特許異議申立
2017-700683
積層ポリエステルフィルム
- 審判番号
- 2017-700683
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-133161外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月10日
- 審決日
- 2018年03月08日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】岡田 数彦
- 【異議申立人】笠原 佳代子
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第4項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6058086号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6058086号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。
特許第6058086号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6058086号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成22年7月23日を出願日とする特願2010-165722号の一部を新たな特許出願とした特願2014-67544号の一部を、平成27年7月2日に新たな特許出願としたものであって、平成28年12月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年7月10日に、その請求項1~7に係る特許について、特許異議申立人笠原佳代子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年9月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年11月7日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)がなされ、平成29年12月18日付けで申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正は、明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付の訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正するもので、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正個所を示す。)。
(1)訂正事項1
請求項1に「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布層」とあるのを、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)」に訂正する。
以下、「塗布液から形成された」を追加する訂正を「訂正事項1a」といい、「(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)」を追加する訂正を「訂正事項1b」という。
(2)訂正事項2
請求項4に「塗布層」とあるのを、「塗布液」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項5に「絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層中に、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する請求項1~4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下であり、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」に訂正する。
以下、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし独立形式請求項とする訂正を「訂正事項3a」といい、「塗布液から形成された」を追加する訂正を「訂正事項3b」という。
(4)訂正事項4
請求項7に「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布層」とあるのを、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)」に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0009】に
「すなわち、本発明の要旨は、ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布層、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム、およびケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に設け、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層をインラインコーティングによって形成することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法に存する。」とあるのを、
「すなわち、本発明の要旨は、(1)ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム、(2)ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下であり、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム、(3)およびケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)をポリエステルフィルムの一方の面に設け、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層をインラインコーティングによって形成することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法に存する。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1a
(ア)訂正の目的について
訂正事項1aは、訂正前の請求項1の「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物」を含有するのが、乾燥前の塗布層すなわち塗布液であるのか、乾燥後の塗布層であるのか、明確でなかったのを、前者に明確化する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項について
訂正事項1aに関連して、本件特許の明細書の段落【0107】には「実施例1:…この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A1を塗布し(第1塗布層の形成)、…」、段落【0108】には「実施例2~16:
実施例1において、塗布剤組成を表1および表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。」と記載され、段落【0113】の表1には化合物I、IIおよびIIIA又はIIIBを含有する塗布液A1~A6が記載されている。そして、化合物I~IIIBについて、段落【0101】に「・ポリビニルアルコール:(I) ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール」、段落【0102】に「・イソシアネート系化合物:(II)」、段落【0103】に「・ポリエステル樹脂:(IIIA)」、「・ポリエステル樹脂:(IIIB)」と記載されているから、これらの記載に接した当業者であれば、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物」を含有するのが塗布液であり、「塗布層」は当該塗布液から形成されたものであることが、本件特許の明細書に記載されていると理解し得る。よって、訂正事項1aは、明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
a 訂正事項1aは、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物」を含有するのが塗布液か乾燥後の塗布層か明確でなかったのを、前者であることを明確にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
b 申立人は「上記訂正事項1aは、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、イソシアネート系化合物の各成分につき、訂正前は、塗工液の状態での各成分を意味しているのか、塗工液を乾燥硬化した状態での各成分を意味しているのか、不明確であったものを、塗工液の状態での各成分に変更するものである。
つまり、訂正前は、乾燥後である塗布層中の各成分について規定していると理解できる余地があったのに、これが、訂正後は、乾燥前の塗布液中の各成分に変更されている。これにより、訂正前には請求の範囲外であったものが、訂正後には請求の範囲内になる部分が発生する。…
従って、このような訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当し、許されない。」(意見書3頁3~17行)と主張する。
しかし、訂正前は、塗工液の状態での各成分を意味しているのか塗工液を乾燥硬化した状態での各成分を意味しているのか不明確であったのだから、訂正前のものがどちらかの意味に限定されていたということはできない。そして、訂正により意味が明確にされたのだから、そのような訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当しないものであることは明らかである。したがって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 訂正事項1b
訂正事項1bは、訂正前の請求項1の塗布層から、「当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合」を除外するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
また、上記訂正は、下記の甲第1号証に記載された「易接着層」との重なりのみを除外するものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項4の「ポリエステル樹脂」を含有するのが塗布液であることを明確化する訂正であるから、上記(1)アと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3a
訂正事項3aは、請求項1を引用していた訂正前の請求項5について、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しない独立形式の請求項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項3b
訂正事項3bは、請求項5において、訂正事項1aと実質的に同じ訂正をするものであるから、上記(1)アと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、請求項7において、訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものであるから、上記(1)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、上記訂正事項1、3、4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明【0009】の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5は、上記(1)、(3)、(4)に示したのと同じ理由により、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
さらに、訂正事項5に係る請求項1~7の全てについて訂正が請求されるているから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
(6)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~6は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 小括
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、本件訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層が熱硬化層である請求項1または2記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗布液中のポリエステル樹脂が親水性の官能基を含有する請求項1~3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層、接着剤層、偏光膜を、ポリエステルフィルムの一方の面に前記の順に有し、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下であり、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
イソシアネート系化合物が脂肪族または脂環族イソシアネート系化合物である請求項1~5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)をポリエステルフィルムの一方の面に設け、もう一方の面に、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層をインラインコーティングによって形成することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
2 取消理由の概要
平成29年9月6日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
理由1)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
記
〔刊行物〕
甲第1号証:特開2009-269302号公報
甲第2号証:特開2001-91705号公報
甲第3号証の1:特開2009-80256号公報
甲第3号証の2:特開2002-55205号公報
甲第3号証の3:特開2005-37927号公報
甲第3号証の4:特開2010-84067号公報
甲第4号証:特開平11-77933号公報
甲第5号証の1:特開平11-301104号公報
甲第5号証の2:特開平9-281333号公報
甲第6号証:特開2008-143009号公報
理由1)について
請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2、4~6号証に記載の事項及び周知技術(甲第3号証の1~4)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由2)について
理由2-1)について
請求項1、7には「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布層」と記載されている。しかし、この記載は、塗工液の状態で各成分を含有していたことを意味しているのか、塗工液を乾燥硬化した後の状態で各成分を含有していることを意味しているのか、明確でない。また、後者の場合については、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。
理由2-2)について
請求項1、7に記載された接着剤層は、接着剤の種類が特定されていない。しかし、本件特許の発明の詳細な説明において、優れた接着性が確認されているのは、ポリビニルアルコールの接着剤層のみである(段落【0093】、【0115】)。易接着層と接着剤層との接着性は、接着剤の種類にも依存することが技術常識(本件特許の発明の詳細な説明の段落【0005】「…接着剤によっては十分な接着性を確保することが困難なものである…」)であるから、上記ポリビニルアルコールの接着剤層を、エポキシ系化合物など他のあらゆる接着剤層にまで拡張ないし一般化できるとはいえない。
なお、上記取消理由通知は、本件特許異議の申立てにおいて申立てられた全ての申立理由を採用した。
3 引用発明
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも片面に易接着層を有する易接着性二軸配向ポリエステルフィルムであって、
前記易接着層が自己架橋性ポリウレタン樹脂を主たる構成成分とし、
ヘーズが7.0%以下であり、
150℃における熱収縮率が4.0%以下である、
易接着性二軸配向ポリエステルフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着性二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは、水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層との接着性に優れた易接着性二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリエチレンナフタレート(PEN)に代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等の優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において支持フィルムとして使用されている。特に、二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、透明性の点で優れ、帯電防止、反射防止、ハードコートなど各種機能層を設けた支持フィルムとして使用されている。
【0003】
二軸配向ポリエステルフィルムは、その表面が高度に結晶化されているために凝集力が強く、したがって、各用途毎の機能層との接着性に乏しい欠点がある。かかる欠点を解消するために、下記特許文献のように、ポリエステルフィルムの表面に結晶性の低いポリエステル層を共押出により積層する方法、易接着層として水分散性のポリエステル系樹脂やアクリル樹脂を塗布する方法等が提案されている。」
「【0005】
しかるに上記公知の方法において、易接着層としてポリエステル系樹脂、アクリル樹脂を使用した支持フィルムは、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂を主成分とする機能層との密着には適しているものの、ポリビニルアルコール(PVOH)、ゼラチン等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層との接着性に劣るという欠点がある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものである。すなわち、本発明の課題は、二軸配向ポリエステルフィルムの優れた寸法安定性と高い透明性を有しながら、水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層等に対する接着性に優れた易接層を有する易接着性ポリエステルフィルムを提供することにある。また、各種光学用途においても優れた光学特性を有する上記易接着性ポリエステルフィルムを提供することにある。」
「【発明の効果】
【0011】
本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、高い寸法安定性、透明性を有しながら、水溶性・親水性樹脂に対する優れた接着性を有する。また、本発明の好ましい実施態様としては、上記効果を有しながら、加熱加工においてもオリゴマーによる析出が少なく、高い透明性が保持される。また、本発明の好ましい実施態様としては、上記効果を有しながら、光学特性に優れ、虹むらなどの視認性において良好である。
【0012】
本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、好ましい実施態様として上記効果を有する為、インクジェット印刷インク受像層、偏光子保護フィルムに代表されるポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層、写真感剤フィルムに代表されるゼラチン等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層を設ける支持フィルムとして好適に使用することができる。」
「【0037】
(易接着層)
本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する。本発明では、該易接着層は、自己架橋性ポリウレタン樹脂を主たる構成成分とする。ここで、「主たる構成成分」とは、易接着層に含まれる全樹脂構成成分中として50%以上含有することを意味する。該易接着層は、水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸された塗布層であることが望ましい。…」
「【0040】
前記の塗布層を構成する自己架橋性ポリウレタン樹脂を生成するために、塗布液に添加されるポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物の原料として使用されるイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等、脂肪族系のイソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。塗布液に用いられる化合物としては水系であることが好ましく、水系ポリブロックイソシアネート化合物の原料として使用されるイソシアネート化合物としては、脂肪族系のイソシアネート化合物を使用したほうが、塗布層の経時安定性が向上するため好ましい。」
「【0043】
前記の塗布層には、前記の主成分以外の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコールなどのビニル樹脂、を本発明の効果に影響を与えない範囲で併用してもかまわない。中でも、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールを併用することが好ましい。…」
「【0059】
一軸配向ポリエステルフィルムの片面、若しくは両面に、上記に記載の方法で塗布液を塗布する。…」
「【0085】
次いで、水系ポリウレタン樹脂(DIC社製、ハイドランHW345)と
、水系ポリブロックイソシアネート化合物A(三井化学ポリウレタン社製、タケネートWB-920、TDI系ラクタムブロック型)を固形分質量比率 30/70 で混合し、…コート液(A)を調整した。…」
「【0087】
(実施例2)
水系ポリエステル(東洋紡績社製、バイロナール)と、水系ポリブロックイソシアネート化合物B(第一工業製薬社製、、亜硫酸塩ブロック型)と、水系ポリブロックイソシアネート化合物C(第一工業製薬社製、エラストロンBN11)と、帯電防止剤として半極性有機ホウ素化合物(ボロンインターナショナル社製、ハイボロン)を固形分質量比率 30/33/3/34 で混合し、…コート液(B)を調整した。…
【0088】
(実施例3)
水系ポリエステル(東洋紡績社製、バイロナール)と、前記製造例5により得られた水系ポリブロックイソシアネート化合物D(TDI系オキシムブロック型)とを固形分質量比率 40/60 で混合し、…コート液(C)を調整した。…
【0089】
(実施例4)
ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、ゴーセノールGL-05)と、水系ポリブロックイソシアネート化合物B(第一工業製薬社製、、亜硫酸塩ブロック型)とを固形分質量比率 35/65 で混合し、…コート液(D)を調製した。…」
「【0097】
(実施例12)
実施例1において外層Iと外層IIIをPET(C)のみに変更し、かつI層、II層、III層の厚さの比を7:86:7とし、キャスティングの速度を調整して未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に2.6倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
その後、実施例1に示すコート液(A)を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で両面に塗布し、乾燥した。その後、テンターに導き、予熱ゾーンにて110℃で約5秒間予熱した後、幅方向に120℃、延伸倍率4.3倍で延伸した。引き続き同一テンター内でフィルムを
定長で225℃の熱処理を行い、その後幅方向に2.0%弛緩処理を行い、フィルム温度をガラス転移温度以下まで冷却した後にクリップから外し、耳部をカットした後に通常のようにフィルムを巻き取り、厚み70μmの易接着性二軸配向ポリエステルフィルムを得た。」
「【0105】
本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、高い寸法安定性・透明性を有し、かつ、水溶性・親水性樹脂に対して優れた密着性を有する。そのため、包装材料、窓貼り材料、インクジェット記録材、代替紙、偏光子保護フィルム、写真感剤フィルム、液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・有機EL・電子ペーパーなどのディスプレイ部材などの基材フィルムとして好適に使用される。」
上記記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されている。
「水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を塗布して形成された、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に有し、偏光子保護フィルムに代表されるポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする帯電防止、反射防止、ハードコートなど各種機能層を設ける支持フィルムとして使用する、易接着性二軸配向ポリエステルフィルム。」(以下「引用発明A」という。)
「水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を、長手方向に延伸した一軸配向ポリエステルフィルムの両面に塗布、乾燥し、その後、幅方向に延伸し、熱処理を行う、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に有し、偏光子保護フィルムに代表されるポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする帯電防止、反射防止、ハードコートなど各種機能層を設ける支持フィルムとして使用する、易接着性二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。」(以下「引用発明B」という。)
4 判断
(1)取消理由1(進歩性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明Aとを対比すると、引用発明Aの「二軸配向ポリエステルフィルム」は、本件発明1の「ポリエステルフィルム」に相当する。また、引用発明Aの「易接着層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に有」する「易接着性二軸配向ポリエステルフィルム」は積層構造といえるから、本件発明1の「積層ポリエステルフィルム」に相当する。さらに、引用発明Aの「二軸配向ポリエステルフィルムの両面に」「塗布液を塗布して形成された」「易接着層」は、本件発明1の「ポリエステルフィルムの一方の面」の「塗布液から形成された塗布層」及び「もう一方の面」の「塗布層」
に相当する。
そうすると両者は、
「塗布液から形成された塗布層を、ポリエステルフィルムの一方の面に有し、もう一方の面に、塗布層を有する積層ポリエステルフィルム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1.
一方の面の塗布層が、本件発明1はケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)であるのに対して、引用発明Aは水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を塗布して形成された、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層である点。
相違点2.
一方の面の塗布層の上に、本件発明1は接着剤層、偏光膜をこの順に有するのに対して、引用発明Aは偏光子保護フィルムに代表されるポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする帯電防止、反射防止、ハードコートなど各種機能層を設ける点。
相違点3.
もう一方の面の塗布層が、本件発明1は絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層なのに対して、引用発明Aは水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を塗布して形成された、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層である点。
まず、相違点3について検討する。
引用発明Aは、「ポリビニルアルコール(PVOH)、ゼラチン等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層との接着性に劣る」という課題を解決するために「自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層」を設けたものであるから、ポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする機能層と接着することが前提となっている。そうすると、引用発明Aでは、反射防止の機能層として、ポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とするもののみが想定されているといえるが、甲第2号証の反射防止層はチタンテトラブトキシド(段落【0244】~【0247】)などであってポリビニルアルコール等ではないから、引用発明Aにおいてこれを採用しようとする動機づけがない。また、ポリビニルアルコール等の水溶性・親水性樹脂を主成分とする反射防止の機能層としての「絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層」は、甲第3号証の1~4や他の甲号証にも記載されておらず、また、仮に記載されていたとしても、引用発明Aで採用する場合には易接着層を介して接着するのだから、相違点3に係る本件発明1の構成「…もう一方の面に、…塗布層を有する…」とすることはできない。
したがって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明A及び甲第2~6号証記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明5について
本件発明5と引用発明Aとを対比すると、両者は少なくとも上記相違点3において相違する。そして、上記相違点3に係る本件発明5の構成は、上記アのとおり、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
したがって、本件発明5は、引用発明A及び甲第2~6号証記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明2~4、6について
本件発明2~4、6は、本件発明1又は5の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1、5についてと同様に、引用発明A及び甲第2~6号証記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明7について
本件発明7と引用発明Bとを対比すると、引用発明Bの「一軸配向ポリエステルフィルム」は、本件発明7の「ポリエステルフィルム」に相当する。また、引用発明Bの「易接着層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に有」する「易接着性二軸配向ポリエステルフィルム」は積層構造といえるから、本件発明7の「積層ポリエステルフィルム」に相当する。さらに、本件特許明細書の段落【0035】「インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。」との記載に照らせば、引用発明Bの「塗布液を、長手方向に延伸した一軸配向ポリエステルフィルムの両面に塗布、乾燥し、その後、幅方向に延伸し、熱処理を行う」ことで「易接着層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に有」するようにすることは、本件発明7の「ポリエステルフィルムの一方の面」に「塗布液から形成された塗布層」を設けること及び「もう一方の面」に「塗布層をインラインコーティングによって形成すること」に相当する。
そうすると両者は、
「塗布液から形成された塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に設け、もう一方の面に、塗布層をインラインコーティングによって形成する積層ポリエステルフィルムの製造方法。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4.
一方の面の塗布層が、本件発明7はケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(但し、当該塗布層に占める全樹脂構成成分中の自己架橋性ポリウレタン樹脂の含有量が50重量%以上である場合を除く)であるのに対して、引用発明Bは水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を塗布して形成された、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層である点。
相違点5.
もう一方の面の塗布層が、本件発明7は絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が2.5%以下である塗布層なのに対して、引用発明Bは水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、もしくはポリビニールアルコールと、ポリイソシアネート化合物、ポリブロックイソシアネート化合物とを含有する塗布液を塗布して形成された、自己架橋性ポリウレタン樹脂を全樹脂構成成分中として50%以上含有する易接着層である点。
そして、相違点5は、上記相違点3と実質的に同じ相違点であって、上記アのとおり、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明B及び甲第2~6号証記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)取消理由2-1(明確性、サポート要件)について
ア 上記第2のとおり本件訂正が認められることにより、本件発明の「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物」は塗布液に含有されることが明確となったことで、取消理由2-1は解消した。
イ 申立人は「「全樹脂構成成分」が何を指すのか不明であるため、発明全体として不明確である。」(意見書5頁9~10行)と主張する。
しかし、「全樹脂構成成分」は、その表記のとおり、構成成分のうち全ての樹脂成分を意味していると解するのが相当であり、また、甲第1号証の段落【0037】でも用いられているように、当該技術分野における通常の用語といえるから、「全樹脂構成成分」が何を指すのか不明ということはできない。したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)取消理由2-2(サポート要件)について
ア 本件発明が解決しようとする課題は「ポリエステルフィルム単体では、偏光膜と保護フィルムを接着させるために使用する接着剤との接着性が劣ること」(本件特許明細書の段落【0005】)であるから、本件発明の「接着剤」とはポリエステルフィルムとの接着性に劣る接着剤を意味していると解するのが相当である。そして、そのような接着剤としてポリビニルアルコールを例に、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層」を設けることで上記課題を解決したことが、段落【0093】、【0115】に記載されているから、当該記載に接した当業者であれば、「ケン化度が70mol%以上であるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、およびイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層」を有する本件発明が、上記課題を解決できることを認識できるといえる。
したがって、本件発明が、発明の詳細な説明の記載において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるということはできない。
イ 申立人は「本件特許の効果は、段落[0010]にあるように、「偏光膜を接着させるための接着剤との接着力が良好」である。上記特許権者の主張は、「ポリエステルフィルム単体」と比較した場合の接着力に話がすり替えられている。すなわち、上記特許権者の主張は、本件特許の効果である、塗布層があらゆる組成の接着剤との接着力が良好であることについての充分な裏付け(実験データによる裏付けや具体的な論理付け)についてなんら説明していない。」(意見書11頁4~9行)と主張する。しかし、本件発明の課題は上述したとおりであるから、申立人が指摘する効果の「…接着剤との接着力が良好」とは、ポリエステルフィルムとの接着力と比べて良好という程度の意味であることは明らかである。そして、本件発明では塗布層が介在することにより、ポリエステルフィルムとの接着性に劣る接着剤が、ポリエステルフィルムと直に接しなくなるのだから、接着力が改善するであろうことは明らかである。したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
上記(1)のとおり、本件発明1~7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできず、その特許は同法第113条第2号に該当しない。
また、上記(2)、(3)のとおり、本件発明1~7に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしているから、その特許は同法第113条第4号に該当しない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700683