特許異議申立
2017-700598
非発酵ビール風味ノンアルコール飲料
- 審判番号
- 2017-700598
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-115527
- 登録番号
- 特許第6042490号(P6042490)
- 請求日
- 2017年06月14日
- 審決日
- 2018年04月17日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【権利者代理人】山田 卓二
- 【権利者代理人】西下 正石
- 【異議申立人】三谷 拓也
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 山崎 勝司
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P1651.121-ZC (A23L) / P1651.537-ZC (A23L) / P1651.536-ZC (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6042490号発明「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6042490号の請求項1,3ないし9に係る特許を取り消す。
特許第6042490号の請求項2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯の概略
特許第6042490号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,概ね,以下のとおりである。
平成27年 6月 8日 特許出願
平成28年11月18日 設定登録
平成28年12月14日 特許掲載公報
平成29年 6月14日 特許異議申立書(特許異議申立人:三谷拓也)
平成29年 8月31日 取消理由通知書
平成29年11月 2日 意見書
平成29年12月 5日 取消理由通知書(決定の予告)
平成30年 2月 2日 意見書
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って,「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
発酵米エキスを不揮発分換算で1~300mg/100mL含有する非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項2】
前記発酵米エキスが乳酸発酵米エキスである請求項1に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項3】
pH3~4.2である請求項1又は2に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項4】
イソα酸を1mg/L以上含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項5】
非発酵ビール風味ノンアルコール飲料中のプリン体含有量が2mg/100mL以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項6】
非発酵ビール風味ノンアルコール飲料中の糖質含有量が2g/100mL以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項7】
水溶性食物繊維を含有する請求項1~6のいずれか一項に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項8】
非発酵ビール風味ノンアルコール飲料中の水溶性食物繊維含有量が不揮発分換算で5~50g/Lである請求項7に記載の非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項9】
非発酵ビール風味ノンアルコール飲料を製造する過程で得られる中間液に対し,発酵米エキスを不揮発分換算で1~300mg/100mL含有させる工程を包含する,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感を増強する方法。
第3 取消理由の概要
本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。
1 本件発明1~9は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(1) 乳酸発酵以外の発酵米エキスであっても,本件発明の課題を解決することができることを,当業者が認識できるものではないから,本件発明1,3~9は,発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである。
(2) いかなるpH値であっても,いかなる含有量のイソα酸であっても,不揮発分換算値として10~100mg/L含有量及び1000~3000mg/L含有量の発酵米エキスであっても,いかなる含有量のプリン体であっても,いかなる含有量の糖質であっても,いかなる含有量の水溶性食物繊維であっても,本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものではないから,本件発明は,発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである。
3 本件特許は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(1) 乳酸発酵以外の発酵形式で得られた発酵米エキスにおいて,発明の詳細な説明に記載された実施例と同様の効果が得られるのか,当業者が理解することができないから,発明の詳細な説明の記載からでは,当業者が本件発明1,3~9の実施をすることができない。
(2) 発明の詳細な説明に記載された実施例に係るpHの数値範囲外,イソα酸濃度の範囲外であっても,不揮発分換算値として10~100mg/L含有量及び1000~3000mg/L含有量の発酵米エキスであっても,いかなる含有量のプリン体であっても,いかなる含有量の糖質であっても,いかなる含有量の水溶性食物繊維であっても,実施例と同様の効果が得られることは,当業者が理解することができないから,発明の詳細な説明の記載からでは,当業者が本件発明の実施をすることができない。
(証拠方法)
甲第1号証:機能性表示食品に関する情報,商品名「パーフェクトフリー」,届出番号「A3」,2015年4月17日,[2017年6月13日検索]
<URL:http://www.caa.go.jp/foods/pdf/A3-kihon.pdf>
甲第1号証の2:消費者庁「新着情報2015年」のウェブページ(甲第1号証に係る新着情報が掲載されたウェブページ)の印刷物,[2017年6月14日検索]
<URL:http://www.caa.go.jp/action/archive/2015/#M04>
甲第1号証の3:消費者庁「届出詳細内容1~25」のウェブページ(甲第1号証が掲載されたウェブページ)の印刷物,[2017年6月14日検索]
<URL:http://www.caa.go.jp/foods/todoke_1-25.html>
甲第2号証:日本経済新聞・電子版記事「機能性表示食品,第1弾まず8件 清涼飲料やサプリ」のウェブページの印刷物,2015年4月17日,[2017年6月13日検索]
<URL:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H33_X10C15A4MM0000/>
甲第3号証:キリンビール株式会社「<参考資料>機能性表示食品のノンアルコール・ビールテイスト飲料「パーフェクトフリー」を新発売 ~「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」ダブル機能~」のウェブページの印刷物,2015年4月17日,[2017年6月13日検索]
<URL:http://www.kirin.co.jp/company/news/2015/0417_01.html>
甲第4号証:特開2014-168464号公報
甲第5号証:特開2013-255464号公報
甲第6号証:国際公開第2014/119064号
甲第7号証:国際公開第2014/119065号
甲第8号証:「初めての味と,新しい飲料文化への挑戦」,オッジ8月号,小学館,2013年6月28日,第22巻,第9号,p.237-240
甲第9号証:東京理科大学「リカのお仕事図鑑 キリンビバレッジ株式会社堀内桃子さん」のウェブページの印刷物,2012年,[2017年6月13日検索]
<URL:http://www.tus.ac.jp/rikanomoto/work/beverage/>
甲第10号証:キリンビール株式会社「“ポストアルコール飲料カテゴリー”に向けて,清涼飲料から新たな炭酸飲料領域を創造 「キリンの泡」3月20日(火)新発売 ~キリングループの独自技術を採用し,やわらかな甘みとやさしい泡の口あたりを実現~」のウェブページの印刷物,2012年2月16日,[2017年6月13日検索]
<URL:http://www.kirin.co.jp/company/news/2012/news2012021601.html>
甲第11号証:アサヒビール株式会社「“プリン体ゼロ”と“糖質ゼロ※1”が特長の発泡酒『アサヒ スーパーゼロ』販売好調につき販売目標を3倍に上方修正!」のウェブページの印刷物,2014年9月12日,[2017年6月13日検索]
<URL:https://www.asahibeer.co.jp/news/2014/0912_3.html>
甲第12号証:アサヒビール株式会社「“糖質ゼロ※1”発泡酒のパイオニア「スタイルフリー」ブランドから『アサヒスタイルフリー【プリン体ゼロ】』4月14日(火)新発売!」のウェブページの印刷物,2015年1月27日,[2017年6月13日検索]
<URL:https://www.asahibeer.co.jp/news/2015/0127_2.html>
甲第13号証:国際公開第2014/192357号
甲第14号証:特開平7-255438号公報
甲第15号証:特開平5-252929号公報
甲第16号証:特開平6-141828号公報
(以下,甲各号証を証拠の番号に従って「甲1」などという。)
第4 取消理由1(29条2項)について
1 甲1に記載された事項及び発明
(1) 甲1に記載された事項
・「●原材料名 難消化性デキストリン(食物繊維)・・・米発酵エキス・・・」
・「●アルコール分0.00% ●ビールテイスト飲料」
・「パーフェクトフリー」
・「栄養成分表示(製品1本/350ml当たり)
・・・糖質0g(糖類0g),食物繊維5.6g・・・」
(2) 甲1に記載された発明
甲1の記載からすると,甲1には以下の発明が記載されているといえる(以下,それぞれ「甲1発明1」,「甲1発明2」という。)
(甲1発明1)
「難消化性デキストリン(食物繊維),米発酵エキスを含有し,アルコール分0.00%,糖質含有量0g/350ml,食物繊維含有量5.6g/350mlのビールテイスト飲料」
(甲1発明2)
「米発酵エキスを含有させる工程を包含する,甲1発明1に係るビールテイスト飲料の製造方法」
2 甲4~13に記載された事項
(1) 甲4
・「【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり,キレを維持しつつ,コクが増強されたビールテイストノンアルコール飲料及びその製造方法を提供することを課題とする。」
(2) 甲5
・「【0062】
そこで,例えば,麦類原料液と他の原料との調合において,当該麦類原料液の使用比率を低減することにより,ノンアルコール飲料の甘味を低減することが考えられる。しかしながら,この場合,麦類原料液の使用比率を低減することにより,当該麦類原料液に由来するキレやコクといった香味が不十分なものとなる。」
(3) 甲6
・「[0001] 本発明は,発酵工程を経ずに製造され,プリン体濃度が非常に低いにもかかわらずビールとほぼ同様の香味を有する非発酵ビール様発泡性飲料に関する。」
・「[0007] 本発明は,プリン体濃度が非常に低いにもかかわらず,『ビールらしさ』,特にビール様の泡持ちや色度を保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供することを目的とする。」
・「[0049] 本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料が酸を含有する場合には,飲料のpHが3.0~4.0になるように,酸の添加量を調整することが好ましい。飲料に添加する酸の量が多すぎると,酸味が強調されてしまい,飲み辛くなる。酸の量を,飲料のpHが3.0~4.0程度になるように調節して添加することにより,製造される非発酵ビール様発泡性飲料において,香味のバランスをより改善させることができる。」
・「[0079]
・・・
[0081]
[0082] 表8~10に示すように,いずれの成分も,濃度に差はあるが,低濃度で添加した場合には添加の効果が官能上わからず,サンプル4-1と変わらないが,添加濃度を高くするにつれてビールらしさが高くなり,ある濃度でピークに達し,さらに添加濃度が高くなるにつれて特有の香気が強くなりすぎてビールらしさが低下する傾向が観察された。つまり,これらの16成分のうちの少なくとも1種類を適切な濃度で含有させることにより,ビールらしさがより強く付与されることがわかった。」
・「[0089][実施例9]
実施例7で製造したサンプル7-1に,苦味料として,硫酸マグネシウム,クエン酸トリブチル,クエン酸トリエチル,ナリンジン,又はクワシンを様々な濃度で添加し,ビールらしさについて官能評価を実施した。官能評価は,2名の専門パネルにより,サンプル7-1の評価を中心値4とした7段階評価(ビールらしさが感じられない場合を1とし,非常に強く感じられた場合を7とする。)にて行った。評価結果を表14に示す。この結果,いずれの苦味料を含有させた場合にも,濃度に差はあるが,低濃度では添加の効果がわからず,ベース液と変わらないが,添加濃度を高くするにつれてキレや苦味,刺激感が高まってビールらしさが高くなり,ある濃度でピークに達し,さらに添加濃度が高くなるにつれてエグ味や苦味が強くなりすぎてビールらしさが低下する傾向が観察された。つまり,前記香気成分を添加したサンプル4-1に,さらに硫酸マグネシウム,クエン酸トリブチル,クエン酸トリエチル,ナリンジン,又はクワシンの少なくとも1種類を含有させることにより,より強くビールらしさが付与されることがわかった。
[0090]
[0091][実施例10]
実施例7で製造したサンプル7-1に,さらに甘味系アミノ酸であるアラニンを様々な濃度で添加し,実施例1と同様にしてビールらしさを評価した。評価結果を表14に示す。この結果,アラニンを0.05g/L以上含有させることにより,ボディ感やコクが高まり,かつ適度な甘味が付与され,ビールらしさが強くなること,ただし,添加量が高くなりすぎると,甘味が強くなりすぎてビールらしさが低下することがわかった。」
・「[請求項1] 起泡剤及び色素を含有し,かつプリン体濃度が0.2mg/100mL以下である,非発酵ビール様発泡性飲料。」
(4) 甲7
・「[0008] 本発明は,プリン体濃度が非常に低いにもかかわらず『ビールらしさ』を保持している非発酵ビール様発泡性飲料を提供することを目的とする。」
・「[0075][実施例4]
実施例3で製造したサンプル3-1にエタノールを様々な濃度で添加したサンプル4-1~4-6を調製し,ビールらしさについて官能評価を実施した。官能評価は,2名の専門パネルにより,サンプル3-1の評価を中心値4とした7段階評価(ビールらしさが感じられない場合を1とし,非常に強く感じられた場合を7とする。)にて行った。評価結果を表8に示す。この結果,サンプル3-1に1~9容量%のエタノールを含有させることにより,さらにビールらしさが強く付与されることがわかった。
[0076]
・・・
[0079][実施例6]
実施例3で製造したサンプル3-1に,苦味料として,硫酸マグネシウム,クエン酸トリブチル,クエン酸トリエチル,ナリンジン,又はクワシンを様々な濃度で添加し,ビールらしさについて官能評価を実施した。官能評価は,2名の専門パネルにより,サンプル3-1の評価を中心値4とした7段階評価(ビールらしさが感じられない場合を1とし,非常に強く感じられた場合を7とする。)にて行った。評価結果を表10に示す。この結果,いずれの苦味料を含有させた場合にも,濃度に差はあるが,低濃度では添加の効果がわからず,ベース液と変わらないが,添加濃度を高くするにつれてキレや苦味,刺激感が高まってビールらしさが高くなり,ある濃度でピークに達し,さらに添加濃度が高くなるにつれてエグ味や苦味が強くなりすぎてビールらしさが低下する傾向が観察された。つまり,前記香気成分を添加したベース液に,さらに硫酸マグネシウム,クエン酸トリブチル,クエン酸トリエチル,ナリンジン,又はクワシンの少なくとも1種類を含有させることにより,より強くビールらしさが付与されることがわかった。
[0080]
[0081][実施例7]
実施例3で製造したサンプル3-1に,さらに甘味系アミノ酸であるアラニンを様々な濃度で添加し,実施例1と同様にしてビールらしさを評価した。評価結果を表10に示す。この結果,アラニンを0.05g/L以上含有させることにより,ボディ感やコクが高まり,かつ適度な甘味が付与され,ビールらしさが強くなること,ただし,添加量が高くなりすぎると,甘味が強くなりすぎてビールらしさが低下することがわかった。」
(5) 甲8
・「堀内さんは,味に複雑味や奥行きを出すために,発酵エキスを入れることを思いつく。果汁,麦-考えつくさまざまな材料を発酵させ,試作を重ねた。最終的にたどり着いたのが,米発酵エキス。・・・完成した『キリンの泡』ならではの,普通のジュースにはない重奏感のある味わいや,シャンパンのようなデリケートな泡は,こうしたさまざまな紆余曲折を経て生まれた。」(240頁2欄7~22行)
(6) 甲9
・「新商品の開発は,自由度の高いモノづくり
・・・私が開発に携わった『キリンの泡』という商品は,米こうじを使っています。・・・」
・「『キリンの泡』誕生ストーリー
アップルやグレープフルーツの風味に,ビールに使われるホップを組み合わせた大人の炭酸飲料。コク出しには米発酵エキスが使われており,堀内さんが学生時代に研究室で学んだ微生物の研究が,生かされている。」
(7) 甲10
・「『キリンの泡』は,芳醇なアップルの味わいとほのかなホップの香りが楽しめる,やさしい泡の口あたりが特長のカロリーオフの炭酸飲料です。・・・日本人になじみのある『米』を発酵させることでやわらかな甘みとやさしい泡の口あたりを実現し,・・・」
(8) 甲11
・「『アサヒスーパーゼロ』は,好調な機能性ビール類市場において,味を重視するお客様にむけて新たな価値を提案する発泡酒です。・・・新たな原料として“米乳酸発酵液※3”を採用することによって,ビールに近い本格的な飲みごたえを実現しました。
※3:米をエキス化し,乳酸発酵させた後にろ過して清澄化させたものです。乳酸発酵により,香り・味に複雑味やふくらみが付与されます。・・・」
・「【商品概要】
商品名 アサヒスーパーゼロ
品目 発泡酒
原材料 麦芽エキス,ホップ,カラメル色素,アルコール,食物繊維,米乳酸発酵液,酸味料,香料,乳化剤,調味料(アミノ酸),酸化防止剤(ビタミンC),甘味料(アセスルファムK)
・・・」
(9) 甲12
・「【商品概要】
商品名 『アサヒスタイルフリー【プリン体ゼロ】』
品目 発泡酒
原材料 麦芽エキス,ホップ,カラメル色素,アルコール,食物繊維,米乳酸発酵液,酸味料,香料,乳化剤,調味料(アミノ酸),酸化防止剤(ビタミンC),甘味料(アセスルファムK)
・・・」
(10) 甲13
・「[0001] 本発明は非発酵ビール風味飲料に関し,特に,非発酵ビール風味アルコール飲料及び非発酵ビール風味炭酸飲料に関する。」
・「[0053] 本発明の非発酵ビール風味飲料は,ビール特有の爽やかな苦味を再現するために,苦味物質を含有する。・・・苦味物質としては,ビールと同質若しくは近似する苦味を呈するものであれば特に限定されるものではなく,ホップ中に含まれている苦味成分であってもよく,ホップには含まれていない苦味成分であってもよい。当該苦味物質としては,具体的には,・・・イソα酸,・・・等の苦味付与成分,・・・苦味付与素材が代表的に挙げられる。特に,難消化性デキストリン添加によるべたつきを押さえてよりビールらしい風味を付与できることから,イソα酸が好ましい。
[0054] 単離したイソα酸を用いることができる。また,イソα酸はホップに含有されており,ホップまたはホップエキスとして用いることもできる。・・・
[0055] 本発明の非発酵ビール風味飲料に含まれるイソα酸の量は,濃度0.001g/l以上である。イソα酸の濃度が0.001g/l未満になると,難消化性デキストリンを含んだ非発酵ビール風味飲料の後味がべたつき,重くなる。」
3 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明1の「米発酵エキス」は,本件発明1の「発酵米エキス」に相当し,甲1発明1は「アルコール分0.00%・・・のビールテイスト飲料」であるから,技術常識に照らして,本件発明1と同様,「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料」である。
そうすると,本件発明1と甲1発明1とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点1)
「発酵米エキスを含有する非発酵ビール風味ノンアルコール飲料。」
(相違点1)
本件発明1は,「発酵米エキスを不揮発分換算で1~300mg/100mL含有する」のに対し,甲1発明1は,「米発酵エキス」の含有量が不明である点。
(2) 判断
ア そこで,上記相違点1についてみるに,ビール風味ノンアルコール飲料においてコク感やキレ感を改善することは周知の課題であると認められ(甲4~7(前記2(1)~(4))),甲1発明1においても内在する課題であるところ,当該課題に対応するために,成分の含有量について検討を加えることは当然である上,甲1発明1における「米発酵エキス」がコク感に影響を与える成分であることは,米由来の発酵物であることに鑑みれば,当業者が容易に理解できる。
また,発酵米エキスが,ホップが配合されたノンアルコール飲料において,コク味付与や重奏感のある味わいの実現に有効であること(甲8~10(前記2(5)~(7))),米麹による発酵米エキスがコク味付与に有効であること(甲9(前記2(6)))が知られており,従前,乳酸発酵米エキスはビール風味アルコール飲料に配合されており(甲11,12(前記2(8),(9))),乳酸発酵米エキスがビール風味アルコール飲料の香味付けに有効であることも知られていたものと認められる(甲11(前記2(8)))。
このように,発酵米エキスが飲料の風味の改善に有効であることが知られていたことも踏まえれば,甲1発明1において,コク感の改善のために「米発酵エキス」の含有量を調整することは,当業者が適宜になし得ることと認められ,不揮発分換算で1~300mg/100mL程度とすることがおよそ採用し得ないものとも解されないから,甲1発明1において,上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者にとって格別困難なこととは認められない。
イ 本件発明1の奏する効果についてみても,既に述べたとおり,甲1発明1における「米発酵エキス」がコク感に影響を与える成分であることは,当業者が容易に理解でき,甲1発明1から,当業者が予測し得る範囲内のものであって格別とは認められない。
この点に関し,特許権者は,実施例1の結果(表3)に基づいて本件発明1の効果を主張しているが(平成29年11月2日付け意見書3頁),実施例1は乳酸発酵米エキスを採用した場合の結果であって,発酵米エキスであれば,不揮発分換算で1~300mg/100mL含有させることで,当然に同様の効果を奏するとは認められないとともに,含有量の上限,下限に関しても格別の技術上の意義は認められない。
特許権者は,コク感の増強とは,具体的にはビールテイストの幅,ボディ感を向上させたことをいい,本件明細書の実施例の結果は,当業者であれば,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料の基本的な香味であるビールテイストに対し,米由来の醸造香が補充された結果,ビールテイストの幅,ボディ感及びキレ感が向上したものと理解する,本件明細書の記載から,ビールテイストの幅,ボディ感の要因は穀類の発酵成分にあることが理解されるので,特定濃度範囲の発酵米エキスであれば同様の効果を奏することも理解される,この点は麹菌で発酵させた米エキスに係る追加実験の結果によっても裏付けられているとも主張している(平成30年2月2日付け意見書2~7頁)。
しかしながら,発明の詳細な説明には,乳酸発酵米エキスを採用した実施例1~3以外に効果に関する具体的な記載はない。「発酵」には様々な種類があり,種類の応じて異なる風味や香味を生じさせるものであるから(甲14~16(後記第5・1(1))),非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感,キレ感に関し,米由来の発酵成分(醸造香)でありさえすれば,不揮発分換算で1~300mg/100mL含有させることで,実施例1と同様の効果を奏するとは解されず,この点が技術常識とも認められない。なお,発明の詳細な説明に開示されているとは認められない,事後的な追加実験の結果を参酌することはできない。
よって,本件発明1が,発酵米エキスを含有する甲1発明1に比し,格別な効果を奏するものとは認められない。
(3) 以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明1,甲8に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項(甲4~7)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件発明2について
本件発明2と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,本件発明2は「前記発酵米エキスが乳酸発酵米エキスである」のに対し,甲1発明1においては米発酵エキスの詳細が不明である点で,両者はさらに相違する。
そして,その他の証拠をみても,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感,キレ感の改善のために,乳酸発酵米エキスを含有させる点について開示はなく,本件発明2は,発酵米エキスが乳酸発酵米エキスであることによって,発明の詳細な説明の実施例1~3の結果からわかるように,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感,キレ感の改善効果を奏するものである。
よって,本件発明2は,甲1発明1,甲6,8に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
5 本件発明3について
本件発明3と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,両者はさらに以下の点で相違する。
(相違点2)
本件発明3は,「pH3~4.2である」のに対し,甲1発明1においてはその点が不明である点。
しかしながら,甲1発明1においても,ビールテイストとするために相応のpHとしていることが窺われ,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料において,香味のバランスを取るためにpHを3.0~4.0の範囲内に調整すべきことが,公知であったものと認められる(甲6[0049](前記2(3)))。
よって,本件発明3は,甲1発明1,甲6,8に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明4について
本件発明4と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,両者はさらに以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明4は,「イソα酸を1mg/L以上含有する」のに対し,甲1発明1においてはその点が不明である点。
しかしながら,甲1発明1は,ホップを含有することより,ビールテイストとするために相応のイソα酸を含有していることが窺われるとともに,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料において,イソα酸の量を1mg/L以上に調整すべきことが,公知であったものと認められる(甲13[0055](前記2(10)))。
よって,本件発明4は,甲1発明1,甲6,8,13に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 本件発明5について
本件発明5と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,両者はさらに以下の点で相違する。
(相違点4)
本件発明5は,「プリン体含有量が2mg/100mL以下である」のに対し,甲1発明1においてはその点が不明である点。
しかしながら,低プリン体の要請は広く知られ,プリン体濃度が0.2mg/100mL以下である非発酵ビール風味ノンアルコール飲料は,公知であったものと認められる(甲6[請求項1](前記2(3)))。
よって,本件発明5は,甲1発明1,甲6,8,13に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 本件発明6について
本件発明6と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明1は「糖質含有量0g/350ml」(=0g/100ml)であるから,糖質含有量に関し,両者は相違しない。
よって,本件発明6は,甲1発明1,甲6,8,13に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 本件発明7について
本件発明7と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明1は「難消化性デキストリン(食物繊維)」を含有するから,水溶性食物繊維を含有する点に関し,両者は相違しない。
よって,本件発明7は,甲1発明1,甲6,8,13に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
10 本件発明8について
本件発明8と甲1発明1とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明1は,「難消化性デキストリン(食物繊維)」を「5.6g/350ml」(=16g/L)含有するものであるところ,栄養成分表示として記載される成分は通常固形分換算(不揮発分換算と同義)の値で記載され,食物繊維中の固形分は90%以上であるのが通常であると認められるから,甲1発明1の食物繊維含有量は不揮発分換算で,少なくとも14.4g/Lであると認められる。
そうすると,食物繊維含有量に関し,本件発明8と甲1発明1とは相違しない。
よって,本件発明8は,甲1発明1,甲6,8,13に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
11 本件発明9について
(1) 対比
本件発明9と甲1発明2とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明2の「米発酵エキス」は,本件発明9の「発酵米エキス」に相当し,甲1発明2は「甲1発明1に係るビールテイスト飲料」,すなわち「アルコール分0.00%・・・のビールテイスト飲料」の製造方法であるから,本件発明9と同様に,「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料」に係る方法である。
そうすると,本件発明9と甲1発明2とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点2)
「発酵米エキスを含有させる工程を包含する,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料に係る方法。」
(相違点5)
本件発明9は,「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感を増強する方法。」であって,「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料を製造する過程で得られる中間液に対し,発酵米エキスを不揮発分換算で1~300mg/100mL含有させる工程を包含する」のに対し,甲1発明2は,「アルコール分0.00%・・・のビールテイスト飲料」の製造方法であって,中間液に対し含有させる点,具体的な含有量については不明である点。
(2) 判断
そこで,上記相違点5についてみるに,既に述べたとおり,甲1発明1において,「米発酵エキス」を不揮発分換算で1~300mg/100mL程度含有させることは,当業者にとって格別困難なこととは認められない(前記3)。
その場合,「米発酵エキス」を含有させない飲料に比べコク感が増強しているものと認められるから,甲1発明2は,「非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感を増強する方法。」であるということができる。
そして,本件発明9は,発酵米エキスを特定量含有させることを特徴とする,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料の製造方法と本質的に同じであるから,その意味において,甲1発明2は,本件発明9とその前提で異なるものではない。
さらに,甲1発明2において,中間液に対し「米発酵エキス」を包含させることは,当業者が適宜になし得ることである。
そうすると,甲1発明2において,上記相違点5に係る本件発明9の構成とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
本件発明9の奏する効果についてみても,本件発明1と同様,当業者が予測し得る範囲内のものであり格別ではない。
よって,本件発明9は,甲1発明2,甲8に記載された事項,甲9~12に係るウェブページに掲載された事項及び周知の技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 取消理由2(36条6項1号)及び取消理由3(36条4項1号)について
1 乳酸発酵以外の発酵米エキスについて(取消理由2(1),3(1))
(1) 発明の詳細な説明の記載(【0004】~【0007】)や請求項9の記載からすると,本件発明が解決しようとする課題は,特には,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料におけるコク感を向上させることにあると解される。
そして,実施例1において,乳酸発酵米エキスを不揮発分換算で10~3000mg/L(=1~300mg/100ml)の範囲で添加した場合に,乳酸発酵米エキスを含有しない対照に比べ,コク感が向上している点が開示され(【0054】~【0061】),実施例1は乳酸発酵米エキスを添加したものであるから,本件発明2に対応しているものと認められる。
しかしながら,甲14~16の次の記載によれば,「発酵」には様々な種類があり,種類に応じて異なる風味や香味を生じさせるものである。
(甲14)
・「【0021】表3から,対照との比較で分かるように,糖化物を濾過して乳酸発酵することによって,明らかに風味,香り共よくなり,かつ,飲み飽きしない飲料となる。また,実施例1,2と4,5とを比較して分かるように,糖化後,抽出操作を行うことによって,風味,香りがよくなる。また,実施例1と2,および4と5の比較から分かるように,酵母を添加し発酵を行うことによって,さらに香りがよくなる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)粉砕した玄米10kgに4リットルの水を散水した後,よく攪拌して30分間放置した。次いで,これを蒸米機により蒸した後,糖化酵素,脂肪分解酵素,繊維分解酵素,蛋白分解酵素をそれぞれ10gと水25リットルを加え,55℃で24時間反応させた。その後,圧搾濾過し,濾液25リットルと残渣9kgを得た。この濾液を85℃で10分間加熱殺菌した後,冷却し,液量の1/15量のラクトバチルス・アシドフィルスの培養液を添加して,37℃で24時間乳酸発酵を行った。これを濾過し,濾液を加熱殺菌して本発明製品27リットルを得た。
【0023】(実施例2)実施例1と同様にして乳酸発酵を行った後,温度を18℃に下げてサッカロミセス・セレビシエを添加して増殖を行なわせた。その後,アルコール濃度1%未満で増殖および発酵を停止し,これを濾過し,濾液を加熱殺菌して本発明製品27リットルを得た。
(実施例3)粉砕した玄米10kgを用い,実施例1と同様にして玄米の糖化物35kgを得た。その後,徐々に温度を上げていき,5分間煮沸抽出を行なった。この糖化,抽出物を冷却した後,圧搾濾過し,濾液を加熱殺菌して本発明製品26リットルと残渣8kgを得た。なお,本発明製品のアルコール度は0.7%であった。
【0024】(実施例4)実施例3と同様にして得た本発明製品に液量の1/15量のラクトバチルス・ブルガリクスの培養液を加え,37℃で24時間乳酸発酵を行った。これを濾過し,濾液を加熱殺菌して別の本発明製品28リットルを得た。
(実施例5)実施例4と同様にして得た本発明製品にサッカロミセス・セレビシエを添加して増殖を行い,アルコール濃度1%未満で増殖および発酵を停止,これを濾過し,濾液を加熱殺菌して本発明製品28リットルを得た。なお,本発明製品のアルコール度は0.8%であった。」
(甲15)
・「【0021】表1をみてもわかるように,本発明品には,全く清酒らしい風味はなく,また,香りにおいても全員が清酒とは異なりフルーツ様の香りがすると判定した。さらに,味においては,実施例1で得られた本発明品は,すっきりとしたさわやかなものであるとし,実施例2で得られた本発明品については,清酒にはないコクとうま味があり,どちらも清酒とは全く異なったおいしいものであると答えた。」
・「【0041】
【実施例】
実施例1
白米15kgを粉砕機により粉砕し,この粉砕米に水22.5リットル,アミラーゼ10gを入れ,5分間煮沸抽出を行なった。その後,抽出物を15℃まで冷却し,この抽出物に麹米7kg,乳酸150g,酵母を添加して発酵を行ない,2日後に,粉砕した白米30kgと水42リットル,アミラーゼ20gを上記の方法で抽出し,その抽出物と麹9kgを添加し,さらに3日後に,粉砕した白米60kgと水84リットル,アミラーゼ40gを上記の方法で抽出したものおよび麹米15kgを添加した。品温は12~15℃に保って糖化および発酵を行なった。14日後に,搾り機により60kgの粕を分離して本発明品240リットルを得た。
【0042】実施例2
白米20kgを精米機により微粉砕し,この微粉砕米に水40リットル,α-アミラーゼ,β-アミラーゼ,グルコアミラーゼ等の混合品10gを入れ,55℃で12時間放置した。その後,熱をかけていき5分間煮沸抽出を行なった。次いで25℃まで冷却し,抽出液37リットルと抽出残渣22kgに分離した。この抽出液37リットルに酵母を添加し,12℃で7日間発酵を行ない,本発明品36リットルを得た。」
(甲16)
・「【0012】表1から分かるように,酵母で発酵した本発明品は,全員がリンゴにも似たフルーツの香りがして風味が良いものであるとした。また,酵母で発酵しなくても,7人の人はほとんど酵母で発酵したものとかわらないとし,残り3人の人も酵母を添加したものと比べると劣ると答えた。それに比べ,甘酒は麹臭が強く,全員がよくないとした。
【0013】以上のように,本発明品は,非常に優れた風味を有し,しかも,酵母発酵することにより,さらに優れた風味になることが判明した。次に,全体のバランスをみるために,糖と酸のバランス,すっきりさについて,表1で用いた10名のパネラー(男5名,女5名)で官能評価を行い,その結果を表2に記載した。」
・「【0021】
【実施例】以下に実施例を記載する。
実施例1
白米7kgをよく洗米し,水に浸漬した後,水切りをし,これを蒸米機でα化した。この蒸米を充分に冷却した後,3℃に冷却した水を11リットル,米麹3kgを添加し,攪拌しながら品温を6℃に調整した。その後,品温6℃に保ちながら1日2回攪拌を行い,5日間放置した。6日目から1日に約1℃品温を上昇させ,1日2回の攪拌を行い,10日間放置した。16日目にしぼり機によりしぼり,本発明品9.5リットルと残査11kgを得た。分析値は表4のとおりである。
・・・
【0023】実施例2
実施例1で得られた本発明品5リットルを7℃まで冷却し,酵母を添加した。添加後,7℃を保ちながら2日間放置してから濾過を行い,本発明品5リットルを得た。分析値は表5のとおりである。」
そうすると,乳酸発酵以外の発酵米エキスであっても,実施例1と同様の効果を奏し,本件発明の課題を解決することができることを,当業者が認識できるものではない。
よって,発明の詳細な説明に記載された実施例からは,出願時の技術常識に照らしても,本件発明1,3~9まで拡張ないし一般化することができるものとは認められず,本件発明1,3~9は,発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである。
(2) また,乳酸発酵以外の発酵形式で得られた発酵米エキスにおいて,発明の詳細な説明に記載された実施例1と同様の効果が得られるのか,技術常識に基づいても当業者が理解することができないから,発明の詳細な説明の記載からでは,当業者が本件発明1,3~9の実施をすることができない。
(3) この点に関し,特許権者は,取消理由1に関すると同様の理由により,本件明細書の記載から,乳酸発酵以外の発酵米エキスであっても実施例1と同様の効果を奏し,本件発明の課題を解決することができることを当業者が認識でき,技術常識に基づいて理解できる,この点は追加実験の結果によっても裏付けられていると主張している(平成30年2月2日付け意見書7頁)。
しかしながら,既に述べたとおり,「発酵」には様々な種類があって,しかも異なる風味や香味を生じさせるものであるから,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料のコク感に関し,発酵米エキスでありさえすれば,不揮発分換算で1~300mg/100mL含有させることで,実施例1と同様の効果を奏するとは解されず,この点が技術常識とも認められない。発明の詳細な説明に開示されているとは認められない,事後的な追加実験の結果を参酌することもできない。
2 pH値,イソα酸,発酵米エキス,プリン体,糖質及び水溶性食物繊維の含有量について(取消理由2(2),3(2))
既に述べたとおり(前記1(1)),発明の詳細な説明に開示された実施例1の結果からすると,非発酵ビール風味ノンアルコール飲料に乳酸発酵米エキスを不揮発分換算で1~300mg/100ml含有させることにより,少なくとも対照に比べ,おいしさ,コク感が向上していることがわかる。
そして,実施例2,3の結果とともに発明の詳細な説明の記載を総合的にみれば,本件発明の課題との関係では,乳酸発酵米エキスを含有させることが重要であることがわかり,不揮発分換算で1~300mg/100ml含有させることによって,具体的に開示されたpH値やイソα酸等の含有量の範囲外においても同様の効果を奏し,課題を解決し得るものと認められる。
そうすると,乳酸発酵米エキスを含有する場合に関し(本件発明2),課題が解決できることを当業者が認識できるものと認められ,同様に,発明の詳細な説明の記載から,当業者が実施をすることができるものと認められる。
なお,乳酸発酵以外の発酵米エキスについては,既に述べたとおりである(前記1)。
第6 むすび
以上のとおり,本件発明1,3~9に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
また,本件発明1,3~9に係る特許は,同法36条6項1号又は同条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法113条4号に該当し,取り消されるべきものである。
本件発明2に係る特許は,取消理由及び特許異議申立理由により取り消すことはできない。他に本件発明2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700598