特許異議申立
2017-700388
共重合ポリエステル樹脂、及びその製造方法
- 審判番号
- 2017-700388
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-512127外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月19日
- 審決日
- 2017年12月20日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【異議申立人】特許業務法人 虎ノ門知的財産事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6011742号発明「共重合ポリエステル樹脂、及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6011742号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、7〕について訂正することを認める。
特許第6011742号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第6011742号の請求項1、4ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
特許第6011742号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成28年2月3日(優先権主張2015年2月6日、日本国(2件))を国際出願日とする出願であって、同年9月30日付けでその特許権の設定登録がされ、同年10月19日に特許公報が発行され、その後、平成29年4月19日付けで特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年6月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月30日付けで意見書が提出され、訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたが、本件訂正請求に対して特許異議申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「テレフタル酸を75モル%以下の割合で含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂において、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下である
(2)カラーb値が5以下である」とあるのを、
「テレフタル酸を75モル%以下の割合で含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂において、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み、前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含み、重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有し、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下である
(2)カラーb値が5以下である」と訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含む接着剤。」とあるのを、
「請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂を含む接着剤。」と訂正する。
(5) 訂正事項5
本件特許明細書の段落【0020】ないし【0022】及び【0026】において、
「【0020】
1.テレフタル酸を75モル%以下の割合で含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂において、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下である
(2)カラーb値が5以下である
【0021】
2.重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有する前記1項に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0022】
3.前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み、前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含む前記1項または2項に記載の共重合ポリエステル樹脂。」及び
「【0026】
7.前記1項~3項のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含む接着剤。」
とあるのを、
「【0020】
1.テレフタル酸を75モル%以下の割合で含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂において、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み、前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含み、重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有し、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下である
(2)カラーb値が5以下である
【0021】
(削除)
【0022】
(削除)」及び
「【0026】
7.前記1項に記載の共重合ポリエステル樹脂を含む接着剤。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「共重合ポリエステル樹脂」を構成する「ジカルボン酸成分」及び「ジオール成分」について、それぞれ「前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み」及び「前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含み」と特定し、同じく「共重合ポリエステル樹脂」に含まれる重合触媒を「重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有し」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 「前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み」、「前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含み」及び「重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有し」は、それぞれ、本件特許明細書の段落【0022】及び段落【0021】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2) 訂正事項2、3
ア 訂正事項2、3は、訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2、3は、訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項2、3は、訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(3) 訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項2、3を削除したことに伴い、引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(4) 訂正事項5
ア 訂正事項5は、上記訂正事項1ないし4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項5は、上記訂正事項1ないし4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項5は、上記訂正事項1ないし4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(5) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3及び7について、請求項2、3及び7は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし3及び7に対応する訂正後の請求項1ないし3及び7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(6)願書に添付した明細書又は図面の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行っているかについて
本件訂正請求による訂正は、請求項1ないし3及び7についての訂正であるから、明細書又は図面の訂正に係る請求項1ないし3及び7を含む一群の請求項の全てについて行っており、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合する。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-3、7]について訂正を認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された後の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。総称して「本件特許発明」という場合がある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
テレフタル酸を75モル%以下の割合で含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂において、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み、前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含み、重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子、及び重合触媒であるリン化合物由来のリン原子をそれぞれ、共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm、10~100ppm含有し、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下である
(2)カラーb値が5以下である
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種、及びリン化合物から選択される少なくとも1種を含む重合触媒を用い、全ジカルボン酸成分の75モル%以下の割合でテレフタル酸を含むジカルボン酸成分と、2種類以上のジオール成分とを構成成分とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法であって、下記(3)及び(4)を満足することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
(3)エステル化反応を開始する際の全ジカルボン酸成分のモル量(A)と全ジオール成分のモル量(G)の比(G/A)が0.8~1.4である
(4)エステル化反応終了後の反応中間生成物のカルボン酸末端基濃度が500~1500eq/ton、ヒドロキシル末端基濃度が1500~3000eq/tonである
【請求項5】
エステル化反応終了後の反応中間生成物の全末端基に対するヒドロキシル末端基の割合が、55~75モル%であることを特徴とする請求項4記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、テレフタル酸と、オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上を合わせた合計で80モル%以上含み、前記ジオール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で80モル%以上含む請求項4または5に記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂を含む接着剤。」
第4 取消理由
平成29年6月29日付けで通知した取消理由は、次のとおりである。
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
請求項1ないし3、請求項7について
本件特許発明の課題は、「本発明は、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重縮合触媒を用いて製造される共重合ポリエステル樹脂であり、各種用途へ適応される接着剤に用いた場合に、優れた色調や耐久性を有する接着剤樹脂を得ることが出来る、共重合ポリエステル樹脂を提供する」(段落【0015】)ことである。
かかる課題を解決するため、発明の詳細な説明には、「本発明に用いられる重合触媒はエステル化を促進させる能力を有することを特徴とする重合触媒である。このような重合触媒としては、アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種と、リン系化合物から選択される少なくとも1種を含む重合触媒が好ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下であり、かつ、カラーb値が5以下である特徴を満たすためには、この重合触媒の選択が非常に重要となる。」(段落【0044】)との記載、「本発明の共重合ポリエステル樹脂は、重合触媒であるアルミニウム化合物由来のアルミニウム原子を共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、1~80ppm含有することが好ましい。・・・上記を下回ると触媒活性不良となる可能性があり、上記を超えるとアルミニウム系異物生成を引き起こす可能性がある。」(段落【0047】)との記載、「本発明の共重合ポリエステル樹脂は、重合触媒であるリン化合物由来のリン原子を共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して、10~100ppm含有することが好ましい。・・・上記の上下限の範囲を超える量のリン原子が残存することで、重合活性を低下させる可能性がある。」(段落【0062】)との記載、「テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、オルソフタル酸、イソフタル酸の内の少なくとも1種を含むことが、得られるポリエステルの物性等の点で好ましい。これらの成分に加えて、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内の少なくとも1種を含むことが得られるポリエステルの物性等の点で好ましく・・・ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸を75モル%以下の割合で含み、『テレフタル酸』と、『オルソフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の内、少なくとも1種以上』を合わせた合計で、80モル%以上を占めることが好まし」い(段落【0030】)との記載及び「これらのジオールのうちエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。ジオール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールの内、少なくとも2種以上の合計で、80モル%以上を占めることが好まし」い(段落【0033】)との記載がある。
また、発明の詳細な説明には、実施例として(【表1】)、重合触媒として、アルミニウム化合物、リン化合物だけが、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸以外には、イソフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸だけが、ジオール成分として、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールだけが記載されている。
以上に照らせば、本件特許発明3(請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に係る発明)及び本件特許発明7(請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項7に係る発明)以外の発明が上記課題を解決できるのか否か不明である。
また、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明3(請求項1を引用する請求項3に係る発明)又は本件特許発明7の全範囲において、上記課題が解決されると当業者が理解できる記載もないし、上記課題が解決されるとの出願時の技術常識があるともいえない。
そうすると、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明3(請求項1を引用する請求項3に係る発明)又は本件特許発明7(請求項1又は2だけを引用する請求項7に係る発明)は、発明の詳細な説明において上記課題が解決されることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているものである。
よって、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明3(請求項1を引用する請求項3に係る発明)又は本件特許発明7(請求項1又は2だけを引用する請求項7に係る発明)は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
第5 当審の判断
本件訂正請求による訂正により(第2の3)、本件特許発明1は、本件訂正請求による訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に係る発明となった。
発明の詳細な説明の記載、とりわけ段落【0044】、段落【0047】、段落【0062】、段落【0030】、段落【0033】及び実施例(【表1】)の記載に照らせば、出願時の技術常識を参酌するまでもなく、本件特許発明1の課題、すなわち「本発明は、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重縮合触媒を用いて製造される共重合ポリエステル樹脂であり、各種用途へ適応される接着剤に用いた場合に、優れた色調や耐久性を有する接着剤樹脂を得ることが出来る、共重合ポリエステル樹脂を提供する」(段落【0015】)ことが解決されると当業者が理解できる。
また、請求項1を引用する請求項7に係る本件特許発明7についても同様である。
よって、本件特許発明1及び本件特許発明7は、発明の詳細な説明に記載されているから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第6 補足的判断
以下に、取消理由とはしなかった特許異議申立の理由について簡潔に検討する。
1 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
(1) 本件特許発明1と特開2006-291030号公報(特許異議申立書に添付された甲第1号証。以下、「甲1」という。)に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)を比較する。
まず、甲1には、本件特許発明1の発明特定事項である「(1)共重合ポリエステル樹脂を窒素雰囲気下、275℃で2時間加熱処理した後の還元粘度の低下が、0.20dl/g以下であ」り、かつ「(2)カラーb値が5以下である」(以下、「本件特許発明1の発明特定事項」という。)ことが記載も示唆もされていないから、甲1発明が本件特許発明1と同一であるとはいえない。
仮に、本件特許発明1が本件特許発明4の方法で製造されるとの前提に立った上で、両者を比較したとしても(特許異議申立書第25頁第23~25行目)、甲1発明は、本件特許発明4の発明特定事項である「(3)エステル化反応を開始する際の全ジカルボン酸成分のモル量(A)と全ジオール成分のモル量(G)の比(G/A)が0.8~1.4である」点については記載されておらず、また、「(4)エステル化反応終了後の反応中間生成物のカルボン酸末端基濃度が500~1500eq/ton、ヒドロキシル末端基濃度が1500~3000eq/tonである」(以下、「本件特許発明4の発明特定事項」という。)を充足するか不明であり、その製造方法が本件特許発明4に係るものと同一であるとはいえないから、甲1発明が本件特許発明1と実質的に同一であるともいえない。
かかる結論は、請求項1を引用する請求項7に係る本件特許発明7についても同様である。
なお、特許異議申立人は、甲1発明が本件特許発明4と同一とは申し立てていないところ、甲1発明が請求項4を引用する請求項5及び6に係る本件特許発明5及び6と同一とはいえない。
(2) また、甲1のみならず、特開2002-249602号公報(特許異議申立書に添付された甲第2号証。以下、「甲2」という。)、特開2000-234018号公報(特許異議申立書に添付された甲第3号証。以下、「甲3」という。)にも、本件特許発明1の発明特定事項及び本件特許発明4の発明特定事項が記載されていない。
加えて、甲1ないし3の記載に照らしても、これらの発明特定事項を当業者が容易になし得るとはいえない。
(3) 上記に照らせば、本件特許発明1、4ないし7が甲1発明と同一であるとも、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものともいえない。
2 特許法第36条第4項第1号について
発明の詳細な説明の記載、とりわけ段落【0044】、段落【0047】、段落【0062】、段落【0030】、段落【0033】、段落【0041】、段落【0069】及び実施例(【表1】)と比較例(【表2】)の記載に照らせば、重合触媒が所定量のアルミニウム及びリンに限定された上でジカルボン酸成分も特定されている場合やエステル化反応を開始する際の全ジカルボン酸成分のモル量(A)と全ジオール成分のモル量(G)の比(G/A)が0.8~1.4であってエステル化反応終了後の反応中間生成物のカルボン酸末端基濃度が500~1500eq/ton、ヒドロキシル末端基濃度が1500~3000eq/tonである場合、上記で特定される共重合ポリエステル樹脂を製造でき、かつ、経時での色調安定性という効果が発現することが看て取れるから、当業者が本件特許発明1に係る共重合ポリエステル樹脂を作ることができ、使用することができるし、当業者が本件特許発明4に係る製造方法を使用することができるといえる。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1、4ないし7に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1、4ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、異議申立人の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700388