特許異議申立
2017-700390
長尺鋼管先受け工法
- 審判番号
- 2017-700390
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-207465
- 登録番号
- 特許第6009880号(P6009880)
- 請求日
- 2017年04月18日
- 審決日
- 2017年11月27日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社カテックス
- 【権利者代理人】小島 清路
- 【権利者代理人】平岩 康幸
- 【権利者代理人】鈴木 勝雅
- 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 前川 慎喜
- 分類
- P1651.113-YAA(E21D) / P1651.121-YAA(E21D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6009880号発明「長尺鋼管先受け工法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6009880号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6009880号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6009880号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成24年9月20日に特許出願され、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年6月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年8月31日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。なお、上記意見書及び訂正の請求に対し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは何らの応答もない。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記切羽前方に打設する鋼管は、軸方向長さが異なる複数の管を有し、複数の該鋼管の間で前記管の接合箇所が軸方向に異なる」と記載されているのを、「前記切羽前方に打設する鋼管は、軸方向長さが異なる複数の中間管を有し、前記複数の中間管の接合順序を異ならせることで、同一の前記切羽前方に打設する複数の該鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なる」に訂正する。
」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「同一の前記切羽前方に打設する複数の前記鋼管の間で前記管の接合箇所が軸方向に異なることを特徴とする請求項1記載」と記載されているのを、「前記切羽前方に打設する前記鋼管は、1本の先頭管、2本の前記中間管及び1本の端末管を有し、これら4本の管の全ては軸方向長さが異なり、同一の前記切羽前方に打設する複数の前記鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なることを特徴とする請求項1記載」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記トンネルの仰工から天端までの天地高さの1/2以下の距離で長尺鋼管先受けを施工することを特徴とする請求項1又は2に記載」と記載されているのを、「前記トンネルの仰工から天端までの天地高さの1/2以下の距離のシフト長で長尺鋼管先受けを施工することを特徴とする請求項1又は2に記載」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「前記切羽前方に打設する鋼管」において、該鋼管が有する「軸方向長さが異なる複数の管」を「軸方向長さが異なる複数の中間管」に限定し、さらに「中間管」に限定したことに伴って、「複数の該鋼管の間で前記管の接合箇所が軸方向に異なる」態様を、「前記複数の中間管の接合順序を異ならせることで、同一の前記切羽前方に打設する複数の該鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なる」態様に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は鋼管の構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明において、段落【0018】に「・・・上記切羽前方に打設する鋼管(7)は、軸方向長さが異なる複数の管(9)を有し、・・・打設する鋼管のうち中間管の長さを地山性状に合致させて変化させることで、鋼管剛性の弱点部を分散して、外力に対抗できるより信頼性の高い先受け工を提供できる。」と、段落【0019】に「・・・同一の切羽前方に打設する複数の鋼管(7)の間で管(9)の接合箇所(9a)を軸方向に異ならせたり、前回打設した鋼管(7’)と今回打設した鋼管(7)との間で管(9’、9)の接合箇所(9a’、9a)を軸方向に異ならせ・・・」と、さらに段落【0037】に「・・・軸方向長さの異なる複数の中間管9の接合順序を異ならせて鋼管7を構成して接合箇所9aを軸方向に異ならせる・・・」と記載されていることからみて、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「鋼管」について、「前記切羽前方に打設する前記鋼管は、1本の先頭管、2本の前記中間管及び1本の端末管を有し、これら4本の管の全ては軸方向長さが異な」ることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、鋼管の構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明において、段落【0024】に「上記鋼管7は、図2(a)(b)に示すように、先頭管8、中間管9、端末管10に区分される。本実施例では、先頭管8を3.8m~4.0mに設定し、中間管9については3.5mと2.5mを基本として奇数孔、偶数孔とで使い分ける。また端末管10は4.0mに設定する。」と、段落【0025】に「・・・鋼管割付は、先頭管8:3.8m、中間管9:3.5m×1本+2.5m×1本、端末管10:4.0mで計13.8mであり・・・」と記載され、また、図2を参照すると、切羽前方に打設する鋼管7が1本の先頭管8、2本の中間管9、9及び1本の端末管10を有し、これら4本の管8、9、9、10の全ては軸方向長さが異なる形態が看取できることからみて、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、「長尺鋼管先受け」を、「前記トンネルの仰工から天端までの天地高さの1/2の距離」で施工するものを、「前記トンネルの仰工から天端までの天地高さの1/2以下の距離のシフト長」で施工するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、長尺鋼管先受けの施工を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明において、段落【0015】に「・・・上記トンネルの仰工(6)から天端までの天地高さ(h)の1/2以下の距離で長尺鋼管先受けを施工する形態・・・適正な施工区間延長であるシフト長で施工できる。」と、段落【0025】に「・・・このシフト長(5.0m)は、トンネルの仰工6から天端までの天地高さhの1/2以下の距離とされている(図1(a)参照。」と記載されていることからみて、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~5において、請求項1の記載を請求項2~5の記載が直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1は、請求項1を訂正し、訂正事項2は、請求項2を訂正し、訂正事項3は、請求項3を訂正するものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、一群の請求項である。
よって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。
第3 訂正後の請求項1ないし5に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下「本件特許発明1」等といい、全体を「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
トンネルの掘削に先立って、切羽前方に放射状に打設した複数の鋼管内から周辺の地山に固化材を注入して先受けする長尺鋼管先受け工法において、
先受け区間の断面において、上下に二重以上の前記鋼管が配置されており、
前記切羽前方に打設する鋼管は、軸方向長さが異なる複数の中間管を有し、前記複数の中間管の接合順序を異ならせることで、同一の前記切羽前方に打設する複数の該鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なることを特徴とする長尺鋼管先受け工法。
【請求項2】
前記切羽前方に打設する前記鋼管は、1本の先頭管、2本の前記中間管及び1本の端末管を有し、これら4本の管の全ては軸方向長さが異なり、同一の前記切羽前方に打設する複数の前記鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なることを特徴とする請求項1記載の長尺鋼管先受け工法。
【請求項3】
前記トンネルの仰工から天端までの天地高さの1/2以下の距離のシフト長で長尺鋼管先受けを施工することを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺鋼管先受け工法。
【請求項4】
前記切羽前方に打設する鋼管は、前回打設した複数の鋼管のうちの隣り合う鋼管の間隔の中間位置から打設することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の長尺鋼管先受け工法。
【請求項5】
前記切羽前方に打設する鋼管は、呼び径が2.0インチ、2.5インチ、3.0インチ、4.0インチ、5.0インチのうちから選定できることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の長尺鋼管先受け工法。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、平成29年6月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、また、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、または甲第3号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の請求項5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[刊行物]
甲第1号証:「小口径注入式長尺先受工法 実態調査に基づく設計パターン
(案) -工法の概説と施工実態調査結果-」、ジェオフロンテ
研究会 アンブレラ工法分科会、2006年12月6日、103
~105頁
甲第2号証:特許第4138796号公報
甲第3号証:特許第3113635号公報
甲第4号証:特開2011-153402号公報
甲第5号証:特開2005-188253号公報
甲第6号証:特開2002-47880号公報
甲第7号証:特開2011-202460号公報
2 刊行物の記載事項
(1) 取消理由通知において引用した甲第1号証には、次の記載がある。(丸囲み数字は片括弧数字で記載した。)
ア 「 ハイトム
4.4.9 AGF-HITM(複合注入無拡幅鋼管先受工法)
ハイトム
HITM工法は、従来のAGF工法の実績を踏まえて安全性・経済性・作業性を大きく改善した新しい工法です。
(1)工法の特徴
1)本工法は、長さ6.0mの鋼管(外形φ89.1mmまたはφ101.6mm)を先導管とし長さ2.8m~4.0mの後続管を接続し、先導管を切羽前方地山の掘削断面外周まで引き込み、後続管を掘削時に切削する、無拡幅鋼管先受け工法です。
2)HITM(多段先受け方式)では、いずれの断面でも2段以上の鋼管が地山に配列されていて、断面内の打設ピッチが600mm~900mmであっても300mm~450mmピッチに近い支保効果が期待できるものとなります。」(103頁1~10行)
イ 104頁「図4.4.36 HITM施工概念図」の「C-C断面」の図は以下のとおり。
ウ 同じく「D-D断面」の図は以下のとおり。
エ 105頁「削孔用資材および打設鋼管」の表は以下のとおり。
オ 上記アの記載から、AGF工法を改良した工法、つまり、トンネルの掘削に先立って、切羽前面に放射状に打設した複数の鋼管内から周辺の地山に固化材を注入して先受けする長尺鋼管先受け工法であることが明らかである。
上記イ及びウをみると、先受け区間の断面において、上下に二重以上の鋼管が配置されていることが看取できる。
上記ウ及びエをみると、軸方向に4本の鋼管が連結され、先頭から、先導鋼管4000mm、中継鋼管3050mm、中継鋼管3050mm、端末鋼管3860mmを接続していること、及び上記4本の鋼管の接合箇所が、上下に配置された鋼管同士で軸方向に異なっていることが看取できる。
カ 上記アないしオからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「トンネルの掘削に先立って、切羽前方に放射状に打設した複数の鋼管内から周辺の地山に固化材を注入して先受けする長尺鋼管先受け工法において、
先受け区間の断面において、上下に二重以上の前記鋼管が配置されており、
前記切羽前方に打設する鋼管は、先導鋼管4000mm、中継鋼管3050mm、中継鋼管3050mm、端末鋼管3860mmを有し、上記4本の鋼管の接合箇所は、上下に配置された鋼管同士で軸方向に異なる長尺鋼管先受け工法。」
(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、次の記載がある。
ア 「【背景技術】
【0002】
トンネル掘削工事においては、切羽前方の地山に削孔を行いつつ、その孔内に、側面に注入孔を開設した所要長さの鋼管を順次接続しながら打設し、打設した鋼管を通じて地山内に注入材を注入することによって切羽前方の地山を改良する注入式鋼管先受け工法等の地山補強工法が行われている。」
イ 「【0035】
上記鋼管cは、その側面に複数の注入孔32を軸方向に30~45cmおきにして、かつ千鳥状にして開設した外径115mm程度の鋼管c’を4本接続したものである。その4本の鋼管c’のうち前端のものは3.5m程度、後側の3本のものは3m程度で、その全長は12.5m程度のものである。
その各鋼管c’の前後端の接続は互いに形成したネジ溝,ネジ山を螺合して行えるようになっているが(図4)、たとえば各鋼管c’の前端の内面を削るとともに、後端の外面を削りそこに先細のテーパーを形成することにより、前側の鋼管c’の後端を後側の鋼管c’の前端に差し込むだけで接続できるようにしてもよい。なお、各鋼管c’の径や長さは適宜変更可能である。」
ウ 【図1】は以下のとおり。
エ 上記ウをみると、先受け区間の断面において、上下に二重以上の鋼管が配置されていることが看取できる。
上記イの「4本の鋼管c’のうち前端のものは3.5m程度、後側の3本のものは3m程度で、その全長は12.5m程度のものである。」との長さの4本の鋼管c’を上記ウの図に配置すると、4本の鋼管c’の接合箇所は、上下に配置された鋼管c’同士で軸方向に異なることが明らかである。
オ 上記アないしエからみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「切羽前方の地山に削孔を行いつつ、その孔内に、側面に注入孔を開設した所要長さの鋼管を順次接続しながら打設し、打設した鋼管を通じて地山内に注入材を注入することによって切羽前方の地山を改良する注入式鋼管先受け工法において、
先受け区間の断面において、上下に二重以上の前記鋼管が配置されており、
4本の鋼管c’のうち前端のものは3.5m程度、後側の3本のものは3m程度であって、4本の鋼管c’の接合箇所は、上下に配置された鋼管c’同士で軸方向に異なる注入式鋼管先受け工法。」
(3)取消理由通知において引用した甲第3号証には、次の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トンネル(石油備蓄用等の地下空洞等を含む)を掘削するに先立って、トンネルの掘削切羽前方の地山の補強を行う無拡幅鋼管先受工法に関し、トンネルの掘削技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】トンネルを掘削する場合、掘削されたトンネル壁面を形成する土砂または岩石、岩盤等の弛み防止、及び施工の安全性を確保するために、掘削に先だって、トンネルの掘削切羽前方の地山の補強を行ない、トンネルを掘削する拡幅鋼管先受式掘削方法が用いられている。
【0003】この方法は、図11に示すように、鋼管打込装置Aによって鋼管Bの後端部を叩くことにより、トンネルCの掘削切羽Dの周辺部から地山E内に該トンネルCの軸方向やや外方に向けて鋼管Bを打ち込み、その後、該鋼管Bの後端部からウレタン系の硬化剤をトンネルCの掘削切羽D前方の地山Eに注入することによる該地山Eの改良と、該鋼管Bの剛性とによって上記掘削切羽D前方の地山Eの補強を行ない、トンネルCを掘削するものである。」
イ 「【0008】そこで、本発明は、トンネルを掘削するに先立って、トンネルの掘削切羽前方の地山の補強を行う際に、該地山から鋼管を通じてトンネル側に流れ出る地下水の漏出を抑制する効果を保つと共に、地山に対する硬化強度を高めることが可能な複合注入無拡幅鋼管先受工法の提供を課題とする。なお、本発明に係る複合注入無拡幅鋼管先受工法においては、トンネルとして石油備蓄用等の地下空洞等を含む。」
ウ 「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る複合注入無拡幅鋼管先受工法について説明する。」
エ 【図2】は以下のとおり。
オ 【図2】をみると、鋼管1は、先受け区間の断面において、上下に二重以上に配置されていることが看取できる。
カ 上記アないしオからみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「トンネルCの掘削切羽Dの周辺部から地山E内に該トンネルCの軸方向や外方に向けて鋼管Bを打ち込み、その後、該鋼管Bの後端部からウレタン系の硬化剤をトンネルCの掘削切羽D前方の地山Eに注入する拡幅鋼管先受式掘削方法であって、
鋼管1は、先受け区間の断面において、上下に二重以上に配置されている拡幅鋼管先受式掘削方法。」
(4)取消理由通知において引用した甲第4号証には、次の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削等において、地山の補強に使用される地山補強用鋼管および地山補強用鋼管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地山補強先受け工、鏡補強工などのトンネル掘削工事において、地山補強のために、二重管方式の削孔装置で地山を穿孔すると同時に後続する鋼管を引き込み、地山内に鋼管を埋設した後、鋼管内に、セメント系、レジン系などの固結材を注入して、鋼管全長にわたって設けられている吐出孔から固結材を地山に浸透、定着させることで、地山補強・安定化をはかる工法が採用されている。たとえば、AGF工法やFIT工法が、上記工法として知られている。」
イ 「【0009】
本発明は、掘削中には、不必要な管外への漏水が防止されるとともに、切削後には、容易に切除、分割が可能な地山補強用鋼管、および、当該地山補強用鋼管の製造方法を提供することを目的とする。」
ウ 「【0025】
図2に示す組み合わせでは、前方の3つの地山補強用鋼管201~203は、従来の地山補強用鋼管であり、最後方の地山補強用鋼管10のみが本実施の形態にかかるものである。その一方、図3に示す組み合わせでは、最前方の地山補強用鋼管11およびその後方に位置する3つの地山補強用鋼管10の全てが本実施の形態にかかるものである。このように、本実施の形態にかかる地山補強用鋼管10は、最後方だけでなく任意の位置で使用することが可能である。なお、地山補強用鋼管11および地山補強用鋼管10は、全長が異なるほかはほぼ同様である。」
エ 「【0048】
次に、本実施の形態にかかる地山補強用鋼管を用いたトンネル掘削工法について説明する。図2に示す複数の地山補強用鋼管、或いは、図3に示す複数の地山補強用鋼管を、順次直列に連結し、図9に示すように、連結された複数の地山補強用鋼管901、902を、前方に向けて所定角度上向きに傾斜させ、最前端の地山補強用鋼管の内部から突出したパイロットビット、あるいは先端に取り付けられたビットユニット(図2の符号220参照)で、地山900に穿孔するとともに、複数の地山補強用鋼管901を順次地山900に引き込んで行く。」
オ 【図2】は以下のとおり。
カ 【図3】は以下のとおり。
キ 上記オをみると、最前方の地山補強用鋼管201の長さは、他の3本の地山補強用鋼管の長さと相違している。
ク 上記アないしキからみて、甲第4号証には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されている。
「地山補強用鋼管を用いたトンネル掘削工法において、最前方の地山補強用鋼管201の長さは、他の3本の地山補強用鋼管の長さと相違している技術。」
(5)取消理由通知において引用した甲第5号証には、図面とともに、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
自立性の悪い地山にトンネルを掘削する場合に、トンネル前方に向けて鋼管などをトンネルの周方向に間隔を開けて複数打設し、トンネルの外周にアーチ状の仮想屋根を構築する先受け工法が、1990年頃から採用され始め、現在ではトンネル補助工法の主流となっている。
特許文献1等に開示されているパイプルーフ工法は、トンネルの坑口から掘削外周面に沿ってトンネル掘進方向に鋼管を打設し、鋼管に覆われている地山を掘削していく方法である。パイプルーフ工法は、坑口に設ける鋼管の打設設備が大規模になり、トンネル掘削を開始するときの坑口対策に適用されることが多い。
また、特許文献2等に開示されているAGF工法は、トンネル掘削に使用する油圧ジャンボ削孔機によって、二重管方式で直径100mm程度の鋼管をトンネル外周にアーチ状に配置
されるように打設し、打設した鋼管を使用して注入材を鋼管の周囲に注入する方法である。AGF工法は、特許文献3に開示されているような長尺鋼管フォアパイリング工法の一種であり、その他にも鋼管を専用機で地山に打設するトレビチューブ工法などがある。また、特許文献4等に開示されているように打設した有孔管を使用して地山に薬液を注入して地山の安定を図る工法もある。
トンネルの先受け工法は、一般的に継ぎ足した長さが12.5mになる鋼管をトンネル前方の地山に向けて斜め上方に打設する。そして、トンネル周方向にアーチ状に打設した鋼管に覆われた地山を、9m掘削してトンネルを掘進させる。再び、12.5mになる鋼管をトンネル前方の地山に向けて斜め上方に打設すると、鋼管の前後は3.5mラップすることになる(図2参照)。」
(6)取消理由通知において引用した甲第6号証には、次の記載がある。
ア 【図1】は以下のとおり。
イ 【図2】は以下のとおり。
ウ 【図3】は以下のとおり。
エ 【図4】は以下のとおり。
オ 【図8】は以下のとおり。
(7)取消理由通知において引用した甲第7号証には、図面とともに、次の記載がある。
「【0015】
本発明では、上記の先受け鋼管6として、図4、図5に詳細を示すように、不連続格子模様の溝を刻んだロールを通す熱間圧延により、表面に、規則的に配列されて不連続格子模様をなす多数の突条態様の突起部6aを形成した縞鋼板を素材として電縫管製造設備により製造された縞鋼板製鋼管6を用いる。この縞鋼板製鋼管からなる先受け鋼管6には複数の注入材流出孔6bが設けられている。
この先受け鋼管6の径は、長尺先受け工法に一般に用いられている管径サイズ76.3mmφ、89.1mmφ、114.3mmφなどであるが、必ずしもこれに限定されない。」
2 取消理由通知に記載した取消理由1(特許法29条第1項第3号)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明及び甲2発明を対比すると、「前記切羽前方に打設する鋼管」について、甲1発明及び甲2発明には、本件特許発明1の「軸方向長さが異なる複数の中間管を有し、前記複数の中間管の接合順序を異ならせることで、同一の前記切羽前方に打設する複数の該鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なる」構成を備えていない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明または甲2発明と同一ではないから、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明ではない。
(2)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(1)の判断と同様の理由により、甲1発明と同一ではなく、よって、甲第1号証に記載された発明ではない。
2 取消理由通知に記載した取消理由2(特許法29条第2項)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明及び甲3発明を対比すると、「前記切羽前方に打設する鋼管」について、甲2発明及び甲3発明には、本件特許発明1の「軸方向長さが異なる複数の中間管を有し、前記複数の中間管の接合順序を異ならせることで、同一の前記切羽前方に打設する複数の該鋼管の間で前記中間管の接合箇所が軸方向に異なる」構成を備えていない点で相違している。
そして、当該相違点に係る構成は、取消理由通知で本件特許発明1に対して引用した甲第4号証だけでなく、甲第1号証、甲第5号証ないし甲第7号証にも記載されておらず、示唆もされていない。
よって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて、または、甲第3号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2、3及び5について
本件特許発明2、3及び5は、本件特許発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであって、上記(1)に記載した相違点は、取消理由通知で引用した文献に記載も示唆もされていないから、上記(1)の判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年6月27日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700390