月30日に新たな特許出願とした特願2014-93255号の一部を平成26年7月22日に新たな特許出願とした特願2014-148398号の一部を平成27年8月3日に新たな特許出願とした特願2015-153331号の一部を平成28年3月25日に新たな特許出願として出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 中村 理奈により特許異議の申立てがされたものである。
第2.本件発明
特許第6112435号の請求項1-6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、以下、請求項1-6の特許に係る発明をそれぞれ、「本件特許発明1」-「本件特許発明6」という。
「【請求項1】
中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成される複数の電源線と、
中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成され、前記複数の電源線の外径より小さい外径の複数の信号線からなり、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサに接続するABSセンサ用ケーブルと、
が押出成形により形成された共通の外部シースにより一体化されている車両用複合ハーネスにおいて、
前記ABSセンサ用ケーブルは、前記複数の信号線が熱可塑性ウレタンからなる内部シースで一括被覆されて構成されており、
前記内部シースは、前記複数の電源線の間に一部が配置されている状態で前記複数の電源線と接触しており、
前記複数の電源線は、前記外部シースの端部から延出されており、その延出されている周囲にはチューブまたはホースからなる保護材が設けられているとともに、前記ABSセンサ用ケーブルは、前記複数の信号線が前記内部シースで一括被覆されている状態で前記外部シースの端部から延出されており、
前記外部シースの外周には、エチレンプロピレンジエンゴムからなるグロメットを介して固定金具が固定されている
ことを特徴とする車両用複合ハーネス。
【請求項2】
前記複数の電源線は、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ機構に接続する電動パーキングブレーキ用ケーブルである、
請求項1記載の車両用複合ハーネス。
【請求項3】
前記内部シースの一端が前記ABSセンサのセンサ部と樹脂モールドにより一体化された、
請求項1又は2記載の車両用複合ハーネス。
【請求項4】
前記熱可塑性ウレタンは、シランカップリング剤が添加されているとともに、架橋処理が行われている、
請求項1~3いずれか記載の車両用複合ハーネス。
【請求項5】
前記複数の電源線は、互いに接触しているとともに、前記複数の信号線は、互いに接触している、
請求項1~4いずれか記載の車両用複合ハーネス。
【請求項6】
前記保護材の長さは、前記外部シースよりも短い、
請求項1~5いずれか記載の車両用複合ハーネス。」
第3.申立理由の概要
1.特許法第29条第2項について
特許異議申立人 中村 理奈は、証拠として甲第1号証を提出し、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1-6に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証: 特開2011-142062号公報(以下、「刊行物1」という。)
2.特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人 中村 理奈は、請求項1には「押出成形により成形された共通の外部シース」のように物の発明についての請求項1にその物の製造方法が記載されているが、「外部シース」をその構造又は特定により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するとはいえないから、請求項1に記載の発明は不明確であり、また、この請求項1を引用する請求項2-6に記載の発明もまた、不明確であり、請求項1-6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、請求項1-6に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
第4.刊行物の記載、刊行物1の発明
1.刊行物1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、特に着目した箇所を示す。)
ア.「【0001】
本発明は、自動車やロボットなどの揺動部に用いられるケーブルの固定方法及びケーブル接続部に関するものである。」
イ.「【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、簡単な構造であるにもかかわらず、車室外の環境でも使用することができ、防水性、引張り力に対する電線の保持力、機械的強度を有するケーブル固定方法及びケーブル接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
中略
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、端子ホルダ収容部と金属筒部とからなる金属製ケースを有し、ケーブルを前記金属製ケース内に挿入し、前記ケーブルの心線を圧着した端子を絶縁性の端子ホルダに固定し、該端子ホルダを前記金属製ケースの前記端子ホルダ収容部に固定して収容し、前記ケーブルを収容した前記金属筒部の一部である加締め加工エリアの外周に複数の凹部を形成するように前記金属筒部を加締めることにより前記ケーブルを前記金属製ケースに固定したコネクタのケーブル固定方法において、前記金属筒部を加締めるとき、前記金属筒部を加締める前のケーブルの断面積をA、加締めた後のケーブルの断面積をB、B/Aを加締め率Kとしたとき、0.60≦K≦0.95となるようにすることし、かつ、前記金属筒部を加締める前の前記加締め加工エリアの表面積をD、加締めた後に形成される前記複数の凹部の総面積をCとしたとき、C≧D/5となるようにしたことを特徴とするケーブル固定方法である。
前記金属製ケースの外側に樹脂カバー又はゴムカバーを有するとよい。」
ウ.「【0020】
本発明によれば、金属筒部を加締めるとき、前記金属筒部を加締める前のケーブルの断面積をA、加締めた後のケーブルの断面積をB、B/Aを加締め率Kとしたとき、0.60≦K≦0.95となるようにして電線を金属製ケースに固定しているので、加締め箇所において金属筒部が電線の被覆に適切に食い込むことにより、電線の被覆と金属製ケースの金属筒部が密着し防水性が確保され、且つ引張り力に対する電線の保持力が大きくなるという効果を奏する。さらに、電線の端末を収容するケースとして金属製ケースを用いているので、飛石などの外部からの衝撃に対して強い機械強度を有し、飛石や水浸などが生じる車室外の環境でも電線と電子機器や電動機器を接続することができる。
【0021】
電線の心線を圧着した端子は、絶縁性の端子ホルダを介して金属製ケースの端子ホルダ収容部に固定されることとなり、端子同士を短絡させることなく金属製ケース内に収容することが可能である。
【0022】
また、簡単な構造であるにもかかわらず、車室外の環境でも使用することができ、防水性、引張り力に対する電線の保持力、機械的強度を十分なものにできる。またさらに、部品数が少なく簡単な構造であるため、低コスト化が可能である。」
エ.「【0028】
試験に用いたケーブル構造を図4に示す。
【0029】
ケーブル50は、導体に絶縁体を被覆した3本の絶縁電線51と、その外周に銅素線を編み込んだ銅編組シールド層52と、その外周に複数本の繊維材を編み合わせてなる編組で構成される補強編組層53と、その外周にシース層54を設けたものである。
【0030】
絶縁電線51の導体55はφ0.08のスズメッキ銅合金線を602本撚り合わせた構造で、その外周の絶縁層56はフッ素樹脂(4フッ化エチレン、エチレン共重合体)で厚さ0.5mmからなる。電線は3本の絶縁電線51を撚り合わせて束ねられている。これら電線21の外周に紙テープにより押さえ巻きを設け、紙テープの押さえ巻きと電源線の間に繊維による介在を入れ断面が円形になるようにしている。銅編組シールド層52は、銅線(φ0.12)を編み合わせてなる編素構造となる。補強編組層53を構成する繊維材は、ポリビニルアルコールでφ0.1となる。シース層54の構成材とは、エチレンプロピレンジエンゴムで、厚さは1mmとなる。
【0031】
図4のケーブル50の両端に図1~ 図3で示した金属製ケース11のコネクタ10を取り付ける。」
オ.「【0041】
図7は本発明に使用する電線(ケーブル)の実施例を示した図である。図7(a)、(b)は、電力線または信号線が2本の場合であり、導体21aの外周に絶縁体21bを設けた電力線または信号線2本を撚り合わせ、その外周に介在21eを介してシース21cを設けたものである。
【0042】
図7(c)、(d)は、電力線、信号線の複合ケーブルの場合であり、導体21aの外周に絶縁体21bを設けた電力線2本と、導体21aの外周に絶縁体21bを設けた信号線2本をその外周に介在21eを介してシールド21dを形成した信号複線2本とを、さらに介在21eを介してシース21cを設けたものである。図7(e)は本発明に係るコネクタ10に複合ケーブルを用いた場合の実施例であり、シース21cを収容した金属筒部11bを加締めることにより複合ケーブルを金属製ケース11に固定する。電力線、信号線の各々の心線に端子が設けられ、端子ホルダを介して金属製ケース11の端子ホルダ収容部に固定される。コネクタ10に使用される電線、ケーブルは、上記の例に限定されるものではなく、他の形態の電線ケーブルにも適用可能である。」
カ.図7(c)には、信号複線のシールド21dは、2本の電力線の間に一部が配置されている状態で2本の電力線と接触していること、及び、信号線の外径は電力線の外径より小さいことが示されている。
そして、上記記載事項を関連図面と技術常識に照らし、下線部に着目すれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているといえる。
「自動車の揺動部に用いられるケーブルで、
電力線、信号線の複合ケーブルであり、導体21aの外周に絶縁体21bを設けた電力線2本と、導体21aの外周に絶縁体21bを設けた信号線2本をその外周に介在21eを介してシールド21dを形成した信号複線2本とを、さらに介在21eを介してシース21cを設け、
シース21cを収容した金属筒部11bを加締めることにより複合ケーブルを金属製ケース11に固定し、
電力線、信号線の各々の心線に端子が設けられ、端子ホルダを介して金属製ケース11の端子ホルダ収容部に固定され、
信号複線のシールド21dは、2本の電力線の間に一部が配置されている状態で2本の電力線と接触し、
信号線の外径は電力線の外径より小さい、
加締め箇所において金属筒部が電線の被覆に適切に食い込むことにより、電線の被覆と金属製ケースの金属筒部が密着し防水性が確保され、且つ引張り力に対する電線の保持力が大きくなる
複合ケーブル。」
第5.判断
1.特許法第29条第2号について
1-1.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と、刊行物1の発明とを対比する。
ア.刊行物1の発明の「導体21aの外周に絶縁体21bを設けた電力線2本」は、本件特許発明1の「中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成される複数の電源線」に相当する。
イ.刊行物1の発明は「信号線の外径は電力線の外径より小さい」ものであるから、刊行物1の発明の「導体21aの外周に絶縁体21bを設けた信号線2本」は、本件特許発明1の「中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成され、前記複数の電源線の外径より小さい外径の複数の信号線」に相当する。
そして、刊行物1の発明は「信号線2本をその外周に介在21eを介してシールド21dを形成した信号複線2本」を有するものであり、ここで「シールド21d」は、「信号線2本」を一括被覆するものであり、「シース」ともいい得るものであるから、刊行物1の発明の「信号複線」は、本件特許発明1の「中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成され、前記複数の電源線の外径より小さい外径の複数の信号線からなり、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサに接続するABSセンサ用ケーブル」と「中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成され、前記複数の電源線の外径より小さい外径の複数の信号線からなるケーブル」である点で共通し、また、本件特許発明1の「前記ABSセンサ用ケーブルは、前記複数の信号線が熱可塑性ウレタンからなる内部シースで一括被覆されて構成」されていることと、「前記ケーブルは、前記複数の信号線が内部シースで一括被覆されて構成」されている点で共通するといえる。
ウ.刊行物1の発明の「自動車の揺動部に用いられるケーブル」で「電力線、信号線の複合ケーブル」である「複合ケーブル」は、「電力線2本」と、「信号複線2本」とを、「さらに介在21eを介してシース21cを設け」たもので、「電力線、信号線の各々の心線に端子が設けられ、端子ホルダを介して金属製ケース11の端子ホルダ収容部に固定され」たものであるから、刊行物1の発明の「複合ケーブル」は、本件特許発明1の「複数の電源線」と、「ケーブル」と、が「押出成形により形成された共通の外部シースにより一体化されている車両用複合ハーネス」と、「複数の電源線」と、「ケーブル」と、が「共通の外部シースにより一体化されている車両用複合ハーネス」である点で共通するといえる。
エ.刊行物1の発明の「信号複線のシールド21dは、2本の電力線の間に一部が配置されている状態で2本の電力線と接触」していることは、本件特許発明1の「前記内部シースは、前記複数の電源線の間に一部が配置されている状態で前記複数の電源線と接触して」いることに相当する。
したがって、本件特許発明1と刊行物1の発明との一致点・相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成される複数の電源線と、
中心導体の周囲を絶縁体で被覆して構成され、前記複数の電源線の外径より小さい外径の複数の信号線からなるケーブルと、
が共通の外部シースにより一体化されている車両用複合ハーネスにおいて、
前記ケーブルは、前記複数の信号線が内部シースで一括被覆されて構成されており、
前記内部シースは、前記複数の電源線の間に一部が配置されている状態で前記複数の電源線と接触している
車両用複合ハーネス。」
〈相違点1〉
「複数の信号線」からなる「ケーブル」が、本件特許発明1では、「車輪の回転速度を測定するためのABSセンサに接続するABSセンサ用ケーブル」であるのに対して、刊行物1の発明では、「複数の信号線からなるケーブルである」「信号複線」の用途は特定されていない点。
〈相違点2〉
「車両用複合ハーネス」を構成する「外部シース」が、本件特許発明1は、「押出成形により形成された」ものであるのに対して、刊行物1の発明は、「シース21c」がどの様に形成されたものであるのか特定されていない点。
〈相違点3〉
「複数の信号線」を「一括被覆」する「内部シース」が、本件特許発明1は、「熱可塑性ウレタンからなる」ものであるのに対して、刊行物1の発明は、「信号線2本」の外周に設けられた「シールド21d」の材質は特定されていない点。
〈相違点4〉
本件特許発明1は、「前記複数の電源線は、前記外部シースの端部から延出されており、その延出されている周囲にはチューブまたはホースからなる保護材が設けられているとともに、前記ABSセンサ用ケーブルは、前記複数の信号線が前記内部シースで一括被覆されている状態で前記外部シースの端部から延出されて」いるのに対して、刊行物1の発明は、「電力線、信号線の各々の心線に端子が設けられ、端子ホルダを介して金属製ケース11の端子ホルダ収容部に固定され」ている点。
〈相違点5〉
本件特許発明1は、「前記外部シースの外周には、エチレンプロピレンジエンゴムからなるグロメットを介して固定金具が固定されている」のに対して、刊行物1の発明は、「シース21c」の外周にグロメットを有するものではない点。
(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点4,相違点5について先に検討する。
〈相違点4〉について
刊行物1の上記摘記事項イ.に摘記したように、刊行物1の発明は、「防水性、引張り力に対する電線の保持力、機械的強度を有するケーブル固定方法及びケーブル接続部を提供すること」を目的とし、「シース21cを収容した金属筒部11bを加締めることにより複合ケーブルを金属製ケース11に固定し」、「加締め箇所において金属筒部が電線の被覆に適切に食い込むことにより、電線の被覆と金属製ケースの金属筒部が密着し防水性が確保され、且つ引張り力に対する電線の保持力が大きくなる」ものであるから、「複合ケーブル」の端部において、「電力線」が「シース21c」の端部から延出され、また、「信号複線のシールド21d」が「シース21c」の端部から延出されたものとすることには、阻害要因があるといえる。
したがって、たとえ「電源線」や「信号線」が「外部シースの端部から延出」され、延出されている範囲に「保護材」を設ける構成が周知技術であったとしても、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することについては阻害要因があり、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することが当業者にとって容易であったとはいえない。
〈相違点5〉について
刊行物1の発明は、「シース21cを収容した金属筒部11bを加締めることにより複合ケーブルを金属製ケース11に固定」するものであるから、「外部シース」の外周にグロメットを介して固定金具が固定されるものではない。
また、刊行物1の上記摘記事項イ.、エ.に摘記したように、刊行物1には、金属製ケースの外側にゴムカバーを設けること、シース層をエチレンプロピレンジエンゴムにより構成することは記載されているものの、刊行物1には、「複合ケーブル」の「外部シース」の外周にグロメットを設けることは記載されておらず、また、示唆されてもいない。
そして、シース自体をエチレンプロピレンジエンゴムにより構成したものにおいて、シースの外周にエチレンプロピレンジエンゴムからなるグロメットを設ける必要性は認められないから、「EPDMを介して固定金具を固定すること」が従来行われている周知技術であったとしても、刊行物1の発明において、外部シースの外周にエチレンプロピレンジエンゴムからなるグロメットを設けることが当業者にとって容易であったとはいえない。
そして、本件特許明細書段落【0026】に「複合ケーブル5には、複合ケーブル5を車体に取り付ける固定金具を固定するためのグロメット12が取り付けられる。グロメット12は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)からなる。」と記載され、段落【0044】に「EPDMは圧縮永久歪み(クリープ)が生じにくいため、外部シース4をEPDMで形成することにより、グロメット12を取り付けずとも、直接外部シース4に固定金具を固定することが可能になり、配線作業をより容易とすることが可能になる。なお、熱可塑性ウレタンは圧縮永久歪み(クリープ)が生じ易いため、固定金具を直接固定することはできず、グロメット12が必須となる。」と記載されるように、本件特許発明1は、EPDMで形成されたグロメットを設けることにより、熱可塑性ウレタンで形成した外部シースを有する車両用複合ハーネスを固定金具に固定することができるという効果を奏するものである。
したがって、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することが当業者にとって容易であったとはいえない。
1-2.本件特許発明2-6について
本件特許発明2-6は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同じ理由により、刊行物1の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
1-3.小括
以上のとおり、本件特許発明1-6は、刊行物1の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものでない。
2.特許法第36条第6項第2号について
本件特許明細書段落【0026】には「グロメット12を複合ケーブル5に取り付ける際には、エアーによりグロメット12の内径を拡径しながら取付を行うが、このとき、複合ケーブル5の外部シース4の表面が平坦となっていないと取付が困難となるため、本実施の形態では、押出成形を2回繰り返して外部シース4を形成することで、外部シース4の表面を平坦とし、複合ケーブル5の外形をほぼ一定に形成した。」と、「グロメット12」を「複合ケーブル5」に取り付け得る程度に「複合ケーブル5」の「外部シース4」の表面が平坦となるよう、「外部シース4」を押出成形により形成することが記載されている。
したがって、本件請求項1には「押出成形により形成された共通の外部シース」と製造方法が記載されているものの、本件特許明細書の上記記載を考慮すれば、本件請求項1の当該記載は、「グロメット12」を「複合ケーブル5」に取り付け得る程度に「複合ケーブル5」の「外部シース4」の表面が平坦であることを表していることが明らかであるから、本件請求項1に記載の発明は不明確であるとはいえない。
また、この請求項1を引用する請求項2-6に記載の発明もまた、不明確であるとはいえない。
よって、本件請求項1-6に係る発明は明確であるから、その特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
第6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700967