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特許異議申立

2017-700856

粘着性組成物、粘着剤および粘着シート

審判番号
2017-700856
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-509857外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年09月08日
審決日
2017年11月30日
公報発行日
2018年01月26日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6093907号発明「粘着性組成物、粘着剤および粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6093907号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6093907号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成26年3月28日に特許出願され、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人鯨田 雅信(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第6093907号の請求項1~6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 金属部材と接触して使用される粘着剤を構成するための粘着性組成物であって、 重量平均分子量が30万以上であり、重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを30質量%以上含有し、水酸基を有するモノマーを15質量%超25質量%以下含有し、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマーを15質量%以上含有し、カルボキシル基を有するモノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、 ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)と、 イソシアネート系架橋剤と、 溶剤と を含有することを特徴とする粘着性組成物。 【請求項2】 前記ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)として、1H-ベンゾトリアゾール、1H-トリルトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールおよび1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。 【請求項3】 請求項1または2に記載の粘着性組成物を架橋してなる粘着剤。 【請求項4】 1.0MHzにおける誘電率が2.0~8.0であることを特徴とする請求項3に記載の粘着剤。 【請求項5】 2枚の剥離シートと、 前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備え、 前記粘着剤層が、請求項3または4に記載の粘着剤からなる ことを特徴とする粘着シート。 【請求項6】 前記粘着剤層は、タッチパネルにおいて金属メッシュと接触するように配置されることを特徴とする請求項5に記載の粘着シート。」 (以下、請求項に係る各発明を項番に従って「本件発明1」~「本件発明6」という。) 3.申立理由の概要 申立人は、主たる証拠として特開2013-166846号公報(以下「刊行物1」という。)及び従たる証拠として特開2005-325250号公報(以下「刊行物2」という。)、特開2007-9006号公報(以下「刊行物3」という。)、特開2013-18937号公報(以下「刊行物4」という。)、実験成績証明書(以下「刊行物等5」という。)、特開2013-213203号公報(以下「刊行物6」という。)を提出し、請求項1~6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 4.刊行物1~6の記載事項について(下線は当審が付した。) (1)刊行物1(特開2013-166846号公報)には、以下のことが記載されている。 記載事項1-A 「【請求項1】 アルキル基が1~14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、及び脂環族又は芳香族を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選択される一種以上の単量体(a)40~80質量部、及び、 水酸基含有(メタ)アクリ酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン及びN-ビニル-2-ピロリドンからなる群より選択される一種以上の単量体(b)20~50質量部 からなる単量体組成物又はその一部を重合した組成物100質量部と、 1分子中に2つ以上のアクリロイル基を有する多官能性アクリル単量体、多官能性アクリルオリゴマー又は多官能性アクリルポリマーからなる架橋剤(c)0.01~5.0質量部と、 光ラジカル重合開始剤(d)0.1~3.0質量部と、 ベンゾトリアゾ-ル又はその誘導体(e)0.1~3.0質量部と を含有する光硬化型樹脂組成物を、光重合により硬化して皮膜状に賦形してなる粘着シート。」 記載事項1-B 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、各部材への充分な接着力を有し、透明性に優れ、高温高湿下でも白濁を生じず、耐金属腐食性、耐発泡性に優れた粘着シート、接着用シート、光硬化型接着剤組成物及び光学用部材を提供することにある。」 記載事項1-C 「【0020】 中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチル-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。 【0021】 本発明に用いる成分(b)は、水酸基含有(メタ)アクリ酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン及びN-ビニル-2-ピロリドンからなる群より選択される一種以上の単量体である。この成分(b)は、従来の酸成分に代えて接着性付与の為に使用するものである。そしてこの成分(b)は、後述する成分(e)と併用することによって、本願発明を効果を奏することになる。」 記載事項1-D 「【0024】 成分(a)及び成分(b)の合計100質量部を基準として、成分(a)の割合は40~80質量部であり、成分(b)の割合は20~50質量部である。成分(b)の割合を20質量部以上とすることは、接着性と耐湿熱白化性の点で意義が有る。また、50質量部以下とすることは、耐金属腐食性の点で意義が有る。 【0025】 成分(a)及び成分(b)は単量体のまま使用しても良いし、成分(a)及び成分(b)からなる単量体組成物の一部を重合して得られるシロップ状組成物(アクリルシロップ)を使用しても良い。このシロップ状組成物は単量体と重合体からなるものであればよい。すなわち、このシロップ状組成物は、単量体組成物を部分重合して得られるものに限られず、予め得た重合体を単量体中に溶解した組成物をも意味する。 【0026】 特に、上述のシロップ状組成物を用いることは、組成物の塗工に適した粘度にする点で好ましい。この場合、組成物中の重合体の重量平均分子量(Mw)は100万~200万が好ましい。シロップ状組成物中の重合体は、二重結合が存在する確率は殆ど無いので、架橋剤(c)との架橋反応には関与しない。したがって、粘着シートとなった際に十分な凝集力を得るには、この重合体がシロップ状組成物の段階である程度の凝集力を示す分子量であることが好ましい。このような観点から、重合体のMwを200万以下にすることは、必要な凝集力を発現し、安定した分子量を得る点で意義が有る。また、Mwの上記範囲は塗工に適した粘度を得る点でも意義が有る。この重合体のMwは、テトラヒドロキシフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。」 記載事項1-E 「【0042】 <実施例1> 攪拌機、還流冷却器、温度計、UVランプ及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、(a)成分として2-エチルヘキシルアクリレート45部及びアクリル酸メチル30部、(b)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート25部、光重合開始剤(商品名ダロキュア1173、BASFジャパン社製)0.01部及び連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン0.01部を装入し、窒素雰囲気下でUV光を照射することにより単量体の一部を重合し、単量体と重合体からなるシロップ状の組成物を得た。この組成物中の重合体の濃度は約13質量%、重合体の重量平均分子量(Mw)は約150万であった。 【0043】 この組成物100部に対して、(c)成分の架橋剤としてヘキサンジオールジアクリレート(商品名NKエステルA-HD-N、新中村化学工業社製)0.08部、(d)成分として光重合開始剤(商品名ダロキュア1173、BASFジャパン社製)0.5部、(e)成分としてベンゾトリアゾ-ル(共同薬品社製BTZ-M)0.3部を添加して、撹拌混合した。混合時に混入した空気泡を脱泡操作により除去して、(a)成分~(e)成分を含有する光硬化型樹脂組成物を得た。 【0044】 この光硬化型樹脂を、表面を離型剤処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、その上をさらに厚さ50μmのPETフィルムで被覆し、紫外線照射により硬化し、厚さ0.10mmの粘着シートを得た。 【0045】 <実施例2> 成分(a)として2-エチルヘキシルアクリレート60部、成分(b)として2-ヒドロキシエチルアクリレート40部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.10mmの粘着シートを得た。 【0046】 <実施例3> 成分(a)として2-エチルヘキシルアクリレート75部、成分(b)として2-ヒドロキシエチルアクリレート15部及びN,N-ジメチルアクリルアミド10部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.10mmの粘着シートを得た。」 記載事項1-F 「【0055】 [耐ITO導電劣化性] 電極部分としてAgペーストを塗布したITO蒸着PETフィルム(東洋紡製300RK)に、基材無しの粘着シートを貼り合せ、反対側の面にPETフィルムを貼り合せてサンプルとした。これを65℃、90%RHの雰囲気下に500時間放置した。粘着シートを貼り合せていないITOフィルムをブランクとして、マルチメーターにて試験前後の抵抗値を測定し、ブランクとの抵抗値変化率が20%以内のものを合格「○」とし、20~40%のものをやや合格「△」とし、40%を超えるものを不合格「×」とした。 【0056】 [耐銅板腐食性] 表面を磨き上げた銅板に粘着シートを貼り付け、85℃、85%RHの雰囲気下に250時間放置した。試験後の銅板の変色を目視にて確認し、変色が無いものを合格「○」とし、変色が有るものを不合格「×」とした。」 記載事項1-G 「【0058】 【表1】 【0059】 表1中の略号は以下の化合物を示す。 「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート(Tg=-70℃) 「MA」:メチルアクリレート(Tg=8℃) 「iBOA」:イソボルニルアクリレート(Tg=94℃) 「HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート(Tg=-15℃) 「DMAA」:N,N-ジメチルアクリルアミド(Tg=119℃) 「AME」:メトキシエチルアクリレート(Tg=-50℃) 「AA」:アクリル酸(Tg=106℃) なお、以上の各Tgは各単量体を用いた単独重合体の場合のTgである。 【0060】 [評価結果] 実施例1~3では、透明性、耐湿熱白化性、耐ITO導電劣化性、耐銅板腐食性、耐発泡性の全てが良好であった。」 (2)刊行物2(特開2005-325250号公報)には、以下のことが記載されている。 記載事項2-A 「【請求項1】 金属面に直接貼付するための感圧性粘着シート類であって、単量体主成分としての(メタ)アクリル酸エステルと、窒素原子含有共重合性単量体を含有し且つカルボキシル基含有共重合性単量体を含有していない共重合性単量体成分とにより構成されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとしているアクリル系感圧性粘着剤による感圧性粘着剤層を有していることを特徴とする金属面貼付用感圧性粘着シート類。 【請求項2】 アクリル系ポリマーを構成する共重合性単量体成分が、さらに、カルボキシル基含有共重合性単量体以外の酸性基含有共重合性単量体を含有していない請求項1記載の金属面貼付用感圧性粘着シート類。」 記載事項2-B 「【0006】 従って、本発明の目的は、金属面に対して直接に貼付しても金属面を腐食させず、また、優れた粘着特性および光学特性で金属面に貼付することができる金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある。 本発明の他の目的は、金属面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、透明で粘着特性が良好な金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は、さらに、加熱及び加湿の条件下でも、優れた粘着特性および光学特性を保持することができる金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある。」 記載事項2-C 「【0029】 [改質用共重合性単量体] 本発明では、窒素原子含有共重合性単量体以外の共重合性単量体として、カルボキシル基含有共重合性単量体(特に、酸性基含有共重合性単量体)を除く共重合性単量体(「改質用共重合性単量体」と称する場合がある)を用いることができる。改質用共重合性単量体を用いることにより、アクリル系感圧性粘着剤の各種特性やポリマーの構造などをコントロールすることができる。例えば、改質用共重合性単量体として、カルボキシル基(特に、酸性基)以外の官能基(ヒドロキシル基等の極性基)を有する改質用共重合性単量体を用いると、アクリル系ポリマーに架橋結合を生じさせることができる。なお、改質用共重合性単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。」 記載事項2-D 「【0034】 また、窒素原子含有共重合性単量体の割合としては、単量体成分全量に対して50重量%未満であることが重要であり、例えば、5重量%以上且つ50重量%未満(好ましくは10~45重量%、さらに好ましくは10~30重量%)の範囲から選択することができる。窒素原子含有共重合性単量体の割合が少なすぎると(例えば、5重量%未満であると)、金属面に対する粘着特性が低下し、特に、高温や高湿度の条件下で、接着強度が低下し、金属面貼付用感圧性粘着シート類が金属面から剥がれ易くなる。 【0035】 さらにまた、改質用共重合性単量体の割合としては、単量体成分全量に対して50重量%未満(好ましくは0.1~45重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%)の範囲から選択することができる。」 記載事項2-E 「【0041】 アクリル系感圧性粘着剤としては、その調製過程でいかなる形態も取りうるが、取り扱い性の面で、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系、光重合系などの形態で用いることが好ましい。アクリル系感圧性粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。」 記載事項2-F 「【実施例】 【0070】 以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 【0071】 (実施例1) 冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロート、攪拌装置を備えた反応容器に、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、溶媒として酢酸エチル:100重量部、単量体成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル:70重量部、N,N-ジエチルアクリルアミド:30重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を入れ、窒素環流を1時間行った後、反応容器内の単量体成分を含むモノマー組成物溶液の温度を60℃に昇温し、窒素気流中で、4時間重合を行った。その後、80℃に昇温して2時間熟成を行い、アクリル系重合体の溶液を得た。このアクリル系重合体の溶液に、架橋剤として、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネートアダクト体(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)を2重量部(固形分)添加して、粘着剤組成物(「粘着剤A」と称する場合がある)とした。 【0072】 さらに、前記粘着剤Aをアプリケーターを用いて、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ38μm)の剥離面上に塗布し、130℃で3分間乾燥して、厚さが25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ38μm)を貼り合わせて、粘着シートを得た。 【0073】 (実施例2) 表1に示されるように、単量体成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル:70重量部、アクリロイルモルホリン:30重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(「粘着剤B」と称する場合がある)を調製した。この粘着剤Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。」 (3)刊行物3(特開2007-9006号公報)には、以下のことが記載されている。 記載事項3-A 「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、粘着剤組成物において、主ポリマーであるカルボキシル基含有アクリル系ポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を小さくする手段により、主ポリマーの重量平均分子量を低く抑えた場合であっても、高分子量の粘着剤に比しても劣らない耐発泡性が維持できることを見出した。また、それに伴い、粘着剤組成物の低粘度-高固形分化によるハンドリング性向上、コスト低減を実現したので、以下に詳説する。」 (4)刊行物4(特開2013-18937号公報)には、以下のことが記載されている。 記載事項4-A 「【課題を解決するための手段】 【0010】 しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基を1つ含有する化合物(B)とを含有する粘着剤組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱することで、エチレン性不飽和化合物(B)の重合物とアクリル系樹脂(A)とが相互進入網目構造を形成することができ、従来のようにアクリル系樹脂(A)を高分子量化しなくとも高い耐久性能が発揮されることを見出し、更には、アクリル系樹脂(A)の分子量が低く樹脂粘度が低いため、塗工適正粘度にするための希釈溶剤の使用量が少なくて済み、乾燥適性にも優れることを見出し、本発明を完成した。」 (5)刊行物5(実験成績証明書)には、以下のことが記載されている。 記載事項5-A 刊行物1の実施例3の粘着剤の成分(DMAA)の配合量を10,15,20,25部に変更した粘着剤において、耐湿熱白化性評価、腐食抑制評価および誘電率がそれぞれ同程度であることを確認したことが記載されている。 (6)刊行物6(特開2013-213203号公報)には、以下のことが記載されている。 記載事項6-A 「【0057】 なお、本発明のアクリル系粘着剤組成物を、ITOフィルム、ITOガラス等の透明電極膜や、電磁波シールド等のメッシュ等の耐腐食性が必要な用途に使用する場合は、アクリル系粘着剤組成物が実質的に酸を含まないことが好ましい。 実質的に酸を含まないとは、アクリル系樹脂(A)の共重合成分として酸性基を有するモノマーを使用せず、粘着剤組成物全体の酸価が好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/gであることを意味する。」 (7)刊行物1に記載の発明 刊行物1には、2-エチルヘキシルアクリレート75部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部及びN,N-ジメチルアクリルアミド10部をUV光を照射し単量体の一部を重合し、単量体と重量平均分子量150万の重合体からなるシロップ状の組成物に対して、ヘキサンジオールジアクリレートの架橋剤と、光重合開始剤と、ベンゾトリアゾールを添加混合して得られた光硬化型接着剤組成物であって、当該接着剤組成物を硬化させて得られた粘着シートをAgペーストを塗布したITO蒸着PETフィルムに貼り合わせること、また、銅板に前記粘着シートを貼り付けることが記載されているといえる(記載事項1-A、1-C、1-D、1-E、1-F、1-G)。また、前記重合体は、そのモノマー組成からみて、カルボキシル基を含有するモノマーを使用しないものである。 したがって、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「銅やAgと接触して使用される粘着シートを構成するための接着剤組成物であって、 重量平均分子量が150万であり、重合体を構成するモノマー単位として、2-エチルヘキシルアクリレートを75重量%含有し、2-ヒドロキシエチルアクリレートを15重量%含有し、N,N-ジメチルアクリルアミドを10重量%含有し、カルボキシル基を有するモノマーを含有しない重合体と、 ベンゾトリアゾールと を含有する光硬化型接着剤組成物。」 5.対比・判断 (1)本件発明1と引用発明との対比 引用発明の「銅やAg」、「粘着シート」、「接着剤組成物」、「2-エチルヘキシルアクリレート」、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」、「重合体」、「ベンゾトリアゾール」、「重量%」は、本件発明1の「金属部材」、「粘着剤」、「粘着性組成物」、「(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル」、「水酸基を有するモノマー」、「(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)」、「ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)」、「質量%」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「N,N-ジメチルアクリルアミド」は、本件発明の明細書の段落【0036】の記載からみて、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマーであるから、本件発明1の「ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマー」に相当するといえる。 したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。 (一致点) 「金属部材と接触して使用される粘着剤を構成するための粘着性組成物であって、 重量平均分子量が150万であり、重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを75重量%含有し、水酸基を有するモノマーを15重量%含有し、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマーを含有し、カルボキシル基を有するモノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、 ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)と を含有する粘着性組成物。」 (相違点1) 粘着性組成物において、本件発明1には、「イソシアネート系架橋剤」と「溶剤」とを含有する旨記載されているのに対し、引用発明には、「イソシアネート系架橋剤」と「溶剤」が含まれていない点。 (相違点2) 粘着性組成物において、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマーを、本件発明1は、「15質量%以上含有」するのに対し、引用発明は、10質量%含有している点。 (2)判断 相違点1について検討する。 刊行物2には、「金属面に直接貼付するための感圧性粘着シート類であって、単量体主成分としての(メタ)アクリル酸エステルと、窒素原子含有共重合性単量体を含有し且つカルボキシル基含有共重合性単量体を含有していない共重合性単量体成分とにより構成されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとしているアクリル系感圧性粘着剤による感圧性粘着剤層を有していることを特徴とする金属面貼付用感圧性粘着シート類。」、「従って、本発明の目的は、金属面に対して直接に貼付しても金属面を腐食させず、また、優れた粘着特性および光学特性で金属面に貼付することができる金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある。 本発明の他の目的は、金属面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、透明で粘着特性が良好な金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は、さらに、加熱及び加湿の条件下でも、優れた粘着特性および光学特性を保持することができる金属面貼付用感圧性粘着シート類、および該金属面貼付用感圧性粘着シート類が用いられている金属面を有する物品を提供することにある」こと、「(実施例1) 冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロート、攪拌装置を備えた反応容器に、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、溶媒として酢酸エチル:100重量部、単量体成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル:70重量部、N,N-ジエチルアクリルアミド:30重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を入れ、窒素環流を1時間行った後、反応容器内の単量体成分を含むモノマー組成物溶液の温度を60℃に昇温し、窒素気流中で、4時間重合を行った。その後、80℃に昇温して2時間熟成を行い、アクリル系重合体の溶液を得た。このアクリル系重合体の溶液に、架橋剤として、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネートアダクト体(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)を2重量部(固形分)添加して、粘着剤組成物(「粘着剤A」と称する場合がある)とした。 さらに、前記粘着剤Aをアプリケーターを用いて、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ38μm)の剥離面上に塗布し、130℃で3分間乾燥して、厚さが25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ38μm)を貼り合わせて、粘着シートを得た。」こと(記載事項2-A、2-B、2-F)が、それぞれ記載されている。 そうすると、刊行物2に記載された「アクリル系感圧性粘着剤」は、引用発明とは、十分な接着特性を有する点、高温高湿下でも優れた光学特性を保持する点、及び優れた耐金属腐食性を発揮する点で課題が共通しており、さらに、アクリル酸2-エチルヘキシル、N,N-ジエチルアクリルアミド及び2-ヒドロキシエチルアクリレートからなるアクリル重合体を有し、金属面と接触して使用される粘着性組成物であることも記載されている。 しかし、引用発明は、そもそも光硬化によって接着剤としての作用を発揮する光硬化型接着剤組成物であることから、刊行物2に記載のアクリル系感圧性粘着剤とは使用形態が異なるものであるし、刊行物1に記載された発明は、接着剤組成物に添加する架橋剤としてイソシアネート系架橋剤ではなく、1分子中に2つ以上のアクリロイル基を有する多官能性アクリル単量体等を使用するものであること(実施例3の(c)成分ヘキサンジオールジアクリレート)から、引用発明と刊行物2に記載の発明との課題が類似し、引用発明と刊行物2との共重合体のモノマー組成が類似しているという共通点のみで、別の手段で架橋を施す接着剤組成物において、イソシアネート系架橋剤をさらに含有させる動機付けが存在しないと言わざるを得ない。 さらに、引用発明の接着剤組成物は、記載事項1-Eからみて、単量体と重合体を含むシロップ状の組成物であって、単量体が重合体を溶解する作用を有していること(段落【0025】)から、引用発明と刊行物2に記載された発明は、同様の課題を有し、同様のモノマー組成から得られたアクリル系重合体を含むものの、製造方法の違いにより物として全く異なり、刊行物2に記載のアクリル系感圧性粘着剤の添加物(「イソシアネート系架橋剤」と「溶剤」)を刊行物1に記載の光硬化型接着剤組成物に添加することは、当業者が想起するものではない。 そうすると、相違点1は、実質的な相違点であり、引用発明及び刊行物2から当業者が容易に発明できたものとはいえない。 そして、刊行物3,4は、粘着剤組成物において、塗工性を良好にするためにアクリル系ポリマーの分子量を下げる周知の技術的事項を示す文献に過ぎないこと、刊行物5は、刊行物1の実施例3におけるN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)の量の変化に対する効果を検証したものであるが、刊行物1にはそもそもDMAAの量のみを変化させることが記載されていないし、仮に、これらの刊行物を採用したとしても、本件発明1は、引用発明、刊行物2に記載された発明及び刊行物3~5から当業者が容易に発明できたものとはいえない。 なお、申立人は、「刊行物1には、請求項1に係る発明の構成である「イソシアネート系架橋剤」と「溶剤」が記載されていない」という点は、技術分野および解決課題が共通する刊行物2に「イソシアネート系架橋剤」を添加すること、接着剤組成物を「溶剤」系とすることが記載されているから、刊行物1に記載された発明においても、これらを採用する動機付けがあるか、当業者にとって設計的事項に過ぎないと主張しているが、上記相違点1について検討したとおりであるから、かかる主張は採用できない。 (3)請求項2~6に係る発明について 請求項2~5に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物3~5に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。 また、請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断に加えて、刊行物6に記載の、アクリル系粘着剤組成物を、透明電極膜や電磁波シールド等のメッシュ等の耐腐食性が必要な用途に使用するという開示を参酌しても、同様に、上記引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物3~6に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。 以上のとおり、請求項2~5に係る発明は、引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物3~5に記載された技術的事項から、請求項6に係る発明は、引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物3~6に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700856

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