特許異議申立
2021-700816
トンネル内部構造の構築方法
- 審判番号
- 2021-700816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-177302
- 登録番号
- 6834055
- 請求日
- 2021年08月20日
- 審決日
- 2022年06月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】鹿島建設株式会社
- 【権利者代理人】小川 護晃
- 【権利者代理人】西山 春之
- 【権利者代理人】関谷 充司
- 【権利者代理人】奥山 尚一
- 【権利者代理人】松島 鉄男
- 【権利者代理人】中村 綾子
- 【権利者代理人】森本 聡二
- 【権利者代理人】田中 祐
- 【権利者代理人】徳本 浩一
- 【権利者代理人】有原 幸一
- 【異議申立人】田中 みずほ
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P1651.561-YAA(E21D) / P1651.113-YAA(E21D) / P1651.537-YAA(E21D) / P1651.121-YAA(E21D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6834055号発明「トンネル内部構造の構築方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6834055号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第6834055号の請求項1、2、3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6834055号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成27年12月21日に出願された特願2015-248579号(以下「原原出願」という。)の一部を分割して平成31年4月5日に出願された特願2019-72565号(以下「原出願」という。)の一部を、さらに分割して令和2年10月22日に出願され、令和3年2月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和 3年 8月20日 特許異議申立人田中みずほ(以下「申立人」
という。)による請求項1ないし3に係る発
明の特許に対する特許異議の申立て
同年10月25日付け 取消理由通知
同年12月24日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 1月 4日 特許異議申立人への訂正請求があった旨の通
知
同年 2月 3日 特許異議申立人による意見書の提出
同年 3月 4日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月 2日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(受付日)
同年 5月13日 特許異議申立人への訂正請求があった旨の通
知
同年 6月 8日 特許異議申立人による意見書の提出
なお、令和4年5月2日に訂正の請求がなされたことにより、令和3年12月24日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定より取り下げられたものとみなす。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和4年5月2日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法」
と記載されているのを、
「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行い、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、
前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記覆工を構築した後、前記シールド機と、前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かって前記プレキャストインバートを設置し、更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する、請求項1に記載のトンネル内部構造の構築方法」
と記載されているのを、
「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方にプレキャスト床版によって構成される前記床版を設置することを含み、
前記覆工を構築した後、前記シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かって前記プレキャストインバートを設置し、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機と、該シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法」
と記載されているのを、
「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方にプレキャスト床版によって構成される前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法」に訂正する。
(4)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項1及び2に係る訂正について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項1及び2について、請求項2は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、一群の請求項である。
そして、訂正事項1及び2の訂正は、訂正前の一群の請求項[1-2]に対して請求されたものである。
イ 訂正事項1
(ア)訂正の目的
上記訂正事項1に係る訂正は、
a 訂正前の請求項1のトンネル内部構造の構築方法において、プレキャストインバート及び床版の設置について「前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行い、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」として、設置の位置等の態様を特定して減縮し、
b 訂正前の請求項1のプレキャストインバートについて、「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」と特定して減縮し、
c 訂正前の請求項1の「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」ことが「前記プレキャストインバートが設置された直後から」であるものに減縮するものである。
そうすると、訂正事項1の上記aないしcに係る訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
そして、訂正事項1の上記aないしcに係る訂正は、上記(ア)のとおり、いずれも、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書等」という。)には、訂正事項1について、次の記載がある。
a「シールド機に連結された後続台車」について、本件明細書の段落【0037】には、「・・・シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車・・・」と記載されている。また、「前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行い、」について、同段落【0052】には、「シールド機と、該シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かって前記プレキャストインバートを設置し、」と記載されており、「プレキャストインバートを設置」するのが、「シールド機」と「後続台車との間で」、「又はその後続台車で」あることが記載されているといえる。「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」について、同段落【0032】に「・・・床版20を構成するプレキャスト床版21・・・」と記載され、同段落【0037】に「その後、シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車の後方で、側壁コンクリート部15が打設され・・・プレキャストインバート51の上部に板状体31を連結する。」と記載され、同段落【0038】に「次に、板状体31の上部及び側壁コンクリート部15の上面部15bに、プレキャスト床版21を載置して、アンカーボルト25等で、板状体31及び側壁コンクリート部15と、プレキャスト床版21とを連結する。」と記載されており、これら記載によれば、「後続台車の後方で」設けられた「側壁コンクリート部15」の「上面部15b」と「プレキャストインバート51の上部」に「連結」された「板状体31」の「上部」に「床版20を構成する」「プレキャスト床版21」が、「載置」されることが記載されているから、「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」が記載されているといえる。
b「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」について、同段落【0042】には、「・・・例えば、インバート50の上部の平坦面51aの上には、トンネル施工時に、資材等を運搬するレール等を配置することもできるので、・・・」と記載されている。
c「前記プレキャストインバートが設置された直後から」について、同段落【0042】には、「また、本実施形態では、プレキャストインバート51をトンネル軸方向に列をなすように配置していくことで、インバート50を形成している。この構造では、トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から、インバート50の上面をシールド機の後続台車や資機材運搬車両が走行することができる。」と記載されている。
d したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(エ)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。
ウ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
上記訂正事項2に係る訂正は、
a 訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、
b 訂正前の請求項2の「床版」が「プレキャスト床版によって構成される」ことを特定して減縮し、
c 訂正前の請求項2の「後続台車」について「シールド機に連結され」
た「後続台車」としてシールド機との関係を特定して減縮し、
d 訂正前の請求項2の「前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」する位置について「後続台車の後方」と特定して減縮し、
e 訂正前の請求項2の「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」ことが「前記プレキャストインバートが設置された直後から」であるものに減縮するものである。
そうすると、訂正事項2の上記aに係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、上記bないしeに係る訂正は、同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)のとおり、訂正事項2の上記aに係る訂正は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを独立形式に改める訂正であり、訂正事項2の上記bないしeに係る訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の有無
本件明細書には、訂正事項2について、次の記載がある。
b「プレキャスト床版によって構成される」床版について、段落【0032】には、「・・・床版20を構成するプレキャスト床版21・・・」と記載されている。
c「シールド機に連結された後続台車」について、本件明細書の段落【0037】には、「・・・シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車・・・」と記載されている。
d「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」について、同段落【0032】に「・・・床版20を構成するプレキャスト床版21・・・」と記載され、同段落【0037】に「その後、シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車の後方で、側壁コンクリート部15が打設され・・・プレキャストインバート51の上部に板状体31を連結する。」と記載され、同段落【0038】に「次に、板状体31の上部及び側壁コンクリート部15の上面部15bに、プレキャスト床版21を載置して、アンカーボルト25等で、板状体31及び側壁コンクリート部15と、プレキャスト床版21とを連結する。」と記載されており、これら記載によれば、「後続台車の後方で」設けられた「側壁コンクリート部15」の「上面部15b」と「プレキャストインバート51の上部」に「連結」された「板状体31」の「上部」に「床版20を構成する」「プレキャスト床版21」が、「載置」されることが記載されているから、「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」が記載されているといえる。
e「前記プレキャストインバートが設置された直後から」について、段落【0042】には、「また、本実施形態では、プレキャストインバート51をトンネル軸方向に列をなすように配置していくことで、インバート50を形成している。この構造では、トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から、インバート50の上面をシールド機の後続台車や資機材運搬車両が走行することができる。」と記載されている。
f したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(エ)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。
(2)請求項3に係る訂正について
ア 訂正事項3
(ア)訂正の目的
上記訂正事項3に係る訂正は、
a 訂正前の請求項3の「後続台車」について「シールド機に連結され」た「後続台車」としてシールド機との関係を特定して減縮し、
b 訂正前の請求項3について「前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」する位置について「後続台車の後方」と特定して減縮し、
c 訂正前の請求項3の「床版」が「プレキャスト床版によって構成される」ことを特定して減縮し、
d 訂正前の請求項3のプレキャストインバートについて、「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」と特定して減縮し、
e 訂正前の請求項3の「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」ことが「前記プレキャストインバートが設置された直後から」であるものに特定して減縮するものである。
そうすると、訂正事項3の上記aないしeに係る訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
そして、訂正事項1の上記aないしeに係る訂正は、上記(ア)のとおり、いずれも、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の有無
本件明細書には、訂正事項3について、次の記載がある。
a「シールド機に連結された後続台車」について、本件明細書の段落【0037】には、「・・・シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車・・・」と記載されている。
b「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する」について、同段落【0032】に「・・・床版20を構成するプレキャスト床版21・・・」と記載され、同段落【0037】に「その後、シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車の後方で、側壁コンクリート部15が打設され・・・プレキャストインバート51の上部に板状体31を連結する。」と記載され、同段落【0038】に「次に、板状体31の上部及び側壁コンクリート部15の上面部15bに、プレキャスト床版21を載置して、アンカーボルト25等で、板状体31及び側壁コンクリート部15と、プレキャスト床版21とを連結する。」と記載されており、これら記載によれば、「後続台車の後方で」設けられた「側壁コンクリート部15」の「上面部15b」と「プレキャストインバート51の上部」に「連結」された「板状体31」の「上部」に「床版20を構成する」「プレキャスト床版21」が、「載置」されることが記載されているから、「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、」が記載されているといえる。
c「プレキャスト床版によって構成される」について、段落【0032】には、「・・・床版20を構成するプレキャスト床版21・・・」と記載されている。
d「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」について、同段落【0042】には、「・・・例えば、インバート50の上部の平坦面51aの上には、トンネル施工時に、資材等を運搬するレール等を配置することもできるので、リング10の底部上を走行する場合と比べて、安定した走行が可能となる。」と記載されている。
e 「前記プレキャストインバートが設置された直後から」について、段落【0042】には、「また、本実施形態では、プレキャストインバート51をトンネル軸方向に列をなすように配置していくことで、インバート50を形成している。この構造では、トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から、インバート50の上面をシールド機の後続台車や資機材運搬車両が走行することができる。」と記載されている。
f したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(エ)まとめ
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。
(3)別の訂正単位とする求めについて
ア 上記(1)アのとおり、本件訂正の訂正事項1及び2は、一群の請求項1及び2について請求がされたものであるところ、特許権者は、訂正後の請求項2について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
イ そして、訂正事項1及び2に係る訂正は、上記(1)イ及びウのとおり、特許法120条の5第2項ただし書1号または4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、訂正の要件を満たしており、訂正は認められる。
ウ したがって、訂正後の請求項2は、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とされるものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1ないし3に係る訂正は特許法第120条の5第2項第1号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであって、訂正の要件を満たしているから、訂正は認められる。
また、特許権者による、訂正後の請求項2を一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めも認められる。
したがって、訂正後の請求項1、2、3について訂正は認められるべきものである。
第3 訂正後の本件特許発明について
上記「第2」のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、項番号により「本件訂正発明1」等といい、これらを併せて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行い、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、
前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法。
【請求項2】
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方にプレキャスト床版によって構成される前記床版を設置することを含み、
前記覆工を構築した後、前記シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かって前記プレキャストインバートを設置し、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法。
【請求項3】
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方にプレキャスト床版によって構成される前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、
前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する、トンネル内部構造の構築方法。
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、項番号により「本件発明1」等といい、これらを併せて「本件発明」という。)に対して、証拠として下記甲第1号証ないし甲第11号証を提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。
(1)(新規事項)
本件特許に係る特許出願は、甲7の審査過程に新規事項が追加され、当該追加された新規事項をそのまま含んでいるものであるから、特許法第17条の2第3項違反が看過されて特許になったものであり、特許法第113条第1号の規定により取り消されるべきである。(申立書第15ページ第1行~第26ページ第13行)
(2)(新規性)
本件特許の特許出願時は、現実の出願時である令和2年10月22日である。
甲1、甲2、甲2の1ないし甲2の7の記載によって把握される、2015年3月25日~2019年3月18日までの予定工期で構築された首都高速横浜環状北西線のシールドトンネルの施工において用いられたトンネル内部構造の構築方法は、本件特許の特許出願時に公然知られた発明であるか、若しくは刊行物に記載された発明である(以下、両者をまとめて単に「公知発明」という。)ところ、本件発明1ないし3と公知発明とには実質的な相違が認められず、本件発明1ないし3は公知発明に過ぎないから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。(申立書第26ページ第14行~第34ページ第13行)
(3)(明確性要件)
本件発明1ないし3は、「プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」との記載により、特許庁特許審査基準第II部第2章第3節2.2(2)b「発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる場合」に該当するものとなっているから、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。(申立書第34ページ第14行~第36ページ第15行)
(4)(進歩性)
ア 本件発明1は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第4号証~甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第4号証~甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
証拠一覧
申立人が申立書に添付して提出した証拠は、甲第1号証ないし甲第11号証(以下、「甲1」、「甲2の1」等という。)であり、以下のとおりである。
甲1 :大成・佐藤・東洋(負)高速横浜環状北西線 シールドトンネ
ル(港北行)特定建設工事共同企業体、「(負)高速横浜環状
北西線 シールドトンネル(港北行)工事」パンフレット、
2017年1月、第1版
甲2 :酒井 利、「首都高講座64限目、「横浜環状北西線へ潜入!建
設現場を歩いて学ぼう!」。東名 横浜青葉ICと第三京浜 港北
ICを接続する道路を事前公開」、[online]、
2018年11月14日17:56、<URL:https://travel.watch.
impress.co.jp/docs/news/1153260.html>
甲2の1:甲2中の写真画像(12/37)
甲2の2:甲2中の写真画像(7/37)
甲2の3:首都高速道路株式会社、北西線工事の記録のうち、
トンネル部2018年1月 側壁施工中
2018年1月31日撮影の写真
甲2の4;首都高速道路株式会社、北西線工事の記録のうち、
トンネル部2018年1月 道路床版架設中
2018年1月31日撮影の写真
甲2の5;首都高速道路株式会社、北西線工事の記録のうち、
トンネル部2018年1月 セグメント通過中
2018年1月31日撮影の写真
甲2の6;首都高速道路株式会社、北西線工事の記録のうち、
トンネル部2018年1月 1400m掘進中
2018年1月31日撮影の写真
甲2の7:インターネットアーカイブWayback Machineが2020年4月
21日に収集した、首都高速道路株式会社のウェブページ
「北西線工事の記録」の出力物、<URL:https://web.
archive.org/web/20200421001508/https://www.shutoko.jp/
ss/hokusei-sen/now/photo/tunnel.html>
甲3 :特開2007-284868号公報
甲4 :特開平7-26900号公報
甲5 :特開2008-231771号公報
甲6 :特開2012-52289号公報
甲7 :特許第6796160号公報
甲8 :特許第6605943号公報
甲9 :特願2019-72565号の審査における令和2年6月22
日提出の意見書
甲10 :新村出編、広辞苑第4版、株式会社岩波書店、
1991年11月15日、
「へいりつ」及び「や」の記載ページ
甲11 :吉藤幸朔、特許法概説第11版、第96~97ページ
2 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
令和3年12月24日提出の訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る特許に対して、当審が令和4年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)令和3年12月24日提出の訂正請求書により訂正された本件特許の請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術事項並びに甲第4号証、甲第6号証及び引用文献Aに示された周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
(2)令和3年12月24日提出の訂正請求書により訂正された本件特許の請求項1及び3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第6号証に記載された技術事項、甲第4号証、甲第6号証及び引用文献Aに示された周知技術並びに引用文献A、引用文献B及び引用文献Cに示された周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
引用した文献
1 甲第3号証:特開2007-284868号公報
2 甲第4号証:特開平7-26900号公報
3 甲第6号証:特開2012-52289号公報
4 引用文献A:特開平11-44187号公報
5 引用文献B:特開2004-204536号公報
6 引用文献C:特開2013-104196号公報
引用文献AないしCは、当審が職権により発見した証拠である。
第5 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由についての当審の判断
1 各証拠の記載
(1)甲3
ア 甲3の記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である甲3には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【背景技術】
【0002】
道路やライフラインとして掘進されたシールドトンネルにおいては、たとえば、トンネルの高さ方向略中央付近に床版(スラブ)を配設し、床版の上部空間を道路として使用する一方、下部空間に排水路、電気線、ガス管などが設けて使用されている。また、床版の下部空間には、たとえば中壁を立設して2つの空間に仕切り、それぞれの空間で目的に応じた使用が行われることもある。
【0003】
さらに、近年の工期短縮の要請から、シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進と並行して、床版や中壁などのトンネル内部の構築が行われる。このようにシールドトンネルの掘進とトンネル内部の構築が並行して行われる際には、両者の施工を分離することで施工の効率化が図られている。たとえばシールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行い、トンネル内部の構築用資材の搬送を床版の上部空間で行うようにしている。シールドトンネルの施工は、シールド掘進機におけるエレクタなどを用いて行われているが、床版や中壁などのトンネル内部の構築は、主に作業員の手作業によって行われている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の工法では、それぞれの施工が分離されてはいるものの、中壁を構築する際には、シールドトンネルを構築するための資材搬送を行っている場所に中壁を構築する必要がある。また、床版を設置する際にも、作業員は、既設の床版よりも下側に立って長時間の作業を行う必要がある。このため、シールドトンネルの資材を搬送するスペースと作業員とが交錯してしまい、作業の安全性に課題があった。また、作業員による作業では、工期短縮を図った場合でも限界があるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、作業員の安全性を向上させるとともに、工期の短縮を実現することができるトンネル内部の構築装置を提供することにある。」
(イ)「【0023】
図1~図3に示すように、本実施形態に係る構築装置Mは、床版組立装置1およびブラケット組立装置2を備えている。構築装置Mは、トンネルTの内部に設けられる。トンネルTは、道路用として構築されたシールドトンネルであり、図3に示すように、トンネルTはセグメントSによって覆工されており、その側壁部には、セグメントSとして、内側部に側壁ブラケットBを有するブラケット一体型のセグメント(以下「一体型セグメント」という)S1が用いられている。
【0024】
また、トンネルTの底部には、複数のプレキャストインバートが敷設されてインバートNが構築されている。さらに、インバートNの上には、複数のプレキャスト板C1が立設されて、中壁Cが構築されており、トンネルTの高さ方向略中央部には、複数のプレキャスト床版R1が配設されてスラブRが構築されている。また、一体型セグメントS1における側壁ブラケットBの一方には、増設ブラケットGが取り付けられている。側壁ブラケットBに増設ブラケットGが取り付けられることにより、ブラケットの上面の面積が増加する。
【0025】
これらの中壁CおよびスラブRは、トンネルTの坑口側から順次それぞれプレキャスト板C1およびプレキャスト床版R1をトンネルTの掘進方向に沿って連続的に配設される。また、既設の中壁CおよびスラブRにプレキャスト板C1、プレキャスト床版R1をそれぞれ継ぎ足すことによって中壁CおよびスラブRが形成される。また、増設ブラケットGも同様に、トンネルTの坑口側から増設ブラケットGを継ぎ足すことによってトンネルTの掘進方向に沿って連続的に形成される。図3に示すように、本実施形態で施工されるトンネルTでは、一側部では、側壁ブラケットBに増設ブラケットGが増設されることなく側壁ブラケットBが露出しており、他側部では、側壁ブラケットBに増設ブラケットGが増設されている。」
(ウ)「【0041】
以上の構成を有する本実施形態に係るトンネル内部の構築装置Mにおけるトンネル内部の構築手順について説明する。トンネル内部の構築を行う際には、切羽に近い側で側壁ブラケットに増設ブラケットを組み立てる作業を行う。それとは別に、既に増設ブラケットが組み立てられた坑口側の位置で、中壁を構成するプレキャスト板C1を立設させ、次に、スラブRを構成するプレキャスト床版R1を設置する作業を行う。以下、施工順に従い、増設ブラケットGの組立作業について図10および図11を主に参照して説明する。また、トンネル内部の構築を行うにあたり、既設スラブRは道路となることから、カント(片勾配)が付されていることから、構築装置Mに対する角度や相対的な高さ位置が変動する。」
(エ)図3は以下のとおり。
[図:0001388376000001.jpg]
上記(イ)の記載を踏まえると、上記図3からは、インバートNは上部に平面を有することが看取される。
(オ)上記(ア)の記載からみて、甲3には、「トンネル内部の構築方法」が記載されていると認められる。
イ 甲3発明
上記アより、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲3発明)
「シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進と、床版や中壁などのトンネル内部の構築とが並行して行われるトンネル内部の構築方法であって、
シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進と並行して行われる、床版や中壁などのトンネル内部の構築は、シールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行い、トンネル内部の構築用資材の搬送を床版の上部空間で行うようにして、両者の施工を分離することで施工の効率化が図られ、
トンネルは、道路用して構築されたシールドトンネルであり、セグメントによって覆工されており、底部には、複数のプレキャストインバートが敷設されて上部に平面を有するインバートが構築され、インバートの上には、複数のプレキャスト板が立設されて、中壁が構築されており、トンネルの高さ方向略中央部には、複数のプレキャスト床版が配設されてスラブが構築され、
トンネル内部の構築を行う際には、中壁を構成するプレキャスト板を立設させ、次に、スラブを構成するプレキャスト床版を設置する作業を行い、
中壁およびスラブは、トンネルの坑口側から順次それぞれプレキャスト板およびプレキャスト床版をトンネルの掘進方向に沿って連続的に配設され、既設の中壁およびスラブにプレキャスト板、プレキャスト床版をそれぞれ継ぎ足すことによって中壁およびスラブが形成される、
トンネル内部の構築方法。」
(2)甲4
ア 甲4の記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である甲4には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシールド掘削時の後方支援工法に係り、特にシールド掘削機の後方に構築されるセグメントの構成部材等、各種の後方支援部材を立坑側からシールド掘削機後部まで搬送するのに好適なシールド掘削時の後方支援工法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、シールド工法ではシールド掘削機により掘進すると同時にそのテール部分にセグメントを構築して覆工がなされる。このため、掘進作業中には発進立坑側からセグメントピース等の切羽側で使用する資機材を搬送するようにしている。このような資機材の搬送には台車が用いられ、この台車を走行させるため、従来から覆工されたセグメントの底部に枕木を設置し、この上にレールを敷設することによって形成される走行軌条を設置する作業を必要としていた。そして、一次覆工が完了した後に、走行軌条を解体撤去し、その後に二次巻きを行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の方法では、切羽側に必要な資機材の搬入のために設置される台車走行軌条は多数の枕木材やレール材を使用するため、敷設作業工事のみならず解体撤去工事に多くの時間を要しており、また撤去解体後の清掃処理を必要とし、その後の二次巻き作業に掛かるまでの時間が長く、したがって工期が長くなってしまう欠点があった。また、枕木やレール等の重量作業のため、多くの作業人員を必要とする問題もあった。
【0004】本発明は、上記従来の問題点に着目し、工期短縮を図ることができ、作業員の削減効果が高く、かつ作業改善を向上させることができるようにしたシールド掘削時の後方支援工法を提供することを目的とする。」
(イ)「【0008】図1は実施例に係るシールド掘削時の後方支援工法の実施状態の説明図である。シールド掘削機10は発進立坑12から図示しない到達立坑に向けて掘進しており、掘進に伴って逐次その後方に一次覆工セグメント14が構築され、立坑12からシールド掘削機10までセグメント14により確定されたトンネル16が形成される。掘削をなすシールド掘削機10には図示していないが電力供給や泥土供給等のための後続台車設備が設けられており、またセグメント14を構築するためのエレクター装置が付帯している。このようなシールド掘削機10による掘進に際して、シールド掘削機10側でエレクター装置その他掘削に必要な資機材を搬送するために、搬送台車18とその走行軌条手段20とからなる後方支援設備が用いられる。
【0009】この実施例では後方支援設備の走行軌条手段20を二次覆工に適用されるインバートであって、特に予め系外にて製作されたプレキャストインバート22によって構成するようにしている。すなわち、プレキャストインバート22は、図2に示しているように、セグメント14の底部円弧に適合する円弧外面24を有し、またセグメント14底部に据え付けた際にトンネル床盤となる平坦面部26を有する形状のものとされている。また、平坦面部26の中央部には排水溝28が形成されている。このようなインバート22は定寸長さに形成された同一のものがプレキャスト成形されて複数準備され、発進立坑12からシールド掘削機10が推進し、後続台車部分が坑口からインバート22の長さ以上に推進移動した段階で、セグメント14の底部に敷設するようにしている。そして、このインバート22をシールド掘削機10の推進に並行して順次セグメント14に連続して敷設し、これによって図1に示すように、セグメント14の底部にはシールド掘削機10の後方に推進と同時に二次覆工の構成部材であるインバート列による走行軌条手段20が構築されるようになっている。各プレキャストインバート22には、図2(2)、(3)に示すように、平坦面部26から円弧外面24に貫通するグラウト注入孔30が穿設され、セグメント14の底部への据え付け時にセグメント14とインバート22の接合面部にグラウト注入をなし、両者の結合を図るものとしている。
【0010】このようにプレキャストインバート22を敷設したトンネル16の断面形状は図3(1)に示すようになり、排水溝28がトンネル中心に一致するように設定される。そして、同図(2)に示すように、プレキャストインバート22の平坦面部26を走行面とする搬送台車18がトンネル16内に導入され、これによって切羽側で必要とされる資機材を搬送するようになっている。この搬送台車18は図4に示すように、インバート22の平坦面部26に転接する車輪32を備えた台車部34を有し、特に前後輪のいずれかもしくは全車輪を駆動輪とする無人自走台車として構成されている。このため、台車部34にはバッテリ36及び駆動モータ38が搭載され、また制御盤部40が設置されている。この搬送台車18を適正にトンネル16軸芯に沿って移動させるため、前記プレキャストインバート22の排水溝28を利用するように構成され、この実施例では図4(2)に示しているように排水溝28の側壁面をガイド面とするガイド車輪42を台車部34から垂下させている。これによって自走する台車18はプレキャストインバート22によって走行路を外れることなく移動できるものとなっている。」
イ 甲4技術事項
上記アより、甲4には次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(甲4技術事項)
「シールド掘削時の後方支援工法において、
シールド掘削機10には後続台車設備が設けられ、シールド掘削機10側で掘削に必要な資機材を搬送するために、搬送台車18とその走行軌条手段20とからなる後方支援設備が用いられ、
セグメント14の底部円弧に適合する円弧外面24を有し、セグメント14底部に据え付けた際にトンネル床盤となる平坦面部26を有する形状で、定寸長さに形成された同一のものがプレキャスト成形されて複数準備されたプレキャストインバート22を、シールド掘削機10がインバート22の長さ以上に推進移動した段階で、セグメント14の底部に敷設するようにして、セグメント14の底部にはシールド掘削機10の後方に二次覆工の構成部材であるインバート列による走行軌条手段20が構築されるようにし、プレキャストインバート22の平坦面部26を走行面とする搬送台車18が切羽側で必要とされる資機材を搬送すること。」
(3)甲5
ア 甲5の記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である甲5には以下の記載がある。
(ア)「【0027】
次に、本第一の実施の形態による道路トンネルの構築方法について図面に基づいて説明する。
図2に示すように、シールドトンネル10の掘進は、シールド掘削機11によって地山を掘削するとともに、シールド掘削機11の後端部で掘削したトンネル内壁に沿うようにしてセグメント12をリング状に組み立てる。そして、セグメント12の組立位置R2より後方(切羽と反対側)に所定距離(例えば資材搬入スペース等を確保した距離)だけ離れた位置(プレキャスト版組立位置R1)に、アーチ型プレキャスト版1が設置される。
【0028】
ここで、設置されたアーチ型プレキャスト版1の下方のアーチ内空間Tは、上述したようにセグメント12、アーチ型プレキャスト版1等の掘進に必要とされる資材を搬送させたり、掘削によって生じた掘削土砂を搬出したりするための搬送用通路として使用される。図1、図8、及び図9では、搬送ロコ23と、アーチ型プレキャスト版1を搭載した搬送台車24とが示されている。なお、本実施の形態では、掘削した土砂は、セグメント側壁部にトンネル軸方向に沿って延設されたベルトコンベア25(図9参照)によって搬出されるようになっている。
【0029】
図8及び図9に示すように、シールドトンネルの掘進時には、例えばアーチ型プレキャスト版1の上方の所定位置から図2に示すセグメント12の組立位置R2までの所定範囲にわたって移動可能な移動式クレーン20が設けられている。この移動式クレーン20は、トンネルの両側壁部の所定位置にトンネル軸方向に敷設されたレール21、21上を走行可能に設けられている。レール21、21は、アーチ型プレキャスト版1の設置範囲では接地端面2、2を固定させたコンクリート8上に敷設され、アーチ型プレキャスト版1が設置されていない範囲ではセグメント12の所定位置に固定された受け台22、22上に敷設されている。
【0030】
次に、アーチ型プレキャスト版1の組立て手順について説明する。図8及び図9に示すように、アーチ型プレキャスト版1は、搬送台車24上に接合端面2、2を上下方向に向けた状態で載置され、アーチ内空間Tを坑外からプレキャスト版組立位置R1まで搬送される。そして、移動式クレーン20を使用して、アーチ型プレキャスト版1の外周面1aを上方に向けた状態で吊り上げつつ、先行して設置されたアーチ型プレキャスト版1の接合端面4に対してプレキャスト版間継手5によって連結するとともに、高さ調整ボルト3を用いて所定の高さとなるように位置決めを行う。そして、位置決め完了後、コンクリート8によってアーチ型プレキャスト版1の端部1cを固定する。
・・・
【0033】
さらに、アーチ型プレキャスト版1を設けることで、上述したようにアーチ内空間Tを使用して資材の搬送が可能であるうえ、掘進に必要な給水管、排水管、電線などの仮設備を配置することができる。そのため、図1及び図2に示すように、本実施の形態では、アーチ型プレキャスト版1の上方の空間(アーチ上空間S)において、掘進作業とは別の作業、すなわちアーチ型プレキャスト版1の上方に道路13の路盤(路盤面13A)や舗装(舗装面13B)などがシールドトンネル10の掘進と並行して施工されている。」
(イ)図2、図8、図9は以下のとおり。
【図2】
[図:0001388376000002.jpg]
【図8】
[図:0001388376000003.jpg]
【図9】
[図:0001388376000004.jpg]
イ 甲5技術事項
上記アより、甲5には次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(甲5技術事項)
「道路トンネルの構築方法において、
シールドトンネル10の掘進は、シールド掘削機11によって地山を掘削するとともに、シールド掘削機11の後端部で掘削したトンネル内壁に沿うようにしてセグメント12をリング状に組み立て、
セグメント12の組立位置R2より後方(切羽と反対側)に所定距離(例えば資材搬入スペース等を確保した距離)だけ離れた位置(プレキャスト版組立位置R1)に、アーチ型プレキャスト版1が設置され、
設置されたアーチ型プレキャスト版1の下方のアーチ内空間Tは、セグメント12、アーチ型プレキャスト版1等の掘進に必要とされる資材を搬送させるための搬送ロコ23と、アーチ型プレキャスト版1を搭載した搬送台車24の搬送用通路として使用され、
アーチ型プレキャスト版1の上方の所定位置からセグメント12の組立位置R2までの所定範囲にわたって移動可能な移動式クレーン20が設けられ、
移動式クレーン20は、トンネルの両側壁部の所定位置にトンネル軸方向に敷設されたレール21、21上を走行可能に設けられ、レール21、21は、アーチ型プレキャスト版1の設置範囲では接地端面2、2を固定させたアーチ型プレキャスト版1の端部1cを固定するコンクリート8上に敷設され、アーチ型プレキャスト版1が設置されていない範囲ではセグメント12の所定位置に固定された受け台22、22上に敷設され、
アーチ型プレキャスト版1の上方の空間(アーチ上空間S)において、アーチ型プレキャスト版1の上方に道路13の路盤(路盤面13A)や舗装(舗装面13B)などがシールドトンネル10の掘進と並行して施工されること。」
(4)甲6
ア 甲6の記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である甲6には以下の記載がある。
(ア)「【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すシールドトンネルの切羽付近の断面図である。また、図2~図5は、図1におけるA-A、B-B、C-C及びD-Dの各断面図である。
このシールドトンネルの施工装置は、先端部で地中を掘削し後方部でセグメントを組み立てるシールド機1を主体として構成される。
・・・
【0016】
このシールドトンネル施工装置は、更に、シールド機1の後方に連結ビーム8により連結されてシールド機1の前進に伴って移動する門型の架台(後続台車)10と、この門型の架台10に装備されるクレーン11、12と、門型の架台10内の下部に設定されるセグメント等の置き場13と、シールド機1の排土機構(スクリューコンベア3、4)による掘削土を門型の架台10の後方へ搬送する土砂搬送設備(ベルトコンベア14、ホッパー15)とを含んで構成される。
・・・
【0024】
次に本実施形態でのシールドトンネルの施工方法について説明する。
本実施形態では、セグメントの搬入と掘削土の搬出に、構築済みのトンネル坑内(床版FP上)を走行するタイヤ式の搬送車両として、ダンプトラック20を用いる。
ダンプトラック20は、セグメントSGを積込んで、又は交代で床版FP用の部材(F1~F4)を積込んで、構築済みのトンネル坑内を立坑側から切羽側へ向けて走行する。尚、ダンプトラックは地上で資材を積込んで立坑をエレベータ等で降りるようにしてもよいし、資材を地上からエレベータやクレーンで降ろし、地下の発進基地でダンプトラックに積込むようにしてもよい。また、地上と地下とが緩やかな斜坑によりつながる場合は、ダンプトラックに地上で資材を積込んでそのまま切羽部まで走行させるようにしてもよい。」
(イ)「【0034】
また、本実施形態によれば、ダンプトラック20の走行路にはターンテーブルを設け、セグメント荷卸し位置に到着する前に、車両の向きを反転させて、セグメント荷卸し位置にバックで進入させることにより、セグメントの荷卸しについて、ダンプトラック20の荷台を置き場13に向けて行うことができ、効率的な荷卸しが可能となる。
また、本実施形態によれば、シールド機1とその後続台車である門型の架台10との間で床版FPを構築することにより、門型の架台10は床版FP上を移動でき、門型の架台10の移動がスムーズになる。また、ダンプトラック20も床版FP上を走行することができるので、門型の架台10へのダンプトラック20によるセグメントの搬入が容易となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、床版FPを構築する部材をダンプトラック20により搬入し、置き場13に荷卸しすることにより、床版FP用の部材(F1~F4)の搬入についても効率化を図ることができる。
但し、シールド機1と門型の架台10との間で床版FPを構築する代わりに、インバートを構築し、門型の架台10をインバート上を移動させ、ダンプトラック20もインバート上を走行させるようにしてもよい。」
イ 甲6技術事項
上記アより、甲6には次の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(甲6技術事項)
「シールドトンネルの施工に関し、
シールドトンネル施工装置は、シールド機1を主体として構成され、シールド機1の後方に連結ビーム8により連結されてシールド機1の前進に伴って移動する門型の架台10を含んで構成され、
ダンプトラック20は、セグメントSG又は床版FP用の部材を積込んで、構築済みのトンネル坑内を立坑側から切羽側へ向けて走行し、シールド機1とその後続台車である門型の架台10との間で床版FPを構築することにより、門型の架台10は床版FP上を移動でき、また、ダンプトラック20も床版FP上を走行することができるが、シールド機1と門型の架台10との間で床版FPを構築する代わりに、インバートを構築し、門型の架台10をインバート上を移動させ、ダンプトラック20もインバート上を走行させるようにしてもよいこと。」
(5)引用文献A
ア 引用文献Aの記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献Aには、以下の記載がある。
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、セグメントの組み立てにより一次覆工を形成するシールドトンネル内に、水平及び垂直の隔壁を築造するシールドトンネル内の隔壁築造方法に関する。」
(イ)「【0016】このようにしてシールドトンネルを掘進しながら同時に、一次覆工の完了したトンネル内において、枕木3下に異物落下防止シート(図示せず)を敷設し、トンネル内底部にインバートコンクリート15を打設する。このインバートコンクリート15の上面には、垂直隔壁挿入用の溝16を同時に形成する。更に、このインバートコンクリートの上面に作業台車走行用のレール17,17を敷設する。
【0017】このようにして、シールドトンネルの掘進に合わせて順次レール17、17を延長し、所定の区間例えば一つの立坑から次の立坑までの区間の数設立後、レール17、17上にブロック搬送台車18を走行させて、プレキャストコンクリート製の水平隔壁ブロック20及び垂直隔壁ブロック21を搬入し、水平隔壁A及び垂直隔壁Bの築造を施工する。」
(ウ)図4は以下のとおり
「
[図:0001388376000005.jpg]
」
上記(イ)の記載を踏まえると、上記図4からは、シールドトンネルは、トンネル内の底部に配置されて上部に平面を有するインバートコンクリート15と、該インバートコンクリート15より上方に配置されるプレキャストコンクリート製の水平隔壁ブロック20を備えることが看取される。
イ 技術事項A
上記アより、引用文献Aには次の技術事項(以下「技術事項A」という。)が記載されているものと認められる。
(技術事項A)
「セグメントの組み立てにより一次覆工を形成するシールドトンネル内に、水平及び垂直の隔壁を築造するシールドトンネル内の隔壁築造方法に関し、
シールドトンネルは、トンネル内の底部に配置されて上部に平面を有するインバートコンクリート15と、該インバートコンクリート15より上方に配置されるプレキャストコンクリート製の水平隔壁ブロック20を備え、
シールドトンネルを掘進しながら同時に、一次覆工の完了したトンネル内において、トンネル内底部にインバートコンクリート15を打設し、更に、このインバートコンクリートの上面に作業台車走行用のレール17,17を敷設し、シールドトンネルの掘進に合わせて順次レール17、17を延長し、レール17、17上にブロック搬送台車18を走行させて、プレキャストコンクリート製の水平隔壁ブロック20及び垂直隔壁ブロック21を搬入し、水平隔壁A及び垂直隔壁Bの築造を施工すること。」
(6)引用文献B
ア 引用文献Bの記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献Bには、以下の記載がある。
(ア)「【0015】
トンネル1の底面には、エレベータ6によって降ろされた台車3が走行する下側走行路として、下側レール10が敷設されている。下側レール10は、エレベータ6からトンネル1の軸方向前方に敷設された下側メインレール10aと、エレベータ6から軸方向後方に敷設された下側待機レール10bとを有する。」
(イ)「【0018】
図3に示すように、先ず、下側待機レール10b上にセグメント5等の資材が載せられていない空の台車(空台車)3xを待機させておき、昇降板8を上昇させて床板2と面一にしておく。この状態で、トンネル入口側Aから上側メインレール4a上を走行してきた実台車3y(セグメント5等の資材が載せられた台車)が、昇降板8の中間レール9上に乗り移る。
【0019】
次に、図4に示すように、昇降板8が下降し、トンネル1の底面の凹部11に係合する。そして、昇降板8の上の実台車3yが下側メインレール10a上を前方に走行し、実台車3yに載置されたレール10aが順次敷設され、実台車3yに載置されたセグメント5がトンネル奥側Bのシールドマシンのセグメント組立装置(エレクタ)に供給される。これと同時に、下側待機レール10b上の空台車3xが前進し、図5に示すように、昇降板8の中間レール9に乗り移る。」
イ 技術事項B
上記アより、引用文献Bには次の技術事項(以下「技術事項B」という。)が記載されているものと認められる。
(技術事項B)
「トンネル1の底面には、台車3が走行する下側走行路として、下側レール10が敷設され、下側レール10は、下側メインレール10aを有し、セグメント5等の資材が載せられた台車が下側メインレール10a上を走行し、セグメント5がシールドマシンのセグメント組立装置に供給されること。」
(7)引用文献C
ア 引用文献Cの記載
本件特許の原原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献Cには、以下の記載がある。
(ア)「【背景技術】
【0002】
道路やライフライン用としてシールド掘進機により掘進されたシールドトンネルは、一般にトンネルの中央付近に構築された床版を境に、車道として利用される上部空間と、排水、電気等の保全施設や避難施設等として利用される下部空間とに区画されている。
また、床版はプレキャスト部材等の構成部材を組立てて構築される。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0010】
本発明は、このような実状に鑑み、床版等の構築物の構成部材をその設置位置に効率的に搬送することを目的とする。」
(イ)「【0019】
円形断面を有するトンネルの覆工体10は、シールド掘進機(図示せず)による掘進と並行してセグメント11(後述する図3(b)参照)をトンネル周方向及びトンネル軸方向に連結させることにより構築される。
【0020】
覆工体10内での床版12の構築に用いられるトンネル施工装置1は、門型台車2と、この門型台車2に設置されたリフト装置3及びクレーン(揚重搬送装置)4とにより構成される。
【0021】
門型台車2はその前進方向がトンネル掘進方向である。
門型台車2は、左右方向断面で見て下側開口のコの字形状を有して前後方向に所定の長さで延在する台車本体(ガントリー)21と、その下面側に配置された左右一対の前輪22及び左右一対の後輪23とにより構成される。
・・・
【0028】
台車本体21の下面側に配置された前輪22及び後輪23は、それぞれ、ウレタンタイヤである。また、覆工体10上の円弧状の路面RSに直角に接するように、前輪22及び後輪23は、各々の左右両輪が正面から見てハの字状になるように、車軸を傾斜させて配置される。」
(ウ)「【0033】
搬送車両5は、覆工体10の底部に予め敷設された2本のレールからなる軌道51に沿ってトンネル軸方向に走行するものであり、トンネル工事用の資材の搬送に用いられる。」
(エ)「【0055】
図8~図10は、トンネル施工装置1を用いた床版の構築方法を示す。
尚、本実施形態では、ハーフプレキャスト型枠工法を用いた床版の構築を例にとって以下説明する。
・・・
【0069】
また本実施形態によれば、クレーン4はパネル部材12aを門型台車2のトンネル掘進方向とは反対方向である後方の設置位置に搬送する。これにより、門型台車2をトンネルの掘進に応じて前進させつつ、門型台車2の後方にパネル部材12aを搬送して床版12を構築することができる。
・・・
【0071】
また本実施形態によれば、門型台車2は、トンネル内をトンネル軸方向に自走する。これにより、シールド掘進機の掘進サイクルに影響を受けることなく、パネル部材12aの設置状況に応じて、門型台車2を前進させることができる。」
イ 技術事項C
上記アより、引用文献Cには次の技術事項(以下「技術事項C」という。)が記載されているものと認められる。
(技術事項C)
「シールド掘進機により掘進されたシールドトンネルにおける、プレキャスト部材等の構成部材を組立てて構築するトンネルの中央付近に構築された床版の構築方法において、
セグメント11をトンネル周方向及びトンネル軸方向に連結させることにより構築される覆工体10内での床版12の構築に用いられるトンネル施工装置1は、門型台車2と、この門型台車2に設置されたリフト装置3及びクレーン4とにより構成され、
門型台車2は、台車本体21と、その下面側に配置された左右一対の前輪22及び左右一対の後輪23とにより構成され、
前輪22及び後輪23は、覆工体10上の円弧状の路面RSに直角に接するように、各々の左右両輪が正面から見てハの字状になるように、車軸を傾斜させて配置され、
門型台車2は、トンネル内をトンネル軸方向に自走し、これにより、シールド掘進機の掘進サイクルに影響を受けることなく、パネル部材12aの設置状況に応じて、門型台車2を前進させることができ、
クレーン4は、門型台車2をトンネルの掘進に応じて前進させつつ、門型台車2の後方にパネル部材12aを搬送して床版12を構築することができ、
搬送車両5は、覆工体10の底部に予め敷設された2本のレールからなる軌道51に沿ってトンネル軸方向に走行するものであり、トンネル工事用の資材の搬送に用いられること。」
2 対比・判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明の「トンネル」の「底部」に「複数のプレキャストインバートが敷設されて」「構築され」た「上部に平面を有するインバート」は、本件発明1の「トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバート」に相当する。
(イ)甲3発明の「トンネルの高さ方向略中央部」に「構築され」た「スラブ」は、「トンネル」の「底部」に「構築され」る「インバート」よりも上方に配置されるものであるから、本件訂正発明1の「インバートより上方に配置される床版」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲3発明の「床版や中壁など」の「トンネル内部の構築方法」は、本件訂正発明1の「トンネル内部構造の構築方法」に相当する。
(エ)甲3発明の「シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進」は、本件訂正発明1の「シールド機で地中を掘削し」に相当する。「セグメント」による「覆工」が、シールド機の後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保するように構築されることは、シールドトンネル施工の分野の技術常識であるから、甲3発明の「シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進」で「構築された」「シールドトンネル」が、「セグメントによって覆工され」るものであることから、甲3発明は、トンネルの構築方法において、本件訂正発明1の「シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築」することに相当する構成を備えるといえる。
(オ)甲3発明が「セグメントによって覆工され」た「トンネル」の「底部」に「複数のプレキャストインバートが敷設されて上部に平面を有するインバートが構築され」、「トンネルの高さ方向略中央部」に「複数のプレキャスト床版が配設されてスラブが構築され」、「スラブ」が、中壁とともに「トンネルの掘進方向に沿って」いることは、スラブとともに構築される中壁がその上に構築される「インバート(複数のプレキャストインバート)」も「トンネルの掘進方向に沿って」設置されることは自明であるから、本件訂正発明1の「(覆工を構築し、その後、)トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方にプレキャスト床版によって構成される床版を設置する」に相当する。
(カ)甲3発明において「セグメントによって覆工され」た「トンネル」の「底部」に「複数のプレキャストインバートが敷設されて上部に平面を有するインバートが構築され」ることと、本件訂正発明1の「前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行」うこととは、「前記プレキャストインバートの設置を行」うことで共通する。
そして、甲3発明において(「構築され」た)「インバートの上に」「複数のプレキャスト板が立設され」、「トンネル内部の構築を行う際には、中壁を構成するプレキャスト板を立設させ」、「次に、スラブを構成するプレキャスト床版を設置する作業」を行うことは、「中壁」がその上に構築される「インバート」も「トンネルの掘進方向に沿って」設置されることは自明であるといえ、また、トンネル掘進に合わせて切羽側から施工がなされるトンネル内部の構築において、工程上、「インバートを設置」することの「後」に行われる「床版」の「設置」が、「インバートの設置」位置の「後方で」行われることも自明であることに鑑みると、本件訂正発明1の「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することと、「更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することで共通するといえる。
(キ)そうすると、本件訂正発明1と甲3発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記プレキャストインバートの設置を行い、更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する、トンネル内部構造の構築方法。
(相違点1)
本件訂正発明1は、プレキャストインバート及び床版の設置位置について、後続台車との関係で、プレキャストインバートについては「前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で」行い、床版については、「後続台車の後方で」設置することが特定されるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。
(相違点2)
本件訂正発明1は、「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」と特定されるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。
(相違点3)
本件訂正発明1は、「プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」と特定されるのに対し、甲3発明は、シールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行うものではあるものの、本件訂正発明1のようには特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
a 甲4技術事項について
(a) 甲4技術事項の「シールド掘削機10」及び「後続台車設備」は、本件訂正発明1の「シールド機」及び「後続台車」に相当する。
(b)甲4技術事項において、「プレキャストインバート22」は、「シールド掘削機10がインバート22の長さ以上に推進移動した段階で、セグメント14の底部に敷設するようにして、セグメント14の底部にはシールド掘削機10の後方に二次覆工の構成部材であるインバート列」を「構築」するものであるものの、その設置が「シールド掘削機10」及び「後続台車設備」との関係においてどこで行われているかは不明であり、相違点1に係る本件訂正発明1の「前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で」について記載も示唆もない。
(c)また、甲4技術事項は床版を備えないから、「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することについても記載も示唆もない。
b 甲5技術事項について
(a)甲5技術事項の「シールド掘削機11」は本件訂正発明1の「シールド機」に相当し、甲5技術事項の「道路13の路盤(路盤面13A)や舗装(舗装面13B)などが」「施工される」ことは、本件訂正発明1の「床版を設置し」に相当するといえる。
(b)甲5技術事項の「アーチ型プレキャスト版1の上方の所定位置からセグメント12の組立位置R2までの所定範囲にわたって移動可能な移動式クレーン20」が、シールド掘削機11に後続するのは自明であるから、「後続台車」であるとはいえる。しかし、シールド掘削機11との関係が不明であって、後続台車が「前記シールド機に連結された」ものであることについては記載も示唆もない。
(c)また、甲5技術事項は、「設置されたアーチ型プレキャスト版1の下方のアーチ内空間T」が「搬送ロコ23」や「搬送台車24」の「搬送台車24の搬送用通路として使用され」るものであるものの、「プレキャストインバート」を設置するものではなく、プレキャストインバートの設置を「前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で」行うことについて記載も示唆もない。
c 甲6技術事項について
(a)甲6技術事項の「シールド機1」及び「シールド機1の後方に連結ビーム8により連結されてシールド機1の前進に伴って移動する門型の架台10」は、それぞれ、本件訂正発明1の「シールド機」及び「前記シールド機に連結された後続台車」に相当する。
(b)甲6技術事項において「シールド機1と門型の架台10との間で床版FPを構築する代わりに、インバートを構築」することは、床版FPを構築する代わりに、インバートを構築」する際には、「シールド機1と門型の架台10との間」で、床版FP用の部材の代わりのインバート用の部材を設置することでインバートを構築するものと理解できるから、本件訂正発明1の「シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、プレキャストインバートを設置」することに相当する。
(c)しかし、甲6技術事項は、「床版FPを構築する代わりに、インバートを構築」するものであるから、「インバートより上方に床版を設置」するものではなく、そのため、「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することについて記載も示唆もない。
d 技術事項Aについて
引用文献Aは、トンネル施工時に資材運搬にレールを用いることが周知技術であることを示すために当審が職権探知した文献であって、技術事項Aの「インバート」は「プレキャストインバート」ではなく、また、後続台車についても特定されていないから、プレキャストインバートの設置を「前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で」行うことについても、床版を「後続台車の後方で」設置することについても記載も示唆もない。
e 技術事項Bについて
引用文献Bは、トンネル施工時に資材運搬にレールを用いることが周知技術であることを示すために当審が職権探知した文献であって、技術事項Bには、相違点1に係る本件訂正発明1の構成について、記載も示唆もされていない。
f 技術事項Cについて
(a)技術事項Cの「シールド掘進機」は本件訂正発明1の「シールド機」に相当する。
(b)技術事項Cの「門型台車2」と、本件訂正発明1の「前記シールド機に連結された後続台車」とは、「後続台車」の点で共通する。
(c)上記(b)の対比を踏まえると、技術事項Cの「門型台車2の後方で」は、本件訂正発明1の「更に後続台車の後方で」に相当するといえる。
(d)しかし、技術事項Cの「門型台車2」は、「トンネル内」を「自走」するものであって、「シールド機に連結された後続台車」について記載も示唆もされていない。
(e)また、技術事項Cは、「プレキャストインバート」を設置するものではなく、プレキャストインバートの設置を「前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で」行うことについて記載も示唆もない。
g 甲12について
甲第12号証(以下「甲12」という。)は、特許2891329号公報であって、申立人が、令和4年6月8日付け意見書に添付して提出した証拠である。
甲12は、摘記は省略するが、「前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車」が周知技術であることを示すために提出された文献であって、甲12には、相違点1に係る本件訂正発明1に係る構成について、記載も示唆もされていない。
h 上記aないしgで検討したように、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12のいずれにも記載されておらず、甲3発明において、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12から相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
i よって、相違点2及び相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲3発明とを対比する。
(ア)(1)アの(ア)ないし(オ)の本件訂正発明1と甲3発明との対比は、本件訂正発明2と甲3発明との対比においても同様である。
(イ)甲3発明において「セグメントによって覆工され」た「トンネル」の「底部」に「複数のプレキャストインバートが敷設されて上部に平面を有するインバートが構築され」ることと、本件訂正発明2の「前記覆工を構築した後、シールド機と、該シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置」することとは、「前記覆工を構築した後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置」することで共通する。
そして、甲3発明において(「構築され」た)「インバートの上に」「複数のプレキャスト板が立設され」、「トンネル内部の構築を行う際には、中壁を構成するプレキャスト板を立設させ」、「次に、スラブを構成するプレキャスト床版を設置する作業」を行うことは、「中壁」がその上に構築される「インバート」も「トンネルの掘進方向に沿って」設置されることは自明であるといえ、また、トンネル掘進に合わせて切羽側から施工がなされるトンネル内部の構築において、工程上、「インバートを設置」することの「後」に行われる「床版」の「設置」が、「インバートの設置」位置の「後方で」行われることも自明であることに鑑みると、本件訂正発明2の「更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する」ことと、「更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する」ことで共通するといえる。
(ウ)そうすると、本件訂正発明2と甲3発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記覆工を構築した後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する、トンネル内部構造の構築方法。
(相違点1’)
本件訂正発明2は、プレキャストインバート及び床版の設置位置について、後続台車との関係で、プレキャストインバートについては「前記シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で」行い、床版については、「後続台車の後方で」設置することが特定されるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。
(相違点3’)
本件訂正発明2は、「プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」と特定されるのに対し、甲3発明は、シールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行うものではあるものの、本件訂正発明2のようには特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1’について
相違点1’は、相違点1の相違点をすべて含むものであるところ、相違点1については、上記(1)で検討したように、甲3発明において、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12から相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、相違点1’についても、同様に、甲3発明において、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12から相違点1’に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、相違点3’について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲3発明、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
(3)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3と甲3発明とを対比する。
(ア)(2)アの(ア)及び(イ)の本件訂正発明2と甲3発明との対比は実質的に、本件訂正発明3と甲3発明との対比においても同様である。
(イ)そうすると、本件訂正発明3と甲3発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
トンネル内の底部上に配置されて上部に平面を有するインバートと、該インバートより上方に配置される床版と、を備えるトンネル内部構造の構築方法であって、
シールド機で地中を掘削し、後方部でセグメントを組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築し、その後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置することを含み、
前記覆工を構築した後、トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、更にその後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置する、トンネル内部構造の構築方法。
(相違点1’’)
本件訂正発明3は、プレキャストインバート及び床版の設置位置について、後続台車との関係で、プレキャストインバートについては「前記シールド機と、前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車との間で、又はその後続台車で」行い、床版については、「後続台車の後方で」設置することが特定されるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。
(相違点2’’)
本件訂正発明3は、「前記プレキャストインバートの上部の平坦面の上には、トンネル施工時の資材運搬用のレールを配置し、」と特定されるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。
(相違点3’’)
本件訂正発明3は、「プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」と特定されるのに対し、甲3発明は、シールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行うものではあるものの、本件訂正発明3のようには特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1’’について
相違点1’’は、相違点1の相違点をすべて含むものであるところ、相違点1については、上記(1)で検討したように、甲3発明において、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12から相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、相違点1’’についても、同様に、甲3発明において、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12から相違点1に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)よって、相違点2’’、相違点3’’について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲3発明、甲4技術事項ないし甲6技術事項、引用事項AないしC並びに甲12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
(4)申立ての意見書における主張について
ア 申立人の主張の概要
申立人は、令和4年6月8日提出の意見書にて、概略以下の主張をしている。
(ア)本件訂正により、令和3年12月24日付けの訂正請求と比較して、「前記シールドに連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて。移動する後方台車」との構成(以下「追加構成1」という。)及び「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」との構成(以下「追加構成2」という。)が追加された(意見書第3ページ下から3行~第4ページ第4行)。
(イ)しかし、追加構成1は、甲6及び甲12に記載された周知技術に過ぎない(意見書第4ページ第6行~第5ページ第2行)。
(ウ)追加構成2について、甲3の明細書段落【0024】、【0025】及び【0055】によれば、甲3においてインバートNは、プレキャスト床版R1の施工前に施工されている。トンネルの掘進にともなって後続台車は切羽側に移動すれば、その後ろにはセグメントで覆工されたトンネル及びプレキャストインバートが残され、甲3においてシールドトンネル内の構造を構築するための装置である床版組立装置が走行できるからプレキャスト床版R1の設置が可能となるのであるし、甲5においてもアーチ型プレキャスト版の設置が可能なのであり、甲5では、アーチ型プレキャスト版1の上に床版が設置されるのは明らかである。以上のことから、シールド機の後方でプレキャスト床版を設置することは周知技術ということができる。甲3には、プレキャストインバートをどのようにして敷設するかについては記載されていないが、甲3及び甲6に接した当業者であれば、プレキャストインバート上で後続台車を走行させるため、甲6に記載された追加構成1;「前記シールド機に連結されて前記シールド機のトンネル軸方向の掘進に合せて移動する後続台車」の構成とし、同じく甲6に記載された「シールド機と、後続台車との間で後続台車がインバートを設置する」構成を採用し、さらに、甲3発明に記載された追加構成2:「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」する構成を採用して、本件発明2の構成とすることにつき、何ら困難性はない。(意見書第5ページ第3行~第6ページ下から4行)
イ 主張の検討
追加構成2について、甲3発明は、後続台車について特定されていないため、プレキャストインバート及び床版の設置位置が、後続台車との関係で特定されておらず、追加構成2の「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することは、記載も示唆もされていない。この点は、甲3の明細書段落【0024】、【0025】及び【0055】を参酌しても同様である。
甲6技術事項は、インバート及び床版をともに設置するものではないから、追加構成2の「更に後続台車の後方で、前記プレキャストインバートより上方に前記床版を設置」することは、記載も示唆もされていない。
甲5技術事項は、「プレキャストインバート」を備えておらず、また、甲5技術事項の「移動式クレーン20」は「前記シールド機に連結された」ものとはいえないから、仮に甲5技術事項が移動式クレーン20よりも後方で床版を設置するものであったとしても、甲3発明に甲6技術事項を適用した後にさらに甲5技術事項のうち移動式クレーン20よりも後方で床版を設置することを適用することが、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、本件訂正発明は、甲3発明及び甲6技術事項に基づいて、または甲3発明及び甲5、甲6技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし3は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明、甲4技術事項ないし甲6技術事項、技術事項AないしC並びに甲12に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 新規事項について
(1)申立人の主張の概要
甲7は特許第6796160号公報であって、当該公報は、本件特許に係る特許出願の分割基礎となった特許出願である特願2019-72565号(「原出願」)に係る特許公報である。
よって、申立人の主張は、原出願には、その審査過程において新規事項が追加され、本件特許に係る特許出願は、当該追加された新規事項をそのまま含んでいるものであるから、特許法第17条の2第3項違反が看過されて特許にされたものであり、特許法第113条第1号の規定により取り消されるべきである旨の主張と理解できる。
(2)申立人の主張の検討
下記2(3)において検討するように、原出願の審査段階でなされた補正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項を追加するものではない。
また、仮に、原出願の補正が新規事項を追加するものであるとしても、特許法第17条の2は、明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時期及び範囲について規定するものであり、すなわち、補正が「出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かを判断するものであるから、原出願が補正により新規事項を含むものとなったことをもって、本件特許に係る特許出願が新規事項を導入するものとはならない。
よって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に違反してされたものではない。
2 新規性について
(1)本件特許に係る特許出願の出願日について
申立人の新規性に関する主張は、本件特許に係る特許出願は分割が不適法であるため出願日が遡及せず、出願日が本件特許に係る特許出願の現実の出願日の令和2年10月22日であることを前提としている。よって、新規性の判断にあたっては、まず、本件特許に係る特許出願の出願日について検討する。
(2)分割不適法に関する申立人の主張
上記1の新規事項に関する主張の中で、以下の事項が、本件特許に係る特許出願の分割要件にも関する主張であると推測される。
ア 原出願の審査経過において令和2年6月22日付けの手続補正により請求項2の発明特定事項として追加された「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」は、後続台車がプレキャストインバート上を走行する必然性が無い発明まで包含するものであるところ、補正の根拠とされた原出願の明細書【0039】における「プレキャストインバート51の上をシールド機の後続台車やシールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する。」は、「シールド機の後続台車も、シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両も走行する」という意義を有し、資機材運搬車両だけを指定して、プレキャストインバート上を走行させる意義はなく、明細書には後続台車を別途走行させるための手段を構築する工程ステップはまったく記載されていないから、原原出願の明細書等に記載された範囲ではない。(申立書第15ページ下から10行~24ページ最下行)
イ 甲7(原出願)の発明の解決課題は、原出願の明細書の段落【0008】に記載された「シールドトンネルにおけるインバートを設置した後に、インバート上に微細な破損等が生じても容易に修復可能なトンネル内部構造及びその構築方法を提供する」ことであり、本件明細書に記載された解決課題は、段落【0007】の「本発明は、このような実状に鑑み、早期に資機材運搬車両を走行可能とすることを目的とする。」であり、その解決課題は全く相違する。さらに、甲7の特許明細書には、後続台車や資機材運搬車両がプレキャストインバート上を走行することは記載するが、資機材運搬車両を特定して早期に走行させることを認識させる記載もない。そうすると、本件発明1~3は、その分割出願時において、甲7の直前明細書に記載された発明を分割したものということはできない。(第25ページ第6~19行)
(3)分割不適法に関する申立人の主張の検討
ア 「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」について
(ア)原出願は、令和2年6月22日付け手続補正により特許請求の範囲及び明細書の段落【0009】が補正され、特許請求の範囲の【請求項2】及び明細書の段落【0009】に、「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」との記載が存在するものとなった。
(イ)一方、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面」を「当初明細書等」という。)及び分割直前の明細書の段落【0039】には、以下の事項が記載されている。なお、原原出願の当初明細書及び分割直前の明細書の段落【0039】にも、原出願の段落【0039】と同じ記載がある。
「【0039】
続いて、本実施形態のトンネル内部構造を構築する手順について説明する。先ず、シールド機の先端部で地中を掘削し、後方部で円弧状セグメント10aを円周方向に組み立てて掘削断面を支保する覆工を構築する作業工程を、1リング毎に繰り返しながら、シールドトンネル1のトンネル壁部を構築する。次に、プレキャストインバート51を設置し、プレキャストインバート51の上をシールド機の後続台車やシールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する。その後、シールド機に連結され、またはシールド機の掘進に合せて移動する後続台車の後方で、側壁コンクリート部15が打設される。その後、板状体31の下端面31aに設けられている凸型金物38のピンボルト38bを、プレキャストインバート51の上部に設けられた凹型金物58に嵌合させ、プレキャストインバート51の上部に板状体31を連結する。」(下線は当審で付した。)
(ウ)そうすると、令和2年6月22日付け手続補正による【請求項2】に「前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」との発明特定事項を追加する補正は、原出願の当初明細書の段落【0039】の記載に基づくものであって、新規事項ではなく、原出願の明細書段落【0039】の内容は原原出願の同【0039】にも記載されているから、分割が不適法となるものでもない。明細書段落【0009】の補正は、特許請求の範囲の補正と整合するように明細書の課題を解決するための手段の記載を補正したものであって、【請求項2】と同様の理由により、新規事項ではなく、分割が不適法となるものでもない。
(エ)確かに、原出願の当初明細書等には、後続台車と資機材運搬車両とを別々に走行させるために工程について全く記載されていない。しかし、本件訂正発明は、プレキャストインバート上を、少なくとも「資機材運搬車両」が走行することによって、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバートが設置された直後から車両の走行が可能となるものであって、特許請求の範囲において後続台車走行位置が特定されないことによって新たな技術的事項が導入されるものではない。同様の理由により、分割不適法とされるものでもない。
イ「早期に資機材運搬車両を走行可能とすることを目的とする。」について
(ア)本件明細書の段落【0042】には、以下の事項が記載されている。なお、原出願の当初明細書及び分割直前の明細書の段落【0044】、原原出願の当初明細書及び分割直前の明細書の段落【0044】にも、本件明細書の段落【0042】と同じ記載がある。
「【0042】
また、本実施形態では、プレキャストインバート51をトンネル軸方向に列をなすように配置していくことで、インバート50を形成している。この構造では、トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から、インバート50の上面をシールド機の後続台車や資機材運搬車両が走行することができる。例えば、インバート50の上部の平坦面51aの上には、トンネル施工時に、資材等を運搬するレール等を配置することもできるので、リング10の底部上を走行する場合と比べて、安定した走行が可能となる。」(下線は当審で付した。)
(イ)本件特許に係る特許出願は、「トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から、」「資機材運搬車両を走行可能とする」ことができるように、「トンネル軸方向に向かってプレキャストインバートを設置し、・・・前記プレキャストインバートの設置を、前記シールド機と、前記シールド機に連結された後続台車との間で、又はその後続台車で行い、・・・前記プレキャストインバートが設置された直後から、前記プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」ことを発明特定事項としたものと認められる。
(ウ)そして、原出願から発明特定事項や課題が変更されたことから、本件明細書の【0007】において、上記明細書段落【0042】の「トンネル壁部を形成した後に、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバート50が設置された直後から」であることを「早期に」として、「早期に資機材運搬車両を走行可能とすることを目的とする」としたものと理解できる。
(エ)そうすると、「早期に資機材運搬車両を走行可能とすることを目的とする。」ことは、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。同様の理由により、分割不適法とされるものでもない。
(4)本件特許に係る特許出願の出願日についての結論
以上のとおりであるから、本件特許に係る特許出願の出願日は、原原出願の出願日である平成27年12月21日である。
(5)新規性について
申立人は、甲1、甲2、甲2の1ないし甲2の7の記載によって把握される、2015年3月25日~2019年3月18日までの予定工期で構築された首都高速横浜環状北西線のシールドトンネルの施工において用いられたトンネル内部構造の構築方法は、本件特許の特許出願時に公然知られた発明であるか、若しくは刊行物に記載された発明であると主張している。
しかし、上記(1)ないし(4)で検討したとおり、本件特許に係る特許出願の出願日は、平成27年12月21日であり、首都高速横浜環状北西線のシールドトンネルの施工において用いられたトンネル内部構造の構築方法は、本件特許の特許出願時に刊行物に記載されていた発明ではない。
また、甲1は、2017年1月の文献であり、甲2ないし甲2の3は2018年11月13日実施の公開講座についての記事及び画像であり、甲2の4ないし甲2の7は、2018年1月31日撮影の画像ないしそれら画像を掲載した内容が2020年4月21日にインターネットアーカイブに収集されたものであるから、予定工期(2015年(平成27年)3月25日~2019年3月18日)の始期において重複はあるものの、甲1、甲2、甲2の1ないし甲2の7からは、首都高速横浜環状北西線のシールドトンネルの施工において用いられたトンネル内部構造の構築方法が、平成27年12月21日に公然知られた発明であるとはいえない。
よって、本件訂正発明は、甲1、甲2、甲2の1ないし甲2の7の記載によって把握される、2015年3月25日~2019年3月18日までの予定工期で構築された首都高速横浜環状北西線のシールドトンネルの施工において用いられたトンネル内部構造の構築方法によって新規性が否定されるものではない。
3 明確性要件について
(1)申立人の主張の概要
申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
本件特許明細書段落【0037】において「プレキャストインバート51の上をシールド機の後続台車やシールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する。」と記載し、後続台車と資機材運搬車両とを別々に走行させることを何ら記載しないにもかかわらず、方法発明である本件発明1ないし3は、「プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」と、プレキャストインバート上を資機材運搬車両だけが走行することを規定し、なおさらに、発明の解決課題として資機材運搬車両を指定して早期に走行させることを規定する。
シールドトンネルの施工においては、シールド掘進において後続台車がプレキャストインバート上でシールド機に追従して走行できなければ、後続台車無しにはシールド機にセグメントなどを供給できず、セグメントの施工ができないから、本件発明1ないし3は、シールド工法における後続台車の技術的意義を考慮しないものに帰し、本件発明1~3の本質的な解決課題であるトンネル内部構造の構築方法を行うことが想定できない態様まで包含するといわざるをえない。
そうすると、本件発明1~3は、特許庁特許審査基準第II部第2章第3節2.2(2)b「発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる場合」に該当するから、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。
(2)申立人の主張の検討
本件訂正発明は、「プレキャストインバート上を、前記シールド機に資機材を運搬する資機材運搬車両が走行する」と特定されており、プレキャストインバート上を、少なくとも「資機材運搬車両」が走行することによって、コンクリートの打設や養生をすることなく、インバートが設置された直後から車両の走行が可能となるという技術的意義が理解できる。
そして、本件訂正発明は、後続台車が走行するのが「プレキャストインバート上」であることを特定しないのみであって、後続台車がシールド機に追従して走行しないことを特定するものではなく、また、後続台車が走行する位置が「プレキャストインバート上」でなければ、プレキャストインバート上を「資機材運搬車両」が走行することができないものでもない。
よって、本件訂正発明1ないし3は、明確である。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし3に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件訂正発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700816