特許異議申立
2024-701217
通信装置
- 審判番号
- 2024-701217
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-092543
- 登録番号
- 7503935
- 請求日
- 2024年12月20日
- 審決日
- 2025年03月13日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キヤノン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】シュライフリング ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人ITOH
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P1651.113-Y (H04B) / P1651.121-Y (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7503935号発明「通信装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7503935号の請求項1~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7503935号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和2年5月27日の出願であって、令和6年6月13日にその特許権の設定登録がされ、同年6月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~14)に係る特許に対し、令和6年12月20日に特許異議申立人 シュライフリング ゲーエムベーハー(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行い、令和7年1月17日に特許異議申立書の手続補正を行った。
令和7年1月17日に手続補正された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」~「本件発明14」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、以下の請求項1~14に記載されたとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のために、本件発明1についてはA1~Iに分説し、「発明特定事項A1」のようにして参照する。
【請求項1】
A1 無線で送電するための送電コイルが実装された第1の基板と、
A2 前記第1の基板の内径の内側に位置する第1の円筒構造と
A を含んだ第1の部品と、
B1 前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2の基板と、
B2 前記第2の基板の内径の内側に位置し、前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造と
B を含んだ第2の部品と、
C を有し、
D 前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され、
E 前記第1の構造の外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための電極を有する第1の通信用部品が形成されると共に、
F 前記第2の構造の内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する電極を有する第2の通信用部品が形成され、かつ、
G 前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置され、
H 前記第2の構造の外周面にグランドが配置される、
I ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の基板の中心軸上に前記第1の円筒構造が位置し、前記第2の基板の中心軸上に前記第2の円筒構造が位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の基板の中心軸と前記第1の円筒構造の中心軸が同一であり、前記第2の基板の中心軸と前記第2の円筒構造の中心軸が同一である、ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、通信カプラであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信カプラは伝送線路であることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信カプラは、電磁界通信によりデータを送受信することを特徴とする請求項4又は5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の部品および前記第2の部品は、それぞれ、前記通信装置の外部から入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換して送信する送信手段と、前記送信手段によって送信された前記シリアル信号を受信して前記パラレル信号を復元する受信手段とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記送信手段は、前記パラレル信号を2値のシリアル信号に変換し、前記受信手段は、当該送信手段によって送信された前記2値のシリアル信号を受信して前記パラレル信号を復元することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記2値のシリアル信号は差動信号の形式で前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品との間で送受信されることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、それぞれ2つの前記電極を有する、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、フレキシブル基板によって形成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第1の部品および前記第2の部品は、前記送電コイルと前記受電コイルを用いて電磁誘導方式または磁界共鳴方式によって無線電力伝送を行うように構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項13】
前記通信装置はロボットの回転動作を行う関節に含まれることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項14】
前記通信装置は監視カメラの回転部に含まれることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第13号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲13」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件発明に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 国際公開第2009/038738号
甲2 特開2009-170920号公報
甲3 国際公開第2012/041554号
甲4 米国特許第4837556号明細書
甲5 国際公開第2019/160697号
甲6 米国特許出願公開第2009/0295523号明細書
甲7 欧州特許出願公開第1646166号明細書
甲8 米国特許第5347256号明細書
甲9 米国特許第6556165号明細書
甲10 米国特許出願公開第2007/0024575号明細書
甲11 特開2015-203697号公報
甲12 国際公開第02/083000号
甲13 米国特許第10093491号明細書
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、概略、以下の申立理由1及び2のとおりである。
〈申立理由1〉
本件発明1~6は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲1~3及び8のいずれかに記載された発明と同一であるから、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明10は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲1、2及び8のいずれかに記載された発明と同一であるから、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明11は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲1及び2のいずれかに記載された発明と同一であるから、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明12は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲1~3のいずれかに記載された発明と同一であるから、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
〈申立理由2〉
本件発明1は、甲1~9のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明2~4は、甲1~6、8及び9のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明5は、甲1~4、6、8及び9のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明6は、甲1~4、8及び9のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明7は、甲1~3のいずれかに記載された発明及び甲12に記載された技術に基づいて、又は、甲4及び5のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明8は、甲1~3のいずれかに記載された発明及び甲12に記載された技術に基づいて、又は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明9は、甲1~3のいずれかに記載された発明、甲12に記載された技術及び甲11若しくは甲13に記載された技術に基づいて、又は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明10及び11は、甲1、2、5、6及び8のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明12は、甲1~3及び5のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明13は、甲1~3、5、6及び8のいずれかに記載された発明並びに甲10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
本件発明14は、甲1~3、5、6及び8のいずれかに記載された発明並びに甲11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
第4 当審の判断
以下では、申立理由1及び2について判断する。
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、当審訳は、甲1の日本語ファミリである特表2010-541202号公報と申立人が提出した抄訳とを参考にして、当審で作成した。下線は強調のために当審で付した。
(1)「[0016] At least one embodiment of the present invention provides a rotary interface utilizing transmission lines to transmit information across a gap between a rotating and a non-rotating portion of the interface. Though described herein in terms of the exemplary embodiments shown in FIGS. 1-4 and FIG. 8, any appropriate layout or implementation of a rotary interface (e.g., contract free slip ring, etc.) may be used. For descriptive simplicity and clarity, rotary interfaces similar to a rotor-stator interface or a rotary transformer are described below. The various aspects and components of a generic rotary interface are not described in detail herein except as necessary to describe the present invention. One of skill in the art will recognize the various components and their uses that are omitted or briefly mentioned.」
(当審訳:
[0016] 本発明の少なくとも1つの実施形態では、回転式インタフェースの回転部分と非回転部分の間の間隙を介して情報を伝送するための伝送線路を使用する回転式インタフェースを提供する。ここでは、図1~4及び図8に示す例示的な実施形態に関して説明するが、回転式インタフェースの適切なあらゆるレイアウト又は実装(例えば、非接触スリップリングなど)が使用されてもよい。説明を簡潔かつ明確にするために、回転子-固定子インタフェース又は回転変圧器に類似した回転式インタフェースについて以下で説明する。ここでは、一般的な回転式インタフェースの様々な側面及び構成要素については、本発明を説明するために必要である場合を除き、詳しくは説明しない。当業者は、省略又は簡潔に触れられている様々な構成要素及びそれらの使用を理解するであろう。)
(2)「[0017] FIG. 1 depicts a top view of a rotary interface 100 according to an embodiment of the present invention. In at least one embodiment, rotary interface 100 comprises two substantially similar cores ― a top core 102 and a bottom core 104 (shown in FIG. 3). In some embodiments, one or both of top core 102 and bottom core 104 are arranged in rotatable relation to each other. That is, either or both of top core 102 and bottom core 104 may be rotated around central axis 106.」
(当審訳:
[0017] 図1は本発明の一実施形態による回転式インタフェース100の上面図を示す。少なくとも1つの実施形態では、回転式インタフェース100は、2つのほぼ同様のコア、すなわち、上側コア102と下側コア104(図3に示す)を備える。いくつかの実施形態では、上側コア102と下側コア104の一方又は両方が互いに相対的に回転可能に配置されている。すなわち、上側コア102と下側コア104のいずれか又は両方は、中心軸106の周りを回転させてもよい。)
(3)「[0018] FIG. 2 depicts a bottom-side perspective view of the rotary interface 100 top core 102. Top core 102 may be a substantially similar but inverted core with similar components and features to bottom core 104 as described in further detail below with respect to FIGS. 3-7. Top core 102 may include a windings channel 108 that houses windings 110. In some embodiments, top core 102 may also include a trace path 112 and/or an electronics channel 114.」
(当審訳:
[0018] 図2は、回転式インタフェース100の上側コア102の底面斜視図を示す。上側コア102は、下側コア104と同様の構成要素及び特徴を備え、裏返されているものの実質的に同様なコアであってよく、図3~7に関してより詳細に後述するとおりである。上側コア102は、巻線110を収容する巻線チャネル108を含んでもよい。いくつかの実施形態では、上側コア102は、配線路112及び/又は電子チャネル114を含んでもよい。)
(4)「[0019] Similarly, FIG. 3 depicts a top-side perspective view of the rotary interface 100 bottom core 104. Bottom core 104 may be a substantially similar but inverted core with similar components and features to top core 102 as described above and in further detail below with respect to FIGS. 4-7. Bottom core 104 may include a windings channel 116 that houses windings 118, similar to windings channel 108 and windings 110 of top core 102. In some embodiments, bottom core 104 may also include a trace path 120 and/or an electronics channel 122 similar to trace path 112 and/or an electronics channel 114.」
(当審訳:
[0019] 同様に、図3は、回転式インタフェース100の下側コア104の上面斜視図を示す。下側コア104は、上側コア102と同様の構成要素及び特徴を備え、裏返されているものの実質的に同様のコアであってよく、上述及び図4~7に関してより詳細に後述するとおりである。下側コア104は、巻線118を収容する巻線チャネル116を含んでよく、これは上側コア102の巻線チャネル108及び巻線110と同様である。いくつかの実施形態では、下側コア104は、配線路112及び/又は電子チャネル114と同様の配線路120及び/又は電子チャネル122をも含んでよい。)
(5)「[0020] FIG. 4 depicts a side cross-sectional view of rotary interface 100 according to an embodiment of the present invention. As discussed above, rotary interface 100 includes a top core 102 and a bottom core 104, each with respective windings channels 108 and 116 and windings 110 and 118. Top core 102 and bottom core 104 may be non-contacting. That is, top core 102 and bottom core 104 may be spaced apart by a distance D. Distance D may be a non-constant distance. That is, some portions of top core 102 may be closer to bottom core 104 than other portions as top core 102 and/or bottom core 104 rotate about central axis 106.」
(当審訳:
[0020] 図4は本発明の一実施形態による回転式インタフェース100の側断面図を示す。上述のように、回転式インタフェース100は、上側コア102及び下側コア104を含み、それぞれ巻線チャネル108及び116並びに巻線110及び118を備える。上側コア102と下側コア104とは非接触であってよい。すなわち、上側コア102と下側コア104とは、距離Dだけ離間してもよい。距離Dは不均一な距離であってよい。すなわち、上側コア102及び/又は下側コア104が中心軸106の周りを回転しているとき、上側コア102のいくつかの部分は、他のいくつかの部分よりも、下側コア104に近くてもよい。)
(6)「[0021] In at least one embodiment, trace paths 112 and 120 may be implemented as including trace boards 124 and 126, each having respective transmission lines 128 and 130 (e.g., line traces printed on a circuit board, etc.). In the same or alternative embodiments, trace paths 112 and 120, trace boards 124 and 126, and/or transmission lined 128 and 130 may be located in or about windings channels 108 and 116 or on any other appropriate portion of top core 102 and bottom core 104.」
(当審注:上記の「lined」は「lines」の誤記と認める。)
(当審訳:
[0021] 少なくとも1つの実施形態では、配線路112及び120は、配線基板124及び126を含み、それぞれは伝送線128及び130(例えば、回路基板上にプリントされた線配線など)を有するように実装されてもよい。同様又は別の実施形態では、配線路112及び120、配線基板124及び126、並びに/又は伝送線128及び130は、巻線チャネル108及び116の中又はそれらの周辺に、あるいは上側コア102及び下側コア104の他の適切な部分にあるかもしれない。)
(7)「[0022] Top core 102 and bottom core 104 may be substantially ring-shaped cores formed of any appropriate material (e.g., ferrite, etc.) positioned adjacent each other, but spaced apart by the distance D. This distance may be predetermined and may be any suitable distance such that, subject to manufacturing tolerances of top core 102 and bottom core 104, the cores 102, 104 will not contact each other when one or both are rotated about central axis 106. In at least one embodiment, the distance D may be approximately 5/1000 inches. As will be discussed below, because transmission lines 128, 130 are employed, top core 102 and bottom core 104 require less stringent alignment than conventional non-contacting slip rings and thus the distance D may be a non-constant distance. That is, even if top core 102 and/or bottom core 104 are irregularly shaped and/or are misaligned relative to each other, use of transmission lines 128 and 130 negates the need for highly accurate alignment.」
(当審訳:
[0022] 上側コア102及び下側コア104は、実質的に環状のコアであってよく、該コアは、任意の適切な材料(例えば、フェライトなど)で形成され、互いに隣接するが、距離Dだけ離間する。この距離は予め定めておくことができ、上側コア102および下側コア104の製作公差に従い、コア102、104の一方または両方が中心軸106の周りを回転するときに、互いに接触することがないような適当な距離とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、距離Dは約5/1000インチであってよい。後述するように、伝送線128、130が用いられているため、上側コア102及び下側コア104は、従来の非接触型スリップリングよりも厳密な調整を必要とせず、したがって、距離Dを一定ではない距離であってよい。すなわち、上側コア102及び/又は下側コア104が、不揃いに成形されている場合、及び/又は互いに対して位置がずれている場合でも、伝送線128及び130を用いることによって、高度に正確な調整は不要となる。)
(8)「[0023] Windings 110 and 118 may be magnetically coupled wire coils aligned in windings channels 108 and 116, respectively, and may be substantially symmetric about central axis 106. In this way, rotary interface 100 includes a pair of substantially identical ring-shaped cores 102, 104 for housing windings 110, 118 capable of inductively coupling power therebetween. The windings 110 and 118 in each respective core 102 and 104 may have a predetermined number of wrapped wires or a number of wrappings of a single wire. The number of wires and/or wrappings may depend upon the gauge of the wire used. Each wrapped wire of a winding 110, 118 can have first and second ends connected to a component such as a transceiver or rectifier through electronics channels 114 and/or 122 as discussed below with respect to FIGS. 5-7. In such embodiments of rotary interface 100, magnetic flux provides coupling from top core 102 to bottom core 104 and/or from bottom core 104 to top core 102. In other words, mutual inductance is provided between top core 102 and bottom core 104 that couples energy across distance D in rotary interface 100.」
(当審訳:
[0023] 巻線110及び118は、それぞれ巻線チャネル108及び116内に並べられた磁気的に結合されたワイヤコイルであり、中心軸106に関して実質的に対称であってよい。このように、回転式インタフェース100は、実質的に同一の一対の環状コア102、104を含み、一対の環状コアは、巻線110、118を収容するためのものであり、巻線110、118は、互いの間で電力を誘導的に結合できる。コア102及び104内のそれぞれの巻線110及び118は、巻回された所定本数のワイヤ又は単一ワイヤを複数巻回したものを有してもよい。ワイヤ及び/又は巻回の数は、使用されるワイヤのゲージによって決めてよい。巻線110、118のラッピングされた各ワイヤは、第1及び第2の端部を有し得、該両端部は、電子チャネル114及び/又は122を介して、送受信機又は整流器のような構成要素と接続され、図5~7に関して後述するとおりである。回転式インタフェース100のそのような実施形態では、磁束が上側コア102から下側コア104へ、及び/又は下側コア104から上側コア102への結合をもたらす。換言すれば、相互インダクタンスが上側コア102及び下側コア104の間にもたらされ、回転式インタフェース100において距離Dにわたりエネルギーを結合する。)
(9)「[0026] Transmission lines 128 and 130 may be implemented using any appropriate means for directing the transmission of energy, such as electromagnetic waves or acoustic waves, as well as electric power transmission. For example, transmission lines 128 and 130 may be transmission line traces printed on a circuit board such as respective trace boards 124 and 126, or may be wires, coaxial cables, dielectric slabs, optical fibers, electric power lines, waveguides, or the like. In at least one embodiment, transmission lines 128 and 130 are traces printed on FR-4 printed circuit boards (PCBs). Of course, other appropriate PCBs may be used.」
(当審訳:
[0026] 伝送線128及び130は、電力送信はもちろん、電磁波又は音波のエネルギーの送信をも方向付けるための適切な手段を用いて実装されてよい。例えば、伝送線128及び130は、それぞれの配線基板124及び126のような回路基板に印刷された伝送線配線であってもよく、又は、ワイヤ、同軸ケーブル、誘電体スラブ、光ファイバー、電力線、導波路などであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、伝送線128及び130は、FR-4プリント回路基板(PCB)に印刷された配線である。もちろん、他の適切なPCBを使用してもよい。)
(10)「[0027] Transmission lines 128 and 130 may be used to allow electrical signals to be passed between top core 102 and bottom core 104. Though expressed herein as transmission lines 128 and 130, one of skill in the art will recognize that multiple transmission lines may be used in each core 102, 104. That is, transmission lines 128 and 130 may each include one or more pairs of transmission lines. For example, transmission lines 128 and 130 may include pairs of transmission lines for each direction of communication (e.g., a pair for transmitting from top core 102 to bottom core 104 and/or a pair for transmitting from bottom core 104 to top core 102). Transmission line pairs may be electrically driven and thus used as a transmitter (e.g., may be configured to transmit a signal). In reciprocal fashion, a transmission line pair may be used as a receiver. Generally, as discussed below, transmission lines have controlled impedance along their length and are terminated with a similar matched impedance.」
(当審訳:
[0027] 伝送線128及び130は、上側コア102と下側コア104との間に電気信号を通過させられるようにするために使用されてもよい。ここでは、伝送線128及び130として表現されているが、当業者は、それぞれのコア102、104で複数の伝送線を用いてもよいことを認識するであろう。すなわち、伝送線128及び130は、それぞれ、伝送線の1以上の対を含んでもよい。例えば、伝送線路128及び130は、それぞれの通信方向のために複数対の伝送線を(例えば、上側コア102から下側コア104への伝送用の対及び/又は下側コア104から上側コア102への伝送用の対)含んでもよい。伝送線の対は電気的に駆動され、したがって、送信機として使用されてもよい(例えば、信号を送信するように構成されるかもしれない)。逆に、伝送線の対は、受信機として使用されてもよい。一般に、以下に述べるように、伝送線はその長さに従って管理されたインピーダンスを有し、同様に整合されたインピーダンスで終端される。)
(11)「[0028] In at least one embodiment, transmission lines 128 and 130 may be transmission line pairs that include two conductors of the same type with equal impedance to ground and other circuits. Since transmission line traces may be relatively small, multiple pairs of transmission and/or reception transmission lines may be used in rotary interface 100. Since the transmission lines may be used as a transmission line in one core "coupled" to a receiving transmission line in another core, the transmission lines may be in close proximity to each other across the distance D regardless of the angular position of top core 102 relative to bottom core 104.」
(当審訳:
[0028] 少なくとも1つの実施形態では、伝送線128及び130は、伝送線対であってよく、その伝送線対は、グランド及び他の回路に対して等しいインピーダンスを持つ同種の2つの導体を含む。伝送線配線は比較的小さくてもよいため、送信及び/又は受信伝送線の複数の対が、回転式インタフェース100で使用されてもよい。伝送線は、あるコアの1本の伝送線として使用されてもよく、それは他のコアの受信伝送線と“結合される”のだから、それらの伝送線は、上側コア102の下側コア104に対する相対的な角度位置に関係なく、距離Dを挟んで互いに近接するかもしれない。)
(12)「[0039] Other substantially radial symmetric arrangements of a rotary interface can be used to provide similar coupling and isolation, such as the rotary interface 800 shown in FIG. 8. In contrast to the top core 102 and bottom core 104 rotary interface 100 separated by a distance D described above with respect to FIGS. 1-4, rotary interface 800 includes an inner concentric cylinder 802 and an outer concentric cylinder 804 separated by a tubular gap G. Both inner cylinder 802 and outer cylinder 804 may rotate about central axis 106. In operation, this may be similar to top core 102 and bottom core 104 as described above, but modified to accommodate the concentric arrangement of cylinders 802 and 804. For example, inner cylinder 802 may have a windings channel 806 for housing windings 808 and/or transmission lines 810. In an alternative embodiment, one or both of windings 808 and/or transmission lines 810 may be mounted in another location on or about inner cylinder 802, such as on an outer edge 812. Similarly, outer cylinder 804 may have a windings channel 814 for housing windings 816 and/or transmission lines 818. In an alternative embodiment, one or both of windings 816 and/or transmission lines 818 may be mounted in another location on or about outer cylinder 804, such as on an inner edge 820. Transmission lines 810 and 818 may be used as transmitters and/or receivers as described generally above with respect to FIGS. 1-4 and specifically with respect to FIGS. 5-7.」
(当審訳:
[0039] 図8に示される回転式インタフェース800など、回転式インタフェースの他の実質的に放射対称の配置が、同様の結合及び分離を提供するために使用できる。図1~4に関して上述した距離Dで分離された上側コア102及び下側コア104の回転式インタフェース100とは対照的に、回転式インタフェース800は、管状間隙Gで分離された内側同心円筒802及び外側同心円筒804を含む。内側円筒802及び外側円筒804の双方は、中心軸106の周りを回転するかもしれない。動作中、これは、前述の上側コア102及び下側コア104と同様であってもよいが、円筒802及び804の同心配置に適応するように変更される。例えば、内側円筒802は、巻線808及び/又は伝送線810を収容するための巻線チャネル806を有してもよい。別の実施形態では、巻線808及び/又は伝送線810の一方又は双方は、内側円筒802の上又は周囲の別の場所、例えば外縁812に取り付けられてもよい。同様に、外側円筒804は、巻線816及び/又は伝送線818を収容するための巻線チャネル814を有してもよい。別の実施形態では、巻線816及び/又は伝送線818の一方又は双方は、外側円筒804の上又は周囲の別の場所、例えば内縁820に取り付けられてもよい。伝送線810及び818は、上記で図1~4に関して一般的に説明し、図5~7に関して具体的に説明したように、送信機及び/又は受信機として使用されてもよい。)
(13)FIG.1
[図:0001421401000001.jpg]
(14)FIG.2
[図:0001421401000002.jpg]
(15)FIG.3
[図:0001421401000003.jpg]
(16)FIG.4
[図:0001421401000004.jpg]
(17)FIG.8
[図:0001421401000005.jpg]
FIG.8によれば、外側同心円筒804の外径は、内側同心円筒802の外径よりも大きいと解される。
2 甲1発明の認定
甲1の[0039]の記載を参照すると、図1~4に示される実施形態(以下「実施形態1」という。)と、図8に示される実施形態(以下「実施形態2」という。)とは、構成要素の形状及び配置において異なるものの、その動作は同様であって、実施形態1の「回転式インターフェース100」、「上側コア102」、「下側コア104」、「巻線110」、「巻線118」、「伝送線128」、「伝送線130」及び「距離D」は、それぞれ、実施形態2の「回転式インターフェース800」、「内側同心円筒802」、「外側同心円筒804」、「巻線808」、「巻線816」、「伝送線810」、「伝送線818」及び「管状間隙G」に対応し、実施形態1の動作に関する説明は、実施形態2のそれぞれ対応する構成要素の動作として理解できる。
また、甲1の[0039]において、「内側円筒802」及び「外側円筒804」は、それぞれ「内側同心円筒802」及び「外側同心円筒804」のことを指していると解されるから、以下では「内側同心円筒802」及び「外側同心円筒804」に用語を統一する。
そうすると、前記1の記載によれば、甲1には、実施形態1の構成要素を対応する実施形態2の構成要素に読み替えることにより、実施形態2に基づく以下に示す甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa~jに分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈甲1発明〉
a 回転部分と非回転部分の間の間隙を介して情報を伝送するための伝送線路を使用する回転式インタフェースであって([0016])
b 回転式インタフェース800は、管状間隙Gで分離された内側同心円筒802及び外側同心円筒804を含み、([0039])
c 内側同心円筒802及び外側同心円筒804の双方は、中心軸106の周りを回転し、([0039])
d 巻線808及び伝送線810の双方は、内側同心円筒802の外縁812に取り付けられ、([0039])
e 巻線816及び伝送線818の双方は、外側同心円筒804の内縁820に取り付けられ、([0039])
f 外側同心円筒804の外径は、内側同心円筒802の外径よりも大きく、(FIG.8)
g 巻線808及び816は、磁気的に結合されたワイヤコイルであり、巻線808、816は、互いの間で電力を誘導的に結合でき、([0023]読み替え)
h 伝送線810及び818は、内側同心円筒802と外側同心円筒804との間に電気信号を通過させられるようにするために使用され、([0027]読み替え)
i 伝送線は、内側同心円筒802の外側同心円筒804に対する相対的な角度位置に関係なく、管状間隙Gを挟んで互いに近接する、([0028]読み替え)
j 回転式インタフェース。
3 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(1)発明特定事項A1及びAについて
発明特定事項A1は「無線で送電するための送電コイルが実装された第1の基板と、」というものであり、発明特定事項Aは「を含んだ第1の部品と、」というものである。
ア 甲1発明の「内側同心円筒802」は、「回転式インタフェース800」に含まれる(構成b)から、「回転式インタフェース800」の部品であり、これを第1の部品と称することは任意である。
よって、甲1発明の「内側同心円筒802」は、本件発明1の「第1の部品」に相当する。
イ 甲1発明の「外縁812」は、「内側同心円筒802の外縁812」である(構成d)から、「内側同心円筒802」は「外縁812」を含むといえる。
ウ 甲1発明の「巻線808及び816」は、「磁気的に結合されたワイヤコイルであり」、「互いの間で電力を誘導的に結合でき」る(構成g)から、一方が送電コイルとなり、他方が受電コイルとなって、無線で送電がなされると解される。ここで、甲1には「巻線808及び816」のどちらが送電側となるかについては特段の記載がないから、「巻線808」を送電コイルとすることは任意である。
よって、甲1発明の「巻線808」は、本件発明1の「無線で送電するための送電コイル」に相当する。
エ 甲1発明の「巻線808」は、「外縁812」に取り付けられる(構成d)ので、「外縁812」は「巻線808」が実装される物であるが、「外縁812」は基板であるとは特定されておらず、「巻線808」を「外縁812」に取り付ける際に基板を用いるとも特定されていない。
オ 前記ア~エによれば、本件発明1と甲1発明とは、「無線で送電するための送電コイルが実装された第1被実装物」「を含んだ第1の部品」を有する点で共通するものの、本件発明1の第1被実装物は「第1の基板」であるのに対し、甲1発明の被実装物は「外縁812」である点で相違する。
(2)発明特定事項A2及びAについて
発明特定事項A2は「前記第1の基板の内径の内側に位置する第1の円筒構造と」というものであり、発明特定事項Aは「を含んだ第1の部品と、」というものである。
ア 甲1発明の「内側同心円筒802」が本件発明1の「第1の部品」に相当することは、前記(1)アのとおりである。
イ 甲1発明の「内側同心円筒802」は、FIG.8を参照すると、図の上下端では中心軸106から離れる方向、すなわち、外側に突出しており、その外側に突出した部分の最外端部が「外縁812」となっている。そうすると、「内側同心円筒802」は、その径が略一定の円筒部分(以下「内円筒部分」という。)と、「外縁812」を含む突出部分(以下「外側部分」という。)とからなっているといえる。
ここで、甲1発明の内円筒部分は、「内側同心円筒802」を構成するものであるから、「内側同心円筒802」は、内円筒部分を含み、甲1発明の内円筒部分は、本件発明1の「第1の円筒構造」に相当する。
そして、「外縁812」は、明らかに内円筒部分の外側にあるから、内円筒部分は、「外縁812」の内径の内側に位置するといえる。
ウ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1被実装物の内径の内側に位置する第1の円筒構造」「を含んだ第1の部品」を有する点で一致する。
(3)発明特定事項B1及びBについて
発明特定事項B1は「前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2の基板と、」というものであり、発明特定事項Bは「を含んだ第2の部品と、」というものである。
ア 甲1発明の「外側同心円筒804」は、「回転式インタフェース800」に含まれる(構成b)から、「回転式インタフェース800」の部品であり、これを第2の部品と称することは任意である。
よって、甲1発明の「外側同心円筒804」は、本件発明1の「第2の部品」に相当する。
イ 甲1の「内縁820」は、「外側同心円筒804の内縁820」である(構成e)から、「外側同心円筒804」は「内縁820」を含むといえる。
ウ 前記(1)ウのとおり、甲1発明の「巻線808」を送電コイルと称したから、それと磁気的に結合された「巻線816」は受電コイルと称されるべきものである。
よって、甲1発明の「巻線816」は、本件発明1の「前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイル」に相当する。
エ 甲1発明の「巻線816」は、「内縁820」に取り付けられる(構成e)ので、「巻線816」が実装される物であるが、「内縁820」は基板であるとは特定されておらず、「巻線816」を「内縁820」に取り付ける際に基板を用いるとも特定されていない。
オ 前記ア~エによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2被実装物」「を含んだ第2の部品」を有する点で共通するものの、本件発明1の第2被実装物は「第2の基板」であるのに対し、甲1発明の被実装物は「内縁820」である点で相違する。
(4)発明特定事項B2及びBについて
発明特定事項B2は「前記第2の基板の内径の内側に位置し、前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造と」というものであり、発明特定事項Bは「を含んだ第2の部品と、」というものである。
ア 甲1発明の「外側同心円筒804」が本件発明1の「第2の部品」に相当することは、前記(3)アのとおりである。
イ 甲1発明の「外側同心円筒804」は、FIG.8を参照すると、図の上下端では中心軸106に向かう方向、すなわち、内側に突出しており、その内側に突出した部分の最内端部が「内縁820」となっている。そうすると、「外側同心円筒804」は、その径が略一定の円筒部分(以下「外円筒部分」という。)と、「内縁820」を含む突出部分(以下「外側部分」という。)とからなっているといえる。
ここで、甲1発明の外円筒部分は、「外側同心円筒804」を構成するものであるから、「外側同心円筒804」は、外円筒部分を含み、甲1発明の外円筒部分は、本件発明1の「第2の円筒構造」に相当する。
そして、甲1発明の外円筒部分と内円筒部分との外径が異なることは、FIG.8及び構成fから明らかである。
他方、「内縁820」は、明らかに外円筒部分の内側にあるから、外円筒部分は、「内縁820」の内径の外側に位置するといえる。
ウ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造」「を含んだ第2の部品」を有する点で共通するものの、本件発明1の「第2の円筒構造」は、「前記第2の基板の内径の内側に位置」するのに対し、甲1発明の外円筒部分は、「内縁820」の内径の外側に位置する点で相違する。
(5)発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは発明特定事項A及びB「を有し、」というものである。
そして、甲1発明である「回転式インタフェース」(「回転式インタフェース800」)が、「内側同心円筒802」及び「外側同心円筒804」を有することは、構成bのとおりである。
よって、本件発明1と甲1発明とは、発明特定事項A及びB「を有」する点で一致する。
(6)発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは「前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され、」というものである。
ア 構成f及びFIG.8によれば、甲1の内円筒部分は、甲1の外円筒部分よりも外径が小さい。
よって、甲1発明の内円筒部分は、本件発明1の「前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造」に相当し、甲1発明の外円筒部分は、本件発明1の「前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造」に相当する。
イ FIG.8を参照すると、甲1発明の内円筒部分は、外円筒部分の内部に挿入されているといえる。
ウ 甲1発明においては、「内側同心円筒802及び外側同心円筒804の双方は、中心軸106の周りを回転」する(構成c)から、それらを構成する内円筒部分及び外円筒部分も、中心軸106の周りを回転すると認められ、その回転方向は内円筒部分及び外円筒部分の円周方向であると解される。
エ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され」る点で一致する。
(7)発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは「前記第1の構造の外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための電極を有する第1の通信用部品が形成されると共に、」というものである。
ア 甲1発明の「外縁812」は、FIG.8を参照すれば、「内側同心円筒802」の外周面であると解される。
甲1発明の「伝送線810」は、「外縁812に取り付けられ」る(構成d)から、甲1発明の「伝送線810」は、「内側同心円筒802」の外周面に形成されていると解されるものの、「外縁812」は、あくまで「内側同心円筒802」の外周面であって、内円筒部分の外周面ではない。
イ 甲1発明において、「伝送線810及び818は、内側同心円筒802と外側同心円筒804との間に電気信号を通過させられるようにするために使用され」る(構成h)から、通信用の部品であると解され、本件発明1の「第1の通信用部品」に相当する。
また、甲1発明の「伝送線818」は、本件発明の「第2の通信用部品」に相当する。
ウ 甲1発明において、「伝送線は、内側同心円筒802の外側同心円筒804に対する相対的な角度位置に関係なく、管状間隙Gを挟んで互いに近接する」(構成i)から、「伝送線810」と「伝送線818」とは接触して通信するのではなく、無線通信を行うと解される。
エ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための電極を有する第1の通信用部品が形成される」点で共通するものの、本件発明1の外周面は、「前記第1の構造の」外周面であるのに対し、甲1発明の外周面は、「内側同心円筒802」の外周面であって、内円筒部分の外周面ではない点で相違する。
(8)発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは「前記第2の構造の内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する電極を有する第2の通信用部品が形成され、かつ、」というものである。
甲1発明の「伝送線818」が、本件発明1の「第2の通信用部品」に相当することは、前記(7)イのとおりである。
甲1発明の「伝送線818」は、「外側同心円筒804の内縁820に取り付けられ」る(構成e)から、「外側同心円筒804」の内周面に形成されると解されるものの、該内周面は外円筒部分の内周面ではない。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する電極を有する第2の通信用部品が形成され」る点で共通するものの、本件発明1の内周面は、「前記第2の構造の」内周面であるのに対し、甲1発明の内周面は、「外側同心円筒804」の内周面であって、外円筒部分の内周面ではない点で相違する。
(9)発明特定事項Gについて
発明特定事項Gは「前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置され、」というものである。
甲1発明では、「伝送線は、内側同心円筒802の外側同心円筒804に対する相対的な角度位置に関係なく、管状間隙Gを挟んで互いに近接する」(構成i)から、「伝送線810」及び「伝送線818」は、対向すると共に接触しないと解される。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置され」る点で一致する。
(10)発明特定事項Hについて
発明特定事項Hは「前記第2の構造の外周面にグランドが配置される、」というものである。
これに対し、甲1発明の外円筒部分の外周面にグランドが配置されるか否かは特定されていない点で相違する。
(11)発明特定事項Iについて
発明特定事項Iは「ことを特徴とする通信装置。」というものである。
甲1発明の「回転式インタフェース」は、「回転部分と非回転部分の間の間隙を介して情報を伝送するための伝送線路を使用する」ものである(構成a)から、通信装置であると解される。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「通信装置」である点で一致する。
(12)一致点及び相違点
前記(1)~(11)によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「無線で送電するための送電コイルが実装された第1被実装物と、前記第1被実装物の内径の内側に位置する第1の円筒構造とを含んだ第1の部品と、
前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2被実装物と、前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造とを含んだ第2の部品と、
を有し、
前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され、
外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための電極を有する第1の通信用部品が形成されると共に、内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する電極を有する第2の通信用部品が形成され、かつ、前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置される、
ことを特徴とする通信装置。」である点。
〈相違点1〉
本件発明1の第1被実装物は「第1の基板」であるのに対し、甲1発明の被実装物は「外縁812」である点。(発明特定事項A1)
〈相違点2〉
本件発明1の第2被実装物は「第2の基板」であるのに対し、甲1発明の被実装物は「内縁820」である点。(発明特定事項B1)。
〈相違点3〉
本件発明1の「第2の円筒構造」は、「前記第2の基板の内径の内側に位置」するのに対し、甲1発明の外円筒部分は、「内縁820」の内径の外側に位置する点。(発明特定事項B2)
〈相違点4〉
本件発明1の外周面は、「前記第1の構造の」外周面であるのに対し、甲1発明の外周面は、「内側同心円筒802」の外周面であって、内円筒部分の外周面ではない点。(発明特定事項E)
〈相違点5〉
本件発明1の内周面は、「前記第2の構造の」内周面であるのに対し、甲1発明の内周面は、「外側同心円筒804」の内周面であって、外円筒部分の内周面ではない点。(発明特定事項F)
〈相違点6〉
本件発明1は、「前記第2の構造の外周面にグランドが配置される」のに対し、甲1発明は、外円筒部分の外周面にグランドが配置されるか否かは特定されていない点。(発明特定事項H)
(13)申立人の主張について
申立人は、相違点1~6のいずれについても認めていないので、これら相違点に関する申立人の主張について、以下、検討する。
ア 相違点1について
申立人は、発明特定事項A1に係る構成が、甲1発明のものと一致する根拠として、甲1の「伝送線128及び130は、それぞれの配線基板124及び126のような回路基板に印刷された伝送線配線であってもよく、又は、ワイヤ、同軸ケーブル、誘電体スラブ、光ファイバー、電力線、導波路などであってもよい。」([0026])との記載を挙げている。(申立書79頁4~7行)
しかしながら、当該記載は、「伝送線128」(本件発明1における「第1の通信用部品」に対応)に関するものであって、「巻線808」(本件発明1の「送電コイル」に対応)に関するものではない。甲1には、「巻線808」が基板に実装されることについては、記載も示唆もない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
イ 相違点2について
申立人は、発明特定事項B1に係る構成が、甲1発明のものと一致する根拠として、前記アと同様に、甲1の[0026]の記載を挙げている。(申立書79頁17~20行)
しかしながら、当該記載は、「伝送線130」(本件発明1における「第2の通信用部品」に対応)に関するものであって、「巻線816」(本件発明1の「受電コイル」に対応)に関するものではない。甲1には、「巻線816」が基板に実装されることについては、記載も示唆もない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ウ 相違点3について
申立人は、発明特定事項B2を一致点として主張するものの、その具体的根拠を示していない。(申立書79頁9~21行)
そして、発明特定事項B2に係る相違点4に関しては、前記(4)イで論じたとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 相違点4及び5について
申立人は、発明特定事項E及びFを一致点として主張するものの、その具体的根拠を示していない。(申立書79頁32行~80頁14行)
そして、発明特定事項E及びFに係る相違点4及び5に関しては、前記(7)ア及び(8)で論じたとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ 相違点6について
申立人は、発明特定事項Hに係る構成が、甲1発明のものと一致する根拠として、甲1の「伝送線128及び130は、伝送線対であってよく、その伝送線対は、グランド及び他の回路に対して等しいインピーダンスを持つ同種の2つの導体を含む。」([0028])との記載を挙げ、グランドが配置されていることは明らかである、と主張する。(申立書80頁10~13行)
しかしながら、上記記載からは、甲1発明のどこかにグランドが存在することが示されているに過ぎず、発明特定事項Hのように「前記第2の構造の外周面」、すなわち、甲1発明の外円筒部分の外周面に、グランドが存在していることについては、記載も示唆もされていない。これは、甲1全体を参照しても同様である。
したがって、申立人の主張は採用できない。
4 本件発明1の甲1発明に対する新規性の有無について
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(1)本件発明の実施形態は、以下に掲げる本件図4及び図5のとおりの形状である。
〈本件図4〉
[図:0001421401000006.jpg]
〈本件図5〉
[図:0001421401000007.jpg]
本件図4及び5並びにそれらの説明によれば、本件発明の実施形態は以下の(I)~(IV)の形態的特徴を備えると解される。
(I)円筒構造307が円筒構造306の内側に挿入される入れ子構造を構成する。(【0023】)
(II)上記入れ子構造において、部品303と部品304とが、円筒構造306及び307の外側で、円筒軸の方向に対向する。
(III)部品303には送電コイル201が実装され、部品304には受電コイル202が実装される。(【0019】)
(IV)上記入れ子構造において、通信カプラ221及び223と、通信カプラ222及び224とが、円筒径方向に対向し、接触しない。
そして、本件発明1は、前記(I)を特定するために発明特定事項Dを備え、前記(II)を特定するために発明特定事項A2、B2及びDを備え、前記(III)を特定するために発明特定事項A1及びB1を備え、前記(IV)を特定するために発明特定事項E~Gを備えると解される。
そうすると、前記(I)~(III)より、本件発明1は、2つの円筒構造が入れ子構造となったものを前提に、送電コイルと受電コイルが共に、2つの円筒構造の外側で、円筒軸の方向に対向するという形態的特徴を備え、この形態的特徴は、発明特定事項A2、B2及びDのいずれを欠いても成立しない。そして、甲1発明は、これらのうちの発明特定事項B2において相違したもの(相違点3)と理解される。
(2)甲1発明は、FIG.8に示されるように、送電コイル及び受電コイルに相当する巻線808及び816が、巻線816は円筒構造の内側で、円筒径の方向に対向するものであるから、発明特定事項A2及びB2によって特定される形態的特徴と本質的に異なり、その相違が相違点3となったと理解される。(なお、発明特定事項B2を一致点となるように甲1発明を認定した場合には、発明特定事項A2が相違点となる。)
他方、甲1発明とは別の実施形態である実施形態1に係るFIG.4を参照すると、2つの円筒構造に相当する上側コア102及び下側コア104は、入れ子構造となっていないため、本件発明1の形態的特徴である、入れ子構造において、送電コイルと受電コイルが、2つの円筒構造の外側で、円筒軸の方向に対向するという特徴の前提(発明特定事項D)を欠くものである。
甲1のその余の記載を参照しても、2つの円筒構造が入れ子構造となったものにおいて、送電コイル及び受電コイルが、2つの円筒構造の外側で、円筒軸の方向に対向するという形態は、記載も示唆もされていない。
(3)そうすると、甲1発明は、本件発明1の発明特定事項A2、B2及びDで特定される形態と根本的に異なる形態であると認められるため、発明特定事項B2に係る相違点3は、本件発明1と甲1発明との実質的な相違点となる。
よって、本件発明1は、甲1発明と同一であるとは認められない。
5 本件発明1の甲1発明に対する進歩性の有無について
前記4(2)のとおり、甲1には、2つの円筒構造が入れ子構造となったものにおいて、送電コイル及び受電コイルが、2つの円筒構造の外側で、円筒軸の方向に対向するという形態が記載も示唆もされていない。
そして、甲2~甲13においても、上記形態は記載も示唆もされていない。これらにおいて開示される形態は、2つの円筒構造が入れ子構造となったものにおいて、送電コイル及び受電コイルの一方のみが円筒構造の内側で、円筒径の方向に対向した形態であるか、又は、2つの円筒構造が入れ子構造となっていない形態に限られる。
したがって、甲1~甲13の全てを参照しても、発明特定事項A2、B2及びDの全てを備える形態は、記載も示唆もされておらず、仮にこれらを参照して発明特定事項B2の形態を備えるように改変しようとすると、発明特定事項A2又はDの形態を備えないものとなってしまうため、相違点3に係る構成は、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
以上によれば、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲13に示される技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
6 本件発明2~14の甲1発明に対する新規性及び進歩性の有無について
本件発明2~14は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに他の発明特定事項を含むものであるから、本件発明2~14と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点1~6において相違する。
そして、相違点3については、前記4及び5のとおりであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~14に係る特許は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲1発明から容易に発明をすることができたものとも認められない。
7 本件発明の甲2~9発明に対する新規性及び進歩性の有無について
前記5で触れたように、甲1~甲9のいずれにも、発明特定事項A2、B2及びDの全てを備える形態は、記載も示唆もされていないから、本件発明と、甲2~9に記載された発明(以下、それぞれ「甲2発明」~「甲9発明」という。)のいずれかとを対比すると、発明特定事項A2、B2及びDの少なくともいずれかにおいて相違し、当該相違点は、甲1~甲13に記載された技術を参照しても、当業者が容易に想到し得たとは認められない。
よって、本件発明は、いずれも、甲2~9発明のいずれかと同一とは認められず、かつ、当業者といえども、甲2~9発明のいずれか及び甲1~13に示される技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとは認められない。
8 申立理由1及び2についてのまとめ
前記4~7によれば、本件発明は、いずれも、甲1~9発明のいずれかと同一とは認められず、かつ、当業者といえども、甲1~9発明のいずれか及び甲1~13に示される技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとは認められないから、本件発明に係る特許は、いずれも、特許法29条1項の規定及び同条2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立理由1及び2のいずれにも、理由はない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701217