審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2017-700364

定着装置及び画像形成装置

審判番号
2017-700364
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-065299
登録番号
特許第6007844号(P6007844)
請求日
2017年04月12日
審決日
2018年05月02日
公報発行日
2018年08月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】富士ゼロックス株式会社
  • 【異議申立人】キヤノン 株式会社
  • 【異議申立人代理人】阿部 琢磨
  • 【異議申立人代理人】黒岩 創吾
審判長/審判官
  • 審判長 森次 顕
  • 審判官 黒瀬 雅一
  • 審判官 藤本 義仁
分類
P1651.121-YAA(G03G) / P1651.851-YAA(G03G) / P1651.853-YAA(G03G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6007844号発明「定着装置及び画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6007844号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について、訂正することを認める。 特許第6007844号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 特許第6007844号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成25年3月27日に特許出願され、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人キヤノン株式会社により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年6月26日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である同年8月22日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年8月28日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年9月28日付けで意見書の提出がなされ、さらに、当審において同年12月13日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年2月5日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年2月14日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年3月23日付けで意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成30年2月5日付け訂正請求書による本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「とを有し、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。」を、 「とを有し、 前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、 前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。)と訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】の 「とを有し、前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置である。」を、 「とを有し、前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置である。」と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、加圧部材に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書(段落【0060】)、及び図3~5、7に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1により訂正する特許請求の範囲の記載と、願書に添付した明細書の記載とを整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、上記(1)のとおりであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)一群の請求項について これらの訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 また、訂正後の請求項1~4は、一群の請求項である。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件訂正発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明4」という。)。 「【請求項1】 回転体と、 前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、 前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、 前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、 前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、 前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。 【請求項2】 前記加圧部の用紙搬送方向上流側の端部が、前記回転体の回転軸方向において、両端部から中央にかけて用紙搬送方向上流側に向かって膨らんだ形状を有している ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。 【請求項3】 前記回転体及び前記無端ベルトの少なくとも一方を加熱する加熱源を有し、 前記無端ベルトが前記回転体に対して加圧される領域において、未定着のトナー像が加熱されて前記記録媒体に定着される ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。 【請求項4】 記録媒体に未定着のトナー像を転写する画像形成部と、 前記未定着のトナー像を前記記録媒体に定着させる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の定着装置とを備えた ことを特徴とする画像形成装置。」 2.取消理由の概要 当審において、訂正前の請求項1~4に係る特許に対して平成29年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 平成29年8月22日付け訂正請求書によって訂正された請求項1~4に係る発明は、甲1、2号証、及び参考資料1に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同項に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.甲各号証の記載 (1)甲1号証 甲1号証(特開2005-181989号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「可撓性の回転部材と、前記回転部材の内面に接触する摺動部材と、前記摺動部材を保持するホルダと、前記回転部材を介して前記摺動部材とニップ部を形成する加圧ローラと、を有し、前記ホルダの前記摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より前記回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きいことを特徴とする像加熱装置。」(【請求項1】) イ.「前記ホルダを前記加圧ローラ側に押さえつける高剛性のステーを有し、第1の前記付勢手段は前記ステーの一端側を前記加圧ローラに向かって付勢しており、第2の前記付勢手段は前記ステーの他端側を前記加圧ローラに向かって付勢していることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。」(【請求項3】) ウ.「前記摺動部材は板状の部材であり、前記付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。」(【請求項6】) これらの記載を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「可撓性の回転部材と、前記回転部材の内面に接触する摺動部材と、前記摺動部材を保持するホルダと、前記回転部材を介して前記摺動部材とニップ部を形成する加圧ローラと、前記ホルダを前記加圧ローラ側に押さえつける高剛性のステーと、を有し、前記ホルダの前記摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より前記回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きく、前記摺動部材は板状の部材であり、付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいる像加熱装置。」 (2)甲2号証 甲2号証(特開2006-58527号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「1対の回転体のニップ部に未定着のトナー像を保持した記録媒体を通過させることよって、前記記録媒体に前記トナー像を定着させる定着装置であって、 前記1対の回転体の少なくとも一方の回転体は、無端ベルトからなり、 前記無端ベルトの内面を圧接し、前記ニップ部に圧力を与える加圧部材を備え、 前記加圧部材が前記無端ベルトの内面を圧接する面は、前記記録媒体が前記ニップ部を通過する通過方向に対する位置と面積とのどちらか一方、又は両方が、前記回転体の回転軸方向で異なっていることを特徴とする定着装置。」(【請求項1】) イ.「加圧部材712のニップヘッド部材709は、例えば、LCP、PET、PPS、PBT、PES等の耐熱性を有する合成樹脂で形成されている。図6に示すように、ニップヘッド部材709は、断面がL字形状の細長い角柱形状に形成されているとともに、その上面には、パッド部材710を、例えば、接着剤などで固定するための固定部720が長手方向(定着ベルト703の回転軸方向)に沿って設けられている。また、上記ニップヘッド部材709は、その幅方向(長手方向と直交する方向)の一端部に、加熱ロール702方向に突設した圧接部721が形成されている。そして、圧接部721の圧接面721Bが定着ベルト703を圧接する また、パッド部材710は細長い直方体状(四角柱状)をしており、例えば、シリコンゴム等のゴム材料で構成されている。なお、パッド部材710のゴム硬度は10~30度(アスカーC硬度)が望ましい。また、パッド部材710より圧接部721の方が高硬度である。」(段落【0054】) ウ.「上記の如く構成されるニップヘッド部材709とパッド部材710とからなる加圧部材712は、図3に示すように、定着ベルト703を圧接し、加熱ロール702と定着ベルト703のニップ部に圧力をかけている。」(段落【0056】) エ.「また、圧接ユニット705の両端部がアーム部材717で押圧されているので、中央部は撓み等により、両端部より圧力がかかりにくい。しかし、図7と図12(A)に示すように、圧接部721のパッド部材710側の側面721Aは、長手方向(定着ベルト703の回転軸方向)に、上端部がパッド部材710側(記録用紙Pの通過方向の下流側)に凸形状となったR形状をしている。よって、圧接部721の両端部は、中央部より圧接面721Bの面積が小さくなっている。」(段落【0063】、審決注:上記の「記録用紙Pの通過方向の下流側」は、「記録用紙Pの通過方向の上流側」の誤記である。) これらの記載を総合すると、甲2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「1対の回転体のニップ部に未定着のトナー像を保持した記録媒体を通過させることよって、前記記録媒体に前記トナー像を定着させる定着装置であって、 前記1対の回転体の少なくとも一方の回転体は、無端ベルトからなり、 前記無端ベルトの内面を圧接し、前記ニップ部に圧力を与える加圧部材を備え、 加圧部材は、ニップヘッド部材とパッド部材とからなり、 上記ニップヘッド部材は、加熱ロール方向に突設した圧接部が形成され、 圧接部のパッド部材側の側面は、長手方向(定着ベルトの回転軸方向)に、上端部がパッド部材側(記録用紙Pの通過方向の上流側)に凸形状となったR形状をしている定着装置。」 (3)参考資料1 参考資料1(特開2010-231008号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「弾性層が形成された外周面を有するともに加熱手段により加熱されて回転する加熱ロールと、 前記加熱ロールの回転軸方向に沿う外周面部分に接触して回転する無端ベルトと、 前記無端ベルトをその内周面側から前記加熱ロールの当該外周面部分に押し付けて当該加熱ロールの間に未定着の像を保持する記録媒体を通過させる圧接部を形成する加圧体とを有し、 前記加圧体は、前記記録媒体の前記圧接部における通過方向の下流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも高い硬度を有する硬質加圧部材と、前記硬質加圧部材よりも前記通過方向の上流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形する軟質加圧部材とを備え、 前記硬質加圧部材と前記軟質加圧部材は、前記圧接部の前記加熱ロールの回転軸方向における定着領域のうち少なくとも特定の記録媒体を通過させる特定の領域部分においてその両者間に隙間が存在する状態で設置されていることを特徴とする定着装置。」(【請求項1】) イ.「前記硬質加圧部材は、前記記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて前記加熱ロールに近づく斜面で形成されている請求項1又は2に記載の定着装置。」(【請求項5】) ウ.「すなわち、ヘッド部材64(の突出部64a)とパッド部材65については、圧接部NPの加熱ロール51の回転軸方向Aにおける定着設定領域Eのうち少なくとも封筒等の特定の記録媒体9Aを通過させる特定の領域部分(特定の定着領域)E1において、その両者(64a,65)間に隙間Sが存在する状態で設置している。」(段落【0066】) エ.「特定の定着領域E1は、封筒等の特定の記録媒体9Aが、その定着時に通過することを予め設定した圧接部NPにおける通過領域(の幅)に相当するものである。また、特定の定着領域E1は、定着装置4において圧接部NPの定着設定領域Eの中央位置を搬送時の基準位置にして記録媒体9の搬送位置に関する規制を行う搬送方式、いわゆるセンターレジストレーション方式を採用する場合には、特定の記録媒体9Aの送り幅が適用可能な記録媒体9における最大のサイズでない限り、その特定の定着領域E1の両脇に、平常の定着領域E2,E3が存在することとなる(図7参照)。この平常の定着領域E2、E3においては、ヘッド部材64(の突出部64a)とパッド部材65を、その両者間に隙間Sが存在しない状態で設置してもよいが、その隙間Sが存在する状態で設置してもよい。」(段落【0067】) オ. 上記「ウ.」、「エ.」、及び図7の記載から、「硬質加圧部材と軟質加圧部材は、圧接部の加熱ロールの回転軸方向における全域において隙間が存在する状態で設置されている」ことが示されているといえる。 これらの記載を総合すると、参考資料1には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「弾性層が形成された外周面を有するともに加熱手段により加熱されて回転する加熱ロールと、 前記加熱ロールの回転軸方向に沿う外周面部分に接触して回転する無端ベルトと、 前記無端ベルトをその内周面側から前記加熱ロールの当該外周面部分に押し付けて当該加熱ロールの間に未定着の像を保持する記録媒体を通過させる圧接部を形成する加圧体とを有し、 前記加圧体は、前記記録媒体の前記圧接部における通過方向の下流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも高い硬度を有する硬質加圧部材と、前記硬質加圧部材よりも前記通過方向の上流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形する軟質加圧部材とを備え、 前記硬質加圧部材と前記軟質加圧部材は、前記圧接部の前記加熱ロールの回転軸方向における全域において隙間が存在する状態で設置され、 前記硬質加圧部材は、前記記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて前記加熱ロールに近づく斜面で形成されている定着装置。」 4.判断 (1)平成29年12月13日付け取消理由通知に記載した取消理由について ア.本件訂正発明1について (ア)対比 本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると、 後者における「加圧ローラ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「回転体」に相当し、以下同様に、「可撓性の回転部材」は「無端ベルト」に、「『ホルダ』、及び『摺動部材』」は「加圧部材」に、「像加熱装置」は「定着装置」に、それぞれ相当する。 また、後者は、像加熱装置であって、回転部材を介して摺動部材と加圧ローラとによりニップ部を形成しているから、「回転部材(無端ベルト)は、加圧ローラ(回転体)との間に記録媒体を挟んで周回すること」は、明らかである。 また、後者において、摺動部材を保持するホルダは、加圧ローラ側に押さえつけられて、回転部材を介して前記摺動部材と加圧ローラとによりニップ部を形成しているから、「回転部材(無端ベルト)の内周側に加圧ローラ(回転体)の回転軸方向に沿って配置され、前記回転部材(無端ベルト)に向けて加圧するホルダ、及び摺動部材(加圧部材)とを備えている」ことは、明らかである。 また、後者において、ホルダの摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部よりニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きく、前記摺動部材は板状の部材であり、付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいるから、「摺動部材(加圧部材)が、記録媒体を加圧ローラ(回転体)へ向けて接触させるホルダの第1保持領域接触形成部に保持された摺動部材の部位(接触形成部)と、当該ホルダの第1保持領域に保持された摺動部材の部位(接触形成部)よりも回転方向の下流側で回転部材(無端ベルト)を前記加圧ローラ(回転体)に向けて加圧するホルダの第2保持領域に保持された摺動部材の部位(加圧部)とを有している」といえ、また、「ホルダの第1保持領域に保持された摺動部材の部位(接触形成部)及び前記ホルダの第2保持領域に保持された摺動部材の部位(加圧部)が、加圧ローラ(回転体)の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記加圧ローラ(回転体)の方向に膨らんだ(クラウン形状)形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さい」といえる。 したがって、両者は、 「回転体と、 前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、 前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、 前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さい定着装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本件訂正発明1においては、「接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れて」いるのに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。 [相違点2] 本件訂正発明1においては、「隙間は、回転体に向けて加圧部材が加圧された状態において、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるのに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。 (イ)判断 まず、上記相違点2について以下検討する。 引用発明3は、上記「3.(3)」のとおりであって、引用発明3における「加熱ロール」は、その構造、機能、作用等からみて、本件訂正発明1における「回転体」に相当し、以下同様に、「無端ベルト」は「無端ベルト」に、「加圧体」は「加圧部材」に、「軟質加圧部材」は「接触形成部」に、「硬質加圧部材」は「加圧部」に、「隙間」は「隙間」に、「定着装置」は「定着装置」に、それぞれ相当する。 しかしながら、引用発明3における加圧体を構成する硬質加圧部材の記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて加熱ロールに近づく斜面で形成されており、前記傾斜部により、角部は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと加圧体(加圧部材)との間の距離が小さくなっているとはいえるが、上記相違点2に係る本件訂正発明1の「隙間は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なっているとまでいえないし、また、引用発明3における軟質加圧部材は、加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形するものであって、参考資料1に示されているように、軟質加圧部材は、大きく潰れて、隙間の空間に入り込んだり(段落【0077】)、軟質加圧部材の一部が、硬質加圧部材に接触したり(段落【0078】)するものであるから、引用発明3において、「加熱ロール(回転体)に向けて加圧体(加圧部材)が加圧された状態」において、上記相違点2に係る本件特許発明1の「隙間は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるか、明らかではない。 また、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。 したがって、引用発明1において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、上記相違点1を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1、及び3、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 なお、引用発明2にも、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えたり、示唆されるものではない。 イ.本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本件訂正発明3は、本件訂正発明1、又は2の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本件訂正発明4は、請求項1~請求項3のいずれか一項の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件訂正発明2~4は、上記「ア.」と同様の理由により、引用発明1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア.特許法第29条第1項第3号違反について 上記「(1)」のとおり、本件訂正発明1、3、及び4と引用発明1とは、上記相違点1、及び2が存在するから、同一とすることはできない。 イ.特許法第29条第2項違反について 上記「(1)」のとおりであるから、本件訂正発明2~4は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 ウ.特許法第36条第6項第2号違反について 特許異議申立人キヤノン株式会社は、本件訂正発明1~4には、特許権者が平成30年2月5日付け意見書で主張する効果1及び2を奏するために必要な発明特定事項が不足していることが明らかであり、本件訂正発明1~4の技術的意味を理解することができない旨主張している(平成30年3月23日付け意見書6頁1~13行)。 しかしながら、特許権者が平成30年2月5日付け意見書で主張する「記録媒体(用紙)の搬送方向上流側から下流側に向かい、加圧部における圧力が徐々に上がる構成とすることが可能となる。」(2枚目13~14行)との効果(効果1)は、本件訂正明細書、及び本件訂正特許請求の範囲には何ら記載されていないから、本件訂正明細書、及び本件訂正特許請求の範囲に基づかない主張である。 また、特許権者が上記意見書で主張する「これにより、例えば、「記録媒体Pは、搬送方向Hと直交する幅方向の中央から幅方向両端部に向けて、徐々に、加圧部82Bによって加圧される。これにより、記録媒体Pの幅方向両端部を外側へ押し出そうとする力が作用し、加圧部82Bにおける記録媒体Pのしわが抑制される」(段落0061)という効果が高められる。」(2枚目14~18行)との効果(効果2)は、本件訂正明細書によれば、「加圧部82Bの上流側の端部Qが、回転ロール64の回転軸AR方向において、両端部から中央にかけて上流側に向かって膨らんだ形状を有している」ことによって奏される効果(段落【0060】、【0061】)であって、本件訂正発明1~4における「隙間は、回転体に向けて加圧部材が加圧された状態において、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるとの発明特定事項によって奏される効果ではない。 してみると、特許権者の上記の主張に理由はないから、特許異議申立人の上記の主張は、特許権者の誤った主張に基づくものであって、その前提に誤りがある。 したがって、特許異議申立人の上記の主張は理由がない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700364

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決481件(キヤノン 株式会社、富士ゼロックス株式会社)
  • 2024-700619異議申立 / 2026-03-12 / 訂正認容開閉支持装置並びにこの開閉支持装置を用いた事務機器
    同じ当事者: キヤノン 株式会社
  • 2025-700531異議申立 / 2026-01-26 / 訂正認容構造体および水素吸蔵構造体
    同じ当事者: キヤノン 株式会社
  • 2024-700386異議申立 / 2025-12-01 / 請求成立(取消)X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム
    同じ当事者: キヤノン 株式会社
  • 2024-700634異議申立 / 2025-03-27 / 訂正認容情報処理方法、情報処理装置、プログラム、記録媒体、生産システム、ロボットシステム…
    同じ当事者: キヤノン 株式会社
  • 2024-701217異議申立 / 2025-03-13 / 維持通信装置
    同じ当事者: キヤノン 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)315件(121・G03G、851・G03G、853・G03G)
  • 2022-700312異議申立 / 2023-09-26 / 訂正認容プロセスカートリッジ
    共通の審決分類: 121・G03G、851・G03G、853・G03G
  • 2021-701161異議申立 / 2023-03-03 / 訂正認容感光体カートリッジ及びプロセスカートリッジ
    共通の審決分類: 121・G03G、851・G03G、853・G03G
  • 2019-700307異議申立 / 2020-08-04 / 請求成立(取消)疎水化処理シリカ粒子
    共通の審決分類: 851・G03G、853・G03G
  • 2016-700588異議申立 / 2017-02-15 / 訂正認容トナーバインダー及びトナー
    共通の審決分類: 121・G03G、853・G03G
  • 2019-390070訂正審判 / 2019-07-30 / 訂正認容定着装置および画像形成装置
    共通の審決分類: 851・G03G、853・G03G

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存