特許異議申立
2017-700826
冷凍枝豆及びその製造方法
- 審判番号
- 2017-700826
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-286940外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月01日
- 審決日
- 2018年10月25日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 分類
- P1651.113-ZAA(A23L) / P1651.121-ZAA(A23L) / P1651.537-ZAA(A23L) / P1651.536-ZAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6092512号発明「冷凍枝豆及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6092512号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~10〕、〔11~12〕について訂正することを認める。
特許第6092512号の請求項1~7、9~12に係る特許を取り消す。
特許第6092512号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯の概略
特許第6092512号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、以下のとおりである。
平成23年12月27日 特許出願
平成29年 2月17日 設定登録
平成29年 3月 8日 特許掲載公報発行
平成29年 9月 1日 特許異議申立人赤尾直人による特許異議申立書
(以下「異議申立1」という。)
平成29年 9月 7日 特許異議申立人漆山誠一による特許異議申立書
(以下「異議申立2」という。)
平成29年 9月 8日 特許異議申立人宮内康之による特許異議申立書
(以下「異議申立3」という。)及び特許異議
申立人遠藤楓実による特許異議申立書(以下「
異議申立4」という。)
平成29年12月28日 取消理由通知書
平成30年 3月 6日 意見書(特許権者)及び訂正請求書
平成30年 4月13日 意見書(特許異議申立人遠藤楓実)
平成30年 4月16日 意見書(特許異議申立人赤尾直人)、意見書(
特許異議申立人漆山誠一)及び意見書(特許異
議申立人宮内康之)
平成30年 7月31日 取消理由通知書(決定の予告)
なお、平成30年7月31日の取消理由通知に対して、特許権者より何らの応答はなかった。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第6092512号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 請求項1~6について
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1の「糊化度が60~80%である、加熱調理用の冷凍枝豆。」を「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度が60~80%である、加熱調理用の冷凍枝豆であって、該枝豆が普通種の枝豆であり、凍結処理が1回のみ行われるものである、冷凍枝豆。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」に訂正する。
イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項2の「加熱調理が、枝豆の糊化度を90~100%とするものである」を「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである」に訂正する。
ウ 訂正事項3
本件訂正前の請求項5の「枝豆を糊化度90~100%の状態まで加熱調理する」を「枝豆を前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度90~100%の状態まで加熱調理する」に訂正する。
(2) 請求項7~10について
ア 訂正事項4
本件訂正前の請求項7の「枝豆を糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法。」を「普通種の枝豆を以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法であって、該凍結工程が1回のみ行われるものである、製造方法。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」に訂正する。
イ 訂正事項5
本件訂正前の請求項8を削除する。
ウ 訂正事項6
本件訂正前の請求項9の「加熱調理が、枝豆の糊化度を90~100%とするものである、請求項7又は8に記載の製造方法」を「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである、請求項7に記載の製造方法」に訂正する。
エ 訂正事項7
本件訂正前の請求項10の「加熱調理がボイル又は電子レンジにより行われることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法」を「加熱調理がボイル又は電子レンジにより行われることを特徴とする、請求項7又は9に記載の製造方法」に訂正する。
(3) 請求項11、12について
ア 訂正事項8
本件訂正前の請求項11に「枝豆を糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の食感の向上方法。」を「普通種の枝豆を以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の食感の向上方法であって、該凍結工程が1回のみ行われるものである、向上方法。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」
2 本件訂正の適否について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明で特定されていなかった「糊化度が60~80%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定し、「加熱調理用の冷凍枝豆」の枝豆について「普通種の枝豆」に限定し、冷凍の条件について「冷凍処理が1回のみ行われるもの」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0015】
本発明の冷凍枝豆の原料として用いられる枝豆については、その起源、産地、種類及び品種は特に制限されない。枝豆の種類は、種皮の違いから普通種、茶豆、黒豆に区別されるが、いずれのものも用いることができる。普通種の枝豆としては、例えば大袖の舞、サッポロミドリ、味緑、湯あがり娘等が挙げられる。茶豆の枝豆としては、例えば、白山、福成、越乃茶太郎等が挙げられる。黒豆の枝豆としては、例えば、丹波黒、紫ずきん、黒頭巾等が挙げられる。本発明では、枝豆の熟度、色調、豆の硬さ、莢の強さ、見栄え、加熱適性等において適切なものが好適に用いられる。」
イ 「【0016】
本発明において糊化度とは、枝豆中に含まれるデンプンがα化デンプンに変化した割合をいう。当該糊化度の測定は、βアミラーゼ・プルラナーゼ法(以下、「BAP法」と称する場合がある)を用いることができる。糊化度は、具体的には、既報(家政学雑誌32(9),653-659,1981)に準じて、以下の通り測定することができる。」
ウ 「【0017】
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
【0018】
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度が算出される。尚、上記操作フローをまとめたものは図1に示される。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」 エ 「【0024】
本発明の冷凍枝豆は、上記加熱工程を経た枝豆を凍結することにより製造することができる。枝豆の凍結には、例えば、IQF(Individual Quick Frozen、個別急速冷凍)装置、エアーブラスト、及びブロック凍結装置等、当業者に周知の装置を用いることができる。本発明では、凍結速度の観点から好ましくはIQFが用いられる。枝豆を凍結するときに設定される温度は、枝豆の種類や品質等によっても異なるが、通常-18℃以下である。凍結速度の観点から、クラックが生じない程度に、より低温で行う方が好ましい。枝豆の凍結は、使用する枝豆の品種や量によっても異なるが、通常30分以内に中心温度が-5℃以下であれば良い。尚、本発明においては、凍結工程は1回のみであることが好ましい。」
上記ア~エの記載事項に基づくと、訂正事項1に係る本件訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明で特定されていなかった「糊化度を90~100%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の上記(1)イ及びウの記載事項に基づくと、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5に係る発明で特定されていなかった「糊化度90~100%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の上記(1)イ及びウの記載事項に基づくと、訂正事項3は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項7に係る発明で特定されていなかった「糊化度60~80%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定し、「加熱調理用の冷凍枝豆」の枝豆について「普通種の枝豆」に限定し、冷凍の条件について「凍結工程が1回のみ行われるもの」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の上記(1)ア~エの記載事項に基づくと、訂正事項4は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項9に係る発明で特定されていなかった「糊化度を90~100%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定するとともに、訂正事項5により請求項8が削除されたことにより、請求項9において引用する請求項から請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の上記(1)イ及びウの記載事項に基づくと、訂正事項6は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項5により請求項8が削除されたことにより、請求項10において引用する請求項から請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(8) 訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項11に係る発明で特定されていなかった「糊化度が60~80%」の測定方法を、「βアミラーゼ・プルラナーゼ法」に特定し、併せて測定条件を特定し、「加熱調理用の冷凍枝豆」の枝豆について「普通種の枝豆」に限定し、冷凍の条件について「凍結工程が1回のみ行われるもの」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の上記(1)ア~エの記載事項に基づくと、訂正事項8は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(9) さらに、本件訂正は一群の請求項〔1~6〕、〔7~10〕、〔11~12〕ごとに請求されたものである。
(10) 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条4項、並びに同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~10〕、〔11~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~7、9~12に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~7、9~12に記載された事項により特定される次のとおりである。以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。
【請求項1】
以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度が60~80%である、加熱調理用の冷凍枝豆であって、該枝豆が普通種の枝豆であり、凍結処理が1回のみ行われるものである、冷凍枝豆。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100
【請求項2】
加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである、請求項1に記載の冷凍枝豆。
【請求項3】
ボイル又は電子レンジによる加熱調理用である、請求項1又は2に記載の冷凍枝豆。
【請求項4】
枝豆を加熱調理することが記載されている包装体と、請求項1に記載の冷凍枝豆とを含む、冷凍食品。
【請求項5】
枝豆を前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度90~100%の状態まで加熱調理することが包装体に記載されていることを特徴とする、請求項4に記載の冷凍食品。
【請求項6】
ボイル又は電子レンジにより枝豆を加熱調理することが包装体に記載されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の冷凍食品。
【請求項7】
普通種の枝豆を以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法であって、該凍結工程が1回のみ行われるものである、製造方法。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100
【請求項9】
加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
加熱調理がボイル又は電子レンジにより行われることを特徴とする、請求項7又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
普通種の枝豆を以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の食感の向上方法であって、該凍結工程が1回のみ行われるものである、向上方法。
試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100
【請求項12】
歯切れ感の向上方法である、請求項11に記載の向上方法。
第4 取消理由の概要
本件特許の請求項1~7、9~12に係る特許に対する、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 本件特許の請求項1~7、9~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(引用例1又は引用例3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許の請求項1~7、9~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(引用例1又は引用例3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 本件特許の請求項1~7、9~12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法36条4項1号の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4 本件特許の請求項1~7、9~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものでないから、特許法36条6項1号に規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
5 本件特許の請求項1~7、9~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不明確であるため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
<引 用 例>
引用例1:熊谷義光外2名、「冷凍食品製造ハンドブック」、株式会社光琳
、平成6年10月30日、p.149-150(異議申立1の甲
第1号証)
引用例2:食品表示研究会、「食品表示マニュアル」、中央法規出版株式会
社、平成元年2月20日、p.3500-3502(異議申立1
の甲第2号証)
引用例3:増田亮一外2名、「冷凍枝豆の食味に及ぼす収穫後の貯蔵時間の
影響」、日本食品工業学会誌、1988年11月、第35巻、第
11号、p.763-770(異議申立2の甲第1号証)
引用例4:「第三版冷凍野菜・果実のすべて」、株式会社食品産業新聞社、
2000年5月25日、p.74-77(異議申立2の甲第2号
証)
引用例5:特開平8-242799号公報(異議申立2の甲第3号証)
引用例6:特開2009-131201号公報(異議申立2の甲第4号証)
引用例7:日本食品分析センターのウエブページ「糊化度(α化度)のご案
内」のプリントアウト<http://www.jfrl.or.jp/item/nutrition
/post-35.html>(異議申立2の甲第5号証)
引用例8:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会、「日本食品標
準成分表2015年版(七訂)」、全国官報販売協同組合、平成
27年12月25日、「6.野菜 えだまめ」の項(異議申立2
の甲第6号証)
引用例9:「第14109454001-01号2014(平成26年)1
1月11日付け試験報告書」、一般財団法人日本食品分析センタ
ー(異議申立2の甲第7号証)
引用例10:特願2011-286940号の平成27年9月3日付け意見
書(異議申立2の甲第8号証)
引用例11:知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10295号判決(
異議申立3の甲第1号証)
引用例12:ウエブサイト「製造・表示Q&A」のプリントアウト<http:/
/www.popai.co.jp/QA.htm#5>(異議申立3の甲第2号証)
引用例13:熊谷義光、「冷凍食品の製造<<冷凍食品シリーズ・1>>」
、株式会社食品と科学社、昭和49年7月30日、p.113
-128、(異議申立3の甲第3号証)
引用例14:及川彰、「成分からみたエダマメの特徴」、香料、平成28年
12月、No.272、p.29-35(異議申立3の甲第4
号証)
引用例15:赤澤經也外2名、「ダダチャ豆の品質」、エダマメ研究、20
03年3月、第1巻、第1号、p.10-12(異議申立3の
甲第5号証)
引用例16:阿部利徳外2名、「生およびゆでエダマメの遊離アミノ酸およ
び糖含量の品種間差異」、日本食品科学工学会誌、2004年
3月、第51巻、第3号、p.172-176(異議申立3の
甲第6号証)
引用例17:野村知未(京都府立大学大学院生命環境科学研究科応用生命科
学専攻)の「京都府産丹波黒大豆(Glycine max(
L.)Merr.)系品種の完熟および未熟子実の調理科学的
特性」と題した2014年の博士論文(異議申立3の甲第7号
証)
引用例18:廣田智子、「丹波黒大豆エダマメの品質」、エダマメ研究、2
003年3月、第1巻、第1号、p.13-16(異議申立3
の甲第8号証)
引用例19:兵庫県立北部農業技術センター加工流通部作成の「丹波黒大豆
の冷凍エダマメ製造時のブランチング時間」と題した資料(異
議申立3の甲第9号証)
引用例20:常見崇史外3名、「ソフト(低温)スチーム技術を利用した高
品位食品加工技術(2)」、埼玉県産業技術総合センター研究
報告、2009年、第7巻(異議申立3の甲第10号証)
引用例21:P.Garcia-Segovia外2名、「Textural properties of pota
toes(Solanum tuberosum L.,cv.Monalisa)as affected by
different cooking processes」、JOURNAL OF FOOD ENG
INEERING、2008年、Vol.88、p.28-35(異
議申立3の甲第11号証)
引用例22:松村直幹、「知的財産物語枝豆戦争割れた枝豆」、株式会社昇
友、2008年8月1日、p.85-87(異議申立3の甲第
12号証)
引用例23:BtoBプラットフォームウエブページ「台湾産えだ豆<レギ
ュラーブランチ>」のプリントアウト[2016年7月13日
検索]、2009年10月28日、<https://www2.infomart.
co.jp/buyer/search/prod_detail.page?0&pid=5288555
&site&disp_prt&mypg&grp&mcd=SSVwY15P>(異議申立3の甲第
13号証)
引用例24:東京高等裁判所平成15年(行ケ)第90号判決(異議申立3
の甲第14号証)
引用例25:松永暁子外1名、「澱粉質食品の老化に関する研究(第1報)
米飯の老化について」、家政学雑誌、1981年、Vol.3
2、No.9、p.653-659(異議申立4の甲第1号証
)
引用例26:藤井淑子外1名、「加熱デンプンの糊化率測定について」、家
政学雑誌、1986年、Vo.37、No.5、p.341-
346(異議申立4の甲第2号証)
引用例27:渡辺薫外1名、「澱粉ゲルの物性及び糊化度に及ぼす凍結・解
凍法の影響」、日本食品低温保蔵学会誌、1989年、VOL
.15、NO.1、p.3-9(異議申立4の甲第3号証)
引用例28:外山忠男外2名、「グルコアミラーゼによる澱粉のα化度の測
定法について」、澱粉工業学会誌、1966年、第13巻、第
3号、p.69-75(異議申立4の甲第4号証)
引用例29:太田朋槻外3名、「税関分析法『でん粉のアルファ-化度の測
定法』の改善」、関税中央分析所報、第54号、p.5-12
、(異議申立4の甲第6号証)
引用例30:特開2010-215861号公報(異議申立4の甲第7号証
)
引用例31:柴田満、「エダマメのおいしさを考える」、調理食品と技術、
2006年、Vol.12、No.2、p.18-24(異議
申立4の甲第8号証)
引用例32:南出隆久外2名、「枝豆のテクスチャーと色調に及ぼす加熱操
作の影響」、京都府立大学学術報告(理学・生活科学)、19
92年11月、第43号B系列、p.21-27(異議申立4
の甲第9号証)
引用例33:及川彰外3名、「冷凍エダマメの解凍方法による成分変化」、 エダマメ研究、2014年10月、第9巻、第1号、p.76
-77(異議申立4の甲第10号証)
引用例34:釘宮正往、「豆類組織の加熱による軟化と組織内デンプンの糊
化」、くらしき作陽大学・作陽音楽短期大学研究紀要、201
0年、第43巻、第2号、p.129-135(異議申立4の
甲第11号証)
第5 取消理由(特許法29条1項3号及び2項)についての判断
上記「第4 取消理由の概要」で示した取消理由1及び2について、まず検討する。
1 引用例に記載された事項及び発明
(1) 引用例1に記載された事項及び発明
ア 引用例1に記載された事項
「ii.枝豆
枝豆は冷凍による組織の損傷を受けにくく、冷凍加工に適した作物である。・・・
また加熱調理を必要とする従来品に加え、近年はブランチ時間を長くして流水解凍でそのまま喫食できるロングブランチ品も登場し、簡便性がうけ生産量が増加している。
○1(当審注:「○1」は、○囲みの数字の1を意味する。以下同じ。)原料
台湾、中国、タイともAGS292、緑光305、鶴の子205等の品種が用いられる。」(149ページ20~29行)
「原料要件は以下のとおりである。
a) 莢は濃緑色で変色していないこと
b) 虫害、霜害、病害等の被害を受けていないこと
c) 1莢に2~3粒が含まれ、一粒莢は極力少ないこと
d) 未熟・過熱がなく、粒は大粒で甘味があること
○2 製造工程
選別-水洗-ブランチング-冷却-水切り-凍結-バルク保管-計量-包装-金属・重量チェック」(149ページ末行~150ページ7行)
「ブランチング:沸騰水で行うが、ブランチング時間の違いにより下記に分類される。
a) レギュラーブランチング:1.5~2.5分
b) セミロングブランチング:3分前後
c) ロングブランチング(無加熱摂取):3分半~4分
冷却:冷却は2段階に分けて水冷を行い、約10℃まで冷却を行う。この際内部まで十分に冷却を行わないと色、風味、衛生等の好ましくない問題が発生しやすい。
凍結:凍結はIQFフリーザーを用いる。凍結時間は温度-35℃で10分程度である。
包装:枝豆は収穫期に集中して原料が入荷するため、凍結後一旦バルク保管し(20~500kg)、収穫期終了後小袋に詰めるのが一般的である。」(150ページ10~21行)
イ 引用例1に記載された発明
引用例1の上記「c) ロングブランチング(無加熱摂取):3分半~4分」との記載によると、ブランチ後に無加熱で摂取する枝豆については、「(無加熱摂取)」と記載されており、一方、「a) レギュラーブランチング:1.5~2.5分 b) セミロングブランチング:3分前後」の枝豆は、「(無加熱摂取)」との記載がないことから、ブランチング後に凍結した後、加熱調理してから摂取するものと認められる。
そうすると、引用例1の上記各記載を総合すると、引用例1には以下の冷凍枝豆の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1-1」等という。)
(引用発明1-1)
「枝豆の原料に、AGS292、緑光305、鶴の子205等の品種を用い、レギュラーブランチング:1.5~2.5分を行い、冷却して約10℃まで冷却を行い、その後凍結された、加熱調理用の冷凍枝豆。」
また、方法の発明として、引用例1には、以下の方法の発明が記載されていると認められる。
(引用発明1-2)
「枝豆の原料に、AGS292、緑光305、鶴の子205等の品種を用い、レギュラーブランチング:1.5~2.5分を行い、冷却して約10℃まで冷却を行い、その後凍結する、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法。」
(2) 引用例3に記載された事項及び発明
ア 引用例3に記載された事項
「1. 試料
茨城県谷田部町の畑地に枝豆用早生ダイズ‘玉すだれ’(Glycine max L. cv. Tamasudare)を露地マルチ栽培した.1985年5月下旬に播種、約20日後に定植した。7月中旬に開花した枝豆を収穫適期の8月20日、及び2日後の22日の午後1時半にそれぞれ200株、同一区画より根ごと収穫し、直ちに莢を採取して5等分(1区約800g)した.これをプラスチックざるに並べてダンボール箱に入れ室温(26℃,相対湿度64~68%)で貯蔵した.収穫からブランチングまでの貯蔵時間は40分間、3時間、8時間、24時間、48時間(8月20日収穫)、及び30分間、3時間、6時間、10時間、24時間(8月22日収穫)の各5区分とした.
冷凍処理は莢豆を27~28倍量2)の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチングし、1分間水冷した後液体窒素で急速凍結した。0.04mm厚のポリエチレン袋に密封し-20℃で保存した.解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでた莢豆を成分分析(冷凍貯蔵3ケ月後)、官能検査(同2週間後)に供した.」(764ページ)
「2. 成分分析法
1) 糖と遊離アミノ酸の分析
解凍直後の子実(種皮を含む)を室温の80%エタノール中でポリトロン(キネマチカ製)を用いて破砕し、残渣は3回繰り返して抽出した.抽出液を減圧乾固した後水に溶かした.これに10%酢酸鉛をタンパク質の白濁がなくなるまで加えた後、遠心分離して除タンパク処理した.得られた上澄み液をメンブレンフィルター(ポアサイズ0.45μ)に通してサンプル液とした.
水溶性の糖は、分離カラムに島津Shim-Pack CLC-NH2(6×150mm)を用い、アセトニトリル:水(3:1)を移動相とした高速液体クロマトグラフ(日本分光TRIROTOR-5)で分離し、示差屈折計(エルマERC-7510)で定量した.
遊離アミノ酸はサンプル液を0.2 Nクエン酸リチュウムで希釈し、日立アミノ酸分析計835型でその生体液分析法により分離定量した.
2) デンプンの定量
子実試料の80%エタノール抽出残渣を用い、この残渣に0.5 N NaOHを加え95℃、 3時間で糊化溶解し溶液を濾過した.濾液にアミログルコシダーゼ(ベーリンガーマンハイム製)を70単位加えて60℃ で1時間加水分解し、ヘキソキナーゼ・グルコース-6-リン酸脱水素酵素系(ベーリンガーマンハイム製Fキット)を用いてグルコースとして定量し、 0.9倍してデンプン量を算出した3).また、 80%エタノール抽出液中にもデンプンが検出されたのでこれもアミログルコシダーゼで加水分解し同様に測定し、遊離のグルコースを除いて合算した.分析は4反復で行い、有意差検定(t検定)を行った.
3) タンパク態N定量
解凍した子実を80%エタノールで抽出処理し、抽出液を乾固させて得られた固形物を水に溶解し、その溶液にTCA溶液を終濃度5%になるように加えタンパク質を沈澱させた.沈殿はエタノール抽出残渣と合わせ、ケルダール分解法により窒素を測定しタンパク態N含量を求めた。分析は2反復で行った.」(764ページ)
「3. 官能検査
冷凍貯蔵約2週間目の枝豆を用い、ゆでて解凍した後30分間放置し冷ましたものを用いた.パネルは特別の訓練を受けていない男女で、8月20日収穫分で5名×4群、22日分で7名×4群の割付をした.評価項目は甘味、旨味、香り、テクスチャー(食感:歯ごたえ)、総合評価とし、±5段階の採点法で実施した.」(764ページ)
イ 引用例3に記載された発明
引用例3の上記各記載を総合すると、引用例3には以下の冷凍枝豆の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明3-1」等という。)。
(引用発明3-1)
「枝豆の原料に、玉すだれの品種を用い、冷凍処理は莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチングし、1分間水冷した後液体窒素で急速凍結した冷凍枝豆であって、解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでることとした、冷凍枝豆。」
また、方法の発明として、引用例3には、以下の方法の発明が記載されていると認められる。
(引用発明3-2)
「枝豆の原料に、玉すだれの品種を用い、冷凍処理は莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチングし、1分間水冷した後液体窒素で急速凍結する冷凍枝豆の製造方法であって、解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでることとした、冷凍枝豆の製造方法。」
(3) 引用例4に記載された事項
「エダマメ 中国産」(74ページ)
「品種 『AGS#292』(鶴の子系)が主体、『♯75』(緑光系)も増えつつある。その他、『茶豆』『黒豆』も栽培されている。」(74ページ)「製造工程 ○5ブランチング(98~100℃で2分間湯通しする) ○6冷却 ○7凍結(-35℃で約5分間、その後は-18℃で保管)」(75ページ)
「台湾産-エダマメ」(76ページ)
「品種 『♯75』(緑光系)が中心。『♯301』(鶴の子系)も中部地区で栽培されている。『♯75』は95年以降、それまでの『新緑光♯305』『♯301」から切り替わってきた。『♯75』は、価格が高い反面、緑色が濃く外観が良好で、惣菜を中心とした日本の市場に高く評価され、急速に普及した。このほか、黒豆、茶豆も日本から需要が増え、栽培は増えつつある。」(76ページ)
(4) 引用例6に記載された事項
「【0002】
・・・市場における流通の利便性を確保するため、茹でた莢付枝豆の冷凍品が開発されてきた。
例えば、通常、枝豆は、収穫した莢付の枝豆を熱湯でボイルし、適宜塩味等を付し、莢から枝豆(豆の部分)を取り出して喫食する。従って、茹でた枝豆に、塩等によりあらかじめ味を付け、その後自然解凍、流水解凍及び電子レンジによる解凍によりそのまま食することができる味付きの莢付枝豆の冷凍品が市場に流通している・・・」
「【0008】
(A) ブランチング工程
まず、畑から莢付枝豆原料を収穫する。莢付枝豆原料としては、如何なる種類のものも使用できるが、例えば、白毛豆であれば、鶴の子系統種や緑光系統種が好ましく、鶴の子系統種がより好ましい。莢付の枝豆の他、枝の一部が付いた状態のものを莢付枝豆の原料として収穫してもよい。収穫した莢付枝豆原料は、適宜目視等によって選別を行い、異物等を除去する。その後、適宜冷水又は温水等によって莢付枝豆を十分洗浄する。このような選別及び洗浄は、1回でも複数回行ってもよい。このようにして得た莢付枝豆原料を、30秒~2分間、例えば、30~100秒間、好ましくは、35~80秒間、より好ましくは40~60秒間、特に好ましくは45秒±5秒間ブランチングする。ブランチングは、例えば80~100℃、好ましくは90~100℃、より好ましくは98℃±2℃の温水浴中に莢付枝豆原料を浸漬することによって行われる。また、ブランチングは、ブランチャー内にスチームを噴射してブランチングを行うスチームブランチャーで行ってもよい。このようにブランチングすることによって、枝豆を、そのまま喫食し得る程度まで柔らかく調理するところまではいかないが、枝豆に含まれる酵素を失活し、かつ莢付枝豆に存在し得る細菌を死滅することができる。そのまま喫食する程度まで柔らかく調理されたものではないという意味で、このようにしてブランチングした莢付枝豆は、完全に調理されていない茹で莢付枝豆であるといえる。
本発明では、このように30秒~2分程度の短時間だけブランチングを施した茹で莢付枝豆を使用する。市場には2分30秒~4分程度のより長い時間ブランチングして完全調理した莢付枝豆の冷凍品も出回っている。このように長時間ブランチングした莢付枝豆の冷凍品は、解凍後そのまま食することができる。このような商品を本発明で利用することも原理的には可能である。しかし、2分30秒~4分のような、より長い時間ブランチングを行った莢付枝豆を焼き莢付枝豆の冷凍品の原料として使用した場合、ブランチングとその後の加熱・焼成の合計調理時間が長くなりすぎてしまい、枝豆本来の甘味や焼いたときに感じられるホクホクとした食味・食感が失われる。従って、本発明では好ましいブランチング時間として、30秒~2分を選択したものである。」
(5) 引用例13に記載された事項
「3-3-(2) ブランチング(野菜)
ブランチングの温度と時間は凍結中の品質保持のほか最終的に解凍したときの色沢、香味、肉質を考慮して野菜の大きさ、形態等により適宜選定する。」(113ページ右欄)
「ブランチングの過剰や不足は、製品の変色、香味や肉質劣化の原因となり、貯蔵期間を短縮させることになる。」(114ページ左欄)
「その他、ブランチングの効果としては、・・・。一方、加熱処理によっていわゆる歯切れの良さ(clipness)を失い、ミネラル、ビタミンC、蛋白質など可溶性成分の10~30%ぐらいの流出はまぬがれない。その程度は加熱温度、時間、ブランチング用水の量、原料片の大きさや形状により異る。」(115ページ左欄)
「3-4-(3) 枝 豆
製造工程は次のとおりである。原料受入→莢もぎ→選別→洗滌→ブランチング→冷却→水切→包装→凍結→箱詰→冷蔵」(126ページ右欄)
(6) 引用例18に記載された事項
「4.調理方法
丹波黒大豆エダマメの利用形態にあわせた調理方法について調査した(図7、図8)。収穫時期に限られる調理方法として生鮮状態のエダマメを茹でてすぐに食べる場合は、もぎ莢を5倍量以上の沸騰水中で7分から10分間前後ブランチングする。長期保存時の冷凍・調理方法として冷凍加工後、流水解凍・湯通し解凍して食べる場合は、もぎ莢を5倍量以上の沸騰水中で5分間ブランチングした後、すばやく冷却・水切りを行い、その後-18℃以下で冷凍保存を行う。解凍方法としては、冷凍エダマメを流水中で解凍するか、沸騰水中で3分程度の湯通し解凍を行う。」(15ページ)
「
」(16ページ)
「
」(16ページ)
(7) 引用例22に記載された事項
「A、冷凍の枝豆は殆ど台湾、中国で製造して輸入されている。現地で収穫された枝豆を三時間以内に工場に持ち込みブランチング(湯通し)した後急速凍結をした物が冷凍枝豆である。・・・
Q、美味しい枝豆の食べ方は?
A、冷凍枝豆を二%の塩をいれた沸騰したお湯でさっと茹でる。」(87ページ)
(8) 引用例25に記載された事項
「著者らは澱粉の糊化度、老化度を測る方法として、酵素による測定法を検討した.そして従来一般に用いられていたジアスターゼ法、およびグルコアミラーゼ法よりも老化の初期の段階をより正確に把握できるβ-アミラーゼ-プルラナーゼ法を確立した。」(653ページ右欄)
「
」(654ページ)
「
」(654ページ)
2 引用例1を主引用例として
(1) 本件発明1について
ア 対比
引用発明1-1の枝豆の原料について、AGS292の枝豆の品種は鶴の子系といえること(引用例4の74ページ)、鶴の子の品種は普通種であることは、それぞれ当分野における技術常識といえる(異議申立4の平成30年4月13日付け意見書に添付された甲第12号証:札幌市HPに掲載されている同市農業支援センターの試験栽培の結果報告の1つである「エダマメの品種地域適応性試験」(https://www.city.sapporo.jp/keizai/nogyo/center/seiseki/seiseki.html)等参照。)。また、枝豆は、種皮の違いから普通種、茶豆、黒豆に区別されており(本件特許明細書【0015】)、緑光系は、緑色の濃いものであることからも(上記「(3) 引用例4に記載された事項」参照。)、普通種といえるものである。
そうすると、本件発明1と引用発明1-1とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点1)
「加熱調理用の冷凍枝豆であって、該枝豆が普通種の枝豆であり、凍結処理が行われるものである、冷凍枝豆。」
(相違点1)
本件発明1は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度が60~80%である」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(当審注:以下当該測定条件を「測定条件A」という。)と特定されているのに対して、引用発明1-1は、そのような特定はなされていない点。
(相違点2)
本件発明1は、「凍結処理が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明1-1は、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
引用発明1-1の糊化度については、以下のとおり、本件発明の糊化度の範囲内のものと認められる。
本件特許明細書には、次の記載がある。
「【0015】
本発明の冷凍枝豆の原料として用いられる枝豆については、その起源、産地、種類及び品種は特に制限されない。枝豆の種類は、種皮の違いから普通種、茶豆、黒豆に区別されるが、いずれのものも用いることができる。普通種の枝豆としては、例えば大袖の舞、サッポロミドリ、味緑、湯あがり娘等が挙げられる。・・・」
「【0021】
枝豆は、その糊化度が45~85%の状態になるまで加熱することができる。枝豆の糊化度の好ましい範囲は50~85%、より好ましい範囲は50~80%、さらに好ましい範囲は60~80%である。このような糊化度の範囲は、枝豆の食感に特に必要な歯切れを良好な状態にさせ得ることから、冷凍枝豆の製造において枝豆にとって特有の糊化度であるといえる。・・・」
「【0022】
枝豆の糊化度を上記範囲内にさせる加熱条件は、使用する枝豆の種類や品質等、又は加熱の方法等によって異なる。例えば、ボイルにより加熱する場合であれば、枝豆の加熱時間は、通常60~150秒間、好ましくは90~120秒間である。枝豆の品種として味緑を使用し、ボイルにより加熱する場合であれば、その加熱時間は、通常60~120秒間、好ましくは90~120秒間である。湯あがり娘を使用する場合は、ボイルによる加熱時間は、通常90~150秒間、最も好ましくは120秒間である。また、蒸すことにより加熱する場合は、枝豆の加熱時間は、通常90~180秒間、好ましくは120~180秒間である。品種として湯あがり娘を使用し、蒸すことにより加熱する場合は、その加熱時間は、通常120~180秒間、好ましくは150~180秒間である。枝豆の加熱条件は、当業者により適宜設定することができる。」
上記各記載を参酌すると、味緑、湯上がり等の普通種の枝豆は、それらの共通するブランチング時間として90~120秒程度行えば、糊化度60~80%となるものと認められる。
そうすると、引用発明1-1においても、AGS292、緑光305、鶴の子205等の普通種の枝豆をレギュラーブランチング:1.5~2.5分を行うものであるから、測定条件Aにて測定した場合の枝豆の糊化度は、60~80%の範囲内にある蓋然性は極めて高いといえる。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1が実質的な相違点だとしても、引用例1には、レギュラーブランチング:1.5~2.5分の他に、セミロングブランチング:3分前後の開示もあることや、ブランチングの時間は、食感を考慮して適宜調整されるものであること(上記引用例6、13、18の記載事項参照)を考慮すると、引用発明1-1においてブランチング時間を食感の良いといえる範囲に調整し、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2について
引用例1には、「 ○2 製造工程
選別-水洗-ブランチング-冷却-水切り-凍結-バルク保管-計量-包装-金属・重量チェック」と記載されていて、凍結処理が、製造工程中に1度行うものが記載されていると認められる。
そうすると、引用発明1-1における「凍結処理」は、「1回のみ行われるものである」といえ、また、仮にそうでないとしても、凍結処理を1回のみとすることに困難性は認められない。
(ウ) そうすると、本件発明1は、引用発明1-1であるか、あるいは、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2について
本件発明2と引用発明1-1とを対比すると、本件発明2は「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである」のに対し、引用発明1-1は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
しかしながら、引用発明1-1の冷凍枝豆を加熱調理したものは、糊化度が60~80%の範囲からさらに上昇することは技術的に明らかであり、そうすると、本件発明2は、引用発明1-1であるか、あるいは、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明3について
本件発明3と引用発明1-1とを対比すると、本件発明3は「ボイル又は電子レンジによる加熱調理用である」のに対し、引用発明1-1は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
しかしながら、冷凍枝豆の加熱調理方法として、ボイル又は電子レンジによることは、本出願前に周知の事項であるので(上記引用例3、6、18、22等参照。)、本件発明3は、引用発明1-1であるか、あるいは、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明4~6について
本件発明4~6と引用発明1-1とを対比すると、本件発明4~6は、それぞれ、「枝豆を加熱調理することが記載されている包装体」、「枝豆を糊化度90~100%の状態まで加熱調理することが包装体に記載されている」、「ボイル又は電子レンジにより枝豆を加熱調理することが包装体に記載されていること」を特定した「冷凍食品」である点で、引用発明1-1とは、さらに相違する。
しかしながら、冷凍枝豆を包装体に包装して冷凍食品とすることは、本願出願前に周知の事項であり、また、包装体に調理条件を記載することは、普通のことであるから、上記各相違点は、実質上の相違点といえるものではないか、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明4~6は、引用発明1-1であるか、あるいは、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件発明7について
ア 対比
本件発明7と引用発明1-2とを対比するに、引用発明1-2の「レギュラーブランチング:1.5~2.5分を行」うことと、本件発明7の「糊化度60~80%の状態まで加熱する工程」とは、「加熱する工程」を有する限りで共通する。
さらに、引用発明1-2の「(レギュラーブランチング:1.5~2.5分を行い、冷却して約10℃まで冷却を行い、)その後凍結する」工程を含むことは、本件発明7の「(加熱する工程、及び)該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む」ことに相当する。
そして、上記「(1) 本件発明1について」で検討した事項を踏まえと、両者は、以下の点で一致し、相違する。
(一致点2)
「普通種の枝豆を加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法。」
(相違点3)
本件発明7は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(「測定条件A」)と特定されているのに対して、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点4)
本件発明7は、「凍結工程が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア) 相違点3について
上記相違点1についての判断と同様に、引用発明1-2において、普通種である「AGS292、緑光305、鶴の子205等の品種を用い」て、「レギュラーブランチング:1.5~2.5分を行」うことは、「糊化度60~80%の状態まで加熱する」ことに相当するか、あるいは、当業者が容易に想到し得たことであるから、相違点3は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、本件発明7は、「製造方法」に係る発明ではあるが、糊化度を測定することは、製造方法のプロセスとして特定された事項ではないから、糊化度を測定するか否かは、本件発明7と引用発明1-2の相違点となるものではない。
(イ) 相違点4について
相違点4についての判断は、上記相違点2についての判断と同様であり、引用発明1-2における「凍結処理」は、「1回のみ行われるものである」といえ、また、仮にそうでないとしても、凍結処理を1回のみとすることに困難性は認められない。
(ウ) そうすると、本件発明7は、引用発明1-2であるか、あるいは、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明9について
本件発明9と引用発明1-2とを対比すると、本件発明9は「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである」のに対し、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
そして、当該相違点及びその判断については、上記「2(2) 本件発明2について」と同様であり、したがって、本件発明9は、引用発明1-2であるか、あるいは、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7) 本件発明10について
本件発明10と引用発明1-2とを対比すると、本件発明10は「加熱調理がボイル又は電子レンジにより行われる」のに対し、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
そして、当該相違点及びその判断については、上記「2(3) 本件発明3について」と同様であり、したがって、本件発明10は、引用発明1-2であるか、あるいは、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8) 本件発明11について
ア 対比
本件発明11と引用発明1-2とを対比するに、両者は、上記「2(1) 本件発明1について」及び「2(5) 本件発明7について」で検討した事項を踏まえると、以下の点で一致し、相違する。
(一致点3)
「普通種の枝豆を加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆に係る方法。」
(相違点5)
本件発明11は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(「測定条件A」)と特定されているのに対して、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点6)
本件発明11は、「凍結工程が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点7)
加熱調理用の冷凍枝豆に係る方法について、本件発明11は、「食感の向上方法」であるのに対して、引用発明1-2は、「製造方法」である点。
イ 判断
(ア) 相違点5について
上記相違点3についての判断と同様に、相違点5は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点6について
相違点6についての判断は、上記相違点2についての判断と同様であり、引用発明1-2における「凍結処理」は、「1回のみ行われるものである」といえ、また、仮にそうでないとしても、凍結処理を1回のみとすることに困難性は認められない。
(ウ) 相違点7について
「相違点1について」で検討したとおり、ブランチングの時間は、食感の改善を考慮して適宜調整されるものであること(引用例6、13、18参照)を踏まえ、引用発明1-2で得られる冷凍枝豆は、喫食時の食感が向上していることは明らかである。
そうすると、引用発明1-2は、食感の向上方法ともいうことができ、相違点7は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ) そうすると、本件発明11は、引用発明1-2であるか、あるいは、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9) 本件発明12について
本件発明12と引用発明1-2とを対比すると、本件発明12は「歯切れ感の向上方法」であるのに対し、引用発明1-2は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
そして、一般に野菜の冷凍食品における食感として、歯切れの良さ(clipness)も考慮されていることを踏まえると(引用例14参照)、上記「2(8) 本件発明11について」と同様に、本件発明12は、引用発明1-2であるか、あるいは、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 引用例3を主引用例として
(1) 本件発明1について
ア 対比
引用発明3-1の枝豆の原料である「玉すだれ」の品種が、普通種であることは、当分野における技術常識といえる(異議申立4の平成30年4月13日付け意見書に添付された甲第12号証:札幌市HPに掲載されている同市農業支援センターの試験栽培の結果報告の1つである「エダマメの品種地域適応性試験」(https://www.city.sapporo.jp/keizai/nogyo/center/seiseki/seiseki.html)等参照。)。
また、引用発明3-1の冷凍枝豆の「解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでる」ことは、本件発明1の「冷凍枝豆」が「加熱調理用」であることに相当する。
さらに、引用発明3-1の「1分間水冷した後液体窒素で急速凍結」することと、本件発明1の「冷凍処理が1回のみ行われる」こととは、「冷凍処理が行われる」限りで共通する。
そうすると、本件発明1と引用発明3-1とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点4)
「加熱調理用の冷凍枝豆であって、該枝豆が普通種の枝豆であり、凍結処理が行われるものである、冷凍枝豆。」
(相違点8)
本件発明1は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度が60~80%である」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(「測定条件A」)と特定されているのに対して、引用発明3-1は、そのような特定はなされていない点。
(相違点9)
本件発明1は、「凍結処理が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明3-1は、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア) 相違点8について
上記相違点1についての判断と同様に、相違点8は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点9について
引用発明3-1は、「冷凍処理は莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチングし、1分間水冷した後液体窒素で急速凍結」するもので、当該凍結処理は、その製造工程中1回のみ行われているものと認められる。
そうすると、引用発明3-1における「凍結処理」は、「1回のみ行われるものである」といえ、また、仮にそうでないとしても、凍結処理を1回のみとすることに困難性は認められない。
(ウ) そうすると、本件発明1は、引用発明3-1であるか、あるいは、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2について
本件発明2と引用発明3-1とを対比すると、本件発明2は「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである」のに対し、引用発明3-1は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
しかしながら、引用発明3-1は、「解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでる」ものであり、このように加熱調理した冷凍枝豆は、糊化度が60~80%の範囲からさらに上昇することは技術的に明らかである。
そうすると、本件発明2は、引用発明3-1であるか、あるいは、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明3について
本件発明3と引用発明3-1とを対比すると、引用発明3-1の「解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでる」ことは、本件発明3は「ボイル又は電子レンジによる加熱調理用である」ことに相当する。
そうすると、本件発明3は、引用発明3-1であるか、あるいは、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明4~6について
本件発明4~6と引用発明3-1とを対比すると、本件発明4~6は、それぞれ、「枝豆を加熱調理することが記載されている包装体」、「枝豆を糊化度90~100%の状態まで加熱調理することが包装体に記載されている」、「ボイル又は電子レンジにより枝豆を加熱調理することが包装体に記載されていること」を特定した「冷凍食品」である点で、引用発明3-1とは、さらに相違する。
しかしながら、冷凍枝豆を包装体に包装して冷凍食品とすることは、本願出願前に周知の事項であり、また、包装体に調理条件を記載することは、普通のことであるから、上記各相違点は、実質上の相違点といえるものではないか、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明4~6は、引用発明3-1であるか、あるいは、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明7について
ア 対比
引用発明3-2の「莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチング」する工程と、本件発明7の「糊化度60~80%の状態まで加熱する工程」とは、「加熱する工程」を有する限りで共通する。
引用発明3-2の「(冷凍処理は莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチングし、1分間水冷した後)液体窒素で急速凍結する」ことは、本件発明7の「(加熱する工程、及び)該工程により加熱した枝豆を凍結する工程」に相当する。
そして、上記「3(1) 本件発明1について」で検討した事項を踏まえると、両者は、以下の点で一致し、相違する。
(一致点5)
「普通種の枝豆を加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆の製造方法。」
(相違点10)
本件発明7は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(「測定条件A」)と特定されているのに対して、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点11)
本件発明7は、「凍結工程が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア) 相違点10について
上記相違点8についての判断と同様に、引用発明3-2において、普通種である「玉すだれ」を用いて、「莢豆を27~28倍量の沸騰水に入れ2分間(再沸騰まで約30秒)ブランチング」することは、「糊化度60~80%の状態まで加熱する」ことに相当するか、あるいは、当業者が容易に想到し得たことであるから、相違点10は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点11について
引用発明3-2は、「ブランチングし、1分間水冷した後液体窒素で急速凍結する、冷凍枝豆の製造方法」であるので、「凍結処理」は、「1回のみ行われるものである」といえ、また、仮にそうでないとしても、凍結処理を1回のみとすることに困難性は認められない。
(ウ) そうすると、本件発明7は、引用発明3-2であるか、あるいは、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明9について
本件発明9と引用発明3-2とを対比すると、本件発明9は「加熱調理が、前記測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の枝豆の糊化度を90~100%とするものである」のに対し、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
そして、当該相違点及びその判断については、上記「3(2) 本件発明2について」と同様であり、したがって、本件発明9は、引用発明3-2であるか、あるいは、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7) 本件発明10について
本件発明10と引用発明3-2とを対比すると、引用発明3-2の「解凍は27~30倍量の沸騰水中で2分半ゆでる」ことは、本件発明10の「加熱調理が、ボイル又は電子レンジにより行われる」ことに相当する。
そうすると、本件発明10は、引用発明3-2であるか、あるいは、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8) 本件発明11について
ア 対比
本件発明11と引用発明3-2とを対比するに、両者は、上記「3(1) 本件発明1について」及び「3(5) 本件発明7について」で検討した事項を踏まえると、以下の点で一致し、相違する。
(一致点6)
「普通種の枝豆を加熱する工程、及び該工程により加熱した枝豆を凍結する工程を含む、加熱調理用の冷凍枝豆に係る方法。」
(相違点12)
本件発明11は、「以下の測定条件にてβアミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した場合の糊化度60~80%の状態まで加熱する」とされ、その測定条件として、「試料に10倍重量の99%エタノールを加えホモゲナイズし、次いで濾過により固形分を回収する。これを再度繰り返した後、固形分にアセトンを加え攪拌、濾過し、固形分を減圧乾燥させ脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料1000mgに10mLの蒸留水を加え、よく攪拌して分散させる。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各2ml上清を分取する。完全糊化試料は10N-NaOH溶液を0.2mL加えて室温で30分間放置した後、1mLの2N酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて25mlに定容する。 それぞれの試料から4mlずつ試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.8U/ml,プルラナーゼ3.4U/ml)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時にブランク試験用に検体試料から4ml分取し、失活酵素溶液1mlを加えた区をつくる。各試料について、酵素反応終了後、100℃で5分間熱処理をし、酵素を失活させる。その後、1mlを分取しソモギーネルソン法で還元糖量を測定し、同じく0.5mlを分取しフェノール硫酸法で全糖量を測定する。尚、ブランク試験では還元糖量のみを測定する。
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100
糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100」(「測定条件A」)と特定されているのに対して、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点13)
本件発明11は、「凍結工程が1回のみ行われるものである」のに対して、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点。
(相違点14)
加熱調理用の冷凍枝豆に係る方法について、本件発明11は、「食感の向上方法」であるのに対して、引用発明3-2は、「製造方法」である点。
イ 判断
(ア) 相違点12について
相違点12についての判断は、上記相違点10についての判断と同様であり、相違点12は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点13について
相違点13についての判断は、上記相違点11についての判断と同様であり、相違点13は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) 相違点14について
加熱調理用の冷凍枝豆に係る違点14についての判断は、上記相違点7についての判断と同様であり、相違点14は、実質的な相違点といえないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ) そうすると、本件発明11は、引用発明3-2であるか、あるいは、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9) 本件発明12について
本件発明12と引用発明3-2とを対比すると、本件発明12は「歯切れ感の向上方法」であるのに対し、引用発明3-2は、そのような特定はなされていない点で、両者はさらに相違する。
そして、一般に野菜の冷凍食品における食感として、歯切れの良さ(clipness)も考慮されることを踏まえると(引用例14参照)、上記「3(8) 本件発明11について」と同様に、本件発明12は、引用発明3-2であるか、あるいは、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 取消理由(特許法36条6項1号、4項1号)についての判断
上記「第4 取消理由の概要」で示した取消理由3、4について、次に検討する。
1 特許法36条6項1号について
(1) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(【0008】)からすると、本件発明が解決しようとする課題は、「本発明は、喫食時の食感(特に、歯切れ)が優れた冷凍枝豆を提供すること」である。
(2) そして、 実施例において、枝豆の凍結前の加熱方法について、具体的に検討された枝豆の品種に関して、次の記載がなれている。
「【0035】
(1)枝豆の凍結前加熱の検討
枝豆を凍結する前の加熱時間を30~210秒間として、凍結後の枝豆を評価した。具体的には図2に示したフローに従って枝豆(品種:「味緑」(群馬県産))を処理し、加熱は98±2℃の熱水を用いたボイルにより行い、凍結前後の加熱時間を合計で210秒間となるようにした。枝豆の評価は、凍結された枝豆を解凍した後(評価1)、解凍した枝豆を加熱した後(評価2)、及び評価2で加熱した枝豆をさらに凍結した後(評価3)に行った。
【0036】
評価1及び評価2では、枝豆の物性(歯切れ)及び糊化度を測定した。以下に、詳細な方法を示す。」
「【0044】
(3)凍結前の加熱方法の検討
枝豆の品種として、味緑(群馬県産)、埼玉県産枝豆(ブランドなし)、及び湯あがり娘(群馬県産)を用い、特に湯あがり娘についてはボイルによる凍結前加熱と蒸すことによる凍結前加熱とを行って、図6に示したフローに従って枝豆の処理を行った。凍結された枝豆は、一旦流水解凍して、その後ボイルにより加熱して、上記(2)と同様に食感総合の官能評価を行った(但し、VIIは解凍後加熱をせずに評価した)。その結果を表3に示す。」
「【0046】
表3に示されたように、ボイルによる凍結前加熱においては、味緑は60~120秒間、埼玉県産枝豆は60~150秒間、湯あがり娘は90~150秒間の加熱時間が好ましく、上記(2)の結果と同様に枝豆の品種が異なることによって好ましい加熱時間も変わることが明らかとなった。また、凍結前の加熱方法として枝豆を蒸した場合は、ボイルにより加熱した場合に比べて好ましい加熱時間が30秒間ほど長くなることがわかった(120~180秒間)。これは、蒸すことによる加熱処理は、ボイルにより加熱する場合よりも、枝豆の昇温が遅いために生じることが考えられた。よって考えられる加熱条件は、例えば、ボイルにより加熱するのであれば通常60~150秒間、好ましくは90~120秒間である。また、蒸すことにより加熱するのであれば、通常90~180秒間、好ましくは120~180秒間である。」
これらの記載事項より、枝豆の喫食時の食感(特に、歯切れ)について、具体的に確認された枝豆の品種は、味緑(群馬県産)、埼玉県産枝豆(ブランドなし)、及び湯あがり娘(群馬県産)の3種類のものである。
(3) しかしながら、普通種の枝豆としては、本件特許明細書で例示された、大袖の舞、サッポロミドリ、味緑、湯あがり娘(本件特許明細書【0015】)に加えて、相当多数の品種が存在することが技術常識であるところ(異議申立4の平成30年4月13日付け意見書に添付された甲第12号証:札幌市HPに掲載されている同市農業支援センターの試験栽培の結果報告の1つである「エダマメの品種地域適応性試験」(https://www.city.sapporo.jp/keizai/nogyo/center/seiseki/seiseki.html)等参照)、仮に、ボイル時間と糊化度の関係が、品種によって顕著に異なるとすれば、糊化度と食感の関係も、品種によって異なると推認されるから、本件特許明細書で確認された、品種を特定できる味緑(群馬県産)及び湯あがり娘(群馬県産)以外の相当多数の普通種の品種の全てにおいて、食感について上記課題が解決できるという根拠があるとはいえない。
そうすると、本件特許明細書に記載された事項から、本件発明で特定する「普通種の枝豆」とまで拡張乃至一般化できないことは明らかである。
よって、発明の詳細な説明に記載された実施例からは、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1~7、9~12まで拡張ないし一般化することができるものとは認められず、本件発明1~7、9~12は、発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである。
2 特許法36条4項1号について
上記1に述べたことを考慮すると、品種の特定できる味緑(群馬県産)及び湯あがり娘(群馬県産)以外の普通種の枝豆において、発明の詳細な説明に記載された実施例と同様の効果が得られるのか、技術常識に基づいても当業者が理解することができないから、発明の詳細な説明の記載からでは、当業者が本件発明1~7、9~12の実施をすることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1~7、9~12に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~7、9~12に係る特許は、同法36条6項1号又は同条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
さらに、上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、請求項8は削除され、本件特許の請求項8に対して、特許異議申立人がした本件特許異議の申立てについては、その対象となる請求項が存在しない。
したがって、本件特許の請求項8についての本件特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法120条の8で準用する同法135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700826